過去ログ - 赤星小梅「びしょぬれの記憶」
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1: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:19:38.08 ID:z6mFNZbg0


 ザーザー、ボタボタ、バシャバシャ

黒く重たい雲が空からたれていた。

茶色の雨が私の体を打つ。

山に降り注いだ雨は濁流の川となった。

今日は絶好の試合日和とは言いがたい。

しかし私たちはどんなとき、どんな場所でも前進することをやめない。

私のティーガーはもろく危険な崖の上でも果敢に駆けることができるのだ。


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2: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:23:03.75 ID:z6mFNZbg0

「車長!がけ崩れでこれ以上進めません!」

決断を求められる瞬間はいつでも緊張が走る。

以下略



3: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:26:05.95 ID:z6mFNZbg0

「発射!」

車体が揺れる。煙と共に薬きょうが吐き出された。

以下略



4: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:29:56.30 ID:z6mFNZbg0

土砂はティーガーを飲み込み、がけ下の川へと押し流した。

「操縦不能!」

以下略



5: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:32:52.32 ID:z6mFNZbg0

「小梅!」

私が振り返ると、雨の中で八九式中戦車がとまっているのが見えた。

以下略



6: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:35:31.12 ID:z6mFNZbg0

「もうびしょぬれじゃない。かさはどうしたの?」

「あれ?……なくした!」

以下略



7: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:37:51.80 ID:z6mFNZbg0

母がバッグからハンカチを取り出して私の頭をごしごしと拭いた。

「ねぇねぇお母さん!」

以下略



8: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:52:38.75 ID:z6mFNZbg0

「お母さん!私もチロ!運転したい!」

「はいはい。お母さんのひざの上来る?」

以下略



9: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 12:54:36.98 ID:z6mFNZbg0

あの頃の私はドイツ戦車の大ファンで、お気に入りはティーガーだった。

しかしお母さんの八九式だけは日本戦車だけど特別だ。

以下略



10: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 13:03:33.12 ID:z6mFNZbg0

「なんで泣く人が立派なの?」

「ほら小梅、次の交差点を右に曲がるわよ」

以下略



11: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 13:49:14.98 ID:z6mFNZbg0

 ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ、

いやだ、こんな音は聞きたくない。

以下略



12: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 13:52:30.00 ID:z6mFNZbg0

「小梅ちゃん!」

浸水を警告するアラームが鳴り続けていた。

以下略



13: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 13:55:23.55 ID:z6mFNZbg0

岸はほんの数メートル先に見えていた。

しかしそれは、そうあってほしいと願う私が見た幻だった。

以下略



14: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 13:59:06.40 ID:z6mFNZbg0

怪物が牙の生えた大きな口で私たちの戦車を噛み砕こうとしている。

鋼鉄の車体など簡単に引きちぎってやるぞと、何度も上下にゆさぶってくる

以下略



15: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:00:38.31 ID:z6mFNZbg0

「外に逃げないと!」

「だれか助けて!だれかぁっ!」

以下略



16: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:02:14.42 ID:z6mFNZbg0

計器と照明の灯りがすべて消えた。

鳴り続けていたアラームが消えた。

以下略



17: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:04:47.90 ID:z6mFNZbg0

蛇口から出る水の音だ。

ひねり出た水がばたばたとコンクリートに打ちつけられた。

以下略



18: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:06:55.35 ID:z6mFNZbg0

黒森峰には戦車道が目的の人間が大勢集まる。

経験者というアドバンテージはここでは全く価値をなさない。

以下略



19: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:08:56.20 ID:z6mFNZbg0

「ああ、こっちこそごめん」

しかしよくよく見るとそれは私たちの副隊長の姿だった。

以下略



20: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:14:43.62 ID:z6mFNZbg0

「いいえ、副隊長に馴れ馴れしくするなんてできません」

私がそう言うと彼女は少し悲しそうな表情で小さなため息をついた。

以下略



21: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:16:47.43 ID:z6mFNZbg0

「さすがは副隊長です。明日は私たちの分まで頑張ってください」

「うん、ありがとう!」

以下略



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