6: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:11:52.91 ID:p0TmPlc30
その不可解な事件はメディアに取り上げられた。
怨恨からの殺人事件と考えたマスコミは、彼女の短期大学で取材をした。
彼女はとても人気のある女性だったという。
美しい金髪に整った目鼻立ちという外見はもちろん、
人の心に潜り込むようなフレンドリーな性格で男女問わず好かれ、嫉妬の対象にすらならなかった。
7: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:12:45.76 ID:p0TmPlc30
「はぁっ……ふっ……」
薄暗い部屋で女性が喘ぐ。悪夢にうなされているようだ。
酸素を求め金魚のように口を動かし、額には脂汗が滲んでいる。
8: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:14:22.14 ID:p0TmPlc30
待ち合わせ場所は喫茶店最寄りの駅前。
約束の時間から数分遅れ、志希は到着した。
「おはよー、待ったー?」
9: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:15:00.51 ID:p0TmPlc30
和気藹々と話しながら二人は切符を買って電車に乗った。
平日の朝とはいえ、ラッシュを過ぎた絶妙な時間で二人は難なく席に座ることができた。
志希はリュックを抱え、隣に座るフレデリカを横目で見つめる。
彼女は窓の外で流れる景色を眺めていた。
10: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:16:00.75 ID:p0TmPlc30
「友達とお出かけなんていつぶりかなー?」
フレデリカは外に視線を戻す。
11: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:16:38.47 ID:p0TmPlc30
志希は優しく彼女の目を見つめると、ゆっくりと再び窓の外に視線を移した。
「あたしはこういうの初めてだよー」
「えっそうなの!?」
12: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:17:45.75 ID:p0TmPlc30
志希がリュックの口を開くと、黒猫がニュッと顔を出した。
「わー、キシちゃん!来てたんだー!」
キシはリュックから飛び出ると、座り込んで毛繕いを始める。
13: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:18:24.95 ID:p0TmPlc30
駅を出た二人は、特に目的もなく歩き出す。
じりじりと蒸し焼くような暑さと鼓膜を劈くような蝉の鳴き声が二人に襲いかかる。
絶え間なく流れ出る汗を拭い、ぱたぱたと手で扇いでいると、神社の境内に露店を見つけた。
アイスクリームと水を買うと、リュックから猫を出して木陰で涼む。
しばらく休んだ後、鈴を鳴らして何処の何かも知らない神様を拝んだ。
14: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:19:14.23 ID:p0TmPlc30
とある雨の日の事だった。
彼女の家に、遠い親戚を名乗る男が一晩泊めて欲しいと訪ねてきた。
急な来客にも関わらず、彼女たちは雨に濡れた男を嫌な顔一つせず招き入れた。
男は深く感謝し、翌日にはお礼として一家に手料理を振る舞った。
15: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:20:01.89 ID:p0TmPlc30
フレデリカはビクンと体を震わせると、
「いけないいけない」とつぶやき口元のよだれをナプキンで拭う。
「いいよー、あたしも疲れたししばらくゆっくりしていこ」
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