過去ログ - 先輩「そこから見えるのは、どんな景色ですか?」
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2014/07/16(水) 00:08:29.83 ID:8oJAdiKmo
文化祭が終わって一ヶ月以上経ったある日、ひなた先輩が部室にやってきて、「散らかってない?」とぽつりとつぶやいた。
「そうですかね?」と俺はとぼけてみたけれど、彼女はちょっと困ったみたいに笑ってから「うん」と頷く。
「そう見えるだけかもしれないですよ」
「でも、ほら、あれ……」
と言って彼女が指さしたのは、机の上に広げられているリバーシのマグネット盤だった。
今まさに勝負が行われている最中だ。
対戦しているのは二人の女子部員。優位なのは黒で、角を三つ取っていた。
場面はすでに終盤。黒に領地を蹂躙され尽くした白には、すでに逆転の手立てが残されていないように見える。
「あれはなに?」
「見たことありませんか? リバーシです」
「知ってる。そういう意味ではなくてね」
「オセロ?」
「言い方の問題でもないよー」
間延びしたしゃべり方。彼女はちょっともどかしそうな顔で俺を見上げた。
ちょっと前まで毎日のように顔を合わせていたのに、なんだか懐かしいような気分になる。
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2014/07/16(水) 00:09:41.13 ID:8oJAdiKmo
「じゃあ、どういう問題なんですか?」
真正面から問い返すと、先輩は一瞬気後れしたような様子を見せた。
それでも結局、もごもごと口を動かして、言いにくそうに言葉を続ける。
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2014/07/16(水) 00:10:27.46 ID:8oJAdiKmo
「まあ、息抜きっていうか……」
俺の答えに、先輩はほっとしたようにため息をついた。
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2014/07/16(水) 00:11:24.39 ID:8oJAdiKmo
「……息抜きって、なんだっけ?」
「今日はみんな乗り気じゃないみたいで」
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2014/07/16(水) 00:12:04.22 ID:8oJAdiKmo
「いいかげんオセロも飽きてきたよね」と「みさと」がいつものような落ち着いた口調で言う。
彼女は今学期から編入してきたばかりで、最初はだいぶ居心地悪そうにしていたけれど、今はだいぶ馴染んでいる。
もともと同学年の女子部員がいなかったから、うまく距離感がつかめなかっただけなのかもしれない。
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2014/07/16(水) 00:12:49.17 ID:8oJAdiKmo
ちょっと困ったような気分になる。
べつに俺だって、サボりたいとか遊びたいとか思ってたわけじゃない。
「わたしがいるときだってけっこう適当だったから、変わってないっていえば、変わってないんだけどさ」
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2014/07/16(水) 00:13:35.34 ID:8oJAdiKmo
「……まあ、いっか」
と先輩は諦めたみたいな顔をして、それからきょろきょろと部室を見回した。
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2014/07/16(水) 00:14:48.55 ID:8oJAdiKmo
◇
「書けない」と、一週間前の水曜、苦しげな表情をつくって、大澤が言った。
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2014/07/16(水) 00:16:06.87 ID:8oJAdiKmo
次に大澤に声をかけたのは「みさと」だった。
リバーシは部内最弱を誇る「みさと」だったけど、大澤の扱いに関しては誰もが認めるプロフェッショナルだ。
「みさと」特有の会話のテンポや声のスピードは独特の癒し時空を発生させる。
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2014/07/16(水) 00:18:34.15 ID:8oJAdiKmo
◇
そんな水曜の顛末をひなた先輩に伝えると、彼女は一言、
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2014/07/16(水) 00:20:12.27 ID:8oJAdiKmo
◇
大澤の様子がおかしくなりだしたのは、文化祭が終わって二週間が過ぎた頃のことだった。
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2014/07/16(水) 00:21:45.54 ID:8oJAdiKmo
「みさと」が書いたのは絵本のようなほのぼのとした雰囲気の話だ。
特に面白がる要素もないのに気付くと読み終わっていて、さらりとした読後感がある。
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2014/07/16(水) 00:22:28.57 ID:8oJAdiKmo
◇
用事があるから、と、ひなた先輩が部室を出て行った。
残されたのは俺と、「あかね」「みさと」の二人だけだった。
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2014/07/16(水) 00:23:47.31 ID:8oJAdiKmo
文芸部の部員数は七名だ。
俺と大澤、「あかね」と「みさと」、それから部室に顔を出さない幽霊部員の男子二名。
引退したひなた先輩は除外。最後のひとりは、唯一の一年生、女子部員だ。
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2014/07/16(水) 00:24:29.88 ID:8oJAdiKmo
気配でそれを察したのか、彼女は急に振り返って、笑った。
「せんぱい、なにしに来たんですか?」
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2014/07/16(水) 00:25:14.15 ID:8oJAdiKmo
「高いところ、好きなの?」
「穴の中とか、井戸の底とか、低いところよりは好きかもしれないです」
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2014/07/16(水) 00:25:48.01 ID:8oJAdiKmo
「とにかく、俺はもう帰るよ」
これ以上ここに居ても何も話すことはないと思い、俺は屋上をあとにしようとした。
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2014/07/16(水) 00:26:38.63 ID:8oJAdiKmo
「そもそも、今は部長がサボってるし、実質リバーシ部だし」
「あはは」と後輩は笑う。何かをごまかそうとしているみたいに見えた。
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2014/07/16(水) 00:29:25.12 ID:8oJAdiKmo
◇
彼女が部誌に寄せたのは一本の掌編小説だった。
あるいは小説と呼ぶのは間違いかもしれない。散文詩とでも呼ぶべきかもしれない。
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2014/07/16(水) 00:30:05.42 ID:8oJAdiKmo
彼らは思い思いのことをして遊び、思い思いの相手と関わりあった。
そんななか、「わたし」はあるとき、穴を掘りはじめる。
庭園の隅の方で、理由もなく、白い服を土で汚しながら、ただ延々と。
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2014/07/16(水) 00:31:23.02 ID:8oJAdiKmo
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家に帰ると、リビングのソファの上で膝を抱えて、妹がしくしくと泣いていた。
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