16:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:30:11.42 ID:BFmKl9Djo
わたしはその言葉を聞き流しながら、いくつかのことを思い出した。
母さんのこと、叔父のこと、妹のこと。そのどれもがなんだか遠い。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:31:33.72 ID:BFmKl9Djo
「……どうしてなんだろう?」
思わず、そう声をあげたとき、ケイくんが不可解そうにこちらを見た気がした。
わたしは彼の方を見ていなかったから、彼の視線がどこに向かっていたかは、本当のところ分からなかったけど。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:32:28.47 ID:BFmKl9Djo
「本人に聞けよ」
「だって、もう死んじゃったし」
19:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:34:06.36 ID:BFmKl9Djo
それでも五分もしてしまえば、泣き続けるのにも疲れてくる。
尽きない悲しみがあったとしても、それをずっと貫けるほど肉体は付き合いがよくない。
彼は気を遣わないわけじゃない。
20:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:34:58.39 ID:BFmKl9Djo
「それ、どんな話?」
わたしは、ただのくだらない噂か何かなんだろうと、そう分かっていたのに、
どうしてか変に気になって、思わず聞き返してしまった。
21:名無しNIPPER[sage]
2016/07/04(月) 00:35:28.31 ID:qZtjRuTp0
なんかいいな
この2000年代前半のジュブナイル小説みたいな感じ
22:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:36:45.18 ID:BFmKl9Djo
「……隣の市に、遊園地の廃墟があるの、知ってる?」
「あの、心霊スポットとかっていう?」
23:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:38:38.60 ID:BFmKl9Djo
ケイくんが舌打ちをする。わたしの頭のなかを、いくつかの景色が過ぎる。
無性に走り出したいような気持ちになる。何かを叫びたいような。でも、何を叫びたいのかなんて自分じゃ分からない。
「……雨だな。戻るか」
24:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:39:38.36 ID:BFmKl9Djo
「ちょっとした、暇つぶしっていうか、儀式っていうか、ただの肝試しでもいいんだけど、何かしたい気分なんだ」
「……探検?」
25:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:41:18.46 ID:BFmKl9Djo
とにかく、その場所に行ってみたいと思った。
なにもないなら、なにもないことを確認したい。
なにかあるなら、それがなんなのか知りたい。
26: ◆1t9LRTPWKRYF[saga]
2016/07/04(月) 00:41:52.46 ID:BFmKl9Djo
つづく
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