2:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 11:56:15.46 ID:8FgqKKs3O
「あの、ちょっといいですか?」
私、新田美波が初めて彼、プロデューサーさんに声をかけられたのは大学に入学して間もない頃だった。
まだ右も左もわからず、希望と不安をない交ぜにしつつ勉学に励んでいた私は漠然と生きている自覚があった。
だけど、それをどうにかする術を知らなかった。
3:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 11:58:01.18 ID:8FgqKKs3O
「今、貴女は目指すべきものはありますか?」
心臓を貫かれた思いだった。
動揺が伝わったのか、プロデューサーさんは畳み掛けるように言った。
4:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 11:59:36.99 ID:8FgqKKs3O
それから私の日々は一変した。
幸い両親は私が流されたのではなく、自身の意志によってその道に進むというのであれば反対はしないとアイドルになることを許してくれた。
運動をこなしているとはいえ慣れないダンスレッスンは全身の筋肉に悲鳴をあげさせ、ボーカルレッスンはうまくいかず悩む日々だった。
それでもビジュアルレッスンに比べればできている方だった。どうしても表現というのがうまくできなかった。
うまくやっているつもりでも飛んでくるのはトレーナーさんの叱咤のみ。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:01:12.71 ID:8FgqKKs3O
「いえ、その大丈夫です!」
「そうですか。気のせいならいいんですけど、何かあったら言ってくださいね」
私は咄嗟に誤魔化した。この程度のことでプロデューサーさんの手を煩わせてはいけない。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:02:56.34 ID:8FgqKKs3O
シンデレラプロダクション。それが私がスカウトされ所属した芸能事務所だ。
結構大きな事務所で多くのアイドルを輩出している。
私の担当のプロデューサーは若手で、私が初めてのスカウトだったらしい。
「お、お疲れ様です」
7:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:04:30.89 ID:8FgqKKs3O
「大丈夫ですか菜々さん?」
「み、美波さん、ナナの方が年下なんだしさん付けはちょっと……」
「いえ、でも芸能界の先輩ですし……」
8:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:05:36.39 ID:8FgqKKs3O
大学とアイドルを両立し始めて2ヶ月ほど経った。
ダンスレッスンとボーカルレッスンは進歩が見えてきたが、ビジュアルレッスンだけはどうしてもダメだった。
「まあ誰しも苦手なことはあります。少しずつ克服していきましょう」
9:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:06:34.20 ID:8FgqKKs3O
プロデューサーの許可を得た私は事務所内にあるレッスンルームへと向かった。
「何が悪かったのか。まずは反省点を挙げてそこを改善していかなきゃ」
今まで悪いと思ったところは全てノートに認めていた。ボーカルやダンスはそれで少しずつ向上していったが、ビジュアルはどうしてもうまくいかない。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:07:42.74 ID:8FgqKKs3O
「あれ? そういえば美波ちゃん、今日はトレーナーさんのところでレッスンして来たんじゃなかったんですか?」
「え? ええ、今日は一日トレーナーレッスンだったんですけど、どうしても納得いかなくてプロデューサーさんに我侭言って1時間だけ自主レッスンに来たんです」
「そう、ですか……では一緒にやりませんか? 二人でやった方がきっと捗ると思いますし」
11:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:08:40.22 ID:8FgqKKs3O
レッスンルームを出て、プロデューサーさんとちひろさんに挨拶をした後、私は菜々ちゃんととある喫茶店に来ていた。
「おかえりなさいませお嬢様!」
「ここは?」
12:名無しNIPPER[saga]
2016/07/27(水) 12:09:39.14 ID:8FgqKKs3O
「じゃあ来て下さ―い!」
メインだった子が呼びかけると奥から
「ナっナで〜す! みんな久しぶり〜! ウサミン星より出張してきましたよ!」
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