11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:50:08.47 ID:skFt6CMPo
「向こういったら、手紙、書くね」
ムギちゃんが言った。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:50:49.05 ID:skFt6CMPo
4
ひとりの天使が誰かの家をノックしていた。
りっちゃんたちと別れて、家までの最後の直線を早歩きであるいてたとき。
空には天国が浮かんでいる。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:51:37.96 ID:skFt6CMPo
さっきの天使が結局あの家を開けてもらえなかったんだろうか、わたしの方向に歩いてきた。
顔は右に75度曲がってて、腕はだらんと下に垂れ、背骨が折れてるんだろうかひどく猫背になっている。両足を背中側に投げ出して膝で進んでいるせいで、天使の衣装である長くて白い半透明のローブがずっと後ろから地面をひきずってついてくる。
新婦入場。じゃなきゃ、なめくじ。
珍しい光景じゃないけど実際ちょっとびびる。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:52:15.38 ID:skFt6CMPo
ふぅ、と息をついた。
わたしは天使からの贈り物を断れない。
優しいのだ。
猫が庭を荒らすから餌をやるなと言われてもお菓子をあげたり、鯉に餌をあげないでくださいと書いてあってもパンを投げる。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:52:45.46 ID:skFt6CMPo
5
夕ご飯のあとお父さんとお母さんは喧嘩をはじめた。
雨が降る前に黒雲が集まるように、天使が降る前に天国が現れるように、前々から兆候はあったのだ。
前は家族4人で夕ご飯を食べたりなんかはしなかった。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:53:25.79 ID:skFt6CMPo
そして、今日、たまたま庭に降ってきたおばあちゃん、つまりお母さんのお母さんを、お父さんが箒ではいて道に捨ててしまったことをきっかけに、こどもユニセフ的停戦状態も終わりを告げたようだった。
「なんであんなことをしたの?」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:53:55.31 ID:skFt6CMPo
TVはニュースを喋っている。
天気予報のコーナーになった。
『……天国はいまも近畿地方を中心に拡大を続けながら少しずつ北上中です。気象庁は、拡大の速度は緩やかな減衰傾向にあるため今後は収縮に向かうだろうという予測を示した上で、実際に今後どういった動きを見せるのかは調査中だと発表しました。また、フィリピン、韓国、中国の一部では、天使の目撃情報が現れていますが、十分な証拠が発見されないため、各国政府はいまのところこれらは宗教的な……』
わたしはとろろ醤油を白米にかけているところだった。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:54:58.38 ID:skFt6CMPo
「ざあざあざあね」
「え?」
19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:55:46.18 ID:skFt6CMPo
ざあざあざあ。
憂は洗い終わったお皿を水切りに並べていった。小さな水切りにはすでに乾いた食器が並んでいて、そこに今洗ったばかりの食器たちがうまい具合にあいだあいだに入ってきれいに積まれいていくのは、なんだか憂にしかわからない迷路をたどっているって感じだった。白い憂の秘密のお城みたいな。
きゅっ。
蛇口を閉じて、黄色いリラックマのタオルで水滴を拭ってから憂は言った。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:56:22.57 ID:skFt6CMPo
扉越しに金切り声が聞こえてきた。
天使たちの襲撃音がつつましやかに聞こえるくらい大きな騒音。
リビング・ワーはまだ続いている。
ヒステリーは幾何級数的に増大している。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:57:12.01 ID:skFt6CMPo
6
市民公園にはすでに天使が何人かいるようだった。
わたしはベンチに座ってて、その真向かいにある噴水のところにひとり。自販機の後ろの木立がときどき揺れるからたぶんそこにもいるだろう。
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