過去ログ - 片桐早苗「あたしだけの特効薬」
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:14:46.61 ID:2xfEaWy9O
 片桐早苗は今、へとへとにくたびれていた。厳しいダンスレッスンは彼女の身体へ重い負担を乗せていた。
 それもそのはず。まだ若いとは言っているが、なんだかんだもうすぐで三十歳に手が届いてしまう年齢なのだ。いつまでも身体が本当に若いころのようについてくるわけがない。

「大丈夫ですかー」

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:15:30.10 ID:2xfEaWy9O
「はあ、はあ、大丈夫大丈夫、ありがとうね雫ちゃん、ユッコちゃん」

 しばらく息を整え、ゆっくり深呼吸をする。全身の筋肉をほぐす意味でも軽くストレッチをした。確かに辛い。だが、若い者にまだまだ負けたくないというのと、自身が年寄りになっていっているのを認めたくないのと、そして何より、早苗の身体能力のせいで二人の足を引っ張りたくないという思いからなけなしの体力を引っ張り出す。

「さあて、練習再開よ!」
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:16:05.62 ID:2xfEaWy9O
「……はっ! はっ!」

「片桐! テンポが遅れてるぞ! 及川! お前もだ! 堀! 先走り過ぎるな!」

 トレーナーからの叱咤が飛ぶ。しかし早苗たちは腐らず返事をし、指摘点を修正していく。もうライブまで日がなくなってきていた。落ち込む時間すら惜しい。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:16:36.12 ID:2xfEaWy9O
 テンプレートともいうべきレッスン後の諸注意を言い終えると、トレーナーはレッスンルームから退室した。それを確認してから三人はその場でへたり込んだ。

「も、もうダメ……動けない……」

「私も疲れましたー」
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:17:19.04 ID:2xfEaWy9O
 誰よりも倒れ伏したいと思っているであろう早苗が立ち上がり、二人に声をかける。体力があるからではもちろんない。身体は二人以上に悲鳴を上げている。これは矜持だ。年長者としての矜持が二人を引っ張ろうと体に鞭を打ち、リーダーとしての責務を果たす。
 とはいえ、普段のラジオやら打ち上げやらで迷惑をかけているため、こういうところでは面目躍如の働きをしておかないとという打算もある。

 シャワーを浴びる中で少し体力を回復させていく。汗と一緒に疲れも軽く落ちているような気分だ。肩を軽く回すと血行が悪かったのか幾分か凝りが解れた感覚がある。
 怒涛の日々だった。今日に至るまで大きく人生の舵がきられた。後悔はない。そうと決めたのは他でもない、早苗自身なのだから。ただ、未来への不安がないかというと、それは当然のごとく心に渦巻いていた。いつまであたしはアイドルでいられるのだろうか。常に早苗は自問していた。答えは、出ない。
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:17:51.17 ID:2xfEaWy9O
「それやっぱりやりたくなっちゃうわよねえ」

 早苗は自身に付いている水滴を拭き取り、着替えを始めた。疲れから動作が遅く、思うように手足が動かない。頭の中ではもっと早く動かそうとしているのだが、どこかで動かすのが億劫だという早苗がいた。それでも何とか手足を動かし続ける。

「やあっと着替え終わった。疲れた……」
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:18:31.79 ID:2xfEaWy9O
「あ、おつかれさん」

 外にはワゴン車が停車しており、運転席には我らが事務所一腕利きのプロデューサーがいた。

「お疲れ様ですー」
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:19:15.45 ID:2xfEaWy9O
「どうだった? 追い込みきつかっただろ?」

 だけど、プロデューサーは辛さを決して面には出さない。そんな顔をしている暇があればアイドルたちのために仕事をもっと持って来ようとする。そんなプロデューサーだった。

「ほんとよー。身体中ガッタガタ。歩くのも億劫だったわよ」
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:19:42.56 ID:2xfEaWy9O
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「はーい、そこの車両止まりなさーい」
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:20:10.60 ID:2xfEaWy9O
「何でしょうか? じゃないでしょう。あなた、ここ一通なのに逆走してるんだから捕まえるの当たり前でしょ」

「うぇえ? そうなんですか! すすす、すみません! すぐに移動します!!」

 まあ、ここは住宅街に入るところで、平日昼間である今はほとんど車通りの無い道だし、緊急性があるわけでもなかった。とりあえず運転手には落ち着いて現状を把握してもらい、速やかに移動してもらえれば良かった。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2017/03/07(火) 23:20:46.17 ID:2xfEaWy9O
 免許を提示してもらうと、軽く驚きの声が漏れてしまった。アラフォーだと思っていた相手が実は自分より年下だったのだ。人は見た目に寄らないとは真実なのだと早苗は思った。
 それはそれとして、交通違反の手続きやらを行っていると、男が早苗へ熱心に視線を向けていることに気付いた。

「あ、あの、なんでしょうか?」

以下略



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