過去ログ - ありす・イン・シンデレラワールド
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7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/11(土) 09:01:25.23 ID:SHXNhlMfo
 もうすこし行間空けるなりしないと読みにくい 
8:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:01:32.17 ID:Gcj069EQ0
  3 
  
  それから数日後、オレンジ色の空の下でありすは河川敷沿いを走っていた。長い髪を後ろで束ねて真っ青なジャージ姿をして横には同じくジャージ姿の灯がいる。その後ろには自転車に乗るちひろも居て単純な話、体力作りのために二人で走り込みを行っているところであった。 
  ありすの初仕事、宣伝材料用写真の撮影を終えた後にボイストレーニングを行ったのだがそこで重大な事実が判明する。橘ありすという少女はアイドル活動をするには決定的に体力が足りないのだ。 
  簡単なボイストレーニングを十分間ほど続けただけで全身から汗を噴き出して息を切らしてしまった、更には気分の悪さまで訴える始末。トレーナーに指摘を受けて灯はありすに基礎体力をつけさせるためにランニングをしていた。 
9:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:03:31.34 ID:Gcj069EQ0
  申し訳ありません。行間については今回は利用していないのですが有用に使う場合があるので空けません。 
10:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:05:45.97 ID:Gcj069EQ0
  4 
  
  またある日、スチール製空気振動遮断ドアを越えて防音設備の整ったレッスンスタジオにてジャージ姿のありすは壁を覆うパネルミラーに映る自分と向き合ってダンスの振り付けを一つ一つ確認しながら踊っていた。 
  まだアイドルとしてデビューをしていない少女に持ち歌もそれに合わせた振り付けもなく、ありすは自分が所属するマネキプロダクションに在籍する先輩アイドルのそれを真似ていた。 
  いつも持ち歩いているタブレットPCを鏡に立てかけて画面に映る眩しい笑顔を浮かべるアイドルの動きを再現する。それを巨大な鏡できちんと再現出来ているか確かめていく。そこに灯がやって来る。 
11:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:07:14.89 ID:Gcj069EQ0
 「あははっ、それも何でかよく言われるんだよ」 
  ありすが深く息を吐いてそれと共に肩から力を抜いていく。脱力を自然と出来る自分に少しだけ驚きながら年上の男に何を言っても駄目そうなので一緒に踊ることを決めて鏡に映るちぐはぐな男女と向き合う。 
  二人は踊りながら、 
 「プロデューサーはどうしてアイドルプロデューサーになったんですか?」 
  ありすから声を掛けられて灯はいつもよりも声を弾ませて、 
12:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:10:07.98 ID:Gcj069EQ0
  5 
  
  オフィスビルの一フロアにある三笠 灯と橘ありすが籍を置くマネキプロダクションはアイドル業界では中堅どころとしてそこそこ名の通った事務所であった。自社ビルではないもののビル群の中で頭一つ高いビルに収まっている。 
  そのビルの中にはアイドルとは縁遠い企業も入っているために時として背広を着た男性と奇抜な格好をしたアイドルが同じエスカレーターに乗ることもある。最上階ボタンを押せないほど小さな女の子とその母親と同い年のOLが乗り合わせることもあり、このビル内では日々奇々怪々な光景が展開されていた。 
  そんな日常の中で終業を知らせる夕暮れ時、オレンジ色に全てが上塗りされるが冬場のために今はこの時間は儚い。窓から夕日の色を受け取る通路を背の高い男と背が低く髪を三つ編みで纏めた女性が並んで歩く。 
13:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:11:18.18 ID:Gcj069EQ0
 「!? 体が勝手に……」 
  思わず声に出して灯は咄嗟に手で口を塞ぐ。しかし、ありすへと伸びている手はゆっくりとだが着実に彼女の頬へと近付いていく。初めて見た時から気になっていた部分であった。マシュマロと表現しようか天使のほっぺたと表現しようか、柔らかくも張りがあってしっとりと指先を包み込む感触に、 
 (すでに触れている!?)灯は自分の行動とありすの頬の感触に驚嘆して声が漏れそうになるのを瀬戸際で阻止した。 
  灯の中指がありすの頬に接触している、触れたところで止まっているのだ。しかし彼の手は更に伸びてしまう。指先一本で満足するはずがなく未知の領域に踏み込むように、新雪を踏みしめる無邪気な子供のように求めてしまう。 
  親指をあてがい頬に滑らせる。ただ滑らすだけでなく感触を確かめるようにほんの少しだけ押し込む形でスライドさせていくのだ。その終着点、親指のはらを名残惜しむようにありすの頬は弾んで離れる。 
14:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:16:39.25 ID:Gcj069EQ0
  6 
  
 「ありすちゃん!」 
 「名前でよば……」 
  お決まりの光景が展開されようとした。昼下がりのアイドルプロダクションにて背の高い男が少女の元まで駆け寄ろうとする。男の上げられる脚が床に置いてあった段ボールにひっかかり中に入っていたケミカルライトスティックを盛大に吹き飛ばす。その事に気付かない笑顔の男が少女の視界一杯に広がってくる。 
15:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:18:20.35 ID:Gcj069EQ0
  笑う灯にありすは何故笑えるのか不思議に思いつつ自分のことを語る彼の言葉を待っていた。 
 「人に覚えてもらえる。……人の記憶に残るのって実はとっても大変なことなんだ。同時に素晴らしい」 
 「人の記憶に残る……」 
  灯が言ったフレーズをありすが自然と反芻する。灯が柔らかな笑顔になって頷く。 
 「うん。それは小説や映画、テレビゲームや漫画でも一緒なんだけど人の記憶に根付くように残ると時間の経過なんて関係なく鮮明にリフレインされる。時として人を動かす原動力になるんだ。 
16:チョッキを着たウサギ
2014/01/11(土) 09:20:14.18 ID:Gcj069EQ0
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  橘ありすという少女がアイドルになろうとしてた。腰まで届くほどに長い黒髪は美しくハーフアップにして青く大きなリボンで留めていた。静かな力強さを持つ瞳と相反するようにぷにっとした柔らかい頬はあどけなさを見せる。 
  タブレットPCを胸に抱えて理論や理念といった理(ことわり)を独自に持ち合わせてそれと共に歌が持つ目には見えない"力"を信じる少女だった。理屈の冷たさに秘められた熱い理想を抱く彼女は数日後に控えたテレビ番組のオーディションを合格すればアイドルとしてデビュー出来る。 
  幼いながらスポットライトに照らされる夢のステージへと上がる様は神々しくもあった。その舞台の裏で何人の少女が涙を流すのか歓声送るファンの人々は知らない。 
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