6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:11:08.89 ID:lE2tgw5So
携帯電話の赤いランプが点滅して、充電完了を告げていた。
あと一時間か少しすれば、日付も変わってしまう。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:11:35.48 ID:lE2tgw5So
寝間着を抱えて部屋の電気をもう一度消して、二人で階段を下りていく。
階段の照明は点けなかった。
前を行くことりの揺れる後ろ髪や
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:12:02.09 ID:lE2tgw5So
廊下の突き当たりではリビングの明るさが染み出している。
わずかに開いたドアの隙間から、ことりのおばさまの声が聞こえる。
校内では見せない、
けらけらと明るい笑い声がときどき挟まる。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:12:28.69 ID:lE2tgw5So
海未ちゃん、
とリビングから聞こえて息が詰まる。
私を呼んだのではなく、会話のうちにこぼれた言葉だ。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:12:55.25 ID:lE2tgw5So
冷たい雨が降り始めた頃だった。
帰りたくない、帰らないで、とことりがせがんだ。
音を立てて通学路や世界を濡らす雨は髪の毛や首回りや制服のシャツまで濡らし、
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:13:21.81 ID:lE2tgw5So
さながら捨て子の泣き顔だった。
光を被けたことりの目は涙に汚され、腫れた目尻を赤くゆがめていた。
唇はもう言葉を形作ることもできず小さく開いたまま、
頬にはあの透き通る髪の幾筋かが濡れて張り付いたまま、
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:13:48.41 ID:lE2tgw5So
「えいっ」
不意に指先が頬へと押し付けられる。
廊下の向こうから戻ってきたことりだった。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:14:14.95 ID:lE2tgw5So
作詞の進度を尋ねられたのは、
ことりが私の背中を流し始めた時だった。
曇りガラスを雨粒が叩く音もいつしか弱まり、
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:14:41.53 ID:lE2tgw5So
「海未ちゃんはさ、」
手を止めて尋ねる。
「いつも、どうやって詞を作ってきたの?」
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:15:08.10 ID:lE2tgw5So
「作詞の方法なんて、私にも分かりません。もっとうまい人がいますよ」
でも、わたしたちは海未ちゃんの詞じゃないとダメなんだよ。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:15:34.67 ID:lE2tgw5So
「じゃあ海未ちゃん、ことりも洗ってよ」
「はいはい。髪は洗ってましたから、」
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