過去ログ - いろ鬼 (オリジナル百合)
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1: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/05(日) 23:45:48.14 ID:WgPPHdt80
何があっても大丈夫な人向け百合
勢いのまま





『いろ鬼』という遊びがある。
鬼ごっこの一種みたいなものだ。まず、鬼役は色を一つ決める。他の参加者は、その色を探し出して、
その色の何かに触れていれば捕まらない。触れていない人は、永遠に追いかけっこ。
みんな、誰かの服にタッチする。でも、私だけ例外。原因は、服の色が男っぽいから。
言うなれば、地味。カッコよく言えば、アースカラー。
鬼が選ぶ色は赤とかオレンジとかで、私はいつもかやの外。
一緒に遊ぶ女の子達が好きそうな色の服を、私は持っていなかった。


私、当時、5歳の時の事。
とあるショッピングモールで衣料品を見ていた時だ。
可愛い服達が積み重なったバベルの塔に、一瞥をくれる。
母親が手を引いて、その塔に足を踏みいれさせようとしている。
スカートもワンピースも、柔らかそうで甘そうで、私をクラクラとさせた。

「ミラちゃん、おいで」

子どもながらに、自分にはピンク色が似合うと思っていた。
しわがれた手が私に差し出したのは紫のイモ臭いジャージみたいなスカート。
よりにもよって、なんでこれなの。

「やッ」

それはペシンと払いのける。
母親は困ったように笑った。
じゃあ、何がいいの? と顔を傾げる。
ピンクよ! ピンク!
どうして分かってくれないの。
私は群がる女子児童達をかいくぐり、ピンクのワンピースを引っ掴んで、

「これ」

と、母親に見せた。
すると、

「え、全然似合ってない。やめなさい、やめなさい。あんたには、やっぱり地味な方が似合うわ」

私の中の少女像が、がらがらと音を立てて崩れ落ちたような気がした。

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2:名無しNIPPER[sage]
2017/03/05(日) 23:56:29.90 ID:mSLRsjU50
みてるぞ


3: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/06(月) 00:03:28.05 ID:f1fi0tX60
あの日から、可愛いものは可愛い人が着るべきだと思うようになった。
そして、それを見ることも一種癒しだと感じるようにもなった。
高校生になり、より一層、頑なに、意固地に、分厚く、もはや自分ではどうしようもないくらい、異常に。
私は女の子ではなくなった。

以下略



4: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/06(月) 00:13:05.27 ID:f1fi0tX60
残念ながら、担任にも女の子扱いされていないらしい。

「で、見返りは?」

「委員長なんだから、ノーギャラでしょお?」
以下略



5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/06(月) 00:13:48.09 ID:f1fi0tX60
>>2
ありがと^^


6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/06(月) 00:21:02.54 ID:f1fi0tX60
担任が私を選んだもう一つの理由が判明した。
同じマンションの住人だった。
だけど、引きこもりの男の子の話なんて聞いたことない。
噂になりそうなものだけど。
放課後、制服のまま行くのもはばかられたので、いったん部屋に戻って私服に着替えた。
以下略



7: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/06(月) 00:32:31.33 ID:f1fi0tX60
タバコ臭い爆音量のあの建物は、未だに大嫌いな場所の一つ。
父さんはストレスが溜まるといつもパチンコ屋でお金をすっていた。
会社からある日電話がかかってきて、ついに母さんにばれた瞬間。
母さんは父さんの顔面を、思いっ切り殴った。

以下略



8: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/06(月) 00:34:04.76 ID:f1fi0tX60
今日はここまで。
寝ます。


9:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 00:49:14.84 ID:MU8nXoJI0
今日は来ないのかな?


10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 14:30:53.24 ID:ibuo0eth0
閉ざされている扉のドアスコープにぎりぎり確認できる位置で立つ。
あちらからは見えるという状況があまり好きじゃない。
というか見られているという感覚が単純に苦手。
ロックが外されて、中から男の子が出て来た。
背丈は私よりもうんと小さい。可愛らしい。
以下略



11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 14:45:14.25 ID:ibuo0eth0
「あ、えっとここには僕一人しか住んでないって意味で」

どういうことなの。

「それは、ご両親とかご兄弟とかもいないってこと?」
以下略



12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 14:55:40.79 ID:ibuo0eth0
ずり落ちかけた眼鏡を戻して、私は涙を拭く。
彼の紅葉のような手を握りしめようと手が勝手に伸びていたので自制。
落ち着いて。今、ここで彼に危険人物と思われたら、一生お近づきできなくなる。

「せっかくプリント届けてもらったから、良ければ飲み物でもどう?」
以下略



13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 15:20:51.90 ID:ibuo0eth0
部屋に入ると、一人では広すぎるんじゃないかと突っ込みたくなるくらい簡素だった。
ソファに座り、じわりと噴き出した汗を手のひらで拭って、私は彼の持ってきてくれた紅茶に口づける。

「あ、お菓子もあるからね」

以下略



14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 16:04:01.47 ID:ibuo0eth0
なんでだろう。
この子が言うと、本当にそんな気さえしてしまう。
そんな訳がないのに。
けど、こんな風に人に優しい彼がどうして閉じこもっているんだろうか。
特に、彼の性格に問題があるようにも思えない。
以下略



15: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 16:06:02.97 ID:ibuo0eth0
いったんここまで


16: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 21:29:16.73 ID:ArEOG84Z0
それが彼との最初の出会い。
次の日。高校の正門の前で、

「やあやあ、ミラちゃんおはよう」

以下略



17: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 21:39:14.51 ID:ArEOG84Z0
少し驚いて、先生の話に耳が傾いた。
先生やっと話を聞いてくれると思ったのか、

「彼、とっても愛らしい容姿だっただろ? 周囲からね、その、色々あるんだなあこれが」

以下略



18: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 21:55:03.05 ID:ArEOG84Z0
1限目、クラスメイトの一人が遅刻したので、遅刻届を提出するように促さなければならなかった。
斜め隣の席にいたので、懇切丁寧に紙にしたためて放り投げてやった。
そいつは、紙を開いて、坊主頭をぐるぐる回し、私と目が合うや、『めんどくさい』と口パクで教えてくれた。
私は切れ気味に、舌打ちして、前の席の男子生徒の椅子を蹴り上げる。

以下略



19: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 22:14:05.91 ID:ArEOG84Z0
3限目前の小休憩。

「おい、宿題やったか?」

「やってねえよ」
以下略



20: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 22:21:28.23 ID:ArEOG84Z0
もう一度『いや』とお伝えした。

「あ、あー、そっか、はいはいはーい、ごめんねー」

なんだ、それ。
以下略



21: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 22:44:19.87 ID:ArEOG84Z0
どこまでも、可愛くない生き物。
そして、醜くて、どんな色も私を着飾ってはくれない。
自分に一番似合う色なんて、この世にはない。
探したって見つけられない。
いつまでも、逃げ続けるのも窮屈な生き方。
以下略



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