過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える 続きと終わり
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6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:25:17.58 ID:kAKMmD4ho
「それじゃあ、またね」

俯いて短い別れを告げ、閉まらないように押さえていた、彼と私を分かつぶ厚いドアから手を離す。

ドアクローザによりゆっくりと扉が閉まり始める。姿が見えなくなるその瞬間、彼の手が閉まろうとする扉の動きを遮った。
以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:26:38.20 ID:kAKMmD4ho
彼に何か、犯罪まがいのことをされるとは微塵も思わない。だが、くだらない被害妄想とも言い切れない、考えるだけで吐き気を催すような拒絶の言葉が、想像が頭をよぎる。

彼を玄関に招き入れて、またすぐに鍵を掛けた。そうする癖がついているからで、別に他意はない。

「あー、なんか悪いな」
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:28:17.97 ID:kAKMmD4ho
「……あいつらには先帰ってくれって言っといた」

他の人が近くにいないということを聞かされると、急に胸が早鐘のように躍り始めた。彼の行動の意図が、目的が読めない。

「そ、そう。いいの?」
以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:30:10.75 ID:kAKMmD4ho
さほど大事でもないのにそらで言える電話番号を伝えると、彼はスマホを操作して私にワンコールしてくれた。

彼はどういう名称で私の番号を登録をしたのか、少しだけ気になった。

「……そんな、生徒会の連絡とかで聞いたんじゃねぇんだけどな」
以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:31:08.20 ID:kAKMmD4ho
「雪ノ下、あのな……。よかったら、俺と…………」

ああ、そうか。ここまで言われて、やっとわかった。

この言葉の続きを私は知っている。
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:32:14.86 ID:kAKMmD4ho
あとは断ち切って、痛みを飲み込んでしまえばいい。守るために、失わないために必要な代償なのだから、受け入れるしかない。

そう自分に言い聞かせ、逡巡する彼に言葉をかぶせ、遮る。

「待って。その先は、私から言わせて」
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:33:20.92 ID:kAKMmD4ho
「……わかったわ」

思えば、一度目は純粋な拒絶だった。彼の人となりを知らなかったし、向上心のまったくないただのろくでなしとしか思えなかったから。

二度目は、彼とそんなもので関係に線を引きたくなかった。まだもう少し続けたかった。ようやく彼と知り合うことができ、特別な何かを感じ取っていたから。
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:34:12.85 ID:kAKMmD4ho
皮肉なものだ。今まで散々すれ違いを続けてきた彼と私の言葉が、こんなことで重なり合うなんて。

彼は紛うことなき本音を、私は欺瞞に覆い隠された建前を。これで重なり合うのなら、私と彼はそうなるべくしてそうなっていたのだろう。

まるで出来の悪い、笑えない喜劇だ。
以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:35:08.68 ID:kAKMmD4ho
え?比企谷君はなんて言ったの?

「いや、お前な……。会話の流れおかしいだろ。なんでそこで友達って言葉が出てくんだよ」

「わ、私はてっきり、以前あなたから言われたことをまた言われるのかと……」
以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:36:05.43 ID:kAKMmD4ho
「いやだから、俺と付き合ってくれって……わざとか?聞こえない振りしてんのか?難聴系か?」

付き合ってくれ。付き合う。

……念のため、確認しておこう。
以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:40:53.02 ID:kAKMmD4ho
私と彼はいつまですれ違い続けるのか。

───まるで、喜劇だ。

「……ごめんなさい。少しだけ、落ち着かせてもらえないかしら……。もう何がなんだか……」
以下略



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