5:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:17:38.77 ID:BFmKl9Djo
わたしは通帳の数字から目を離して、自分の湯のみに口をつけて、ずずっと緑茶をすする。
「どうして、わたし名義でこんなお金が?」
6:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:18:11.75 ID:BFmKl9Djo
そんな生活でどうやったら金がない状態になるのか、と、
わたしはちょっと呆れていたんだけど、蓋を開けてみたらこういうことだ。
どういうことだ。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:19:28.35 ID:BFmKl9Djo
◇
そういうわけで、自由にできる七桁の財を大いなる驚きとともに得て、
そのお金で最初にわたしが最初にしたことはといえば、高校の屋上でサボり仲間に缶コーヒーをおごることだった。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:21:29.48 ID:BFmKl9Djo
「声に出さないとわかりません」
「感情表現が苦手なんだよね」
9:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:22:26.92 ID:BFmKl9Djo
ケイくんはまたバカにするみたいに笑った。
べつにわたしだって、どうしても彼にお礼を言ってほしいわけではなかった。
ただどうでもいい思いつきをぺらぺらと並べてみただけだ。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:24:35.96 ID:BFmKl9Djo
うちの学校の屋上は開放されていない。
生徒はもちろん教師でさえ必要に駆られたときにしか出入りできない。
というのも、開放してしまうと当然危ないし、くわえて人目につかないのをいいことに、
11:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:25:23.39 ID:BFmKl9Djo
咎めはするものの、彼に喫煙癖があろうと飲酒癖があろうと本心ではどうでもいいし、
彼の肺が何色をしていようとわたしの肺とは関係ない。
むしろ彼が煙草に火をつけて、その煙をたっぷりと吸い込んで、
12:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:27:13.17 ID:BFmKl9Djo
ケイくんは煙草の灰を空き缶の縁で落とすと、足元にその灰皿を置いた。
「ゴミ収集の人が困るよ」
13:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:27:51.19 ID:BFmKl9Djo
「……だけど?」
言葉に詰まったわたしを見て、ケイくんは続きを促したけど、わたしは何も言わずに、かわりに景色を眺めた。
14:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:28:19.04 ID:BFmKl9Djo
「ね、一本ちょうだい」
「いやだよ」
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