宮本フレデリカは如何にしてこの世を去ったのか
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32: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:42:08.99 ID:p0TmPlc30
画面に映った映像に、聴衆はどよめいた。
映し出されたものは、論文や実験映像などではなく……
中年男性と若い女性の情事であった。
男は赤らんだ顔を青くし、キーボードを叩く。
だがどういった事か変化はない。
33: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:43:39.52 ID:p0TmPlc30
男は証拠写真を完璧に隠していた。口止めも抜かりはなかった。
実刑判決を受けることはなかったが、当然職を辞する事となった。
ある日の夜、男は元勤務先の大学に忍び込んだ。
目的は当然、自分を陥れたに違いない『彼女』に復讐する為、個人情報を得る為だった。
男は大学に入り込む事には成功した。だが肝心の彼女のデータが見つからない。
34: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:44:37.68 ID:p0TmPlc30
その時、男の頭の中でキーンと音がした。
男は彼女以外の事は一切考えていなかった。
なのに、どういう訳か、全く違う女性の顔が思い浮かんだ。
以前東京へ行った時、イベントか何かでちらりと見かけた女性の顔を。
女性はアイドルだった。端正な顔立ちだったため印象には残っていたが、
35: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:47:55.75 ID:p0TmPlc30
「どうやって見つけ出したか、か?」
男は志希を見下ろし、語りかけた。
「さあな、理屈は分からない。難問を前に、『解』だけを渡されたんだ」
36: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:48:34.71 ID:p0TmPlc30
彼女は僅かに顔を横に振る。
それを見て男は更に嬉しそうに語り続ける。
「違わない。お前が俺を陥れたからこうなったんだ」
37: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:49:09.83 ID:p0TmPlc30
彼女は男の養子になる事を笑って承諾した。
その時彼女の胸にあった感情はなんだろうか。
安堵ではない。不安とも違う。感謝、焦燥、恐怖いずれでもない。
絶望だった。深い深い絶望に彼女は包まれていた。
生まれて初めてのその感情に視界は灰色に歪み、手足は震え、頭はまるで動かない。
38: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:50:19.72 ID:p0TmPlc30
彼女は誰をも愛し、誰からも愛される人だから。
誰よりも優しくて、誰よりも人の事を考えて…
誰よりも、楽しそうに笑っている。
だから、彼女は一人で泣いていた。
39: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:52:05.31 ID:p0TmPlc30
蒸し暑い日の夕方、一人の女性が路地を歩く。
彼女の名前は「一ノ瀬志希」。そう呼ばれていた。
つまらなそうな顔で曇天を見上げてスンスンと鼻を鳴らし、
雨の匂いを感じた彼女はどこかの喫茶店にでも避難しようと考えていた。
ポケットに手を突っ込み、ぼーっと歩いていた時。
40: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:52:51.08 ID:p0TmPlc30
「いい子だね〜」
フレデリカは無表情で髪を拭く志希を見る。
「名前はなんていうの?」
41: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:53:36.15 ID:p0TmPlc30
運ばれてきたパンケーキにナイフを入れる。
歪な形にカットしたその一片を口の中に入れる。
それまで面白くなさそうに仏頂面を浮かべていた志希だったが、
そのパンケーキの美味しさに思わず顔を綻ばせた。
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