過去ログ - 提督「ドッキリで死んでみる」
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:01:10.29 ID:iHsws6qc0
だから、榛名の主観性に基づくなら、日常の始まり方は二種類ではなく、提督が執務室にいる場合の一種類だけである。すなわち提督は毎日しっかり執務室に出頭しており、榛名にしてみればそんな誠実で真面目な提督にある種の尊敬の念を抱いたりしていたのだった。

いかなる時間に赴こうとも執務室の席で書類を整理している提督、いつ休息をとっているのか不思議に思わないでもないが、敬愛すべき優しい提督に指示され仕事を片付けていく、そんな日常こそ榛名の持つ唯一の日常であった。しかし、いまや榛名は第二の異なった日常的始まりに遭遇していた。

「執務室に提督がいた場合」とは、なるほど確かにいつも通りの日常的始まり方だ。しかし、それは厳密に言い直せば「執務室に提督が生きて存在している場合」であり、「執務室で提督が死体としてある場合」は榛名の始まり方からは逸脱していた。
以下略



3:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:02:25.86 ID:3nF6KDUc0
ドッキリネタけっこうあるけどたまにはうみねこばりに本格的なグロ事件を演出したの見てみたいな


4:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:03:30.40 ID:iHsws6qc0
提督のあたかも死体的な様子、傍に転がる「ドッキリ成功!」のプラカード。これはどのような命令を意味するのだろうか。やはり提督が残す言語的痕跡「ドッキリ」という語が重要に違いなかった。

「ドッキリ成功!」とはこの場合、提督のダイイングメッセージである、なぜなら、何らかの意図がなければ、わざわざ「ドッキリ」によって殺される道理はないからだ。提督が意図的に「ドッキリ」によって殺されることに成功したとするなら、「ドッキリ」の意味について考える必要がある。

榛名は「ドッキリ」の場面に遭遇したのは初めてだが、「ドッキリ」とは何かについて知識はあった。一般的にドッキリとは対象を非現実的特殊な状況に直面させて反応を見る悪戯と考えられている。
以下略



5:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:04:54.57 ID:8aRhP2ymo
哲学の人か


6:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:05:01.76 ID:iHsws6qc0
ドッキリには親しい間柄において関係を盛り上げる小さな悪戯的用法があるに違いなかった。この線で考えるならば、提督は榛名と「親しい関係」にあるということになる。榛名は感激した。提督がそのように考えていてくれるなんて。

「このドッキリは私たちの関係を深めるための手段なのですね」榛名は判断する。状況の意味が固定されると、そこを足がかりに榛名が今何をなすべきか自ずと明らかになった。

結婚。それ以外ありえなかった。
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:07:18.20 ID:iHsws6qc0
榛名は書斎机の引き出しをダズル迷彩の艤装をバールのように用いてこじ開ける。ケッコンカッコカリの書類を取り出し、名前欄に「提督」と「榛名」と丁寧に綴る。印章が必要らしかったが、印鑑が見当たらないので、提督の親指を傷口に添えて血判させた。死人に意志はないので、榛名が全ての意志であった。

榛名は左手薬指にはめた指輪をうっとりと眺めた。婚約の証である指輪は榛名の方だけがつければ良い。鎮守府では重婚が認められていた。提督は何人も妾を持つことが許され、それが好ましいことだとさえされる一方で艦娘達は一途に操を立てなければならなかった。

提督と艦娘の関係は非対称的であり、それを「性的搾取」であると糾弾する社会運動もあったようだが、艦娘たる榛名にとっては提督と「常に一緒に」いるという日暮しであるのだから、「重婚は不誠実だ」と主張されても、己に関わる問題だという実感はありえなかった。
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:07:43.43 ID:kQcYu6Rjo
パニックなのか、安定的に頭おかしいのか


9:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:09:13.03 ID:iHsws6qc0
すなわち。提督は確かに既に死体であった。しかし、榛名が指輪をはめたことにより、法的事実世界において停止条件説的に死体である提督に対して遡及的に「榛名に愛の告白をする意志」が発生したのだと考えてよい。

死してなお中絶されることのない原液的な愛の関係に榛名は酔った。「双方の合意」なんぞに頼り、「死が二人を分かつまで」という宣誓で結ばれる軟弱な関係では決してない。榛名は今の私たちの関係こそ愛の最も理想的な形であると信じて疑わなかった。

提督との愛に陶酔する榛名はそのうち内心だけで処理しきることが出来ないほど己の情熱を大きくしてしまい、仕草に落ち着きのなさが現れる。それは良人に何か尽くしてやりたいという女的欲求を喚起させた。尽くすことによっていかんともしがたい愛の膨張を抑えようというわけだ。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:11:39.34 ID:iHsws6qc0
提督の表情が落ちてしまった。正確には提督の顔が落ちてしまった。目のあった場所は眼裂さえなくなり、鼻部分の隆起は真っ平らになってしまった。口に関しては最初から死人に口無しだったので気にする必要はない。

榛名は無貌となった提督を見て狼狽した。最近の掃除用品がここまで肉体の識別性を損なうものだとは考えていなかったのだ。指紋を薬品で焼き消すなんてことはドラマなどではそれなりに親しいシーンではあるが、顔ごと消すとなると。

確かに現状では顔無しは最も目立つ特徴であるかもしれないが、それは一時的なものに過ぎないのは明白である。クレンザーと激落ちくんで落ちる程度のものだ、人が考えるより顔なんてものは人間の同一性にとって案外どうでも良いものなのかもしれない。
以下略



11:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 01:11:43.35 ID:ALrLFJIAO
激落ちくんに草


12:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:13:35.39 ID:iHsws6qc0
女の服飾は委ねるように投げ出され受動的であるように運命づけられてきた。しかし、女にも能動性の獲得が期待されるようになり、女が自ら服を着脱するようになっても、服飾の構造に変化はなかった。精神が変わろうとも環境がそれに追いつくことがないというのはよく知られるところである。

瞬足と鈍足の二人三脚は互いに足を引っ張り合い、互いの利点である先進性も堅実性も食い合いもたつくのであるが、それに慣れてくると奇妙な技術が磨かれてくる。榛名の手つきはまさにそれであった。本来受動的な服を能動的に着るように慣らされた榛名にとって本来能動的な服を受動的なものとして脱がせることは造作もないことであった。

だから、榛名が提督の服を滑るように脱がしたからといって、それは時代的技術であるかもしれず、榛名に淫乱の気質があったり発情したりしたと考える必然はないはずだった。
以下略



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