過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
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954: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:24:58.51 ID:S6YpyFGu0
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12月の24日というのはただの平日である。
その日が来たからと言って、仕事が休みになるわけでもないし、ノスフェラトゥが大量に発生するといったことが起こるわけでもない。
 朝から寒さに震えながらも、人々は己の生活をいつも通りに始める。そんな普通の日なのである。そんな普通の日、朝から暗夜王国の各地で不思議な出来事が起きていた。
以下略



955: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:26:14.42 ID:S6YpyFGu0
 例の赤い集団はこの時期、すべての人に平等に資源を惜しみなく渡していたのだそうだ。それは貴族であろうと貧困街の者たちであろうと平等に、である。つまり赤服の彼らは良いことをしていたのだという。だからマークスは思ったのだ。1年の終わり、そういった催しがあってもよいではないかと。その結果、この催しが企画され実行されるに至った。
 そしてマークスは赤が似合うだろう人物を考え、その人物としてルーナが思い浮かんだのだという。そう、完全に巻き込まれただけであった。
 白夜から取り寄せた薄い布生地のおかげで生足は防げているものの、この格好は何とも言えないものがあった。多くの男性たちはマークス王の趣味に涙を流していたが、女性たちからの視線はいささか冷たいものである。しかもその冷たい視線は一緒に仕事をする男たちに向けられていることから、マークス王の狡猾さが伺えた。

「……はぁ」
以下略



956: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:28:27.00 ID:S6YpyFGu0
「うわっ、ピ、ピエリ。いきなりなによ!!!」
「ん、ルーナどうしたの? 箱の中、何か変な物でも入ってるの?」

 ルーナが閉じた箱を指差すピエリがそこにいた。同じように赤い上着に赤いスカート、薄地の赤い靴下、頭に乗せた赤い帽子は彼女がピョンピョンと動く度に軽やかに揺れる。どう見ても楽しんでいる子供そのもので、その能天気さをルーナはとてもうらやましく思う。

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957: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:30:18.91 ID:S6YpyFGu0
 ルーナが属するグループが行うのはこの中央広場周辺、すでに人々が垣根のよう集まり様子を伺っていた。誰もがあの箱の中身が気になっているといった具合である。

「箱の中身、みんな気になってるみたいなの」
「話を聞いてなかったら、気になるわ。それにあたしたち、絶対怪しい集団にしか見えてないだろうし」
「えへへ、でも、みんな喜んでくれたらうれしいの」
以下略



958: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:31:35.78 ID:S6YpyFGu0
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 ケーキの配布は順調に進み、残りの数もあとわずかほどになる。
 ピエリ監修ベリーケーキも残りが少なくなってくるにつれて、イベントそのものの終わりが近いことがわかり始めてくる。

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959: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:33:49.67 ID:S6YpyFGu0
(……どうしよう。これはちょっとあれよね……)

 無地の物とはいざ知らず、二色に挑戦した故だった。
 でも、ここまできてやり直すというわけにもいかない、なにせ今日は12月24日で、あげる相手の誕生日なのだから。

以下略



960: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:34:56.17 ID:S6YpyFGu0
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「ルーナ、遅かったの。ピエリの勝ちなのよ」

 蟠りが残った足で撤収を終えて戻ってくるとすぐにルーナを見つけてピエリが駆け寄ってくる。ルーナよりも早く撤収準備を終え、広場で待っていたピエリは満足そうに駆け寄り、勝負が自分の勝ちだと嬉しそうに告げた。
以下略



961: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:36:29.76 ID:S6YpyFGu0
 そうしてピエリはてくてくと先を歩み始める。ルーナが付いてきてくれると確信して後ろを振り返ることもなく。そこには幼い思考特有の信頼があった。きちんと見てくれているという無邪気な思考、それをルーナは裏切れなかった。着替える事無くピエリの後を追いかけて、横に並ぶとピエリは嬉しそうに肩を寄せた。
 二人で歩く街路はどこか寒々しいけど、多くの家々に灯る明かりが照らしてくれているから視覚的には暖かかった。
その暖かさと比例するように隣にあるこの世界の繋がりが近くにあればあるほど、不安がルーナを包み込んでいく。考えなければいいことを考えてしまったと後悔しても、そう簡単に拭えない、それを拭うようにピエリの肩に肩を摺り寄せた。

「はぁ、息が真っ白なの。はぁ〜はぁ〜、えへへ、見てなの。ピエリの息、モコモコ雲みたいで面白いの」
以下略



962: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:38:28.65 ID:S6YpyFGu0
「ぶー、ルーナ、やっぱりおかしいの」
「そんなこと……」
「だってルーナ、ピエリの話真面目に聞いてないの。何か考え事してるの……。何か困ってるなら話をしてほしいのよ。ピエリ、ルーナのお話なら聞いてあげられるの」

 ピエリが右腕に絡みついて上目遣いに聞いてくる。どこでそういうのを覚えるのかわからないけど、同性相手に使うものじゃないとルーナは内心笑った。
以下略



963: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/12/24(土) 12:39:30.05 ID:S6YpyFGu0
 ルーナは知っているから、親は誰しも子供に死んでもらいたくなどないのだと。少なくとも、ピエリはその中に入っているのだと。一緒にお出かけして服を買って、綺麗になる方法を色々と考えて、そして気づけばルーナとピエリの距離はこれほどに近くなっていた。
 だから、その上目遣いの視線も含めてピエリに負けてしまったのかもしれない。ルーナの足は止まってしまった。

「……ねぇ、ピエリ」

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