1:名無しNIPPER[sage]
2016/04/06(水) 00:21:43.36 ID:IXgA3K/jo
屋上に昇って
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の続き
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:22:31.57 ID:IXgA3K/jo
◇
フェンスのそばには嵯峨野連理が、
屋上の入り口には嘉山孝之が、
3:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:23:03.40 ID:IXgA3K/jo
「時計だよ」と嵯峨野は言う。
「時間を見ていた」
4:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:23:29.05 ID:IXgA3K/jo
嵯峨野は、嘉山が原因だと思っている。そのことを、嘉山に隠そうとしている。
嘉山は、嵯峨野が原因だと思っている。そのことを、嵯峨野に隠そうとしている。
互いが互いを庇うために、真実を隠そうとしている。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:23:56.41 ID:IXgA3K/jo
部誌を燃やしたのは、俺だ。嵯峨野から、話も聞かされた。
彼が原稿を読んだどころに、居合わせもした。嘉山に告発を受けもした。
でも、彼らのこのやりとりは、既にそういう問題ではなくなってしまっている。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:25:06.86 ID:IXgA3K/jo
きっと、誰だってそうだ。
嘘をついて、やりすごして、ごまかして、
日々が壊れるのを、必死になって避けようとしている。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:25:33.89 ID:IXgA3K/jo
でも、それじゃあ、
嵯峨野葉羽の死は、どこかに置き去りだ。
その子の死は、嵯峨野にも嘉山にも、ただ厄介なだけの代物だ。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:26:10.26 ID:IXgA3K/jo
「なあ、連理兄」
だから俺は、嘉山が何かの覚悟をきめたように、そう声をあげたとき、少しだけほっとした。
9:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:27:09.21 ID:IXgA3K/jo
本当のことは、もう、誰にも分からないだろう。
嵯峨野葉羽が何を思い、川に近付いたのか。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:27:35.91 ID:IXgA3K/jo
「知らなかったな」
それから、ふたりとも黙り込んでしまった。
俺はぼんやり空を見た。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:28:02.10 ID:IXgA3K/jo
嘉山の表情に、混乱が兆した。
目に見えて何かが変わったというわけじゃない。
それでも、一瞬で、雰囲気ががらりと揺れ動いたのがわかる。
12:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:28:38.15 ID:IXgA3K/jo
めまいに襲われたように、嘉山のからだは揺らめきはじめる。
俺は声も出せずにその姿を見つめていた。
「あの日、葉羽は……」
13:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:29:08.24 ID:IXgA3K/jo
嵯峨野は、何かをあきらめるような顔をした。
「どうしてかは知らない」
14:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:29:38.12 ID:IXgA3K/jo
暴れるように、嵯峨野の体を、嘉山は押し続ける。興奮した様子で、頭をぐらぐらとさせながら。
嵯峨野は静かに、
15:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:30:13.18 ID:IXgA3K/jo
俺は思わず声をあげて、嵯峨野の体を持ち上げようとした。
引きずられるように、体が持っていかれる。
16:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:30:56.57 ID:IXgA3K/jo
◆[Remit as yet no Grace]
何もかもが遠く聞こえる。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:31:26.40 ID:IXgA3K/jo
――急に視界が開けた。
白っぽい光に目が灼ける。
物と物との境界線があいまいになった視界が、徐々に輪郭を取り戻す。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:31:54.85 ID:IXgA3K/jo
「どうしたんですか、タクミくん?」
子供の姿で首をかしげて、彼女は俺を見ている。
くりくりとしたいたいけな瞳が、俺の顔をすぐそばから見つめている。
19:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:32:21.56 ID:IXgA3K/jo
俺は、水の中から体を出した。
水着一枚の自分のからだは小さな子供そのもので、妙な心細さを覚える。
「休憩ですか?」
20:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:32:48.06 ID:IXgA3K/jo
どこか遠い、誰かのはしゃぎ声。
楽しそうな笑い声。
ウォータースライダーから、水に飛び込む音。
21:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:33:15.00 ID:IXgA3K/jo
「きらきらしてた」
俺の言葉に、るーは首を傾げた。
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