48: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/05(月) 01:24:16.05 ID:Fg9GCM/jo
「あなた、つまらない人ね。でも、悪くはないわ」
彼女は、あって間もない私のことを、つまらないと見抜いた。彼女は間違いなく聡明だろう、と私は一人自虐する。
ただ、悪くはない、という意味は少し分からなかった。
49: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/05(月) 01:24:41.58 ID:Fg9GCM/jo
「ご丁寧に、わざわざありがとう。それと、千秋でいいわ。あなたの方が年上であることよ」
やはり、クールビューティと表現するに相応しい女性だろう。それに、言葉づかいや振る舞いから、良家の子女の様なものがにじみ出ている。
ただ、深窓の令嬢というよりも、高嶺の花、という表現が似合うかもしれない。私はそう思った。
50: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/05(月) 01:26:10.40 ID:Fg9GCM/jo
「お客さん、千秋ちゃんのこと、楽しみにしていたんだよ」
「あら、そうなのかしら?」
告げ口をするように、マスターが千秋さんへと喋りかける。彼女は、それを聞いても表情を変えることなく、余裕を浮かべたまま私に視線を投げかけてくる。
51: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/05(月) 01:26:58.67 ID:Fg9GCM/jo
今回の更新は以上です。ペースを上げていきたいですね。
読んでくださり、誠に有難うございます。
52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/05(月) 01:33:24.50 ID:r2PhNO2eo
乙乙
53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/05(月) 08:38:14.18 ID:LWKpgjh3o
おっつおっつ
黒川さんはやっぱり美人よね、わかるわ
54: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:13:40.72 ID:fDDiOZLHo
『はっ、はっ、はっ……っ』
私は急いでいた。というか、完全にデジャヴュである。昨日もまるっきり、こんな感じだった。そうである、案の定残業が長引いたわけだ。
ただ、少し違うのは、昨日よりも大よそ二十分の猶予があることか。先ほどプロダクションを出た時は九時三十分だったから、このペースで行けば四十分には着けるはず。
55: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:14:12.50 ID:fDDiOZLHo
『頼むぞぉ……』
私は呼吸を整えると、祈るような手つきでドアの取っ手に手を掛ける。その向こう側には――。
『……一応、間に合ったみたいか』
56: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:14:46.42 ID:fDDiOZLHo
『――ッ』
体が、固まった。今日は、クラシック曜日のはずだったが、私の耳に聞こえてきたのは、流麗なバイオリンの音でも、芳醇なピアノの音でもなかった。
聞こえてきたのは、声。長く、高く伸びる、透明な声。他に楽器の音色は聞こえない。クリアなその声、ただ一つだ。
57: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/11(日) 03:15:13.86 ID:fDDiOZLHo
『……ええ、圧倒される、というのはこういう事なのでしょうね』
足に力を込めて、私は立ち上がる。体中のエネルギーを持っていかれたような気がする。そのぐらい、千秋さんの声は私の体に、畏敬の念を抱かせたのだ。
『すみません、いつものを頂けますか』
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