過去ログ - 三つの願い
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1:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:18:48.50 ID:a+M0FpcZ0
 目の前には、埃をかぶったランプが置かれている。
 これは、家の前でこれでもかと言わんばかりに堂々と置かれていた物だ。
 この見た目はあれだ。擦ったら青い肌をした魔人が出てきて人の願い事を叶えてくれるというランプにそっくりだ。
 まぁ、実際にそんなことが起こるわけないんだけどさ。
 俺はウェットティッシュを取り出し、埃を拭き始める。
 まぁ、これは綺麗にすれば一種のインテリアとして飾れる代物だ。
 しばらく拭くと、ランプは俺の顔を反射するくらいには綺麗になった。
 さて、それじゃあこれは棚にでも飾って・・・・・・。

「お呼びでしょうか、ご主人様」

 ランプを持った瞬間、中からピンク色の衣装に身を包んだ美少女が飛び出した。

「う、うわぁッ!」

 情けない声と共に、俺はランプを投げ出し後ずさった。
 な、なんだこの少女は?
 ランプから出てきたということは、この子はもしや世にいうランプの精なのだろうか?
 彼女は驚いた俺を見て首を傾げた。

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2:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:21:28.59 ID:a+M0FpcZ0
「ご主人様?どうされましたか?」
「い、いやいや。普通に考えておかしいでしょ!なんでランプの中から女子高生が出てくるんだよ!」
「女子高生ではないですが、私はランプの精ですよ?」
「そもそもランプの精というものが存在する件についてツッコんでもいい!?」
「なんでですか?こうして私が存在するのですから、存在するに決まってるじゃないですか」
以下略



3:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:24:04.56 ID:a+M0FpcZ0
 そんなやり取りの末、彼女は俺の勉強机の椅子に腰を掛けて、くるくる回り始めた。
 おい、なんで人の椅子で楽しんでやがるんだ。今すぐ降りろ。

「とにかく、私はランプの精です。まだこの世界に魔法が存在した時に作られた存在で、今まで何千年もこのランプの中で過ごしていました」
「この世界って魔法あったの!?」
以下略



4:名無しNIPPER[sage]
2016/03/15(火) 08:25:53.05 ID:692DMDBk0
フィアンセは夢追い人思い出した


5:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:26:43.23 ID:a+M0FpcZ0
「話を戻しますが、私という存在は、元々魔翌力が高すぎた人間です」
「魔翌力が、高すぎた・・・・・・?」
「はい。生まれてすぐに魔翌力を計るのですが、その魔翌力が基準値を大きく上回りすぎてしまった場合などは、一度殺されてこうして一定の年齢の姿で永遠に保存されるのです」

 当然のように言い放たれた内容に、俺は絶句してしまった。
以下略



6:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:28:13.27 ID:a+M0FpcZ0
「それでは、早速願いを申し付けて下さい」
「俺は・・・・・・」

 人間とは、醜い生物である。
 あんな話を聞いてもなお、願いという存在に惹かれ、叶えようとするものなのだから。
以下略



7:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:30:37.11 ID:a+M0FpcZ0
−−−

 俺、朝霧 陸人は、平凡な少年だった。
 勉強も運動も、よくも悪くもなくというか、特にこれといった長所も短所もなかった。
 そんな俺は、高翌嶺の花に恋をした。
以下略



8:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:32:55.73 ID:a+M0FpcZ0
−−−

「それじゃあ、一つ目は・・・・・・冬村さんが、俺のこと好きになるようにしてよ」

 俺が言うと、ランプの精は首を傾げた。
以下略



9:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:35:05.52 ID:a+M0FpcZ0
−−−

「冬村さん。何描いてるの?」
「ひゃっ・・・・・・えっと、朝霧君?どうしたの、急に・・・・・・?」

以下略



10:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:37:05.71 ID:a+M0FpcZ0
「うわ・・・すごい。上手いね」
「なんか、照れるな・・・・・・朝霧君に褒められると」
「いやぁ、ホントすごいって。良かったら、今度他にも見せてくれないかな?」
「え、でも、私の絵なんて・・・・・・」
「君の絵はすごいよッ!」
以下略



11:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:39:32.37 ID:a+M0FpcZ0
−−−

「いやぁ、君って本当に魔法が使えるんだね!」
「そうですけど・・・・・・どうしたんですか?今更」

以下略



12:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:41:38.79 ID:a+M0FpcZ0
 翌日。俺は上機嫌で学校に向かった。
 浮かれすぎて、鼻歌まで歌うほどに。
 学校に着くと、人だかりができていた。

「あれ、何かやってるのかな・・・・・・?」
以下略



13:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:43:22.08 ID:a+M0FpcZ0
 誰かがそう呟いたのが聴こえた。
 振り返ると、周りの皆が俺達、いや、俺を蔑むような目で見ていた。
 その時、1人の男子生徒が俺を睨みながら歩いてきていた。

「な、なんなんだよ・・・・・・」
以下略



14:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:48:02.68 ID:a+M0FpcZ0
 それから、俺たちはいじめを受けた。
 人殺しだと罵られ、物を隠され、殴られる。
 そんな毎日が、俺たちを待っていた。
 冬村さんは、それに耐えきれずに不登校になり、俺一人に皆の怒りが浴びせられた。

以下略



15:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:49:08.25 ID:a+M0FpcZ0
「な、にを・・・・・・」
「だから、やめさせるんですよ。いじめを。私の魔翌力があれば、いじめをしている人たちの命を奪うことも、学校の頂点に立つことも、世界を支配することも可能です」

 彼女はそう言って、微かに微笑む。
 たしかに、全ての頂点に立つという人生も悪くないかもしれない。
以下略



16:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:51:48.83 ID:a+M0FpcZ0
「戻りました」
「山村君とかは、生き返ったの・・・・・・?」
「はい。私があなたの願いを叶えたことは、なかったことになりました」
「本当に?」
「はい」
以下略



17:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:53:23.62 ID:a+M0FpcZ0
「・・・・・・」
「もう、疲れたんだよ。願いを叶えても、人は幸せにはなれない。だったら、願いを抱いたまま死ぬ方が、ずっと幸せだ」
「・・・・・・そうですか」
「あぁ。だから、ね?殺してよ。君の魔翌力で」
「分かりました」
以下略



18:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:54:20.82 ID:a+M0FpcZ0
「今回の人は、少し珍しいパターンでしたね。まさか、自分から死にたいと思うようになるとは」

 ランプの精は、棚の上に飾られていたランプを手に取り、埃を払う。
 そして、静かに部屋を出た。
 ランプを両手で持ったまま、彼女は空を見上げた。
以下略



19:名無しNIPPER
2016/03/15(火) 08:54:57.63 ID:a+M0FpcZ0
終わりです
読んでくれてありがとうございました


20:名無しNIPPER[sage]
2016/03/15(火) 23:28:55.14 ID:cKZiV5GPo
乙でした

というか欝でした!


21:名無しNIPPER[sage]
2016/03/18(金) 19:00:52.22 ID:i4hEirlYo
主人公的な奴と出会うまではこんな事を繰り返すんだろうな


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