6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:37:01.01 ID:4dDXRU7No
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7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:38:06.17 ID:4dDXRU7No
がたこん、という不思議な音を鳴らして閉まる扉を確認して、俺の視線は再度液晶画面に戻る。
そこにはずらりと並んだ数字と、いくつかの人の名前が表示されていた。
8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:39:36.80 ID:4dDXRU7No
――始めて翠が後輩と出会ったのは、いつもどおりの事務所の中に春の心地良い空気が入り混じり始めた季節だった。
一年目は右往左往、東奔西走といった言葉をひとしきり並べたくなるような時間を俺と翠、そしてちひろさんやトレーナーさんなどで過ごし、二年目も相変わらず終わらない練習と仕事を続け、今尚それは変わっていない。
9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:40:59.04 ID:4dDXRU7No
話を戻すと、やはりというべきか、俺と翠の距離感という点では変わらざるを得なかったのが事実であった。
当時こそ翠とは付きっきりであったが、今ではやや距離をおいてのプロデュースになっていたのである。
10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:42:49.10 ID:4dDXRU7No
ただ、そこでも勿論多少の変化はあった。
かつての翠なら、例えば今日のような二人きりの場面にでもなれば手を握ったり肩を寄せあったりするなど、恋する女の子らしい一面が見られたものだが、今となってはそういう行為は口にも仕草にも出さないようになっている。
11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:45:42.54 ID:4dDXRU7No
かたかた、と乾いた音が室内のテレビ音を装飾する。全く味気のない音は不規則に声を彩り、不確定な時を刻んだ。
本来向けるべき昨日に意識を傾けつつも俺と翠の事についてああだこうだと考えながら作業していると、気がつけば記録作業が終わっていることに気づいた。
12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:47:06.07 ID:4dDXRU7No
最初の頃は、毎日家に帰って勉強ばかりしていた。
何も知らない世界に飛び込む俺に、精一杯知ってもらおうと用意してくれたテキストを必死に頭に詰め込んでは翌日間違えてしまったり、言葉遣いも正しくなかった俺に、わざわざちひろさんがビジネス用語本を渡してくれたり。
13:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:48:40.47 ID:4dDXRU7No
「あ……と、遅かったみたいですね」
がたこん、という何度目かの音を立てて、部屋の外から翠が現れた。
14:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:50:10.78 ID:4dDXRU7No
「あ、いや、気にしないでください! 普段のお礼ですから!」
翠は中腰になっている俺の肩に手を触れて抑えようとする。決して強い力ではないが、その顔を見ると言葉は冗談ではなさそうだ。
「とはいってもな……アイドルに奢られちゃ立つ瀬がないぞ」
15:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:52:01.24 ID:4dDXRU7No
「覚えてますか、私が初めてPさんの家に行った日のことを」
遥か遠くの世界に思いを馳せるような、僅かな笑み。
もはやそれだけではっきりと世界が変わるのを感じた。
16:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:54:17.67 ID:4dDXRU7No
心音が更に時を刻む。
刻めば刻むほど、過去の情景が網膜を支配していった。
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