819:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:36:36.94 ID:HHfyV3AE0
それを求めた。無意識のうちに。
でも、自分のことですら満足にできなくなってしまった俺が、誰かを助けてあげられるだけの力を有しているとは到底思えなかった。
たまたま人よりも力を持っていたからそういう人が寄ってきただけで、その力が弱くなれば、俺のことを頼る人なんてどこにもいなくなる。
820:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:37:20.08 ID:HHfyV3AE0
目を開けると、唇はすでに離れていた。そういう感覚も、頭から抜け落ちてしまっていた。
奈雨は心配するように俺の顔を覗き込む。
ひょっとしたら、結構な時間ぼうっとしていたのかもしれない。
821:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:38:08.35 ID:HHfyV3AE0
こういうことを言えば、彼女の方から離れてくれる。
それを願った。また押し付けようとした。
822:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:38:46.97 ID:HHfyV3AE0
耳朶を打つ蕩けた声にのまれて、ベッドに彼女を押し倒してしまった。
我慢しようとした。けれど、身体が言うことを聞いてくれなかった。
彼女は一瞬だけ怯んだ顔をして、すぐにいつものようにえへへとはにかむ。
823:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:39:39.00 ID:HHfyV3AE0
このままでは駄目だ、と思う。
そういう対象として彼女を見ることができる。というか見ている。それは否定しない。勢いに任せてしまってもいいと思う気持ちもなくはない。
824:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:40:10.08 ID:HHfyV3AE0
ふるふると首を振りながら請い願うような言い方に、優しい声音で諭そうとしたけれど、
「離せって言ってるだろ!」
825:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:40:43.65 ID:HHfyV3AE0
きっと彼女は俺が何を言ったとしても許してくれる。受け入れてくれる。仮にここで彼女のなすがままに身体を求めたとしても、きっと応じてくれる。
そうなってしまったら、歯止めが効かなくなるのは目に見えている。彼女を際限なく求めて、彼女を困らせて、最後には嫌われてしまうのではないか。
そして何よりも、
826:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:41:14.83 ID:HHfyV3AE0
「そんなことあるんだよ」
言いながら手を振りはらうと寂しそうな吐息が聞こえてくる。俺は聞こえていない振りをする。
827:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:41:53.89 ID:HHfyV3AE0
「なら俺が悪いのかよ! 人より出来ることがそんなに偉いのかよ! 黙ってればいい子なのかよ! 何も言わなければ好き放題言っても許されるって思ってんのかよ!
自分の負担を俺に押し付けて好き勝手に振る舞って、最後に謝ればそれで許してもらえるって思ってんのかよ!」
こんなふうに怒鳴り散らしたら、彼女に幻滅されるかもしれない。
828:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:43:01.99 ID:HHfyV3AE0
誰も頼んでないのに、ただの兄妹ってだけなのに、俺とあいつは違うのに。
兄妹だと知ったら、みんなは二言目にはあいつの話をする。あいつを褒め称えて、俺は頷いて笑みを返す。
そうするしかないのに、勝手に調子付かれてしまって、三言目にはいつも決まった言葉を掛けられる。
829:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:44:02.31 ID:HHfyV3AE0
視界がまたしてもぼやける。佑希としていることが変わらないということはわかっていた。
奈雨に対してだけはこういうことをしてはいけないとも思っていた。困らせたくないって、それだけを思っていた。
「お兄ちゃん、ぎゅっとするね」
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