2:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:14:13.75 ID:dk78gRdd0
例えば夕暮れの帰り道。
または、目を焼く陽射し。
弧を描くスプリンクラーの水。
3:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:16:25.82 ID:dk78gRdd0
*****
過去の夏を見ていた目の焦点を書棚に戻し、和は目当ての本に指を伸ばす。
4:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:18:42.09 ID:dk78gRdd0
あの書棚は彼女への想いの墓標だ。
弔いに投げ込む本を、和はこうして選んでそこへ運ぶ。
探し当てた一冊だけを手にして会計へ向かう途中、新刊の積まれた平台が目に入った。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:22:17.42 ID:dk78gRdd0
和「咲さん…」
久し振りと言う目の前の彼女は少し髪が伸びて、見慣れない服を着ていた。
咲「偶然だね」
6:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:25:08.61 ID:dk78gRdd0
3年と、4ヶ月2週間振りだ。
しかし和はそうですねと頷くに留めて、女々しい記憶力を押し隠す。
最後に会ったのは大学一年の夏。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:28:19.95 ID:dk78gRdd0
そうだねと言う咲を見て、彼女はこんな風な笑い方をするのだったかと考える。
いや、3年以上も経っているのだ。人は変わっていく。
変わらないのは、自分のこの想いだけだ。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:31:05.90 ID:dk78gRdd0
頷いてしまいたい衝動を息を呑み込むことで抑えつけて、首を横に振った。
和「いえ、いいです。引っ越しましたから。知らない道は大変でしょう」
咲「そっか。それじゃあ、また」
9:名無しNIPPER[sage]
2016/01/20(水) 22:33:46.35 ID:9f6F01ziO
咲和すき
10:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:35:27.00 ID:dk78gRdd0
それじゃあと再び歩き出した彼女の後ろ姿がゆっくりと遠くなっていく。
和は自宅の小さな墓に埋めるつもりの本に目を落とした。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:38:44.48 ID:dk78gRdd0
和「咲さん!」
大声で名を呼ばれた彼女に驚いた様子はない。
呆れたように、ほっとしたように、目を細めて言う。
12:名無しNIPPER[saga]
2016/01/20(水) 22:41:46.38 ID:dk78gRdd0
*****
窓の外を流れる景色を目に映しながら、和の意識は右隣に座る咲に集中していた。
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