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上条「お前の手で、その幻想をぶち殺せ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 17:09:59.65 ID:g+OESOVU0
1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html

2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html

3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/

4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/

5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/

6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/

7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/

8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/

9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/

10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/

11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/

12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/

13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/

14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/

15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/

16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/

17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/

18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/

19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/

20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/

21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/

22スレ目 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1314/13145/1314512717.html

23スレ目 上条「海外旅行!」美琴「イギリス!」心理「ご飯がまずい」垣根「ひもじいよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1315/13152/1315277970.html

24スレ目 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316091462/

25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316955436/

26スレ目 上条「異性のどこが好き!?」美琴「優しさ!」心理「温かさ」垣根「声」テクパトル「背中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318038036/

黒歴史 今日も学園都市には雨が降る
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1303/13037/1303730725.html
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第五十九回.知ったことのない回26日17時 @ 2024/05/10(金) 09:18:01.97 ID:r6QKpuBn0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715300281/

ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part13 @ 2024/05/09(木) 23:08:00.49 ID:0uP1dlMh0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715263679/

今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
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誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715258363/

A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
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真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715130904/

愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
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ハルヒ「最近わたしのss見かけなくなったわね」 @ 2024/05/07(火) 15:04:17.64 ID:FJQjQ6ct0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715061856/

2 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 17:14:39.11 ID:g+OESOVU0
キャラ紹介は省きますね

とりあえず、上条、美琴、エツァリ、ショチトル、テっくん、19090号、ステイル、インデックス

そしてローラとかそこらが出ます

魔術側のバトルものを書きたかっただけです

後悔してます






3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/10/21(金) 17:58:05.98 ID:ZOHbgOHw0
スレ立て乙です
4 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:16:37.71 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・めんどうなことになったな」

ステイルはタバコを咥えながら呟いていた

最大主教が言っていたのはこういうことだったのか、と

1月23日

イギリス清教

最大主教と呼ばれる女性が一つの令を発した

「禁書目録を直ちに回収せよ」

イギリス清教内に衝撃が走った

その話は瞬く間に広がった

ステイル=マグヌスという男がいる

彼は頭を抱えていた

禁書目録の回収

その理由は明らかにされていなかった

魔道書の知識が必要になったのか

学園都市に滞在させることに危機感を覚えたのか

定かではないが、ステイルが悩んでいるのはそこではなかった

彼としても、彼女がそばにいたほうがよかった

問題は、他にあったのだ


5 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:18:56.70 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・なお禁書目録の回収は・・・暴力の行使を厭わない・・・」

それはつまり、生け捕りであればいいということなのだ

彼女の体が傷つこうが、最大主教には関係ないのだろう

ステイル(一体・・・なぜ)

最大主教にとって

いや、イギリス清教にとって禁書目録は重要なものだ

それを生け捕りにできればよい、などという手荒な扱いをするなど信じられなかった

そこまでするほど性急な事態なのか

ステイルには分からなかった

ステイル=マグヌスにも

魔術師としての彼にも

そして、インデックスの友人としての彼にも

最大主教の考えは分からなかった

ステイル(・・・インデックス・・・)

ステイルが窓の外に視線を移す

その視線の先にあるのは絶望か、それとも


6 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:19:38.24 ID:g+OESOVU0
1月24日

学園都市

上条「はぁ・・・授業もつまんない、しかも吹寄にはパチキくらわされるし・・・」

上条当麻は肩を落としていた

彼の学校生活はとても平和とは言えないものだった

上条「・・・しかしここ最近は平和だな」

ふと、そんなことを呟く

彼はかつて、第三次世界大戦の真っ只中にいるような人物だった

そんな彼が平和な日常を送るなんて信じられないことだ

記憶にある限り、彼が最初に見た景色は病院の天井だったのだ

上条「・・・平和、か」

自分が幸せであれば平和なのだろうか

そんな悩みが生まれてきてしまう

それほど、彼は幸せだった

本当に幸せで

だからこそ、その幸せが崩れてしまうのだとしたら、彼は立ち向かう決心をしていた



7 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:20:34.34 ID:g+OESOVU0
1月24日

とあるジム

テクパトル「・・・いやぁ・・・ヒマだな」

19090「ヒマですね・・・」

テクパトル「そりゃこんな時間から学生が来てたらおかしいんだけどな」

二人はジムの中でくつろいでいた

学生が大半である学園都市で、夕方までにジムが賑わうわけがなかった

テクパトル「・・・鈍るな」

19090「?何がですか?」

テクパトル「・・・いや」

テクパトルがため息をつく

テクパトル「・・・この幸せを喜ぶべきかな」

19090「そうですよテっくん」

テクパトル「・・・そうか」

戦いの最中にいた昔とは違う

テクパトル(・・・そうだな)


テクパトル(これが人並みの幸せってやつか)


8 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:21:14.42 ID:g+OESOVU0
1月24日

垣根宅

垣根「・・・なんでお前らが来たんだよ」

一方「あァ?いいだろ」

番外「寒いんだもん」

垣根「・・・てめぇらの家にはエアコンはないんですかー」

一方「あるに決まってンだろ」

心理「・・・結局、ヒマだったのよね」

一方「・・・まァそォだな」

心理「・・・はぁ、来てくれるのは嬉しいけど」

垣根「・・・で?俺の家に来た本当の理由は?」

一方「ねェよ、さっき言った通りだ」

垣根「・・・そうかよ」

垣根がつまらなそうに呟く

垣根「・・・こう平和が続くとヒマで仕方ないな」

心理「あら、いいじゃない」

垣根「・・・そうだけどよ」


垣根「・・・あーあ、空が青いぜ」



9 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:21:42.83 ID:g+OESOVU0
1月24日

とある病院

エツァリ「それでは・・・もう体は完治したんですね」

冥土「元々何の問題もなかったが、今回の精密検査で確認できたね」

ショチトル「・・・よかった」

三人は診察室で話し込んでいた

冥土「なぜ君の体をそこまで心配するのかは聞かないが・・・」

エツァリ「・・・」

冥土「・・・あまり無理をしないようにね」

ショチトル「仕方ないのさ、我々の役目を果たした結果だったのだから」

エツァリ「ショチトル」

冥土「・・・とにかく、これでもう通院はしなくて済むね」

エツァリ「ありがとうございます」

頭を下げ、二人は診察室を後にする

冥土「・・・」

残された冥土返しは電話機をちらりと見つめた

あれからどれだけ、あの電話番号を押していないだろうか

冥土「はぁ・・・イヤなものだね」


冥土「・・・何か胸騒ぎがするよ」


10 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:22:10.94 ID:g+OESOVU0
1月24日

常盤台中学

黒子「お姉さま!」

美琴「ん?あぁ、黒子・・・どうしたのよ」

黒子「聞いてくださいまし!初春ったら昨日もまた軍覇さんに失礼なことを・・・」

美琴「・・・はぁ、わざわざ放課後に教室に来てまで話すこと?」

黒子「・・・いいではありませんか」

美琴「・・・それよりいいの?削板と初春さんが仲良くなって」

黒子「あら、軍覇さんは浮気なんてしませんの」

美琴「・・・それならいいわね」

黒子「?お姉さま、どうなさいましたの?」

美琴「ん?あぁ、なんでもないわよ」


美琴「・・・平和だなぁって思って」


1月24日

学園都市にいる彼等には彼等の幸せがあった

それは、昨日も、その昨日も続いた幸せだった

その幸せを壊す、ある事件が起きる



11 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:23:30.24 ID:g+OESOVU0
イギリス清教

その中に、必要悪の教会というものが存在する

彼等の役割はイギリス清教に反する行動を犯した異端を征伐することだ

極刑に処することもあれば、長い長い期間を掛けて尋問を行うこともある

通常、尋問を行われる異端者は牢獄に囚われている

もちろん、罪が重いほど頑丈な牢獄に入れられるものだ

そして、その中で最も頑丈な牢獄に入れられていた一人の異端者がいた

「ブラックマン」と呼ばれた男だ

魔術に詳しいものなら、その名には聞き覚えがあるだろう

彼のそれは通称であり、本当の「ブラックマン」であるわけではなかった

だが彼には名が無く、他に適した呼び名もなかったのだ

彼が牢獄に囚われていた期間は10年と5ヶ月

普通の異端者なら、それほどの期間の尋問になど堪えられるはずがない

すぐさま舌を噛み切るなり、真実を語るなりするのだ

しかし「ブラックマン」は違った

魔術の行使を妨げる結界の張られた牢獄にいながら、彼はずっと笑い続けたそうだ

その不気味さは、当初狂気の沙汰とさえ言われた



12 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:25:06.29 ID:g+OESOVU0
彼の罪状は「魔術の行使による大量虐殺」

イギリス清教のシスター、神父を75人殺害したのだ

しかも、たった一人で

ならばなぜ、極刑ではなかったのかという疑問が湧くだろう

理由は簡単なのだ

極刑など意味がないから

「ブラックマン」

何度でも蘇る存在

その名が付けられた理由は、彼のある逸話が関係していた

大量虐殺の夜、彼を捕えた神父が彼の左腕を切断したのだ

血が溢れ、瞬く間に地面には血溜まりが出来た

相当の痛みが襲ったはずだろう

それなのに、彼は「右腕も斬ってくれはしないか?」と尋ねたのだ

神父がその通りにするとすぐさま両腕が生えた、という逸話が残されている

真実かどうかは定かでない

それだけならば、もはやただの嘘にしか聞こえないだろう

だがそれは最初の尋問で、大勢に目撃されたのだ

彼は自らの腕を切り落とし、そして生やしてみせた



13 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:26:07.93 ID:g+OESOVU0
人間とは思えない所業

最大主教でさえ、それを少しばかり不気味に思った

極刑ではなく長い期間尋問を続けたのは、その仕組みを聞くためだった

どのような魔術を使えばそんな現象が起きるのか

それを聞き出すため

しかし、結局それは聞き出せなかった

今から二日前の1月21日

「ブラックマン」が脱獄したのだ

見張りの者を殺害、すぐさま逃走という情報がイギリス清教には広がっている

見張りの者が食事を渡すために戸を開けた瞬間だったと推測される

かくして、「タルタロス」とさえ言われた牢獄から一人の異端者が逃げ出したのだ

ローラ「・・・面白いことになりそうね」

流暢な英語でローラが呟く

彼女の日本語を聞き慣れている人間からすれば、スラスラしゃべる彼女は意外だろう

しかし本来の彼女はむしろこちらだ

日本語を話す時は大抵ふざけている


14 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:27:05.40 ID:g+OESOVU0
ローラ「・・・すぐさま禁書目録を回収せねば」

すでに令は発した

イギリス清教が全力を尽くして禁書目録を回収しようとしている

学園都市

そこに禁書目録はいる

ローラ「・・・しかし、さすがに理由を言わなければ納得しない者もいるようね」

ドタドタ、と彼女の部屋に近づく足音が聞こえる

ローラ(理由・・・いや、口実でも伝えておくか)

バン、と勢いよくドアを開けたのはステイルだった

ステイル「最大主教!どういうつもりだあなたは!?」

ローラ「あら、何がかしら?」

ステイル「とぼけるな!」

ローラ「・・・禁書目録の回収?当たり前のことよ」

ステイル「一体なぜ・・・」

ローラ「ブラックマンの脱獄は知っている?」

ステイル「・・・たしか一番危険な異端者だった男だ、それが・・・」

ローラ「彼は尋問で、自分の魔術が不完全だと言っていたのよ」



15 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:28:59.23 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・」

ローラ「・・・必要なのは知識だけだ、と」

ステイル「!インデックスか・・・」

ローラ「・・・あの男が脱獄した理由は禁書目録と接触するため」

ステイル「だが待て・・・彼にはバックとなる組織もいないのだ・・・」

ローラ「あの男にそんなものは必要ないのよ」

ステイル「・・・なぜ?」

ローラ「・・・私はあの男の魔術に、ある見当をつけている」

ステイル「見当?」

ローラ「あの男が使っているおかしな魔術が何なのかの見当を」

ステイル「・・・それは?」

ローラ「・・・それは」


ローラ=スチュアートの部屋からステイルが立ち去る

残ったのは、ただローラだけだ

ローラ「全く、青すぎるわねステイル」

ローラは笑っていた

ブラックマンの情報など、どうでもいいことだったのだ

ローラ「禁書目録・・・完全な知識の持ち主」


ローラ「さぁ、ブラックマンも踊ってくれると嬉しいのだけれど」


16 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:29:36.54 ID:g+OESOVU0
上条「はぁ・・・ただいま」

上条が寮の自室に帰り着く

美琴「ん、お帰りー」

上条「あれ・・・今日は早かったな」

美琴「うん、黒子に飛ばしてもらったのよ」

美琴はこたつに体を突っ込みながらテレビを見ていた

上条「そっか・・・」

美琴「当麻も入ったら?」

上条「そうだな・・・寒い寒い」

体を震わせながら上条がこたつに入ろうとした

その時

部屋の電話が響いた

上条「・・・ちくしょう、こたつまであと25cm・・・」

美琴「早く取らないと切れちゃうわよ?」

上条「分かってるよ・・・」

しぶしぶ上条が受話器を手に取る


17 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:30:03.09 ID:g+OESOVU0
上条「はい・・・」

ステイル『上条当麻、聞いてくれ』

上条「ん?ステイルか、元気に・・・」

ステイル『今はそれどころではないんだ!』

上条「な、なんだよ?」

ステイル『インデックスは近くにいるかい!?』

上条「いや・・・いないけど」

ステイル『ちっ・・・君に監督を任せている僕が馬鹿だったか・・・』

上条「おい・・・」

ステイル『とりあえずインデックスの無事を確認してくれ』

上条「ま、待てって!なんかあったのか!?」

ステイル『簡単に言えば・・・危険な魔術師があの子のもとに行こうとしている』

上条「!それ本当か!?」

ステイル『確実ではないが・・・状況からすればそうなる』

上条「わ、分かった!」

ステイル『僕もすぐにそちらに行く、あの子を回収しなければならないからね』

上条「すぐって・・・」


18 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:30:53.30 ID:g+OESOVU0
ステイル『すでに学園都市の中に入るんだ、とにかく君はインデックスの無事を確認してくれ』

上条「あぁ・・・じゃ、気をつけてな」

ステイル『インデックスを頼んだ』

ガチャリ、と通話が切れる

ステイルがあんなにも慌てるなんて珍しかった

美琴「・・・どうしたの?」

上条「ちょっと出掛けてくる」

美琴「え、ちょっと・・・」

美琴の制止を聞かず、上条が部屋を飛び出す

上条(・・・なんなんだよ、冗談かなんかじゃないのか!?)

突然、平和は崩れるものだ

まるでそれは高く積み上げられた積木のように

ガラガラと音を立てて崩れていく


道化は踊る

躍らせるのは最大主教

奏でられるのは不協和音



19 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:31:23.07 ID:g+OESOVU0
神裂「ステイル!」

ステイル「神裂!君も来ていたか!」

最大主教の部屋を出たステイルは、神裂と顔を合わせた

神裂「一体どうなっているのですか!?なぜあの子を・・・」

ステイル「ブラックマンと呼ばれる異端者が逃げ出したことは知っているかい?」

神裂「はい・・・しかしそれが何か・・・」

ステイル「その男は自らの術式を完成させるためにあの子の知識を取り入れるつもりなんだ」

神裂「!取り入れる・・・!?」

ステイル「大量虐殺を行うような人間だ、もしあの子が捕まったら・・・」

神裂「急ぎましょう!」

ステイル「学園都市行きの飛行機は!?」

神裂「すぐに出ますよ!」

二人が空港へと向かう

イギリスと学園都市は、友好的な関係である

一日に何本かの飛行機が学園都市へ向けて出ている

そのどれかに乗ってブラックマンが学園都市へ向かったかもしれない


20 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:31:57.49 ID:g+OESOVU0
神裂「ステイル!」

ステイル「神裂!君も来ていたか!」

最大主教の部屋を出たステイルは、神裂と顔を合わせた

神裂「一体どうなっているのですか!?なぜあの子を・・・」

ステイル「ブラックマンと呼ばれる異端者が逃げ出したことは知っているかい?」

神裂「はい・・・しかしそれが何か・・・」

ステイル「その男は自らの術式を完成させるためにあの子の知識を取り入れるつもりなんだ」

神裂「!取り入れる・・・!?」

ステイル「大量虐殺を行うような人間だ、もしあの子が捕まったら・・・」

神裂「急ぎましょう!」

ステイル「学園都市行きの飛行機は!?」

神裂「すぐに出ますよ!」

二人が空港へと向かう

イギリスと学園都市は、友好的な関係である

一日に何本かの飛行機が学園都市へ向けて出ている

そのどれかに乗ってブラックマンが学園都市へ向かったかもしれない


21 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:33:19.82 ID:g+OESOVU0
ステイル(・・・パスポートなんかは偽造でもしたのだろうか)

ふとそんなことを考えてしまう

しかし今は問題ではなかった

ただ、インデックスのことだけを気にして、二人は足を急がせた


ブラック「・・・」

ブラックマンと呼ばれる男は顔をしかめていた

まさか自由の身になれるとは思わなかった

彼には、やりたいことがあったのだ

たった一つだけ

牢獄にいる限りは出来ないことだった

ブラック「さて、少し急ごうかな」

その顔は、まるで死人のようだ

ブラック「・・・そろそろイギリス清教の輩も動き出すだろう」

ブラック「・・・仕方あるまい」

ブラック「・・・では、まず」


ゆっくりと、ブラックマンが歩き出す

彼が立っているのは、舞台の上だ

もう、裏方ではなくなってしまった



22 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:34:09.77 ID:g+OESOVU0
平和

争い

その二つは決して裏表の存在ではない

むしろそれは同意義と言える

平和の裏には争いがあり

争いの果てに平和が生まれ

そして世界は均衡を保つ

だが、時としてそれを狂わせようと考える者もいる

天秤に載せられた二つの均衡を崩すため、己の力を振るう者

ブラック(・・・私も・・・それなのかもしれないな)

ブラック(・・・いや、今は何も考える必要はない)



ブラック「天秤に命の重みを加えようか」



天使が歌うは賛美歌

悪魔が歌うは鎮魂歌

二つは不協和音を奏で、やがて世界を狂わせる


23 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:34:44.08 ID:g+OESOVU0
上条(くそ・・・いきなりすぎて何がなんだか!)

上条当麻は学園都市を走っていた

インデックスと呼ばれる少女を探すためだ

上条(・・・危険な魔術師がインデックスを狙ってる?信じられねぇ・・・)

かつてはそういう事件にもよく巻き込まれていた

記憶にあるなら、三沢塾や妹達・・・

そういったものに、彼は突然巻き込まれるものだった

しかし最近はめっきりそんなことも無くなった

まるでかつての「不幸」が嘘であるかのように

上条(・・・どこだ、インデックス!!!)

小萌のところはすでに訪れた

しかし、彼女はそこにいなかった

暇なので遊びに行く、と言って出て行ったそうだ

上条(・・・一人で行動するのはまずいんだよ!!)

もしも、すでに魔術師と接触していたら

その魔術師はかなり危険なのだ

殺されているかもしれない

上条(どこだ・・・どこにいる!?)

すでに空は暗くなっている

まるで、何かを思わせるほどの黒さだ

上条(・・・無事でいてくれよ、インデックス!!!)


24 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:35:11.02 ID:g+OESOVU0
イン「ふんふんふーん・・・」

インデックスと呼ばれる少女は街中を歩いていた

この時間に歩いているのは、学生ばかりだ

ほとんどが学校の後なので、若干疲れたような顔をしている

その中でインデックスだけは元気溌剌といった感じだ

それは当然

彼女はずーっと食っては遊び、そして寝るを繰り返しているのだから

面倒な事件にも巻き込まれず、平和に暮らしている

イン(んー・・・でもそろそろ帰ろうかな)

空も暗くなっている

早く帰らないと、小萌が心配するだろう

イン(よし、じゃあ・・・)

帰ろうとして、踵を返すインデックス

そんな彼女に近づく影があった



25 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:35:59.23 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・!!いた、インデックス!!」

イン「?ス、ステイル!?それにかおりも!!!」

神裂「無事でしたかインデックス!!」

イン「?どうしたの、慌てた顔なんかして・・・」

ステイル「よかった・・・上条当麻は一緒じゃないのかい?」

イン「当麻はいないけど・・・」

ステイル「どうやら僕たちのほうが早く接触したようだね・・・」

神裂「インデックス、少し落ち着いて話を聞いてください・・・」

イン「う、うん」

ステイル「・・・君の知識の中に・・・ブラックマンと呼ばれる異端者の情報はあるかい?」

イン「?たしかイギリス清教の牢獄に10年以上囚われていたんだよね?」

神裂「そのブラックマンが、脱獄したようなんです」

イン「そ、それは本当なの?」

ステイル「間違いない・・・」

神裂「そして、それはあなたと接触するためだったんですよ」

イン「私と?」

ステイル「やつは自分の術式を完成させるために君に接触するつもりだったんだ」

ステイルが、最大主教の言っていたことを手短に伝える


26 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:36:35.31 ID:g+OESOVU0
イン「ど、どうして?私はその人なんて知らないんだよ!?」

神裂「あなたの記憶している魔道書の中に・・・何か関係するものがあるのでしょう」

ステイル「・・・安心してくれ、一時的に君をイギリス清教で保護することになっている」

イン「・・・当麻は?」

ステイル「・・・彼には関係ないさ、イギリス清教内の問題はイギリス清教で片付ける」

神裂「・・・ですが、一応は会って話さなければなりませんよ」

ステイル「・・・分かってはいるが・・・」

イン「!!そうだ、携帯っていうのを使ったら・・・」

ステイル「・・・僕は使い方が分からない」

神裂「私もそういうのは疎くて」

イン「・・・」

ステイル「・・・」

神裂「・・・とりあえず、彼の部屋を訪れてみましょう」

イン「う、うん!!」


27 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:37:02.13 ID:g+OESOVU0
美琴「・・・当麻・・・どうしたんだろ?」

美琴は上条の部屋で、一人首を捻っていた

いきなり彼は部屋から飛び出したのだ

とくに理由を教えてくれるでもなく

美琴(・・・宿題を忘れた・・・?友達に呼ばれた・・・?)

美琴(・・・ううん、あんな顔をしてるのはいつもの当麻じゃない)

知っていた

彼があんな顔をするのは

あんな、真剣な顔をするのは

美琴(・・・誰かが事件に巻き込まれてて・・・それを助けようとするときの顔だ・・・)

彼女が妹達の事件で見た顔

そして、そのあとも何度か見た顔

あんな顔に彼がなるのはイヤだった

もう、面倒な事件に巻き込まれてほしくなかった

美琴(・・・なんで・・・なんで一人だけいつも走っていくのよ)

こんなとき、美琴は何も出来なかった



28 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:37:29.78 ID:g+OESOVU0
その手を取って止めることも

一緒に隣を走ることも出来ない

ただ、無力に待つだけだったのだ

美琴(・・・当麻)

彼女が瞳を閉じたとき、部屋のチャイムが鳴った

上条ではない

彼ならばチャイムなんて鳴らす必要がないから

では一体

美琴「・・・」

少し用心して、ドアを開ける


イン「あ、とう・・・あれ?みことなんだよ」

美琴「インデックス・・・ステイルと神裂さんも」

神裂「おや・・・彼はいないのですか?」

美琴「・・・ちょっと待って、なんでアンタたちが・・・」

ステイル「詳しい話はこれからだ」

ステイルが半ば無理矢理、部屋へと入る


29 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:38:04.13 ID:g+OESOVU0
美琴「ちょ、ちょっと・・・」

イン「みこと、時間がないんだよ」

神裂「・・・彼がいないのは痛いですが、とりあえずあなたも彼の関係者ですからね」

美琴「・・・待って」

ステイル「・・・なんだい」

美琴「・・・もしかして・・・何かあったの?」

神裂「それをこれから説明します」

淡々と神裂が答える


神裂「・・・まずはお詫びを・・・上条当麻・・・およびあなたを巻き込んでしまったことを」

美琴「それはいいわよ、早く話して頂戴」

ステイル「・・・」

神裂「それは・・・」

神裂が事情を話そうとした時、ドアが急に開かれた

上条「はぁ・・・なんでいないんだ・・・よ?」

上条がインデックスの捜索から帰ってきたところだった

上条「インデックス!?」

イン「とうま!」


30 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:38:30.76 ID:g+OESOVU0
ステイル「やぁ、遅かったね」

上条「な、なんでお前達まで・・・」

神裂「申し訳ありません、我々のほうが先に接触して・・・」

上条「インデックス!無事だったか!?」

イン「う、うん!」

上条が神裂の言葉を無視してインデックスに近づく

上条「よかった・・・何かあったらどうしようかと・・・」

ステイル「ちょうどよかった、君にも聞いてもらわなければ・・・」

美琴「・・・当麻」

上条「・・・なんだ?」

美琴「・・・どうして言ってくれなかったの?インデックスを探しに行くって」

上条「それは・・・」

美琴「私を・・・巻き込みたくなかったから?」

上条「・・・悪い」

美琴「・・・いつもそればっかり」

美琴が悲しそうな表情をする

それが上条には辛かった


31 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:39:19.79 ID:g+OESOVU0
美琴「私を信じてくれているって言っても・・・結局は嘘」

上条「・・・違うんだよ美琴」

美琴「何が違うのよ!?頼ってくれなかったのに!」

イン「み、みこと!とうまはみことを巻き込みたくなかったから・・・」

美琴「巻き込む!?ふざけないでよ、私は当麻を守るって決めたのよ!」

上条「・・・ごめん、美琴」

美琴「・・・いいわよ、話してちょうだい」

神裂「・・・では」

神裂が神妙な顔で事情を話し出す

神裂「我々イギリス清教には・・・必要悪の教会というものが存在します」

上条「・・・異端を征伐したり・・・そんなものだったよな?」

神裂「えぇ、牢獄に異端者を収容し、尋問を行い・・・そんな仕事ばかりです」

美琴「・・・なんだかイヤな仕事ね」

ステイル「神裂、手早く話してやってくれ」

神裂「・・・その異端者の中で、最も凶悪と呼ばれた・・・ブラックマンという男が脱獄したのです」

上条「脱獄!?そんな簡単に出来るのかよ?」


32 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:39:46.43 ID:g+OESOVU0
神裂「まさか・・・監視の者を殺害し、他の者に悟られないように逃亡・・・」

イン「普通なら、まずは出来ないことなんだよ」

美琴「・・・普通なら、ね」

イン「・・・ブラックマンは普通じゃないってことなんだよ」

上条「・・・何をしたヤツなんだ?」

ステイル「大量虐殺さ、しかも同じイギリス清教の人間をだ」

上条「・・・大量虐殺・・・」

神裂「まさか、そんな大罪人が逃げ出すなんて・・・」

美琴「それで?どうして二人はインデックスを探しに来たの?」

ステイル「・・・彼の術式は不完全だ、インデックスの中にある魔道書の知識を手に入れてそれを完成させるつもりだと・・・」

上条「待てよ、術式をお前達は知ってるのか?」

ステイル「・・・これはあくまで最大主教の意見だが・・・とりあえず見当はついている」

美琴「・・・どんな魔術なのよ」

ステイル「君達は聖書というものを知っているかい?」

美琴「十字教の聖典よね」

上条「・・・それが?」


33 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:40:23.49 ID:g+OESOVU0
ステイル「聖書には様々な事象が刻まれている・・・」

イン「・・・キリストの・・・不思議な力や、ソドムとゴモラ・・・バビロンの混乱、様々なんだよ」

ステイル「・・・それらの全てを、実際に引き起こすことさ」

上条「ま、待ってくれよ!聖書ってのは本当にあった話なのか!?」

ステイル「それは関係ないのさ・・・魔術はそれらを無理矢理引き起こすことを目的としている」

神裂「・・・もちろん、世界の創成や死者の復活などは出来ないようですが」

美琴「不完全だから・・・ね」

上条「じゃあなんでそういう見当が・・・」

ステイル「彼は切られた腕を再び生やしたそうだ・・・まるでキリストが、幾多の人々の傷を癒したように」

神裂「・・・もちろん、キリストが引き起こした事象を再現する魔術かもしれませんし・・・確信はないのですよ」

上条「・・・聖書の事象を引き起こすだって・・・?そんなのどうやって戦うつもりなんだよ!?」

ステイル「戦うつもりはないさ・・・彼は一度捕まっていた、それがどういうことか分かるかい?」

美琴「捕まえることは出来る・・・ね」

イン「いくら魔術師でも寿命はあるんだよ」

上条「う・・・ずっと捕らえていればいずれは自然死・・・か」

美琴「いやな話ね・・・」

神裂「最も・・・ブラックマンはまだ30代後半ですが」


34 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:40:55.14 ID:g+OESOVU0
上条「若返り・・・とかは出来ないのか?」

ステイル「さぁ・・・だが、彼はまだ不完全な術式だと言っていた」

神裂「・・・何かしらの制限があるのでしょう」

美琴「・・・そのブラックマンは学園都市にいるのかしら」

ステイル「・・・インデックスと接触を図るためだ」

神裂「最大主教が言うには、インデックスの知識を無理矢理にでも読み取るつもりなのだと・・・」

上条「・・・完全になった術式を用いて・・・何かをする予定なのか・・・?」

美琴「・・・ねぇ、学園都市のみんなにも応援を仰がなくていいの?」

ステイル「・・・学園都市は科学側だ、どうして魔術側に関わらせなければならない」

美琴「それは・・・」

上条「・・・分かった、インデックス・・・一旦イギリス清教に帰ったほうがいい」

美琴「当麻!」

上条「・・・イギリス清教は魔術のエキスパートなんだろ?」

神裂「えぇ、少なくとも学園都市にいるよりは安全ですよ」

上条「・・・ステイル、インデックスを守れるか?」

ステイル「君に言われるまでもないさ」

上条「そうか・・・頼むぞ」


35 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:41:24.68 ID:g+OESOVU0
美琴「当麻・・・?インデックスのこと・・・」

上条「・・・インデックス、学園都市から離れるべきだ」

イン「うん・・・分かってるんだよ」

神裂「・・・上条当麻、あなたにも出来れば学園都市に残っていてほしいのです」

上条「分かってる・・・ブラックマンが学園都市に潜んでるなら・・・学園都市で大量虐殺を行うかもしれないんだ」

美琴「!」

上条「・・・魔術側の事件に俺達が関わるのは無理なんだろ?」

ステイル「あぁ、そうだね」

上条「でもな・・・学園都市で好き勝手しようとしているならそれを許すつもりはないんだよ」

イン「・・・無理しちゃダメなんだよ、当麻」

上条「・・・神裂はどうする予定なんだ?」

神裂「・・・私は学園都市に残ろうかと思います」

美琴「・・・そうよね、万が一その男が学園都市に潜んでいたら・・・」

上条「魔術に詳しい人間が必要だからな」

美琴「・・・テクパトル達はあくまでアステカの魔術みたいだからね」

上条「・・・神裂、頼むぞ」

美琴「・・・インデックス、気をつけてね」


36 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:41:52.34 ID:g+OESOVU0
イン「・・・とうま」

上条「?なんだよ」

イン「・・・ううん、なんでもないんだよ」

インデックスが少し寂しそうに笑う

ステイル「それじゃ・・・僕はインデックスを連れて帰るね」

上条「・・・インデックス、何かあったらステイルを頼れよな」

イン「うん・・・とうま、みことをちゃんと守るんだよ」

上条「分かってるさ」

上条がインデックスの手を握り締める

イン「・・・とうま、じゃあね」

ステイル「・・・行こうか、インデックス」

ステイルがインデックスの手を引く

ステイル「・・・神裂、あとを頼む」

神裂「任せてください」

ステイル「・・・あぁ」

ドアが開かれる

夜の暗闇が、なぜか不気味にさえ思えてしまった


37 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:42:19.65 ID:g+OESOVU0
上条「・・・神裂、心当たりはあるのか?」

神裂「ブラックマンが学園都市のことを知っているとは思えません・・・ですから、恐らくは手当たり次第にうろついているかと」

美琴(・・・そうよね、学園都市のことなんて知るはずが・・・)

そう考えた美琴は、何か引っ掛かるようなことを覚える

だがそれが何かは分からなかった

上条「・・・とりあえず、俺達も探すよ」

神裂「いえ、あなたがたには待機していてもらいたいのです」

美琴「・・・どうして?」

上条「・・・俺達には出来ないから・・・か?」

神裂「違いますよ、あなたたちには話し合ってもらわなければならないですから」

上条「・・・話し合う・・・か」

神裂「私たちが巻き込んでしまったことは申し訳ないですが・・・状況の整理はしていただかなければならないですから」

神裂がドアのほうへ向かう

神裂「・・・上条当麻、申し訳ありませんでした」

上条「いいさ、インデックスのためじゃないか」

神裂「それでは」

ガチャリ、とドアが閉じられる

部屋に残された二人の間にはイヤな沈黙が流れていた


38 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:42:51.53 ID:g+OESOVU0
上条「・・・美琴、悪かった」

上条が土下座の体勢になる

頭を深く下げ、真剣な口調で謝る上条

美琴「・・・何が悪かったのよ」

上条「お前を信じてなかったわけじゃない」

美琴「・・・分かってる」

上条「ただ・・・お前に傷ついてほしくないんだよ」

美琴「・・・当麻」

美琴が上条の肩に手を当てる

上条「美・・・」

美琴「ちょっと顔をあげて」

上条「あぁ」

上条が顔をあげる

美琴の目が、上条をじっと見つめている

美琴「ごめん、当麻」

上条「はい?」

わけが分からない、という顔をする上条

その頬に美琴の平手打ちが当たる


39 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:43:18.20 ID:g+OESOVU0
上条「・・・」

美琴「私はね・・・当麻のそんな気遣いが大好きなのよ」

美琴「そして・・・それがとてもイヤなの」

美琴「私と当麻は・・・恋人なのよ?なんで遠慮なんてするのよ?」

上条「・・・悪い」

美琴「・・・お願い、私をそばにいさせてよ」

上条「な、何言って・・・」

美琴「どうせ当麻のことだから・・・神裂さんと協力して、例のブラックマンって人を探すつもりなんじゃないの?」

上条「・・・あぁ」

美琴「・・・私も当麻を手伝うわよ」

上条「・・・危険なんだ、魔術に対する対処法もないだろ?」

美琴「当麻が・・・守ってくれるんじゃないの?」

上条「・・・分かった」

上条がそっと立ち上がる

美琴の平手打ちで何かが吹っ切れたのだろう

上条「行くぞ、美琴」

美琴「うん」

二人がドアを開ける

その暗闇に、何か光を照らせるのだろうか

今の二人には分からなかった


40 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:45:02.33 ID:g+OESOVU0
ローラ「・・・ブラックマン・・・か」

イギリス清教の最大主教

彼女は汚い人間だと言われている

それは自覚があった

彼女は汚い人間であり、そうでなければならなかった

自分の利益のためなら手段など選ばない

選んでいる余裕はない

彼女の利益はイギリス清教の利益



ローラ「・・・ふふふ・・・ステイルも神裂も扱いやすくて便利なものよ」

トントン、と愉快そうに机を叩く

ローラ「・・・ブラックマンの魔術が未完成というのは・・・ただの私の見解だというのに」

クスクス、と笑う

その顔は醜く、しかし美しかった

ローラ「聖書に記されている事象を引き起こす・・・」


ローラ「・・・さて、禁書目録は回収出来たのかしら」

窓には月が映っている

それは学園都市からも見えるはずの月だ

だが、ローラの目にはなぜかそれが美しく映っていた



41 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:45:28.80 ID:g+OESOVU0
上条「・・・はぁ・・・くそ、全然怪しいヤツなんていないぞ!?」

街中を探索して2時間

もう深夜とさえ言える時間だ

学生は出歩いていない

これなら、怪しい人物など簡単に見つけられるはずなのだ

だが

美琴「いない・・・どうして!?」

怪しい人物など見つからなかった

上条「・・・ちくしょう・・・神裂はどこにいるんだよ」

神裂「呼びましたか?」

上条「うわぁ!」

美琴「い、いつからいたの!?」

神裂「ちょうどあなたたちを見つけて・・・」

上条「そうだ!怪しいヤツはいたか!?」

神裂「いえ・・・そちらもその様子ではハズレだったようですね」

上条「あぁ・・・ダメだな」


42 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:45:57.93 ID:g+OESOVU0
美琴「・・・今日はもう終わりにしたほうがいいんじゃない?」

上条「あぁ・・・そうだな」

神裂「では私はホテルに向かいますので」

美琴「また明日・・・かしらね」

神裂「そうですね」

神裂が一礼をしてから立ち去る


上条「・・・学園都市に危険な魔術師が忍び込んだ・・・か」

美琴「信じられないわよね・・・」

上条「?なんか引っ掛かってるのかよ」

美琴「・・・明日、神裂さんに聞けばいいだけだから」

美琴が少し意味深なことを呟く


美琴「・・・もしかしたら・・・」

上条「ん?なんか言ったか?」

美琴「・・・ううん、なんでもない」


43 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:46:25.51 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・インデックス」

イギリス行きの飛行機の中、ステイルはインデックスを呼んだ

イン「・・・何?」

ステイル「・・・上条当麻のほうがよかったかい」

イン「!そ、そんなことないんだよ!」

ステイル「・・・僕は君を守るのには向いていないからね」

イン「そんなこと・・・」

ステイル「インデックス、寝たほうがいい・・・向こうに着いたら色々面倒なこともあるからね」

イン「・・・分かったんだよ」

インデックスがそっと目を閉じる

いつもならイギリスに向かうとき、もっと弾んだ気持ちのはずだった

だが今は違う

イン「・・・イギリス清教にいれば・・・みんなに迷惑を掛けなくていいのかな?」

ステイル「・・・安心したまえ」

イン「うん」

それだけ会話をして、二人はそれぞれ眠りに着いた

暗い夜は続く

そして、一つの事件は起きる

まだ

まだ、この時点では序章が始まっただけだったのだ


44 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:48:37.87 ID:g+OESOVU0
ブラック「・・・」

ブラックマンと呼ばれる男の目の前には小さな墓があった

誰にも覚えられていないだろう、一人の人間の墓が

ブラック「・・・思い出されることのないもの、か」

寂しそうに呟きながら、ブラックマンが墓から離れる

ブラック「悲しいことだな」

その横顔は、何にも染まってなどいなかった

喜びにも悲しみにも

怒りにも楽しみにも

染まっていなかった

ブラック「今日は悪い夜だな、薄気味悪い静寂だ」

彼の周りは静かだった

シンとした空間

ただ、彼の声だけが響いている

ブラック「・・・魔法名か」

彼にもそれはあった

誰かを守るためではない

誰かを忘れないためではない

ただ、彼の決めたことを言葉にしただけの

そして、自らの思想を表すための魔法名

ブラック「私の魔法名は」

ぽつり、と呟いて彼は笑う

ただ、寂しそうに


45 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:49:18.61 ID:g+OESOVU0
上条「・・・さて」

上条は部屋の中でコーヒーを飲んでいた

日付は1月25日

昨日はあのあと、すぐに眠りに着いた

今日はこれから、また侵入者を捜索する予定だった

美琴「・・・とは言っても・・・日曜日だから学生がたくさんうろついてるでしょうね」

上条「あぁ・・・探しにくいだろうな」

美琴「・・・神裂さんは?」

上条「あいつはどこにいるか分からない・・・ただ、何かあれば連絡くらいしてくるはずさ」

美琴「そうね・・・そうだといいけど」

上条「なぁ、神裂に聞きたいことって・・・」

美琴「いいのよ、私の勘違いなだけかもしれないから」

美琴がコーヒーを飲み終え、ゆっくり立ち上がる

美琴「・・・とにかく、もしもブラックマンっていうヤツが学園都市に忍び込んでるなら・・・好き勝手はさせないわよ」

上条「あぁ」

美琴「・・・行きましょう、さっさと見つけなきゃ」

美琴が一足先に部屋から外へ向かう

美琴(・・・もしも)


美琴(本当に学園都市にいるなら・・・だけど)


46 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:49:52.35 ID:g+OESOVU0
ステイル(・・・あまりこの子を最大主教には会わせたくはないんだが・・・)

イギリスの地を再び踏んだステイルはそんなことを考えていた

インデックスはかつて、最大主教によって枷を嵌められていたのだ

そんなことをする上司に、自分の大切な人を引き渡せるだろうか

ステイル(とはいえ・・・命令なのだから仕方ないな)

彼には、それに背く意思はなかった

彼は別に最大主教に背きたいわけではない

あの上司はあまり好かないが、自分やインデックスに危害を加えないのならば問題ないのだ

ステイル(とはいえ・・・守るためとはいえ、イギリス清教総出をあげて回収とは・・・)

それほどまでに禁書目録という肩書は重いのだろう

ステイル(・・・この子は昔からそうだった・・・)

イン「?どうかしたの?」

ステイル「いや、なんでもないさ」

イン「そう?なんか怖い顔してたから」

ステイル「悪いね」

ステイルが無理矢理笑みを浮かべる


47 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:51:23.09 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・インデックス」

イン「?何?」

ステイル「君は・・・」

彼女へ言葉を掛けようとしたその時

一人の男が目に入ってきた

会ったことがあるわけではない

資料でしか見たことのない男

大罪人

大量虐殺犯

ブラックマン

インデックスを狙う者

ステイル(な、なんで・・・)

ステイルがとっさに走ろうとする

だが、体が動かない

隣にいるインデックスは首を捻っている

そして


ブラックマンとステイルの視線がぶつかった


48 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:51:55.72 ID:g+OESOVU0
上条「はぁ・・・くそ、いないな・・・」

美琴「・・・学生が多すぎるから分からないわよ・・・」

学園都市の中を捜索している二人

しかし、休日の学園都市は学生で溢れ返っているのだ

その中から一人、外部の人間を探すのは難しい

上条「・・・なぁ、美琴」

美琴「何?」

上条「・・・お前が言ってた引っ掛かることってなんなんだ?」

美琴「・・・神裂さんにも言いたかったことなのよ」

上条「あぁ・・・」

美琴「・・・その人って・・・パスポートを持っていたの?」

上条「・・・捕まってたからないだろうけど」

美琴「ならなんで学園都市に来れたのかしら?」

上条「偽造パスポートじゃないのか?」

美琴「・・・たしかつい三日前に脱獄したんじゃなかった?」

上条「じゃあ・・・他に仲間がいて、先に偽造パスポートを・・・」

美琴「・・・神裂さんが来たのは昨日だったわよね」

49 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:54:24.28 ID:g+OESOVU0
上条「あぁ・・・ん?」

上条も何かに気づく

上条「・・・待てよ、昨日まで・・・神裂とステイルが来るまでにブラックマンはこっちに来てた?」

美琴「・・・おかしくない?」

上条「あぁ・・・到着するのにも時間は掛かる・・・大体、脱獄して仮に仲間が偽造パスポートを作っていたとしても・・・」

美琴「・・・それを受け取り、空港へ向かい・・・手続きを済ませ、学園都市に来る」

上条「そして・・・飛行機に乗った?」

美琴「神裂さんたちより前に来るなんて・・・ほとんど無理なんじゃない?」

上条「じゃ、じゃああいつは神裂と同じ便に・・・いや、でもさすがにそれなら気づくはず・・・」

美琴「違うのよ当麻・・・もっと簡単な答えがあるじゃない」

美琴が首を振る

美琴「神裂さんが・・・学園都市にブラックマンがいると思ったのはなぜ?」

上条「・・・最大主教って人が言ったからか!」

美琴「そう・・・違ったのよ・・・ブラックマンは学園都市になんか来ていなかった!」

上条「じゃあ・・・じゃあそいつはもしかして!」

美琴「えぇ、きっと・・・」


美琴「まだイギリスにいるはずよ!」


50 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:57:19.15 ID:g+OESOVU0
ステイル「!インデックス!」

ステイルがインデックスの腕を掴み、半ば強引に引っ張る

イン「わ、何!?」

インデックスが少し驚いたような顔をする

イン「ね、ねぇ・・・」

ステイル「急げ!」

ステイルがブラックマンを睨む

ブラックマンは、冷たい瞳で二人を見ていた

他人の空似なわけがない

可能性は一つ

ステイル(・・・学園都市になど行っていなかった・・・くそ、最大主教の勘違いか!!)


「格好から推察する限り、イギリス清教のシスターと神父・・・か」

冷たい声が聞こえる

機械的な声ではなく、意図的に冷たさを持たせた声だ

ステイル「・・・自分から名乗るのが礼儀じゃないかい」

「悪い悪い・・・そう怒ってくれるな」


51 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 18:59:20.82 ID:g+OESOVU0
声が段々と近づいて来る

ステイル「・・・!」

ついに、ステイルとブラックマンの間の距離がなくなった

ステイル「くっ!」

後ろに飛びのくステイル

インデックスを庇うようにして、男を睨みつける

「・・・私の話は知っているかね」

ステイル「逸話や・・・そして今回の件でもさんざん聞いているさ」

「・・・そうか、それなら話は早い」

ステイル「・・・聖書に書いてある記述を現実に引き起こす魔術師・・・」

「・・・誰の入れ知恵かな、最大主教辺りだろうか・・・」

男が少しだけ楽しそうに笑う

ステイル「ブラックマンか・・・!」

ブラック「そんな名前で呼ばれているようだな・・・本名などとうの昔に忘れたが」

ステイル「学園都市に行ったものとばかり思っていたよ」

ブラック「・・・何やらよく分からないが」

ステイル「そんなことはどうでもいいのさ」

52 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:00:00.71 ID:g+OESOVU0
ステイルが辺り一面にルーンのカードをばらまく

ステイル「君は僕の目の前に現れた・・・それだけで戦う理由になるからね」

ブラック「・・・子供だな」

ステイル「何を言われようと構わないさ・・・魔女狩りの王!」

ステイルが手を振る

彼の後ろに魔女狩りの王が出現する

全てを焦がし、全てを焼き払う炎

ブラック「・・・イノケンティウス、か」

ステイル「・・・随分と澄ましているね」

ブラック「そうだ、君の魔法名を聞いておかなければならないな」

ステイル「それを聞かせるということは・・・君と生きて会うことが無くなるということだよ」

ブラック「・・・死ぬのはどちらだろうな」

ステイル「・・・」

ステイルが眉をひそめる

なぜブラックマンはこんなにも余裕を見せているのか

ステイル「Fortis931・・・」

ブラック「なるほど、強者など自ら名乗るとはな」


53 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:01:52.99 ID:g+OESOVU0
ステイル「君は名乗らなくていいのかい?」

ブラック「・・・魔法名というのはあまり好きではないのだがな」

ステイル「なぜ」

ブラック「恥ずかしいものだろう?」

ブラックマンがつまらなそうに息を吐く

ブラック「君が聞きたいというのならば教えなければならないがな」

ブラックマンがパチン、と指を鳴らす

その瞬間、彼の後ろに大きな獣が現れる

大きさは魔女狩りの王と同じほどだろうか

不気味な外見の獣だ

ステイル「・・・なんだいそれは・・・見たことがないな」

ブラック「私の魔法名は・・・brutus666」

ステイル「待て・・・666だと?」

ブラック「静寂穿つ咆哮・・・とでも名乗っておこうかな」

ステイル「君は・・・十字教徒では」

ブラック「御託はいいさ、戦おうではないか」

ブラックマンが腕を振るう

それに従うかのように獣が動く


54 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:02:26.64 ID:g+OESOVU0
ステイル「魔女狩りの王!」

魔女狩りの王がその獣を飲み込む

互いに実体があるわけではない

形を成してはいるが、核となるものが固定されてはいないのだ

ブラック「・・・いかんな、中々の威力だ」

ブラックマンがパチン、と指を鳴らす

獣の姿が一瞬で消え去る

ブラック「さてさて・・・炎を消すには水、というのが常識ではあろうな」

ステイル「・・・僕の魔女狩りの王を消すほどの水なんて・・・」

ブラック「ノアの箱舟を知っているか?」

ステイル「まさか!」

ブラック「悪いな、君にはあまり時間を取られたくないんだ」

ブラックマンが口元を歪める

どこから生まれたのだろうか

大量の水が洪水となって、ステイルとインデックスに襲い掛かる


55 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:03:26.53 ID:g+OESOVU0
イン「ステイル!」

ステイル「インデックス!」

ブラック「ノアが箱舟を必要としたのは、その洪水の規模があまりにも大きかったからだ」

ステイル「く・・・」

ルーンのカードが水によって破かれる

ステイルの大柄な体が、簡単に流されていく

ステイル(油断しすぎたか・・・!!)

ブラック「すまんな少年よ」

ステイル「インデックス!インデックス!」

イン「ステイル・・・!」

二人が手を伸ばす

だが、それは相手には届かなかった

大量の水が、二人の体を完全に飲み込んだ

ブラック「・・・ルーン、か・・・中々に才能に溢れた少年のようだな」

愉快そうにブラックマンが笑う

ブラック「・・・さて」

くるり、と踵を返すブラックマン

ブラック「・・・最大主教はどこにいるのかね」


56 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:04:26.66 ID:g+OESOVU0
神裂「どうされました、上条当麻?」

上条「やっと来たかよ!」

美琴の話を聞いてから、二人はずっと神裂の姿を探していたのだ

美琴「神裂さん!ステイルと連絡を取ってくれない!?」

神裂「ステイルとですか?」

上条「あぁ!早くしてくれ!」

神裂「は、はい」

神裂が通信用の護符を用意する

神裂「ステイルにも一応同じものを持たせていますから・・・会話できるはずです」

美琴「・・・た、ただの紙なのに?」

上条「護符って便利だな・・・」

神裂「・・・おかしい」

上条「どうした?」

神裂「・・・魔術的な方法で連絡を取ろうとしているのです、いくら距離が離れていてもステイルが見逃すわけが・・・」

美琴「!まさかもう!?」

神裂「もう・・・?何かあるのですか?」


57 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:04:54.95 ID:g+OESOVU0
上条「ブラックマンは学園都市になんか来てないんだ!」

神裂「な、なんですって!?」

上条「なんで牢獄の中にいたブラックマンがインデックスの居場所なんて分かる?そもそもインデックスが学園都市に来たのはブラックマンが捕まったずっと後なんだろ!?」

神裂「そういえば・・・」

美琴「最大主教っていう人も間違ってたのね・・・」

神裂「あの最大主教が間違えるなんて思えませんが・・・」

上条「とにかく、俺達もイギリスに向かうぞ!」

美琴「そうよ!」

神裂「ですがあなたたちを巻き込むことは・・・」

上条「巻き込むだと!?ふざけんじゃねぇよ!」

上条が神裂に詰め寄る

上条「俺の友達が事件に巻き込まれたかもしれねぇんだ!他人事みたいに黙って見てろって言うのか!?」

神裂「・・・それは分かっています、ですが今回の相手は本当に・・・」

上条「そんなことを言ってるんじゃねぇよ!相手なんて知らねぇ!インデックスやステイルが危険な状況にいることだけは分かるんだよ!」

神裂「・・・」

上条「黙って見過ごせるかよ!」

58 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:05:34.89 ID:g+OESOVU0
神裂「はぁ・・・分かりました・・・」

美琴「・・・当麻、どうする?」

上条「・・・みんなは巻き込めない」

神裂「・・・あなた方の友人を巻き込むことだけは・・・」

上条「俺だってそれはイヤなんだよ」

美琴「・・・私もよ」

神裂「・・・では行きましょうか」

上条「・・・あぁ」

綺麗な青空が広がっている

だが、それが不気味なほどに青さを放っていた


テクパトル「・・・さて、今日は休み・・・か」

19090「そうですね・・・」

テクパトル「・・・ん?」

部屋の中で幸せな時間を過ごしていた二人

だが、テクパトルがどこか遠くを見つめる

19090「?どうしました?」

テクパトル「・・・いや」

大きな魔力の流れを感じる

テクパトル(・・・学園都市に聖人並の人間が来ているのか・・・?)


59 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:06:16.76 ID:g+OESOVU0
エツァリ「・・・ショチトル」

ショチトル「分かっている・・・聖人レベルの人間が紛れ込んでいるようだな」

二人が公園のベンチに座りながら空を睨む

エツァリ「・・・昨日はあまり感じなかったんですが」

ショチトル「あまり・・・か、一応はお前も感じていたか」

エツァリ「・・・行きますか?」

ショチトル「私達が行く義理なんてないぞ」

エツァリ「・・・魔術側の人間が学園都市にいるということは何かしら問題が起きているということでしょう」

ショチトル「今はもう平和じゃないか」

エツァリ「・・・イヤな予感がするんですよ」

ショチトル「・・・」

エツァリ「自分は行きますよ・・・もしも何かしらの問題があるならば解決しなければ」

ショチトル「平和な日常を失うかもしれないぞ」

エツァリ「平和な日常を守るためには必要な戦いかもしれませんよ」

ショチトル「・・・ならば私も行こうか」

エツァリ「いいんですか?」

ショチトル「お前が行くなら私も行くさ」

エツァリ「ありがとうございます」


60 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:06:51.96 ID:g+OESOVU0
テクパトル「・・・アレイスター、聞いてるか?」

アレイ「なんだ」

テクパトル「・・・学園都市に聖人レベルの人間が紛れ込んでいるようだが」

アレイ「・・・そのようだな」

テクパトル「・・・何があったか知らないか?」

アレイ「・・・イギリス清教の牢獄から囚人が逃げ出したようだ」

テクパトル「・・・よくそんな情報を得られたな」

アレイ「私はこれでもイギリス清教と繋がりがあった人間だ」

テクパトル「よく知ってるさ・・・その囚人の名は?」

アレイ「ブラックマンだ」

テクパトル「また面白い名前だな」

アレイ「・・・どうしたいのだ、お前は」

テクパトル「・・・なぜ聖人がここにいる」

アレイ「どうやらブラックマンが学園都市に来たと勘違いしたようだな」

テクパトル「それだけか」

アレイ「・・・だがな、その聖人は幻想殺しと繋がりがある」



61 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:07:34.64 ID:g+OESOVU0
テクパトル「何?」

テクパトルが眉をひそめた

アレイ「どうやら幻想殺しと超電磁砲はイギリスへ向かうらしい」

テクパトル「・・・あの二人が・・・か」

アレイ「行きたいのだろう」

テクパトル「明日には仕事がある・・・まだ入社したばかりで休めるか」

アレイ「・・・私が手続きでもすればいくらでも休めるが」

テクパトル「・・・」

アレイ「行きたいのだろう、お前はあの二人を好いているからな」

テクパトル「・・・悪いな、頼んでいいか」

アレイ「土産話を聞かせてくれればそれでいい」

テクパトル「・・・あぁ」

テクパトルが19090号に近づく

19090「?どうかしたんですかテっくん?」

テクパトル「大切な話があるんだよ」

19090「大切な話・・・ですか?」

テクパトル「・・・上条と義姉さんがイギリスへ向かう」


62 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:08:01.89 ID:g+OESOVU0
19090「?旅行ですか?」

テクパトル「・・・イギリス清教でいざこざがあったらしいんだ」

19090「・・・魔術側ですか」

テクパトル「・・・あの二人はそこに向かうんだ」

19090「・・・テっくんはどうするんですか?」

テクパトル「向かうさ」

テクパトルが苦笑する

平和な時間など、簡単に崩れ去るのだ

テクパトル「・・・エツァリ達も恐らくは向かうだろうな、あいつらは魔術に敏感だから」

19090「・・・美月は・・・どうすればいいんですか?」

テクパトル「・・・お前には・・・あまり面倒なことに首を突っ込まないでほしいんだよ」

19090「・・・テっくん、美月はテっくんといたいんですよ?」

テクパトル「・・・分かってるさ」

テクパトルが頭を抱える

彼はブラックマンという男のことを若干だが知っていた

テクパトルやエツァリが所属していた組織

その組織の要注意人物リストに載っていた人間だった


63 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:09:23.91 ID:g+OESOVU0
テクパトル「・・・お前は」

19090「足手まといにはなりません・・・テっくん、美月は必ずテっくんの力になりますから」

テクパトル「・・・分かった」

テクパトルが携帯電話を取り出す

エツァリの電話番号をじっと見つめる

テクパトル「・・・この番号を押せば、しばらくは平和な日常に戻ってこれないんだな」

19090「・・・エツァリさんに手伝ってもらわなければならないんですね」

テクパトル「・・・久しぶりだよ、魔術に関する話であいつに電話を掛けるのは」


テクパトル「・・・エツァリか」

エツァリ『・・・いいタイミングで電話を掛けてきてくれましたね』

テクパトル「ということはお前も知っているのだろう?」

エツァリ『何か問題が起きたようですね・・・あちらで』

テクパトル「ブラックマンが逃げ出したそうだ」

エツァリ『・・・たしかイギリス清教屈指の異端者でしたね』


64 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:11:29.51 ID:g+OESOVU0
テクパトル「上条と義姉さんはおそらく向かうだろう」

エツァリ『・・・なぜ聖人がここに?』

テクパトル「ブラックマンがここに着たと思い込んでいるらしくてな」

エツァリ『なるほど』

テクパトル「・・・向かうか」

エツァリ『・・・えぇ、向かいますよ』

テクパトル「俺は上条たちのために向かう」

エツァリ『自分はこの平穏なときを守るために』

テクパトル「・・・エツァリ、ショチトルも行くのだろう」

エツァリ『えぇ、19090号さんも?』

テクパトル「あぁ」

エツァリ『・・・互いに、重いものを背負いましたね』

テクパトル「・・・おかげで常に前のめりさ」

エツァリ『いいことではないですか』

テクパトル「・・・そうかもな」


65 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:13:28.94 ID:g+OESOVU0
エツァリ『・・・明日、自分達は朝一でイギリスへ向かいます』

テクパトル「俺もそうしよう」

エツァリ『・・・一緒に、ですか』

テクパトル「こうしてまたお前と魔術側に関わるとはな」

エツァリ『仕方ありませんよ』

テクパトル「・・・死なないように努力しようぜ」

エツァリ『えぇ、互いに』

それだけ話して、テクパトルが通話を切る

テクパトル「・・・アレイスター、他のヤツらには話しててくれ」

アレイ「あぁ」

テクパトル「・・・魔術側、か」

19090「・・・」

テクパトル「いいな、面白くなりそうだよ」


テクパトル「・・・久しぶりに・・・な」



66 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:15:41.95 ID:g+OESOVU0
ローラ「・・・学園都市もそろそろ動くかしらね」

最大主教は呟いていた

彼女の考えは、当たっている

だがそれはたいした問題ではない

むしろ学園都市側がブラックマンの捕獲に勤めてくれれば嬉しいものだ

ローラ「・・・ブラックマンは禁書目録と接触するかしらね」

ローラ「まぁ・・・恐らくはしないだろうけど」

ローラ「なら、接触させるまでよ」

ローラ「・・・面白いことになればいいわね、ねぇ」

ローラがどこか遠くを見つめる

何かが、始まっていた

ローラ「ブラックマン」



幻想殺しと超電磁砲

偽物とそれを追った女

過ちを犯した男と妹達

6人の平和な日常は、静かに崩れた

まるで少しずつ、岩が水によって削られていくように

そして彼らはそれを望んだ

ただ、友達を守るために



67 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:16:15.18 ID:g+OESOVU0
上条「・・・なんでお前達がいるんだよ」

イギリス行きの飛行機に乗るため、上条と美琴、神裂は空港に来ていた

テクパトル「・・・聞いたぞ、イギリス清教で厄介事があったんだってな」

19090「・・・そうなんですよね」

神裂「・・・なぜ知っているんですか」

エツァリ「いろいろとあるんですよ・・・とにかく、そこは関係ないでしょう」

ショチトル「・・・言っておくが、私達は勝手に首を突っ込んだだけだ、お前達に責任はない」

テクパトル「邪魔だと思うなら切り捨てろ、情報など提供しなくてもいい」

19090「ですが、お二人が孤独に戦うことだけは許せませんから」

美琴「・・・ありがとう、みんな」

上条「・・・なんだか急な話だよな・・・」

上条がため息をつく

昔は本当に、よくこんなことがあった

いつも面倒事にいきなり巻き込まれた

魔術師に命を狙われたり、第三次世界大戦の真ん中に立ったり

今はそんな争いから遠退いたはずだった

上条(不幸だよな・・・ホント、事件に巻き込まれたのは不幸だよ)


68 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:16:43.29 ID:g+OESOVU0
上条が力強く右手を握り締める

友達を守れるなら、巻き込まれてもよかった

黙って見過ごして、友達を失うよりずっと

上条「行くぞみんな・・・平和な日常を取り戻すんだ」

テクパトル「イギリスが平和でなくても学園都市には関係ないがな」

上条「そんなちっぽけな男にはなりたくないんだ」

テクパトル「上等だ」

エツァリ「・・・敵は一人です」

ショチトル「ならば徹底的に潰すとしようか」

神裂「・・・間もなく飛行機が到着します」

美琴「みんな・・・絶対に、生きて帰ってくるわよ」

上条「当たり前だろ」

ちょうど、飛行機の到着を知らせるアナウンスが流れた

7人はゆっくりと歩き出す

上条(あぁそうだ・・・物語の始まりは不幸なんだ)


上条(ならせめて・・・結末くらいは最高のハッピーエンドにしてやらなくちゃな!)



69 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:17:17.09 ID:g+OESOVU0
ステイル「げほっ・・・く・・・」

大量の水に押し流されたステイル

彼は、先程の戦闘が行われた場所からかなり離れた橋の上に流れ着いていた

魔術的な水だろうが、穴があったらそこに落ちる

橋の上を普通に素通りなど出来ず、川に流れていったのだ

ステイル「く・・・インデックス!インデックス!」

周りを見ても、インデックスの姿はない

あの時手を掴むことが出来なかったのだ

ステイル「情けない・・・」

イギリスに来れば安心だと思っていたことが間違いだった

冷静になってみれば、ブラックマンには偽造パスポートを作る時間はなかった

インデックスが学園都市にいるという情報も知るはずがない

ステイル「・・・だが・・・ならばなぜインデックスを狙った・・・?」

術式を完成させるには、彼女が必要なはずだ

ステイル「・・・あの子が禁書目録だと知らなかったか・・・?」

無理もない


70 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:17:43.63 ID:g+OESOVU0
ブラックマンは長い間牢獄にいたのだ

インデックスの外見を知らなくても無理はない

ステイル「・・・とにかく、今はインデックスを探さなければならないな」

ずぶ濡れの体に鞭を打って、ステイルが歩き出す

ステイル(無事でいてくれ・・・インデックス!)


イン「・・・た、助かったんだよ・・・」

オルソラ「おやおや・・・インデックスさんでございますね」

イン「・・・ありがとう、オルソラ」

インデックスはステイルと全く反対の方向に流されていた

そこでオルソラによって回収されたのだ

オルソラ「しかしなぜあなた様がここに・・・?イギリス清教が全力を尽くして回収するはずでしたが・・・」

イン「!ステイル、ステイルはいない!?」

オルソラ「お、落ち着いてほしいのでございますよ」

イン「ステイル・・・」

オルソラ「あなた様はなぜ・・・」

イン「ブラックマン・・・」

オルソラ「!なぜそれを知っているのでございますか!?」


71 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:18:43.49 ID:g+OESOVU0
イン「・・・ブラックマンって言ってたんだよ、私とステイルを襲った人が・・・」

オルソラ「まさか・・・ブラックマンは学園都市にいるのでは・・・」

イン「違うんだよ!イギリスにいて・・・」

オルソラ「・・・ではなぜあなた様まで攻撃したのでございましょうか・・・」

イン「分からないんだよ・・・」

インデックスがオルソラにしがみつく

イン「怖かった・・・」

オルソラ「大丈夫なのでございますよ・・・」

強く、オルソラがインデックスを抱きしめる

オルソラ(・・・ならば・・・ブラックマンはどこに向かったのでございましょうか・・・?)


ブラック「ん・・・?どうやら女子寮は改修されたようだな」

ブラックマンはイギリス清教の女子寮の前に立っていた

イギリスの町並みは、彼が知っているものと大分変わっていた

適当にうろついていたら、女子寮に着いてしまったのだ

彼が知る女子寮は、もっと薄汚い建物だったはずだ

ブラック「・・・それにしてもずいぶんと綺麗に・・・」

アンジェレネ「あ、あの・・・」


72 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:19:24.97 ID:g+OESOVU0
ブラック「ん?」

ブラックマンが突然、後ろから声を掛けられる

とても小さな少女だ

もちろん、年齢が幼いのもあるだろう

だがそれにしても小さかった

ブラックマンは長身ではあるのだが、それを差し引いてもかなり低い身長だ

ブラック「・・・」

アンジェレネ「あ、えっと・・・何か女子寮に用事でしょうか?」

ブラック「・・・君はここの住人か」

アンジェレネ「あ、えっと・・・」

少女が少し返答に困ったようなそぶりを見せる

アンジェレネ「私は・・・」


ルチア「シスターアンジェレネ!今すぐそこを離れなさい!」

アンジェレネ「!シスタールチア!それにシスターアニェーゼも・・・どうしたんですか?」

アニェーゼとルチアの手には買物袋があった

彼女達は女子寮の留守番を任されていたのだ


73 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:20:35.52 ID:g+OESOVU0
ブラックマンは学園都市にいる

ならば、イギリスは安全

そう聞かされたから、女子寮の留守番を任された

アニェーゼたちは命を張ってまでイギリス清教を守るつもりはなかった

出来る限り安全な場所にいたかった

アンジェレネのような少女を守るために

それが一番の得策だったはずだから

アンジェレネ「その・・・なんでそんなに怖い顔を」

アニェーゼ「そいつ・・・ブラックマンなんですよ!」

アンジェレネ「!?」

アンジェレネがブラックマンの顔をじっと見つめる

たしかに、資料にあった男と瓜二つだ

だが

だが、ブラックマンは学園都市に

ブラック「・・・君達もイギリス清教の人間かい?修道服はローマ・・・」

アニェーゼ「ふん!」

アニェーゼがブラックマンに駆け寄り、その足を払おうとする

ブラック「おっと」


74 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:21:25.16 ID:g+OESOVU0
おどけたような声を出しながら、ブラックマンはそれをかわす

アニェーゼ「なんでこんなとこに異端者がいるんですか!?」

ブラック「異端者などと言わないでくれ」

ルチア「シスターアンジェレネ、無事ですか!?」

アンジェレネ「あ・・・は、はい」

アニェーゼ「くっ・・・シスターアンジェレネ、戦えますか!?ここでこんな異端者はぶっ殺しちまいましょう!」

アニェーゼが強気に出る

だが彼女の手の中にあるのは買物袋だ

買い出しに向かったアニェーゼとルチアはもちろん武器など持っていない

だがアンジェレネは違う

彼女は暇つぶしに辺りを散歩していただけなのだ

アンジェレネ「さ、下がっていてください!」

アンジェレネが硬貨の入った袋を取り出す

ブラック「おや、何か魔術を使うのかい」

アンジェレネ「来たれ!十二使徒の一人!」

ぶん、と袋を振り回す

硬貨が辺りにばらまかれる


75 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:21:58.82 ID:g+OESOVU0
それらは魔術的な攻撃をブラックマンに加えるだろう

そして、彼は見事に捕まる

はずなのだ

ブラック「銀子とは少し違うが・・・まぁ良かろう」

アニェーゼ「なんですって・・・?」

ブラック「主は言ったぞ、カエサルの硬貨はカエサルに返せと」

ブラックマンが呟いた瞬間、空を舞っていた硬貨があらぬ方向へ飛んでいく

アンジェレネ「な・・・」

ブラック「ほう・・・今は貨幣局は向こうにあるのか・・・意外とこういう適当な使い方でも出来るものなのだな」

クスクスとブラックマンが笑う

ブラック「ん・・・だが銀子ならば土に埋めていてほしかったものだな」

ルチア「シスターアンジェレネ!離れなさい!」

アンジェレネ「は、はい!」

アンジェレネがブラックマンと距離を置く

ブラック「・・・そう怯えてくれるな」

アニェーゼ「アンタみたいな狂人を前にして怯えないほうがどうかしてますよ」


76 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:22:43.01 ID:g+OESOVU0
ブラック「狂人とはひどいな」

ブラックマンが苦そうな顔をする

ブラック「君達は結局・・・イギリス清教のシスターなんだな?」

アニェーゼ「ふん・・・それがなんなんですか」

ブラック「・・・見たところはかなり若いな、君達が生まれた頃はすでにイギリス清教も汚れていたのだろう」

ルチア「・・・何を言っているんですか」

ブラック「いやいや、中々面白かった」

ブラックマンが女子寮をじっと見つめる

彼が少し動けば、アニェーゼ達は直ぐさま迎撃する予定だ

ブラック「・・・君、名前は?」

アンジェレネ「は、はい?」

ルチア「シスターアンジェレネ、耳を貸す必要はありません!」

ブラック「名前だよ、真名だ」

アンジェレネ「ア・・・アンジェレネです」

ブラック「アンジェレネ・・・か、君の魔術は中々面白いな」

アニェーゼ「シスターアンジェレネ!」


77 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:23:37.19 ID:g+OESOVU0
アンジェレネ「ご、ごめんなさい・・・」

ブラック「・・・いや、若いのにずいぶんと立派なことだ」

ルチア「ブラックマン・・・あなたは学園都市にいるはずではなかったのですか」

ブラック「あの科学が栄える酔狂な街か?なぜ私があんなところに行かねばならない、機械独特の臭いは苦手だよ」

アニェーゼ「・・・ならばあなたはなぜ・・・」

ブラック「脱獄したか?そんなこと、言うまでもあるまい」

アニェーゼ「ちっ・・・ぶっ殺しちまいたいですよ」

ブラック「君じゃ無理だ・・・最大主教はどうした、元気かね?」

ルチア「・・・答える義理はありません」

ブラック「まさかくたばってはいないだろうな?」

ルチア「答える義理はないと!」

ブラック「・・・君は怖いな、若いうちは無邪気でいたまえ」

ルチア「・・・大罪人が何を言いますか」

アニェーゼ「あなたの術式は不完全、イギリス清教を敵に回した今・・・あなたの人生なんて終わったも同然なんですよ」

ブラック「そんなもの、とうの昔に終わったさ」

ブラックマンが女子寮に背を向ける


78 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:24:34.32 ID:g+OESOVU0
ブラック「君達に免じてここはほうっておこう・・・とは言っても別にここに手を出すつもりはなかったが」

アニェーゼ「どこへ向かうつもりですか・・・返答次第では命の保証が出来ませんけど」

ブラック「君達は勘違いしているな・・・自分達の力を過信しすぎだ」

ルチア「・・・どこへ向かうのか聞いているのです」

ブラック「そうだな・・・最大主教のところにでも」

ルチア「!」

ブラック「・・・止めないでくれよ、じゃなきゃ君達を殺さなければならない」

カツカツ、と音を立てながらブラックマンが歩く

ブラック「・・・若いことはいいことだぞ、諸君」

アンジェレネ「・・・待ってください」

ブラック「何かね」

アンジェレネ「なんで・・・なんで、あなたはこんなことをするんですか」

ブラック「何を?」

アンジェレネ「人を殺して・・・誰かを傷つけて」

ブラック「当たり前だろう、理由があるからさ」

当然であるかのようにブラックマンが答える



79 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:25:13.23 ID:g+OESOVU0
ルチア「シスターアンジェレネ、それ以上はやめなさい」

アンジェレネ「でも・・・!」

ブラック「私に説得など無意味だ」

アニェーゼ「・・・最大主教の所に行くんですか」

ブラック「あぁ、君達の出る幕ではないと思うがね」

アニェーゼ「・・・一つ聞きたいことがあるんですが」

ブラック「聞こうじゃないか」

アニェーゼ「あなたの魔法名はなんなんですか」

ブラック「そんなことを聞いてどうする」

アニェーゼ「・・・一応聞いておこうかと」

ブラック「必要ないだろう、君達を殺す気はないからな」

ブラックマンが手を振ってからその場を去る

三人はそれを黙って見つめるしか出来なかった

アンジェレネ「・・・あの人は・・・」

ルチア「・・・最大主教に至急連絡を」

アニェーゼ「分かってますよ」

80 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:25:47.78 ID:g+OESOVU0
アニェーゼが女子寮の中へと駆け足で向かう

ルチア「・・・シスターアンジェレネ」

アンジェレネ「・・・ごめんなさい」

ルチア「無事で何よりです・・・」

アンジェレネ「え?」

アンジェレネがルチアを見つめる

その目尻には、涙のようなものが浮かんでいた

ルチア「・・・私達が束になっても・・・ブラックマンには敵いません・・・対峙してわかりました」

アンジェレネ「・・・大丈夫ですよ、きっと」

ルチア「・・・きっと、ですか・・・」


ルチア(きっとなどという希望を述べていられる事態では無くなってしまったんですよ・・・)


ローラ「・・・分かった、連絡ご苦労」

アニェーゼからの連絡の電話を終えたローラは、笑っていた

ローラ「・・・ブラックマンはやはりイギリスにいたか」

ローラ「・・・禁書目録はすでにイギリスにいる・・・これでヤツの術式を完成させられる」

ローラ「・・・聖書の記述を実際に引き起こしてしまうなんて無茶苦茶な魔術よ」


81 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:26:26.40 ID:g+OESOVU0
カップに注がれた紅茶を飲みながら、楽しそうにローラが笑う

その紅茶には、ローラの歪んだ笑みが浮かんでいた

ローラ「・・・恐らくは神裂は帰ってくる・・・学園都市の輩も何人か」

ローラ「そうなれば・・・学園都市に攻撃する口実もできる」

ローラ「あとは・・・ブラックマンと学園都市側の人間の泥仕合を見つめるとしようか」

テーブルの上にはチェス盤があった

ローラ「クイーンは私、敵のキングはブラックマン」

ローラ「ならば・・・しんがりを勤めるポーンは誰かしら」



テクパトル「・・・詳しい情報は求めないが・・・一つだけ聞きたい」

神裂「なんでしょうか」

飛行機の中、テクパトルは腕を組んでいた

テクパトル「・・・なぜブラックマンのような人間を逃してしまった?」

19090「・・・テっくんはその人を知っているのですか?」

テクパトル「聞いたことがあるだけだがな」

神裂「・・・監視をしていた人間を殺したそうです」

テクパトル「・・・待て、どうやって」


82 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:27:02.07 ID:g+OESOVU0
神裂「・・・彼は不可思議な力を使います・・・聖書に書かれている現象を引き起こせるのですよ」

エツァリ「・・・それはずいぶんと大雑把な」

神裂「・・・おそらく何かしらの魔術を・・・」

テクパトル「・・・魔術を封じる結界は?」

神裂「・・・あなたがなぜそれを知っておられるのですか」

テクパトル「イギリス清教の情報はある程度あるさ」

ショチトル「・・・そうだ、魔術を行使できるはずはないんじゃないか?」

神裂「・・・ではどうやって・・・」

美琴「・・・外部に仲間がいた・・・?」

19090「それはありえますね・・・」

神裂「・・・どうでしょうか」

上条「?どういうことだよ」

神裂「ブラックマンはイギリス清教の中では一番の異端者と言ってもいいのです」

上条「?あぁ」

神裂「・・・イギリス清教の中に仲間がいるとは考えられません」

上条「そうか?そいつの思想に中てられたりしたやつが・・・」

神裂「・・・だとすればなおさらです・・・そんな人間がいたら、何も事件を起こさずにいるはずがない」

83 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:27:29.04 ID:g+OESOVU0
テクパトル「・・・ブラックマンはイギリス清教を憎んでいたのか?」

神裂「おそらくは」

ショチトル「・・・そんな人間がなぜイギリス清教に?」

上条「内部アンチってやつか?」

神裂「・・・いえ、そうではないでしょう・・・昔は敬虔な十字教徒だったようなんです」

上条「・・・昔は・・・か」

神裂「・・・彼が初めての事件を起こしたのは・・・13年前、彼が24歳の頃です」

美琴「・・・その時はどんなことを?」

神裂「・・・その時はただの傷害だったようです」

エツァリ「・・・なるほど」

神裂「恥ずかしい話ですが・・・イギリス清教の中で、傷害はそこまで珍しくないんですよ」

テクパトル「・・・組織内の分裂なんか当たり前だからな」

19090「・・・では、初めての・・・殺人は?」

神裂「・・・その傷害から5日後のことだったそうです」

ショチトル「5日?ずいぶんとハイペースだな」

神裂「・・・イギリス清教の神父を2人・・・殺害したのが始まりでした」

テクパトル「・・・」

美琴「・・・どうしてそんなことを?」


84 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:28:09.56 ID:g+OESOVU0
神裂「彼は動機を語りませんでした・・・ただ、一つだけ分かっていることは・・・彼の心はすでにイギリス清教にないということです」

テクパトル「・・・どうかな」

エツァリ「?どういうことですか?」

上条「・・・引っかかることがあるのか?」

テクパトル「なんでもないさ」

テクパトルが目を背ける

テクパトル(・・・めんどうな敵になりそうだ)

神裂「・・・とりあえず、今お伝えできるのはこれくらいです」

上条「・・・イギリスまであと1時間だ」

美琴「・・・寝たほうがいいのかしら」

エツァリ「えぇ・・・そうしましょう」

19090「・・・」

一同が目を閉じる

だが、誰も眠ることが出来ない

大量虐殺

そんな罪を犯した人間と、これから対峙するのだろう

それを考えると、眠れるわけがなかった



85 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:28:40.70 ID:g+OESOVU0
ブラック「・・・おかしいな」

ブラックマンが空を睨む

彼は最大主教のいる聖堂に向かっているはずだ

しかし、いつまで経っても前に進んでいない

ブラック(・・・結界か)

はぁ、と彼は溜め息をつく

最大主教の用心振りには昔から呆れていた

そこまでして自分の身を守りたいのだろうか

ブラック「・・・おや」

遠くのほうから何かが来ている

ブラック(数は・・・20?いや、30か)

近づいてくる軍勢は、彼の知らない者たちだった


建宮「さーて・・・最大主教直々の命なのよなー!!」

五和「ですが・・・本当にイギリスにいるのでしょうか?」

対馬「・・・すでに確認済みのようだから」

五和「そうですか・・・」

建宮「・・・これで我々が手柄を上げれば・・・」

対馬「あなたじゃ無理ですよ・・・聞きましたか?ステイル=マグヌスが敗北したそうですよ」

86 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:29:15.25 ID:g+OESOVU0
五和「ま、まさか・・・」

対馬「少なくとも、禁書目録のほうは命は無事だったそうです・・・なんでも、遠くに流されただけで」

建宮「流された?変な話なのよな」

対馬「・・・ん?・・・!!いました、あの男です!!!」

建宮「!?」

天草式十字清教

そのしんがりを勤めていた三人が、ブラックマンの姿を捉える

建宮「・・・気を引き締めろよ」

五和「は、はい」

対馬「・・・互いに生きて帰れることを祈るわ」

建宮「行くぞ!!ヤツに救いなどいらんのよな!!!」

一同「おう!!!!」


ブラック「・・・追っ手をよこす、か・・・」

めんどくさそうにブラックマンが溜め息をつく

最大主教は本当に用心深い

ブラック(・・・どうやら、迎撃するつもりのようだな)

ブラック(ならばよかろう、こちらも迎え撃つしかあるまい)




87 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:29:55.61 ID:g+OESOVU0
二つの力が交差する

一つは正義

一つは悪

誰もが、そう思っていた

ブラックマンでさえも


建宮「・・・ブラックマン・・・なのよな?」

ブラック「・・・その通り、君たちは」

建宮「天草式・・・建宮だ」

ブラック「ほう、珍しいゲストだな」

対馬「・・・よくもまぁ無防備で歩いていられますね」

ブラック「・・・無防備ではあるまい」

トントン、とブラックマンが頭を叩く

ブラック「ここに武器となる知識は詰まっているのでな」

五和「・・・」

五和が無言のまま、槍を振るう

ブラック「おっと」

五和「・・・かわします、か・・・受け止めることはできないのですね」

ブラック「・・・困ったものだな、いきなり武器を・・・」


88 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:30:31.79 ID:g+OESOVU0
建宮「戦いに流儀など必要ないのよな」

建宮もフランヴェルゼを抜く

ブラック「・・・全く困ったものだよ、そんなに喧喧としてくれるな」

対馬「・・・この状況でのろのろとしているあなたが信じられませんよ」

ブラック「分かった分かったよ、仕方ないな」

ブラックマンがパチンと指を鳴らす

途端に、空中に燃え盛る炎の剣が現れる

五和「!!」

ブラック「・・・ケルビムと炎の剣だ、アダムとイブを楽園に入れないようにするためのものだったな」

建宮「・・・そんなもの!!」

建宮がフランヴェルゼを振るった

カキン、と音がして二つの剣がぶつかる

しかし、跳ね返されたのはフランヴェルゼのほうだった

建宮「な・・・」

ブラック「永遠に回り続ける炎の剣だ、止められるわけがあるまい」

五和「・・・ならば本体を叩きます!!!」

五和がブラックマンに近づく


89 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:31:09.48 ID:g+OESOVU0
ブラック「おや、いいのか?」


ブラック「楽園に踏み込むことは許されなかったのだよ・・・アダムとイブはな」

炎の剣から、突如火が飛び出る

全方向に向け、灼熱の炎が噴出されるのだ

五和「しまっ・・・」

対馬「五和!!どきなさい!!!」

対馬が護符を投げつける

そこからは大量の水が溢れ出す

ブラック(なんだ?)

それはブラックマンの知らない術式だった

五和「あ、ありがとうございます!」

建宮「な、なんなのよな・・・あの男は」

ブラック「・・・なんだ、今の術式は」

対馬「日本に古来より伝わる術式よ、日本神道の物・・・」

ブラック「ほう・・・面白いな」

対馬「私達からしたらあなたのほうが不思議なのよ」

ブラック「・・・不思議かね?十字教において一番重要な文献は聖書だぞ」


90 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:31:46.64 ID:g+OESOVU0
対馬「・・・それを操るなんて、神にでもなったつもりかしら」

ブラック「聖書自体は人の述べたことがほとんどだぞ」

対馬「知らないわよ」

対馬が再び護符を取り出す

ブラック「・・・全く、君たちは面白いな・・・」

ブラックマンが炎の剣を消す

ブラック「・・・悪いな、そんな君たちを私は止めなければならない」

対馬「・・・止められる?」

建宮「対馬・・・気をつけろ」

対馬「問題ないわよ」

対馬が護符を投げつける

それは、拘束用の護符

ブラックマンとの勝負は、決して生死が勝ち負けを左右するのではない

捕らえてしまえば、それで終わりなのだ

ブラック「・・・ソドムとゴモラを焼いた火を、君たちは知ってるかね」

建宮「!!対馬、避けろ!!」

対馬「え・・・?」

91 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:32:31.63 ID:g+OESOVU0
ブラックマンが空を見上げる

ブラック「すまんな、天草式の人間達よ」

空から、何かが降ってくる

建宮「くそ!!走れ!!!」

五和「対馬さん!!」

五和が対馬に手を伸ばす

対馬「い、今彼を止めないと・・・」

五和「いいから!!」

二人が少し遅れて走り出す

ブラック「・・・美しい友情、か」

はぁ、とブラックマンが溜め息をつく

ブラック「ならば振り返らないようにな・・・塩の柱になるぞ」


建宮「急げ、五和、対馬!!!!」

対馬「くっ・・・」

五和「急いで、対馬さん!!!!」

対馬「人の話を聞いて・・・」




92 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:33:25.90 ID:g+OESOVU0
ブラック(・・・さて、もういいかな)

パチン、とブラックマンが指を鳴らす

空から降ってきていた炎は、すぐさま消えてなくなる

綺麗さっぱり、だ


対馬「・・・」

五和「・・・え?」

建宮「・・・は?」

ぽかん、と建宮と五和が口を開ける

それを見たブラックマンが呟く


ブラック「・・・あんな大質量の炎を落とせば私まで燃えるだろう、そんなことをするわけがあるまい」

ははは、と笑ってからブラックマンが駆けていく


建宮「や、やられたのよな!!!!」

五和「お、追いますよ!!」

対馬「ほら!!やーっぱ私の読みが当たってた!!!」

五和「偶然です!!!!」

建宮「くっそー!!!俺たちにはシリアスは似合わないとでも言いたいのよなー!!??」



93 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:34:01.71 ID:g+OESOVU0
上条「・・・イギリス・・・か」

美琴「久しぶりね・・・」

神裂「今は懐かしんでいる時間はありませんよ」

7人はイギリスの空港に到着していた

テクパトル「・・・おい、もう何か始まってるみたいだぞ」

神裂「分かっていますよ」

エツァリ「・・・魔術の流れを感じますね」

上条「ま、まさかもうやり合ってるのか!?」

美琴「・・・急ぎましょう」

テクパトル「そう急ぐな」

19090「ま、まずは落ち着いて・・・」

ショチトル「・・・テクパトル、冷静なのはいいことだが急がなければならないこともあるぞ」

テクパトル「・・・焦りが敗北を生むぞ」

ショチトル「・・・分かっているさ」

神裂「・・・とにかく、まずは女子寮に向かいましょう」

上条「女子寮?」


94 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:34:29.74 ID:g+OESOVU0
神裂「インデックスとステイルならまずはそこに向かうでしょうから・・・もちろん、無事ならばですが」

19090「なるほど・・・」

テクパトル「・・・」

ショチトル「・・・私は別行動で行くぞ」

エツァリ「な、何を言って・・・」

ショチトル「二手に分かれるのは常套手段だろう、それに私一人が抜けたところで戦力の差は生まれない」

エツァリ「ですが・・・一人での行動など」

ショチトル「幻想殺しに超電磁砲、聖人に原典所持者・・・そちらはそれだけで十分だ」

ショチトルが一同に背を向ける

エツァリ「勝手な行動は謹んでください、ショチトル!」

ショチトル「・・・エツァリよ、これは綺麗事ではないが・・・私はな、別に死ぬつもりではないぞ」

エツァリ「・・・」

ショチトル「なに、平穏な日々をすぐに取り戻したいだけさ」

手を振ってから、ショチトルが駆けていく

19090「・・・」

美琴「あの馬鹿・・・」

エツァリ「・・・自分も」

テクパトル「上条、19090号のことをしばらく頼んでもいいか」


95 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:35:04.19 ID:g+OESOVU0
上条「・・・は?」

テクパトル「ショチトルを一人にはできまい」

19090「テっくん・・・」

エツァリ「その必要はないですよ、自分が行きます」

テクパトル「分からんかエツァリ?ショチトルがなぜお前を置いていったのかを・・・このメンバーの中にいれば安心だからだ」

エツァリ「・・・自分だけが安全な場所で黙って見ていろというのですか?」

テクパトル「・・・安全かどうかはこの後にしか分からないだろ」

エツァリ「・・・テクパトル」

テクパトル「俺はこういうのに慣れてるんだ、別に死にに行こうとは思っていない」

テクパトルが19090号を見つめる

19090「テっくん・・・」

テクパトル「すまんな、バカな部下が一人いたもんだ」

19090「・・・無事に帰ってきてくださいね」

テクパトル「あぁ」

微笑んでから、テクパトルも駆けていく


上条「・・・エツァリ」

エツァリ「・・・行きましょう、我々もしなければならないことがあります」


96 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:35:36.30 ID:g+OESOVU0
美琴「・・・私達がブラックマンを捕らえれば・・・あの二人にも危険はないわ」

19090「そうですね・・・」

神裂「行きましょう、事は一刻を争います」

神裂が四人の顔を見回す

神裂「・・・さぁ、いざ戦場の只中へ」



ショチトル「・・・何しに来た」

テクパトル「お前一人では力不足だろう」

ショチトル「そんなことはない」

テクパトル「・・・向こうのメンバーには力があるからな、19090号も安全だ」

ショチトル「・・・ふん、急ぐぞ」

テクパトル「あぁ」


科学と魔術は交差した

駒が揃い、そして局面が動き出す

クイーンはローラ=スチュアート

キングはブラックマン

そしてポーンは


97 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:36:02.45 ID:g+OESOVU0
上条「・・・久しぶりだな、ここも」

上条たちはイギリス清教女子寮の前に来ていた

普段なら静かで、落ち着いた雰囲気の女子寮

だがなぜか、今は中が慌しいようだ

美琴「何かあったのかしら・・・」

神裂「・・・」

神裂が無言のまま女子寮のドアを開ける


シェリー「・・・アンジェレネ、よく無事だったな」

アニェーゼ「まったくですよ・・・普通なら殺されちまってるところですよ」

ルチア「・・・シスターアンジェレネ・・・大丈夫ですか?」

アンジェレネ「だ、大丈夫ですよ」


なぜか、アンジェレネがみんなに囲まれている

神裂「・・・どうしたのですか」

シェリー「ん?なんだ神裂・・・帰って来たのか」

オルソラ「・・・ブラックマンがいたのでございますよ」

神裂「!!やはりですか・・・」

アニェーゼ「・・・私達が遭遇したんですよ」


98 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:36:29.75 ID:g+OESOVU0
神裂「!!無事だったんですか!?」

ルチア「ごらんの通りです」

上条「・・・」

19090「あの・・・ブラックマンの目的は、インデックスの回収なんですよね?」

オルソラ「おそらくはそうなのでございます」

エツァリ「・・・ならば、インデックスさんがここにいると思ったのでしょうか」

上条「・・・ブラックマンは知らなかったんだろうな・・・インデックスの居場所を」

美琴「・・・だからここに来たのかしら」

上条「・・・だったらなんで何もしないで帰ったんだ?」

アニェーゼ「さぁ、異端の考えなんて分からないですよ」

アンジェレネ「で、ですけど・・・なんだか普通の人でしたよ」

ルチア「・・・そんなこと分からないでしょう、上辺だけ繕っているだけかもしれないんですよ」

上条「・・・どこにいるのか分かるか?」

アニェーゼ「さぁ、どこに行ったんでしょうかね」

美琴「・・・ねぇ、インデックスは?」

オルソラ「今は二階で寝ているのでございますよ」

上条「?なんでインデックスがここに・・・」


99 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:37:42.69 ID:g+OESOVU0
オルソラ「インデックスさんは街中でブラックマンに襲われたらしいのでございますよ」

エツァリ「!?」

19090「そ、それで無事だったんですか!?」

美琴「無事だったからここにいるんでしょ・・・」

オルソラ「ですがステイルさんはまだ見つかっていなくて・・・」

19090「それは・・・」

美琴「・・・大丈夫、大丈夫よ・・・」

シェリー「希望的観測しか出来ないな、今は」

アニェーゼ「・・・全く、一人の異端者が力を持ちすぎなんですよ」

上条「・・・なぁ、なんでブラックマンはインデックスを襲ったんだ?」

ルチア「回収するために決まっているでしょう」

上条「・・・」

アニェーゼ「何か引っかかるんですか」

上条「いや・・・気のせいかも・・・」

しれない、そう続けようとしたとき女子寮のドアが開かれた


100 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:38:12.79 ID:g+OESOVU0
ブラック(・・・おかしいな)

ブラックマンは異常に気づいていた

あまりにも、自分に対する追っ手が多すぎる

たしかに彼は重罪人だ

だがなぜか、今回の追っ手の数は多すぎる

昔自分が捕まったときの軽く10倍以上だろう

ブラック(・・・私を捕まえるためだけにか・・・?)

ブラック(それとも何か別の目的があるのか?)

天草式十字清教

そんな、小さな組織までをも投入してきているのだ

最大主教は何を考えているのか

ブラック(・・・)

彼は疑問に感じていた

最大主教の考えが全く分からない

ブラック(・・・やれやれ、何を考えているのかね・・・)

ブラック(・・・昔から、あの女の考えていることは分からないよ)


ブラック(分かりたいとも思わないがね)


101 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:38:58.20 ID:g+OESOVU0
上条「だ、誰だ?」

ローラ「おや、日本人が来たりていて?」

女子寮のドアを開けたのは最大主教だった

神裂「最大主教!」

神裂やオルソラ達が、一斉に姿勢を正す

19090「あ、あの・・・」

オルソラ「このお方はイギリス清教のNo.1と言ってもいいお方なのでございますよ」

上条「マジかよ!?」

美琴「そ、そんな人がなんでこんなところに・・・」

ローラ「インデックスを回収しに」

神裂「ま、待って下さい!インデックスは今・・・」

アニェーゼ「眠っているんですよ」

ローラ「全く、ブラックマンが学園都市にいるなんて勘違いをしてしまった私のミスなりてよ」

ローラが適当に呟く

まるで全く反省をしていないような口調だ

ローラ「とりあえず、ブラックマンはイギリスにいるのだから・・・」

ルチア「ですがここでも十分・・・」


102 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:39:29.16 ID:g+OESOVU0
ローラ「・・・お前達がブラックマンを相手に戦えるとでも?」

いきなり、ローラが英語に切り替える

ローラ「無理に決まっている、お前達ではあの男に勝てるわけがない」

アンジェレネ「ですが・・・」

ローラ「私のいる聖堂ならば結界によって守られている」

神裂「・・・分かりました」

神裂がインデックスを起こしに二階へ向かう

ローラ「・・・ところでステイルは?」

エツァリ「!そうです、ステイルさんは!?」

オルソラ「私がインデックスさんと会った時には・・・」

上条「まさか・・・やられたのか・・・?」

ルチア「・・・分かりませんが・・・彼に連絡が取れないということは確実ですね」

美琴「大丈夫なの?」

ルチア「今は信じることしか出来ません・・・」

アニェーゼ「全く、イギリス清教にはダメな魔術師しかいないんですかね」

上条「アニェーゼ!」

アニェーゼ「・・・最大主教、あなたもあなたですよ」


103 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:40:08.73 ID:g+OESOVU0
ローラ「私がこんな所にいてはいけないと?」

アニェーゼ「・・・ブラックマンが学園都市にいるなんて決め付けたのはあなたですから」

ローラ「あの状況ではインデックスと接触を謀ると思ったからな」

アニェーゼ「・・・まさか、そんなことを本当に考えていたんですか」

ローラ「そうでなければなぜあの二人を学園都市に向かわせたと言うのかしら」

アニェーゼ「・・・見損なっちまいましたよ」

アニェーゼが呆れたようにため息をつく

上条「なぁ・・・ローラさんだっけか」

ローラ「あら、何かしら日本人」

上条「日本人・・・まぁいいや・・・」

上条が頭をかく

上条「・・・インデックスのこと、守ってもらえるのか?」

ローラ「当たり前なりてよ」

上条「・・・アンタ、その口調なんとかしろよ」

ローラ「・・・分かりてよ」

上条「・・・はぁ、今はとりあえずステイルの安否を確認しないとな」

美琴「そうね・・・」



104 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:40:47.37 ID:g+OESOVU0
アンジェレネ「あ、あの・・・みなさんは学園都市から来たんですか?」

エツァリ「えぇ、あと二人いたのですが・・・」

19090「今は別行動です」

アンジェレネ「・・・別行動?」

ローラ「こんな時に二人だけとは」

ルチア「・・・あ、降りてきましたよ」

イン「眠いんだよ・・・」

ローラ「目覚めはどう、禁書目録」

イン「あ、最大主教!」

ローラ「さて、なら預かるものは預かったから帰るわね」

ローラがインデックスの手を無理矢理引っ張る

神裂「待って下さい」

ローラ「あら、どうかしたりて?」

神裂「・・・私も連れていってはもらえませんか」

ローラ「私が信じられないのかしら」

神裂「・・・インデックスのためです」


105 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:41:18.61 ID:g+OESOVU0
ローラ「分かったわ、ついてきなさい」

ローラが神裂を手招きする

神裂「上条当麻、出来ればステイルのことを」

上条「あぁ、分かってるさ」

神裂「では」

一礼してから神裂が立ち去る

上条「・・・いいのかな、これで」

美琴「仕方ないわよ、魔術に関しては向こうがプロなんだから」

上条「そうだな・・・」

ルチア「それより、あなた方のお連れの方は大丈夫なのですか?」

エツァリ「二人とも魔術師ですから大丈夫かと・・・」

アニェーゼ「待って下さい、魔術師なだけですか?」

上条「なんだよ、まずいのか?」

アニェーゼ「・・・ブラックマンの魔術について何か知っていますか?」

上条「あぁ、たしか聖書に書いてあることを実際に起こせるんだろ?」

美琴「ただし人の復活とか地球の想像みたいなあまりにもデカすぎる規模のは無理だったわよね」

アンジェレネ「そ、それがどういうことか分かりますか?」


106 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:41:54.44 ID:g+OESOVU0
19090「・・・と、言いますと?」

ルチア「聖書の記述を操れるんですよ、制限があるにしても」

上条「・・・二人だけなら危ないってことか?」

アニェーゼ「・・・仮に二人が実力者だとしても、ブラックマンは格が違いますよ」

シェリー「全く、無用心だな」

オルソラ「・・・何事もないと良いのでございますけれど・・・」

オルソラが不安そうに呟く

だが、幸せというのは簡単に崩れる

希望は砕かれるために存在する

願望は叶わないからこそ願望なのだ

彼等には、それがまだ理解できない


テクパトル「・・・ショチトル、不審人物は」

ショチトル「いない」

二人はイギリスの町外れを歩いていた

イギリス清教の人間達は今も血眼になってブラックマンを追っているだろう

ならば、大通りなどの捜索はそちらに任せればいい


107 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:42:21.39 ID:g+OESOVU0
建物の中に潜伏する可能性も少ない

いざ見つかってしまった時に退路を断たれるからだ

テクパトル「・・・ショチトル、槍は持っているか」

ショチトル「愚問だな、当然だろう」

テクパトル「・・・そうか」

神経を研ぎ澄まし、二人は進んでいく

捜索を始めて二時間が経っていた

普通の人間ならとっくに集中が途切れているだろう

だが二人は元々魔術組織にいたのだ

こういった行動には慣れている

テクパトル「・・・」

ショチトル「・・・!テクパトル!」

テクパトル「なんだ」

ショチトル「少しだが・・・魔術の流れを感じた」

テクパトル「何?」

テクパトルが口を閉じる

テクパトル「・・・こんな町外れに魔術師、か」

ショチトル「どう思う?流れの魔術師が偶然滞在しているだけかもしれないが?」


108 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:42:48.80 ID:g+OESOVU0
テクパトル「手がかりがない、ならば行くしかないだろう」

ショチトル「了解」

二人が駆け足になる

目指すのは、魔術の流れの原点

近づけば近づくほど、その流れは強くなっていく

テクパトル(・・・なんだ?普通なら魔力を極力隠すはずだ)

ショチトル(余裕だと言いたいのか?)

ブラックマンが何を考えているか全く分からない

全く、だ

テクパトル「ショチトル、槍を持て」

ショチトル「そちらこそぬかるなよ」

テクパトル「あぁ」

狩人の目が、一人の男を捉える

年齢は30代後半だろう

黒い髪が無造作に伸びている

その服装は簡素で、誰が見てもみすぼらしいと感じるものだった

瞳に力がなく、顔もあまり血色良くない

イメージできる言葉は「生ける屍」だろうか

109 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:43:23.56 ID:g+OESOVU0
隠れることもなく、その男は道端に座っていた

テクパトル「・・・」

ショチトル「・・・なんだ、本当にあれが・・・」

テクパトル「間違いない、前に資料で見た顔だ」

ショチトル「・・・」

二人がゆっくりと男に近づく



ブラック「ん?何か用かね」

テクパトル「ブラックマンだな」

ブラック「・・・やれやれ、また追っ手か」

ブラックマンがゆっくりと立ち上がる

座っているときには気づかなかったが、かなりの長身だ

大柄なテクパトルよりもさらに背が高い

ブラック「・・・君達は?イギリス清教の人間か」

テクパトル「違うな、ただの一般人さ」

槍を構えながらテクパトルが答える

テクパトル「元魔術師、だがな」

ブラック「・・・なぜ私を狙う?イギリス清教ではないのだろう」

テクパトル「お前が俺の友人を狙ったから、それだけさ」


110 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:44:10.68 ID:g+OESOVU0
ブラック「友人・・・?はて、君の友人とは誰かね」

テクパトル「答える義理はない」

金星の光を、黒曜石の槍が反射する

テクパトル「久しぶりの戦場だ、楽しませろよ化け物」

バキン、と音がしてブラックマンの後ろにあった石垣が壊れる

ブラック「・・・黒曜石に光・・・トラウィスカルパンテクートリか」

テクパトル「中々博識だな」

ブラック「何、魔術とは一種の学問だろう」

テクパトル「さぁ、お前も抜け」

ブラック「私は槍など持っていないさ」

テクパトル「貴様の武器は・・・知識だろう?」

ブラック「・・・そちらの少女も魔術師か?」

テクパトル「・・・」

ショチトル「あぁ、あまりナメてかからないほうがいいぞ」

ブラック「・・・そうか、それは残念だよ」

ブラックマンが右手を翳す

そこに現れたのは一本の槍

111 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:44:42.17 ID:g+OESOVU0
テクパトル「・・・」

ブラック「キリストの脇腹を突いた槍だ、知っているかね」

テクパトル「ロンギヌスか」

ブラック「・・・こいつはただのレプリカさ・・・私の魔術など、所詮は史実のまね事だ」

テクパトル「だからこそ・・・」

彼は魔術を完成させたいのだろうか

禁書目録の中にある知識を手に入れて

ショチトル「テクパトル、どうする」

テクパトル「お前は下がっていろ」

黒曜石の槍をテクパトルが構える

だが、その攻撃は動く相手を捉えるのが難しい

ブラックマンは最低限の動きでそれをかわす

テクパトル「・・・ならばこれはどうだ」

テクパトルが槍を太陽に向かって突き出す

テクパトル「・・・!」

だが、すぐさまその手を下げる

ブラックマンが突っ込んで来たのだ

112 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:45:29.58 ID:g+OESOVU0
その手にはロンギヌスの槍が握られている

テクパトル「くっ・・・」

無理矢理体を捻ってテクパトルが避ける

ショチトル「テクパトル!」

ショチトルが槍を突き出す

だが、それもブラックマンは軽くかわす

まるで動きが読まれているかのように

テクパトル(さすがだな・・・戦いに慣れている)

ブラック「どうした、アステカの魔術師よ」

テクパトル「・・・貴様、なぜ俺達の動きが読める?」

ブラック「・・・アステカの魔術には天体が絡むと聞いたことがある」

ショチトル「よく知っているな・・・」

ブラック「・・・ならば使う術式によって関わる天体が違うのだろう?」

テクパトル「・・・」

ブラック「術式を変える度に一々修正するなど無駄が多い」

ブラックマンが首を振る

呆れているのか

それとも面白がっているのか

113 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:46:31.19 ID:g+OESOVU0
ブラック「分かるかね?私の魔術はノーモーションで発動できる」

テクパトル「ならばなぜ俺達をすぐさま殺さない」

ブラック「・・・」

テクパトル「出来ないから、だろう?」

テクパトルの言葉を聞いてブラックマンが顔をしかめる

テクパトル「聖書の記述しか起こせないんだ・・・聖書にテクパトルという人間のことなど一文字も書いていないからな」

ショチトル「どういうことだ?」

テクパトル「・・・聖書には、テクパトルという人間の死など書かれていない・・・だから魔術で直接的にすぐさま殺すのは不可能なんだ」

ブラック「ほぅ、頭がいいな・・・」

ショチトル「なるほど・・・貴様の扱う魔術は規模が大きすぎるのか」

ブラック「特定の相手だけを殺すには向かない魔術さ・・・だからロンギヌスなどを用いて間接的に殺さなければならない」

ブラックマンが苦笑する

ブラック「・・・尤も、あまり殺したくはないのだが」

テクパトル「なに?」

ブラック「無駄話など時間を食うだけだ、続けようか」

ブラックマンがロンギヌスの槍を消し去る

次に現れたのは大きな獣だ


114 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:47:20.15 ID:g+OESOVU0
テクパトル「はは・・・こりゃさらにやばいな」

ブラック「君達には魔法名はないのかね」

ショチトル「残念ながら」

ブラック「・・・私の魔法名を聞くかね?」

テクパトル「聞いておこうか」

ブラック「brutus666だ」

テクパトル「十字教の人間が獣の数字を冠するか」

テクパトルが鼻で笑う

テクパトル「666は暴君ネロの名だと言われている・・・十字教弾圧の張本人だぞ」

ブラック「だからどうしたのかね?異端だとでも言いたいか?」

テクパトル「面白いと言いたいのさ」

ブラック「・・・なぜ私がこんな名前を名乗るかなど・・・君達には分からないだろうな」

テクパトル「敵を理解する必要はない」

ブラック「悲しい考えだな」

テクパトル「そうか?なかなか面白い考えだろう?」

テクパトルが金星の光を槍で跳ね返す

それは獣の頭に当たる

だが、決してその頭が崩れることはない


115 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:47:59.33 ID:g+OESOVU0
テクパトル「やはり・・・」

ブラック「実像はないさ、そいつに攻撃しても意味はない」

ショチトル「ならば貴様を直接叩く!」

ショチトルがブラックマンの後ろに回る

ブラック「ほぉ・・・二人で一気に掛かって来るか」

ブラックマンが笑う

ブラック「ならば私の飼い犬とでも戯れてくれ」

巨大な獣が二人にその牙を剥いた

テクパトル「ショチトル!」

ショチトル「イツラコリウキだな」

ショチトルが槍を空に向ける

光が、太陽に向かって突き進む

その瞬間、辺り一帯を霜が包む

ブラック(・・・なんだ、これは)

テクパトル「貴様はアステカの魔術には詳しくないだろう?」

ブラック「・・・霜か、これが何にな・・・」

ショチトル「武器さ、立派なね」


116 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:49:27.00 ID:g+OESOVU0
ショチトルが槍を振るうと、氷の塊がブラックマンに襲い掛かった

ブラック「!」

ブラックマンが燃え盛る剣を出現させる

氷は一瞬にして溶けてしまう

テクパトル「・・・おや、獣が消えたな」

ブラック「・・・分かっていたのだろう」

テクパトル「聖書にはあまり奇跡が同時に起きたという記述がない」

ショチトル「ならば貴様も同時に事象を引き起こすのは無理だろう?」

ブラック「御明答、全く素晴らしいな」

テクパトル「余裕を見せているつもりだろうが滑稽だぞ」

テクパトルが槍を地面に突き刺す

テクパトル「氷を溶かせば水蒸気が発生する・・・馬鹿でも分かるだろう?」

ブラック「・・・」

テクパトル「煙と黒曜石だ、テスカトリポカが降りてくるぞ」

ブラック「テスカトリポカは黒曜石の鏡ではなかったかね?」

ショチトル「あくまで代用品だがな、それでも中々な威力だぞ」

117 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:50:10.61 ID:g+OESOVU0
ブラックマンの周りに強靭な風が吹く

テクパトル「・・・どうする?剣では塞げないぞ」

ブラック「・・・参ったな」

燃え盛る剣を消してからブラックマンが呟く

ブラック「・・・強固な塔を」

テクパトル「!」

ブラックマンの周りに突如、巨大な壁が出来上がる

それはなぜか、塔のように見えた

ショチトル「なんだこれは・・・」

テクパトル「窓から紐・・・」

ブラック「知っているだろう」

テクパトル「!」

声は後ろから聞こえた

テクパトル「貴様・・・」

ブラック「あれは唯一、破壊を免れた塔だよ」

ブラックマンが塔を打ち消し、代わりにロンギヌスの槍を生み出す

118 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:50:56.52 ID:g+OESOVU0
ブラック「紐を窓から垂らした塔だけが崩壊を免れたのだ」

テクパトル「しま・・・」

ブラック「悪いな、眠りたまえ」

槍の柄の部分を、テクパトルの胸に突き立てる

テクパトル「がはっ・・・」

ブラック「・・・おや、中々頑丈な体だな」

テクパトル「くそ・・・」

テクパトルがブラックマンの足に手を伸ばす

テクパトル(ダメだ・・・頭が・・・)

ぼーっとしてしまう

胸に突き立てられたのは非常に固い槍の柄だったのだ

常人なら、意識があるだけでも奇跡だ

ショチトル「テクパトル!」

ショチトルが槍を握り締める

だが、下手に攻撃は出来ない

ブラックマンがテクパトルを盾にするかもしれないのだから

ブラック「・・・君はどうするかね?この青年のように歯向かうか?」


119 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:51:36.11 ID:g+OESOVU0
ショチトル「当たり前だ!」

ブラック「やめておきたまえ、私は君達に危害を加えるつもりはない」

ショチトル「よく言う・・・私の友人に手を出したことが罪なのだ!」

ブラック「この青年かね?」

ショチトル「そうだ・・・」

ショチトルが槍を強く握る

そのまま、ブラックマンの体へ突っ込んでいく

ブラック「・・・」

ブラックマンが何かを生み出した

ブラック「ダビデがゴリアテをどうやって殺したかは知っているかね?」

ショチトル「!」

ブラック「石さ、石を眉間に当てただけなのだよ」

手には、何やら小さな物が握られている

投石機、パチンコ

人によって様々な呼び方をするだろうそれは、なぜか恐ろしく見えた


120 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:52:16.02 ID:g+OESOVU0
ブラック「もう一度言う」

ショチトルの体は、ブラックマンの元へと進むままだ

ブラック「君は死にたいのかね?」

バキン、と音がした


ブラック「・・・」

ブラックマンは石を打ち出した

ただの石ではない

ゴリアテを殺害できるほどの石

神の加護を受けた石

それをショチトルは槍で弾き飛ばした

ブラックマンの元に走りながら、しかし正確に

ブラックマンの表情が驚愕のそれに変わる

まさか、あんなに正確に石を弾かれるとは思わなかったのだろう

ブラック「・・・素晴らしいな」

ショチトル「貴様の負けだぁぁぁ!」

ショチトルがそのまま進む

この間合いなら、石を打ち出される前にブラックマンの脇腹に槍を突き立てられる

勝った、とショチトルは確信した


121 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:52:48.90 ID:g+OESOVU0


ブラック「忘れるな、私は別にこれしか使えないわけではない」

ショチトル「!」

ブラックマンの手には、もう投石機はなかった

ブラック「サムソンの髪を切り取ったナイフだ、力を削ぎ落とした元凶だよ」

かつてサムソンという男がいた

彼は大きな力を神から受け与えられていた

だが、ある日彼は女に「自分の髪」に力の源があると教えた

それが神の怒りに触れ、彼は力を失った

髪を切り落とされ、両目を潰されたサムソンは、神に償いをするため、もう一度力を与えてくれと懇願したのだ

神はもう一度、彼に力を与えた

そして彼は、自分を騙した人々を殺害したのだ

ブラック「君達は力に溢れている、素晴らしいものだよ」

ナイフを構えながら、ブラックマンが呟く

ブラック「その力を削ぎ落とすには最高の武器だろう?」

ショチトル(・・・ダメだ)

ショチトルは駆けている

体勢を変えるのは不可能に近い

122 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:53:17.90 ID:g+OESOVU0
一方のブラックマンは、立ち止まっているのだ

おそらく、ショチトルはかわされる

そして、その喉元にあのナイフを突き立てられるのだ

ショチトル(・・・エツァリ)

ショチトルが目を閉じる


テクパトル「・・・あまり俺の部下をいじめてくれるなよ・・・」

ショチトル「!テクパトル!」

ブラック「まさか・・・!」

ブラックマンが足元に倒れているテクパトルを見つめる

彼の手には、黒曜石の槍が握られていた

ブラック「いつの間に・・・」

テクパトル「・・・残念だった・・・な」

金星の光が、ブラックマンの握るナイフを破壊する

ブラック「・・・」

テクパトル「すまんな・・・ブラックマンよ」



123 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:53:45.97 ID:g+OESOVU0
ショチトルの槍が、深々とブラックマンの脇腹に突き刺さる

テクパトル「・・・我々の勝利だ」

どさり、とブラックマンの体が崩れ落ちる

血が少しずつ流れている

ショチトル「・・・やった・・・のか・・・」

ショチトルが手に握った槍を見つめる

そこには確かに、ブラックマンの血液が付着している

テクパトル「よくやったな・・・ショチトル」

テクパトルがふらつきながら立ち上がる

まだ受けたダメージが回復していないようだ

ショチトル「無理するな!」

テクパトル「何・・・今はとにかく・・・上条に連絡を取らなければ」

ブラックマンから少し離れ、テクパトルが携帯を取り出す

テクパトル「はぁ・・・は、ははは・・・イギリス清教がどんなにしても捉えられなかったブラックマンを俺達が・・・」

ショチトル「信じられないよな・・・」

そうショチトルが笑ったとき

後ろで、何か物音がした


124 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:54:18.37 ID:g+OESOVU0
テクパトル「!ショチトル!」

ショチトル「ん?どうした」

突然、ショチトルの体が吹き飛ばされる

ショチトル「ぐぁぁぁっ!」

凄まじい衝撃が彼女を襲ったのだ

見ると、ブラックマンがロンギヌスの槍を構えていた

テクパトル「貴様!」

ブラック「・・・イエスは人々の傷を瞬く間に治したのだよ」

テクパトル「・・・そんなことまで・・・」

ブラック「・・・あまりこれは使いたくないんだ、主を愚弄することになるのでな」

テクパトル(・・・なんだ?こいつは十字教を・・・)

ショチトル「く・・・」

テクパトル「!ショチトル、無事か!?」

ショチトル「何・・・柄で突かれただけだ・・・」

テクパトル「・・・貴様、何故我々を殺そうとしない」

ブラック「殺す?何故」


125 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:55:00.04 ID:g+OESOVU0
テクパトル「俺達は敵同士だ・・・何が」

ブラック「君達は何も分かっていないな」

ブラックマンが槍を振りかぶる

ブラック「・・・今の十字教は・・・どうなっている?」

テクパトル「何・・・?」

突然、ブラックマンがわけのわからないことを言い出す


ブラック「すまないな、さすがに私も少し怒りに駆られている」

そう言いながら、ロンギヌスの槍を振り下ろす

ロンギヌスの槍というのは何も特別な武器ではない

イエスを殺した槍ではあるが、ただそれだけなのだ

バキバキ、とブラックマンの足元の地面が割れる

ブラック「・・・分かるかね?石畳など簡単に砕ける」

テクパトル「・・・だからどうした」

ブラック「本気を出せば・・・君達を殺せるのだよ」

テクパトル「・・・やってみろ」

テクパトルが槍を構えようとする

ブラック「そうか・・・残念だ」


126 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:55:57.68 ID:g+OESOVU0
その言葉と同時に、ブラックマンが駆け出す

テクパトル「馬鹿か、そんな直線的な・・・」

ブラック「・・・直線的?君こそ気づきたまえ」

テクパトル「何を」

ショチトル「テクパトル、ヤツの手に槍がない!」

テクパトル「!貴様!」

テクパトルが振り向く

ブラックマンは何か別の魔術を発動したのだろう

彼は同時に複数の事象を引き起こすことは出来ない

ならば

テクパトル「・・・な、何もない・・・」

ブラック「私が常に魔術を使うとでも?」

ブラックマンの蹴りがテクパトルの腹に当たる

テクパトル「ぐはっ・・・」

ブラック「青いな、青年」

テクパトルの体が崩れ落ちる

辛うじて膝を地面についている

その表情は苦しそうだ


127 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:56:34.61 ID:g+OESOVU0
ショチトル「くそ・・・」

ショチトルが槍を構えた

だが、距離が近すぎる

ブラック「すまないな、少女よ」

ブラックマンの手には、槍が生まれていた

変幻自在

それが彼にピッタリな言葉だろう

様々な事象を、状況に応じて使い分ける

まさに、幻のような魔術だ

ブラック「これで終わりだ」

槍の切っ先が、ショチトルの胸に向かう

今度ばかりは柄ではない

鋭く尖った切っ先が

イエスの脇腹を貫いた切っ先が

ショチトルの胸へと向かう


128 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:57:13.06 ID:g+OESOVU0
ショチトル「く・・・」

よけられない

かわせない

殺される

無意識に、ショチトルは目を閉じる

だが

いつまで経っても刺し殺される感触はなかった

そっと目を開ける

目の前に、なぜかテクパトルがいた

その脇腹から、なぜか槍の切っ先が覗いていた

なぜか

ショチトル「テク・・・パトル・・・?」

テクパトル「・・・ぐ・・・」

ブラック「・・・仲間を庇った・・・か」

ブラックマンが少し低めに呟く

なぜか、悲しそうな顔をしている

ブラック「残念だ・・・君のような有能な青年を刺さなければならなくなったことが」

テクパトル「・・・有能、か」


129 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:58:06.93 ID:g+OESOVU0
テクパトルが口元を歪める

ブラック「何かね?」

テクパトル「・・・有能ってのはこういうのを言うのか・・・?」

震える声で、テクパトルが呟く

その手には黒曜石の槍がある

目の前には、ブラックマンがいて

ブラック「やめたまえ、そんな朦朧とした意識で金星・・・」

テクパトル「・・・こいつは切るだけでも十分な凶器だ」

ブラック「!」

テクパトルの振るった槍が、ブラックマンの頬を掠める

少しだけ、ブラックマンの頬から血が流れ出す

ほんの少しだ

テクパトルの脇腹から流れているのに比べたら本当に少ない

テクパトル「・・・ここまでして・・・傷一つ・・・か・・・」

がくり、とテクパトルの脚から力が抜けた

ショチトル「テクパトル・・・テクパトル!」



130 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:58:42.94 ID:g+OESOVU0
脇腹に刺さった槍が、見るも無惨だ

ショチトル「テクパトル!答えろ、テクパトル・・・」

ブラック「早く病院に連れて行きたまえ」

ショチトル「!」

ブラックマンはテクパトルを見下ろすようにして立っていた

ブラック「・・・勇敢な青年だな、うらやましいよ」

ショチトル「黙れ!貴様・・・」

ブラック「ここで戦うかね?その青年が死ぬぞ」

ショチトル「く・・・」

ブラック「・・・」

無言のまま、ブラックマンがしゃがみ込む

テクパトルの手から滑り落ちた槍を拾う

ブラック「黒曜石の槍か、綺麗だな」

ショチトル「返せ!」

ブラック「減るものでもないだろう・・・」

それだけ言って、ブラックマンが背を向ける



131 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 19:59:08.21 ID:g+OESOVU0
ブラック「さぁ、早く病院へ」

ショチトル「貴様!今度会ったらその喉笛を切り裂いてやるからな!」

ブラック「・・・君には無理だよ」

ゆっくりと歩き出すブラックマン

ショチトル「く・・・」

追わなければ逃げられてしまう

あんな大罪人が逃げてしまう

だがそれでも

ショチトル「テクパトル・・・持ちこたえろよ!」

ショチトルはそうしなかった

携帯電話を握り締め、救急車を呼び出す

なぜか、ロンギヌスの槍は消えない


テクパトル(・・・)

薄れゆく意識の中、テクパトルは考えていた

テクパトル(ヤツは・・・何がしたかった)

禁書目録と接触し、術式を完成させる

それが目的なのではなかったか


132 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:01:06.19 ID:g+OESOVU0
牢獄に入れられるずっと前からの

テクパトル(・・・いや・・・待て・・・牢獄に入れられる前・・・だと・・・)

テクパトルは最初から何か引っかかりを感じていた

ブラックマンの行動は、あまりにも幸運すぎる

偶然魔術が牢獄の中でも使えて

偶然誰にも見つからず脱獄できて

偶然インデックスがイギリスにやってきて

幸運が重なりすぎなのだ

まるで、裏で誰かが糸を引いているかのように

テクパトル(・・・いや、違う)

テクパトルが気にしているのはそんなことではない

テクパトル(禁書目録は・・・)



テクパトルは、そこで意識を失った

たった一つ、気になっていたことの答えが見えた所で

彼の意識は、途絶えたのだ










133 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:02:02.02 ID:g+OESOVU0
上条「・・・ステイルはどうしてるかな」

イギリス清教女子寮

上条はぽつりと呟いていた

最大主教がインデックスを連れていってしばらくが経った

インデックスが言うには、二人はブラックマンに襲撃されたようなのだ

もしもそれが真実なら

上条「・・・あいつは・・・生きてるのか」

美琴「大丈夫よ、信じなさい」

上条「・・・くっそ、なんなんだよ・・・」

エツァリ「・・・今は怒りを抑えることしか出来ませんよ」

19090「・・・そうですね」

四人が俯く

今、女子寮には四人しかいない

他のメンバーはブラックマンの捜索に向かった

四人は留守番をしているのだ

上条「・・・テクパトル達は無事かな」

19090「大丈夫ですよ」


134 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:02:38.10 ID:g+OESOVU0
エツァリ「・・・ならいいんですが」

美琴「・・・どうかしたの?」

エツァリ「何か胸騒ぎがするんです」

上条「・・・気のせいだろ」

美琴「そうよ・・・」

エツァリ「なら・・・」

ピリリ、という着信音にエツァリの言葉が遮られる

エツァリ「着信・・・!ショチトルからです!」

美琴「!ホント!?」

エツァリ「ショチトル!無事でしたか・・・」

ショチトル『エツァリ・・・どうしよう』

エツァリ「ど、どうしたんですか」

ショチトル『テクパトルが・・・』

エツァリ「・・・なんですって?」

ショチトル『テクパトルが・・・ブラックマンにやられた・・・』

エツァリ「!」

ショチトル『今は病院にいるんだ・・・私を庇って・・・どうしよう、エツァリ・・・』


135 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:03:14.90 ID:g+OESOVU0
エツァリ「落ち着いてください、あなたは今どこにいるんですか?」

ショチトル『油断したのが悪かったんだ・・・あいつは・・・あいつは私を・・・』

エツァリ「落ち着けショチトル!」

ショチトル『!』

エツァリの顔が険しくなる

エツァリ「・・・どこだ」

ショチトル『・・・今・・・町外れの・・・病院だ・・・』

エツァリ「・・・病院の名前は」

ショチトル『・・・セントマリア・・・病院だ』

エツァリ「・・・すぐに行く」

エツァリが携帯電話をポケットに突っ込む

顔は険しいままだ

上条「ど、どうしたんだよ・・・病院って」

エツァリ「行ってきます」

19090「待ってください!」

美琴「どうしたのよ・・・何かあったの?」

エツァリ「・・・テクパトルとショチトルがブラックマンと接触したようです」


136 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:03:41.23 ID:g+OESOVU0
上条「なんだって・・・?」

エツァリ「テクパトルが負傷したんですよ」

19090「・・・負傷・・・?」

19090号ががくりと膝から崩れ落ちる

美琴「19090号!」

19090「ぶ、無事・・・なんですか・・・?」

エツァリ「今からそれを確認しに行きます」

上条「待てよ・・・誰かが留守番を」

エツァリ「みなさんは残ってください」

美琴「でも・・・」

エツァリ「頼みます」

それだけ伝えて、エツァリが女子寮から出ていく

残された三人は、混乱していた

テクパトルがブラックマンの攻撃により、負傷した

病院にいるということはかなりの深手だろう

ブラックマンは大量虐殺を行った異端者だという



137 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:04:12.80 ID:g+OESOVU0
ならば

19090「テっくん・・・」

19090号の瞳から涙が零れる

上条も美琴も、その涙を拭くことが出来なかった

彼等には出来なかった


エツァリ(情けない)

自分が情けなかった

なぜ、あの二人を引き止めなかったのか

テクパトルは頭がキレる人間だ

実力もそこそこある

ショチトルも、決して弱くはない

あの二人なら、ブラックマンとも対等に渡り合えると考えていた

エツァリ(・・・情けない)

口の中に鉄の味が広がる

唇を強く噛みすぎたのだ

エツァリ「・・・テクパトル・・・どうか無事でいてくれ・・・」

顔をしかめながら、エツァリは歩く

彼の中にあるのは憎悪だった


138 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:04:39.61 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・くっ・・・」

ステイルは街中を歩いていた

歩いていた、というよりもさ迷っていた

ブラックマンを捜索するためにもう二時間もさ迷っている

インデックスの姿はどこにも見えない

彼女は無事なのか

確かめる術がない

ルーンのカードも、通信用の護符も使い物にならなくなっていた

ステイル「・・・全く、出鱈目だ」

服が水を吸って重くなっている

動き辛くてイライラとしてしまう

ステイル「なんなんだ・・・あの魔術は」

彼は今まで、何百という魔術師と対峙してきた

自分と同じく炎を操る者

水を操る者

風を操る者

はたまた全く異質な、独自の魔術を使う者



139 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:05:06.30 ID:g+OESOVU0
様々な魔術師と戦ってきた

だからこそ分かる

ブラックマンは異常なのだ

あんなにも様々な事象を引き起こせる人間がこの世にいるなんて信じられなかった

神の右席というものをステイルは知っている

そこに所属していた四人もかなり異質な魔術師だった

だがブラックマンはそんなものではない

一つのことに縛られず、臨機応変に魔術を使い分けてくる

力の奮い方を知らない馬鹿ではない

知識だけの頑固者ではない

知識と力量、両方が備わった類い稀なる人間なのだ

ステイル「・・・あんな者と僕たちは戦おうと言うのか」

イギリス清教の全てを尽くしても、もしかしたら敵わないかもしれない

ただ、唯一対抗策があるとすれば

ステイル「・・・あの熱血馬鹿には頼りたくないんだが」

全ての異能を打ち消す右手

彼だけが頼りだった


140 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:05:33.23 ID:g+OESOVU0
彼だけが

結局、インデックスを救うのもイギリス清教を救うのも、そしてステイルを救うのも

あのヒーローなのだ

ステイル「・・・気に食わないが、今は文句を言っているヒマはないか」

苦虫を噛み締めたような顔をしながらステイルは歩く

ただ、服の重みが鬱陶しかった


エツァリ「ショチトル!」

ショチトル「エツァリ・・・」

セントマリア病院

イギリス清教の系列である病院

ブラックマンの襲撃が終わってすぐ、ショチトルは救急車を呼んだのだ

その救急車が偶然、イギリス清教系列の病院のものだった

何か運命のようなものを感じるが、今はそんなことを気にしてはいられない

エツァリ「テクパトルはどうですか」

ショチトル「まだ手術中だ・・・」


141 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:06:00.16 ID:g+OESOVU0
エツァリ「・・・」

ショチトル「腹部を槍で一突き・・・だった・・・」

ショチトルの瞳から涙が零れる

ショチトル「私のせいだ・・・私が気を抜かなければ・・・」

エツァリ「・・・ショチトル、落ち着いてください」

ショチトル「なんで・・・なんであいつが・・・」

エツァリ「あなたに責任はありませんよ」

ショチトル「私のせいだ・・・私が」

エツァリ「ショチトル!」

エツァリがショチトルの胸倉を掴む

彼の瞳は揺らいでいた

ショチトルが泣いているのが辛い

テクパトルが傷ついたことが辛い

そして何よりも

自分の情けなさに腹が立っていた

エツァリ「・・・落ち着けショチトル」


142 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:06:29.36 ID:g+OESOVU0
ショチトル「エツァリ・・・」

エツァリ「いいかショチトル・・・お前に出来ることは泣くことではないだろう」

ショチトル「・・・」

エツァリ「お前の中には何がある?嘆きか、怒りか、悲しさか?何がある?」

ショチトル「・・・怒りだ」

エツァリ「何に対する怒りだ」

ショチトル「自分自身に・・・ブラックマンに」

エツァリ「ならばそれだけで十分だろう」

ショチトル「・・・」

エツァリ「テクパトルが目を覚ましたら、謝ればいい・・・テクパトルは決してお前を責めたりはしないはずだ」

ショチトル「・・・エツァリ」

エツァリ「・・・大丈夫、テクパトルは無事だ」


エツァリ「・・・信じろ、ショチトル・・・」

エツァリがつぶやく

まるで、自分に言い聞かせるように



143 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:06:56.86 ID:g+OESOVU0
テクパトル(・・・)

テクパトルはただ、何かが違うと感じていた

彼は何か引っ掛かりを覚えていた

それは最初から感じていたのだ

最初から

テクパトル「・・・ん・・・」

目を開けると、清潔感溢れる天井が見えた

いつも、ミサカたちと暮らしている部屋でも同じ天井を見ている

一瞬、先程までの悲劇は夢だったのではないかと思ってしまう

だが腹部の鋭い痛みが、それが現実だったと教えてくる

テクパトル「・・・生きてる、か」

悪運が強い、とテクパトルは苦笑した

腹部に穴が空いてもなお生きているなんて、奇跡に近いだろう

ショチトル「・・・テクパトル?」

テクパトル「ん?」

自分の寝ているベッドの脇に、ショチトルが座っている


144 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:07:28.53 ID:g+OESOVU0
その奥ではエツァリが安堵したような表情を浮かべている

テクパトル「・・・病院だよな、ここは・・・」

ショチトル「テクパトル・・・テクパトルか・・・?」

テクパトル「俺に決まってるだろ・・・」

ショチトル「・・・よかった・・・よかった・・・」

ショチトルが涙を流す

ショチトル「すまなかった・・・すまなかった・・・」

テクパトル「?何が・・・」

ショチトル「・・・私があんなに油断しなければお前は・・・」

テクパトル「・・・気にするな、別にお前が悪いわけじゃないさ」

ショチトル「ありがとう・・・本当によかった・・・」

エツァリ「安心しましたよテクパトル・・・」

テクパトル「すまんな・・・19090号は?」

エツァリ「女子寮で留守番ですよ・・・ここに連れてきたら泣き崩れてしまうでしょう・・・それにあなたも傷ついた自分を見られたくはないでしょう?」

テクパトル「悪かったな・・・気を遣わせてしまって」


145 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:07:54.39 ID:g+OESOVU0
エツァリ「・・・こちらこそ礼を言わなければなりません」

テクパトル「気にするな・・・それより、携帯電話を貸してくれないか?」

エツァリ「おや・・・あなたも持っているでしょう?」

テクパトル「違う、まだ麻酔が完全に切れていないんだ」

エツァリ「あぁ・・・どなたに?」

テクパトル「19090号に」

エツァリ「待っていてくださいね」

エツァリが19090号の番号に電話を掛ける

エツァリ「どうぞ」

テクパトルの耳元に、エツァリが電話を持っていく

19090「・・・はい」

聞こえてきたのは、掠れた19090号の声だった

鼻を啜る音が聞こえる

時々嗚咽のようなものが聞こえる

それほど悲しませてしまったのだろう

傷の痛みよりも、そちらのほうが辛かった


146 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:08:20.27 ID:g+OESOVU0
だからこそ、声を聞かせて安心させたかったのだ

テクパトル「・・・19090号か?」

19090『・・・テっくん・・・?』

テクパトル「あぁ・・・その・・・」

19090『テっくん!?無事だったんですか!?』

テクパトル「なんとかな・・・まだ傷は痛むが」

19090『・・・よかった・・・よかったです』

声が震えている

だが先程までの、悲しみからくる震えではない

安堵からくる震えだった

テクパトル「・・・すまん、後で頭は下げるから・・・とにかく、無事だったと伝えたくてな」

19090『テっくん・・・テっくん・・・』

テクパトル「おう・・・無事だからな」

19090『・・・よかったですよ・・・』

テクパトル「・・・そろそろ切るな、あまり長話も出来ない・・・」

テクパトルがちらりと窓の外を見る

空が暗くなり始めている


147 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:08:46.67 ID:g+OESOVU0
テクパトル「・・・19090号、俺はさすがに戦線を離脱しなければならない」

19090『それでいいんですよ・・・』

テクパトル「・・・じゃあ、またな」

19090『テっくん・・・愛してます』

テクパトル「・・・あぁ、愛してる」

それを伝えてからテクパトルが通話を切る

ショチトル「・・・テクパトル」

テクパトル「エツァリ、お前は女子寮に帰ってもらえないか?向こうには今、イギリス清教の人間と科学側の人間しかいないだろう?」

エツァリ「イギリス清教の人間はみな捜索に出ています」

テクパトル「ならば尚更だ、魔術に詳しいお前がいなければならない」

エツァリ「・・・ショチトルはどうしますか」

ショチトル「・・・私は残るよ、万が一ここが襲撃された時のために」

エツァリ「では自分はこれで」

エツァリが頭を下げてから病室を出る

ショチトル「・・・テクパトル、何か食べたい物とかあるか?」

テクパトル「・・・山ほどあるが」


テクパトル「しばらくしたら客が来るんでな」



148 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:09:12.31 ID:g+OESOVU0
上条「そうか・・・テクパトルは無事だったか」

19090「よかったです・・・」

美琴「はぁ・・・安心した」

女子寮の中、三人はため息をついていた

緊張が一瞬にして解けてしまう

上条「・・・これで心配は無くなったな」

美琴「えぇ」

上条「・・・ならあとはブラックマンを殴るだけだな」

美琴「当麻、大丈夫?」

上条「・・・友達を傷つけられてまで黙ってられるかよ」

美琴「・・・そうね」

19090「・・・どうするんですか?」

上条「そうだな・・・」

上条がドアのほうを見つめる

上条「・・・ステイルは・・・無事かな」

美琴「・・・インデックスも無事よね?」

上条「最大主教とかいう人が一緒だからな」

19090「・・・そうですね」

上条「・・・」


149 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:09:42.77 ID:g+OESOVU0
エツァリ「ただいま帰りました」

エツァリが女子寮のドアを開く

美琴「あ、おかえり」

エツァリ「テクパトルも、命に別条はなかったみたいです」

19090「安心しました・・・」

上条「さて・・・じゃあ俺は出掛けるか」

上条が突然立ち上がる

美琴「ど、どこ行く気なのよ!?」

上条「ブラックマンを探しに行くんだよ」

エツァリ「単独行動は避けてください」

上条「・・・ステイルも探さなきゃいけないし、山ほどやることはあるんだよ」

美琴「なら私も行くわよ」

上条「・・・危険かもしれないぞ」

美琴「いいのよ、一人で行かせられないわ」

上条「じゃあ・・・ついてきてくれ」



150 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:10:09.87 ID:g+OESOVU0

美琴「えぇ」

二人がドアを開ける

不気味な闇が広がっている

この闇のどこかにブラックマンは潜んでいる

そう考えると、一瞬背筋が凍りそうになる

上条「・・・行ってくる」

美琴「エツァリさん、19090号をよろしく」

エツァリ「お気をつけて」

上条「行ってくる」

バタン、とドアが閉じられる

完全な闇

それが、二人の体に纏わり付いてくる

上条「・・・急ごう、美琴」

美琴「うん」


ステイル「・・・くそ、インデックスはどこだ・・・」

空が暗くなった

もう、少し先さえ見えなくなっている


151 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:10:36.43 ID:g+OESOVU0
ステイル「・・・女子寮に帰ったほうがいいのかもしれないな」

彼にはそれしか思い浮かばなかった

ステイル「・・・それにしても・・・なぜブラックマンは逃亡したんだ・・・」

ステイルが言っているのは理由についてではない

ブラックマンはインデックスと接触し、何かしらの方法を使って術式を完成させるつもりなのだろう

それは分かっている

今彼が疑問に思っているのは、「なぜ逃亡できたのか」ということだ

魔術を疎外する結界を張っていたのだ

外から仲間の援護を受けられることはない

第一、ブラックマンに仲間がいるという情報はないのだ

さらに、彼自身も牢獄の中では魔術を封じられていたのだ

そんな状況で、なぜ彼は逃げられたのか

ステイル(隠し玉か・・・?いや、ありえない)

ブラックマンは魔術師だ

魔術以外の方法で抜け出すなんて不可能なはずだ

ならば可能性は一つしかない


ステイル(誰かが逃がした・・・?)


152 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:11:03.86 ID:g+OESOVU0
神裂「あの、最大主教」

ローラ「質問ならあとで聞きたりてよ」

神裂「・・・一つだけです」

ローラ「・・・」

神裂「ステイルは・・・無事なのでしょうか」

ローラ「私には分からない・・・」

神裂「なぜですか?用心深いあなたのことです、何かしらの護衛をつけていたのでは?」

ローラ「何を、ステイルとインデックスが帰還する時刻など知らなかったもの」

神裂「・・・学園都市にインデックスを置いたままなら安全だったものを」

ローラ「ブラックマンはどうせいつか情報を手に入れるはずなりてよ?」

神裂「でしたらなぜ空港に護衛を!」

ローラ「・・・少し出掛けてくる」

ローラが神裂の問いを無視して、背中を向ける

ローラ「ステイルのヤツなら無事なはず、あいつはそこまでヤワではないのだから・・・」

神裂「・・・そうでしょうか」

ローラ「何事も信じることから始まりけるのよ」

手を振りながら、ローラが立ち去る

神裂(・・・出掛ける?どこへ)

こんな状況で最大主教ともあろうものが一人で出歩くのだ

相当大切な用事なのだろうか

153 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:13:03.13 ID:g+OESOVU0
神裂「・・・最大主教・・・」

神裂は一人、つぶやいていた

インデックスは別の部屋にいる

それでいいのだろう

あまり近くに居ると不安にさせてしまうだろう

神裂(・・・情けないものですね)

ステイルが

そして自分が

インデックスを守るために力を手に入れた

しかし、それは決して彼女を守れるものではなかった

ただ闇雲に奮うだけ

それだけの力だったのだ

神裂「・・・まったく、こんな状況も・・・あの少年はすぐにひっくり返してしまうんでしょうね」

頭に浮かぶのは、一人のヒーローだった


神裂「・・・全く・・・救われない世界です」


154 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:14:11.43 ID:g+OESOVU0
一旦休憩

書き溜めを速くも使い終わっちゃったぜ(キリッ

シリアスじゃなくて熱いバトルものを目指していた

なのにただの急展開

意味の分からない話だね

オリキャラも出しちゃうし

まぁ、>>1だから仕方ないよ、頭悪いもん



多めに見てください、本当に後悔してますんで



155 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:45:58.00 ID:g+OESOVU0

上条「・・・いないな」

上条と美琴は夜のイギリスを歩いていた

とはいっても、街の中心部からかなり外れたところをだが

美琴「・・・私達はブラックマンの顔・・・知らないじゃない」

上条「それもそうだな」

美琴「・・・どんなヤツなのかしら」

上条「・・・分からないさ」

美琴「・・・」

美琴が上条の手を握る

少し、手が震えているのが分かる

上条「・・・怖いか?」

美琴「・・・テクパトルとショチトルが・・・負けたのよ?」

上条「・・・俺が守るから大丈夫だ」

上条が顔をしかめる

だが、本当に勝てるのだろうか


156 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:51:29.80 ID:g+OESOVU0
上条(・・・もしも・・・)

上条(・・・もしも、俺の右手が通用しなかったら・・・)

上条が右手を見つめる

彼の右手は、異能ならばなんだって打ち消すはずだ

だが、やはり初見の相手には効くのかが分からない

上条「美琴・・・何かあったら、まずは生き残ることから考えるぞ」

美琴「分かってる」

二人はずっと歩く

しばらくすると、少し高い位置にある森のような場所に来てしまった

上条「・・・あれ、道から外れたかな?」

美琴「あーあ・・・道覚えてるからよかったけど・・・」

上条「・・・さすがにこんなところには誰もいなかな」

美琴「・・・そうね、じゃあ戻りましょう」

くるり、と美琴が振り返る

だがその時、少し遠くに灯りが見えることに気がついた

美琴「ねぇ・・・あれ、何かな」


157 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 20:57:47.91 ID:g+OESOVU0
上条「ん?あれ・・・誰かいるのかな」

それは、誰かが灯りを持っているように見えた

少し揺れながら移動している

美琴「でもこんなところに・・・」

上条「しかもこんな時間だぞ?何かあったのかな」

美琴「ちょっと行ってみましょう」

上条「あぁ」

二人が灯りの元へと歩いていく

最初は周りには樹だけが生い茂っていた

夜の森というのは不気味なものだ

ただの樹木さえもが、不気味な生き物に見える

鳥達の羽ばたく音が何か奇怪な生き物の鳴き声にさえ聞こえる

上条(・・・ははは、なんだよ・・・不安になるじゃねぇか)

美琴(大丈夫・・・大丈夫よ)

イヤな汗が背中を伝う


158 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:02:11.29 ID:g+OESOVU0
上条「・・・いた」

上条が突然呟く

やはり、灯りを持っているのは人間だった

長身な男だ

少し不気味に見える

何より、この暗い森に溶け込んでいるのだ

それが一番、異常なことだろう

上条「・・・墓?」

美琴「え・・・?」

男の足元には小さな墓があった

上条「・・・なんだよあれ」

美琴「さぁ・・・」


ブラック「・・・」

上条「!!!こ、こっち見た・・・」

ブラック「      」

上条「?」

美琴「英語よ、当麻」

上条「あぁ、そうだよな・・・」

ブラック「・・・」


ブラック「悪いね、もしかして日本人かい」

上条「え・・・に、日本語?」


159 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:04:35.35 ID:g+OESOVU0
ブラック「あぁ、やはり日本人か」

美琴「あ、あの・・・」

ブラック「ここは何もない森だ・・・迷い込んだのかい?」

上条「いや・・・ちょっと」

ブラック「・・・こんな辺鄙な森に用かい?」

上条「人探しをしてたんだ」

ブラック「人探し?こんなところに人など来ないぞ」

上条「そ、そうだよな・・・」

上条が苦笑する

そして気づいた

その男が、何かをポケットに突っ込んでいることに

黒光りしているものだ

それは、上条がよく知っているもの


あれは


エツァリやテクパトルたちが使っている黒曜石の槍ではないのか


上条「・・・」

美琴「?どうしたのよ当麻・・・」


160 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:07:07.60 ID:g+OESOVU0
上条「なぁ、アンタ」

ブラック「なんだい」

上条「・・・テクパトルという名前を知らないか」

ブラック「・・・」

美琴「な、何言って・・・」

上条「知ってるか?」

ブラック「君は何者だ?」

上条「そのテクパトルという男の・・・友達さ」

美琴「ど、どうしたのよ当麻?」

上条「・・・お前・・・ブラックマンだな」

ブラック「・・・」

美琴「こ、こいつが!?」

ブラック「よく分かったな・・・どうして?」

上条「その槍、テクパトルたちが持ってるものと一緒なんだ」

ブラック「それだけか?」

上条「・・・さっき、墓に向かって十字を切ってた・・・アステカ人ならありえないだろ」

ブラック「・・・なるほどな」

ブラックマンは墓を見つめたままだ

決して、上条のほうを警戒していない


161 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:09:59.90 ID:g+OESOVU0
上条「・・・お前がテクパトルを傷付けたんだな」

ブラック「あの青年は無事だったか?」

上条「・・・深手だったけどな、一応は無事だったよ」

ブラック「それはよかった」

上条「よくねぇよ」

ブラック「・・・」

上条「お前、勘違いしてないか?生きてればいいのか!?」

ブラック「傷付けることが間違いだと?」

上条「当たり前だろ!!!」

美琴「・・・当麻、こんなヤツに話なんて・・・」

ブラック「・・・いい考えだな、素晴らしい正義だよ」

上条「んなことを言いたいんじゃないんだ!!!お前は俺達を怒らせてる!!!!」

ブラック「・・・少し静かにしてくれ、この墓には静かに寝ている・・・」

上条「この状況で黙れだって!?」

上条が右手を握り締める

大きな怒りが、今にも爆発しそうなのだ


162 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:13:33.36 ID:g+OESOVU0
ブラック「・・・静かにしてくれ」

美琴「・・・アンタ、あんまり私達を怒らせないで」

上条「ちくしょう・・・すっかり騙されるところだったな」

美琴「・・・そうやって、何人を騙しては殺したのよ」

ブラック「・・・」

ブラックマンが二人を睨みつける

ブラック「あまりひどいことを言わないでくれよ」

上条「・・・殴らせてもらうぞ、いいな」

ブラック「・・・構わないさ」

ブラックマンがゆっくりと立ち上がる

手の中には、灯りが揺れている

それがまるで、彼の今の心を表しているようだった

ブラック「だがそれなりの覚悟はあるのだろうな」

上条「当たり前だ、ここに来た時点で済ませてる」

ブラック「素晴らしいな」

163 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:25:32.33 ID:g+OESOVU0
上条「・・・一つ聞きたい」

ブラック「なんだい」

上条「・・・なんで・・・なんでアンタは人を殺す」

ブラック「・・・何も、殺したくて殺しているわけではないさ」

上条「・・・そうか」


上条「なら、なおさらぶん殴らなきゃならねぇな」

ブラック「・・・」

ブラックマンが槍を生み出す

美琴「当麻・・・」

上条「下がってろ美琴」

美琴「・・・うん」

ブラック「・・・すまんな少年よ、君も傷付けなければならないのだよ・・・今日は本当にイヤな日だ」

一歩、ブラックマンが踏み出す


164 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:33:54.73 ID:g+OESOVU0
上条「全く・・・俺達もたまったもんじゃねぇよ」

上条も、一歩踏み出す

上条「やってきてすぐにてめぇみたいなヤツに遭遇してさ・・・」

ブラック「・・・不幸だな、君達は」

上条「あぁ・・・不幸かもしれねぇ」

ブラック「・・・」

上条「だけどな!!!」

右手を振り上げる上条

ブラックマンはただそれを見つめている

上条「こうやってお前の幻想を砕けるなら!!!!!それも悪くはねぇだろ!!!!!」

ブラック「・・・」

ブラックマンの行動は簡単だった

上条の拳に向けて、ロンギヌスを振るうだけ

切り裂くつもりはない

ただ、叩き落とすつもりだった

165 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:39:11.46 ID:g+OESOVU0
そして

何かを砕くような音がして、その槍が消え去った

ブラック「・・・!!!」

上条「どうした!?」

ブラック「ちっ・・・」

ブラックマンが燃える炎の剣を作り出す

ブラック「少年、一体さきほどは何を・・・」

上条「そんなことは問題じゃねぇんだ!!」

上条が右手で炎の剣も打ち砕く

ブラック「な・・・」

上条「くらえ!!」

上条が右手をブラックマン目掛けて振り下ろす

ブラック「く・・・」

ブラックマンがそれをどうにか避ける

だが、明らかに状況は上条の有利だった

ブラック「・・・なんだ、その力は」


166 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:43:26.08 ID:g+OESOVU0
上条「・・・俺にもわかんねぇさ」

ブラック「・・・強制的に術式を破壊された・・・いや、そんなものではないな」

上条「・・・んなことが大事なんじゃないんだよ」

上条が右手を握り締める

目の前の男を、ただ殴らなければならない

テクパトルを傷付けた分

ショチトルを泣かせた分

そして、インデックスを狙った分だ

上条「・・・なんで・・・お前は術式を完成させたい」

ブラック「・・・なに?」

上条「・・・理由があるんだろ、何か・・・」

ブラック「・・・ちょっと待て・・・何を言って」

上条「なんでそんな力を持っていてお前は誰かを守れない!?」

ブラック「・・・」

上条「誰かを傷付けることしかできない力じゃねぇか!!!!」

167 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:47:18.15 ID:g+OESOVU0
ブラック「・・・」

ブラックマンの後ろに、獣が現れる

ブラック「・・・君には分からないだろうさ」

上条「分かりたいとは思わないさ」

ブラック「誰かを守るために力をつけられるのは善人だけだ」

上条「誰かを守れるなら、俺は善人だろうと悪人だろうと構わない」

ブラック「・・・」

大きな獣が暴れる

周りの木々が倒れていく

上条「な・・・お前!!!」

ブラック「・・・少年よ、私についてくるかね?死ぬかもしれないぞ」

ブラックマンが走り出す

そこを目掛けて、樹が次々と倒れていく

上条「・・・くそ!!!」

美琴「当麻!!!」


168 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:50:33.58 ID:g+OESOVU0
上条は、倒れてくる木々の間を縫ってブラックマンの後ろを追う

美琴「当麻!!!」

美琴の声は届かない

ただ、男は走っていった


美琴「・・・当麻・・・」

一人、美琴は残されてしまった

ただ一人

静けさが戻ってくる

不気味な静けさだ

美琴(・・・どうしよう)

待っていなければならない

上条が帰ってくるのを

追うことも出来る

だが、上条は美琴が行くことを望まないだろう

美琴を守るために、彼は戦うのだから

もしも彼女が戦場の只中にいれば、彼の決心が揺らいでしまう




169 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:53:30.89 ID:g+OESOVU0
美琴(・・・当麻・・・)

ぎゅっと、手を握り締める

傍にいてあげたいという気持ち

傍にいてはいけないという気持ち

いつも、この気持ちに迷っていた

美琴(・・・でもね、当麻)

美琴(私だって、アンタの力になれるって言ったじゃない!!!)

彼女は駆け出そうとした

たった一歩を踏み出して


そして、なぜか首筋に衝撃が走った

美琴「え・・・」

ぐらり、と視界が揺れる

美琴「誰・・・」

そこで

彼女の意識は途絶えた


170 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 21:57:31.47 ID:g+OESOVU0

ローラ「全く、面倒なことになったわね」

ローラは一人、夜のイギリスを歩いていた

用事を済ませるために

ローラ(・・・まさか幻想殺しが来ていたとは・・・)

ローラ(・・・ブラックマンとの接触は避けられないでしょうし・・・)

ローラ(だとすれば、幻想殺しにも枷が必要ね)

彼女がある建物の前で立ち止まる

そこは、病院だった

名を「セントマリア」という、病院の前だった

ローラ(・・・何、幻想殺しの枷はもう済んでるでしょうね)

ローラ(だとすればあとは情報収集なりてよ)

ニヤリ、と笑ってからローラが病院へ足を踏み入れる

そこにいたのは、一人の策略家だった


171 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/21(金) 22:03:47.96 ID:g+OESOVU0
さて、今日はここまで

前スレも埋めないとね

書き溜めも使い終わったし・・・

しかし、>>1にはかまちーみたいな文章は無理だ

まず統一性がないね

あとローラの口調、無理

古文とかわっかんないんだもん、ホント

そしてシリアスにもならず、戦闘描写もヘタ・・・


あれ?どうしてこうなったの?

誰か、酸素をください


話変わりますがそろそろオルタレイション発売だね、スクライド

もちろん予約してますとも

新編楽しみだ

兄貴の最速を見られるのがもう嬉しい

保志さんは声、劣化してるとか言われてるから払拭してほしい気もするね

速さが足りない!!!!


ではおやすみなさい


172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/21(金) 22:24:19.54 ID:pa+QcjMAO
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 02:38:30.99 ID:xa/Vvzipo
乙である
174 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:16:44.15 ID:IPVjS/kr0
上条「・・・」

ブラック「・・・」

二人の視線がぶつかる

燃える闘志と静かな闘志

ただ、二つの闘志が鎬を削り合う

上条「・・・お前はなんで力を手に入れた」

ブラック「なぜだったかな」

上条「・・・あの墓はなんなんだ」

ブラック「少年よ、君には関係ないだろう」

ブラックマンが槍を振るう

だが上条を直接狙うのではない

周りの木々を薙ぎ倒すのだ

上条「ちっ・・・」

ブラック「魔術は打ち消せるが物理的なものは打ち消せない・・・か」

上条「やるじゃねぇか・・・短時間で読まれるなんてな」



175 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:17:37.04 ID:IPVjS/kr0
ブラック「なに、戦いには慣れているのさ」

上条「・・・そうかよ」

ブラック「あの墓はなんだったか・・・と聞いたな」

上条「・・・あぁ」

ブラック「あそこには私の大切な人が眠っているのさ」

上条「その人のために力を手に入れたのか」

ブラック「違うな」

上条「・・・ならどうして」

ブラック「語ることなど必要ない」

上条「・・・」

ブラック「君にも一つ聞きたいのだが」

上条「なんだよ」

ブラック「・・・先程、私の術式がどうと言っていたな」

上条「あぁ」

ブラック「・・・君がイギリスに来たのはそれが理由なのかい?」



176 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:18:31.18 ID:IPVjS/kr0
上条「お前がインデックスを狙ってるから、俺達は助けに来たんだ」

ブラック「・・・インデックスか、たしかルーンの魔術師と一緒にいた少女だな」

上条「・・・それだけじゃないだろ」

ブラック「・・・何?」

上条「とぼけるな!」

ブラック「待て、何のことだ」

上条「お前はインデックスの中の知識が必要だから、インデックスと接触を図った!そうだろ!?」

ブラック「・・・なんだ、それは」

不気味な沈黙が流れる

ブラックマンの顔には戸惑いが

上条の顔には驚愕が浮かんでいる

上条「ちょっと待て・・・お前、インデックスを知らないのか?」

ブラック「あの少女は何かあるのか?」

上条「・・・嘘だろ、とぼけるなよ!」


177 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:19:28.89 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・知識・・・知識と言ったな・・・」

上条「あぁ、言ったよ」

ブラック「なんなのだ?あの少女は知識を持っているのか?」

上条「・・・」

上条の中で、何かが引っ掛かった

そう

ブラックマンはインデックスが学園都市にいるのを知らなかった

当たり前だ、インデックスが学園都市に来たのはブラックマンが捕まったずっと後だから

ずっと

上条「待て、お前って・・・いつ牢獄に入ったんだったっけ」

ブラック「・・・10年5ヶ月ほど前だ」

上条「・・・なんだって」

ブラック「それがどうかしたのかい」

上条「・・・その頃・・・」


上条「インデックスは禁書目録だったのか・・・?」



178 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:20:56.20 ID:IPVjS/kr0
テクパトル「・・・来客だ」

ショチトル「?」

病室の中、突然テクパトルが口を開いた

テクパトル「ショチトル、少し長くなるぞ」

ショチトル「待て、誰も来ては・・・」

テクパトル「気づかないか?こんなにも大きな魔力の流れに」

ショチトル「・・・!誰だ!?」

ドアが開かれる

そこにいたのは一人の女性だった

ローラ「はぁい・・・英語は通じるのかしら」

テクパトル「・・・イギリス清教の最大主教様か」

ローラ「おや、私のことを知っているの?」

ショチトル「最大主教!?」

テクパトル「資料で見たことがあるからな」


179 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:22:10.97 ID:IPVjS/kr0
ローラ「お前はアステカの魔術師らしいわね」

テクパトル「ほぉ、こちらの情報は丸分かりか」

ローラ「ここはイギリス清教系列の病院だからね」

テクパトル「・・・何をしに来た」

ローラ「ブラックマンと接触したらしいわね」

ローラが少し声を低くする

重要な話なのだろう

テクパトル「・・・あぁ」

ショチトル「・・・そんなことを聞きに来たのか?」

テクパトル「そんなこと、些細な問題だろう」

ローラ「・・・情報を提供してくれないかしら」

テクパトル「・・・」

ショチトル「なぜそれだけのためにわざわざ・・・」

ローラ「戦う敵の情報は必要でしょう」


180 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:22:59.97 ID:IPVjS/kr0
テクパトル「・・・戦う敵?」

ローラ「・・・」

テクパトル「よく言うじゃないか、御する人間の情報がほしいのだろう?」

ショチトル「御する人間・・・?ブラックマンはイギリス清教を・・・」

テクパトル「始めから何かが引っ掛かっていたんだがな・・・」

ローラ「・・・聞こうかしら」

テクパトル「まず、ブラックマンが捕まった頃はまだインデックスは禁書目録の役割など担っていない」

ショチトル「・・・そうか、当時インデックスはまだ・・・」

テクパトル「そうだ、そして牢獄の中では外の情報など伝わらない」

テクパトル「・・・禁書目録という存在など、そもそもブラックマンは知らないのさ」


ブラック「・・・インデックスとはなんだ」

上条「・・・禁書目録だ、知らないのか?」

ブラック「・・・知らない」

上条「じゃあなんでお前は監視の人間を殺してまで脱獄したんだ!?」


181 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:23:55.73 ID:IPVjS/kr0
ブラック「待て、監視の人間を殺した?」

上条「・・・殺してから逃亡したんだろ」

ブラック「・・・何を言っている、私が脱獄したときに監視の人間などいなかったぞ」

上条「・・・なんだって?」

ブラック「・・・だから私も驚いたのさ」

上条「待てよ!そんな無用心な・・・第一お前の話なんて信用出来るか!」

ブラック「・・・監視の人間を殺したというのは誰が言ったことだ」

上条「・・・最大主教とかいう人だ」

ブラック「・・・馬鹿な、何のつもりだ・・・」


テクパトル「・・・牢獄を逃げ出せたのも、ただの偶然じゃない」

ローラ「あら、ブラックマンが魔術を使ったと?」

テクパトル「・・・アンタが逃がしたんだ」

ショチトル「ば、馬鹿な!」

ローラ「・・・」




182 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:25:01.94 ID:IPVjS/kr0
テクパトル「簡単だよな、監視の役の人間をいなくすれば簡単にブラックマンを逃がせられる」

ショチトル「そんなことをする理由がないぞ!?」

テクパトル「・・・最大主教、お前はブラックマンを捕らえた当初、やつの魔術を知らなかったんだろう?」

ローラ「・・・尋問で明らかになったと言っていいかしらね」

テクパトル「ならばお前は焦ったはずだ」

ローラ「・・・」

テクパトル「聖書の記述を事実に出来る・・・そんな力があれば世界を変えられるだろう」

ショチトル「ブラックマンの魔術は未完成だ、それは出来ない・・・」

そこまで言って、ショチトルも気づいたようだ

テクパトル「最大主教、アンタ・・・ブラックマンの術式を完成させようとしているな?」

ローラ「・・・」


上条「・・・待てよ、じゃあなんでお前は脱獄した」

ブラック「・・・理由など語るわけにはいかない」

上条「語れないような理由か」

ブラック「別に君には関係ないことだ」


183 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:25:45.27 ID:IPVjS/kr0
上条「関係ない?ふざけんな!」

上条がブラックマンに飛び掛かる

それは避けられるが、その隙にブラックマンの足を払う

ブラック「くっ・・・」

上条「俺の友達を傷つけた!ならそれだけで俺には関係あるんだよ!」

ブラック「君には何も分からないだろうさ!」

上条「お前に戦う理由があるように、俺にだって戦う理由があるんだよ!」

ブラック「理解出来ないな!」

上条「なら理解する必要なんてないんだよ!」

二人の闘志がぶつかり合う

上条「お前の幻想を俺がぶち殺す!」

ブラック「出来るものならやってみるがいい!」


テクパトル「・・・禁書目録の中には聖書の原典があるだろう?」

ローラ「ご明答」


184 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:26:30.15 ID:IPVjS/kr0
テクパトル「ブラックマンが読んだのは所詮、市販の聖書だろう?」

ローラ「えぇ」

テクパトル「ならば、原典を読めばさらに力は強くなる」

ショチトル「・・・レプリカの聖書であの威力だからな」

テクパトル「・・・だからこそ、アンタはそれをする必要があった」

ローラ「原典を読んだ人間は大抵、その汚染に堪えきれないのよ」

テクパトル「好都合だろ?術式だけは完成し、反乱される恐れもなくなる」

ショチトル「廃人になれば・・・魔術を吐き出すだけの装置として操れるからな」

テクパトル「仮に汚染によって死んでしまっても、イギリス清教としてはなんの問題もない」

ローラ「・・・異端者だから、か?」

テクパトル「そうだ」

ローラ「・・・ならばなぜ私はブラックマンを逃がした?禁書目録を牢獄に連れていけば・・・」

テクパトル「そんなことをすれば反感を買うだろう」

ローラ「・・・」

ローラの顔が険しくなる



185 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:27:19.20 ID:IPVjS/kr0
まさかテクパトルがここまで読んでいるとは思わなかったのだろう

テクパトル「それよりもわざと逃がしたほうが自然じゃないか」

ショチトル「・・・ブラックマンは逃亡し、インデックスは保護のためにイギリスに連れて来られた」

テクパトル「しかし偶然、ブラックマンはイギリスに残っていた」

ショチトル「・・・ブラックマンをどうにかしてインデックスに接触させればいいだけか」

テクパトル「原典を強制的に読ませるだけでいいんだからな」

ローラ「ちっ・・・貴様何者・・・」

テクパトル「・・・元は組織の参謀だったよ」

ローラ「余程汚い人間だったのだろうな」

テクパトル「・・・あぁ」

ローラ「・・・それで?貴様はどうする?」

テクパトル「協力などしないさ」

テクパトルが笑う

まるで挑発するかのような笑みだ


186 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:28:22.05 ID:IPVjS/kr0
ローラ「・・・」

テクパトル「・・・だがな、別に邪魔もしないさ」

ローラ「なぜ?」

テクパトル「ブラックマンの術式が完成すれば、人間を復活させられるのだろう?」

ローラ「魔力の精製度を高めれば」

テクパトル「ならばなんの文句もあるまい、幸せな世界は嫌いじゃないからな」

ローラ「・・・私はイギリス清教以外に興味などないのよ」

テクパトル「・・・そうか、なら別問題かな」

ローラ「・・・」

テクパトル「だがな、上条はどうかな」

ローラ「幻想殺しか」

テクパトル「あいつは止めるさ、そんなくだらない計画など」

ローラ「・・・どうかしら」

テクパトル「何?」

ローラ「・・・まぁいいわ、協力してもらえないのは残念だけど」


187 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:29:26.13 ID:IPVjS/kr0
ローラがドアに向かって歩き出す

テクパトル「・・・待て」

ローラ「一つ教えよう、アステカの魔術師」


ローラ「私は貴様などより余程汚い人間なのよ」


ブラック「・・・ここまで苦戦した相手は初めてだ」

上条「へぇ・・・」

ブラック「・・・去ってはくれないか」

上条「出来ないな、ここで去ったら・・・」

ブラック「・・・後悔するか?」

上条「あぁ」

ブラック「・・・正義だな」

上条「・・・ブラックマン、てめぇの理由なら後で聞いてやる、だから今は・・・」

ブラック「・・・!」

突然ブラックマンが別の方向を見る



188 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:30:39.03 ID:IPVjS/kr0
それは、美琴がいるはずの方向だ

上条「・・・なんだよ」

ブラック「・・・魔術師だな」

上条「へぇ・・・イギリス清教の応援か」

ブラック「・・・いや、一人だけだ・・・去っていく」

上条「は?気づかなかったのかよちくしょう・・・」

ブラック「・・・魔術を使ったな」

上条「・・・何?」

上条もそちらの方向を見つめる

ブラック「・・・なぜ魔術を使用した」

上条「てめぇ、ハッタリじゃないだろうな」

ブラック「・・・ならば一緒に行ってみるか?」

上条「・・・どうせ逃げるつもりじゃないのか」

ブラック「まさか」

ブラックマンが歩き出す

なぜか上条もそれに従ってしまう


189 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:32:03.16 ID:IPVjS/kr0
上条(なんなんだ・・・こいつは大量虐殺を行った人間なのに・・・)

上条(・・・それにしては普通すぎる)

ブラック「・・・見ろ」

上条「あぁ?」

上条がブラックマンの指差す場所を見つめる

たしかそこには美琴がいたはずなのだ

上条「い、いない・・・」

ブラック「・・・」

上条「美琴!いるなら返事しろよ!美琴!」

ブラック「どうする?私と戦っていていいのか?」

上条「く・・・」

上条がブラックマンの顔を見つめる

この男を止めなければならないのは分かっている

しかし、今は美琴が一番ではないのか

上条「くそ・・・今度は絶対に殴るからな!」


190 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:33:05.84 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・あぁ」

上条「くそ!」

上条が走り出そうとする

その時、ブラックマンが後ろから上条に呟いた

ブラック「・・・あの魔術の流れはイギリス清教のものだ」

上条「なに?」

ブラック「気をつけろ少年、敵は私だけではないかもしれないぞ」

上条「分かったよ」

顔をしかめてから上条が走り出す

残されたブラックマンは、再び墓の前に向かった

ブラック「・・・やっとだ」

ブラック「やっと・・・お前の敵を打てるのだ」


ステイル「・・・女子寮、か」

ステイルはイギリス清教の女子寮に来ていた

まだ戸は叩いていないが

ステイル「・・・インデックスは来ているかな」


191 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:33:55.51 ID:IPVjS/kr0
その戸を叩く

しばらくして、戸が開いた

19090「はい」

ステイル「おや・・・御坂美琴か」

19090「え、あ・・・」

エツァリ「どうされましたか?」

ステイル「・・・?君は・・・」

エツァリ「たしかステイルさんでしたね」

ステイル「あぁ」

エツァリ「よかった、ご無事でしたか」

ステイル「・・・その、インデックスはいるかな」

19090「あぁ・・・インデックスは今はいませんよ」

ステイル「今は?」

19090「少し前・・・そうですね、夕方くらいに最大主教という人が連れていきましたよ」

ステイル「最大主教が?」


192 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:34:42.77 ID:IPVjS/kr0
エツァリ「えぇ、今頃はおそらくイギリス清教の聖堂か・・・」

ステイル「あぁ、ありがとう」

エツァリ「い、今から向かわれるんですか?」

ステイル「あの子のことは僕が守る」

19090「ですが・・・」

ステイル「君達はここにいてくれ・・・他のメンバーは?」

エツァリ「まだブラックマンの捜索らしいです」

ステイル「そうか」

ステイルが戸を閉める

ステイル(最大主教が連れていった・・・?)

おかしかった

最大主教がわざわざ出向く必要があったのか

そこまでして、確実にインデックスを回収したかったのだろう

ステイル(・・・だとしたら・・・なぜ)

考えながら、ステイルは歩く

ただ疑問を抱えながら


193 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:36:00.87 ID:IPVjS/kr0
建宮「はぁ・・・結局、あれからブラックマンは見つからなかったのよな」

対馬「逃げられたなんて・・・情けない」

五和「仕方ないですよ・・・」

対馬「だからあの時逃げなければ・・・」

建宮「あぁ分かってるのよなぁ!」

建宮が頭を抱える

建宮「女教皇も今は別行動!」

五和「・・・正直、私達だけじゃブラックマンには対応出来ませんよ」

対馬「そうですね・・・」

建宮「情けない・・・」

建宮が肩を落とす

彼はどうにかしてでもブラックマンを見つけたかったのだ

イギリス清教の中では、天草式は弱小と言われてしまう

異質な魔術を使うものの、人数が少ないためだ

だからこそ、少しでも組織内での地位を向上させたかった


194 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:36:36.04 ID:IPVjS/kr0
建宮「はぁ・・・夢のまた夢なのよな」

五和「建宮さん・・・無理しすぎたらダメじゃないですか」

対馬「いいのよ五和・・・建宮は馬鹿なとこしか取り柄がないから」

建宮「もう言い返す気力もないのよなぁ!」

涙目になりながら建宮が遠くを見つめる

すると、その先に見覚えのある顔を見かけた

建宮「あれ?上条なのよな・・・」

五和「か、上条さん!?」

対馬「あら、なんでこんなところにいるのかしら」

たしかに、道の先にいるのは上条だ

ひどく焦っているように見える

建宮「おーい、上条!」

上条「あぁ・・・建宮か」

上条が駆け足で近づく

やはり、顔にも焦りの表情が見えた


195 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:37:18.27 ID:IPVjS/kr0
五和「どうして上条さんがこんなところに?」

上条「インデックスのことで・・・って今はそれどころじゃないんだ!」

建宮「どうかしたのよな?」

上条「美琴、見なかったか?」

五和「いえ・・・どうかされたんですか?」

上条「いや・・・ならいいんだ」

くるりと上条が向きを変える

建宮「待てよ上条」

その肩を、建宮が掴む

上条「なんだよ・・・急いでるんだ」

建宮「事情によっては協力するのよな」

上条「!本当か!?」

建宮「救われぬ者に救いの手を差し延べる、それが俺達だ」

上条「美琴がいなくなったんだ・・・ブラックマンとの戦闘中に・・・」


196 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:38:05.17 ID:IPVjS/kr0
五和「ま、待ってください!ブラックマンとの戦闘!?」

上条「あ、あぁ・・・さっきまでな」

対馬「それで無事だったんですか!?」

上条「あぁ・・・途中で美琴がいないって気づいたから一旦引き分けになったけど」

建宮「何やってるのよな!ブラックマンを逃がすなんて・・・」

上条「俺にとって一番大切なのは美琴なんだよ!」

上条が建宮に詰め寄る

相当焦っているのだろう

建宮「あぁ・・・そうだったな、悪い」

上条「・・・もしかしたら、魔術戦か何かに巻き込まれたかもしれない」

対馬「ならさっさと探しましょう」

上条「でもいいのか?お前達は・・・」

五和「友人を助けないで何が平和を守る、ですか?」

建宮「お前と一緒にいたらブラックマンにも会えそうだしな」


197 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:39:20.94 ID:IPVjS/kr0
上条「・・・悪い、助かる」

建宮「俺と対馬が一緒に組む、五和は上条をサポートしてくれ」

五和「は、はい!」

上条「・・・建宮、恩に着る」

建宮「俺達はお前に大きすぎる借りを作ってる、それを少し返しただけだ」

上条「お釣りが来るほどだぜ、俺の世界を救ってくれるんだから」

建宮「釣りならいらない、受け取っとくのよな」

二組が分かれて捜索を始める

上条(美琴・・・無事でいてくれ!)

上条はただ祈っていた

美琴の無事を

彼に今出来るのはそれだけだった

手を放してしまったのは、彼だったのだから

上条(ならもう一度・・・)


上条(絶対に、その手を掴んでやる!!)


198 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:39:58.97 ID:IPVjS/kr0



「お兄ちゃん」

「・・・どうした?」

「見て見て!聖書だよ!」

「ほぉ、どこでもらったんだ?」

「イギリス清教のシスターさんがくれたの!」

「・・・あまり没頭し過ぎるなよ、お前は・・・」

「ねぇねぇ!これって難しい!?」

「そうだな・・・お前にはちょっと難しいかもな」

「でも私、神様のことを勉強したい!」

「ははは、神様か・・・そんなものがいるのかな」

「いるよ!だってパパとママは神様なんでしょ?」

「・・・」

「お兄ちゃん言ってたじゃん!パパとママが私達にいないのは、神様だからって!」

「それは・・・」

「神様だからお空の向こうにいるんだよね?」

「・・・」


「あぁ・・・そうだとも」






199 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:40:45.07 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・」

ブラックマンが目を開ける

そこは、森の中だった

空にはすでに、陽が上っている

昨日の上条との一戦の後、そのまま寝てしまったらしい

ブラックマンがそっと体を起こす

ブラック「・・・いけないな・・・夢を見ていたか」

ふと傍にある墓を見つめる

名前も刻まれていない墓

誰からも忘れられた墓

だが、ブラックマンだけは忘れられない墓

ブラック「・・・」

ブラック「待っていてくれ、お前が愛した十字教を取り戻さなければならない」

ブラック「それまでは・・・永らえさせてください、主よ」


200 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:41:10.79 ID:IPVjS/kr0
建宮「・・・くそ、一日探してもいなかったのよな」

対馬「・・・本当に、どこへ行ったのでしょうか」

建宮と対馬は、街の中を捜索していた

可能性は低いが、街中を歩いているかもしれない

イギリスの中で日本人はかなり目立つだろう

だから見つけ易いはずだ

建宮「・・・おそらくこの近くにはいないな」

対馬「・・・そもそも、なぜはぐれてしまったのでしょうか」

建宮「詳しく聞くべきだったな・・・」

対馬「全くです」

二人が大きくため息をつく

対馬「一旦、女子寮に帰りましょうか」

建宮「そうだな・・・あそこが拠点には一番向くかもしれないのよな」



201 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:41:53.51 ID:IPVjS/kr0
上条「くそ・・・美琴・・・」

五和「上条さん、一旦女子寮に・・・」

上条「もう少し・・・もう少しだけ・・・」

五和「・・・」

気がついたら朝になっていた

二人も、一晩中必死に美琴を捜索した

イギリス清教の魔術師が何かしら、美琴と接触したのは分かっている

だがなぜ

イギリス清教にとって美琴は敵ではない

むしろ味方になるはずの人間だ

危害を加えるメリットなどあるのだろうか

上条「くそ・・・なんなんだよ!」

建物の壁に拳を叩きつける

美琴をあの時一人にしなければ

自分が一緒にいれば


202 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:42:42.72 ID:IPVjS/kr0
後悔だけは一人前に出来るのだ

何もかもが遅すぎる

上条「なんだよ・・・」

五和「上条さん、自暴自棄になったらいけません」

上条「分かってるさ・・・」

上条が俯く

その時、携帯電話が鳴った

この着信音はテクパトルからのものだ

上条「・・・はい」

テクパトル『上条か』

上条「・・・どうした、今ちょっと忙しいんだよ・・・」

テクパトル『・・・そうか』

上条「なんか用なのか?」

テクパトル『そっちで変わったことはないかと思ってな』


203 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:43:23.52 ID:IPVjS/kr0
上条「ありまくりだ、美琴がいなくなった」

テクパトル『・・・何?』

上条「俺の不注意だ・・・くそ、情けない・・・」

テクパトル『・・・悪いな、そんな時に』

上条「・・・いいさ、またな」

上条が通話を切る

上条「・・・美琴」

返事が返ってこないと分かっていても名前を呼んでしまう

上条「どこなんだよ・・・」


テクパトル「・・・ショチトル」

ショチトル「なんだ」

ショチトルはまだテクパトルの病室にいた

傷を負ったテクパトルを一人にするのは危険だからと残ったのだ


204 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:44:20.67 ID:IPVjS/kr0
テクパトル「・・・義姉さんが行方不明らしい」

ショチトル「!美琴が!?」

テクパトル「・・・イギリス清教だな」

ショチトル「何・・・?」

テクパトル「最大主教が言っていた・・・上条が絶対に戦うと伝えた時にな」

ショチトル「・・・どうかな、と言っていたな」

テクパトル「あれは上条の闘志を疑っていたんじゃない・・・闘志を無くせる何かを手に入れたからなんだ」

ショチトル「人質か!」

ショチトルがすぐさま立ち上がる

テクパトル「落ち着け、今は堪えろ」

ショチトル「何を言ってる!美琴が人質に・・・」

テクパトル「まだ推測なんだ、それにお前一人で何が出来る」

ショチトル「それは・・・」

テクパトル「考えろ・・・人質ならば命は無事だ」


205 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:45:09.49 ID:IPVjS/kr0
ショチトル「・・・」

テクパトル「ただの行方不明なら、俺達にはどうしようもない」

ショチトル「指を咥えろと?」

テクパトル「我慢の時だ・・・今はな」

ショチトル「ブラックマンにイギリス清教・・・敵は増えるばかりか・・・」

テクパトル「・・・ブラックマン、か」

ショチトル「やつは結局、何が目的なんだ・・・?」

テクパトル「さぁな・・・ただ魔法名がおかしいだろう?」

ショチトル「あぁ」

テクパトル「何かがあるのさ、十字教弾圧の皇帝を名乗る理由が」


テクパトル「・・・ショチトル、これはただの事件などではない」

テクパトル「俺達とやつらの戦争だ」

ショチトル「分かっているさ」


206 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:46:09.76 ID:IPVjS/kr0

ステイル「最大主教」

ステイルはローラの部屋を訪ねていた

ローラ「どうかした?」

ステイル「・・・インデックスは?」

ローラ「寝ているわよ、神裂が護衛についているけど」

ステイル「なら安心・・・ですね」

ローラ「私としてはお前が無事だったことが驚きなのだけれど」

ステイル「ブラックマンは本気で我々を殺しに掛かってはいなかった」

ローラ「・・・手加減されていた、と?」

ステイル「悔しいがそういうことになるね」

ローラ「・・・そう」

ステイル「・・・僕は彼を止めに行く」

ステイルが踵を返す

ローラ「まぁ、待ちなさい」


207 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:47:38.01 ID:IPVjS/kr0
ステイル「なんですか」

ローラ「お前には聞いてほしい話があるのよ」

ステイル「話?」

ローラ「・・・今ではなくてもいいのだけれど」

ステイル「ならば・・・明日には」

ローラ「そう、ではよろしく」

ステイルがドアを閉める

ローラ「・・・一日伝えるのが遅れる、か・・・」

ローラ「まぁよい、神裂にも一緒に伝えたほうがいいからな」

ローラ「・・・気づかない者もいれば、気づく者がいる・・・か」

彼女の瞳には、おかしな光が宿っていた

テクパトルという男は知っているようだ

ローラが何を考えているか

ローラ(・・・幻想殺しの枷は回収終了、と)

ローラ「さて・・・」



ローラ「・・・ブラックマンはどこにいるのかしらね」


208 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:49:03.18 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・まだイギリス清教の人間がうろついているか」

陰に身を隠しながら、ブラックマンは歩いていた

神父やシスターが辺りを歩いている

顔を隠せば怪しまれる

ならば目を盗んで進むしかないのだ

ブラック(・・・最大主教はどこにいる)

それだけを考えながら、ブラックマンは進む

ただまっすぐに

少し歩けば、イギリス清教の人間を見かける

あまりにも多い追跡者

なぜここまで、自分に

それならまず、牢獄の監視がいなかったことがおかしいのだ



ブラック(・・・しかし、多いな・・・私はそこまで重要なものなのか?)


209 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:49:42.25 ID:IPVjS/kr0


建宮「・・・失礼するのよな」

エツァリ「どなたですか?」

対馬「・・・あ、あれ?」

建宮「御坂・・・美琴か?」

19090「いえ・・・私は妹ですよ」

対馬「なんだ・・・」

建宮「俺は天草式の建宮、こいつは対馬だ」

エツァリ「エツァリです・・・こちらは」

19090「・・・美月です」

エツァリ「とっさに考えたんですか?」

コッソリとエツァリが尋ねる

19090「そんなところです」

建宮「にしてもそっくり・・・」

対馬「今はそれではないですよ」

210 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:50:29.94 ID:IPVjS/kr0
建宮「あぁそうそう・・・上条は帰ってきてないか?」

エツァリ「えぇ」

建宮「なら・・・御坂美琴が行方不明とも知らないな?」

19090「お姉様が・・・!?」

エツァリ「・・・テクパトルの問題が解決したら次はこれか・・・」

エツァリが顔をしかめる

神様はとことん自分達を嫌っているらしい

対馬「今は必死に探してるとこよ」

エツァリ「上条さんと行動していたはずですが」

建宮「上条がブラックマンと接触したらしくてな・・・その間に」

エツァリ「・・・ブラックマンの仲間でしょうか?」

19090「そんな・・・」

対馬「断定は出来ないわ」


211 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:51:07.32 ID:IPVjS/kr0
建宮「ただいなくなった、としか分からないのよな」

エツァリ「はぁ・・・そうですか」

19090「・・・心配です」

建宮「・・・全く、混乱し過ぎてるのよな」

建宮がため息をつく

建宮「正直、何が何だか分からなくなってる」

対馬「情報が錯誤しているんですよ」

エツァリ「仕方ない・・・ですね」

19090「・・・お姉様・・・」

建宮「・・・ブラックマン、御坂美琴・・・二つの問題が解決すれば万々歳なのよな」

エツァリ「そうですね」

19090「がんばりましょう!」

対馬「・・・えぇ」

対馬が少しばかり顔をしかめる

対馬(それで・・・本当に終わりなの?)



212 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:51:42.19 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・まだいるな」

隠れながら進んでも、すぐに別の団体に会う

先程からずっとそればかりだった

だが正面から戦う気にはならない

ブラック「・・・最大主教はどうしても私を捕まえたいのか・・・」

ならばなぜ

監視をいなくしたのか

その説明がつかない

ブラック(それとも・・・)


五和「!ブラックマン!」

ブラック「!?」

上条「お前・・・」

ブラック「少年・・・君はいなくなったあの少女を探していたのではなかったか」

上条「探してたらお前と会ったんだよ・・・」


213 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 10:53:24.77 ID:IPVjS/kr0
五和「上条さん!何を呑気に話しているんですか!」

上条「あぁ、分かってる・・・次に会ったらぶん殴るって言ったからな」

ブラック「血の気が多いな、君は」

上条「・・・美琴を探さなきゃならない、手短に済ませようぜ」

ブラック「・・・」

ブラックマンが目を細める

まるで何か懐かしいものを見るかのような目だ

ブラック「・・・少年よ、止まるつもりはないか」

上条「・・・お前を止める、美琴は見つける」

ブラック「欲張りだな」

上条「・・・それが俺なんだよ」

右手を握り締める

今は、一秒が惜しいのだ


上条「幻想を現実にしてやるんだ、誰も彼もを救ってみせる!!!」


214 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:02:32.05 ID:IPVjS/kr0

美琴「ん・・・」

美琴は目を開けた

たしか、覚えている限り、最後にあった感覚は痛みだった

誰かに首筋を殴られたのか

美琴「いたた・・・ここ・・・どこ?」

神裂「おや、目が覚めましたか」

美琴「あれ?神裂さん?」

神裂「よかった・・・あなたは森の中で一人で倒れていたそうなんですよ」

美琴「ひ、一人!?当麻は!?」

神裂「お、落ち着いて・・・」

美琴「そ、そうね・・・そもそもここはどこなの?」

神裂「イギリス清教の聖堂ですよ」

215 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:05:17.32 ID:IPVjS/kr0
美琴「そう・・・」

神裂「倒れていたのをたまたま我々の仲間が発見したそうなんです」

美琴「?あんな森の中で?」

神裂「えぇ・・・なぜかは分からないのですが」

美琴「もしかして、ブラックマンを探していたの?」

神裂「・・・そうかもしれませんね」

神裂が頷く

神裂「・・・ちょっと待ってください、ということはあなたもブラックマンを?」

美琴「うん・・・当麻も一緒に」

神裂「おかしいですね・・・上条当麻はいなかったようですよ?」

美琴「そんな・・・」

美琴が泣きそうな顔になる

もしかしたら、上条はブラックマンに

そんな最悪のビジョンが浮かぶ


216 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:08:11.95 ID:IPVjS/kr0
神裂「・・・ブラックマンとは?」

美琴「いたわよ・・・思ってたのと全然違ったけど」

神裂「・・・私は会ったことがないので分からないのですが・・・」

美琴「ホント普通の人間だったわよ・・・」

神裂「・・・」

美琴「・・・ねぇ、当麻を探してくれない?」

神裂「はい、分かりました」

神裂が力強く頷く

彼女も上条には借りがあるのだ

神裂「一旦私は出ますが・・・あなたはここにいてください」

美琴「?どうして?」

神裂「さぁ・・・最大主教が安全を確保するように、と」

美琴「・・・科学側といざこざを起こしたくないのかな?」

神裂「おそらくは」


217 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:10:18.14 ID:IPVjS/kr0
美琴「・・・そうだ、インデックスは?」

神裂「こちらにいますよ・・・今はまだ寝ていますが」

美琴「そっか・・・」

神裂「ステイルも無事だったようです」

美琴「・・・よかった」

神裂「・・・あとは上条当麻だけですね」

美琴「うん」

神裂「では私はこれで」

神裂が一礼してから部屋を去る

美琴(・・・当麻・・・)

ぎゅっと手を握る


美琴(お願い、無事でいて・・・)


218 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:14:16.75 ID:IPVjS/kr0

神裂「おや、ステイル・・・」

ステイル「やぁ、神裂」

聖堂の中、二人は顔を見合わせていた

神裂「無事で何よりです」

ステイル「全くだよ・・・君はブラックマンには?」

神裂「あっていません・・・捜索はしていたのですが」

ステイル「そうかい」

神裂「ところであなたはなぜここに?」

ステイル「最大主教に話があると言われてね」

神裂「おや、私もですよ」

ステイル「二人に話すことか・・・インデックスのことだろうか」

神裂「・・・最大主教はインデックスのことを気に掛けると思いますか?」

ステイル「・・・そうだな、そんなわけがないか」

神裂「・・・行きましょう」


219 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:17:24.67 ID:IPVjS/kr0

ローラ「ふんふんふーん・・・♪」

ローラはとても上機嫌だった

今朝は寝癖が全くつかなかった

紅茶がとても美味しかった

寝相も綺麗だったし、何より朝の陽射しが気持ちよかった

彼女は今、部屋の外にあるテラスにいる

ポカポカという陽射しの中、ダージリンを飲んでいる

ローラ「はぁ・・・よい朝なりけるのよ」

ついつい、日本語になってしまう

情緒的な朝には日本語が合うのだ

後ろで三味線でも弾いてもらえたら最高だろう

ローラ「はぁ・・・これは中々オシャレな朝なりけるのよ」


220 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:20:00.08 ID:IPVjS/kr0
そんなオシャレな朝を劈くのは、ドアを開く音だった

ステイル「最大主教!」

ローラ「・・・蝋人形にしてやろうか」

ステイル「何を言っているんですか」

神裂「失礼します」

ローラ「・・・何しに来たの?」

ステイル「あなたが話すことがあると言ったではないですか」

ローラ「あぁ・・・そういえば」

神裂「何か大切な話なのですか?」

ローラ「そうそう、御坂美琴なる人物は?」

神裂「保護できましたよ・・・しかしあなたが部外者を保護するなんて」

ステイル「どういう風の吹き回しだい?」

ローラ「・・・考えがあるのよ」

神裂「学園都市に恩でも売るつもりですか?」


221 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:22:10.52 ID:IPVjS/kr0
ローラ「ふん、そんな小さな目的だと思わないでほしいのよ」

ローラが二人の顔を見る

真剣な目つきだ

神裂「では、なぜ彼女を?」

ローラ「・・・幻想殺しは現在、ブラックマンと交戦中なりてよ」

ステイル「!!」

ステイルが駆け出そうとする

ローラ「待ちなさいステイル」

ステイル「しかし最大主教!!!!」

ローラ「全く・・・それについて今日は話すのよ」

神裂「・・・なんですって?」

ステイル「ブラックマンを捕まえろ、なんていまさら言われなくとも・・・」

ローラ「・・・そんなくだらないことで呼ぶと思う?」

ステイル「・・・」


222 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:24:40.20 ID:IPVjS/kr0
ローラ「はぁ・・・テクパトルという魔術師を知っている?」

神裂「たしか・・・アステカの魔術師ですよね」

神裂がイギリスに着たときにいた人間を思い出す

大柄の男だったはずだ

ローラ「あの男はブラックマンとの交戦で負傷」

神裂「・・・そうですか」

ローラ「そして、私の目的に気づいたようなのよ」

ステイル「・・・待て、目的だって?」

ローラ「・・・お前達は優秀だからな、話しておく必要があるのよ」

神裂「・・・何についてですか?」

ローラ「そうね・・・御坂美琴の回収の理由・・・」

ステイル「・・・」


ローラ「そして、ブラックマンと禁書目録の役割について、かしらね」


223 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:29:32.95 ID:IPVjS/kr0

五和「・・・上条さん、ブラックマンは?」

上条「あっちの建物の影だ・・・」

上条と五和は、ブラックマンとの交戦中だった

上条「・・・くっそ、あいつの魔術は一対一だったら勝てるんだけどな・・・」

五和「こんな死角の多い場所では難しいですね・・・」

上条「あぁ・・・」


ブラック「・・・全く、本当にあの少年は不思議だな」

ブラックマンは手の中で槍を転がしていた

しかし、その槍も上条の右手に触れれば消えてしまう

どんな魔術も打ち消されてしまうのだ

ブラック(・・・あれは魔術ではない・・・だが科学の能力なのか?)

ブラックマンは学園都市の能力開発については知らない


224 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:35:40.28 ID:IPVjS/kr0
だがしかし

もしもあれが学園都市によって作られた能力ならば、世界の天秤が崩れてしまう

ブラック(あんなものが開発されているのなら・・・魔術側は全く歯が立たない・・・)

ブラック(・・・いや、今はそれが問題ではない)

今、上条当麻は建物を隔てて遠くにいる

しかし逃げることは容易ではないだろう

この周りにもたくさんの追っ手がいる

逃げようとしてもすぐに見つかるだろう

ならば、一組の追っ手ずつ倒すほうが楽なのだ

ブラック(・・・騒ぎに誰も気がつかなければいいがな)

今のところは、周りには気がつかれていないらしい

出来るかぎり大きな損害を起こさないようにしているのだ

ブラック(・・・あの少女は天草式の一員だったな)


225 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:38:10.02 ID:IPVjS/kr0

五和「・・・膠着状態ですね」

上条「・・・でもこっちから仕掛けるには敵が大きすぎる」

五和「・・・」

五和が一枚の護符を取り出す

それは、一種の爆弾のような効果を持つものだった

五和「・・・規模を小さくすれば、周りには損害が出ません」

上条「?なんだよそれ・・・」

五和「今は増援に気づかせるべきですね」

五和が護符を遠くへ飛ばす

それは、風に乗ってブラックマンのところへと向かう

上条(・・・そうか、何か考えてるんだな・・・)

五和(・・・今です!!!)


バァン、と音がして小規模の爆発が起きる


226 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:40:26.66 ID:IPVjS/kr0

アニェーゼ「!!なんですか今の音!?」

ルチア「行きますよ!!」

アンジェレネ「は、はい!!」


オルソラ「おやおや、何の音でございましょうか」

シェリー「向かってみるか」


建宮「はぁ・・・朝一で捜索を始めたらすぐこれなのよな・・・」

対馬「あれは五和の術式でしょうか」

建宮「行くのよな」


ブラック(・・・厄介なことになったな)

ブラックマンが手の中の槍を消す

その得物では大勢を相手にすることはできない

かといって、あの少年に魔術を打ち消されてしまえば対抗策はない

ブラック(・・・仕方ない、あの少年は後回しになるかな)


227 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:42:32.52 ID:IPVjS/kr0
上条「・・・!!」

五和「出てきました!!」

ブラック「面倒なことをしてくれたな、天草式の少女よ」

五和「・・・これで増援が来ますよ」

ブラック「・・・」


アニェーゼ「!!いました!!」

アンジェレネ「ブラックマンです!!」

ルチア「みなさん、気をつけてください!!」

シェリー「・・・この街中じゃエリスは使えないかしらね」

オルソラ「みなさん、ここが正念場なのでございますよ」

建宮「よくやったのよな五和!!!」

対馬「さぁ、どうするの?」


ブラック「・・・はぁ」


228 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:44:48.04 ID:IPVjS/kr0
ブラックマンが溜め息をつく

相当面倒だと思っているのだろう

ブラック「・・・バビロンの塔だ」

上条「はぁ?」

上条が顔をしかめる

バビロン、というのはなんとなく聞いたことがある

それが何だったのかは思い出せないが

五和「      !!!」

上条「え、なんか言ったか?」

ルチア「      !!!」

上条「あ、えっと・・・」

建宮「     ・・・!」

上条「お、お前達何言ってるんだよ・・・」

ブラック「バビロンの塔とは神に背いて作られたものだ」

上条「!!」

ブラック「神はその建設を妨げるために、人々の言語をバラバラにしてしまった」


229 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:47:32.30 ID:IPVjS/kr0
上条「お前が何かしたのか!!!」

ブラック「・・・統制の取れた軍隊とは面倒なものだ」

ブラックマンが不敵に笑う

ブラック「・・・だが、統制が崩れてしまえばそれはただの自滅装置になるのだよ」

アニェーゼ「!!」

アニェーゼが何かの魔術を発動する

それはブラックマンへと向かって突き進む

ブラック「そら見ろ」

ブラックマンがそれをかわす

そのまま突き進んだ魔術の衝撃は、建宮を襲う

建宮「  !!」

アニェーゼ「!」

上条「お、おい建宮!!!!」

ブラック「やめておきたまえ、君の言葉だけは正常に聞こえるようだが・・・おかしいな、右手以外でも打ち消されるのか?」

上条「くそっ!」

230 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:50:17.09 ID:IPVjS/kr0
ブラック「今から自分が攻撃すると伝えられない、衝撃をかわせとも伝えられない」

上条「・・・内部崩壊か・・・」

ブラック「これは敵が多ければ多いほど便利なのだよ」

上条「・・・」

上条が建宮の肩に触れる

何かを砕くような音がした

建宮「くそっ!!危ないのよなアニェーゼ!!」

上条「!!治ったか建宮!!」

建宮「あ、あぁ・・・」

ブラック「・・・人に掛けられた魔術さえも打ち消すのか」

上条「くっそ・・・この人数に触れて回るのは不可能だ」

ブラック「・・・」

対馬「   !!!」

対馬が護符を投げる

それは水を生み出すものだ


231 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 11:56:45.34 ID:IPVjS/kr0
建宮「!!対馬、それは周りを巻き込む・・・」

ブラック「・・・」

ブラックマンはそれに一瞥もくれない

ブラック(・・・この少年の右手はなんなのだ?)

ブラック(術式を理解しているということではなさそうだ・・・)

バビロンの塔を発動したとき、上条はかなり困惑していたようだ

術式を理解しているのならば困惑することはないだろう

ブラック「・・・少年よ」

上条「なんだよ・・・」

ブラック「君は、なんのためにここまで来た」

護符がヒラヒラと舞う

それはまるで、花びらのようにも見えた

上条「・・・友達を守るためだ」

ブラック「・・・それだけのためか」



232 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:02:09.83 ID:IPVjS/kr0
上条「・・・何度も言っただろ、それだけだよ」

ブラック「・・・命を懸けるほどに値する友人か」

上条「あぁ」

上条が右手を振りかざす

彼が狙うのは、ブラックマンのみ

その中にある、悲しい憎悪のみだ

上条「・・・ブラックマン、その幻想をぶち殺す」

ブラック「・・・幻想?そんなものではないさ」


ブラック「これはな、悲しい夢なのだよ」

上条「おぉぉぉぉぉ!!!!」

上条が振るうのは正義だ

それは、吐き気がするほどに真っ直ぐで

だからこそブラックマンはうらやましく、そして素晴らしく思った


233 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:04:34.44 ID:IPVjS/kr0
まさに、拳がぶつかる瞬間だった

上条の右手が幻想をぶち殺す瞬間だった

誰もが物語の終わりを考えていた

ブラックマン以外の誰もが

ただ、ブラックマンは笑っていた

ブラック「・・・終わらないさ、こんなところでは」


ステイル「そこまでだ、上条当麻」

上条「!ステイル!?」

ブラックマンの顔に拳がぶつかる寸前

聞きなれた声がしたのだ

上条「お前、生きてたのか・・・」

ステイル「動くなよ上条当麻」

上条「・・・なんだって?」


234 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:06:42.25 ID:IPVjS/kr0
ステイル「・・・ずいぶんと派手にやったようだな」

辺りには魔術の痕跡らしき傷が残っている

ステイルは顔をしかめた

どうせこれらの隠蔽を行うのはイギリス清教なのだ

ステイル「・・・ブラックマン、君を生け捕りにしろとの命令があったのは知っているかい?」

ブラック「・・・それで」

ステイル「上条当麻・・・いや、幻想殺し」

上条「なんだよ!!」

ステイル「・・・ここは手を引いてくれ」

上条「・・・は?」

ステイル「これは最大主教直々の命令なんだ」

上条「待てよ・・・お前、何を言ってる?」

ステイル「引け」


235 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:10:01.74 ID:IPVjS/kr0
上条「ふざけんな!!」

ステイル「・・・君は手を引かなければならないのさ」

上条「・・・なんだって?」


神裂「そうですよ、上条当麻」

上条「・・・神裂・・・?」

神裂「ブラックマン、悪いのですがこの魔術を解いてはもらえませんか」

ブラック「・・・君は誰だね」

神裂「申し遅れました・・・天草式十字清教女教皇・・・神裂火織です」

ブラック「解く理由がない」

神裂「・・・皆に伝えなければならないことがあります」

ブラック「そちらの事情など知らないさ」

神裂「・・・これはあなたにとって得なことなのですよ」

ブラック「・・・得だと?」


236 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:20:08.43 ID:IPVjS/kr0
神裂「・・・お願いします」

ブラック「・・・私にまず話を聞かせてはくれないか」

神裂「これは・・・イギリス清教内の問題です」

ブラック「・・・そうか」

ブラックマン寂しそうに笑う

ブラック「・・・ならば断っておく」

神裂「・・・」

ブラック「君達の考えなど知らないさ、私は私のやりたいことだけをやる」

ブラックマンが指を鳴らす

ルチア「みなさん!!聞いてくだ・・・ってあれ?」

シェリー「・・・戻った」

神裂「・・・どういうつもりですか」

ブラック「私は同時にいくつもの奇跡を起こせないのだよ」

神裂「!」



237 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:34:55.94 ID:IPVjS/kr0
ブラックマンが大きな野獣を作り出す

彼の象徴とも言えるだろう

ステイル「・・・止まってはくれないか」

ブラック「・・・私はイギリス清教・・・いや、最大主教の道を変えなければならない」

ステイル「・・・それは好都合なのだよ」

ブラック「好都合だと?」

ステイル「・・・君のその魔術がイギリス清教の力になるのさ」

上条「待てよ!!何言って・・・」

ブラック「・・・協力しろというのか?」

神裂「・・・不本意ではありますが」

ブラック「そうか」

ブラックマンが二人を睨みつける

建宮「女教皇・・・」


ブラック「やはり断るよ」


238 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 12:41:01.02 ID:IPVjS/kr0
神裂「・・・なお、我々と敵対するのですか?」

ブラック「君達の考えは分からない、それに私は今のイギリス清教に尽くすつもりなどないさ」

神裂「・・・いいでしょう」

神裂が刀を抜く

対馬「・・・女教皇」

神裂「ステイル、みなさんを引かせてください」

ステイル「分かった」

上条「待てって言ってるだろ!!!なんだよブラックマンを突然・・・」

ステイル「黙れ・・・君には分からないだろうさ」

上条「分かる気になんてならねぇよ!!」

ブラック「少年よ」

上条「なんだよ・・・なんなんだよ一体!?」

ブラック「・・・引きたまえ」

上条「・・・」

ブラック「・・・引け」


239 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:07:20.70 ID:IPVjS/kr0
ステイル「最大主教直々の命令だ、君達も従ってくれ」

建宮「・・・分かったのよな」

オルソラ「一体・・・」

ステイル「事情など後で話すさ」

ステイルがくるりと背を向ける

それは、まるで現実から目を逸らしているように見えた

上条「・・・ステイル」

ステイル「僕だって・・・正直、最大主教の考えには賛同できない・・・」

上条「だったら!!」

ステイル「でもね、上条当麻・・・歯向かうことなんて出来ないのさ」

ステイル「・・・イギリス清教を敵に回すなんて・・・僕たちにとっては世界を敵に回すのと同じなんだ」

ステイルが歩き出す

他の誰もが、無言で

上条「・・・」

240 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:08:47.99 ID:IPVjS/kr0
後ろでは、神裂とブラックマンが鎬を削っている

上条(だったら・・・)


上条(だったら・・・なんでブラックマンは世界を敵に回したんだよ・・・?)



神裂「・・・用意はよろしいですか?」

ブラック「もちろん」

神裂「では、行きます」

二人の魔術がぶつかる

神の力の片鱗を振るう聖人

神の奇跡を振るう悪人

両者とも、一歩も譲らない

どれほど戦っただろうか

ふと、二人の動きが止まる

ただ、少しだけ沈黙が流れた



241 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:09:15.64 ID:IPVjS/kr0
神裂「・・・一つ聞きたいことがあります」

ブラック「誰も彼も質問ばかりだな」

神裂「あなたはなぜ逃亡したのですか」

ブラック「・・・理由があると皆に説明したが」

神裂「その理由とは」

ブラック「・・・君の魔法名・・・何というのかね」

神裂「・・・Salvare000」

ブラック「・・・救い、か」

ブラックマンが愉快そうに笑う

ブラック「素晴らしい魔法名じゃないか、殺し名にしてはもったいないよ」

神裂「・・・私が救うのは救われぬ者だけです」

ブラック「・・・そうか」

神裂「さぁ、私が戦う理由は話しました」


242 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:10:10.59 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・brutus666というのが私の魔法名だ」

神裂「・・・これまた酔狂な」

ブラック「静寂穿つ咆哮・・・獣の鳴き声とでもいうべきかな」

神裂「あなたが破るのは平和の静寂ですか」

ブラック「・・・いや」

ブラックマンが首を振る

悲しみを顔に浮かべながら


ブラック「私が穿つのは・・・群衆の・・・服従からくる静寂だよ」


上条「ステイル!」

ステイル「・・・」

上条「てめぇ!」

上条がステイルの襟首を掴む

ブラックマンと神裂が戦っている場所からはずいぶん離れた


243 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:11:13.60 ID:IPVjS/kr0
ステイル「・・・君には関係ない話になってしまった、今すぐ日本に帰れ」

上条「なんだよそりゃ!」

ステイル「関係ないんだ」

ステイルが頭を振る

上条「インデックスが・・・友達が傷ついたんだ!」

ステイル「・・・最大主教からの命令だ、帰りたまえ」

上条「俺はイギリス清教の人間じゃない!」

ステイル「だが僕は神父だ!」

建宮「まぁまぁ、まずは事情を話すのよな」

五和「・・・なぜ最大主教はブラックマンを今更受け入れよう・・・と?」

ステイル「争いなど不毛なだけだからさ」

上条「ふざけんな・・・そんな理由で納得出来るか!」

ステイル「・・・君達には・・・分からないさ」




244 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:11:56.59 ID:IPVjS/kr0

時は遡る

ローラの部屋を訪れた二人は、ある話を聞かされた

ローラ「お前達は・・・イギリス清教に忠誠を誓える?」

神裂「もちろん」

ステイル「・・・場合にはよるが」

ローラ「・・・よし、なら話しましょう」

ローラが取り出したのは聖書だった

もちろん、原典などではない

一般市民でさえ持っているような市販のものだ

ステイル「・・・これは?」

ローラ「ブラックマンの魔術について知ってることは?」

神裂「聖書の記述を現実にする、とだけ」

ステイル「あと、彼には世界の創成や人間の復活は成し得ないということも」

ローラ「なぜ?」


245 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:13:44.09 ID:IPVjS/kr0
ステイル「なぜって・・・彼の精製できる魔力にも限りがある」

神裂「神が成し得たことを人間が行うなど・・・」

ローラ「お前達天草式は神を殺す魔術さえ持っているのでしょう?」

神裂「・・・はい」

ローラ「ならば神の力を扱う魔術師がいても不思議ではないのよ」

ステイル「・・・待ってくれ、ブラックマンには出来ないのだろう?」

ローラ「出来るわよ」

当たり前、というようにローラが笑う

だがそれは信じられないことだった

ステイル「何を言っている・・・彼は」

ローラ「ノアの洪水を巻き起こしたのは誰?」

ステイル「・・・神だ」

ローラ「ソドムとゴモラの火は?」

ステイル「神だ、それがどうした」


246 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:14:26.05 ID:IPVjS/kr0
ローラ「ブラックマンは神の業を既に使っているではないか」

神裂「・・・たしかに」

ローラ「あの男の術式に間違いなどないのよ」

ステイル「・・・ならばなぜ彼はすぐさま世界を創成しない」

ローラ「術式は問題ない、問題なのは知識のほう」

神裂「・・・何が違うのですか?」

ローラ「あの男は聖書の原典を読んだことがないのよ」

ステイル「当たり前・・・!だからブラックマンはインデックスと接触を!?」

ローラ「・・・まだそんなことを言っていたの?」

ステイル「・・・どういうことだ?」

ローラ「ブラックマンは禁書目録と接触するつもりなどなかったのよ」

神裂「!」

ローラ「大体あの男が捕まったとき、インデックスはまだ禁書目録ではなかったもの」

ローラが当然というようにさらりと答える

247 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:15:11.92 ID:IPVjS/kr0
ステイル「ま、待て!ならばなぜあの男は・・・」

ローラ「あぁ、監視の人間を当日非番にしたのよ」

ステイル「・・・じゃあブラックマンは監視を殺してなどいない?」

ローラ「えぇ」

神裂「ならばなぜ非番などにしたんですか!みすみす逃げられたんですよ!?」

ローラ「逃げられた?おかしいわね、逃がしたのよ」

ステイル「・・・逃がした?」

ローラ「あの男を逃がせば、自由にあの男を使えるでしょ?」

神裂「・・・何を言っているんですか」

ローラ「牢獄の中に入れたままだったら・・・」


ローラ「禁書目録と接触させられないじゃない」

神裂「!?」

ステイル「貴様!」



248 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:16:01.49 ID:IPVjS/kr0
ローラ「気づいてなかったのね、ブラックマンと禁書目録の接触・・・それはすなわち、神の誕生に近いのよ」

ステイル「そうか、だからお前はわざとインデックスを・・・!」

ローラ「学園都市にいられたら回収出来ないもの」

神裂「あなたという人間は・・・」

ローラ「ブラックマンは己の目的を果たすために動く・・・イギリス清教はそれを迎え撃つ」

ローラ「まるで一種の戦争のようでしょ?」

おどけるローラの胸倉をステイルが掴む

ステイル「人の皮を被った化け物が・・・!」

ローラ「まぁ話を聞きなさい・・・ブラックマンは禁書目録と接触させる」

神裂「・・・」

ローラ「でもインデックスの体にはなんら異常は起きないのよ?」

ステイル「そんなことは関係ない!」

ローラ「何を・・・ブラックマンが原典を読めば、廃人になるのは間違いない」


249 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:16:36.57 ID:IPVjS/kr0
ローラ「そうなればイギリス清教のための魔術装置として使うだけ」

神裂「ブラックマンがそう易々とインデックスに接触しますか?」

ローラ「・・・インデックスは今どこにいるのかしら」

ステイル「!イギリス清教の聖堂・・・」

ローラ「・・・お前達に救える?」

神裂「くっ・・・なるほど、あなたが直々に回収した訳が分かりました!」

ステイル「自らの手で回収すれば手違いは起きないからか!」

ローラ「ちなみに、この話を知っているのはお前達と・・・あとアステカの魔術師二名だけよ」

ステイル「こんなことが露見してみろ!お前は失脚するぞ!」

ローラ「失脚?なぜ」

神裂「あなたはインデックスを利用しようと・・・」

ローラ「インデックスの体に異常は起きない、ブラックマンは廃人となり反乱分子を抑えられる・・・」

ローラ「さらに神の力さえ手に入れられる、何がどうイギリス清教にとって不都合なの?」


250 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:17:06.30 ID:IPVjS/kr0
ステイル「・・・それは」

ローラ「いい?もう一度言うわよ」


ローラ「インデックスの体には異常なんて起きないの」

神裂「・・・」

ローラ「利用したことは謝ろう、でもイギリス清教の利益を考えてみなさい」

ローラ「・・・いい?幻想殺しがブラックマンの中にある憎悪を打ち砕く前に・・・ブラックマンを回収」

ローラ「・・・憎悪さえあれば、ブラックマンは必ずここに来るのよ」

神裂「・・・それに従う理由が見つかりません」

ローラ「インデックスは・・・こちらの手の中にあるのよ」

ステイル「人質か・・・!」

ローラ「人聞きが悪い、切り札にするだけよ」

神裂「ならば助け出して・・・」

ローラ「・・・イギリス清教を敵に回すのかしら」

神裂「・・・」


251 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:18:19.59 ID:IPVjS/kr0
ローラ「そうなれば天草式は迫害を受けるわよ」

ステイル「・・・汚いぞ」

ローラ「私はその汚さ故にこの地位にいるのよ?」

ローラが紅茶を口に含む

大分時間が経ったからか、冷めて渋味が出ている

それに顔をしかめながらもローラは最後に呟いた

ローラ「ブラックマンを回収、いい?これは命令なりてよ」


ローラ「自分達のくだらない誇りとインデックス、どっちを取る?」


ステイルは憎悪を抱えていた

もはや、ブラックマンに対するものとは比べ物にならないほど大きな憎悪を

所詮、ブラックマンも踊らされているだけだったのだ

あの、化け物の掌で


ステイル「・・・君達には・・・」

ステイル「何も分からないさ・・・」



252 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:19:00.47 ID:IPVjS/kr0
上条「・・・」

ステイル「いいか?ブラックマンと君達が戦って何になる?」

アニェーゼ「ですが・・・」

ステイル「・・・やつを回収する振りをするだけだ」

上条「どういうことだよ」

ステイル「騙すのさ、ブラックマンを」

上条「・・・」

ステイル「やつが油断して聖堂に行った隙に・・・」

よくこんな出まかせが出るな、とステイルは感心する

自分も汚い人間なのだろう

あの最大主教と同じで

それが、吐き気がするほどイヤだった

ステイル「・・・仕留める、被害者が少なく済む一番の方法だ」


253 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:20:00.65 ID:IPVjS/kr0
対馬「・・・筋は通ってますが・・・」

ルチア「・・・そんなことで結末をつけていいのですか?」

ステイル「・・・イギリス清教にとって仲間を失うことほど痛手はない」

それは最大主教にとって

ステイル「あの男を処罰するほど、有利なことはない」

それは最大主教にとって

ステイル「・・・頼む、上条当麻・・・引いてくれ」

上条「・・・お前やインデックスは・・・無事でいられるのか?」

ステイル「あぁ」

上条「・・・分かった、ブラックマンからは手を引く」

上条が右手を握る

彼にはもう一つ、やるべきことがあった

上条「美琴を探さなきゃならない」

ステイル「!」


254 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:20:40.16 ID:IPVjS/kr0
上条「だから俺は残る」

ステイル「・・・くれぐれも・・・僕たちの邪魔はするな」

上条「分かってる」

五和「な、なら私も・・・」

上条「俺一人でいいんだ・・・これは俺の問題なんだから」

上条が苦笑する

上条「・・・じゃあな、みんな」

建宮「・・・上条」

上条が走り去る

それを一同はただ見つめていた

ステイル「・・・御坂美琴を、か」

アニェーゼ「どうかしたんですか?」

ステイル「いや・・・」



255 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:21:23.38 ID:IPVjS/kr0


神裂「・・・一つ尋ねていいですか」

ローラから話を聞かされた後、神裂は口を開いた

ローラ「ブラックマンの件については以上」

神裂「なぜあなたは御坂美琴を保護したのですか」

ローラ「・・・」

神裂「・・・聞いた話では森の中に倒れていた、と」

ローラ「・・・」

神裂「答えて下さい」

ローラ「・・・あの女は幻想殺しの枷なのよ」

ステイル「枷だと?」

ローラ「森の中で倒れていた?」

神裂「そう聞きましたが」

ローラ「誰から」


256 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:22:16.28 ID:IPVjS/kr0

神裂「あなたから・・・!」

ローラ「誰にやられたの?ブラックマンに仲間などいないのに」

ステイル「・・・お前か」

ローラ「何、御坂美琴を見掛けたら捕獲しろと命令を出しただけよ」

神裂「なぜ!」

ローラ「あの女を握っていれば、幻想殺しは確実に歯向かえないでしょう?」

ステイル「上条当麻に対しても人質か!」

ローラ「それともう一つ・・・万が一あの男が御坂美琴を取り返しにここを襲ったら」

神裂「科学側に対して争いを吹っ掛ける理由が出来る・・・!」

ローラ「そしてその争いでブラックマン・・・いや、魔術装置の試し撃ちをしてみるのよ」

ステイル「貴様は外道だ・・・!」

ローラ「何、幻想殺しがこの計画終了まで大人しくしていたら返すつもりよ」

神裂「・・・計画が邪魔されなければよし」


257 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:23:11.36 ID:IPVjS/kr0
ステイル「・・・取り返しに来たら学園都市に喧嘩を売れる」

ローラ「どちらかの考えが失敗しても、どちらかはほぼ確実に成功する」

ステイル「イギリス清教は得ばかり、か・・・」

ローラ「このことを幻想殺しに伝える?いいわよ、伝えても」

神裂「そんなこと・・・」

ステイル「出来るわけないだろう・・・あの男は必ずここに来てしまう!」

ローラ「ふふ・・・あわよくば幻想殺しも捕獲出来る」

ステイル「あなたは化け物だ・・・策略家だ!」

ローラ「これは戦争よステイル、頭を使うの」

神裂「・・・これほどの得を・・・たった一つの事件だけで得るつもりですか」

ローラ「まさにメリットのバーゲンセールよ」

ステイル「・・・くそ」

ステイルがタバコを噛み切る


258 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:23:39.75 ID:IPVjS/kr0
ローラ「あぁ、ちゃんとタバコは拾ってよね」

ステイル「約束しろ、御坂美琴に手を出すな」

ローラ「幻想殺しが大人しくしていれば、ね」

ステイル「・・・」

ローラ「もし取り返しに来たら・・・そうね、誰かを迎え撃たせるか」

神裂「・・・」

ローラ「ほら、今幻想殺しとブラックマンが戦闘しているみたいよ」

ステイル「・・・僕たちに止めろというのか」

ローラ「イギリス清教に歯向かう?」

神裂「行きましょうステイル」

ステイル「・・・最大主教」

ローラ「なに」

ステイル「ブラックマンの目的はなんなんだ」


259 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:25:31.03 ID:IPVjS/kr0
ローラ「・・・私が知るとでも?」

ステイル「いや・・・いい」

ステイルと神裂は部屋から立ち去った

あの最大主教は


ステイル(上条当麻・・・)

ステイル(いくら君でも・・・こんなにも大きな幻想は殺せないさ)


神裂「・・・どういう意味ですか」

ブラック「君は最大主教と話したことはあるかね?」

神裂「もちろん」

ブラック「・・・どんな人間だと思う?彼女を」

神裂「・・・」

ブラック「言ってみたまえ」

神裂「・・・正直、信用できない人物です」

ブラック「やはりか」


260 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 17:36:08.16 ID:IPVjS/kr0
神裂「ですが、それでも私は従います」

ブラック「黙って従うか」

神裂「・・・」

ブラック「一人の人間が黙って従えば・・・周りも黙って従うものさ」

ブラックマンが呆れたように呟く

神裂に失望したのだろう

ブラック「・・・力の下に、あってはならない静寂が生まれるものさ」

神裂「あなたが穿つのは・・・その静寂ですか」

ブラック「そうだ」

ブラックマンがロンギヌスを握る

神裂「・・・」

ブラック「・・・君は聖人だろう、これが一番似合う得物だ」

神裂「行きます」


261 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 19:46:23.93 ID:IPVjS/kr0
神裂が刀を振るう

しかし、その斬撃が恐ろしいのではない

一瞬にして、ワイヤーを張り巡らせたのだ

そのワイヤーで敵を切り裂く

それこそが、神裂の狙いだ

ブラック「・・・素晴らしい刀だな」

神裂「・・・ありがとうございます」

ブラック「・・・」

ブラックマンはかなり警戒している

斬撃は槍で防いだ

しかし、それだけで油断するほど甘くはないのだ

ブラック(・・・何か考えがあるのか)


262 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 19:49:23.74 ID:IPVjS/kr0
神裂「どうしましたか?」

ブラック「・・・何」

ブラックマンが槍を振るう

それに、いくつかのワイヤーが絡む

神裂「!」

ブラック「・・・やはりか」

神裂「・・・なぜ気づいたんですか・・・?」

ブラック「・・・勘だよ」

神裂「そんな訳がないでしょう」

ブラック「・・・光の反射が少しあったからな」

神裂「・・・そんなわずかなことで見破りますか」

ブラック「何・・・これくらいなら見破れるのさ」

神裂「・・・」

神裂が走り出す

いや、走るというよりも飛ぶに近かった

何しろ音速の倍以上の速度で動き出すのだから

ブラック「!」

神裂「七閃!!!」



263 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 19:53:25.37 ID:IPVjS/kr0
ブラック「く・・・」

ブラックマンが塔を作り出す

決して崩れることのない塔

だが、それにも怯まず神裂は突っ込んでくる

ブラック「何を・・・」

神裂「知っていますよ・・・その塔の逸話は!!」

神裂が刀を振るった

それは、塔を切り裂くためではない

窓から下がっている、紐を切り裂くためだった

ブラック「・・・貴様・・・!!」

神裂「その塔が崩れなかったのは・・・その紐が下がっていたからです!!」

切り裂かれた紐が宙を舞う

その瞬間、決して崩れるはずのなかった塔が壊れてしまった

ブラック「何を・・・」

神裂「唯閃!!」


264 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 19:57:28.35 ID:IPVjS/kr0
ブラック「がっ・・・」

ブラックマンがとっさに槍を作り出し、防ごうとする

しかし唯閃の威力は尋常ではない

何しろ、聖人としての全力を解放して放たれた一撃だ

ブラックマンの体が遠くへ吹き飛ぶ

近くの建物の壁に、ブラックマンは激突した

壁が崩れ、辺りに煙が立ち込める

神裂「・・・」

槍で防がれたため、ダメージは減っているはずだ

しかし、それでも唯閃の衝撃波相当のものだろう

神裂「・・・どうしました?」

ブラック「・・・聖人というのは・・・恐ろしいものだな・・・」

神裂「・・・動ける時点で、あなたも相当なものですよ」

ブラック「・・・少々ふらつくが・・・な」


265 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 20:04:02.87 ID:IPVjS/kr0
神裂「・・・」

ブラックマンの頭からは血が流れていた

足取りもどこかふらついている

ブラック「・・・信じられないな・・・なんだ今の斬撃は・・・」

神裂「・・・神の子としての力ですよ」

ブラック「・・・そう・・・か」

壁に手をつき、ゆっくりと息を吐く

その姿は、どこか苦しんでいるように見える

神裂(・・・おかしい、そこまで芯を捉えたわけでは・・・)

ブラック「・・・」

神裂「・・・あなたは、なぜ最大主教を恨んでいるのですか」

ブラック「・・・なぜ、か」

ブラックマンが神裂の目を見つめる

ブラック「・・・私は昔のイギリス清教が好きだった、それだけだ」

神裂「・・・それだけのために、イギリス清教を敵に回しましたか」

266 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 20:08:33.10 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・君は、疑問には感じないか」

神裂「何をですか」

ブラック「必要悪の教会・・・というのを知っているかい」

神裂「・・・私も所属しています」

ブラック「そうか・・・」

神裂「・・・辛い仕事ですよ」

ブラック「・・・異端者を葬れば、秩序は守れる・・・か」


ブラック「・・・汝の隣人を愛せよ・・・それが十字教だ」

神裂「・・・異端者まで愛せよ、と?」

ブラック「・・・異端者とはなんだ?イギリス清教を知らないものも異端か?」

神裂「それは違います」

ブラック「・・・そう思っているのは君だけだよ」

神裂「・・・」


267 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 20:13:34.60 ID:IPVjS/kr0
ブラック「・・・私をどうする?異端として罰するか?」

神裂「・・・捕らえさせてもらいます」

神裂がブラックマンの体に護符を貼る

ブラック「・・・優しい鎖だな」

神裂「・・・」

ブラック「どうした」

神裂「・・・あなたが少しうらやましいかもしれません」

ブラック「なぜ」

神裂「・・・守りたかったもののために戦えるのなら・・・信じたもののために戦えるのなら・・・それは素晴らしいことですよ」

ブラック「・・・そう・・・かね」

ブラックマンの意識がそこで途切れる

神裂「・・・すいません・・・上条当麻・・・」


神裂「・・・あなたが救ってくれるはずだった人間を・・・我々は二人も傷付けてしまいます」


268 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 20:30:59.55 ID:IPVjS/kr0

上条「美琴・・・どこなんだよ・・・」

上条は、街中をずっと歩いていた

美琴をいくら探しても、手がかりさえ見つからない

上条「・・・どこなんだよ・・・」

上条「ちくしょう・・・」

ブラックマンから手を引けと言われた

彼は、友人を救えなかったのだ

その上、大切な人も失っている

上条「・・・ちくしょう・・・」

自分は特別な力を持っていると思い込んでいた

自分と行動させれば美琴を守れると

上条(なのにこのザマだ・・・)

美琴の傍にいてやれば

ずっと、そう考えていた


269 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 20:41:38.19 ID:IPVjS/kr0
上条(・・・どうすれば・・・)

上条には分からなかった

美琴はどこにいるのか

上条(・・・)

悩んでいるとき、一つのことを思い出した

テクパトルからの電話

昨日の電話だ

何か、テクパトルは言おうとしていたようだった

上条(・・・そうだ、一人で抱える必要はない)

誰かに頼るのはイヤだった

しかし、今はそういうことを言っている暇がない

上条(・・・頼む)

歯を食いしばりながら、テクパトルへと電話を掛ける


270 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 20:51:42.46 ID:IPVjS/kr0
上条「・・・テクパトルか」

テクパトル『あぁ、どうした』

上条「・・・美琴が見つからないんだ・・・お前なら何か分かるんじゃないかと思って」

テクパトル『やはり見つからなかったか』

上条「・・・やはり?お前はそう思っていたのか?」

テクパトル『あぁ、そう思っていたさ』

上条「なんでだ?お前は・・・」

テクパトル『上条、お前の敵は誰だった』

上条「・・・ブラックマンだ」

テクパトル『そうか、ならばその認識は改めろ』

上条「・・・なんだって?」

テクパトル『お前には新たな敵が出来た、もしも義姉さんを守りたいのだと言うなら』

上条「・・・誰だ?」


テクパトル『イギリス清教だよ』



271 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/22(土) 21:44:04.83 ID:IPVjS/kr0
今日はここまで


ではおやすみなさい

272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 07:12:50.33 ID:0I0AZefw0
>>1乙です。。
273 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:10:07.08 ID:K9PVIu7R0
上条「イギリス清教・・・だって?」

テクパトル『・・・今、近くにイギリス清教の人間は?』

上条「いないさ・・・なんでだよ」

テクパトル『・・・まず、義姉さんは無事に間違いない』

上条「な、なんでそんなことが言えるんだよ?」

テクパトル『・・・少し長くなるがいいか』

上条「・・・あぁ」


ショチトル(・・・上条からか・・・)

テクパトルの病室

先程、上条から電話が掛かってきたのだ

真剣な顔でテクパトルは話し込んでいる

テクパトル「・・・いいか?まずブラックマンはインデックスと接触なんてするつもりはない」

上条『あぁ、それは知ってる』



274 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:10:33.42 ID:K9PVIu7R0
テクパトル「・・・なら、なぜ最大主教はインデックスを回収したか、だが」

上条『あぁ』

テクパトル「最大主教がブラックマンに知識を与えるためだ」

上条『・・・なんだって?』

テクパトル「かい摘まんで話すが・・・ブラックマンの魔術を完成させたいんだ」

上条『待てよ、イギリス清教は・・・』

テクパトル「あの魔術が完成すれば・・・イギリス清教は神に等しい力を手に入れる」

上条『・・・』

テクパトル「・・・だからこそ、最大主教はあいつを逃がした」

上条『自然に、インデックスと接触させるためか』

テクパトル「そうだ」

上条『なるほど・・・な』

テクパトル「いいか?そして、ステイルや神裂なんかはただのプランの中の人間だった」



275 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:11:00.35 ID:K9PVIu7R0
上条『あぁ』

テクパトル「だが、イレギュラーがやって来た」

上条『俺達か』

テクパトル「エツァリや義姉さんなんかは目に入ってないだろう」

もちろん自分も、とテクパトルが続ける

テクパトル「俺達なんかブラックマンに太刀打ち出来ないからな」

上条『・・・』

テクパトル「だが」

上条『俺は違うんだな』

テクパトル「あぁ、そうなんだよ」

上条『・・・俺がブラックマンを倒すのが問題なのか?』

テクパトル「・・・いや、ブラックマンがお前に感化されるのを懸念したんだろ」

上条『・・・そうかもな』

テクパトル「そして・・・枷を用意した」


276 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:11:26.22 ID:K9PVIu7R0
上条『枷?』

テクパトル「・・・義姉さんを人質にしたのさ」

上条『!美琴を!?』

テクパトル「・・・お前を抑えるのには一番いい方法だろう?」

上条『・・・待てよ、その確信は?』

テクパトル「・・・電話は通じないか?」

上条『あぁ、通じない』

テクパトル「・・・そうだな、確信を持つ方法はないが・・・」

上条『・・・』

テクパトル「・・・だがな、たった一つの可能性はそれなんだ」

上条『・・・待ってくれ、美琴だって馬鹿じゃ・・・』

テクパトル「義姉さんが・・・自分が人質だと気づかなければ?」

上条『・・・そうか、イギリス清教には知り合いが多い・・・』


277 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:11:54.58 ID:K9PVIu7R0
テクパトル「怪しまれずに人質に出来るのさ」

上条『くそ!そう考えたらつじつまが合う・・・』

テクパトル「・・・あくまで推測だがな」

テクパトルがトントン、とベッドの端を叩く

テクパトル「いいか?お前にとってイギリス清教は敵なんだ」

上条『いいじゃねぇか』

テクパトル「・・・なんだって?」

上条『誰だろうが関係ないんだよ』

テクパトル「・・・」

上条『・・・俺は美琴を傷つけるヤツを許さない』

テクパトル「本気か」

上条『あぁ』

テクパトル「・・・上条」


278 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:12:23.17 ID:K9PVIu7R0
上条『なんだ』

テクパトル「・・・死ぬなよ」

上条『分かってるさ』

ガチャリ、と通話が切れる

テクパトル「・・・ショチトル」

ショチトル「なんだ」

テクパトル「・・・上条は真実を知ってしまった」

ショチトル「・・・そうか」

テクパトル「・・・義姉さんは恐らくイギリス清教に囚われている」

ショチトル「だが美琴はまだ気づいていない・・・だろうな」

テクパトル「あの義姉さんが好き勝手されて黙っているわけないだろう」

ショチトル「そうだな」

テクパトル「・・・不甲斐ないよ、俺は」


279 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:13:10.09 ID:K9PVIu7R0
ショチトル「私を庇ったんだ、誇ってくれ」

テクパトル「・・・あぁ」

ショチトル「・・・テクパトル」

テクパトル「分かってる」

テクパトルがショチトルを見つめる

テクパトル「・・・頼んでいいか」

ショチトル「あぁ」

二人が窓の外を見つめる

そこには、学園都市と同じような昼の陽射しがある

全く、今の問題など感じさせない平和が

テクパトル(・・・全く、面倒だよ)


テクパトル(上条、頼む)



280 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:13:40.42 ID:K9PVIu7R0
上条「・・・ちくしょう」

上条は携帯を強く握り締めていた

テクパトルの話は完璧に筋が通っていた

ステイルが美琴の名前を聞いたときに変な反応をしたこと

いくら一晩中探しても見つからなかったこと

上条「なるほどな」

彼は憤っていた

ステイルは

そして神裂は

きっとこのことを知っていたのだろう

上条(・・・建宮や五和は知らないみたいだったな)

つまり、そろそろ知ってしまうのだろう

上条「・・・いいぜ」

上条「・・・俺を怒らせたな」

イギリス清教の聖堂

そこを目指せばいいのだろうか

上条「・・・知るかよそんなこと」


上条「・・・待ってろ、美琴」



281 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:14:06.47 ID:K9PVIu7R0


「お兄ちゃん、みんなが私をいじめるんだ」

「仕方ないさ、この辺りじゃ十字教は信仰されていないからな」

「・・・おかしいのかな?」

「さぁな・・・そろそろイギリス清教もここに来るんじゃないか?」

「みんな聖書を勉強するのかな」

「・・・そうかな」

「ねぇ、お兄ちゃん」

「・・・なんだ」

「私ね、神様に一つ聞きたいことがあるんだ」

「何を聞くんだい」

「・・・どうして・・・」


「世界は平和にならないのかな?」



282 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:14:35.03 ID:K9PVIu7R0
ブラック「・・・う」

目を覚ますと、見慣れない天井が目に入った

部屋には光が差し込んでいない

ブラック「・・・部屋?」

ブラック「なんだここは・・・」

どうやら、ブラックマンはベッドに横たわっているようだった

ブラック「・・・たしか」

神裂「気がつきましたか」

ブラック「・・・君がいるということは・・・」

神裂「イギリス清教の施設ですよ」

ブラック「・・・全く、吐き気がするよ」

神裂「あなたの身柄は拘束しました」

ブラック「・・・私をどうするつもりなんだい?」


283 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:15:08.83 ID:K9PVIu7R0
神裂「・・・しばらく拘束しておきます」

ブラック「逃げる可能性は」

神裂「私と最大主教が、それぞれ枷をつけています」

ブラック「・・・」

ブラックマンが指を鳴らす

だが、魔術を発動しようとしても不発に終わる

ブラック「私の術式を封じているのか?」

神裂「それは全ての魔力の精製を妨害するものです」

ブラック「便利なものだな」

神裂「・・・では」

神裂が一礼して部屋から出る

ブラック「・・・」

ブラックマンがもう一度部屋を見渡す

かなり広い部屋だ

284 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:15:35.06 ID:K9PVIu7R0
あまりにも広すぎる

ブラック「・・・ここは」

その時突然、ドアが開かれた

美琴「いたた・・・」

ブラック「おや・・・?」



美琴「ア、アンタ!」

ブラック「・・・?君はたしか」

美琴「アンタ!当麻に何をしたのよ!?」

部屋に、一人の少女が入ってきた

だがそもそも、なぜ彼女がここにいるのか

この少女は行方不明になったはずではなかったか

ブラック「・・・なぜ君が」


285 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:16:01.20 ID:K9PVIu7R0
美琴「アンタなんかに教える必要ないわよ!」

ブラック「・・・いや聞いてくれ、そもそもなぜ君はここにいる」

美琴「保護されたのよ!」

ブラック「保護だと?」

美琴「アンタの仲間に後ろから襲われたところを拾われて・・・」

ブラック「・・・ここは治療室か」

美琴「まだ本調子じゃないから来たら・・・」

ブラック「ん?待て、私の仲間だと?」

美琴「そうよ・・・油断したわ」

ブラック「・・・私に仲間などいないが」

美琴「嘘言わないで!」

美琴が立ち上がる

かなり怒っているようだ


286 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:17:58.43 ID:K9PVIu7R0
美琴「インデックスを傷付けて、ステイルを傷付けて・・・テクパトルだってそうよ!!」

ブラック「・・・」

美琴「その上今度は当麻なのよ!?」

美琴がブラックマンに詰め寄る

ブラック「・・・憤っているのか」

美琴「当然でしょ!!」

ブラック「・・・そうかね」

ふと、ブラックマンが苦笑する

この少女はきっと自分を恨んでいるのだろう

少しの勘違いで、それは拍車が掛かっている

それが少しだけ、悲しかった

美琴「・・・」

ブラック「・・・」


287 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:18:24.59 ID:K9PVIu7R0
美琴「アンタみたいな人間なんかといられないわよ・・・ったく」

駆け足のまま、治療室から出ていく

ブラック「・・・あの少女」

自分に仲間などいない

治療室にいたのなら、ある程度傷を負わせられたのだろう

ブラック(誰に?)

自分に仲間はいないのだ

ブラック(そういえば・・・魔術の流れを感じたな)

あの少年との戦いの最中

何か魔術の流れを感じた

あれはイギリス清教の術式だった

ブラック(・・・なるほど)

ブラックマンは悟った

あの少女が人質なのだと


288 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:19:01.17 ID:K9PVIu7R0
自分を止めようとしている少年

彼を止めるには一番の人質だ

ブラック(・・・ならば・・・最大主教は何を考えている)

自分をそこまでして守りたい理由は

生け捕りにした理由は

あの少年に人質を作ってまで

ブラック(・・・インデックス・・・という少女のことは)

ブラック(・・・知識?あぁ・・・聖書の原典の知識でも持って・・・)

ブラック(・・・私にその知識を植え付けるつもりか)

ブラック(私を・・・魔術装置として扱うか)

ブラック(・・・そのために逃がしたのか)

ベッドの上でため息をつく

ブラック(気に入らないな、最大主教)


289 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:19:37.36 ID:K9PVIu7R0
自分を踊らせようとしているのだ

ブラック(ならば踊ろう)


ブラック(貴様を殺す、死の舞踏を)


建宮「・・・女教皇の話は・・・本当なのか?」

対馬「・・・本当としか言えないわね」

五和「・・・」

天草式の三人は、神裂から真実を聞いた

先ほど、神裂の口から聞かされたのだ

今は、ただ呆然としていた


最大主教の考えていること

御坂美琴を人質にしていること

建宮「くそ・・・イギリス清教はこんなに汚れた組織だったのよな」

五和「・・・上条さん・・・どうするんでしょうか」


290 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:20:05.25 ID:K9PVIu7R0
対馬「・・・知らないわよ」

悔しかった

友人が苦しんでいるのに助けられないなんて

建宮「・・・女教皇は何を考えているのよな」

五和「・・・私達のことを考えて下さってるのでしょうか」

対馬「当たり前じゃない、そうでもなきゃ・・・」

建宮「俺達のため・・・か」

建宮が天井を見上げる

三人は今、イギリス清教の女子寮にいた

普段ならここに集まることはない

だが今だけはここにいたかった

エツァリや19090号は食事中だ

リビングには三人しかいない


291 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:20:40.37 ID:K9PVIu7R0
建宮「・・・なぁ、五和、対馬」

対馬「なんですか」

建宮「・・・俺、女教皇に何も言えなかったのよな」

対馬「私もですよ」

五和「・・・女教皇様も・・・途中までは知らなかったのでしょうね」

建宮「・・・」

神裂も騙されていたのだろう

きっと、何も知らないでインデックスを守ろうとしたのだろう

建宮「・・・天草式をナメてくれたみたいなのよな」

五和「・・・建宮さん、これからどうしますか」

建宮「・・・これは天草式の問題じゃない、俺の問題だが・・・」


建宮「女教皇を俺は許せない」


292 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:21:21.79 ID:K9PVIu7R0
対馬「私もですよ」

五和「奇遇ですね、私も」

建宮「・・・だったらやるしかないのよな」

対馬「女教皇は私達の地位が下がらないように・・・」

建宮「イギリス清教内の地位?そんなこと興味ないのよな」

五和「・・・」

建宮「俺達は最大主教の下につきたかったのか?神様の下につきたかったのか?」

対馬「いいえ」

五和「違いますよね」

建宮「俺達は女教皇の下にいたかったんだ」

五和「行きましょう、二人とも」

建宮「我々の守るべき教えは?」

対馬「救われぬ者に救いの手を」

建宮「・・・行くぞ」


建宮「女教皇を救いに」



293 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:22:06.31 ID:K9PVIu7R0


ステイル「・・・」

神裂「ステイルですか」

ステイル「ブラックマンはどうだった」

神裂「無事です、大丈夫ですよ」

ステイル「・・・そうかい」

神裂「これで・・・最大主教の狙い通りです」

ステイル「はぁ・・・今となってはブラックマンさえ哀れに思えるよ」

神裂「・・・私もです」

ステイル「・・・イギリス清教の利益、か」

神裂「疑問が湧きますか?」

ステイル「・・・インデックスが無事でいられるならそれでいいさ」

神裂「・・・インデックスも利用されていたのですよ」

ステイル「僕は綺麗事なんて言えないさ」


294 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:22:55.26 ID:K9PVIu7R0
神裂「・・・私は少し、憤っています」

ステイル「・・・」

神裂「天草式の仲間に真実を告げました」

ステイル「最大主教に怒られるよ」

神裂「・・・ですが、彼らには話したかったんですよ」

ステイル「仲間だからか」

神裂「・・・ステイル、私は彼らに・・・苦しみを背負わせてしまいました」

神裂が辛そうな表情を浮かべる

ステイル「仕方ないさ」

神裂「・・・今は、誰も傷つかないようなするしか出来ません」

ステイル「上条当麻は・・・真実に気づくかな」

神裂「気づかないと思いたいです」

ステイル「そうだな」

二人が苦笑する


295 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:23:51.65 ID:K9PVIu7R0
だが

上条は知ってしまった

自分達を巻き込んだ物語の全貌を

彼はただ一人、自由に動ける人物だった

世間体も気にせず

相手の事情を気にせず

たった一人、右手を握り締めて決意していた

美琴を救い出すと

悲しい物語を終わらせるため

一人の馬鹿がただ真っすぐに走り出す

そして物語は中盤に入る

奏でられた幾つもの調べが不協和音を奏でる

指揮をするのは最大主教

歌うのは悪魔

そして、奏でるのは



296 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:36:16.81 ID:K9PVIu7R0
ローラ「・・・」

最大主教は、一人部屋の中にいた

目をつぶり、椅子の背もたれに体を預けている

彼女は、昔を思い出していた

今までさまざまなことがあった

彼女が最大主教になってから、本当に長い時間が経ったのだ

いくつもの争いがあった

イギリス清教に歯向かう者達を殲滅したこともある

十字教を広めるために争いになったこともある

ローラ(・・・思えば、ブラックマンはずいぶん梃子摺らせてくれたわね)



297 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:45:16.27 ID:K9PVIu7R0
ブラックマンを捕らえて、尋問を行ったのはローラ本人だった

彼女は最初から、何か情報を得られるとは思っていなかった

ブラックマンは昔から、非常に堅苦しい人間だったのだ

イギリス清教の敬虔な信仰者であった頃も、よく誰かと揉めていたらしい

最も、それは20代前半辺りまでのことだったが

ローラ(・・・何かがあの男を変えたのよ)

それまで敬虔だったあの男が

一瞬にして反旗を翻す化け物になるほどの何かが

ローラ(・・・全く、イギリス清教の糧となっていればよかったものを)

あの男の力を御していれば、世界の他の勢力にも劣ることはない

ローラ(・・・禁書目録との接触は・・・明後日にでもしましょうか)


298 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 17:50:38.53 ID:K9PVIu7R0
トントン、と机の上の資料を叩く

そこに乗っているのは、禁書目録の中に記憶させている魔道書のリストだ

ローラ(聖書の原典・・・)

ローラ(ブラックマンは・・・それを読もうとするかしら)

強制的に読ませることも出来る

だが、それではインデックスの体にもそれなりの魔術処置を施さなければならない

ローラ(・・・めんどくさいわね)

インデックスの体を気遣っているのではない

魔術の処置に掛かる時間

それと、「禁書目録」を失うことを懸念しているのだ

ローラ(・・・目の前の肉に手を伸ばすか・・・)

ローラ(それを腐らせるか)


ローラ(あの獣はどちらを選ぶのかしらね)


299 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:54:00.66 ID:K9PVIu7R0
上条「・・・イギリス清教に美琴が囚われてるか・・・」

憤りは収まらなかった

だが、時間を置いたことで少しだけ冷静になりことが出来たのだ

上条(・・・まず、どこに囚われてるんだ?)

イギリス清教には牢獄があると聞いたことがある

上条「・・・でもそんなところに捕まえておくものか?」

美琴が人質であることに気づいたら面倒なことになるはずだ

それならばもっと、普通のところに滞在させるだろう

それこそ、「保護した」と思えるような全うな場所に

上条(どこだ・・・)

イギリス清教は、さまざまな施設を持っている

聖堂、病院、教会、寮、宿

それら全てを一から探していたら、途方もない時間が過ぎてしまう


300 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:54:49.71 ID:K9PVIu7R0
上条(考えろ・・・)

もしも自分が相手の立場だったら

どこに、美琴を監禁するだろうか

上条(ちくしょう・・・分からねぇ!)

上条はイギリス清教の施設など詳しく知っていない

上条(・・・いや待て・・・寮や宿に匿っていたら・・・周りから情報が漏れるはずだよな)

寮、宿ではさまざまな人が行き来するはずだ

もしもそこで、美琴が最大主教の狙いを聞いてしまったら

そう、誰かがつい口に出してつぶやいてしまうかもしれないのだ

上条(・・・それに、誰でも行き来できるなら誰でも簡単に美琴に接触できる)

上条(・・・助け出されるリスクも高いはずだ)

そんなところに、上条だったら人質を置いたりはしない

それしか施設がないのならばまだしも、イギリス清教にはゴマンと施設があるのだ

わざわざ軟弱な監禁施設に入れるはずはない


301 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:55:30.38 ID:K9PVIu7R0
上条(宿、寮はないと思われるな)

ならば病院だろうか

上条(・・・美琴は保護されたはずだったな)

上条(・・・イギリス清教の魔術師が・・・気絶させたとステイルは言っていた)

上条(なら、病院が一番自然かもな)

傷を負っているなら病院にいるのが当然だろう

しかも、保護にはもってこいだ

美琴も怪しがるはずはないし、周りだって怪しがらない

上条(・・・ただ、やはり他の人間が接触しやすいよな)

面会や他の患者がいるのだ

それらに紛れて誰かが救い出すとしたら

上条(・・・やっぱりリスクは高いか)

上条が溜め息をつく

こんな考え方では、それぞれの施設にデメリットがある

302 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:56:14.61 ID:K9PVIu7R0
教会は監禁するには怪しいし、聖堂だって違和感がある

上条(・・・でも民間の施設に入れるわけがない)

上条(・・・そうだ、違う視点から考えろ・・・)

保護という名の人質

それは、たしかある少女と似ている状況だった

上条(・・・インデックスか!)

インデックスは回収と称して聖堂へ連れて行かれたのだ

外から魔術の干渉を受けにくい施設

特定の、最大主教が許した人間しか入れない施設

そして

上条(何より・・・最大主教自身が最も滞在している施設・・・)

そこなら、最も人質を取るのに向いているはずだ

上条(・・・確証は持てないが)

そんなことを言うなら、そもそも美琴が人質にされていることも確証はない


303 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:56:57.49 ID:K9PVIu7R0
上条(・・・聖堂か・・・)

見当はつけた

ならば、あとは助けに行くだけ


なんて簡単な話ではないのだ

上条(・・・聖堂なら、相当な腕の魔術師が多いはずだ)

上条(・・・俺一人でどうこうできるわけがない)

上条の右手の力は、一対一の戦いでこそ真価を発揮するのだ

相手がいかに強力な魔術師であっても、どんな術式であっても、右手一本で打ち消してしまう

そう、ブラックマンを彼が圧倒したように

だが、複数を相手にするのは勝手が違う

右手の届かない範囲に強力な魔術を撃たれたら

誰かが、影から攻撃してきたら

上条には、全く勝ち目がなくなる


304 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:57:24.16 ID:K9PVIu7R0
上条(・・・くそ、俺一人じゃ美琴を救えないのかよ・・・)

右手を握り締める

美琴を守ると決めた、その右手を

上条(・・・いや、俺は一人じゃない)

エツァリと19090号

彼らなら、味方になってくれるはずなのだ

上条(・・・それでも、厳しい戦いだよな)

三人対イギリス清教

どちらが有利かなど、言うまでもない

それ以前に、戦いにさえならないだろう

上条(それでも・・・俺はやらなきゃならない)

美琴を救い、インデックスを救い、ブラックマンを殴り飛ばす

ステイルや、神裂も殴らなければならない


305 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 19:58:19.38 ID:K9PVIu7R0
そして

上条(最大主教ってヤツもぶっ飛ばす)

こんな悲劇を生んだ張本人を

彼は、殴り飛ばさなければならない

イギリス清教は黙っていないだろう

もちろん、ステイルや神裂も

それでも、たとえ世界を敵に回してしまうとしても

彼は、自分の守りたいものを守り通すつもりだった

上条(・・・上条当麻、もしもお前が・・・美琴を救い出せないなんていう悲しい幻想を抱いてるなら)

右手を空に掲げる

たった一つの右手を

そして、何よりも多くの人を救ってきた右手を


上条(まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す)


 
306 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:04:03.34 ID:K9PVIu7R0

エツァリ「・・・無事でしょうか、御坂さんは」

19090「そう・・・信じています」

イギリス清教の女子寮

何も知らない二人は、昼食を終えたところだった

エツァリ「・・・みなさんはどちらへ向かわれたのでしょうか」

アニェーゼやオルソラたちは、どこかへ向かってしまった

彼らは知らない

イギリス清教の中にある、大きな企みを

そして、アニェーゼたちはその真実を今まさに聞かされていることを

19090「・・・お義兄様も帰ってきません・・・」

エツァリ「・・・無事だったのでしょうか」

二人が顔をしかめる

美琴がいなくなった

テクパトルは傷ついている

その上、上条は帰ってこない


307 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:08:43.69 ID:K9PVIu7R0
エツァリ「・・・もしも・・・」

19090「そんなことないです!!」

エツァリ「・・・そうですね、失礼しました」

19090「・・・なんでこんなことに・・・」

エツァリ「・・・ブラックマン、のせいですよ」

19090「・・・」

エツァリ「自分にも分かりません、一体・・・ブラックマンは何が狙いなのか」

19090「ミサカは分かりたいとも思いません」

エツァリ「・・・テクパトルを傷付けたことは、許されることではありませんからね」

19090「当然ですよ」

エツァリ「・・・ブラックマンがイギリス清教に背いたのは・・・なぜだったのでしょうか」

19090「・・・人が狂うのは、いつも単純な理由からですよ」

エツァリ「そうですね・・・」

それは、かつてのエツァリがそうであったように

人間の気持ちが揺らぐのは非常に簡単な理由のせいなのだ



308 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:27:02.44 ID:K9PVIu7R0
エツァリ「・・・」

エツァリが紅茶を口に含もうとしたその時

ガチャリ、と扉が開かれた


上条「エツァリ!!19090号!!」

19090「お義兄様!!」

エツァリ「ご無事でしたか!!」

上条「あぁ、俺は無事だ」

エツァリ「それで・・・御坂さんは?」

19090「・・・見つかっていないのですか?」

上条「・・・そのことなんだが、テクパトルと話して少し光が見えたんだよ」

エツァリ「!!御坂さんはまだブラックマンに・・・」

上条「違うんだ・・・そもそも、俺達の敵はブラックマンじゃないのかもしれない」


309 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:30:31.67 ID:K9PVIu7R0
エツァリ「・・・どういうことですか?」

19090「・・・」

上条「・・・落ち着いて、客観的に聞いてくれ・・・」

上条が、彼の見つけ出した答えを二人に伝える

出来る限り簡潔に、しかし重要な部分は省かずに


19090「・・・イギリス清教が・・・?」

エツァリ「なるほど・・・その考えでも、話の筋は通りますね」

上条「だろ?」

エツァリ「ですが・・・もしも違うとしたら?」

上条「・・・全てブラックマンの仕業で・・・イギリス清教はただブラックマンを受け入れたかもしれない、な」

エツァリ「・・・どちらにしろ、我々はブラックマンを許すことは出来ません」

19090「テっくんを傷付けたんですから」

上条「それは同感だ」

エツァリ「・・・御坂さんも捜索しなければなりませんね」


310 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:34:13.22 ID:K9PVIu7R0
上条「目的は変わらない・・・」

19090「変わったのは・・・敵ですか」

上条「味方が敵になったんだ・・・相当な痛手だな」

エツァリ「・・・上条さん、どうされるんですか」

上条「・・・聖堂なんて簡単に撃破出来るわけがない」

エツァリ「・・・作戦を練りますか」

上条「そうだ、建宮たちは・・・」

19090「出かけてしまいました・・・」

上条「・・・もしかしたら、あいつらも聞いたのかもしれないな」

エツァリ「・・・だとすれば、彼らも敵になる可能性がありますね」

上条「・・・あぁ」

天草式十字清教

彼らは、イギリス清教の傘下にあるのだ

311 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:42:00.39 ID:K9PVIu7R0
エツァリ「・・・敵は少ないほうがいいのですが」

上条「・・・イギリス清教、天草式、ブラックマン、そして俺達・・・」

19090「・・・さまざまな勢力が絡んでいますね・・・」

エツァリ「・・・まさかこんなことになるとは思っていませんでしたよ」

上条「俺もだ」

19090「・・・どうしますか?信じられるのはこの3人だけです」

上条「・・・美琴は前線に立てる訳がない、テクパトルも・・・」

エツァリ「・・・ショチトルは」

上条「・・・あいつはテクパトルの護衛につけておくべきだ」

エツァリ「・・・そうですね、テクパトルは最大主教の陰謀に気づいてしまったようですから」

19090「・・・下手をすれば、命を狙われますからね」

上条「・・・ここで覚悟を決めよう」


上条「進むか、退くか」


312 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 20:53:09.35 ID:K9PVIu7R0
19090「・・・進みましょう」

エツァリ「一本道なら、どちらにしろいつかは進まなければなりません」

上条「進めば戻れなくなるぞ」

エツァリ「戻れば進む勇気を無くします」

上条「・・・分かった」

上条が拳を握る

エツァリ「・・・御坂さんを救い、ブラックマンに鉄槌を下す」

19090「それがミサカたちの目的です」

上条「・・・あぁ」

エツァリ「・・・ここからも去らなければなりませんね」

上条「敵の本拠地・・・になっちまうのかな」

19090「・・・悲しいことですね」

上条「・・・今までだって、何度もそんなことはあったさ」


313 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 21:01:53.39 ID:K9PVIu7R0
エツァリ「・・・行きますか、地獄へと」

上条「・・・二人とも、ありがとうな」

19090「姉を守るのは当たり前です」

エツァリ「友人を守るのは当然でしょう?」

上条「・・・ありがとよ」

19090「・・・」

三人が女子寮を後にする

上条「・・・美琴、すぐ行くからな」

エツァリ「・・・もう一度、平穏を手にしましょう」

19090「必ず・・・帰りましょうね」

上条「あぁ」


上条「・・・待ってろよ・・・」


314 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 21:09:54.16 ID:K9PVIu7R0

「・・・お兄ちゃん、なんだかみんなが騒いでるよ?」

「・・・イギリス清教の人間がここに布教に来るらしくてな」

「なんで騒ぐの?いいことじゃない」

「・・・世の中には・・・宗教を嫌う者もいるのさ」

「・・・ここにシスターさんたちが来るの?」

「お前は逃げろ・・・もう16だろう?」

「・・・一人はイヤだよ」

「・・・私も一緒に逃げるさ」

「約束だよ?」

「・・・あぁ、約束だ」


「・・・必ず・・・」


315 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 21:13:06.54 ID:K9PVIu7R0

ブラック(・・・またか)

ブラックマンが、目を開く

ブラック(・・・脱獄してから、いつもこの夢を見るな・・・)

溜め息をついてから、彼が体を起こす

ブラック(・・・さて、どうやってここから逃げ出せばいい・・・?)

彼は知っている

最大主教が何を考えているか

ブラック(・・・このままでは私は魔術装置になってしまう)

ブラック(・・・最大主教の手駒にだけはなりたくないな)

彼がぐるりと部屋を見回す

窓はない

外の状況は見えないのだ


316 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 21:18:34.79 ID:K9PVIu7R0
ブラック(・・・どうすればいい?)

魔術は使えなくされている

かといって、彼は他に術を持っているわけではない

協力者もいるはずがない

ブラック(・・・あの少女を味方に出来ればなんとかなりそうだがな)

ブラックマンが思い浮かべるのは、人質として連れてこられた少女だった

ブラック(・・・いや、待て・・・人質・・・か)

ブラック(もしかすれば・・・あの少年がここに来るかもしれないな)

ブラック(・・・来ると信じるしかないな)

それだけ考えて、ブラックマンは再び目を閉じる


ブラック(・・・いかんな)

ブラック(あの少年に頼るなど・・・結局、私は何も変えられないのだな)



317 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 21:19:48.24 ID:K9PVIu7R0
今日はここまで

だんだんグダグダになってきた

いや、最初からそうだったか

ではおやすみなさい


318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 21:29:55.48 ID:KWrnl1qIO
乙ッ!
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 21:31:28.94 ID:NBuWVbZ2o
ていとくゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 21:53:19.00 ID:W3jVKtJIO
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/23(日) 21:58:13.91 ID:0FQyX7fmo
一方さん達は呼ばないのか……
322 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/23(日) 22:12:30.91 ID:K9PVIu7R0
>>321 一方さんたちは学園都市で事件に巻き込まれてるんで

というか、次スレはそっち書く・・・予定

暑くて寝れないね


323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/23(日) 22:16:24.20 ID:0FQyX7fmo
先の展開に関わることだったか、スマン
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/23(日) 22:22:19.99 ID:l4t3vVxg0
乙!

すごいペースで書ける、その才能がうらやましす
325 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:10:14.24 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・インデックス」

イン「あ、かおり!」

神裂はインデックスのいる部屋を訪れていた

その屈託のない笑顔は、心から神裂の来訪を喜んでいる

神裂「・・・どうですか、調子は」

イン「?どこも悪くなんかないんだよ」

神裂「いえ・・・寂しいのではないかと」

イン「・・・ちょっとだけ」

神裂「・・・この問題が解決したら・・・また帰れますよ」

イン「みんなと一緒にいられるの?」

神裂「えぇ・・・約束しますよ」

イン「それなら我慢出来るんだよ!」

インデックスが一層、笑顔を浮かべる


326 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:11:08.81 ID:n2zyR8zc0
その笑顔を、神裂は裏切るのだ

たしかにこの問題が解決すればインデックスは帰れる

だが、その前にイギリス清教は彼女を利用するのだ

神裂(・・・私は)

何のために力を手に入れたのか、と神裂が自嘲する

力があるから守りたいのではない

守りたいから力を振るうのだ

そんなことは分かっていた

なのに、神裂はまたインデックスを裏切るのだ

昔と同じように

神裂(成長しませんね・・・私は)

力は強くなった

イギリス清教の中でも顔が利くようにはなった




327 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:11:38.93 ID:n2zyR8zc0
だが、所詮はそれだけなのだ

神裂(私は変わったつもりでした・・・)

神裂(・・・それは勘違いだったのですね)

イン「ねぇ、かおり?」

神裂「あぁ・・・すみません」

イン「なんだかおかしいんだよ、今日のかおり」

神裂「そうですか・・・」

イン「何かあったの?」

神裂「いえ、心配いりませんよ」

神裂が無理矢理笑顔を浮かべる

まるで自分を嘲笑うかのように

イン「・・・ブラックマンは捕まったの?」

神裂「・・・いえ」



328 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:12:23.66 ID:n2zyR8zc0
最大主教から、インデックスには真実を伝えないように言われている

ブラックマンが拘束されれば、インデックスを保護する口実が無くなるからだ

それでは彼女を保護した意味がない

イン「そっか・・・私ね、ブラックマンを許せないんだよ!」

神裂「なぜですか?」

イン「ステイルもかおりも困ってるから・・・」

神裂「・・・」

無言で、神裂がインデックスの頭に手を乗せる

神裂「いいんですよ、あなたはそういうことを考えなくて」

イン「でも友達なんだよ?」

神裂「・・・ありがとうございます」

イン「?」

神裂「そろそろ仕事がありますから・・・この部屋からは出ないで下さいね」



329 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:12:59.61 ID:n2zyR8zc0
イン「出たら最大主教が怒るんだよ・・・」

神裂「・・・そうでしょうね」

神裂がそっと部屋の扉を開ける

その向こうには裏切りと悲しみが待ち構えている

一瞬、このまま部屋に残ろうかと考えてしまう

インデックスと二人でこの部屋に

そうすれば彼女をこれ以上裏切らなくて済む

これ以上仲間を傷つけなくて済む

神裂(・・・出来ません、そんな甘えたことは)

一歩、部屋の外に踏み出す

ミシリ、と床が鳴った

それが何か不気味に聞こえてしまう

神裂「また来ます」



330 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:13:47.83 ID:n2zyR8zc0
イン「うん!」

ガチャリ、とドアを閉める

その瞬間、大きくため息をついてしまう

また、これだ

インデックスは自分を信じてくれているのに

そんな彼女を簡単に裏切るのだ

自分のことしか考えないで、インデックスのことなど少しも気にしていない

神裂「・・・」

神裂「どうして私は・・・無力なんでしょうか」

神裂「・・・」


神裂「・・・こんな時に・・・あの少年がいてくれたら」

誰にも聞こえないように、神裂が呟く

それは決して、彼の耳に届くことはなかった


331 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:14:42.78 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・さて、勢いよく飛び出したのはいいものの」

対馬「策を練っていませんでしたね」

五和「・・・イギリス清教の聖堂に、御坂さんやインデックスさんはいるんですよね?」

建宮「あぁ」

対馬「なら聖堂を攻める?」

五和「聖堂に直接・・・ですか」

対馬「一番手っ取り早いのはそれよ」

建宮「何言ってるのよな・・・」

対馬「分かってるわよ・・・聖堂に入るのは、自殺しに行くようなものだって」

五和「・・・建宮さん、どうしますか?」

建宮「なんで俺に聞くのよな?」

対馬「あなたが教皇代理じゃない」


332 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:15:21.43 ID:n2zyR8zc0
建宮「元、なのよな」

五和「今はあなたが指揮官です」

建宮「これは天草式としての作戦じゃない、指揮官も部下もないのよな」

対馬「・・・そうですね」

建宮「・・・聖堂を攻めるのは得策ではない」

五和「・・・あそこにはブラックマンがいるんですよね?」

建宮「だとしたら?」

五和「それを利用は・・・」

建宮「出来ないのよな」

建宮が即座に否定する

三人は今、ビルとビルの間の裏通りで話していた

周りには人影一つない


333 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:16:00.80 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・あの最大主教が・・・何も細工をしてないと思うか?」

五和「・・・魔術を封じる策でも打ってると?」

建宮「でなければブラックマンを聖堂に易々と滞在させるわけないのよな」

対馬「・・・イギリス清教・・・最大主教の術式は我々がどうこう出来るものではない、か・・・」

五和「なら・・・どうするんですか」

建宮「・・・俺達は女教皇に頼りすぎていたのかもな」

五和「こんな時に・・・何も手を打てないんですね」

建宮「・・・天草式だけでイギリス清教を敵にするのはきついのよな」

対馬「・・・それでもやらなければならないんですよ」

建宮「・・・分かってる」

五和「・・・上条さんは」

建宮「あいつは・・・気づくかもしれないのよな」


334 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:16:40.02 ID:n2zyR8zc0
五和「・・・そうですよね」

建宮「こういう時に限って、あいつには追い風が吹くからな」

対馬「・・・そうなると、彼は聖堂に突っ込んでいくでしょうね」

建宮「・・・あぁ」

五和「・・・ですが、私達には何も出来ませんよ」

建宮「・・・俺達が止めるべきは誰だった」

対馬「・・・女教皇様です」

建宮「ならば上条やブラックマンのことを考えるな」

五和「ですが・・・」

建宮「・・・五和、お前が選ぶべきことなのよな」

五和「・・・私は二人とも救いたいです」

建宮「難しいことだ、出来るのか?」

五和「無理ではないんですよね」


335 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:17:12.13 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・上条が聖堂に突っ込んでいく確証はないな」

五和「・・・彼はそういう人物です」

建宮「・・・」

対馬「どう?彼ならもしかしたら・・・」

建宮「二人とも、上条が止めるのはブラックマンだ」

対馬「それは・・・」

建宮「そしてあいつが救うのは御坂美琴だ」

五和「・・・」

建宮「お前達は悔しくないのか?いつまでも上条ばかりに救われて」

五和「・・・悔しいですよ」

建宮「俺達が守りたいものも・・・守れないものも、あいつは守ってしまう」

対馬「そうね」

建宮「女教皇も、オルソラ嬢も・・・全部上条が救い出した」


336 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:17:39.09 ID:n2zyR8zc0
対馬「・・・私達が女教皇様を救うべきなのよね」

建宮「・・・そうだ」

五和「いつまでも彼に頼ることは出来ませんね」

建宮「・・・策を練る」

対馬「・・・簡単にはいかないわ」

五和「聖堂を攻めるのは得策ではありませんね」

対馬「かといって、女教皇様がこちらに出向かって下さるかは分かりません」

五和「ならば・・・何か我々が行うしかありません」

対馬「どうしますか?」

建宮「・・・たった一つ・・・たった一つだけ、方法があるのよな」

対馬「・・・何ですか?」

建宮「・・・最大主教と同じことをするのよな」

五和「同じこと?」

建宮「あぁ」


建宮「・・・人質を・・・取るのよな」


337 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:18:24.35 ID:n2zyR8zc0
テクパトル「・・・ショチトル」

ショチトル「なんだ」

テクパトル「客だ」

ショチトル「・・・何?」

ガチャリ、とテクパトルの病室のドアが開かれた

彼はまだベッドから立つことさえ許されていない

仮に許されたとしても、傷が痛んで立てないのだが

ローラ「・・・傷の調子はどうかしら」

テクパトル「やはりお前だったか」

ショチトル「最大主教・・・!」

ショチトルがローラの胸倉を掴む

ローラ「あらあら、何のつもり?」

ショチトル「ふざけるな!貴様、美琴も人質にしたのだろう!?」


338 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:19:01.67 ID:n2zyR8zc0
ローラ「・・・やはり気づいていたのね」

テクパトル「なに、考えてみれば簡単なことだ」

ローラ「全く、貴様は厄介なヤツよ」

テクパトル「・・・義姉さんは無事なのか?」

ローラ「当たり前でしょう、人質を傷つけては意味がないもの」

テクパトル「ならば・・・とりあえずは黙っておこう」

ショチトル「テクパトル!」

テクパトル「ショチトル、怒りを抑えろ」

ショチトル「そんなことが出来るか!」

テクパトル「抑えろ、お前はそこまで馬鹿ではないはずだ」

ショチトル「っ・・・」

テクパトル「すまないな最大主教よ」

ローラ「・・・気にしていないわよ」


339 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:19:45.62 ID:n2zyR8zc0
ローラが襟を正す

気にしていない、とはいうがその目はじっとショチトルを睨んでいた

テクパトル「・・・それで?今日は何か用か」

ローラ「貴様、幻想殺しに余計な情報を伝えてくれたようね」

テクパトル「・・・盗聴でもしていたか?」

ローラ「ここはイギリス清教が経営している病院よ」

テクパトル「・・・そうだったな」

ローラ「全く・・・恐らく幻想殺しが動き出すわよ」

テクパトル「お前にとってはそれでもいいんじゃないか?」

ローラ「・・・」

テクパトル「上条が聖堂を襲撃すれば・・・学園都市に難癖をつけられるからな」

ローラ「・・・貴様、本当に何もかも読んでいるわね」

テクパトル「・・・これは別にお前にとってデメリットばかりではないさ」


340 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:20:26.84 ID:n2zyR8zc0
ローラ「そんな言い訳で逃げるつもり?」

テクパトル「やめておけ、俺はアレイスターと通じている人間だ」

ローラ「・・・今度は脅迫?」

テクパトル「殺せるなら殺してみろ、上条がお前の頭を噛み砕くぞ」

ローラ「・・・」

ローラとテクパトルの視線がぶつかる

最大主教と、卑怯者

二人の本質は非常に似ている

テクパトル「・・・俺は上条に情報を伝えただけだ」

ローラ「・・・それで?」

テクパトル「動くと決めたのは上条だ、俺は煽ってなどいないさ」

ローラ「貴様、とことん汚いヤツね」

テクパトル「お前には言われたくないさ」


341 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:20:58.13 ID:n2zyR8zc0
ローラ「・・・図太いわね、気に入った」

ローラが背中を向ける

テクパトル「・・・一つ言っておく」

ローラ「何かしら」

テクパトル「お前は大きな勘違いをしているぞ」

ローラ「それは何?」

テクパトル「上条は・・・お前までも救うだろうさ」

ローラ「・・・ブラックマンを止めることで?」

テクパトル「お前を止めることでさ」

ローラ「ふふ・・・それは楽しみね」

笑いながら、ローラが去っていく



ショチトル「テクパトル!」

テクパトル「・・・俺だってあいつを恨んでいないわけではないさ」

342 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:21:29.76 ID:n2zyR8zc0
ショチトル「なら・・・」

テクパトル「俺達が下手に手を出せば・・・義姉さんはどうなる」

ショチトル「・・・」

テクパトル「安心しろ、上条が上手くやるさ」

ショチトル「指を咥えて待っていろと?」

テクパトル「・・・」

ショチトル「テクパトル、私はお前に救ってもらったんだ」

テクパトル「そんな大層なことじゃないさ」

ショチトル「・・・ならば今度は私がお前を救わなければならない」

テクパトル「・・・」

ショチトル「お前は何を望む」

テクパトル「・・・ショチトル、お前は昔から無駄な行動が多すぎる」

ショチトル「だが・・・」


343 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:22:12.59 ID:n2zyR8zc0
テクパトル「今お前が行けば、上条の邪魔になるかもしれない」

ショチトル「・・・」

テクパトル「下手にイギリス清教の警戒を高めてみろ、上条は何も出来なくなる」

ショチトル「・・・」

テクパトル「分かるか?お前は何も出来ないのさ」

ショチトル「・・・私は・・・」

テクパトル「・・・だからこそお前に望もう」

ショチトル「・・・」

テクパトルがショチトルを見つめる

その目は、とても真剣だった

テクパトル「上条達の邪魔をするな」


テクパトル「やつらに活路を作ってきてくれ」


344 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:22:59.27 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・どっかの宿に泊まるか?」

エツァリ「所持金はあまりありませんが・・・」

19090「明後日までなら普通に足りますよ」

上条「・・・あまり派手に行動しないようにな」

エツァリ「何を今更」

19090「イギリス清教の女子寮を抜け出した時点で怪しいですよ」

上条「あぁ・・・それもそうだな」

エツァリ「どうしますか?どこの宿がいいでしょう」

上条「・・・そうだな・・・」

上条が頭をかく

どこの宿もあまり信用出来そうにない

彼は決して旅行が上手い人間ではない

345 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:23:48.66 ID:n2zyR8zc0
いい宿とかは分からない

それに、宿の中では作戦を練ることは出来ないだろう

上条「・・・誰かの手助けがあればありがたい・・・」


オリアナ「あら僕・・・」

上条「ん?ってお前!」

エツァリ「あの・・・お知り合いですか?」

オリアナ「あら、こっちの子は中々男前ね」

エツァリ「え、あ、はい?」

19090「あ、あの・・・」

上条「こいつはオリアナ・・・」

オリアナ「よろしく、この坊やには色々激しくされちゃった過去があるの」

エツァリ「上条さん・・・」

19090「・・・」


346 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:24:22.53 ID:n2zyR8zc0
上条「違う!こいつは昔学園都市で・・・ってあれ、お前なんで普通に・・・」

オリアナ「何の話?」

上条「えっと・・・ブラックマンの話って知らないのか?」

オリアナ「あぁ・・・イギリス清教の異端者が逃げ出したんだったわよね、知ってるわよ」

エツァリ「・・・あなたも魔術師ですか」

オリアナ「ふーん・・・坊やもなんだ」

エツァリ「エツァリです・・・」

オリアナ「それで?なんで坊やはここにいるの?」

上条「・・・最初はインデックスを救うためだった」

オリアナ「最初?」

上条「・・・そうだ!オリアナ、お前たしかイギリス清教に忠誠を誓ってるわけじゃなかったよな!?」

オリアナ「あらあら、駆け落ちなんてダメよ」


347 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:24:54.02 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・そういうんじゃねぇよ」

オリアナ「冗談よ、それで?」

上条「ということは・・・最大主教に必ずしも従うわけじゃないよな」

オリアナ「私に利益があるなら味方になるけど」

上条「・・・一つ、頼みがあるんだ」

オリアナ「何?」

上条「・・・俺達を二日間、匿ってくれないか?」

オリアナ「却下」

上条「な、なんで・・・」

オリアナ「まず理由を言ってもらわないと、お姉さん困っちゃうわよ」

上条「・・・俺の恋人をイギリス清教が人質にしている」

オリアナ「どういうこと?あなたはイギリス清教の味方だったんじゃ・・・」

上条「・・・ブラックマンの術式が何か知ってるか?」


348 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:25:26.23 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「まさか、お姉さんはイギリス清教の正式メンバーじゃないのよ」

上条「・・・聖書に記述のある事象を引き起こせるんだ」

オリアナ「・・・それは正確なの?」

上条「あぁ、本人が言ってた」

オリアナ「本人?君は本当に無理をする子ね・・・」

上条「・・・美琴を守るためなら無理なんてへっちゃらなんだよ」

オリアナ「・・・それで?その魔術が何か関係あるのかしら」

上条「・・・最大主教はブラックマンに聖書の原典を読ませて・・・魔術を完成させるつもりなんだ」

オリアナ「あらあら」

上条「・・・世界の創成、人の復活・・・今のブラックマンには出来ないことも可能になる」

オリアナ「それが何か悪いの?」

19090「あ、当たり前です!」

エツァリ「世界の創成など・・・人間が扱ってよい魔術ではありません」


349 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:26:03.88 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「お姉さんはそうは思わないけど?」

上条「・・・」

オリアナ「聖書には様々な奇跡が描かれてるじゃない?それらを引き起こせるなら、世界を平和に出来るわよ」

エツァリ「そうですが・・・」

上条「俺の友人は、ブラックマンとの交戦で負傷した」

オリアナ「・・・」

上条「美琴は・・・俺の恋人は、何も知らないまま・・・イギリス清教の人質になっている」

19090「・・・イギリス清教が力を持ちすぎれば世界のバランスが崩れます」

エツァリ「・・・お願いします、あなたの滞在場所に我々をいさせては頂けないでしょうか」

上条「頼む!そこらの宿じゃ・・・誰に聞かれるか分からないんだ・・・」

オリアナ「全く・・・そんな勝手にあれがしたいこれがしたいなんて言われても」

上条「オリアナ・・・」

オリアナ「お姉さんには一つも得がないじゃない?」


350 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:26:36.70 ID:n2zyR8zc0
19090「・・・」

オリアナ「私を善人だと思うのは勝手だけど・・・善人の考えを押し付けたりしないで」

上条「・・・何が・・・あればいい?」

オリアナ「・・・」

上条「なんだってしてやる!それで美琴を救うことに一歩近づくなら!」

オリアナ「・・・坊や、甘いわよ」

上条「・・・」

オリアナ「この世の中は愛だけじゃ生きていけないの」

上条「・・・分かってるさ」

オリアナ「愛しかない世界なんて、つまらないとあなたが言ったでしょ?」

上条「愛のない世界だってつまらないんだ」

オリアナ「そこまでして、その子を助けたいの?」

上条「あぁ」


351 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:27:19.05 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「・・・お姉さんは・・・前線に立つ気はないわ」

エツァリ「・・・結構です」

オリアナ「イギリス清教にバレたら、追われる身になるかもしれないわ」

上条「・・・あぁ」

オリアナ「プラスがないなら手助けは出来ない、坊やには悪いけど」

19090「・・・あなたは交渉がお上手ですね」

オリアナ「あら、口で上手に出来ない女なんてダメじゃない」

19090「・・・お義兄様」

上条「・・・なんだ?」

19090「テっくんに電話をしてみます」

エツァリ「・・・交渉には交渉、ですか」

オリアナ「あら何?」

上条「俺達の中で頭がキレるヤツと交渉してはくれないか」


352 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:28:13.78 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「いいわよ、お姉さんもヒマだったし」

19090号が携帯を取り出す

すぐさまテクパトルに電話を掛ける

テクパトル『どうした美月?』

19090「あ、テっくん・・・」

テクパトル『何か・・・』

オリアナ「貸してちょうだい」

19090「あ・・・」

オリアナが無理矢理、携帯電話を奪う

オリアナ「もしもし?聞こえるかしら」

テクパトル『・・・誰だ』

オリアナ「オリアナよ、今はどうでもいいことだけど」

テクパトル『・・・』


353 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:28:53.91 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「あなたのお友達が私に匿ってほしいっていうのよ」

テクパトル『匿う?』

オリアナ「イギリス清教の大物とドンパチやりたいみたいで」

テクパトル『・・・それまでの間、匿ってくれと』

オリアナ「でもお姉さんはね・・・自分にメリットがないならやりたくないの」

テクパトル『至極真っ当な意見だな』

オリアナ「あら、話が分かるじゃない」

テクパトル『ならばメリットを作ればいいのだな』

オリアナ「そうそう・・・でもあんまり早すぎたらお姉さんは楽しめないわよ」

テクパトル『話は早いほうがいいだろう』

オリアナ「もう」

テクパトル『・・・お前は上条の知り合いか?』

オリアナ「えぇ、昔彼に計画を阻まれたのよ」


354 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:29:28.49 ID:n2zyR8zc0
テクパトル『イギリス滞在で計画・・・魔術師か』

オリアナ「そうよ」

テクパトル『ならば魔術の知識は欲しくないか』

オリアナ「いらないわ、ある程度完成しているから」

テクパトル『金は』

オリアナ「年下の男の子からお金を巻き上げたりはしないわよ」

テクパトル『・・・ならば』

テクパトルが一旦言葉を切る

意図的に間を持たせているのだ


テクパトル『学園都市とのパイプは』

オリアナ「・・・」

テクパトル『アンタがどんな魔術師かは知らないが・・・上条の要求を跳ね退けないということはイギリス清教ではないだろ』


355 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:30:06.98 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「フリーの魔術師よ」

テクパトル『ならばなおさらだ、学園都市とのパイプをオススメするぞ』

オリアナ「・・・それがお姉さんのメリットになるかしら」

テクパトル『バックボーンがでかいならありがたいんじゃないか?』

オリアナ「・・・」

テクパトル『しかも学園都市には忠誠を誓う必要はない』

オリアナ「たしかにそうね」

テクパトル『・・・もしもお前が何か魔術組織に追われたとして』

オリアナ「学園都市が匿ってくれたら・・・ってことかしら」

テクパトル『その通りだ』

オリアナ「・・・私としてはあまり学園都市とは関わりたくないのよ」

テクパトル『ならば他にもあるぞ?そうだな、アステカ・・・』

オリアナ「今のでいいわよ」


356 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:30:34.77 ID:n2zyR8zc0
テクパトル『・・・学園都市とのパイプか』

オリアナ「でもあなたにそんなことが出来るの?」

テクパトル『保証しよう』

オリアナ「なら・・・交渉成立よ」

テクパトル『それは助かる』

オリアナ「それにしてもあなた・・・他の坊や達より声が低いわね」

テクパトル『・・・一人だけ20代だからな』

オリアナ「あら素敵・・・出来たらそっちを欲しかったのだけど」

テクパトル『断っておく、ではみんなを頼む』

通話がそこで終わる

オリアナ「さすが、あなたたちの自慢な頭脳だけはあるわね」

上条「交渉成立か」

オリアナ「悪くはないもの」

19090「よかったです・・・」


357 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:31:08.81 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「それにしても、今の電話の子は中々頭がいいわね」

エツァリ「彼は昔から・・・頭が働きましたから」

オリアナ「ふふ・・・お姉さんも悪くはない報酬が貰えるし、いいわよ」

オリアナがニコリと微笑む

上条「・・・くれぐれも内密に頼む」

オリアナ「もちろん、報酬のためなんだから」

19090「それで・・・あなたの家はどこですか?」

オリアナ「家というより、今は隠れ家なんだけどね」

オリアナの後に三人が続いて歩く

エツァリ「周りに住人は?」

オリアナ「いないわ、おかげでお姉さんったら欲求が溜まっちゃうの」

上条「そうかよ・・・」

オリアナ「冷たいわよ坊や」


358 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:32:11.50 ID:n2zyR8zc0
上条「今は真面目にしてたいんだ・・・あんまりおちゃらけできる状況じゃないし」

オリアナ「真剣な男の子は好きよ」

上条「・・・ま、二日間だけど頼むよ」

オリアナ「よろしく、坊や達」

19090「よろしくお願いします」

上条「さて・・・」

エツァリ「・・・どうにか、宿は見つかりましたね」

19090「あとは作戦を立てるだけですね・・・」

上条「あぁ・・・そうだな」

オリアナ「・・・イギリス清教を敵に回すなんて勇気があるわね」

上条「・・・当たり前だろ」


上条「美琴が待ってるんだからさ」



359 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:39:36.65 ID:n2zyR8zc0

ステイル「・・・」

神裂「・・・また会いましたね」

ステイル「・・・あぁ、君はインデックスに?」

神裂「えぇ、元気そうで何よりでした」

ステイル「・・・そうかい」

神裂「・・・我々を信用しているようでした」

ステイル「・・・そうか」

神裂「・・・あの子を・・・また私達は裏切るんですね」

ステイル「・・・そうだね」

聖堂の中は静まり返っていた

今は、必要ない人間は全員立ち入り禁止になっている

最大主教の目論見が外に漏れないようにするためだ

ステイル「・・・いつから・・・僕達はこんなに情けなくなったのかな」

神裂「・・・分かりません」


360 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:52:16.19 ID:n2zyR8zc0
ステイル「昔はあの子を守ることだけを考えていた」

神裂「私たちが今歯向かえば・・・あの子の命は保障されません」

ステイル「分かっているさ」

神裂「・・・今も・・・私達はあの子を守っているんです」

ステイル「・・・分かってるよ」

神裂「綺麗事を並べるのだとしたら・・・今すぐ、あの子を助け出すべきなのでしょうね」

ステイル「綺麗事だけがまかり通るほど・・・綺麗な世の中じゃないんだ」

ステイルが顔をしかめながら呟く

まるで、自分に言い聞かせるように

神裂「・・・そうですね」

ステイル「・・・聞いたかい?上条当麻は今回の件、気づいたようだ」

神裂「!!」


361 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 10:55:22.16 ID:n2zyR8zc0
ステイル「・・・最大主教が言っていたよ」

神裂「・・・彼が・・・気づいてしまったのですか」

ステイル「あぁ、少し面倒なことになる」

タバコを端を噛みながらステイルが続ける

ステイル「あの馬鹿はおそらく何も考えずに突っ込んでくるさ」

神裂「・・・御坂美琴がここにいるとは知らないのでしょう?」

ステイル「・・・見当をつけるのはわりと楽じゃないかな」

神裂「インデックスと同じ場所・・・と彼が考えるでしょうか」

ステイル「むしろ、それ以外には可能性なんてないよ」

神裂「・・・聖堂ですよ?こんなところに・・・」

ステイル「防護用の結界なんて彼の前では無意味だよ」

神裂「そうですが・・・」

ステイル「何より、彼は御坂美琴を救ったら次にインデックスも助け出そうとするはずさ」

神裂「・・・最大主教が黙っているでしょうか」

ステイル「・・・なぜ、僕がこんな話をわざわざ聞かされたと思う?」

神裂「・・・あなた、まさか」


362 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 11:00:33.28 ID:n2zyR8zc0
ステイル「幻想殺しが万が一この聖堂に踏み込んだ場合・・・迎え撃て、とさ」

神裂「・・・酷なことですね」

ステイル「あの男を潰せるのなら問題ではないさ」

神裂「では・・・なぜあなたはそんな話を私に?」

ステイル「決まっているじゃないか」

神裂「私も・・・迎え撃つ人員に数えられているのですね」

ステイル「そうだ、君は強いからね」

神裂「・・・最大主教はとことん私達を苦しませたいようですね」

ステイル「試しているのさ・・・僕達が、インデックスを取るかそれ以外を取るか」

神裂「・・・私達の枷として、どちらがより有効か、ですね」

ステイル「吐き気がするよ・・・全く」

神裂「・・・今のところ、彼は来ていないのですよね?」

ステイル「来ていたらこんなところに僕はいないさ」

神裂「・・・そうですね」


363 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 11:11:47.19 ID:n2zyR8zc0
ステイル「・・・神裂、もしも上条当麻がここに来たら・・・」

神裂「分かっています」

ステイル「・・・迎え撃つ」

神裂「・・・インデックスを危険に晒すことは出来ません」

ステイル「危険に晒す・・・か、最大主教の思い通りにさせるのも危険ではあるがね」

神裂「・・・私達はイギリス清教所属です、イギリス清教に従うしかありませんよ」

ステイル「・・・そうだね」

ステイルがタバコをその場に捨てる

神裂「ステイル、ここは聖堂ですよ」

ステイル「・・・分かっているさ」

地面に落ちたタバコを拾い、炎で燃やし尽くす

ステイル「・・・神裂」

神裂「なんでしょうか」

ステイル「・・・僕達は、正しい道を進んでいるかな」


364 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 11:18:08.17 ID:n2zyR8zc0
神裂「それを決めるのは我々ですよ」

ステイル「・・・上条当麻に殴られた・・・あのときの僕達が」

神裂「・・・」

ステイル「今の僕達を見ていたら、正しいと言ってくれるだろうか」

神裂「・・・ステイル、我々は我々の仕事をするだけですよ」

ステイル「・・・そうだね、すまない」

神裂「ステイル、たった一つ言えることがあります」

ステイル「なんだい」

神裂「この世の中で信じられるのは自分だけですよ・・・」

ステイル「・・・あぁ」

神裂「私はこれから、上条当麻が使いそうなルートを割り出す予定です」

ステイル「・・・協力するよ」

神裂「・・・ありがとうございます」

ステイル「・・・何かをしていないと、余計なことを考えてしまうからね」


365 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 11:20:44.63 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・ステイル」

ステイル「なんだい」

神裂「もしも・・・もしも、ですよ・・・」

ステイル「・・・」

神裂「・・・上条当麻が・・・インデックスを救出したとしたら」

ステイル「そんなことは不可能さ」

神裂「・・・」

ステイル「・・・綺麗事だけを貫き通せるほど、甘い世の中じゃないと言っただろう?」

神裂「そうですね」

二人は歩く

心の中に、何かつっかえるものを感じながら

それでも、それを叶えることは出来ない

叶えられるのは

あの、正義に最も近い少年だけだった


366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/24(月) 12:37:29.35 ID:W0lg8e6AO
オリアナ姉さん、あれで18〜19歳ぐらいらしいんだよな……末恐ろしい
367 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 12:51:14.78 ID:n2zyR8zc0

オリアナ「ふーん・・・イギリス清教も中々派手にやるわね」

上条「・・・オリアナ、そういうことだから・・・」

オリアナ「全く、君の周りには面倒ごとが多いわね」

エツァリ「・・・上条さんの周りに面倒ごとが集まる、というより・・・」

19090「・・・面倒ごとは全てお義兄様のために起こされている、という感じですね」

オリアナ「・・・はぁ、それにしても・・・人質がいてなおかつ君の味方はこの二人だけ・・・」

上条「・・・そうなんだよ」

オリアナ「・・・君達、それで本当に勝てるつもりだったの?」

上条「・・・なぁ、歩きながらこんな大事な話・・・」

四人は、まだ街中を歩いていた

オリアナ「いいのよ、誰も聞いてないわ」


368 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 13:05:42.74 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・そうか?」

オリアナ「・・・大体、こんな話までならイギリス清教ではぼちぼち広がってるじゃない」

エツァリ「そうですね・・・」

19090「では、これからの話は・・・」

オリアナ「私の隠れ家に着いてから・・・ね」

上条「ここから近いのか?」

オリアナ「えぇ、そんなには遠くないわよ」

上条「・・・出来ればイギリス清教の情報も欲しいな」

オリアナ「聖堂の設計図ならお姉さんが持ってるわよ」

上条「・・・なんでお前はそんなものを・・・」

オリアナ「お姉さんは情報屋なの、必要なものは何でも持ってるのよ?」

上条「・・・それは・・・提供してもらえるのですか?」

オリアナ「えぇ、今回の報酬は中々いいから」

オリアナがニコニコと笑う

上条(・・・魔術師ってのはなんでみんなこうもイヤな笑みを浮べるんだ・・・)


369 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 14:49:56.58 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「・・・ねぇ・・・僕」

上条「・・・俺は上条なんだけど」

オリアナ「あら、年下はみんな僕って呼ぶようにしてるのよ」

上条「・・・あぁそう」

オリアナ「・・・君はどうしてそんなに勇気があるの?」

上条「勇気?」

オリアナ「私だったら、たとえ恋人が人質にされてもイギリス清教には喧嘩なんて売れないわよ」

上条「・・・たしかに、美琴の命を救うだけならそれでいいかもな」

オリアナ「・・・」

上条「でも、俺は他のヤツらも救いたい」

エツァリ「神裂さんやステイルさん・・・インデックスさんですか」

上条「あぁ」

オリアナ「そんなこと出来るの?」

上条「やってみせるさ」


370 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 14:53:37.20 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「誰も、イギリス清教に単独で打ち勝ったなんて人はいないのよ」

上条「へぇ」

オリアナ「・・・怖くないの?」

上条「・・・怖いさ」

上条がオリアナを見つめる

その真っ直ぐな瞳は、なぜかオリアナの心に響いた

かつてオリアナの計画を止めたときと同じ

いや、その時以上に真っ直ぐな瞳だ

上条「・・・怖いさ、もしかしたら美琴だって危険になるかもしれない」

オリアナ「・・・」

上条「でもな・・・今までだって、何度も乗り越えてきた」

オリアナ「今回失敗するかもって思わないの?」

上条「・・・思うさ」

オリアナ「じゃあなんで?」

上条「・・・誰も、イギリス清教に単独で勝ったやつはいないんだよな?」


371 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 14:56:09.15 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「いないわよ、そんな人は」

上条「だったら俺が一人目になってやる」

オリアナ「!」

上条「周りの誰もが成し遂げられなかったからなんだよ?」


上条「俺はやるんだ、過去に成功した人がいようがいまいが・・・俺は、やるんだ」

オリアナ「・・・無理よ、そんなの」

上条「あぁ、無理だ」

オリアナ「・・・君は・・・バカね」

上条「・・・バカでいいんだ、バカが真っ直ぐ走って道を作ればいいんだよ」

19090「それでこそお義兄様です」

エツァリ「だからこそ、我々も着いていくんですよ」

オリアナ「・・・」

上条「お、ここか?」

上条が大きな建物の前で立ち止まる


372 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:00:00.89 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「えぇそうよ」

エツァリ「あ、あの・・・隣人はいないと言ってませんでしたか?」

19090「結構周りに住宅がありますよ?」

二人が辺りを見る

街中、というほどではないが決して人通りがないわけではない

正直隠れ家というには程遠い場所だ

オリアナ「まぁまぁ、いいから入りなさい」

オリアナが玄関の鍵を開ける


上条「・・・隠れ家のわりに、普通の家なんだな」

19090「もっと資料が並んでるのを想像してました・・・」

エツァリ「なんというか・・・拍子抜けですね」

オリアナ「あぁ、ここには引っ越してきたばかりだからあんまりまだ資料がないのよ」

上条「へぇ・・・」



373 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:06:22.43 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「さぁさぁ、こっちこっち」

オリアナが三人を部屋の奥へと手招きする

しかし、窓からは隣の家が丸見えだ

それどころか、外の音や隣家の声も丸聞こえである

上条「なぁ・・・本当に・・・」

オリアナ「ここじゃ話は聞かれるわよ」

上条「はぁ!?」

19090「じゃ、じゃあここから移動するんですか?」

オリアナ「ちょーっと違うわよ」

エツァリ「・・・?床になにやら取っ手がありますね」

オリアナ「あ、気づいちゃった?坊やに三点あげるわよ」

エツァリ「あ、はぁ・・・」

オリアナ「・・・周りに聞かれなければいいのよね?」


374 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:08:23.59 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・も、もしかして」

オリアナ「その通り!」

床の取っ手を握り、オリアナが上へと引き上げる

すると地下へ続く階段がその下に現れる

オリアナ「やっぱり、秘密の隠れ家は地下室じゃない?」

上条「す、すげぇ・・・」

オリアナ「おめでとう、ここを見せるのはあなたたちが初めてよ」

19090「い、いいんですか?」

オリアナ「みんなには内緒よ?」

上条「・・・ここで作戦を練る、か・・・」

オリアナ「えぇ」

オリアナが自信満々に笑う


オリアナ「地下には隣人なんていないじゃない?」


375 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:13:49.12 ID:n2zyR8zc0

建宮「・・・いいか?」

対馬「・・・はい」

五和「あまり人質なんて・・・気が進みませんが」

建宮「当たり前なのよな・・・」

三人は、イギリス清教の女子寮を影から見つめていた

とはいっても、人質の命をどうこうするわけではない

もしも「天草式」が「イギリス清教」の人間を人質にしたら

建宮(・・・そのどちらにも面識のある・・・女教皇が出てくる)

五和(・・・確信は持てませんが・・・)

対馬(・・・最悪、女教皇様を出せ、と脅迫できる・・・)

建宮(・・・汚い手段だが、これしかない)

五和「!!誰かが帰って着たようです・・・」

建宮「・・・あれは・・・オルソラ嬢なのよな」


376 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:17:30.67 ID:n2zyR8zc0
オルソラ(・・・最大主教・・・)

オルソラ(まさか、あんなことを考えていたとは思わなかったのでございますよ)

オルソラは、一人寂しそうな顔をしていた

彼女はまだイギリス清教の中では新参者だ

イギリス清教のしきたりにも慣れてはいない

そのやり方がイギリス清教だ、と言われたら納得するしかないのだろう

オルソラ(ですが・・・簡単に納得できるものではないのでございますよ)

もしもブラックマンの魔術を完成させたら

最大主教は、何をするつもりなのだろうか

オルソラ(・・・イギリス清教で、世界を・・・)

オルソラ(いえ、今の世界を支配する必要などないのでございます)

なぜなら

新しい世界を作ることさえ可能なのだから


377 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:20:40.95 ID:n2zyR8zc0
オルソラ(・・・イギリス清教の・・・いえ、最大主教の思うが侭の世界)

オルソラ(・・・私は、そんなことを認めなければならないのでございましょうか・・・)

彼女一人でどうにかできるわけがない

現に、他のイギリス清教のメンバーは反抗の意志を示していない

自分達の立場を守るためか

それとも、反抗したくても力が足りないからか

どちらにしろ、それを責めることは出来なかった

オルソラ(私も・・・何も出来ないのですから)

間違っているのは分かっていた

一般的な正しい道が何なのかも分かっていた

ブラックマンの魔術を完成させてはいけない

関係のない人間を巻き込むイギリス清教のやり方に反抗しなければならない

そんなことは、頭では分かっていた


378 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:26:45.87 ID:n2zyR8zc0
オルソラ(ですが・・・私は・・・)

何かをしなければならない

誰もが抱いているはずの感情

そして、誰もが押し殺しているはずの・・・


建宮「オルソラ嬢!」

オルソラ「・・・?建宮さんで・・・」

建宮「申し訳ないのよな!!」

オルソラ「はい?」

どこからか、建宮が飛び出してきた

そして、オルソラの首元に何かを突きつける

オルソラ(・・・!!これは・・・)

建宮「・・・申し訳ないのよな」

オルソラ「・・・これは、ただの金属片なのでございますね」

建宮「・・・」

オルソラ「・・・先も鋭利ではない・・・武器としては全く扱えないので扱えないのでございますよ?」


379 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:32:45.20 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・頼む、今は何も言わないでほしいのよな」

オルソラ「・・・何を考えているのでございますか?」

建宮「・・・それは」

オルソラ「・・・最大主教の考えに背かれるのでございますね?」

建宮「・・・分かっていたとは・・・」

オルソラ「・・・私を人質にして、どうされるのでございますか?」

建宮「・・・我々がイギリス清教に背けば・・・女教皇が必ず出てくる」

オルソラ「?あなた方は、神裂さんを・・・」

建宮「止めなければならないのよな」

オルソラ「・・・私を人質にすれば・・・イギリス清教を止められるのでございますか?」

建宮「・・・もしかしたら、ダメかもしれないのよな」

建宮が少し声のトーンを落とす

彼には彼の葛藤があるのだろう



380 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:35:29.70 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・それでも、女教皇を救えるかもしれない」

オルソラ「・・・一つ、お願いをしてもいいのでございますか?」

建宮「あぁ」

オルソラ「・・・出来れば、イギリス清教を止めていただきたいのでございますよ」

建宮「・・・」

オルソラ「・・・私も、今のイギリス清教を止めなければならないと考えているのでございます」

建宮「・・・協力してくれるのよな?」

オルソラ「それが・・・世界を救うことに繋がるのならば」

建宮「・・・すまないのよな」

建宮が苦笑する

オルソラは、体裁上ではただの人質だ

イギリス清教に背いたことにはならない

それが、なぜか建宮を安堵させる


381 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:37:42.75 ID:n2zyR8zc0
オルソラ「私は何をすればよろしいのでございますか?」

建宮「着いてきてほしいのよな」

建宮が、金属片を押し当てたままオルソラを連れて行く


五和「!建宮さん・・・」

建宮「喜べ、オルソラ嬢も協力してくれるみたいなのよな」

対馬「・・・それはよかったわ」

建宮「だが、あくまでオルソラ嬢は人質なのよな」

オルソラ「分かっているのでございますよ」

対馬「・・・五和、オルソラさんを縛ってください」

五和「・・・はい」

五和が護符を取り出す

五和「出来る限り、軽めに縛りますので」

オルソラ「いえ、しっかりと・・・本当の人質に見えるようにでいいのでございますよ」

五和「・・・分かりました」


382 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:41:55.87 ID:n2zyR8zc0
対馬「・・・さて、では・・・」

建宮「オルソラ嬢、演技を頼むのよな」

オルソラ「・・・はい」

建宮「行くぞ!!」

建宮がオルソラを引っ張る

向かうのは、イギリス清教の女子寮だ

建宮「・・・今、女子寮の中には?」

オルソラ「みなさんが揃っているのでございますよ」

建宮「・・・それは好都合なのよな!!!」


アニェーゼ「・・・シスターオルソラは遅いですね・・・」

アンジェレネ「・・・少し外へ行きたいといったきりですね・・・」

ルチア「仕方ないでしょう・・・」

シェリー「・・・イギリス清教はとことん汚い真似をしたな」

アニェーゼ「・・・ふん、勝手に内部から崩壊してくれるのならありがたいですが」

アンジェレネ「そ、そんなことを言ったらダメですよ・・・」

アニェーゼ「本心ですよ」


383 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:48:07.46 ID:n2zyR8zc0
ルチア「・・・そういえば、上条さんやエツァリさんたちがいないですね」

シェリー「御坂美琴でも探してるんじゃないか?」

アニェーゼ「・・・見つかるはずはないって言うのに」

アンジェレネ「・・・そうですね」

ルチア「・・・」


建宮「頼もう!!!」

ルチア「!?た、建宮さんですか・・・!?」

アニェーゼ「・・・なぜシスターオルソラが縛られているんですか!?」

建宮「よく聞けイギリス清教!!!俺達は最大主教の考えに反抗する!!」

アニェーゼ「な、何を・・・」

建宮「いいか!?オルソラ嬢は人質だ!!!もしも最大主教が今の考えを取りやめないならオルソラ嬢の命はないと思え!」

ルチア「む、無駄なことを・・・」



384 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 15:52:33.57 ID:n2zyR8zc0
建宮「知ったことか!!!」

シェリー「・・・正気か?」

アニェーゼ「あなたが背けば・・・天草式の地位が下がっちまいますよ!?」

オルソラ「そ、そうでございます・・・」

建宮「うるせぇ!!俺達は決めたのよな!!!」

建宮が語気を強める

アニェーゼ「な、何を・・・」

建宮「最大主教に伝えろ!!!俺達は反抗すると、必ずてめぇを止めてみせると!!!」

ルチア「くっ・・・あなたは・・・」

建宮「権力に従うお前達とは違う!!俺達は正義を貫くのよな!!」

アニェーゼ「そんな正義を通して、何が残るのですか!?」

建宮「黙れ!!!!」

シェリー「・・・いいぜ、お前達天草式はイギリス清教を敵に回すんだな」

建宮「あぁ、そうなのよな」


385 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 16:14:21.13 ID:n2zyR8zc0
シェリー「なら覚悟をしておけ、お前達は生きて戻れる保証はない」

建宮「・・・お前らの保証なんていらない、自分の命は自分で保証する」

シェリー「・・・オルソラ、すぐに取り返してやるからな」

オルソラ「は、はいなので・・・」

建宮「しゃべるな!!」

アニェーゼ「・・・人質に手を出したらぶっ殺しますよ」

建宮「出来るものならやってみるのよな!」

建宮が護符を取り出す

アンジェレネ「!伏せてください!」

ルチア「何を・・・」

バン!!と音がして、護符が弾ける

アニェーゼ「目くらましですか・・・!!!」

建宮「止めたければ止めてみろ!!俺達は・・・」


建宮「あの最大主教を止めてやる!!」


386 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 16:54:34.93 ID:n2zyR8zc0

美琴(・・・なんで・・・イギリス清教がブラックマンを保護してるのよ・・・)

ブラックマンが、イギリス清教の聖堂にいた

捕らえられているのならまだ納得がいく

だが、あれは傷の手当をしているように見えた

それも、裁くための治療ではない

美琴(・・・あんなに・・・罪人を丁寧に治療するものかしら)

彼女が知る限り、あそこまで丁寧に治療などしないはずだ

それどころか、イギリス清教なら傷ついた罪人をわざわざ手当てなどしないだろう

美琴(・・・なら、何か理由があったのかしら)

イギリス清教がわざわざブラックマンを治療した理由

それも、見張りもなく

387 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 17:07:15.55 ID:n2zyR8zc0
美琴(・・・何か・・・)

美琴が必死に頭を働かせる

しかし、彼女は何も手がかりを持っていないのだ

世間に広まっている手がかりさえ

美琴(・・・ダメだ、わかんない・・・)

考えても仕方ないことだ

美琴(・・・そうよ、何も理由なんてないんじゃないかしら)

大量虐殺犯

ならば、自然死など許さない

出来る限り残虐に殺す

それが目的だとすれば

美琴(うーん・・・とりあえず、このことは考えないようにしましょう・・・)


388 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 17:39:24.20 ID:n2zyR8zc0
美琴が思考を切り替える

考えるのは、上条のこと

美琴(・・・ブラックマンは殺した・・・とは言ってなかった)

美琴(それに、当麻が負けるわけがない・・・)

美琴(だとしたらどうしてイギリス清教は当麻のことを保護しないのかしら)

美琴(・・・聖堂の結界が壊れるから?)

美琴(・・・だとしても、聖堂に入れる必要が・・・)

美琴(そもそも、ブラックマンが捕まって当麻も無事なら・・・私を保護する意味がない)

美琴(てことは・・・当麻はまだ見つかっていない?)

美琴(・・・ダメだ、それじゃあまた振り出しよ・・・)

美琴が溜め息をつく

美琴(・・・なんで・・・傍にいてくれないのよ・・・)


美琴(・・・早く迎えに来てよ、当麻)


389 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 17:51:55.00 ID:n2zyR8zc0

神裂「・・・天草式・・・が・・・?」

神裂とステイルは、上条の襲撃に備えて対抗策を練っていた

しかし、そこに一つの知らせが入る

「天草式十字清教がイギリス清教に反抗の意を示した」と

神裂「それは本当なのですか!?」

「イギリス清教女子寮に、建宮斎字が宣戦布告をしたとの情報です」

ステイル「・・・そうかい、ご苦労」

シスターが一礼して去っていく

神裂「・・・なぜ・・・」

ステイル「・・・君を止めるためじゃないかい?」

神裂「!!」

ステイル「全く、くだらないことをしてくれたものだね」


390 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:00:03.98 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・」

ステイル「君が守りたかったのは彼らなのだろう?そのためにイギリス清教に従った」

神裂「・・・私が逆らえば・・・天草式はイギリス清教から追われてしまうでしょう・・・」

ステイル「だが、彼ら自身が背いたか」

神裂「・・・なんてことを・・・」

ステイル「・・・どうするんだい?」

神裂「・・・彼らは・・・どこにいると思いますか?」

ステイル「・・・さぁ」

神裂「・・・行ってきても・・・よいでしょうか」

ステイル「ここは任せてくれて構わないよ」

神裂「ありがとうございます」

神裂が聖堂から飛び出していく


391 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:10:45.72 ID:n2zyR8zc0
ステイル「・・・神裂、君は勘違いをしているよ・・・」

一人残ったステイルがタバコを咥えながら呟く

ステイル「・・・天草式が・・・君を止める理由は」

ステイル「・・・決して、簡単には崩れたりしない」

それは、上条当麻の執念と同じ

ステイル「・・・決して、崩れないんだ」

溜め息をついたステイルが、もう一度資料を手にする

上条が襲撃に使いそうなルートを考えるためだ

ステイル「・・・上条当麻」

ステイル「・・・どこからでも掛かってきてくれ・・・」

ステイル「どうせ僕には、誰も救えないんだ」


ステイル「・・・だから、早く・・・」

ステイル「・・・みんなを救いに来てくれよ」


392 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:19:20.78 ID:n2zyR8zc0

オリアナ「ふーん・・・真正面から聖堂を狙いに行くなんて・・・」

上条「う・・・」

オリアナ「君、馬鹿よねやっぱり・・・」

19090「で、ですが・・・」

エツァリ「遠距離からの魔術攻撃は結界によって跳ね返されますし・・・」

上条「俺が結界を壊すにしても・・・」

エツァリ「近づかなければなりませんから」

オリアナ「はぁ・・・イギリス清教のガードは相当高いのよ」

上条「・・・情報は?」

オリアナ「・・・常に護衛隊形を変えてるのよ」

上条「・・・じゃあ予想して穴を見つけるしかないのか?」

オリアナ「あのね、坊や・・・そんなこと君に出来る?」

上条「う・・・」

19090「・・・ですが、それ以外に方法が・・・」


393 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:23:57.70 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「・・・たとえば、誰かが陽動を行うとか」

上条「それは・・・無理じゃないか?」

19090「この三人だけで作戦を進めなければならないんですよ・・・」

オリアナ「はぁ・・・陽動で護衛を遠くに連れて行った隙に坊やが侵入・・・ならいけそうなんだけど」

エツァリ「・・・自分が陽動に回りましょうか」

上条「本気か?」

エツァリ「自分はアステカの魔術ですから・・・彼らには簡単に防げないと思います」

上条「・・・そうか」

オリアナ「でも、一人で戦うなんてきついんじゃない?」

エツァリ「仕方ありませんよ・・・」

上条「・・・護衛の人数くらいは知らないか?」

オリアナ「普段なら・・・30人ほどね」

19090「普段なら?」


394 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:26:34.90 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「最近、非常に護衛が多くなったらしいのよ・・・3倍に」

上条「じゃ、じゃあ100人近いのか!?」

オリアナ「最も、急造の護衛だから統率はまだ取れてないらしいけど」

エツァリ「100人・・・ですか」

19090「難しいですね・・・」

上条「・・・それでも、結局戦わなきゃならないんだ」

オリアナ「・・・頑張るわね、坊やたち」

上条「・・・とにかく、出来る限り効率よく陽動をするべきだ」

オリアナ「なおかつ、途中で合流できるようにしないと・・・」

19090「・・・エツァリさんが陽動に回り、その間にお義兄様とミ・・・私が中を探索・・・」

上条「途中で、どうにかエツァリも中に入ってくれるか?」

エツァリ「難しいですね・・・」

エツァリが眉をひそめる


395 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:29:31.36 ID:n2zyR8zc0
エツァリ「・・・自分は最悪、陽動だけを行うことになるかもしれません」

上条「・・・くそ、そうなったら中には俺と・・・」

19090「・・・私だけですね」

オリアナ「・・・中にはそこまで護衛がいないと思うわ」

上条「?なんでだよ」

オリアナ「最大主教の目論見はあまり露見したらいけないんでしょ?」

上条「あぁ」

オリアナ「なら、身近にあまり人は置かないんじゃないかしら」

19090「・・・なるほど、流してもいい人に流してもいい情報だけを流す・・・」

エツァリ「・・・最大主教は一人でしょうか」

オリアナ「そうね、基本的に人を信用しないみたいだから」

上条「・・・俺達の目的は最大主教じゃない、美琴の救出だ」

オリアナ「あぁ、そうだったわね」

オリアナが聖堂の設計図を取り出す


396 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:34:35.05 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「聖堂には囚人を捕らえる施設はほとんどないわ」

上条「?イギリス清教の牢獄は・・・」

オリアナ「それ専用の施設があるのよ」

上条「・・・じゃあ、美琴は?」

オリアナ「そうね・・・おそらくは普通の客室に泊めてるんじゃない?」

19090「客室があるんですか?」

オリアナ「たまーに重鎮が来るらしいのよ」

エツァリ「そこでしょうか」

オリアナ「あるとしたらね、重要な資料も置いてないみたいだし」

上条「・・・でもこれ・・・2階なんだな」

エツァリ「・・・1階にはそこまで人がいそうな部屋はないですね」

19090「なら、簡単に行けそうですね」

オリアナ「あら、どうかしら」

上条「・・・引っかかることがあるのか?」


397 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:38:19.66 ID:n2zyR8zc0
オリアナ「インデックスはどこに捕らえられてるの?」

19090「?」

オリアナ「そう、ここよ」

オリアナが指差しているのは、美琴のいると思われる部屋の隣だった

上条「ここも客室なのか?」

オリアナ「えぇ・・・」

19090「ですが、こんなに近い部屋なら・・・」

オリアナ「それぞれの扉が部屋の右と左についてるのよ」

上条「・・・なるほど、同時に部屋から出ても全く反対側の廊下に出るわけか」

エツァリ「重鎮同士が遭遇するのを・・・防ぐためでしょうね」

オリアナ「つまり、二人は隣の部屋に知り合いが泊まっているとは思わないでしょうね」

上条「・・・でも、なんでこれが問題なんだ?」

オリアナ「あら、最大主教の計画にはインデックスが重要なんでしょ?」


398 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:41:30.42 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・そうか、ここには護衛がいるかもしれない・・・」

オリアナ「・・・その護衛は、怪しまれないように親しい人間だとは思わない?」

エツァリ「・・・ステイルさんでしょうか」

19090「そうかもしれないですね・・・」

上条「くそ・・・あいつはイギリス清教の聖堂に出入りを許されてるのか?」

オリアナ「あら、インデックスを人質にしている限り、最も扱いやすい人間じゃない?」

上条「・・・そうだな」

19090「・・・でも、ステイルさんは護衛が出来るんですか?」

上条「あいつはむしろ拠点防衛を得意としてるらしいんだ」

オリアナ「ルーンは配置が重要だからね」

エツァリ「・・・ですが御坂さんとインデックスさんの部屋が近いのは便利ですね」

上条「・・・一気に助けられるかもな」

19090「壁は壊すこと前提なんですね・・・」

上条「・・・よし、これならいけそうだ」


399 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:48:18.31 ID:n2zyR8zc0
19090「・・・ですが、やはりこれは机上の空論ですよ・・・」

上条「実際はこの部屋にいないかもしれない・・・」

オリアナ「もし、たら、れば、かも、なんて考えないことよ」

エツァリ「・・・そうですね、やるしかありません」

オリアナ「・・・それで?いつ襲撃するの?」

上条「・・・明日の夜遅くだな」

エツァリ「深夜なら、少しくらい注意も削がれているでしょう」

オリアナ「そうかもしれないわね・・・でもね、それでも大変なことには変わりないわよ?」

19090「それでもやらなきゃならないんです」

上条「・・・もう、賽は投げられたんだ」

オリアナ「・・・そう、じゃあ頑張ってね」

オリアナが立ち上がる


400 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:50:35.16 ID:n2zyR8zc0
上条「なんだ、どっか行くのか?」

オリアナ「食事を作ってくるわ」

上条「・・・お前、出来るのか?」

オリアナ「あのね、お姉さんは一応一人暮らしなのよ?」

19090「で、では手伝います・・・」

オリアナ「あら・・・お姉さん、女の子と二人きりなんて初めてね」ニコニコ

19090「・・・」


19090「あ、あの・・・やっぱり作戦を立てます・・・」

オリアナ「あらそう、じゃあ・・・」

上条「・・・なぁオリアナ」

オリアナ「何?お姉さんに何かお願い?」

上条「・・・悪いな、巻き込んで」

オリアナ「・・・いいのよ、これくらいは」

上条「報酬のためか?」

オリアナ「うーん・・・そうね・・・」


401 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:55:13.61 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・」

オリアナ「でも、なんだか面白そうだったから」

上条「面白そう?」

オリアナ「こうやって君に協力してたら・・・なんとなくだけど、正義の味方になったみたいじゃない」

上条「・・・」

オリアナ「・・・お姉さんはね、誰かの役に立ちたかったの」

上条「あぁ、知ってるよ」

オリアナ「だから、もしこれが正義になるなら・・・ちょっと位危険でもいいかなって思ったのよ」

19090「・・・ありがとうございます」

エツァリ「我々の役に立ってくださってますよ」

オリアナ「そう?ならよかったわ」

そう言ってから、オリアナが一階へと上がる

上条「・・・さて、作戦を練るか」

19090「そうですね」


402 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 18:58:23.46 ID:n2zyR8zc0
上条「・・・オリアナは協力してくれてる」

19090「なら、ミサカたちが正義にならなきゃなりませんね」

エツァリ「そうですね」

上条「・・・よし、考えるか!」

三人が必死に聖堂の周りの地図を見つめる

警備の配置を予想し、そこからどういうルートで攻め込むかを考える

上条(・・・美琴)

上条(もうすぐ助けに行くから、待っててくれ)

上条(・・・ステイル・・・神裂)

上条(殴りに行くから待ってろよ)


上条(俺は、お前らの幻想をぶち殺してやる)


403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/24(月) 19:34:59.46 ID:/Y+ZSv/AO
19090号が戦う話ってかなりレアだよね?
たぶん今まで見た事無いかも、でも銃火器持たせたらエツァリより強いかもなww
404 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:11:53.56 ID:n2zyR8zc0

建宮「はぁ・・・上手くいったのよな」

五和「オルソラさん・・・ごめんなさい」

オルソラ「私が何かお役に立てるのでしたら・・・それは幸せなことなのでございますよ」

対馬「・・・女教皇様は・・・」

建宮「来るはずだ、あの人は」

建宮が遠くを見つめる

五和「・・・気づくでしょうか?」

対馬「どうして・・・こんな町外れを選んだの?」

建宮「ここなら心置きなく戦えるからなのよな」

オルソラ「・・・しかし、こんな場所にいると気づくのでございましょうか?」

建宮「・・・あの人は気づくさ」

対馬「・・・微妙に魔力を流していますから」


405 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:16:57.97 ID:n2zyR8zc0
オルソラ「それでは他の方に・・・」

建宮「まさか、天草式の魔力は他のヤツらには理解できないのよな」

五和「地脈の力を利用していますからね」

対馬「・・・女教皇様が気づくのを待つだけですね」

建宮「・・・時刻は」

五和「現在午後の7時23分です」

建宮「・・・暗いな、さすがに」

オルソラ「・・・もう遠くが見えないのでございますよ」

五和「・・・これは女教皇様に有利ですね」

建宮「・・・女教皇は視力が高いですからね」

建宮「・・・聖人としての力がある、正直俺達が不利なのよな」

オルソラ「大丈夫なのでございますか?」

建宮「やるしかないのよな・・・俺達は」

対馬「・・・そうですね」

五和「・・・オルソラさん、出来れば戦闘中は離れていてください」


406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/24(月) 20:18:20.35 ID:icQUQ2eMo
うわつまんね
407 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:27:03.12 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・巻き込まれる可能性があるのよな」

オルソラ「・・・分かったのでございますよ」

五和「・・・!来ますよ」

オルソラ「?」

対馬「・・・女教皇様です」


神裂(・・・わざわざ、魔力を流していますね)

天草式の魔力の流れ

神裂にしか分からない流れ

あの、仲間達の魔力の流れ

神裂(・・・私を止めるつもり・・・ですか)

神裂(・・・彼らと、刀を交わさなければならないんですね)

神裂が刀を握る

神裂「・・・行きますよ」




408 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:35:31.94 ID:n2zyR8zc0
五和「・・・女教皇様・・・」

対馬「・・・戦いますよ」

建宮「あぁ」

大きな魔力が近づいて来ている

それも、相当な速度で

建宮「オルソラ嬢、離れて」

オルソラ「・・・ご武運を祈るのでございますよ」

対馬「心配しないでください」

五和「私達は・・・やってみせます」

オルソラ「・・・」


オルソラ(・・・みなさん、脚が震えているのでございますよ・・・)

オルソラ(・・・頑張ってください・・・みなさん)


409 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:46:21.22 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・」

建宮「やはり・・・来てくださったのよな」

神裂「・・・あなた方は、やはり納得できませんでしたか」

五和「・・・当たり前です」

神裂「・・・オルソラさんは?」

建宮「無事ですよ、指一本触れてはいないのよな」

対馬「・・・もともと、あなたを呼び出すための人質でしたから」

神裂「・・・そうですか」

建宮「・・・女教皇」

神裂「・・・なんでしょうか」

建宮「一つだけ、聞きたいのよな」

神裂「・・・」

建宮「我々に教えてくださった・・・あの教えを、なぜあなたは自ら破ったのか」


410 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:51:07.10 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・私は破ったつもりはありません」

建宮「・・・我々を救う、と」

神裂「そうです」

五和「・・・そのために・・・最大主教に従うのですか」

対馬「・・・女教皇様」

神裂「正しいなどとは思っていません・・・しかし、どの道を選んでもいずれは壁に当たります」

建宮「・・・そうだ、たしかにその通りなのよな」

建宮がフランヴェルゼを抜く

傷付けるためではない

ただ、救うために

建宮「・・・でも、あなたは幾度もその壁を破ってきた」

神裂「今回ばかりは・・・無理なのですよ」

建宮「人質がいるからですか」


411 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 20:56:55.70 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・それもあります」

五和「・・・」

神裂「それに・・・逆らえば、私一人の問題では済まなくなります」

対馬「私達なら・・・」

神裂「ダメなのですよ・・・」

神裂が首を振る

どこか、諦めたような表情だ

神裂「私は・・・あなた達を大切に思っています」

建宮「それは分かってるのよな」

神裂「それを・・・守りたいと思って何がいけないのですか?」

建宮「・・・心の中にいる、俺達を守りたいと・・・?」

神裂「あなた達は常に私の心の中にいます・・・本当に、家族のようなんですよ」

対馬「女教皇様・・・」

神裂「ですから、私は止めます」

七天七刀を構えた聖人

そして、それに対抗する「天草式」

412 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:05:10.29 ID:n2zyR8zc0
五和「・・・来ないのですか?」

神裂「私の目的は止めることですよ」

建宮「では・・・こちらから行くのよな!!」

建宮が神裂の懐に飛び込む

もちろん、細心の注意を払って

神裂「七閃!!!!!」

建宮「!」

神裂の斬撃を、建宮がかわす

いや、かわしたはずだったのだ

だがその頬に、一筋の傷が入る

建宮(ワイヤー・・・!!!)

五和「建宮さん!!」


413 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:19:53.35 ID:n2zyR8zc0
建宮「くっ・・・」

神裂「敵の懐にいきなり飛び込むのは・・・間違いですよ!!」

神裂が再び刀を振る

居合い切りだ

建宮「おわっ!!」

対馬「どいてください!!」

対馬が護符を投げる

そこから大量の水が溢れ出す

神裂「忘れてはいませんか・・・?」

神裂が水の魔術を発動する

対馬「!」

神裂「私も、天草式の魔術師です!!」

同じ術式の魔術なら、魔力が高い人間が勝つ

ただの魔術師と「聖人」

どちらが勝つかなど、最初から決まっている

大量の水撃が、対馬を襲う


414 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:23:12.54 ID:n2zyR8zc0
対馬「きゃっ!」

五和「対馬さん!!」

五和が対馬を受け止めようと駆け出す

建宮「!五和、よけろ!!」

五和「!?」

五和の体に、突如痛みが走る

神裂がいつの間にか水の魔術を五和に向けて打ち出していたのだ

五和「がっ・・・」

建宮「くそ・・・」

神裂「・・・ダメですね、落ち着きがまるでない」

建宮「!」

一迅の風が吹き、建宮の体も吹き飛ぶ

建宮「ぐあぁぁぁっ!!」

神裂「・・・敵と対峙しているときに・・・余所見をするなどあってはいけませんよ」

建宮「くそ・・・五和・・・対馬・・・」


415 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:25:50.79 ID:n2zyR8zc0
五和「・・・ごほっ!」

対馬「・・・五和、大丈夫・・・?」

五和「対馬さんこそ・・・」

二人がフラフラと立ち上がる

神裂はかなり手加減をしていた

逆に言えば、手加減をされても神裂には勝てないのだ

五和「・・・女教皇様・・・」

神裂「・・・あなた方が弱いのではありませんよ・・・」

神裂が刀を見つめる

そこに映るのは、悲しい瞳をした聖人だった

神裂「・・・生まれながらに私は大きな力を持っていました」

神裂「そして・・・それを、あなた方のために振るうと決めた」

神裂「今あなた方を止めなければ、イギリス清教と天草式は完全に対立してしまいます」

建宮「・・・その通り・・・なのよな・・・」


416 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:29:40.01 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・だからこそ、私はこの力を振るいます!」

斬撃が、建宮の頬を掠める

神裂「・・・出来れば止まってほしいのですよ」

建宮「それは・・・無理な頼みなのよな・・・」

頬から血を流しながら、額から汗を流しながら

それでも建宮は立ち上がる

建宮「・・・俺達だけじゃない、天草式の皆があなたを待っている」

神裂「・・・私は、あなた方の元には帰れません」

建宮「・・・アックアを共に倒したとき・・・あなたは、我々を仲間だと言った」

神裂「だからこそ!!!」

神裂が七天七刀の柄で建宮の腹を突く

建宮「がっ・・・」

神裂「止めなければならないんです!!」

五和「建宮さん!!!」


417 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:31:57.59 ID:n2zyR8zc0
五和が建宮の体を受け止める

かなり、重く感じられた

建宮「・・・なぜ・・・」

神裂「・・・分かってください、仲間がもしも破滅の道へと向かっているなら!」

神裂が駆ける

建宮と五和の二人を吹き飛ばすほどの速さで

五和「うっ・・・」

対馬「五和・・・建宮さん!!!」

建宮「・・・っ・・・」

神裂「私はそれを止めるのです!!」

建宮「・・・俺達は・・・止まらない・・・のよな」

神裂「無理矢理にでも・・・止めてみせます」

神裂が刀を鞘に戻す

建宮(・・・あれは・・・)


418 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:34:58.20 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・これで、終わりです」

対馬「!二人とも、避けて!!」

対馬が護符を投げる

二人の前に、壁が生まれる

大抵の魔術なら防ぐほどの防壁

ただの斬撃ならば通らない防壁

だが

神裂「そんなものでは・・・私を止められません!!!」

神裂の一撃は、それよりも重かった

神裂「唯閃!!!」

砂が舞う

夜の静寂を斬るように、激しい風が辺りを凪ぐ

一瞬にして、防壁は切り裂かれた

建宮が

五和が

対馬が

遠くへと、吹き飛ばされる


419 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:37:13.53 ID:n2zyR8zc0
建宮(あぁ・・・俺には・・・救えなかった・・・)

薄れていく意識の中

建宮は、ただ嘆いていた

五和の声も対馬の声も聞こえない

いつの間にか、彼は地面に横たわっていた

隣には五和が転がっている

辛うじて息はあるようだ

その奥には対馬が

建宮(・・・くそ・・・三人が・・・一瞬で・・・)

正面からぶつかったのが間違いだったのか

そんなことではない

神裂と戦ったのが間違いだったのだ

三人で掛かれば、足止めはできると思っていた

説得の時間稼ぎは出来ると思っていた


420 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:40:50.93 ID:n2zyR8zc0
建宮(ははは・・・無理だったんだ・・・)

神裂を止めることなど出来なかったのだ

小さな犬がいくら吼えたところで、獅子を止められるわけがない

それと同じだったのだ

建宮(・・・負け犬の遠吠えさえ出来ないのか・・・俺は・・・)

狭まる視界に、神裂の姿が映った

神裂は泣いているように見えた

それとも、建宮が泣いているのか

神裂「・・・建宮・・・申しわけありません・・・」

建宮(あぁ・・・この人は泣いているんだ・・・)

神裂「・・・それでも・・・止めなければならなかった・・・」

神裂「こんな私を慕ってくれていたあなた方を・・・」

建宮(・・・女教皇・・・)


421 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:43:38.96 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・こんな私についてきてくれたあなた方を・・・」

建宮(違う・・・あなたは・・・)

神裂「・・・こんなにも・・・情けない人間を守ってくれようとしたあなた方を・・・」

建宮(情けなくなんかない・・・)

神裂「・・・私の心の中にいつもいてくれる・・・あなた方を・・・」

建宮(違うんだ・・・)

神裂「私は・・・止めたんです」

神裂が振り返る

視線の先にはオルソラがいた

神裂の力を目の当たりにして驚いているようだった

神裂「・・・ここで止まってください・・・もう、私は・・・」

建宮(・・・ここで・・・終わり・・・か)

神裂「・・・あなた方の隣に向かうことはできないんですよ」

建宮(・・・)


422 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:46:45.40 ID:n2zyR8zc0
一歩一歩

神裂が遠のいていく

その姿に、建宮が手を伸ばす

前も

そして、今も

その人は遠ざかっていく

建宮(・・・待ってくれ・・・)

あの時は、追いつけなかった

今も、きっと

建宮(・・・ちくしょう・・・どうしてだ・・・)

遠すぎるのだ

神裂の存在は、彼にとって

天草式にとって遠すぎる

もう、手の届かないところにいるのだろう

建宮(・・・ちくしょう・・・)


423 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:49:18.24 ID:n2zyR8zc0
彼女の背中を掴むために手を伸ばす

それでも、それは何も掴まなかった

空のままの拳を、地面に叩きつける

建宮(・・・救えないんだ・・・俺じゃ・・・)

建宮(・・・もしも俺が・・・俺が、もう少し力を持っていれば・・・)

生まれつき力を持った神裂

どれほど努力しても、力を手に出来なかった建宮

二人の距離は、少しずつ離れていく

建宮(・・・女教皇・・・待ってくれ・・・)


神裂「・・・オルソラさん、帰りましょう」

オルソラ「・・・私は・・・」

神裂「・・・彼らなら大丈夫です、強いですから」

オルソラ「・・・」


424 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:51:02.00 ID:n2zyR8zc0
神裂「さぁ、行きましょう」

神裂がオルソラを縛っていた魔術を解く

簡単に

オルソラ「・・・いいのでございますか?」

神裂「・・・いいのですよ」


神裂「もう・・・私などを慕ってはくれないでしょう・・・こんな、弱い人間を」


建宮(・・・弱い・・・?)

建宮(・・・違う)

守ってくれようとした

建宮や、五和や、対馬や

そして、天草式を

建宮(俺達が・・・慕わない?)

そんなわけがない

あんなにも優しい人間を

慕わないわけがない


425 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:52:58.93 ID:n2zyR8zc0
神裂「それに・・・それに」

オルソラ「・・・」

神裂「もう・・・彼らの仲間でいる資格が・・・ないでしょう?」

建宮(・・・ふざけるな・・・)

神裂「・・・帰りましょう、我々の居場所に」

オルソラ「・・・!!た、建宮さん!!」

神裂「え・・・?」

神裂がその言葉に振り返る

先ほどと同じ静寂

そして、同じはずの暗闇

しかしその中に、一人の男が立っていた

血だらけで、汗まみれで

肩で呼吸をし、今にも倒れそうな男が


そして、何よりもぎらついた目をした男が


426 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:55:47.18 ID:n2zyR8zc0
神裂「な、何をしているのですか!!動けば傷口が・・・」

建宮「傷口が・・・なんなのよな・・・」

神裂「無理をしないでください!!」

建宮「無理をしなければ・・・アンタを救えないのよな!!!」

神裂「まだ・・・まだ私を止めるつもりですか!!」

建宮「女教皇・・・アンタを救う」

神裂「・・・もう・・・もうやめてください!!これ以上やるならば、私はあなたを殺すほかなくなります!!!」

建宮「あぁそれで結構!!」

神裂「!!!!」

建宮「俺はな・・・死ぬことなんかちーっとも怖くないのよな!!!!」

神裂「なぜですか!!なぜ・・・なぜ・・・」

建宮「だらだら生きて・・・自分の信じた道に背を向けて、明日を見ないで今だけに必死にしがみつく・・・」


建宮「そんな生き方は御免なのよなぁ!!!」


427 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 21:58:25.44 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・何を・・・何を!!!」

建宮「はは・・・そうだ、アンタを救って死ねるのなら!!アンタみたいな人間を救って死ねるなら!!俺の・・・こんな不器用な男の人生にも、少しは華が生まれるってもんだ!!」

神裂「やめてください!!私はあなたを失いたくない!」

建宮「知ったことか!!!」

建宮が走り出す

フラフラと、少しずつ神裂に近づく

神裂「・・・止まってください!」

神裂が彼の腕を掴む

そして、全力で遠くへとその体を飛ばす

聖人の腕力で投げられたのだ

かなりのダメージがあるはずだ

建宮「がはっ・・・」

神裂「・・・無理です、私を止めることなど・・・」

建宮「・・・無理だからこそ・・・俺が・・・叶えてやりたいのよな・・・」


428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/10/24(月) 21:58:43.05 ID:2RrUBDRAO
建宮さんマジカッコイイ
429 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:01:07.66 ID:n2zyR8zc0
神裂「っ!!」

神裂が全力で建宮の懐へ飛び込む

もう、建宮はそれに反応すらできない

ただ神裂の力に圧倒されるだけだ

遠くへと体を飛ばされ、地面へと叩きつけられる

神裂「もう・・・もういいんです、建宮!!」

建宮「・・・無理だとか・・・もういいとか・・・全部アンタの意見なのよな・・・」

神裂「これは・・・これは、命令なんです!」

建宮「・・・そんな命令は聞けないのよなぁ!」

建宮が血反吐を吐く

それでも、彼は止まらない

建宮「・・・アンタには無理なんだろ・・・止まることも救われることも・・・最大主教に歯向かうことも、俺達を犠牲にすることも!」

神裂「・・・やめてください・・・」

建宮「でもな!!俺には出来る!」


430 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:03:58.72 ID:n2zyR8zc0
神裂「言ったはずです!私は・・・私は、もう・・・」

建宮「止まれない・・・か」

フランヴェルゼが地面へと落ちる

それを拾う体力さえ、今の彼には残っていない

建宮「・・・そんなのは・・・俺達だって一緒だ」

建宮が五和と対馬を指差す

建宮「見てみろ・・・アンタを救うために・・・あいつら二人は美しく地に伏せている」

神裂「何を言っているのですか・・・結局、あなた方では私を・・・」

建宮「・・・救えないかもな・・・そうだ、俺達には力がない・・・」

神裂「・・・お願いします・・・あなた方は家族なんです!!いつも・・・」

建宮「いつもアンタの心の中にいる・・・か」

建宮が笑う

本当に、愉快そうに


431 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:06:34.13 ID:n2zyR8zc0
神裂「・・・何がおかしいのですか」

建宮「あぁ、そうだよな・・・俺はアンタの心の中になんかいない」

神裂「な・・・」

建宮「そんなところになんていたくもない!!」

建宮が声を荒げる

その目は、神裂の目を見据えている

建宮「アンタの心の中にいるなら、たしかにアンタの傍にずっと一緒にいれる・・・」

建宮「でもそれは・・・仕方なく一緒にいることになる・・・」

建宮「俺は違う、アンタが間違えば喜んで敵になる・・・アンタが泣けば、喜んで隣に座ってやる!」

神裂「もう・・・」

建宮「それだ・・・アンタは今泣いている・・・なら、俺はアンタの心から飛び出してやる・・・」

神裂「やめてください・・・」

建宮「心の中で慰めるんじゃない・・・隣に座って、その涙を拭いてやる・・・」

神裂「もういいではないですか!!!」


432 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:09:39.35 ID:n2zyR8zc0
建宮「・・・俺は・・・好きでアンタの隣にいた」

建宮「アンタが上司だからじゃない、アンタが好きだからだ・・・」

建宮「もしもアンタが女教皇じゃなくても・・・ずっと隣にいたはずだ・・・」

建宮「家族だからだ、仲間だからだ、同士だからだ、味方だからだ!」

建宮が拳を握る

建宮「・・・アンタの心の中なんてちっぽけな場所に俺はいたくない」

建宮「・・・アンタの隣が、アンタの後ろが・・・そして」

建宮「・・・アンタの傍が、俺の・・・俺達の居場所なのよな」

神裂「・・・建宮・・・」

建宮「イギリス清教?最大主教?ふざけんな・・・」

唾を吐き、建宮が一歩神裂に近づく

それは、どんな敵よりも強く見える


433 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:12:26.89 ID:n2zyR8zc0
建宮「それを敵に回そうが・・・そいつらに追われてしまおうが・・・」

建宮「アンタの仲間として生きていけるなら構わない」

建宮「守ってもらおうなんて思ってない、支えあうつもりなんだからな・・・」

神裂「もうやめてください・・・それ以上・・・」

建宮(そうだ・・・俺は、救いに来たんだ)

神裂「どうしてですか!」

建宮(救いたいからだ)

神裂「なら・・・ならば・・・」

建宮(・・・そんな顔をするな・・・女教皇・・・)

神裂「あなたは・・・あなたは、どこにいるのですか!!!」

建宮「アンタの心の中じゃない、イギリス清教の下でも・・・どこかあやふやな場所じゃない」

建宮がニカリと笑う

何よりも下品に、そして何よりも強く





建宮「俺は、ここにいるのよな」







434 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:14:05.41 ID:n2zyR8zc0
さて、今日はここまで

もう建宮が大好きなんだ、>>1

だから建宮さんにはいいカッコさせたかった

明日も神裂と建宮の戦いですね

それとその後も

やっとだ・・・

やっと、バトルものっぽくなってきた・・・

相変わらず戦闘描写は苦手だけど

今スレと次スレは筋肉動画は無しです

だってなんか雰囲気崩れるもん

というか、ネタ切れだから


ではおやすみなさい


435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/24(月) 22:16:40.00 ID:ey3zFFbno
建宮かっけぇなぁ!!!

ちな、イギリスにいる妹達の出番はありますか?
436 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/24(月) 22:23:30.41 ID:n2zyR8zc0
>>435 いんや、全くないですw

こっちは出来る限り魔術テイストにしたいんで、ほとんど科学側はいません

メインキャラ以外は


次スレは全く逆で科学側中心にするかと

建宮さんのかっこよさはガチ

しかも優しいし


437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 22:45:59.08 ID:IONCDV57o
   ○○○
  ○ ・ω・ ○ がおー
   ○○○
  .c(,_uuノ

              ○。  ○
    ミハックシュ   ○    o   ○
    ミ `д´∵° 。 o ○
  .c(,_uuノ  ○ ○   ○


           >>1  ○○○○
                 ○
    ∧∧         ○
    ( ・ω・)       ○    ○
  .c(,_uuノ      ○○○○○
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 00:16:35.95 ID:byfJK8U30
>>1は速さが足りすぎだ
ぜんぜんおいつけねぇ…
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) :2011/10/25(火) 00:54:19.66 ID:Ae3jSB2Qo
>>1
とりあえず>>1が建宮好きってことはわかった
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/25(火) 01:54:54.51 ID:t1H1pNpOo
建宮かっこよすぎワロタ
美月に銃火器を持たせる予定はありますか?
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 07:31:38.66 ID:oe0MaLKSO
たしか妹達って狙撃得意だったよな
3巻で一方さん狙撃してたし
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 08:03:30.29 ID:Y3xLId5IO
10031号までの戦闘経験の蓄積があるからな…
443 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:11:34.98 ID:Uw8LpUWH0
神裂「・・・建宮・・・」

建宮「さぁ・・・掛かって来るのよな」

建宮が拳を構える

神裂「何を考えているんですか・・・」

建宮「いいだろ、こういうのも」

神裂「常人のあなたが腕力で私に勝てるとでも?」

建宮「いいから・・・掛かって来い!」

神裂「くっ・・・」

神裂が建宮の腹に拳を叩きつける

建宮「ぐはっ・・・」

神裂「無理なんですよ!」

すぐさま、神裂が脚を払う

建宮「くそ・・・」

神裂「私を・・・私を救うなんて!」


444 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:12:08.87 ID:Uw8LpUWH0
倒れた建宮の服を神裂が掴む

神裂「もう無理なんですよ!」

そして、遠くへと放り投げる

離れた場所にあった木にぶつかり、建宮の体が地に倒れる

神裂「・・・もう」

建宮「・・・まだなのよな」

神裂「!」

建宮「アンタは無理だと思っていても・・・」

建宮が駆け出す

神裂の懐へと向かって

建宮「まだ俺は諦めてなんかないのよなぁ!」

拳を振り回す

だが、彼の目はもはや焦点が定まっていない


445 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:13:05.86 ID:Uw8LpUWH0
神裂「・・・当たりませんよ!」

神裂の蹴りが、拳が

少しずつ建宮の体力を奪う

神裂「建宮・・・私はあなた方を捨てたんです」

ぽつり、と神裂が呟く

神裂「あなた方の味方につくか・・・イギリス清教の味方につくか」

建宮「・・・」

神裂「迷いました、それでも私はイギリス清教を選びました」

建宮「そんなこと・・・」

神裂「・・・インデックスがいたからです」

建宮「分かってるのよな・・・」

神裂「あなた方は私を慕ってくれています」

建宮「当たり前だ・・・」


446 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:13:42.50 ID:Uw8LpUWH0
神裂「そんなあなた方を!」

神裂の肘打ちが建宮の胸を打つ

建宮「ぐぁぁっ!」

神裂「私は易々と裏切った!」

神裂が刀を抜く

もはや、彼女は手加減をするつもりがなかった

神裂「見てください!私は手加減などしません!」

建宮「・・・だから」

神裂「最低でしょう・・・今まで自分を慕ってくれた人間を・・・」

建宮「なんだって言うのよな・・・」

神裂「こうやって・・・自ら手に掛けるのです!」

建宮「それがなんだ!」

神裂「七閃!」


447 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:14:38.01 ID:Uw8LpUWH0
斬撃が建宮の体を襲う

肩が切れた感触がした

だが、今の建宮には関係なかった

神裂「もう・・・もう私はあなた方の隣に行けないんですよ!」

建宮「・・・違う」

神裂「・・・建宮、もう一度だけ問います」

神裂が刀を鞘に収める

その握りは

建宮(唯閃のものだ・・・)

神裂「あなたは・・・」


神裂「あなたはまだ、私を止めると言うのですか?」

建宮「・・・まだ・・・アンタを救ってないからな」


448 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:15:14.03 ID:Uw8LpUWH0
神裂「・・・残念です」

神裂が刀を抜く

目には涙が浮かんでいた

何よりも美しい涙が

神裂「唯閃!」

七閃と比べものにならない衝撃が、建宮を襲った

そして理解した

五和や対馬を狙った先程の唯閃は、かなり手加減されたものだったのだと

建宮(これが全力の唯閃か・・・)

一瞬にして意識が黒へと変わる

建宮(あーあ・・・格好悪い・・・最後なのよな)

そして彼は



449 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:16:04.56 ID:Uw8LpUWH0




神裂「建宮、修業に付き合ってはもらえませんか?」

建宮「んー?女教皇の修業なんて・・・俺なんかじゃ相手にはなれないのよな」

神裂「何を言っているんですか」

建宮「だって・・・格が違うのよな」

神裂「ふふ・・・私が修業で鍛えるのは力だけではありません」

建宮「力だけではない?」

神裂「心、ですよ」

建宮「心か・・・でも女教皇は心も強いのよな」

神裂「まだまだですよ、私なんかは」

建宮「いやいや・・・女教皇以上にしっかりした人間は見たことがないのよな」

神裂「おや、それは嬉しいですね」

建宮「・・・それで?どんな修業をするのよな」


450 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:17:21.28 ID:Uw8LpUWH0
神裂「簡単です、ただじっと座禅を組みます」

建宮「あぁ、却下なのよな」

神裂「な、なぜですか!?」

建宮「脚が痺れるのよな・・・あれ立つときビリビリしてイヤなのよな」

神裂「それを乗り越えてこそです!」

建宮「痛みを乗り越えて昇華・・・まさか女教皇ってばマゾヒスト?」

神裂「違います!」

建宮「ま、まさかの両方いけるクチ!?」

神裂「で、ですから!!」

建宮「あはは!冗談なのよな」

神裂「・・・では付き合ってもらえますか?」

建宮「喜んで」


451 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:17:53.27 ID:Uw8LpUWH0

神裂「建宮、最近五和が伸び悩んでいるようなのです」

建宮「伸び悩む?五和はどんどん成長してるのよな」

神裂「いえ・・・胸のジェスチャーをしながら言わないで下さい」

建宮「あれ?胸じゃなくて?」

神裂「違いますよ・・・最近、あまり槍が上達しないようなのです」

建宮「だから刀にしろって言ったのになー・・・」

神裂「はぁ・・・五和はあまり刀が好きではないみたいですよ」

建宮「なんでなのよな」

神裂「・・・私と一緒だから、と」

建宮「なるほど」

神裂「あの・・・」

建宮「?どうかしたのよな?」

神裂「私は・・・五和に嫌われているのでしょうか」


452 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:18:37.08 ID:Uw8LpUWH0
建宮「いやいや、なんでなのよな?」

神裂「だ、だってお揃いの武器がいやだなんて・・・」

建宮「そりゃ恐れ多いからなのよな」

神裂「そ、そうなんですか?」

建宮「女教皇と同じ武器を握るのは緊張するのよな」

神裂「・・・私は・・・そこまで特別なのでしょうか」

建宮「・・・尊敬しているからこそなのよな」

神裂「尊敬ですか・・・?」

建宮「あなたは優しい、強い、そして慈悲深い」

神裂「そ、そうでしょうか」

建宮「あなたと比べられるのが、五和はいやなのよな」

神裂「そうですか・・・なんだか悪いことをしてしまいましたね」


453 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:19:29.33 ID:Uw8LpUWH0
建宮「気にしないほうがいいのよな」

神裂「建宮、あなたは武器は?」

建宮「フランヴェルゼなのよな!」

神裂「・・・いつもそうですね」

建宮「ずっと同じでいくのよな」

神裂「たまには変えてみては?」

建宮「じゃあ女教皇のを」

神裂「こ、これはダメですよ!?」

建宮「冗談なのよな」

神裂「じょ、冗談ですか」

建宮「女教皇は面白いリアクションをしてくれるからからかい甲斐があるのよな」

神裂「からかわないで下さい!」


454 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:20:29.36 ID:Uw8LpUWH0
建宮「つまり・・・」

神裂「あ、あの・・・」

建宮「?どうかしたのよな?」

神裂「いえ、なんですか五和の隠れ巨乳説って」

建宮「女教皇はただの巨乳、五和は隠れ巨乳なのよな」

神裂「あ、あなたは私の胸を見ていたのですか!」

建宮「そんな格好だったらイヤでも目に入るのよな」

神裂「こ、これは魔術的に・・・」

建宮「でも五和も最近は隠してないのよな・・・」

神裂「聞いて下さい!」

建宮「あぁ、ちなみに対馬は隠れ美脚なのよな」

神裂「あなた・・・もしかして一々分析しているんですか?」

建宮「隠された魅力は素晴らしいのよな」

神裂「あの・・・何を言っているんですか」

建宮「まぁまぁ、女教皇には分からんのよな」

神裂「?」



455 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:21:11.40 ID:Uw8LpUWH0


神裂「・・・建宮」

建宮「分かってるのよな」

神裂「申し訳ありません、天草式を・・・私は捨てます」

建宮「置いていってもらって構わないのよな」

神裂「・・・」

建宮「イギリス清教は色々忙しいだろうけど・・・頑張ってほしいのよな」

神裂「本当に申し訳ありません」

建宮「・・・女教皇、俺達のことは忘れてもらって構わないのよな」

神裂「!」

建宮「俺達はあなたの枷になるのだけは御免なのよな」

神裂「・・・分かりました」

建宮「あーあ!寂しくなっちゃうのよな!」

神裂「・・・皆がいるではないですか」


456 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:22:03.81 ID:Uw8LpUWH0
建宮「俺のくだらない話を聞いてくれるのは女教皇だけだったのよな」

神裂「・・・あまり楽しい時間ではなかったと思っていました」

建宮「・・・」

神裂「ですが・・・今になって、またあなたのくだらない話が聞きたくなってしまいます」

建宮「俺のくだらない話は長いのよな」

神裂「時間がないのが残念です」

建宮「・・・お体に気をつけて」

神裂「あなたも」

建宮「女教皇」

神裂「なんですか?」

建宮「・・・いってらっしゃいなのよな」

神裂「・・・行ってきます」



457 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:22:50.45 ID:Uw8LpUWH0




五和「・・・建宮さん」

建宮「んー?どしたのよな」

対馬「そりゃ女教皇様がいなくなったのは悲しいけど・・・」

建宮「いつまでもぼーっとしてるなって?」

五和「そうですよ、天草式を引っ張るのは建宮さんなんですから」

建宮「はぁ・・・あんまり人を引っ張るのは苦手なのよな」

五和「・・・ですが」

建宮「もしも・・・もしもの話を考えてしまうのよな」

対馬「・・・」

建宮「もしも俺があの時、女教皇の手を握っていたら・・・」

五和「建宮さん・・・」

建宮「女教皇は・・・天草式に残ってくれたのかな?」

五和「どうでしょうか・・・」

458 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:23:37.15 ID:Uw8LpUWH0
対馬「女教皇様の決意は固かったじゃない」

建宮「あぁ・・・そうだな」

五和「じゃあ建宮さん・・・いえ、教皇」

建宮「やめてくれ、俺はそういうタマじゃないのよな」

対馬「・・・じゃあなんて呼べば?」

建宮「教皇代理、だ」

五和「代理ですか?」

建宮「いつ女教皇が帰ってきてもいいようにな」

対馬「分かりました、教皇代理」

建宮「さぁ!お前ら、俺は一人の時間がほしいのよな!」

五和「わ、分かりました!」

対馬「ハンカチ置いとくわよ」

建宮「サンキュー!」


459 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:24:22.80 ID:Uw8LpUWH0


建宮「・・・女教皇」

建宮「俺達は置いていってもらって構わないんだ」

建宮「いつか・・・後ろから走り続けてあなたに追いついてみせる」

建宮「あなたが俺達を忘れていたら・・・手を握って振り向かせる」

建宮「・・・だからあなたは行ってくれ」

建宮「・・・俺達が追いつくまで待っててくれ」

建宮「必ず・・・あなたのところへたどり着くから」

建宮「だからその時まで・・・」

建宮「・・・あなたに忘れられても構わない」


建宮「・・・はぁ」


建宮「あーあ、誰かにくだらない話を聞いてほしいのよな」



460 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:25:09.12 ID:Uw8LpUWH0
建宮(・・・夢か・・・?)

建宮が拳を握ろうとする

だが力が入らない

相変わらずの静寂

一つの足音だけが聞こえる

それは段々と遠退いていく

建宮(・・・まただ)

建宮(また・・・見送るのは俺なのよな)

顔を少しだけ動かす

神裂が歩いている

オルソラの腕を掴み、そっと連れていこうと

建宮(・・・俺は)


461 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:25:46.95 ID:Uw8LpUWH0
「私はもう、あなた方の隣には行けないんですよ!」

建宮(何をしにここに来た・・・?)

止めるためだったか

戦うためだったか

建宮(あぁ・・・そうだったな)

建宮(救うためだ)


神裂「・・・」

オルソラ「神裂さん・・・」

神裂「・・・私はダメな女教皇でした」

オルソラ「そんなこと・・・」

神裂「・・・建宮は大切な仲間でした」

神裂の瞳から涙が零れる


462 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:26:36.89 ID:Uw8LpUWH0
神裂「私がいない天草式を・・・率いてくれました」

神裂「私が帰っていいように、居場所を用意してくれました」

神裂「私はもう・・・隣に行けないというのに」

オルソラ「神裂さん・・・」

神裂「・・・そんな仲間を・・・私は・・・」


建宮(・・・女教皇)

神裂が何を言っているか

何を思っているか

建宮には分からない

分かるわけがない

建宮(・・・すまなかったのよな、女教皇)

だが

自分が何をするべきかだけは分かっている


463 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:27:05.04 ID:Uw8LpUWH0
体にはもう力が入らないはずだった

それでも、なぜか彼は立ち上がった

フラフラと歩く

視界が揺れる

真っ直ぐ歩けない

何度もつまずきそうになる

建宮「・・・」


神裂「・・・私は・・・」

オルソラ「・・・」

神裂「きっと、彼等のところに・・・」


建宮「捕まえた・・・」

神裂「!」


464 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:27:39.00 ID:Uw8LpUWH0
建宮がぎゅっ、と

神裂の腕を握った

すぐさま神裂が振り返る

神裂「た、建宮!」

建宮「ははは・・・やーっと振り向いた・・・」

神裂「なぜ・・・」

建宮「女教皇・・・アンタは・・・自分を責めてる」

神裂「建宮・・・」

建宮「許せないのかもしれないが・・・でもな・・・」

神裂「・・・」

建宮「俺が大好きな女教皇を馬鹿にしないでほしいのよな・・・」

神裂「建宮・・・」

神裂が刀を握ろうとする


465 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:28:18.51 ID:Uw8LpUWH0
脳はそう指令を出していた

だが、体が拒否している

建宮に握られた手を振りほどけば

だが、それが出来ない

建宮「・・・女教皇、アンタ・・・泣いてるのよな」

神裂「建宮・・・なぜですか」

建宮「綺麗な顔が台なしなのよな・・・」

神裂「なぜ私なんかを!」

建宮「ほら、涙を拭いて・・・」

神裂「なんで私なんかに優しくするのですか!」

涙がとめどなく溢れる

建宮「あーあ・・・美人がもったいないのよな・・・」


466 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:28:51.44 ID:Uw8LpUWH0
そっと

建宮が神裂の涙を拭う

力の入らない手で

誰よりも温かい手で

建宮「女教皇・・・」

じっと神裂の目を見つめて

建宮が笑う


建宮「救いに来たのよな」


神裂「建宮・・・もう」

建宮「これが救いの手なのよな・・・」

神裂「は、放して下さい・・・」

建宮「放さない・・・二度と、二度とだ」


467 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:29:38.24 ID:Uw8LpUWH0
神裂「私はあなたを傷つけたんです!」

建宮「・・・」

神裂「どうしてですか・・・」

建宮「やっと追いつけたんだ、アンタに」

神裂「・・・」

神裂が膝から崩れ落ちる

涙が零れていく

神裂「なぜですか・・・」

建宮「アンタがいなくなってからずっと・・・」

神裂「私なんか・・・」

建宮「その背中を追い掛けていた・・・」

神裂「救うのですか・・・」


468 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:30:13.90 ID:Uw8LpUWH0
建宮「昔は大きな背中だと思っていた・・・」

神裂「こんな・・・最低の人間を・・・」

建宮「でも違ったのよな・・・」

神裂「・・・助けるのですか・・・」

建宮「・・・こんなにちっぽけだ」

建宮が神裂を強く抱きしめる

血が流れている

汗で濡れている

涙が零れている

それでも残された力を振り絞って

ただ、神裂を抱きしめる

建宮「女教皇・・・アンタは・・・もう俺達の隣には来れないんだよな」


469 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:30:49.51 ID:Uw8LpUWH0
神裂「そんな資格・・・私にはもうありません・・・」

建宮「なら・・・」


建宮「俺がアンタの隣に行く」

神裂「!」

建宮「断られても行くのよな・・・くだらない話を聞いてくれるのは女教皇だけだから・・・」

神裂「建宮・・・」

神裂が、建宮を力強く抱きしめる

強く、もう放さないように


建宮「ははは・・・やーっと・・・帰ってきた・・・」

建宮が嬉しそうに顔を歪める

建宮「・・・あぁ・・・もう一杯だ・・・」

神裂「・・・建宮・・・?」

建宮「・・・疲れた・・・」

神裂「建宮・・・?」


470 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:31:28.68 ID:Uw8LpUWH0
建宮「・・・あっはは・・・女教皇・・・あったかい・・・のよな・・・」

神裂「建宮!建宮!?」

建宮の体から力が抜ける

神裂「建宮!建宮!!」

オルソラ「は、早く病院へ運ぶのでございますよ!」

神裂「そんな・・・建宮!建宮!」

オルソラ「神裂さん・・・」


五和「・・・建宮さん・・・」

神裂「!五和!」

対馬「全く・・・私達が動けない間に一人だけカッコつけて・・・」

対馬が建宮の体に治療用の護符を貼る

対馬「・・・少しくらい、私にもカッコつけさせてよね・・・」


471 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:31:59.36 ID:Uw8LpUWH0

神裂「対馬・・・」

対馬「女教皇様」

神裂「・・・」

対馬「あとで一回だけ、平手打ちをさせて下さい」

神裂「それだけで・・・」

対馬「それであなたの目は覚めるでしょう?」

五和「じゃあ私はその傷を治しますね」

対馬「あはは・・・それはアンタらしいわね」

神裂「二人とも・・・」

対馬「女教皇様・・・私もあなたの隣に向かわせてください」

五和「私も行きますよ」

神裂「・・・」


472 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:32:30.59 ID:Uw8LpUWH0
オルソラ「・・・神裂さん、返事をしたほうがいいのでございますよ」

神裂「・・・」


神裂「・・・是非とも、来て下さい」

対馬「やった・・・やっと女教皇様の隣にいられるのね」

五和「・・・安心しました」

神裂「・・・建宮には・・・お礼を言わなければなりませんね」

対馬「じゃ、早く治しましょうか」


建宮(・・・上条)

建宮(俺はな、お前みたいなヒーローじゃない)

建宮(世界を守るなんて無理だし、そんなことをするつもりもない)

建宮(・・・でも・・・でもな)


建宮(女教皇を救った時の俺は・・・お前に負けないくらい、かっこよかったのよな・・・)



473 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:33:11.44 ID:Uw8LpUWH0

上条「・・・もう朝なんだな」

時計を見た上条が呟く

19090「・・・夜通し、作戦を練っていたんですね・・・」

エツァリ「・・・少し休憩しましょうか」

上条「あぁ」

三人が椅子にもたれ掛かる

作戦はある程度は考え終わっていた

エツァリが陽動に回る

その間に、二人が聖堂の中を攻める

途中、魔術師との交戦も考えられるが、目的はあくまで美琴の救出

上条「・・・はぁ、今夜か・・・」

19090「なんというか・・・不安ですね」

エツァリ「・・・そうですね」


474 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:33:56.58 ID:Uw8LpUWH0

上条「こんなこと・・・初めてだからな」

オリアナ「あら、君は慣れてるんじゃない?」

上条「あ、オリアナ」

19090「おはようございます」

オリアナ「ずいぶん熱心にしてたみたいね」

エツァリ「それはまぁ・・・」

オリアナ「おかげで夜の相手がいなくて寂しかったわ」

上条「な、なんだよそりゃ・・・」

オリアナ「それで・・・作戦は練れた?」

上条「ある程度な」

エツァリ「ですが最終的には局面を見て、各々が判断するしかありません」

オリアナ「おおざっぱね」

19090「あまり決めすぎたら、それはそれで・・・」


475 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:34:30.16 ID:Uw8LpUWH0
上条「失敗したときに焦りが生まれるだろ?」

オリアナ「ふーん・・・」

エツァリ「そうだ、朝食を貰ってもよろしいでしょうか」

オリアナ「それを言いに来たのよ」

上条「じゃ・・・ありがたく貰うか」

オリアナ「坊やにはお姉さんも食べてほしいんだけどなぁ・・・」

上条「却下する・・・」

肩を落としながら、上条達が上へと向かう


オリアナ「・・・今夜、作戦決行だったわよね」

上条「あぁ」

パンを頬張りながら上条が頷く

オリアナ「・・・急な話ね」


476 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:35:07.49 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・お前にはさらに、な」

オリアナ「君は本当に面倒に巻き込まれるわね」

19090「・・・それがお義兄様のいいところです」

上条「絶対そう思ってないだろ・・・」

エツァリ「・・・自分はそれがうらやましいです」

上条「・・・なんで?」

エツァリ「それが結果として、誰かを救うじゃないですか」

上条「俺は救われないけどな・・・」

オリアナ「お姉さんは君に救われたわよ?」

エツァリ「自分もです」

19090「ミサ・・・私もです」

上条「・・・結局はお前達が変わろうとしたからだろ?」

エツァリ「ですがきっかけをくださったのはあなたです」


477 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:35:49.92 ID:Uw8LpUWH0
上条「それでも、俺は大したことはしてないさ」

オリアナ「・・・」

上条「ん?なんだよ、変な顔して」

オリアナ「なんでもないわ」

オリアナが肩をすくめる

彼女がそういう仕種をすると、映画の女優にも見える

エツァリ「・・・今夜までに何か用意するものは?」

上条「覚悟と度胸かな」

エツァリ「それならとっくに」

19090「ここに来る前から決めています」

オリアナ「なんだか映画を見てるみたいね」

紅茶を飲みながらオリアナが言う

台詞だけ聞けば、馬鹿にしているように聞こえるだろう


478 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:36:32.36 ID:Uw8LpUWH0
だが、その目はなぜかうらやましそうだった

19090「さて・・・では少し寝ますね」

エツァリ「自分もそうします」

オリアナ「部屋ならいくつかあるから、好きに使いなさい」

エツァリ「ではお言葉に甘えて」

二人が寝室へと向かい

オリアナ「君はいいの?」

上条「ん?あぁ、あんまり眠くないし」

オリアナ「夜になって眠気がしたら冗談では済まないわよ」

上条「・・・緊張でそれどころじゃないだろ」

オリアナ「それもそうね」

上条「・・・オリアナ」

オリアナ「何?」


479 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:37:27.88 ID:Uw8LpUWH0
上条「お前はさ、なんで力を貸してくれたんだ?」

オリアナ「言ったでしょ、君の仲間になれば正義に・・・」

上条「それだけか?」

オリアナ「・・・後ね」

オリアナがティーカップをテーブルに置く

オリアナ「君に・・・恩返しをしたかったの」

上条「恩返し?」

オリアナ「あの時君に止めてもらってなかったら、今の生活はなかったから」

上条「今の生活はどうだ?」

オリアナ「ちょっと刺激が足りないわ」

上条「う・・・」

オリアナ「でも・・・こういう退屈は嫌いじゃないわよ」

上条「・・・そっか」


480 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:38:07.09 ID:Uw8LpUWH0
オリアナ「君のおかげなのよ」

上条「・・・」

オリアナ「君はなんで、イギリス清教を敵に回すの?」

上条「美琴が人質にされてるからさ」

オリアナ「そこまでして助けたいの?」

上条「愛してるからな」

オリアナ「・・・なんだかうらやましい」

上条「何が?」

オリアナ「君みたいな真っ直ぐな男に愛されるなんて」

上条「真っ直ぐってよりは愚直なんだよな・・・」

オリアナ「どっちにしろ、君は一直線じゃない」

上条「曲がり道は走れないけどな」

上条が苦笑する


481 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:39:06.92 ID:Uw8LpUWH0
オリアナ「・・・ホント、うらやましい」

上条「・・・だから、俺は助けに行くんだ」

オリアナ「・・・」

上条「怖いし、不安だし・・・正直ほかの方法があるならそっちを試したい」

上条「でも、時間がないんだ」

オリアナ「・・・もう少し練ってみたら?」

上条「・・・」

オリアナ「・・・作戦を練るためなら、地下室貸すわよ」

上条「いや、いいよ」

上条が天井を見上げる

上条「・・・美琴をさ」

オリアナ「何?」

上条「美琴の手を放したのは俺だった」


482 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:39:54.11 ID:Uw8LpUWH0
上条「あいつが傍にいたいって言ったのに・・・俺は無視して突っ走った」

上条「ならさ、俺がもう一度あいつの手を握らなきゃいけない」

オリアナ「君はホント・・・真っ直ぐね」

上条「・・・特に、美琴に関してはな」

オリアナ「うらやましい」

上条「お前も真っ直ぐに生きてみたらどうだ?」

オリアナ「いやよ、お姉さんは早すぎるのは嫌い」

上条「何言ってんだ・・・」

オリアナ「・・・成功するといいわね」

上条「させてみせるさ」

オリアナ「・・・ねぇ坊や」

上条「上条だってば」

オリアナ「・・・成功、させなさい」


483 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:40:56.91 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・あぁ」

オリアナ「じゃないと、秘密の地下室を貸した意味がなくなるもの」

上条「そこかよ」

オリアナ「・・・無事に帰って来れたら、紅茶の一杯くらいは出すわよ」

上条「お、そりゃいいな」

オリアナ「・・・だから、無事に帰って来なさい」

上条「当たり前だ」

上条が目を細める

どこか遠くを見つめるように

上条「・・・帰ってきてみせるさ」


上条「平和な日常に」



484 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:41:38.85 ID:Uw8LpUWH0



テクパトル「・・・ショチトル」

ショチトル「なんだ」

テクパトル「・・・飲み物を取ってくれ」

ショチトル「あぁ」

テクパトルはまだベッドの上にいた

傷はほとんど塞がったが、それでも痛みは残っている

テクパトル「・・・上条達はいつ、始めるかな」

ショチトル「・・・聞いてみようか」

テクパトル「やめろ、携帯なんかで話したら誰かに聞かれる」

ショチトル「・・・そうだな」

テクパトル「最大主教は迎え撃つだろうな」

ショチトル「当然だろ」

テクパトル「・・・どうやって聖堂のセキュリティを破るのか」


485 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:42:20.75 ID:Uw8LpUWH0
ショチトル「・・・陽動を使うんだろ」

テクパトル「・・・となると、エツァリがやるだろうな」

ショチトル「上条は美琴の救出だし、19090号は直接的な戦闘力は低いからな」

テクパトル「・・・お前もエツァリのとこに回ったほうがいいかもな」

ショチトル「状況を見て考えるさ」

テクパトル「・・・頼むぞ」

ショチトル「一番の問題は・・・」

テクパトル「最大主教本人、だな」

ショチトル「・・・あいつはどれほどの実力者だ?」

テクパトル「仮にもイギリス清教のトップなんだ、相当の手慣れだろ」

ショチトル「・・・あぁ」

テクパトル「・・・無理はするなよ」

ショチトル「冷静になるさ」


486 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:42:50.33 ID:Uw8LpUWH0
テクパトル「・・・あぁ」

テクパトルがちらりと時計を見る

午前の8時だ

テクパトル(・・・もしも・・・これが失敗したら)

テクパトル(もう平和な日常には帰れないな)


テクパトル「頼むぞ、みんな」




ステイル「・・・神裂から一向に連絡がない?」

ローラ「えぇ」

最大主教の部屋

そこで、ステイルは眉をひそめていた

ローラ「寝返ったかしら」

ステイル「・・・敵は天草式だったのでしょう?」

487 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:43:41.07 ID:Uw8LpUWH0
ローラ「説得された可能性が高いわね」

ステイル「はぁ・・・神裂が相手ではきついですよ」

ローラ「安心なさい、私はそこまで考えているから」

ステイル「何?」

ローラ「神裂は寝返ったとしても・・・何も出来ないわ」

ステイル「インデックスですか」

ローラ「えぇ」

ステイル「・・・」

ローラ「神裂が味方でなくなったのは辛いけど、敵になったとは思ってないわ」

ステイル「・・・インデックスは人質と禁書目録、二つの役割だったのか」

ローラ「そうすれば貴様達が寝返っても下手に攻撃は出来ないでしょ?」

ステイル「だからインデックスと親しい僕達に目論みを・・・」

ローラ「人質を別に用意する必要がないもの」


488 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:44:10.06 ID:Uw8LpUWH0
ステイル「あなたは・・・」

ローラ「・・・イギリス清教の発展のためよ」

ステイル「分かっていますよ・・・」

ローラ「本当は、今すぐにでも私を殴り飛ばしたいんじゃない?」

ステイル「それが出来るならここにはいません」

ローラ「それもそうね」

ステイル「・・・インデックスの安全が保証されるならそれでいい」

ローラ「幻想殺しが聞いたら嘆くでしょうね」

ステイル「彼に理解されようとは思わない」

ローラ「・・・あの男は、私がインデックスを利用することを許さないでしょうね」

ステイル「勘違いするな、僕だって許したくはないさ」

ローラ「許さざるを得ない、のね」

ステイル「分かっているくせに」


489 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:45:02.54 ID:Uw8LpUWH0
不機嫌そうに、ステイルが答える

タバコの端を少し強く噛んでしまう

ステイル「神裂がいなくなったことで戦力は下がるが?」

ローラ「あら、敵は三人よ?」

ステイル「・・・学園都市から来た三人、か」

ローラ「さすがにこちらが負けるわけはないわよ」

ステイル「・・・そうだね」

ローラ「何か言いたいの?」

ステイル「・・・いや、なんでもありませんよ」

ローラ「あらそう?」

ステイル「僕はこれからルートを割り出します」

ローラ「よろしく」


490 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:46:23.12 ID:Uw8LpUWH0
一礼して、ステイルが部屋から去る

ステイル(神裂・・・君も結局は丸め込まれたか)

ステイル(いや・・・君はそっちのほうがよかったのかもね)

窓の外には眩しい世界がある

ステイルが、つい最近まではいた

そして今は届かない世界だ

ステイル(・・・)

ステイル(・・・最大主教、あなたは上条当麻を分かっていない)

ステイルが笑う

それは、なぜか自信に満ちた笑みだった


ステイル(あいつは・・・どんな不可能な状況も乗り越えてしまう)

ステイル(特に、大切な誰かを助け出す時には、ね)


491 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:48:34.74 ID:Uw8LpUWH0

建宮「う・・・」

建宮が目を覚ました

目に入って来たのは、綺麗な天井だった

だが病院のそれとは違う

建宮「・・・ここは」

五和「!気がつきましたか!!」

建宮「・・・五和?よかった、無事だったのよな・・・」

五和「それはこっちの台詞です!!」

建宮「??あ、あぁ・・・」

建宮がゆっくり体を起こす

五和「ま、まだ動いたら・・・」

建宮「・・・女教皇は?」

五和「・・・あそこに」


492 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:50:43.45 ID:Uw8LpUWH0
五和の指差した方向に、神裂が立っていた

建宮の意識が戻ったことに安堵しているようだった

建宮「・・・ここは?」

五和「近くの宿ですよ・・・それも、天草式と繋がりのある」

建宮「・・・マークされていないのか?」

対馬「あら、ここはイギリス清教に教えてないもの」

建宮「ん?おー、対馬」

対馬「全く・・・一人だけカッコつけてくれたわね」

建宮「ははは!かっこよかったのよな?」

対馬「全然」

建宮「えー!?」

対馬「・・・でも、女教皇様の心には響いたみたいよ」

建宮「・・・そうか」



493 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:52:58.72 ID:Uw8LpUWH0
五和「さぁ、女教皇様!」

神裂「え、あ・・・」

五和に背中を押され、神裂が建宮の前へ立つ

神裂「そ、その・・・」

建宮「あれ?その頬はどうしたのよな、真っ赤になってるけど」

神裂「・・・対馬の平手打ちです」

建宮「こ、怖い・・・」

対馬「目を覚まさせるために、よ」

建宮「絶対にやられた仕返しなのよな」

対馬「何か言いましたか?」

建宮「なんでもない!!ノープロブレムなのよなぁ!」

建宮が勢い良く頭を振る

この傷だらけの体に平手打ちを喰らったら

正直、生きた心地がしない


494 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:55:07.67 ID:Uw8LpUWH0
神裂「・・・建宮」

建宮「・・・女教皇」

建宮が神裂の目をじっと見つめる

そして


建宮「何しやがったんだこの大馬鹿野郎!!!」

いきなり、怒鳴り始めた

神裂「は、はい!?」

建宮「俺達を仲間だと言っておきながら、ここぞというときにはただ庇うだけ!!」

建宮「俺達を頼ることも出来ないのか、あなたは!?」

神裂「そ、それは・・・」

建宮「言い訳をするな!!!アンタは俺達のトップだ、そして俺達の仲間だ!」

神裂「建宮・・・」

建宮「アンタは今、どこにいる!?」


495 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:57:26.81 ID:Uw8LpUWH0
神裂「私は・・・」

建宮「資格ならくれてやる、居場所ならくれてやる!」

建宮が神裂の顔を指差す

ビシリ、と力強く

建宮「さぁ答えろ、アンタはどこにいるのよな!?」

神裂「・・・私は・・・あなた方の隣にいます」

建宮「合格!」

対馬「・・・天草式、完全復活かしらね」

五和「もともと・・・壊れてなどいませんでしたよ」

建宮「女教皇、我々はあなたの仲間だ」

神裂「・・・」

建宮「もう決めた、俺達はあなたに従う・・・いや、あなたは手伝おう」

神裂「・・・ありがとうございます」

建宮「さぁ、あなたはどうしたい?」


496 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 09:59:17.43 ID:Uw8LpUWH0
神裂「私は・・・」

建宮「・・・素直に、なってほしいのよな」

神裂「・・・」

神裂が拳を握り締める

目の前にいるのは、仲間だ

部下ではなく、仲間なのだ

背中を追いかけさせる部下ではない

背中を任せる仲間なのだ

神裂(・・・そうです、私は・・・救わなければなりません)

たった一人の少女を

神裂「私は、救います」

建宮「・・・どうやって?」

神裂「・・・そうですね・・・」

ニコリ、と神裂が笑う


神裂「・・・我々に、最も似合った方法で・・・ですよ」


497 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:02:11.86 ID:Uw8LpUWH0

「・・・お兄ちゃん」

「・・・私は行ってくる」

「お兄ちゃん、どうして?」

「・・・お前も来い、私達はイギリス清教に仕えるのだろう?」

「違うよお兄ちゃん!!」

「・・・」

「今の・・・今のイギリス清教は間違ってるよ!!どうしてこんな・・・」

「・・・それでも・・・私は行かなければならない」

「お兄ちゃん・・・お兄ちゃんは、逃げるだけだよ!」

「安心しろ・・・イギリス清教の人間なら、ここの人たちを殺したりしない」

「お兄ちゃん・・・」

「私は、イギリス清教の神父なのだぞ?」

「・・・私だって・・・シスターになりたいんだよ!?」


498 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:04:21.44 ID:Uw8LpUWH0
「だとすれば・・・来るしかないだろう?」

「イヤだ!!今のイギリス清教は間違ってるよ、お兄ちゃん!!」

「・・・」

「こんな・・・従わない人たちを力で黙らせるなんて・・・」

「宗教とは時としてそういうものさ・・・」

「昔のイギリス清教は違ったよ!!私に聖書をくれたシスターさんは優しかったもん!」

「・・・変わってしまったんだ、イギリス清教は」

「・・・お兄ちゃん・・・」

「・・・私は行く、この町への攻撃をやめさせなければならない」

「・・・うん」

「待っていてくれ、それまでは・・・」


「・・・必ず、お前を救ってみせるから」

「だから、待っていてくれ」



499 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:06:40.55 ID:Uw8LpUWH0

ブラック(・・・またか)

目を覚ませば、そこには無機質な天井がある

ブラック(・・・もう昼なのだな)

ふと部屋のテーブルを見ると、昼食が置かれている

ブラック(・・・よほど私は重要な人間らしいな)

苦笑してから、ブラックマンがパンだけを手に取る

ブラック(・・・)

食前の祈り

これも、彼にとっては当たり前の行動だった

だが今の状況では、救いを求めるようにしか見えない

ブラック(・・・おそらく、私の体が回復してから・・・インデックスという子の知識を私に植え付けるのだろうな)

ブラック(それまでが・・・私に与えられた反抗の機会か)


500 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:09:52.04 ID:Uw8LpUWH0
最大主教の目論見は理解した

だが、今の彼にはどうすることもできない

ブラック(・・・イギリス清教と・・・もう一つは天草式か?)

二つの枷によって、今の彼は魔術を封じられている

ブラック(・・・)

ブラック(ダメだな、私にはどうすることもできないか)

溜め息をつき、天井を仰ぐ

ブラック(・・・私を一人にしているのは・・・苦しむのを見て楽しむためか?)

ブラック(ずいぶん悪趣味だな)

ブラック(・・・どうすればいい・・・?)

考えても、策は浮かばない

ブラック(・・・全く、面倒だな)


ブラック(・・・だが、まだ・・・あの少年が残っている)


501 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:14:09.98 ID:Uw8LpUWH0

イン(・・・?なんだか騒がしいんだよ)

インデックスは、イギリス清教の聖堂にいた

彼女にはあまり情報が伝わっていない

そのため、天草式がイギリス清教に反抗したことさえ、知っていないのだ

イン(・・・そういえば、今日はかおりが来てくれてないんだよ・・・)

イン(ステイルも来ないし・・・)

はぁ、と溜め息をつく

部屋から出てはいけないと言われている

そう言われると出たくなってしまうのが人間だ

だが、本当にそれをする勇気はない

イン(・・・最大主教は怖いんだよ・・・)

イン(・・・どうしようかな・・・)

暇すぎて、彼女は何もすることがなかった


502 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:16:53.85 ID:Uw8LpUWH0
外の喧騒とは大違いな、静かな部屋の中

イン(・・・みんな・・・無事なのかな?)

インデックスは、未だにブラックマンが悪だと思い込んでいる

実際、彼も悪なのだ

だがそれ以上の悪は、イギリス清教の中にいる

それを、彼女は知らない

イン(・・・かおり・・・ステイル・・・)

イン(みこともとうまも・・・なんで来てくれないの?)

自分は捨てられてしまったのか、と不安になる

時刻は昼過ぎ

外は明るい日差しに包まれている

それがとても眩しく感じられた

イン(・・・)


イン(早く・・・迎えに来て欲しいんだよ・・・)


503 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:25:37.20 ID:Uw8LpUWH0

上条「・・・さて、作戦をもう一度確認する」

上条が、二人の顔を見つめながら言う

エツァリ「まず、自分が先手を切って真正面から攻撃を仕掛けます」

上条「・・・出来れば、建物の一部を破壊する程度に抑えて欲しい」

19090「・・・そうですね、無意味に人は傷付けたくありませんから」

エツァリ「・・・自分が出来る限りの護衛をひきつけます」

上条「その間に俺達は中を攻める・・・」

19090「・・・ミサカも、一応麻酔銃は持っています」

19090号が麻酔銃を取り出す

どこから仕入れたのか、という疑問が湧くだろう

答えは「オリアナがくれた」なのだ

上条(・・・なんで魔術師がこんなもの持ってたんだろうな・・・)


504 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:29:30.50 ID:Uw8LpUWH0
エツァリ「・・・19090号さんならある程度の相手は倒せますね」

19090「ですが・・・魔術に関しては全くの素人です」

上条「対抗策もないからな・・・」

19090「できれば、お義兄様も手伝っていただければ・・・」

上条「あぁ、もちろん」

エツァリ「・・・御坂さんがいると思われる部屋は二階ですね」

上条「・・・一階にはあまり護衛がいる感じはしないが・・・」

19090「・・・相手も、おそらくは我々を警戒していますよ?」

上条「・・・戦闘は避けられないな」

エツァリ「・・・落ち合うのはどうしますか?」

上条「美琴を救い出せたら・・・そうだな、俺達が外へ向かう」

エツァリ「分かりました・・・そうしましょう」

19090「・・・一番の問題は、我々が追い込まれることですね」


505 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:32:41.37 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・土地の利は向こうにある」

エツァリ「逃げ続けなければなりませんよ」

19090「・・・相手側で警戒するべき人物は?」

上条「最大主教、ステイル・・・あとは神裂、そしてアニェーゼ部隊とシェリーだろうな」

19090「そうですね・・・」

コンコン、と突然地下室のドアがノックされた

上条「オリアナか?」

オリアナ「えぇ、面白い情報が入ったわよ」

上条「情報?」

オリアナ「君達にとっては朗報かしら」

19090「?」

オリアナ「天草式がイギリス清教に反抗したのよ」

上条「本当か!?」


506 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:35:24.32 ID:Uw8LpUWH0
オリアナ「それを抑えるために神裂火織が迎え撃った・・・らしいのだけど」

上条「らしい?」

オリアナ「どうやら、イギリス清教にまだ帰還していないみたいなのよ」

エツァリ「まだ鎮圧が終わっていないだけでは?」

オリアナ「鎮圧に向かったのはちょうど半日前・・・遅すぎると思わない?」

上条「・・・いくら天草式でも、神裂が相手なら・・・」

19090「じゃ、じゃあ・・・」

オリアナ「昔の仲間になら、説得されるんじゃないかしら」

上条「!神裂は味方になったと考えていいのか!?」

オリアナ「それはないわよ、インデックスって子は人質になってるんでしょ?」

上条「あぁ・・・神裂も派手には動けないのか」

エツァリ「でも敵でなくなっただけで十分ですよ」

上条「そうだな・・・」


507 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:37:50.63 ID:Uw8LpUWH0
19090「・・・となると、こちらにも余裕が生まれますね」

オリアナ「ただ・・・どちらにしろ、君達が不利なのは変わらないわ」

上条「分かってるさ」

上条が頬杖をつく

上条「・・・でも、問題はそこじゃない」

オリアナ「・・・何?」

上条「・・・あまりにもことが上手く運びすぎなんだよな・・・」

エツァリ「・・・そうですね・・・」

上条「だってさ、最大主教って相当ずるがしこいんだろ?」

オリアナ「それはよく分かってるでしょ」

上条「それにしては・・・なんだか、用心が・・・」

19090「・・・我々を誘っているのでは?」

上条「・・・それでも、美琴は助けなきゃならない」

エツァリ「その通りですね」


508 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:40:39.61 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・作戦まであと半日だ」

オリアナ「準備は終わったの?」

19090「えぇ、終わりました」

エツァリ「あとは・・・天命を待つだけです」

オリアナ「そう、じゃあゆっくりくつろいで少しでも緊張を解きなさい」

上条「そうするよ」

19090「・・・」

エツァリ「さぁ・・・そろそろ始まりますよ」

上条「あぁ、分かってる」

右手を天井に向け、上条が笑う


上条「・・・俺達で、あの幻想をぶち殺してやる!」

19090「はい!」

エツァリ「もちろん!」


509 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:43:33.98 ID:Uw8LpUWH0

「・・・ひどいな」

ブラックマンが若かりし頃

ある事件が起きた

それは、歴史の中では小さすぎるほどの事件

だが、彼の人生の中では大きすぎた事件

彼はイギリスの中心から外れたところにある、小さな町に住んでいた

そこの人々は、十字教を信仰していなかった

特定の宗教に属さず、ただ毎日をしっかりと生きていく

普通の人間からすれば、本当に普通の生き方

だがそれを快く思わないものもいた

ブラック(・・・だが・・・だが、これは・・・)

そう、イギリス清教だった


510 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:46:03.56 ID:Uw8LpUWH0
彼らからすれば、少しでも信者を増やしたかったのだろう

だからこそ、小さな町にも全力で宣教に来た

ブラックマンとその妹はそれに心を動かされ、イギリス清教の教えを学んだ

ブラックマンは神父になった

そして、その妹もすぐシスターになるはずだった

だが、それは叶わなかった

ブラック「どこだ・・・」

妹の姿は見えなかった

町が、燃えていたのだ

魔術による炎だろうか

そこら中に、燃えた家の残骸が残っている

ブラック「どこだ!?どこだ、リサ!!!」

妹の名前を何度も呼ぶ

それでも、返事はなかった



511 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:48:45.70 ID:Uw8LpUWH0
ブラック「くそ・・・どこだ!?」

ブラックマンは探し続けた

しかし、町を歩いても妹は見つからなかった

そこにあるのは、平和な日常の残骸

家は崩れ、店は潰され

何人かの死体が転がっていた

腐臭と、建物の焼ける匂いが立ち込めている

つい、鼻を塞ぎそうになるほどに

ブラック(・・・私が・・・私が離れていなければ・・・)

もしも、もしもあの時自分が傍にいれば

ブラック(・・・どうして・・・)

神は自分達を助けてくれないのだろうか


ブラック「リサ!!!リサ!!!!!!!!!」


512 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:51:02.98 ID:Uw8LpUWH0


ブラック(・・・過去のことだ、もう・・・思い出すのも懐かしいほどに)

時刻は夕方の5時

ブラックマンは、聖堂の中にある治療室でただ横になっていた

騒ぐこともしない

彼は、ただの「異端者」ではなかったのだ

ブラック(・・・イギリス清教の思いのままに・・・私も操られるのだろうかね)

禁書目録の知識を植えられ

そして、魔術装置となって

ブラック(それだけは御免だ)

あの事件から

彼は、ずっとイギリス清教を憎んでいた

ブラック(・・・今のイギリス清教を・・・滅ぼさなければならない)

それが、彼の魔法名の由来だった


513 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:53:30.59 ID:Uw8LpUWH0
誰もが力に反抗することはない

誰もが、ただ権力の前で口を塞ぐ

そうして生まれた、薄気味悪い静寂

誰かがそれを穿たなければならない

ブラック(・・・だからこそ・・・私がやらなければならない)

昔のイギリス清教を知ってる彼が

そして、今のイギリス清教を憎んでいる彼が

ブラック(イギリス清教を弾圧したと言われても構わない)

ブラック(後の汚点になろうとも・・・今は、私の最大の目的なのだ)

それで自分が死ぬのなら、本望だとさえ思っていた

ブラック(・・・さぁ、最大主教よ・・・死の舞踏を私は踊っているぞ)


ブラック(お相手を願いたいものだな)


514 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:55:51.19 ID:Uw8LpUWH0

テクパトル「・・・ショチトル」

ショチトル「なんだ?何か飲み物・・・」

テクパトル「・・・おそらく今日だ」

ショチトル「・・・なに?」

テクパトル「・・・ブラックマンの傷が治ってしまってからでは、遅い」

ショチトル「待て、何の話だ」

テクパトル「上条たちが動くのは今日だ」

ショチトル「!!」

ベッドの上で、テクパトルが笑う

テクパトル「・・・それに、昨日の夜・・・神裂が遠くで交戦していたようだぞ」

ショチトル「あぁ、聖人レベルの魔力を感じたが・・・だが、それも少しの間だった」

テクパトル「・・・今イギリス清教は、そちらの敵にも気を取られているはずだ」


515 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 10:57:47.66 ID:Uw8LpUWH0
ショチトル「・・・あぁ」

テクパトル「ならば、上条たちは今から行くはずだ」

ショチトル「あいつらが・・・イギリス清教の情報を持っているのか?」

テクパトル「・・・フリーの魔術師と手を組んでいるんだよ、上条は」

ショチトル「なに?」

テクパトル「情報を仕入れることくらいは無理じゃないさ」

ショチトル「・・・なるほど」

テクパトル「イギリス清教の聖堂はここからそう遠くはない」

ショチトル「・・・行ってくる」

ショチトルが上着を羽織る

テクパトル「そうだ、ショチトル」

ショチトル「・・・なんだ?」

テクパトル「・・・一つ、頼みがある」


516 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:00:05.51 ID:Uw8LpUWH0
ショチトル「・・・なんだ」

テクパトル「お前は陽動に出るエツァリ護衛に向かうんだろう?」

ショチトル「・・・あぁ」

テクパトル「・・・ならば中の手助けまでは出来ないはずだ」

ショチトル「・・・それで?」

テクパトル「・・・お前も、回復魔術は使えるだろう」

ショチトル「・・・少しなら」

テクパトル「俺の傷を塞いでくれ、完全にだ」

ショチトル「!!お前・・・」

テクパトル「なに、男なら格好をつけたいじゃないか」

ニヤリ、とテクパトルが笑う

その顔は、かつてのテクパトルのものにそっくりだった


テクパトル「・・・久々の・・・殲滅戦だよ」


517 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:01:58.84 ID:Uw8LpUWH0
建宮「・・・我々は」

神裂「行くしかありません」

五和「・・・建宮さんは・・・」

建宮「なら俺も行くのよな」

対馬「何言ってるの!!」

建宮「仲間はずれはイヤなのよな」

神裂「・・・着いてこれますか?」

建宮「当然」

五和「・・・無理はしないでくださいね」

建宮「当たり前だ・・・」

神裂「・・・ではみなさん、行きましょう」

五和「・・・はい」


神裂「我々は天草式十字清教!!」

建宮・五和・対馬「救われぬ者に救いの手を!!!」


518 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:03:54.20 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・さて、もうすぐだな」

19090「・・・お姉様を助けましょう」

エツァリ「出来れば・・・誰も傷付けずに」

オリアナ「・・・私はここで紅茶を淹れて待っておくわね」

上条「・・・ありがとよ」

19090「・・・テっくんの分は、また後です!」

エツァリ「今の敵は、イギリス清教です!」

上条「よし!!」

三人が気合を入れる


上条「・・・行くぞ、美琴を助けに!!!」

エツァリ「そして、平和な日常を取り戻しに!!」

19090「・・・必ず、生きて戻ります!!!」


519 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:05:37.49 ID:Uw8LpUWH0
美琴(・・・何?なんだかピリピリして空気が伝わってくる・・・)

美琴(何かあったのかしら・・・)

美琴(・・・ブラックマンが逃げ出した?何か別の問題が発生した?)

美琴(・・・何なのかしら・・・)

美琴(怖い・・・何があったの・・・?)


美琴(当麻・・・)



イン(・・・騒がしくなってきたんだよ)

イン(何かあったのかな・・・?)

イン(かおりも・・・ステイルも・・・誰も来てくれないんだよ・・・)

イン(誰も・・・)

イン(どうして・・・)


イン(私・・・また一人ぼっちなんだよ・・・)


520 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:07:55.62 ID:Uw8LpUWH0

アニェーゼ「・・・神裂さんは・・・帰ってきませんでしたね」

ルチア「彼女らしいですよ」

アンジェレネ「あ、あの・・・シスターオルソラは?」

シェリー「天草式の人間は温厚だ、安心しな」

ルチア「今は・・・イギリス清教の敵を殲滅するだけです」

アニェーゼ「ぶっちゃけ、私たちがブラックマンを味方につけてもいいんですけどね」

ルチア「そして・・・ローマの教えをイギリスに・・・」

アニェーゼ「ふふ・・・ふふふふふふ・・・」

ルチア「はは・・・はははは・・・」

アンジェレネ「い、今はそんなことを・・・」

シェリー「はぁ・・・芸術的な戦いにしてやろうじゃない」

アンジェレネ(・・・不安です・・・)



521 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:10:16.80 ID:Uw8LpUWH0

ステイル(・・・おそらく、彼らは今日・・・やってくる)

ステイル(神裂は・・・どう来るか)

ステイル(・・・天草式が来るだろうな)

ステイル(・・・そちらはアニェーゼ部隊に任せればいいか)

ステイル(問題は上条当麻だ)

ステイル(・・・彼だけは・・・僕が止める)

ステイル(・・・インデックスの命を、僕が守らなければならない)

ステイル(あの子の無事だけは・・・保証されるのだから)

ステイル(・・・最大主教、あなたの考えに従いたくはない)

ステイル(それでも、僕は彼らと戦う)

タバコの煙に、少しだけ目を細くする


ステイル(さぁ・・・そろそろだよ、上条当麻)


522 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:12:10.40 ID:Uw8LpUWH0

ブラック(・・・時が来るまで・・・眠っていよう)

またあの夢を見るのに

ブラック(・・・もしかしたら救いなどないのかもしれないな)

また思い出してしまうのに

ブラック(・・・リサ)

もう、忘れてしまった妹の声を

ブラック(・・・なんだろうな、私を突き動かすのは)

顔も、もうほとんど思い出せない

ブラック(・・・怒り?悲しみ?憎しみ?)

もう、思い出せない


ブラック(そうか・・・)

ブラック(・・・私は、もう理由など無くしているのだな)


523 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:14:14.12 ID:Uw8LpUWH0

ローラ「さて、始まるわね・・・」

椅子に座りながら紅茶を飲む

それがローラの日課だった

しかし、今は紅茶がいっそう美味しく感じられる

ローラ「・・・楽しい戦いになりそうよ」

荷物は纏めている

最悪、この聖堂が破壊されても構わない」

聖堂など、すぐに建てられるのだから

ローラ「ふふ・・・やっと、やっと面白い戦になりそうよ」

久しぶりの、面白い戦に

ローラ「クイーンは私、キングはブラックマン・・・」


ローラ「いえ、幻想殺しかもしれないわね」



524 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:15:46.48 ID:Uw8LpUWH0
ゆっくりと

しかし確実に、不協和音は速くなっていく

奏でているのは悲しき人々

指揮をするのは最大主教

歌うのは悪魔

聞くのは神

そして

それを止めるのは、上条当麻

たった一人の正義を

その、たった一つの正義を

待っている少女がいる

信じている少女がいる

そして


物語は、少しずつ

終わりへと向かっていく


525 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:31:48.79 ID:Uw8LpUWH0

上条「・・・そろそろ向かうか」

19090「はい」

エツァリ「そうですね・・・」

三人がオリアナの隠れ家から出ようとする

オリアナ「あぁ、ちょっと坊やは待ってくれない?」

上条「?俺か?」

オリアナ「そうそう」

上条「あぁ・・・」

19090「では、外で待っていますね」

二人だけが先に外へ向かう


上条「・・・なぁ、なんなんだ?」

オリアナ「・・・お姉さん、ちょっと言いたいことがあって」

上条「なんだよ」

オリアナ「・・・無理をしないで」


526 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:34:44.02 ID:Uw8LpUWH0
上条「?それは分かってるけど・・・」

オリアナ「君が傷ついたら、お姉さん泣くわよ」

上条「う・・・脅迫かよ」

オリアナ「・・・真剣に聞いて頂戴・・・」

上条「・・・あぁ」

オリアナ「君が私を救ってくれてから・・・お姉さんは変わったのよ」

上条「・・・」

オリアナ「君に人生を変えてもらったのよ、真剣に言ったらね」

上条「そうか」

オリアナ「・・・君が・・・お姉さんの人生を、変えてくれたのよ」

上条「・・・そうか、それだけなんだろ?」

オリアナ「そ、それだけって・・・」

上条「俺は別に、お前の人生を変えようと思ってたわけじゃない・・・ただお前を救いたかっただけさ」

オリアナ「!」



527 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:37:03.06 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・そして、俺は美琴を助けに行く」

オリアナ「・・・」

上条「だとしたら、俺は止まらないさ」

オリアナ「君は本当に・・・」

上条「馬鹿だろ?」

オリアナ「・・・それと、素敵よ」

上条「・・・素敵な馬鹿、か」

上条が笑う

自分にそれほどぴったりな言葉はないだろう

上条「・・・オリアナ、ありがとう・・・お前には少しだけど世話になったよ」

オリアナ「出来れば・・・また、今度は彼女さんも連れてきてちょうだいね」

上条「約束するよ」

二人が握手をする


528 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:39:11.42 ID:Uw8LpUWH0
上条「・・・行ってくる」

オリアナ「ねぇ坊や」

上条「・・・上条だってば」

オリアナ「・・・上条君」

上条「なんだよ」

オリアナ「・・・お姉さんね」


オリアナ「もしかしたら、君のことが好きかもしれないわ」

上条「そうか、俺も嫌いじゃないよ」

オリアナ「・・・」

上条「でもな、所詮はそれだけさ」

上条「俺は美琴しか愛せないし、それ以外の女は興味がない」

上条「・・・それほど大切な人なんだ、命を懸けてもいいだろ?」

オリアナ「・・・君は本当に・・・」

上条「素敵な馬鹿だろ」



529 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:43:05.38 ID:Uw8LpUWH0
オリアナ「それじゃ、がんばってね」

上条「おう」

上条が外へと向かう

少し肌寒い空気が彼を包む

上条「・・・」

19090「・・・いいんですか?」

上条「あぁ、寒いからさっさと帰ってきて紅茶が飲みたいな」

エツァリ「では、急ぎましょうか」

上条「・・・どうやって向かう?」

19090「そうですね・・・歩きますか?」

上条「うえ・・・体力使いそうだな・・・」

エツァリ「ではどうしましょうか・・・」


オリアナ「はいはーい、僕達」

上条「あれ?オリアナ、どうしたんだよ」


530 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:45:01.86 ID:Uw8LpUWH0
オリアナ「別に、お姉さんはお姉さんのしたいことをするだけよ」

上条「な、なんだよそりゃ・・・」

19090「・・・あの、車の鍵なんか持ってどうするんですか?」

オリアナ「そうね・・・」

オリアナが空を見上げる

もう、月がうっすらと浮かんでいる

オリアナ「こんな綺麗な星空の夜は、ドライブでもしたくなっちゃうじゃない」

エツァリ「・・・」

オリアナ「そうね・・・」


オリアナ「聖堂までドライブ行くつもりなんだけど、君達も着いてくる?」

上条「!あぁ!!」

三人がオリアナに着いて行く

オリアナ(はぁ・・・ま、これくらいのボーナスはいいわよね)


オリアナ(恋する乙女は強いのよ)



531 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:49:50.66 ID:Uw8LpUWH0

建宮「・・・女教皇」

神裂「・・・なんですか」

建宮「インデックスが人質に取られている以上・・・あなたは自由には動けない」

五和「ですから、我々が出来る限り・・・」

神裂「・・・お願いしていいですか」

対馬「さて・・・どうしますか?」

四人は、聖堂の近くの建物に潜んでいた

今は、まだ作戦を開始するには早いだろう

建宮「・・・上条たちは、今晩来るのか?」

五和「・・・そう考えるしかありません」

建宮「・・・そうだな」

対馬「・・・上条さんたちは、少ない戦力で戦うつもりよ」

神裂「なら、我々が少しでも手伝いましょう」

建宮「了解」


532 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 11:58:21.84 ID:Uw8LpUWH0
神裂「・・・建宮」

建宮「なんなのよな」

神裂「・・・まだしばらく、時間がありますよ」

建宮「?」

神裂「・・・久しぶりに、あなたのくだらない話が聞きたくなりました」

建宮「・・・」

五和「・・・そうですね、今日はなんだか私も聞きたい気分です」

対馬「私も聞くわよ」

建宮「じゃあ・・・そうだな、俺の願望でも聞いて欲しいのよな」

神裂「願望?」

建宮「俺は・・・もっと、女教皇と一緒にいたい」

神裂「・・・」

五和「建宮さん・・・」


533 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 12:07:23.57 ID:Uw8LpUWH0
建宮「もちろん、五和や対馬や・・・他のみんなとも」

建宮「・・・くだらないかもしれないけどな」

建宮が笑う

視線の先には、イギリス清教の聖堂がある

建宮「・・・だから、俺は絶対に最大主教を許さない」

建宮「・・・俺の願いを叶えるために」

神裂「私も・・・その願いを、叶えたいですね」

五和「私も協力しますよ」

対馬「全く・・・くだらない話じゃないですね」

建宮「・・・ありがとう、みんな」

神裂「・・・そろそろですね」

建宮「あぁ」


神裂「・・・我々は・・・我々を救います」

建宮「了解なのよな」



534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/25(火) 12:22:01.14 ID:cB0EMaQAO
姉さんにまでフラグが(笑)
535 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 12:44:49.35 ID:Uw8LpUWH0

上条「・・・時刻は」

19090「・・・夜の8時です」

エツァリ「・・・オリアナさん、お世話になりました」

オリアナ「そうそう、作戦が終わったらまた来てよね」

上条「ありがとよ・・・絶対行くからさ」

オリアナ「・・・それじゃ、がんばってね」

ウィンクをしてから、オリアナが車を走らせる

上条「・・・もう、戻れないぞ」

エツァリ「ならば進むだけですね」

19090「・・・緊張します」

上条「もう少しだ・・・もう少しで始まるんだ」

エツァリ「・・・天草式の方々は・・・」

上条「どこかで見てるはずだ」

上条がぐるりと辺りを見回す


536 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 12:47:31.23 ID:Uw8LpUWH0
エツァリ「・・・御坂さんのいると思われる部屋までは、おそらく走って5分程度です」

上条「何事もなければ、な」

19090「・・・エツァリさん、ご武運を」

エツァリ「任せてください」

エツァリが黒曜石の槍を取り出す

エツァリ「・・・上条さん、19090号さん」

19090「・・・分かっています」

上条「・・・美味い紅茶が飲めるんだ、がんばろうぜ」

エツァリ「えぇ」

上条「・・・現在時刻・・・20時03分」

19090「では・・・」

三人が聖堂を見つめる


上条「作戦、開始」


537 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 12:52:53.62 ID:Uw8LpUWH0

エツァリ「・・・いきますよ」

エツァリが槍を構える

空には、金星の姿がうっすらとだけ見える

それで十分なのだ

槍に当たった金星の光は、全てを壊す光線となる


エツァリ「トラウィスカルパンテクートリ!!」

バギン、と音がして聖堂の門が壊れる

「な、なんだ!?」

「く・・・襲撃だ!!!」

「敵は・・・」

エツァリ「させませんよ!!」

槍の光線によって、正門を完全に破壊する

エツァリ(・・・さすがに門までは結界を張っていなかったようですね)


538 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 12:55:56.07 ID:Uw8LpUWH0
「くそ!!最大主教に伝達だ!!」

「は、はい!!」

エツァリ(・・・よし、一人だけしか中には向かいませんでしたね)

「お前・・・一人でこの聖堂を破れるとでも!?」

エツァリ「おや、ではやってみせましょうか?」

黒曜石の槍が怪しく光る

エツァリ「さぁ・・・戦いましょう、互いの威信を賭けて」


神裂「!!動きがありました!!!」

五和「・・・私達はどうしますか?」

対馬「・・・正面はあの魔術師がどうにかしてくれてるわよ」

建宮「ならば前のほうから行く必要はない」

神裂「裏手から回りましょう!!」



539 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 12:58:49.02 ID:Uw8LpUWH0
上条「行くぞ!!」

19090「はい!」

エツァリが正面を守っていた魔術師を引きつけている

なら、その隙に正面から入るしかない

見つかるリスクは高いだろう」

だが最大主教はおそらく、二人の存在に気づいている

ならば

上条(わざわざ怯えて隠れる必要はない!!)

19090「行きますよ!!」

見張りのいなくなった正門から、二人が突っ込んでいく

それを見つめるのはただ一人


ローラ「やはり来たわね・・・幻想殺し」

ローラ「・・・ステイル、聞いている?」


540 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 13:01:20.44 ID:Uw8LpUWH0
ステイル「もちろん」

ステイルが後ろから返事をする

彼は、ルーンのカードを建物の中に張り巡らせていた

彼の得意とする拠点防衛

仕込めば仕込むほど、その罠は力を増す

ステイル(・・・天草式の協力があれば・・・地脈も使えるのだがね)

ローラ「・・・想定どおり、正面からやってきたわよ」

ステイル「馬鹿正直ですからね」

ローラ「・・・インデックスの部屋の回りでもうろついていなさい」

ステイル「いや、彼らはまず御坂美琴の部屋に向かうはずだ」

ローラ「あら、知っているのかしら?」

ステイル「当たり前でしょう?」

ステイルがローラのほうを振り向く


ステイル「上条当麻と御坂美琴は繋がっているんですよ、分かって当然だ」


541 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 13:04:33.00 ID:Uw8LpUWH0
エツァリ「・・・どうしました?その程度ですか」

エツァリは一人、笑っていた

イギリス清教の護衛だからと少しは警戒していた

しかし、全くもって実力が伴っていない

こんなもの、急造だからという言い訳でさえフォローはできない

「・・・」

エツァリ「さぁ、あなた方の力を見せてください」

「・・・ふふ、聖堂の近くではあまり派手には使えないのだよ」

エツァリ「・・・何?」

「これは・・・威力が高すぎるからね」

魔術師の一人が、何かを取り出す

長い剣だ

エツァリ「それは・・・」

「竜殺し・・・ジークフリートの剣さ」

エツァリ「!!バルムンク!?」


542 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 13:06:42.08 ID:Uw8LpUWH0
「何、オリジナルではないのだよ」

エツァリ(・・・デザインを似せ、そこに強制的に魔術で力を・・・)

「だが、レプリカでもオリジナルの数%の力は宿るだろう?」

魔術師が笑う

「最大主教もなかなか面白いものを下さる」

エツァリ「くっ・・・」

「イギリス清教がこれを振るうのはどうかと思ったが・・・なに、問題はないだろう?」

竜を殺したほどの剣

その切っ先が、エツァリへと向かう

「さて、君は私を倒せるか?」

エツァリ「やらなければならない!!」


二人の武器が交差する

不気味な光が、闇を照らした


543 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 14:44:33.63 ID:Uw8LpUWH0

上条「・・・19090号、そっちは?」

19090「今のところ・・・敵はいません」

二人は背中合わせになりながら進んでいた

正面から入る、という強攻策だった

しかし、なぜか他の護衛とは一人も遭遇していない

上条(おかしい・・・俺達の襲撃を予想してなかった?)

上条(まさかな・・・となると)

護衛など、そこまで割かなくても十分だということだろうか

上条(・・・一階はこのままいけるか?)

すでに二階へと上がる階段までは近づいている

19090「!お義兄様!!」

上条「どうした?」

19090「あ、あれ・・・」

上条「・・・」



544 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 14:47:38.89 ID:Uw8LpUWH0
上条がくるりと振り返る

その先にいたのは、一人の魔術師だった

それも、二人がよく知っている

シェリー「・・・本当に正面から来るとは思わなかったな」

上条「シェリー・・・」

シェリー「・・・別に私はイギリス清教に従いたいわけじゃない」

シェリが何かを地面に書き記す

その途端、床の一部が盛り上がっていく

上条「!!エリスか!」

シェリー「たださ・・・私は今の生活に満足してるんだ」

巨大なゴーレムがシェリーの隣に立ち尽くしている

シェリー「それを壊すことは許さないわよ」

上条「・・・どうしても引いてはくれないのか?」

シェリー「当然」


545 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 14:49:56.29 ID:Uw8LpUWH0
19090「くっ・・・」

19090号が麻酔銃を構える

だが、シェリーの前にエリスが立ち塞がる

19090「・・・」

シェリー「銃だろうとなんだろうと・・・こいつにはそんなもの、効かないわよ」

上条「くそっ!!」

上条がエリスの元へと駆け出す

シェリー「エリス!!」

咆哮を上げながら、エリスが地面へその拳を叩きつけた

上条「おわっ!!」

地響きが、上条の脚を掬う

上条「くっそ・・・!!」

シェリー「勘違いしないでね」

エリスの拳は、上条の真上にあった


シェリー「私はお前を殺すつもりだから」


546 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 14:52:45.11 ID:Uw8LpUWH0
上条「く・・・」

上条が右手をエリスにぶつける

その瞬間、エリスの体が砕け散る

シェリー「ちっ・・・エリス!!」

シェリーの声と共に、再びエリスが形を取り戻す

上条(これじゃ埒が明かない!!!)

上条の苦手とするのは、核に攻撃しない限り倒せないタイプの敵だ

イノケンティウスや、エリスのようにすぐさま形を取り戻すものと戦うには不利なのだ

シェリー「どうするの?」

上条「19090号!退くぞ!!」

19090「は、はい!!」

階段は上条たちのすぐ後ろにある

わざわざエリスと戦う必要はないのだ



547 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 14:55:04.21 ID:Uw8LpUWH0
シェリー「・・・そんなに簡単に行かせてたまるか!!」

エリスの動きは鈍い

だが、一歩一歩が大きいため簡単に追いつかれてしまう

上条(くそ・・・頼む、あと少しなんだ!!!)

上条が後ろを振り向く

ちょうど、19090号は上条を追いかける形で走っている

さらにその後ろにはシェリーとエリス

上条「・・・お前はなんで戦うんだよ!?」

シェリー「言ったでしょ、この日常が好きだって」

上条「それでも!!最大主教は間違ってる!!!」

シェリー「お前からしたら、の意見よ」

シェリーが眉をひそめる

シェリー「正義など主観なしには語れないじゃない」


548 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 14:57:46.99 ID:Uw8LpUWH0
上条「それでも・・・」

シェリー「御託はいいじゃない」

エリスの拳が、19090号のすぐ後ろを掠める

19090「くっ・・・」

シェリー「・・・私は大衆を守ることこそ正義だと思っている」

上条「そんなつまんない正義があるかよ!!」

シェリー「私からしたらお前は悪なのよ」

上条「あぁそうかよ!!」

シェリー「・・・話し合いで解決しようなんて思ってないわよ」

上条「ちっ・・・19090号、急げ!!!」

19090「も、もう少し・・・」

上条「!階段だ!!!」


549 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:01:43.64 ID:Uw8LpUWH0
上条が一段目に足をかける

上条「19090号!!早く!!」

19090「くっ・・・」

シェリー「・・・行かせないって言ってるだろうが!!」

エリスが拳を振り上げる

上条「!!19090号!!!」

19090「行ってください、お義兄様!!!!」

上条「!!」

19090号の後ろでは、エリスが拳を振り上げている

このままでは、どちらにしろ階段を破壊されてしまう

19090号は階段を上る前に


上条「くそ・・・」

上条が階段を降りようとする


19090「行って下さい!!!!」

上条「!」



550 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:04:53.31 ID:Uw8LpUWH0
19090「お姉様を・・・頼みます!!」

上条「19090号!!!」

19090「あなたが守らなければならないんです!!」

上条「・・・」

上条が駆け出す

上条「くそ・・・待ってろ、きっと助けに・・・」

駆け上がりながら、後ろを振り返る

だがそこには、もう先ほどまでの光景はなかった

エリスの巨大な拳が、辺り一面を叩き潰していたのだ

上条「・・・ウソだろ・・・」


上条「19090号!!!」

階段を降りることは出来ない

いや、階段などもうないのだ

上条「ちくしょう・・・ちくしょう!!!!!!!!!!!!!!」



551 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:07:57.79 ID:Uw8LpUWH0
振り返ることは出来なかった

19090号は生きていると信じるしかなかった

ただ、彼は走った

彼は




エツァリ「・・・ごほっ・・・」

エツァリの口から、血が流れ出す

「さぁ、どうした?」

エツァリ「・・・バルムンク・・・相当の威力だとは思っていましたが・・・」

「これほどとは思わなかったか?」

エツァリ「・・・」

エツァリの体には、大した傷はなかった

そう、バルムンクの攻撃は一度だけ

しかも、偶然柄の部分が腹に当たっただけなのだ

それでも、このダメージを受けている

エツァリ(・・・一度でも斬られたら・・・)


552 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:12:21.21 ID:Uw8LpUWH0
「さぁ・・・どうするんだね?」

エツァリ「・・・あなたは、それをどうするつもりですか」

「何?」

エツァリ「レプリカを持って・・・それで、ジークフリートになったつもりですか?」

「ふん、お前にはどうでもいいことだ」

魔術師がバルムンクを振るう

風が、エツァリの頬を斬る

エツァリ「くっ・・・」

トラウィスカルパンテクートリが魔術師を狙う

だが、その攻撃は一直線なのだ

体を動かされたら、修正が効かない

「はは!!そんな攻撃で我々を相手にするつもりだったのか!!」

エツァリ「・・・あなた方には分かりませんよ」

「分かる必要があるかい?」


553 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:14:49.16 ID:Uw8LpUWH0
エツァリ「・・・くっ・・・」

「・・・申しわけないが、ここで死んでくれ」

魔術師がバルムンクを振りかぶる

エツァリ「そんな願いは・・・」

エツァリが後ろに退こうとする

だが、その脚がなぜか動かない

エツァリ(!?)

「・・・我々は複数だ、一人が攻撃・・・残りが増援だ」

エツァリ「魔術で拘束・・・」

「そんな分析をしているヒマがあるのかね?」

ニヤリ、と魔術師が笑う

エツァリ(くっ・・・地面に拘束するタイプか・・・それとも・・・)

「さらばだ、魔術師よ」


554 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:19:27.65 ID:Uw8LpUWH0
魔術師がその切っ先をエツァリに合わせる

「残念だよ、君の名も聞かぬ前に殺すのだから」

エツァリ「・・・」

エツァリが槍を握る

だが、その攻撃は修正に時間が掛かる

「・・・ではな」

ブン、と音がしてバルムンクが振り下ろされた

エツァリ(・・・ここまでですか・・・)


「ぐぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

エツァリ「!?」

だが、エツァリの首は繋がっていた

それどころか、魔術師の手に大きな穴が開いていたのだ

エツァリ「な、なんですか・・・?」

「貴様何をしたぁ!?」


555 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:24:09.55 ID:Uw8LpUWH0
エツァリ「自分では・・・」

「くそ・・・くそ!!」

魔術師の手からどんどん血が溢れ出る

「だ、誰だ!?」

「増援か!?」

エツァリ(増援・・・?誰が・・・)


ショチトル「危なかったな、エツァリ」

エツァリ「!!ショチトル!!」

ショチトル「全く、一人で大勢を相手にするとはな」

「貴様、なんだ!?」

ショチトル「・・・なぁに」

ショチトルが黒曜石の槍を差し出す

「!!」

ショチトル「ただの魔術師だよ、とびっきり最悪のな」


556 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:28:01.15 ID:Uw8LpUWH0

神裂「・・・やはり、裏にはあまり護衛がいませんね」

建宮「・・・そうなのよな」

五和「・・・どうしますか?入ったほうが・・・」

対馬「中で待ち伏せってのも考えられるわよ」

五和「それは・・・」

建宮「・・・ん?あれは・・・」


アニェーゼ「・・・全く、本当に攻めてくるなんて思ってませんでしたよ」

ルチア「・・・ですが、正面からというのは・・・」

アンジェレネ「そ、それは・・・意外でしたね」

アニェーゼ「・・・大体、私達もドンパチやりたいですよね」

ルチア「シスターアニェーゼ・・・」

アニェーゼ「・・・こんな見回りとかやってられないですよ」


557 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:33:53.74 ID:Uw8LpUWH0

神裂「・・・どうしますか」

建宮「・・・見回りだと、いずれは正面へも回るはずだ」

五和「そうなったら・・・エツァリさんたちが・・・」

神裂「・・・行きましょうか」

対馬「仕方ないわね・・・」

四人がアニェーゼ部隊の前へと向かう

天草式はわずかに四人

一方のアニェーゼ部隊は100人近い


アニェーゼ「!!あ、天草式!」

建宮「やっほー!!宣言通りやって来たのよな!!」

ルチア「か、神裂さん・・・」

神裂「・・・もう私は決めました、私の正義は私の中にあります!」


558 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:37:30.06 ID:Uw8LpUWH0
アンジェレネ「シスターアニェーゼ・・・!」

アニェーゼ「ちっ・・・みなさん、やっちまいますよ!!」

部隊の全員が構える

建宮「・・・俺達をナメたらいけないのよな」

神裂「・・・三人とも」

五和「なんですか」

神裂「・・・背中を任せてもいいでしょうか」

対馬「もちろん」

建宮「行くぞ天草式!!!」

五和「ここが正念場です!!」

アニェーゼ「やれるものなら!!」

二つの勢力がぶつかり合う

互いの信じるものを胸に抱えて


559 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:43:40.51 ID:Uw8LpUWH0


19090「ごほっ・・・」

19090号が地面から立ち上がる

エリスの拳は非常に大きかった

だが、それゆえに少々の死角というものは生まれている

その間に潜り込めば、一撃は避けられるのだ

19090「う・・・」

シェリー「へぇ、ただの女の子だと思ってたら」

19090「!!」

シェリー「やっぱりここまで来る度胸があるだけはあるわね」

19090「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

シェリー「あら、相当集中してたみたいね・・・」

19090「・・・残念でしたね、お義兄様は・・・二階へと向かいました」

シェリー「・・・そうね」


560 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 15:48:07.68 ID:Uw8LpUWH0
シェリーが少しだけ顔をしかめる

シェリー「出来ればここで止めたかったのよね・・・」

19090「・・・」

シェリー「二階にはね・・・人質がいるのよ」

19090「やはりですか」

シェリー「はぁ・・・それを助けられたら、イギリス清教としては辛いのよね」

シェリーが右手を上げる

19090「・・・お義兄様なら・・・やってくださいますよ」

シェリー「ふーん・・・そう」

エリスが、拳を上げる

19090(・・・美月だけでは・・・この人は倒せませんね)

19090号が目を閉じる

561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 20:07:30.08 ID:hCZ9jH4So
うおおおお寸止めぇぇぇええ
かれこれ四時間んんんん
562 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 20:14:45.35 ID:Uw8LpUWH0
いかん

スクライドのブルーレイが届いた

そしてそれを見ること4時間

気づけば夜だった

もうテレビに釘付けね☆


もしかしたら、今日はもう問うかはしないかもw

563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/25(火) 20:21:21.14 ID:cB0EMaQAO
何やってんすかwwww
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/25(火) 20:31:13.51 ID:HkUD6lEUo
スクライドふざけんなあああああああああああああ
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/25(火) 20:33:34.55 ID:gyyaqu6AO
スクライドなら仕方ないな、うん
566 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 20:35:44.49 ID:Uw8LpUWH0
目を閉じた彼女が聞いたのは

バキン、と何かが砕ける音だった

それに目を開けると、煙が目に入った

もっと言うと、粉塵だ

シェリーが驚いたような顔をしている

シェリー「だ、誰だ!?」

その声に反応するように、もう一度

今度は19090号も見ることが出来た

なにか光線のようなものが

そう、それは


「トラウィスカルパンテクートリ」


567 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 20:38:04.18 ID:Uw8LpUWH0
19090「・・・え・・・?」

誰かと思った

外から、壁ごとエリスの腕を吹き飛ばしたのだ

シェリー「誰!?」

エリスを再生しながら、シェリーが叫ぶ

19090号は、それが誰か見当をつけていた

19090「ショチトル!?ショチトルですか!?」

エツァリは表の陽動に出ている

ならば、ショチトルのはずだった

だが


「全く、ショチトルのヤツが予備の槍を持ってたとは・・・助かったよ」

聞こえたのは男の声だった

568 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 20:41:34.14 ID:Uw8LpUWH0
それは

ここに来れるはずのない男

怪我を負ってしまったはずの男

エツァリやショチトル以外に、唯一その魔術を使える男

そして

19090号が、誰よりも待っていた男

19090「・・・もしかして・・・」

シェリー「だ、誰なのよ・・・」

19090「テっくん・・・ですか・・・?」

テクパトル「よぉ・・・待たせたな、美月」

19090「どうして・・・」

テクパトルがニヤリと笑う

それが、19090号を安心させる




テクパトル「あまりに月が美しくてな・・・お前に会いたくなったんだ」





569 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/25(火) 20:42:58.72 ID:Uw8LpUWH0
さて、今日は本当にここまで

このスレもそろそろ熱いバトルにしてやるよ!!

なら何が足りない!?

熱さだ、熱さだろ!?

熱さが足りないんだ、そう思うだろ、アンタも!?

ならスクライド見直して熱さ補給だ!!!!!!!!!


クーガーかっけぇ!!

そしてかなみかわえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!

今日はここまで!!!


お前は今、泣いていい!!!!!!!!!!

ひゃっほー!!!



570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/25(火) 20:45:41.78 ID:cB0EMaQAO
乙!

テっくんの前で美月に攻撃しちゃったシェリーの運命は……
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/10/25(火) 20:45:48.98 ID:4YBYri9C0
>>1何やってんすか…(´;ω;`)ウッ
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/25(火) 20:54:16.07 ID:uw5Yw9Zfo
》570 そりゃあもう減点100000000…だろ
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/25(火) 23:15:51.76 ID:J1+3JR+jo
テッくんかっけぇ…
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/25(火) 23:25:50.34 ID:HkUD6lEUo
>>1乙ちょっとスクライド見てくる
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/25(火) 23:50:18.79 ID:ibkyaoBy0
テクパトルゥゥゥゥゥゥゥゥ
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 23:54:35.19 ID:RUtLDBj9o
いいねいいねェ 最高だねェ!
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/26(水) 03:25:34.40 ID:/2iYRhvIo
てかさこれってシェリー軽く死亡フラグ立ってね?
578 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:41:00.21 ID:E7YU24+i0
シェリー「・・・アステカの魔術師か」

テクパトル「テクパトルだ」

シェリー「へぇ・・・」

19090「テっくん・・・傷は」

テクパトル「下がってろ美月」

19090「でも・・・」

テクパトル「・・・お前の名前は」

シェリー「シェリーだ」

テクパトル「シェリーか・・・墓石に刻む名前は知っておかなければならなくてな」

シェリー「上等」

シェリーが腕を振る

エリスの拳が、テクパトルの真上から落ちて来る


579 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:41:42.56 ID:E7YU24+i0
テクパトル「美月、避けろ!」

19090「!」

19090号が後ろに飛びのいてかわす

テクパトルは、少し壁際に向かって逃げている

シェリー「威勢がいいわりに逃げるだけ?」

テクパトル「うるさいな」

シェリー「・・・何?」

テクパトル「お前は俺の癪に触ってるんだ、なぜか分かるか」

シェリー「知らないわよ」

テクパトル「3つ理由を教えてやろう」

シェリー「・・・」

テクパトル「一つは自分の意思を持っていないから」

シェリー「私は私の意思によって動いてる」


580 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:42:24.18 ID:E7YU24+i0
テクパトル「ならばなぜお前はそんなにつまらなそうな顔をしている」

シェリー「・・・」

テクパトル「一つは正義というものを履き違えているから」

シェリー「正義?吐き気がする言葉ね」

テクパトル「黙れ、貴様には信じる物さえないのだろ?」

シェリー「ちっ・・・」

エリスの拳が、テクパトルを壁ごと粉砕しようとする

テクパトルが避けたため、壁だけが破壊された

テクパトル「そして最後の一つ」

テクパトル「お前は俺の一番大切なものを傷つけた」

シェリー「・・・謝ったほうがいいか?」

テクパトル「何、謝られても困るさ」

テクパトルが握るのは黒曜石の槍だ


581 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:43:13.17 ID:E7YU24+i0
19090「ダメですテっくん!」

テクパトル「・・・」

19090「建物の中には金星の光が・・・」

テクパトル「だからわざわざ壁を壊させたんだよ」

シェリー「!?」

テクパトル「こうすれば・・・」

ギラリ、と槍が不気味に光る

そこに当たった金星の光が、破壊光線となってエリスの肩を砕く

テクパトル「金星もよく見えるだろう?」

シェリー「へぇ・・・でもエリスに攻撃しても・・・」

エリスの体が修復される

周りの瓦礫を使って回復しているのだ

シェリー「こいつは何度でも再生するのよ」


582 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:43:49.29 ID:E7YU24+i0
テクパトル「・・・なるほど、瓦礫を集めて回復か」

シェリー「・・・」

テクパトル「・・・そんなに睨んでくれるな」

シェリー「お前はどうしてイギリス清教に背く」

テクパトル「そんなもの、信仰などしていない」

シェリー「だとしても」

テクパトル「貴様の中には正義があるか?」

テクパトルが槍を構える

破壊光線は、何度もエリスを破壊する

その度にシェリーがエリスを回復させる

先程からその繰り返しだった

シェリー「あるわよ」

テクパトル「それを貫いているか?」


583 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:44:24.27 ID:E7YU24+i0
シェリー「・・・たまに曲げることもある」

テクパトル「今はどうだ、曲げてはいないか」

シェリー「・・・」

テクパトル「・・・正義とは何のためにある」

19090号の方をテクパトルが見つめる

テクパトル「破壊のためか?違うだろう」

シェリー「守るためだって?そんなに決め付けたりしないで」

テクパトル「ならば貴様の正義はなんだ」

シェリー「・・・私は平穏を・・・」

テクパトル「守りたいのだろう?」

シェリー「・・・」

テクパトル「・・・守るための正義だ」

19090「・・・テっくん」


584 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:44:58.15 ID:E7YU24+i0
テクパトル「・・・今はどういう状況だ?」

外ではエツァリとショチトルが

建物の中では、上条が

戦っているのだ

テクパトル「今は自分を曲げるべき状況なのか?」

シェリー「お前に何が分かる・・・私はみんなが平和でいられるなら・・・」

テクパトル「誰もが平和になるだと!?ふざけるな!」

シェリー「!」

テクパトル「先程お前は・・・俺の独りよがりな正義に吐き気がすると言ったな!」

テクパトルがシェリーの顔を睨みつける

槍の光線が、エリスの攻撃を阻む

テクパトル「だが俺から言わせれば、そんな理想こそ吐き気がする!」

シェリー「何が悪い!?そんな理想を抱いて何が悪い!?」


585 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:45:28.89 ID:E7YU24+i0
テクパトル「それを貫き通すための正義だろうが!」

シェリー「貫き通す・・・?無理なんだ!」

シェリーが声を荒げる

彼女には、とても大切な友がいた

だが、それは過去のことだ

友を失って初めて、彼女は平穏に憧れを持った

それまでは平穏が当たり前だったために

シェリー「・・・私は・・・もう辛い思いをしたくない」

テクパトル「・・・」

シェリー「甘えだと笑うか?」

テクパトル「・・・素直じゃないか」

シェリー「・・・そんな理想を抱いて・・・いけないのかしら」

テクパトル「・・・ならば見せてみろ、貴様の正義を」


586 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:46:02.61 ID:E7YU24+i0
シェリー「正義なんて名前はいらない!」

エリスがテクパトルの立っていた場所をえぐる

19090「テっくん!」

テクパトル「・・・名前などいらない、か」

シェリー「今度はお前に聞く!」

テクパトル「・・・」

シェリー「お前は何を守りたいの!?」

テクパトル「美月だ」

シェリー「そんなたった一人のために・・・」

テクパトル「・・・俺の世界に不可欠なのは美月だけだからな」

シェリー「・・・周りを見捨てると言うの!?」

テクパトル「周りか・・・俺にはそこまで見ている余裕がないからな」


587 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:46:43.45 ID:E7YU24+i0
破壊光線と、ゴーレム

撃ち抜く物と、潰す物

二つがぶつかり合う

テクパトル「・・・ならば、周りになど気を遣ってはいられない!」

シェリー「お前は・・・自分が幸せならそれでいいの!?」

テクパトル「幸せでなければ・・・世界など信じられはしない!」

シェリー「消えろ!」

エリスがより一層体の大きさを増す

天井まで、その頭は届いている

テクパトル「・・・哀れだな、シェリー」

シェリー「・・・答えろ」

テクパトル「・・・」

シェリー「お前の正義は何だ!?」

テクパトル「・・・俺の正義、か」


588 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:47:22.51 ID:E7YU24+i0
エリスの体が、テクパトルに降り注ぐ

もはやそれはゴーレムではなかった

ただテクパトルを潰すための、瓦礫の塊になっていた

テクパトル「・・・俺の正義など、ないさ」

シェリー「!」

槍の光線は、一つの物しか壊せない

降り注ぐ幾多の瓦礫を、一辺に破壊することは出来ないのだ

だから

テクパトル「・・・正義なんて俺は・・・持っていない」

彼は、走った

19090号を強く抱きしめて

シェリー「無理だ!エリスの体がどれほどの瓦礫で・・・」

テクパトル「・・・シェリー」


589 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:47:56.40 ID:E7YU24+i0
シェリー「!」

テクパトルが向かっているのは、先程エリスが壁に開けた穴だ

テクパトル「俺の中に正義はない」


テクパトル「・・・ただ、美月を守ることを正しい道だと信じているだけだ」

シェリー「待て・・・」

建物の外には、一つの瓦礫も降っていない

シェリー(逃げた・・・逃げた!?あれだけ偉そうに語っていて・・・)

テクパトル「悔しいかシェリー」

シェリー「殺してやる!私を・・・私を失望させたわね!」

テクパトル「失望!?」

テクパトルがニヤリと笑う

その笑みはとても狡猾なものだった


590 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:48:24.30 ID:E7YU24+i0
テクパトル「俺が戦うことを望んでいたか!?」

シェリー「正義を語ったお前が!悪である私を倒すことを望んでいた!」

テクパトル「・・・それなら」

突然、シェリーの上に瓦礫が降り注いだ

シェリー「何・・・」

テクパトル「失望はさせなくて済むな」

シェリー(こんなに・・・こんなに建物を破壊してはいないはず・・・)

そこで彼女は気づいた

テクパトルがエリスの攻撃を防ぐために撃っていた光線

だがそれは、少しずつ天井に傷をつけていた

そして、エリスの攻撃によって少しずつ、振動が加えられたのだ

シェリー「お前!」

テクパトル「・・・卑怯か?ならば俺も言わせてもらおう」


591 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:48:58.29 ID:E7YU24+i0
天井が、シェリーの上に降ってくる

テクパトル「・・・美月を・・・弱者狙った時点で、貴様は卑怯だったのだ」

シェリー「くそ・・・!」

シェリーが目を閉じる

テクパトル(・・・そうだ、本当ならこれで終わりなんだが)

槍をもう一度構える

狙いは、シェリーの上にある天井

光線が当たった天井は、粉々に砕け散る

シェリー「・・・な、何を・・・」

テクパトル「・・・残念なことに、人殺しからは遠退いていてな」

シェリー「・・・私の負けか・・・」

テクパトル「正義などというものに迷っていた時点で、貴様の負けさ」



592 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:49:34.44 ID:E7YU24+i0
シェリー「・・・待て、確固とした正義など、お前は持っていないのだろ?」

テクパトル「なんだ、さっきから俺の言っている正義があやふやなのに気づいてなかったのか」

19090「?」

テクパトル「正義なんてのはただの便利な言い訳さ」


テクパトル「善行を行うときの照れ隠し、悪行を行うときの大義名分のための」

テクパトル「ただの言い訳に過ぎない、この世で一番便利な言葉さ」



上条「・・・美琴、どこだ!?」

先程から一階がかなり騒がしい

もしも先程、一撃で19090号が息絶えていたなら

シェリーが暴れる理由などないだろう

上条(なのに階下で暴れてるってことは・・・)

上条(まだ19090号は生きているんだな!)

593 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:50:09.94 ID:E7YU24+i0
それさえ分かれば、彼はよかった

上条「美琴!」

見当をつけていた部屋のドアを開ける

その中には、一人の少女がいた

美琴「当麻!」

上条「美琴!」

二人が強く抱き合う

どれほど、抱き合っていなかっただろうか

上条「すまない・・・お前の手を俺が放したばかりに・・・」

美琴「待ちくたびれたわよ、馬鹿」

美琴が上条の唇にキスをする

美琴「・・・みんなは?」



594 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:50:56.31 ID:E7YU24+i0
上条「無事だ・・・それより聞いてほしい」

美琴「?何よ」

上条「ブラックマンは、自分の魔術を完成させるつもりなんてなかったんだ」

美琴「な、何言ってるの?」

上条「頼む、聞いてくれ」

上条が美琴の肩を掴む

今は時間がない

手短に話さなければならないのだ

上条「イギリス清教がブラックマンの魔術を完成させようとしてた」

美琴「じゃあ・・・ブラックマンはわざと逃がしたの?」

上条「あぁ、見張りなんていなかったらしい」

美琴「待って・・・なんでイギリス清教は・・・」

上条「ブラックマンの魔術が完成したら、世界を支配できる」


595 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:51:23.22 ID:E7YU24+i0
美琴「まさか・・・イギリス清教が!?」

上条「あぁ、ステイルから聞いたことだ」

美琴「・・・ならなんで私を保護・・・」

そこまで言って、美琴が顔を青くする

美琴「まさか・・・人質だったの・・・?」

上条「あぁ・・・恐らくはインデックスも」

美琴「そんな・・・」

上条「いいか?俺はこれからインデックスを助けに行く」

美琴「私も連れて行って!」

上条「・・・危ないぞ?」

美琴「もう放れたくないのよ」

上条「・・・分かった」


596 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:51:55.67 ID:E7YU24+i0
上条が窓から外を見つめる

あちこちで戦火が上がっている

上条「そろそろ二階にも護衛が来るはずなんだ」

美琴「・・・私達の味方はどれくらい?」

上条「あんまりいない・・・正直、かなり不利なんだ」

美琴「はぁ・・・それで正面からやって来たの?」

上条「わざわざ回りくどいことはしたくなかったからな」

美琴「・・・いいわよ、当麻らしくて」

上条「インデックスはすぐ近くの部屋にいるはずだ」

美琴「助けに行くのよね?」

上条「あぁ、行こう」

上条が美琴の手を引く


597 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:52:29.06 ID:E7YU24+i0
ドアの外には相変わらず、冷たい廊下が広がっていた

上条「・・・こっちの廊下には入口がないんだっけ」

美琴「だから外に出ても会わなかったのね・・・」

上条「あぁ、今回はかなり好都合だっただろうな」

美琴「わざわざ回るの?」

上条「いや・・・素早くやるには壁を壊したほうがいいだろ」

美琴「・・・ちょっとどいて」

美琴が壁の正面に回る

手にはコインを持っていた

上条「超電磁砲か?」

美琴「・・・」

上条「中にはインデックスがいるんだ」


598 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:52:56.36 ID:E7YU24+i0
美琴「あぁ・・・そうだったわね」

美琴が頭をかく

相当じれったいのだろう

美琴「大体、本当にブラックマンは危険じゃないの?」

上条「恐らくはな」

美琴「・・・となると」

美琴がため息をついたのと同時、上条が彼女の腕を引っ張った

美琴「な、何よ」

上条「・・・美琴、下がっててくれ」

美琴「え?」

上条が美琴の前に立つ

まるで何かから守るかのように


599 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:54:13.24 ID:E7YU24+i0
コツコツ、と足音が聞こえる

そして、次第に姿も見えてきた

美琴「ア、アンタ!」

そこにいたのは


ステイル「・・・やはり君はいたか、上条当麻」

上条「・・・ステイル」

ステイル「面倒だよ・・・君がいるのは」

上条「・・・てめぇ、インデックスを裏切っただろ」

ステイル「裏切った・・・?」

上条「・・・あいつは信じてたんだ、てめぇのことを」

ステイル「・・・君は僕を止める気か」

上条「当たり前だ」

ステイル「・・・ならば仕方ないな」


ステイル「ここで死んでくれ」


600 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 09:57:28.47 ID:E7YU24+i0

神裂「・・・どうしました?」

アニェーゼ「くっ・・・」

建宮「はっはぁ!!なんなのよな、歯ごたえがまるでないのよな!!」

天草式とアニェーゼ部隊

二つの勢力がぶつかり合っていた

だが、それにも決着がつくのだ

ルチア「シスターアニェーゼ!一旦・・・」

アニェーゼ「一旦どうするんですか!?ここで背中を向ければその時点で我々の負けは決まっちまいますよ!」

アンジェレネ「で、でも・・・」

五和「無駄話をしているヒマがあったら・・・」

ルチア「!!」

五和が護符を投げる

そこから、大きな火柱が上がる

アニェーゼ(ちっ・・・なんなんですかこの自在な魔術は!!!)


601 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:05:11.11 ID:E7YU24+i0
神裂「七閃!」

アニェーゼ「!!避けてくださ・・・」

強靭な風が、アニェーゼ部隊を襲った

ルチア「うっ!!」

アンジェレネ「シスタールチア!!」

建宮「余所見は禁止なのよなぁ!!」

アンジェレネ「!!」

アニェーゼ「ふざけないでくだ・・・」

対馬「そこも!!」

アニェーゼ「!!」

アニェーゼ部隊

彼女達は決して素人ではない

むしろ、戦闘にはある程度特化しているのだ

602 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:09:30.10 ID:E7YU24+i0
アニェーゼ(そんな私たちが・・・)

神裂「建宮、後ろは任せますよ」

建宮「了解!!!残り少ないのよな!!」

五和「私は右を!」

対馬「では左を」

アニェーゼ(こんな小さな部隊に・・・)

建宮「オルソラ嬢のときもそうだった・・・お前達は俺達に翻弄されていたのよな」

アニェーゼ「!」

建宮「そりゃそうだ、お前達と俺達じゃ決定的に違うものがある」

ルチア「シスターアニェーゼ!!!」

アニェーゼ「くっ・・・」

蓮の杖をアニェーゼが構える

だが、それも五和の魔術で一瞬にして弾かれる

アニェーゼ「・・・!」

建宮「それが何か分かるか!?」


603 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:12:41.67 ID:E7YU24+i0
アンジェレネ「来たれ・・・」

対馬「はい、動かないの」

対馬がアンジェレネの硬貨袋を破る

ルチア「!シスターアンジェレネ・・・」

アンジェレネ「・・・そ、そんな・・・」

建宮「分からないだろうな!!お前達には!!」

神裂「そうです!私は教えてもらいました!!」

アニェーゼ「何を言ってるんですか!!」

神裂「・・・それは・・・それは!!」

建宮「己の信念を貫いているかどうかだ!!」

アニェーゼ「く・・・」

建宮「俺達は・・・俺達の道を俺達の足で進んでいる!!」

建宮「てめぇらはどうだ!!最大主教が作った道を、ただ自分達が惰性で進んでいるだけだ!!!」


604 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:15:17.81 ID:E7YU24+i0
アニェーゼ「なら歯向かえと言うのですか!!」

建宮「あぁ!!」

アニェーゼ「最大主教に歯向かえば、私達はすぐに・・・」

建宮「最大主教に歯向かうんじゃない!!」

建宮が駆け出す

手には何も握っていない

建宮「あぁそうだ・・・そうだ!!」

アニェーゼ「素手で来るなんていい度胸ですね!」

アニェーゼが蓮の杖を握る

そして、その攻撃は建宮の体を襲った

建宮(・・・痛くなんか・・・ないのよな!!)

アニェーゼ「な、なんで倒れないんですか!!」

建宮「仲間が支えてくれてるからなのよな!!」


605 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:17:20.98 ID:E7YU24+i0
アニェーゼ「ふざけないでくださいよ!!」

建宮「てめぇのクソッタレな運命に!!」

アニェーゼ「シスタールチア、シスターアンジェレネ!!!」

ルチア「も、もう・・・」

アニェーゼ「ちくしょ・・・」

建宮「そんなものに従っているお前自身に!!」

建宮が拳を振りかぶる

それは、アニェーゼの顔を狙っていた

アニェーゼ「!!」

建宮「たった一秒でも歯向かってみろ!!」

ガン、と音がしてアニェーゼが地面に叩きつけられる

アニェーゼ「ぐぁぁっ!」


606 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:20:29.78 ID:E7YU24+i0
建宮「さぁどうした!?立ち上がる気力もないのか!!」

アニェーゼ「う・・・」

神裂「・・・あなた方なんかよりも・・・私を止めようとしたときの建宮のほうが、よほど強く感じられましたよ」

ルチア「・・・そんな」

アンジェレネ「また・・・また・・・」

五和「・・・さて、外は・・・制圧完了みたいですね」

五和が敷地内の外に目を向ける

そこでは、エツァリとショチトルが制圧を完了していた


エツァリ「・・・ありがとうございます、ショチトル」

ショチトル「なに、これくらいは当然だ」

エツァリ「あなたが来てくれなければ・・・」

ショチトル「どうかな、このバルムンク・・・相当な粗悪品みたいだぞ」

エツァリ「・・・それでも、自分の首位なら切り落とせるでしょう?」


607 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:23:00.94 ID:E7YU24+i0
ショチトル「・・・何はともあれ、中もある程度上手くいっているみたいだな」

エツァリ「えぇ」

二人が聖堂を見つめる

その時


窓から、大きな火が噴出した

エツァリ「!!」

ショチトル「な、なんだあれは!?」

エツァリ「・・・ま、まさかステイルさん!?」

ショチトル「やはり中にいたのか!!」

エツァリ「行きますか!?」

ショチトル「当然!!!」

二人が駆け出す

正面から、聖堂の中へと向かって


608 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:27:30.67 ID:E7YU24+i0

上条「・・・魔女狩りの王か」

ステイル「・・・上条当麻」

美琴「やめなさいよステイル!!」

ステイル「やめる?なぜ」

美琴「アンタのことを信じていたインデックスの気持ちは・・・」

ステイル「・・・彼女はね、こうしないと人質として殺されるかもしれないんだ」

美琴「それは・・・」

上条「また、お前は命だけを守るつもりか」

ステイル「・・・命さえあれば、どうにかやり直せるのさ」

上条「また・・・自分を裏切るつもりか」

ステイル「・・・僕はあの子を守れるのなら構わないさ」

上条「・・・そんなつまんねぇ目的のために、俺と戦おうってか」


609 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:32:10.68 ID:E7YU24+i0
ステイル「分かっていないな」

ステイルが上条を睨みつける

ステイル「君は世界を敵に回した・・・インデックスを守ることなどできない」

上条「あぁ?」

ステイル「君が今まで生きてこれたのは、所詮バックボーンがあったからだ」

上条「バックボーン?」

ステイル「ある時はイギリス清教が、ある時は学園都市が・・・」

美琴「そんなもの無くたって当麻は・・・」

ステイル「あぁ、戦っただろうさ」

上条「・・・」

ステイル「だが、生きては帰られなかったかもしれないぞ」

上条「・・・だったら何だよ」

上条が拳を握る


610 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:34:30.73 ID:E7YU24+i0
上条「俺は生きてる、それだけで十分だ」

ステイル「先を見据えることが出来ない・・・か」

上条「今を越えなきゃ先なんて生まれないんだよ」

ステイル「それが愚かだと言うんだ」

上条「・・・愚かで結構!」

上条の拳が、魔女狩りの王の拳にぶつかる

ステイル「そんなもので!!」

上条「俺はなぁ!!!!今こうやってここにいる!!怒りに震えて立っているんだ!!」

ステイル「・・・だからどうした!?」

上条「だったらてめぇを殴れる!!」

ステイル「インデックスを救うのは・・・無理なんだ!!!」

上条「その事実だけで、俺が戦う理由になるんだよ!!!」

ステイル「君に僕の苦しみが分かるか!?」


611 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:36:41.50 ID:E7YU24+i0
上条「知ったことか!」

上条が駆け出す

だが、足元から急に炎が噴出した

上条「おわっ!」

間一髪

上条がそれをかわす

前兆の予知が出来なければ、今頃は火柱に飲まれていただろう

美琴「当麻!!!」

上条「くそ・・・地雷型か!?」

ステイル「ルーンっていうのは拠点防衛に向くんだ」

ステイルがニヤリと笑う

ステイル「こうやって・・・自分の本拠地を守るのには非常に役立つのさ」

上条「あぁそうかよ・・・」



612 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:43:47.57 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・知ってたかい?」

上条「よく知ってるさ・・・身をもって体感したのは初めてだけどさ」

ステイル「・・・そうか」

ステイルが魔女狩りの王を見つめる

その強大な力は、何のためにつけたものだっただろうか

ステイル「・・・インデックスを守るのは僕だ・・・」

ステイル「それはずっとそうだった、今も昔も」

ステイル「でもね・・・救うのは君なんだ、上条当麻」

上条「押し付けんなよ」

ステイル「・・・事実だ」

上条「・・・そんなこと知らないな」

ステイル「・・・君は何も分かってはいないんだ、インデックスを守るにはこれが最善なのさ」


613 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:46:06.58 ID:E7YU24+i0
上条「はっ、また守るためかよ」

ステイル「・・・」

上条「言ったな、インデックスを救うのはいつも俺だと・・・」

ステイル「それは動かない事実なのさ」

上条「でもな、それは違うんだよ」

ステイル「・・・違うだと?」

上条「お前はいつも守ることしか考えてない、そして守るためにしか行動していない」

ステイル「・・・それがなんだ」

上条「救うために考えたことも、救うために行動したこともない!!」

上条が目の前の火柱を打ち消す

たった一本の右手だけで

上条「そんなヤツが、誰一人救えるわけがないだろ!!」

ステイル「そんなことは分かってるんだよ!!」

上条「なら行動してみろ!!!」


614 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:49:35.45 ID:E7YU24+i0
ステイル「ふざけるな・・・ふざけるな!!」

上条「ふざけてなんかないさ!!」

ステイル「僕が誰かを救うだと!?あの子を!?」

上条「救ってみせろ!!」

ステイル「そんなことが出来るか!!」

上条「出来ないだと!?それは幻想じゃねぇか!!!」

ステイル「だったら砕くか!?その幻想を!!!」

上条「・・・ふざけんな」

ステイル「・・・」

上条「ふざけんな!!!てめぇを変えられるのはてめぇだけだろ!!」

ステイル「魔女狩りの王!!!」

上条「変わるのは・・・変わるのはいつも誰かだ、俺は手助けをするだけだ!!」

ステイル「砕いてみろ!!僕の幻想を!!」

上条「ふざけるな!!」


上条「お前の手で、その幻想をぶち殺せ!!!!!!!!!!」


615 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:52:20.45 ID:E7YU24+i0
ステイル「上条当麻ぁ!!!!!!!!」

魔女狩りの王は、ルーンのカードの枚数が多ければ多いほど力を増す

故に拠点防衛には非常に特化しているのだ

拠点ならば、事前に仕込んでおくことが出来る

それゆえに

ステイル「前に僕を倒したときと一緒だと思うなよ!!!!」

上条「一緒だ!!てめぇの気持ちは、全く変わっちゃいない!!!」

ステイル「君にインデックスを救えるか!?僕には無理だ!!」

上条「無理じゃねぇって言ってんだ!!」

ステイル「行け!!魔女狩りの王!!!」

低い咆哮と共に、魔女狩りの王が上条の体を飲み込もうとする

上条「無理なら可能にしてみせろ!!!」

たった一本の右手で、上条は戦う


616 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:54:06.05 ID:E7YU24+i0
周りには結界でも張られているのか

建物の壁には火が燃え移っていない

上条「・・・はは、こりゃすげぇ大きさだな」

ステイル「・・・前に君に見せたものの何倍もあるぞ」

上条「・・・いーや、ちっぽけだな」

ステイル「・・・君のそれは、全く変わらないな」

上条「変わらないだろ?」

美琴「当麻・・・」

上条「・・・いいじゃねぇか、それで」

一歩

上条が踏み出す

ステイル「・・・来るのかい」

上条「あぁ」


617 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:56:52.30 ID:E7YU24+i0
ステイル「誰かを救うために・・・君は世界を敵に回した」

上条「・・・俺はな、美琴を救うためにここに来た」

ステイル「インデックスは?君に救われることを望んでいるあの子は」

上条「・・・俺に救われることを望んでる?」

ステイル「あの子はね、君を待っていたのさ」

上条「・・・そうか」

ステイル「僕を待っているんじゃない、君をだよ」

上条「・・・決して来ない迎えじゃないか」

ステイル「それでも、あの子は・・・」

上条「なら無理だな」

ステイル「・・・なんだと?」

上条「俺は美琴だけを救いに来たんだ・・・ここに」

ステイル「・・・そのためだけに、君は世界を敵に回したか」


618 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 10:59:03.12 ID:E7YU24+i0
上条「そのため・・・だけ?」

ステイル「・・・僕には理解できないな」

上条「それをやってみる勇気がないだけだろ」

ステイル「・・・勇気?それは無謀だよ」

上条「・・・無謀を貫く根性もないんだろ?」

ステイル「・・・無謀を貫く価値は無い!!」

魔女狩りの王が上条を襲う

大質量の炎

核を破壊しなければ、決して消えることの無い

そして、屈することのない復讐の炎

上条「・・・こんな力を持ってるくせに」

ステイル「こんな力では誰一人・・・」

上条「救えない!?救えないか!?」

ステイル「・・・そうだよ」


619 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:01:58.00 ID:E7YU24+i0
上条「やったこともねぇくせに!!自分に限界を決めやがって!」

ステイル「・・・僕の底などたかが知れているだろ!?」

上条「誰かを救うために・・・世界を敵に回すことが無謀か!?」

ステイル「無謀だ!!」

上条「なら・・・なら俺は無謀でいい!!」

ステイル「それが僕には出来ないから!!だから、君にしか救えないんだ!!」

上条「甘えるな!」

ステイル「君は!!」

ステイルが語気を荒げる

そこには、憎しみよりも悲しみのほうが多くあった

ステイル「僕に・・・僕に!!世界を敵に回せと言うのか!!」

上条「やってみろよ!!」

ステイル「やれるものか!」


620 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:04:22.32 ID:E7YU24+i0
上条「やってみろって言ってんだ!!」

ステイル「たった・・・」

ステイルの脳裏に浮かぶのは一人の少女だ

ステイル「たった一人の、小さな少女のためだけに!!」

何よりも守りたかった少女

ステイル「僕に!!」

そして、誰よりも愛していた少女

ステイル「世界を敵に回せと言うのか!?」

魔女狩りの王が勢いを強める

上条「・・・そうだな」

美琴「当麻!!逃げて!!!」

上条「・・・俺だってそう思うさ」

ステイル「・・・」



621 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:07:01.27 ID:E7YU24+i0
上条「俺だって、たった一人の小さな少女のためになんか、世界を敵には回せない」

ステイル「・・・そうだろうとも」

上条「でも違うだろ」

上条が美琴の方をじっと見つめる

美琴「・・・当麻」

上条「・・・ステイル、言ったよな・・・俺は美琴を救うためだけにここに来た」

ステイル「・・・それだけのために、だ」

上条「・・・そうだ、たった一人の小さな少女のためだけに世界を敵には回せない」

それでも

上条は拳を握った

上条「でもな!!!」


上条「ただ一人の愛した誰かのためになら!!俺は世界を敵に回せる!!」

ステイル「!」


622 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:08:54.88 ID:E7YU24+i0
上条「俺は美琴だけを愛している!!だから俺はここに来た!!」

ステイル「・・・それだけの・・・それだけのために!!」

ステイルが感情を剥き出しにする

怒り

悲しみ

嫉妬

そして

ステイル「君はわざわざこんなところに来たのか!?」

憧れ

ステイル「それだけのために、僕の期待も・・・インデックスの期待も裏切るのか!?」

上条「知ったことか!!」

ステイル「教えてやる!!僕の・・・怒りを!!」

上条「・・・やってみろよ」


623 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:11:04.60 ID:E7YU24+i0
魔女狩りの王と幻想殺し

過去も、それが争ったことはあった

だがこれほどまでに憎しみをぶつけ合ったことはあっただろうか

美琴(・・・すごい・・・)

上条「ステイル!!」

ステイル「上条当麻ぁ!!!」

上条「てめぇがインデックスを救え!!!」

ステイル「僕に出来ると思うか!?」

上条「やるんだ!!!」

ステイル「やれないさ・・・僕にはやれない!」

上条「御託を並べて道を作るな!!」

壁に貼られたルーンを上条が壊していく

ステイル「ふん、一枚二枚壊したところで・・・」

上条「・・・どうかな・・・」


624 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:13:09.85 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・なに?」

上条「拠点防衛・・・それは非常に便利かもな」

ステイル「・・・便利さ、特に誰かを守るには」

上条「守るための力か」

ステイル「何が悪い・・・」

上条「・・・でもな・・・拠点から守りたかった誰かが出て行けば、それはなんの意味もなさない」

ステイル「・・・」

上条「守りたかったインデックスがお前の傍から・・・離れてしまったら」

ステイル「それが・・・それがどうしたと聞いているんだ!!」

上条「・・・こんな力、なんの意味もないじゃないか」

ステイル「ふざけるな!!これしか僕には出来ないだろう!?」

上条「・・・そうだな、お前は所詮クズだ」

625 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:16:02.82 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・」

上条「・・・ただのクズだ」

ステイル「・・・クズと笑うか」

上条「・・・でもな、クズにはクズなりの誇りがあるだろ」

ステイル「・・・そんなもの、もう捨ててしまった」

上条「だったらどうしてお前はインデックスを守っている」

ステイル「・・・それが・・・」

上条「守りたいのか?違う」

ステイル「・・・違う?僕はあの子を守りたいだけさ」

上条「・・・守るだけで満足できたか?」

ステイル「!」

上条「今もお前はあいつを守ってる・・・それで、満足できたか?」

ステイル「・・・それは」


626 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:19:22.26 ID:E7YU24+i0
上条「・・・出来ないだろ」

ステイル「・・・それが・・・」

上条「分かるか?お前はもう、守るだけじゃ満足できないのさ」

ステイル「・・・そんなことは分かっている」

上条「・・・だったら満足できるようにしてみな」

ステイル「それでどうする!?」

上条「インデックスをお前が救え」

上条がどこか遠くを指差す

それは、魔女狩りの王の後ろだ

上条「ここのどこかにインデックスがいるはずだろ?」

ステイル「・・・」

上条「・・・それを・・・救ってみせろよ」

ステイル「救う・・・?この僕が?」


627 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:21:23.43 ID:E7YU24+i0
上条「そうだ!」

ステイル「こんな壊すためだけの力なのに!!」

上条「お前はそれをなぜ手に入れた!!」

ステイル「守るためだ!!」

上条「なら救うために使ってみろ!!」

ステイル「聞け!!上条当麻!!」

ステイルが叫ぶ

なぜか、彼の瞳は揺らいでいた

その後ろにいる魔女狩りの王も、揺らいでいた

上条「・・・」

ステイル「僕は・・・インデックスを守ろうとした」

ステイル「今更何を、と思うかい?」

上条「・・・知ってるさ」


628 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:23:45.87 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・昔から、あの子を守りたかった」

ステイル「記憶を消される悲しい運命・・・そんなあの子を」

ステイル「ただ守りたかったんだ」

ステイル「・・・救うことも・・・出来ると信じていた」

ステイル「・・・でもね、初めてあの子の記憶を消したとき・・・それは無理だと悟ったんだ」

上条「・・・」

ステイル「・・・僕には無理だ」

上条「・・・そうか」

ステイル「君があの子を初めて救ったとき・・・君は覚えていないだろうけどね」

ステイル「僕は嬉しかった、それは本当だ」

ステイル「やっと・・・やっと、あの子は救われたんだと」

上条「・・・」


629 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:26:01.09 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・僕じゃなくてもよかった」

上条「誰でもよかった、のか?」

ステイル「・・・そうだ、あの子が救われるのなら」

上条「そんなわけないだろ」

ステイル「・・・」

上条「・・・憎くはなかったか?」

ステイル「・・・憎かったさ」

上条「うらやましくなかったか?」

ステイル「うらやましかったさ・・・」

上条「お前の手で!!救いたかったんじゃないのかよ!!!」

ステイル「救いたかったさ!!!」

二人が真正面からぶつかる

ステイル「だが!!僕には出来なかった!!!」

上条「ならいい加減始めろ、ステイル!!!!」


630 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:27:59.66 ID:E7YU24+i0
ステイル「何を!」

上条「他の誰でもない、お前の手であいつを救ってみせろ!!」

ステイル「出来ると思うか!?」

上条「俺は信じてやる!!てめぇのたった一つの可能性に!!!」

ステイル「・・・そんな・・・」

ステイルが、たった一度

たった一度だけ、ためらいを見せた

ステイル「そんな綺麗事がまかり通るほど、甘い世の中じゃない!!!」

何度もそれを他人にぶつけた

神裂に

ローラに

そして、自分に

そんな綺麗事が、ステイルはうらやましかった

631 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:36:23.74 ID:E7YU24+i0
ステイル「答えろ!!君はまだ御託を並べるつもりか!!!」

上条「・・・そうだな」

上条が溜め息をつく

彼は今まで、綺麗事だけを並べてきた

救うときも、傷付けるときも

いつも、綺麗事だけを

それは時として、誰かを傷つけ、誰かに憎悪を持たせた

上条(・・・あぁ、それでも言わなきゃならない)

ステイル「答えろ!!!君はそれでも綺麗事を並べるつもりか!!上条当麻!!!」

上条「・・・そうだ」

上条が拳を握り締める

彼の中にあるのは、何よりも熱い炎だった


上条「この世の中はたしかに・・・綺麗事が貫けるような世の中じゃない」


上条「それでも!!!」


632 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:37:15.64 ID:E7YU24+i0











上条「綺麗事を貫き通さなきゃ、いつまで経ってもこのクソッタレな世界は変えられないんだ!!!」














633 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 11:38:08.31 ID:E7YU24+i0
一旦休憩

スクライドを見るとベタで熱い展開を書きたくなる不思議

え?上条にはやっぱりイチャイチャよりも熱いバトルが合うって?




「あってるでしょう?」



634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 11:54:04.33 ID:eqi3FZFIO
乙ゥ
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/10/26(水) 12:01:37.59 ID:qZkiWBKQ0
わざわざSSで読む内容でもない気がする・・・・・・。本家で十分見れてるし。
あくまで>>1のパートスレを一つも読んでいない俺の勝手な主観だけどね。


けど、ここまでの話を作るのはいろいろ大変だと思うからおつです。
636 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:08:43.77 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・世界を・・・変える?」

上条「やってやるよ、俺は」

上条が右手を握り締める

上条「綺麗事を貫いてやる」

ステイル「・・・そうか」

魔女狩りの王が、ゆっくりと歩き出す

それは、ゆっくりと上条に迫っていく

上条「さぁ来い・・・お前の幻想と俺の綺麗事・・・」

ステイル「どちらが上か比べてやる・・・!!」

ステイルが

上条が

己の怒りをぶつけ合う

美琴は、ただそれを見守ることしか出来ない


637 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:11:16.67 ID:E7YU24+i0
美琴「当麻・・・」

上条「・・・ステイル、俺はお前を信じてた」

ステイル「僕は君を裏切った」

上条「インデックスだって、お前を信じていた!!!」

ステイル「あの子を僕は見捨てたんだ!!!!」

上条「てめぇは自分を信じてないのかよ!?」

ステイル「こんな僕に何が出来る!?」

上条「どうしててめぇはその力を!!!」

ステイル「こんな傷付けるだけの力で!!」

上条「インデックスを救うために使わない!?」

ステイル「誰を救える!?」

魔女狩りの王の掌を、上条が受け止める

上条(・・・くそ、圧される・・・)

ステイル「魔女狩りの王!!!!」


638 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:13:15.78 ID:E7YU24+i0
魔女狩りの王が、開いている腕を振り上げる

上条「!!」

ステイル「さぁ・・・その綺麗事を・・・貫いてみせろ!!」

咆哮を上げる魔女狩りの王

その左腕が、上条を飲み込む寸前


ローラ「・・・待ちなさい」


後ろから、女の声がした

ステイル「!!最大主教・・・」

ローラ「全く、派手にやってくれたわね」

上条「お、お前・・・」

ローラ「ここは仮にも聖堂なのだけど」

ステイル「なぜあなたがここにいる!?」


639 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:15:36.74 ID:E7YU24+i0
ローラ「加勢しに来たわよ」

ステイル「そんなもの・・・」

ローラ「幻想殺し、お前をここで殺すのは勿体無いのだけれど・・・」

上条「くそ・・・まずい・・・」

相手がステイルだけならなんとかいけるだろう

しかし、最大主教とはどれほどの実力者か全く分からない

美琴「当麻、私も・・・」

上条「美琴、お前は一旦逃げろ!」

美琴「でも・・・」

上条「ここは俺が食い止める!!!」

上条が美琴の前に立つ

美琴「・・・」

上条「・・・逃げろ」

ローラ「いいわよ、そっちの子にはあまり利用価値はないのでね」


640 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:17:21.86 ID:E7YU24+i0
上条「・・・美琴」

美琴「・・・当麻」

上条「なんだよ」

美琴「ちょっと、待っててくれる?」

上条「・・・手があるのか?」

美琴「うん」

上条「・・・気をつけて」

美琴「当麻もね」

美琴が駆け出す

しかし、一階へ降りるためではない

同じ階にある、ある部屋へ向かうため


ステイル「・・・どうする?やはり君の綺麗事は貫けないようだ」

上条「お前の幻想もな」

ステイル「・・・」


641 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:19:16.43 ID:E7YU24+i0
上条「・・・もしかしたらって思ってたが」

ステイル「僕にはこれしかないんだ」

ローラ「さぁ、行くわよ幻想殺し」

上条「・・・あぁ」

三人の視線が交差する

上条(・・・美琴・・・)


美琴(・・・あんなヤツの手を借りるのは気にいらない)

上条と別れた美琴は、一つの部屋の前で止まっていた

美琴(でも)

そしてその扉に手を掛ける

美琴(今はこれしかないのよ)

その中にいたのは


ブラック「やっと来たか」


一人の、男だった


642 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:19:51.40 ID:E7YU24+i0
今日はここまで

これからスクライド見てバイト行ってだ


もうスクライドやべぇ

かなみもいいけどあやせも可愛い



では
643 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:47:41.64 ID:E7YU24+i0
親が映画を見ていたためスクライド見れず

続きをば


美琴「・・・分かってたのね」

ブラック「・・・ここにあの少年は来ているかい?」

美琴「・・・今交戦中よ」

ブラック「ほう」

美琴「・・・手伝って頂戴」

ブラック「何を」

美琴「・・・お願い、当麻を助けて」

ブラック「・・・私に何が出来る」

美琴「・・・アンタなら」

ブラック「天草式とイギリス清教、二つの術式で枷がつけられている」

美琴「・・・そんなの、当麻が壊してくれるわ」

ブラック「・・・」



644 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:49:51.59 ID:E7YU24+i0
美琴「お願い」

ブラック「・・・逃亡の可能性を考えないのかね」

美琴「・・・お願い」

美琴がブラックマンの目を見つめる

その瞳は、真っ直ぐとブラックマンの目を見ていた

ブラック「・・・いいのか」

美琴「アンタは悪人だけど、狂人ではないわ」

ブラック「・・・行こう」

ブラックマンが立ち上がる

ブラック「どこだね」

美琴「すぐそこよ」

ブラック「早く案内してくれ」

美琴「どうして?」

ブラック「・・・最大主教がいるようでな」

美琴「・・・えぇ」


645 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:51:50.52 ID:E7YU24+i0
ブラック「・・・あの女には私も用があるのだ」

美琴「用?」

ブラック「あぁ」

二人が駆ける

目指すのは、上条のいる場所だ

美琴(当麻・・・)


上条「くそっ・・・」

ローラ「・・・やはり二人を相手にするのは苦手なのね」

上条「・・・なんだよその杖・・・」

ローラ「普通の霊装よ」

ステイル「・・・上条当麻、降伏したまえ」

上条「ヤだね」

ローラ「・・・そこまでしてインデックスを助け出したいの?」

646 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:53:46.29 ID:E7YU24+i0
上条「・・・あぁ」

ステイル「・・・君に出来るのか」

上条「助けるのは俺だ、救うのはお前だろ」

ステイル「・・・」

ローラ「ステイル、早くとどめを」

ステイル「・・・最大主教」

ローラ「中てられるな、ステイル」

ステイル「!」

ローラ「あなたはイギリス清教の人間なのよ」

ステイル「分かっているさ・・・」

上条「ステイル!!てめぇには救い出したいヤツがいたんだろ!?」

ステイル「・・・」

上条「ならなんでこんなところで地団駄踏んでんだよ!!」

ステイル「・・・僕には・・・これしか・・・」


647 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:56:19.54 ID:E7YU24+i0

美琴「当麻!!」

上条「美琴・・・」

ステイル「!ブラックマン!?」

ブラック「・・・おや、君はあの時のルーンの魔術師か」

ローラ「・・・貴様」

ブラック「・・・いたか、最大主教」

ニヤリとブラックマンが笑う

上条「お、おい・・・なんで」

ブラック「少年、私の体に触れてくれ」

上条「・・・」

ブラック「救いたくはないのか?」

上条「・・・アンタ、なんでここにいる」

ブラック「知っているだろう、あの女は私の魔術を完成させるつもりだ」

上条「もうお前は回収済みだったか」


648 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 14:59:18.56 ID:E7YU24+i0
ブラック「・・・さぁ」

上条「・・・俺達に活路を見出せるか?」

ブラック「やってみれば分かる」

上条「・・・」

上条がブラックマンの枷を砕く

ローラ「ちっ・・・ステイル!!」

ステイル「・・・上条当麻・・・!!」

上条「・・・ステイル、俺は悪なのかもしれない」

ステイル「あぁ、悪だ!!そんな罪人を・・・」

上条「それでも、俺は誰かを救ってみせる!!」

ステイル「・・・何を・・・」

上条「誰も救えないお前の正義よりは、よっぽどマシな悪だろう!?」

ステイル「くそ!!」

魔女狩りの王がその腕をブラックマンに向ける


649 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:02:32.43 ID:E7YU24+i0
ブラック「・・・ルーンの魔術師よ、君は何かを失っているぞ」

ブラックマンが壁に拳を叩きつける

すると、壁に大きな穴が開いた

上条「うげ・・・」

ブラック「・・・サムソンの力だ、さぁ逃げろ」

上条「ま、待てよ!!」

美琴「そうよ、ここで逃げるなんて・・・」

ブラック「では戦うのかね?」

上条「・・・」

ローラ「・・・逃がすものか・・・」

ブラック「最大主教よ、部外者は関係ないだろう?」

ブラックマンの後ろに獣が生まれる

ステイル「く・・・今はお前からだ、ブラックマン!!」


650 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:05:18.67 ID:E7YU24+i0
ブラック「逃げたまえ少年」

上条「・・・逃げるだと?」

ブラック「・・・そこの少女を助けるのが目的ではなかったか?」

上条「・・・まだインデックスが救われてない」

ブラック「ほう、それはそれは」

ステイル「余所見を・・・」

ブラック「黙っていたまえ」

魔女狩りの王と獣が互いの首を切り裂く

ステイル「くっ・・・」

ローラ「・・・ステイル、ここは私に任せなさい」

ステイル「ですが!」

ローラ「・・・お前はあの二人を追うのよ」

ステイル「!」

上条「ステイル・・・」


651 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:09:36.74 ID:E7YU24+i0
ローラ「何をしているの、早く」

美琴「当麻、逃げるわよ!!」

上条「・・・あぁ!」

二人が二階の壁にあいた穴から飛び降りる

上条「いって!!」

美琴「な、何やってんのよ・・・」

上条「・・・あれ?シェリーと19090号と・・・」

美琴「テクパトル!?」

テクパトル「ん?おぉ、無事だったか・・・」

聖堂の中庭で、5人が顔を合わせる

19090「よかった・・・」

上条「生きてたんだな・・・」

シェリー「・・・お前達はなんで逃げてきてるのよ」


652 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:19:22.89 ID:E7YU24+i0
上条「・・・いや、まぁ・・・」

上条が聖堂を見上げる

先ほどまでこんなにも荘厳な建物の中にいたのか、と思ってしまう

テクパトル「・・・ん?まだ中で戦闘が・・・」

美琴「ブラックマンが・・・ね」

19090「な、なんでそんなことに・・・」

シェリー「そんなことより、離れたほうがいいわよ」

上条「・・・はい?」

シェリー「ほら、壁が崩れてるわよ」

美琴「!」

上からは壁や床の瓦礫が落ちて来ている

上条「あ、あぶねぇ!!」

19090「い、一旦遠くに行きましょう!!」

上条「あぁ!!!」


653 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:28:02.69 ID:E7YU24+i0
5人が聖堂から遠ざかる

中からは大きな音が聞こえている

上条「くっそ・・・派手にやってるな・・・」

美琴「・・・インデックスは・・・?」

上条「・・・信じるしかねぇさ・・・」


上条「ステイル・・・」



ローラ「・・・相変わらずめちゃくちゃな魔術ね」

ブラック「・・・貴様こそ、むちゃくちゃな魔力だな・・・」

ローラ「ステイル、なぜあの二人を追わなかったの」

ステイル「・・・最大主教」

ローラ「・・・まさか、インデックスを救うとでも?」

ブラック「・・・」


654 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:32:29.25 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・ブラックマン、お前はなぜイギリス清教に背いた」

ブラック「なぜか、と」

ローラ「・・・この男はね、妹を亡くしているのよ」

ステイル「なに?」

ブラック「・・・なぜ知っている」

ローラ「知っているわよ、そんなこと」

ブラック「・・・」

ローラ「イギリス清教がある町を制圧したのよ」

ステイル「制圧?」

ローラ「もうずいぶん前のことよ」

ローラが笑う

ローラ「その時、この男の妹は死んだのよ」

ブラック「・・・その時に死んだ、か」

ローラ「・・・何?」


655 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:40:20.92 ID:E7YU24+i0
ブラック「・・・ルーンの魔術師よ、私は己の信念に従ってここに来たのだ」

ステイル「・・・愚かだ」

ブラック「救いたい者を救おうともしない君に言われたくはない」

ステイル「!」

ローラ「粋がるなブラックマン」

ブラック「・・・何を怯えている最大主教」

ローラ「怯えている・・・?」

ブラック「インデックスという少女がそこまで重要か?」

ローラ「・・・」

ブラック「そこまでして力が欲しいか」

ローラ「黙っていろ、異端者」

ブラック「どうする、ルーンの魔術師」

ステイル「・・・僕は・・・」


656 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:49:38.17 ID:E7YU24+i0
ブラック「信念もないものが魔術を気安く扱うな」

ローラ「貴様の信念は捻じ曲がっているわよ」

ブラック「信念などどれもそんなものだ」

ローラ「・・・ステイル、気にしないのよ」

ステイル「・・・最大主教」

ローラ「!」

ローラがステイルの顔を見つめる

何か、吹っ切れたような顔をしている

ブラック「・・・はは・・・ははは!!それでこそ魔術師だ、それでこそ神父だ!」

ローラ「ステイル貴様!!!」

ブラック「・・・救ってみせろ、神父よ!!!」

ブラックマンがローラに飛び掛る

ローラ「くっ・・・」

ステイル「最大主教、あなたは・・・なぜ力を手に入れようと思ったのですか」


657 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 15:53:18.19 ID:E7YU24+i0
ローラ「イギリス清教のためよ!」

ステイル「違う・・・あなたは結局、自分のために力を手に入れようとした!」

ローラ「その力があれば!!苦しんでいる人々を助けられるとは思わない!?」

ブラック「!」

ローラ「ステイル、貴様にはそれがイギリス清教の糧になるとわからないの!?」

ステイル「違う!!僕はイギリス清教の神父である前に・・・」

ステイルが魔女狩りの王を掻き消す

ステイル「インデックスを愛する、一人の少年なんだ!!!」

ローラ「貴様!!」

ブラック「・・・止められないさ」

ローラ「!」

ブラックマンがローラに向かってロンギヌスを振るう

ローラ「くそ・・・ステイル!!!」

ステイル「最大主教・・・」


658 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:03:50.21 ID:E7YU24+i0
ローラ「いまさら・・・いまさら!!」

ステイル「あなたの考えを全て否定しようとは思わない・・・」

ローラ「なら邪魔をするな!!」

ステイル「でも、僕にだって救いたい人がいた!!」

ステイルが駆け出す

ローラ「貴様・・・!!」

ブラック「・・・最大主教よ、君は何も分かっていなかった」

ローラ「・・・私は・・・!!」

ブラック「・・・誰かを救うために、一人の犠牲くらいなら構わないのかもしれないな」

ローラ「・・・」

ブラック「だが、若いうちはそれを理解できないものだ」

ローラ「・・・貴様・・・なぜ私の邪魔をする!?」

ブラック「・・・君はいろいろと間違っている」


659 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:06:42.53 ID:E7YU24+i0
ローラ「放せ!!」

ローラがブラックマンから距離を置く

ブラック「・・・なぜ力が欲しい」

ローラ「・・・イギリス清教が人々を救うためだ」

ブラック「・・・そうか」

ブラックマンが目を細める

なぜか、悲しそうな表情に見える

ブラック「・・・だがな、それでも私はやはり貴様を止めるぞ」

ローラ「私はステイルを追いたいのだけれど」

ブラック「それは叶わない願いだな」

ローラ「・・・そう」

ローラが杖を握る


ローラ「ならば、ここで散らせようか」


660 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:09:47.07 ID:E7YU24+i0

ステイル「インデックス!!インデックス、いるか!?」

ステイルが一つの部屋を訪れる

イン「!ステイル、なんだか外が騒がしい・・・」

ステイル「いいかいインデックス、よく聞いてくれ!!」

ステイルがインデックスの肩を掴む

ステイル「ブラックマンではなく、イギリス清教が君を利用しようとしていたんだ!!」

イン「な、何の話?」

ステイル「イギリス清教が・・・ブラックマンの魔術を完成させるつもりだったんだ」

イン「じゃ、じゃあなんで私はここにいるの?」

ステイル「・・・」

イン「・・・私を・・・使うため・・・?」

ステイル「・・・そうだ・・・」


661 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:12:19.74 ID:E7YU24+i0
イン「・・・じゃあ・・・ステイルは・・・」

ステイル「・・・君を裏切ったんだ」

二人の間に沈黙が流れる

それは、とても辛いものだった

ステイル「・・・幻滅してもらって構わない」

ステイル「・・・ただ、今だけは僕についてきてくれ・・・ここから逃げるんだ」

イン「待って・・・ちょっと待って」

ステイル「なんだい」

イン「とうまは!?みことは!?みんなは・・・」

ステイル「みんな無事だ・・・今はブラックマンと最大主教が戦っている」

イン「そんな・・・」

ステイル「・・・信じられないかい?」

イン「・・・」


662 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:16:10.35 ID:E7YU24+i0
ステイル「だとしても、僕は君をつれていく」

イン「どうして・・・」

ステイル「・・・」

イン「どうして・・・私はこんなに・・・利用されるの?」

ステイル「インデックス・・・」

イン「また裏切られたんだよ!?ステイル、私は・・・」

ステイル「・・・ごめん」

イン「どうして!?私は前もそうだったんだよね!?」

ステイル「あぁ」

イン「・・・前も・・・ステイルに裏切られて記憶を無くしたんだよ!?」

ステイル「そうだよ」

イン「どうして裏切るの!?」

ステイル「・・・すまない」

イン「もう・・・もう、イヤなんだよ・・・」


663 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:22:00.59 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・」

イン「ねぇ!?どうして!?」

ステイル「それが・・・君の運命だったのかもしれない」

イン「こんなの・・・イヤなんだよ・・・」

インデックスがステイルの服を掴む

ステイル「・・・」

ステイルが、そっとその頭を撫でる

怯えているのだろうか

インデックスは震えている

ステイル「・・・でもね、インデックス」

イン「・・・」

ステイル「思い出したよ、僕は何をするためにイギリス清教に入ったのか」

イン「ステイル・・・?」


664 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:31:18.68 ID:E7YU24+i0
ステイル「僕は、君を救うためにここにいたんだ」

イン「・・・ステイル」

ステイル「そうだ・・・そうだ、忘れはしないさ」

ステイルがインデックスを抱きしめる

ステイル「・・・行こう、インデックス」

イン「?どこに・・・?」

ステイル「・・・逃げよう」

イン「・・・」

ステイル「・・・君を安全な場所に連れて行く」

イン「ステイルは・・・?」

ステイル「僕も行くさ」

イン「・・・ホントに?」


665 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:36:49.41 ID:E7YU24+i0
ステイル「・・・あぁ」

イン「・・・信じていいの?」

ステイル「・・・僕は、君を救ってみせるよ」

ステイルが真っ直ぐ廊下を見つめる

少し離れた場所では、大きな音がしている

ステイル「・・・行こう」

イン「うん」

二人が手を握り合って、走り出す

ステイル(・・・上条当麻)

ステイル(・・・君は笑うだろうかもしれないが、僕はこんなことしかできないんだ)

ステイル(・・・君に説得され、ブラックマンにけなされ・・・やっと気づくことしかできない)

ステイル(・・・でも・・・でも、ならば)


ステイル(・・・最後の最後でくらい、この子を救ってみようと足掻いてもいいだろう?)


666 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 16:37:45.53 ID:E7YU24+i0

さて、今日はここまで

だんだん何やらよく分からなくなってきた

熱い話はまだ書きやすいような気がするけど、それも続けるとグダグダに

というか次スレ・・・どうしようどうしよう


では行ってきます
667 :小豆にかわりまして名無しがお送りします [[sage]]:2011/10/26(水) 16:49:31.52 ID:drjKwbjIO
>>1乙!
明日もよろしく!
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/26(水) 19:48:03.13 ID:xBIZKxnAO
>>1
そんなに心配しなくても、ちゃんと見てる人はグダグダなんて思ってないよ

俺も含めて毎日このスレの更新が楽しみでしょうがないって人けっこう多いと思うからグダグダとか言わずに、頑張ってくれ。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/26(水) 19:54:50.65 ID:fL4SqCrPo
>>1乙!
毎日楽しませてもらってる!
670 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/26(水) 22:35:41.66 ID:E7YU24+i0
>>668 そんなあなたにプレゼント、本土(ry

とりあえず熱いバトルものが書きたくなった衝動に駆られて始めたこのスレ

スクライドのせいだ、うん

今日はもう投下はなし

さぁ!!みんなも一緒に!!!


速さが足りない!!


671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 23:12:06.65 ID:Zfx4mR0vo
乙にゃんだよ!
672 :sage :2011/10/26(水) 23:20:38.96 ID:YtuVFG5y0
速さじゃなくて若さが足りないよ…(´・ω・`)
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 23:21:11.24 ID:VUDIRB9Jo
>>1
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/26(水) 23:49:12.59 ID:I3b6rRn3o
量が足りない!!
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/27(木) 00:33:48.16 ID:sg5Os2ySo
筋肉が足りない!
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 06:13:57.52 ID:Ais4VB6IO
お金が足りない!
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/10/27(木) 08:25:19.01 ID:JjC4lDtAO
何かが足りない!
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/27(木) 08:29:06.94 ID:k6Uv0FFVo
時間が足りない!
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/27(木) 08:31:12.63 ID:GO4qN0jQ0
エツァリとショチトルの変態成分が足りない!

なんかこのスレではふつーにかっこいいんだが、この二人
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 08:55:12.98 ID:dGMvuG8Po
寒さが足りない!
681 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:45:15.76 ID:lngF19+70
ブラック「・・・化け物だな、貴様」

ローラ「最大主教たる者、多大なる魔力を精製出来なければならないわよ」

ブラック「・・・」

ブラックマンとローラ

二人の魔術師がぶつかっていた

だが、互いの戦況は全く違う

ブラックマンの腕からは血が流れ出している

一方のローラは無傷だった

ブラック「・・・」

ローラ「知ってるわよね、魔力とは生命力を精製して作るのよ」

ブラック「それがなんだ」

ローラ「貴様の魔術はあまりにも魔力を食いすぎる」

ブラック「・・・」


682 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:45:42.60 ID:lngF19+70
ローラ「世界を揺るがすような事件を起こすならまだしも、一人を相手にするには効率が悪い」

ブラック「・・・」

ブラックマンがローラを睨みつける

図星だったのだ

彼の魔術は強大である

だがそれゆえに、使用するにはかなりの魔力を使わなければならない

ローラ「大抵の魔術なら・・・そこまで生命力は食わない」

ブラック「だからどうした」

ローラ「一日、二日休憩すればすぐに生命力も戻るでしょうね」

ブラック「・・・何が言いたい」

ローラ「だが貴様のはそうではない」

ローラが杖を振る

巨大な雷が、ブラックマンの体を襲う


683 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:46:08.97 ID:lngF19+70
ブラック「強固な塔を」

ローラ「それよ」

ブラック「・・・」

雷は塔に当たって消え去る

ローラ「・・・そんな雷、他の方法でいくらでも対処できる」

ブラック「・・・」

ローラ「そうやってそんな魔術ばかり使っていては」


ローラ「貴様、生命力が先に尽きるわよ」

ブラック「死ぬと言いたいのか」

ローラ「えぇ」

ブラック「そんなことは分かっている」

ローラ「妹の仇を取るためだけに自分を死なせるつもり?」

ブラック「それが・・・それだけが私を突き動かしている」


684 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:46:47.27 ID:lngF19+70
ローラ「悲しい男よ」

ブラック「・・・」

ローラ「いずれは死ぬわ、だが貴様はそれに向かって走っている」

ブラック「私には目的があった」

ローラ「目的?」

ブラック「貴様を殺すことだ」

ローラ「やはりか」

ブラック「イギリス清教を変えるには・・・最大主教を変えなければならない」

ローラ「・・・それだけか」

ブラック「それだけだ」

二人が再び交差する

だが、やはりブラックマンの一方的な不利だった

ブラック「・・・これほどまでに差があるとはな」


685 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:47:18.55 ID:lngF19+70
ローラ「貴様の魔術のほうが強いのよ」

ブラック「・・・」

ローラ「だが、今はそうではない」

ブラック「なぜか分かるか」

ローラ「えぇ」

ローラが杖を振った

魔術的な攻撃をするためではない

直接、物理的な攻撃を加えるためだ

ブラック「ぐっ・・・」

ブラックマンの胸に、杖は当たった

ローラ「今の貴様は迷っている」

ブラック「・・・く・・・」

ローラ「何があったか知らないが、私を殺すのを躊躇っている」


686 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:47:44.25 ID:lngF19+70
ブラック「・・・仕方あるまい・・・」

ローラ「・・・貴様が過去に殺したのは、全て貴様の妹が死んだ事件に関わっていた人間ね」

ブラック「事件?あれは虐殺だ」

ローラ「・・・それが?」

ブラック「イギリス清教は・・・人殺しを認めたのだ」

ローラ「権力の下に血の海、なんて当たり前よ」

ブラック「・・・私の妹がどれ程苦しんだか」

ローラ「・・・」

ブラック「・・・リサも・・・シスターになるつもりだったのに」

ローラ「・・・そう」

ブラック「・・・貴様を殺せば私の怒りは収まるだろうか」

ローラ「収まるわよ、憎い相手を殺せるなら」

ブラック「ならば殺そう」


687 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:48:12.53 ID:lngF19+70
ローラ「無理だと言ったでしょ」

ローラが再びブラックマンに近づく

ローラ「はっ!」

杖を振るだけで、ブラックマンの体が吹き飛ぶ

ブラック「ぐ・・・」

ローラ「貴様はもう戦う理由を無くしている」

ブラック「貴様は・・・リサの仇だ・・・」

ローラ「そんな軟弱な殺意で私の喉を掻き切れるか?」

ブラック「貴様を殺さなければ・・・イギリス清教は変わらないんだ・・・」

ローラ「なら・・・」

突然、ローラが驚いたような表情になる

窓の外

そこを、ステイルとインデックスが走っていた


688 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:48:40.29 ID:lngF19+70
ローラ「あの二人・・・」

ブラック「よそ見をするな!」

ローラ「黙れ!」

ローラの魔術によって、ブラックマンが壁に叩きつけられる

ローラ(どうする・・・?ここでブラックマンだけでも)

ブラック「く・・・」

ローラ「動くな、貴様だけでも拘束する」

ブラック「出来るならばやってみろ・・・」

フラフラとした足取りでブラックマンが壁に向かう

それは、上条達を逃がすために作った、穴の開いた壁だった

ローラ「貴様も逃げるつもりか!」

ブラック「う・・・」

飛び降りる、というよりも半ば落ちるようにブラックマンが下へ向かう


689 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:49:17.60 ID:lngF19+70
ローラ「貴様!私を殺すのではなかったか!」

中庭に向かってローラが叫ぶ

返ってきたのは、ブラックマンの冷たい声だった

ブラック「明日・・・決着をつけようではないか」


ローラ「ちっ・・・」

「最大主教様!」

ローラ「こちらの隊は?」

「現在至る所で交戦中・・・」

ローラ「余っている人間だけでもいい、ブラックマン、ステイル、インデックスを捜索しろ」

「はっ!」

ローラ「くそ・・・」


神裂「最大主教」

ローラ「!」


690 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:49:57.91 ID:lngF19+70
建宮「・・・お邪魔してるのよな」

ローラ「貴様達いつの間に・・・」

ローラが振り返る

そこには天草式の四人が立っていた

五和「・・・最大主教」

ローラ「何?戦うつもりかしら」

対馬「・・・私達はあなたの考えに賛同出来ません」

ローラ「・・・そう」

神裂「それはアニェーゼ部隊やステイルも同じようですね」

ローラ「はぁ・・・今回の作戦は損ばかりね」

建宮「どうするつもりなのよな」

五和「あなたの信頼はがた落ちでは?」

ローラ「・・・それぞれに理由があった今回の作戦」


691 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:50:37.18 ID:lngF19+70
対馬「・・・何?」

ローラ「誰も私を責めたりはしないはずよ」

建宮「ふん、そんなわけが・・・」

神裂「・・・アニェーゼ部隊や我々のほうこそ、イギリス清教を裏切ったことになりますから」

対馬「それは・・・」

ローラ「いいわよ、天草式を罰するつもりはない・・・私はまだ諦めていないし」

五和「まだやる気なのですか!」

ローラ「・・・現在、ステイルやブラックマンを捜索させている」

神裂「な・・・」

ローラ「アニェーゼ部隊と天草式は・・・どうする?」

対馬「女教皇様・・・」

神裂「・・・向かいます」

ローラ「保護するの?」


692 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:51:03.14 ID:lngF19+70
神裂「当たり前です」

ローラ「そう・・・あぁ、幻想殺しには会わなかった?」

建宮「・・・なぜそれを聞くのよな」

ローラ「一応最後くらいはあの男にもいてほしかったのよ」

神裂「・・・最後?」

ローラ「そろそろ、この作戦も終わるわ」

五和「!まさか、もうブラックマンの魔術を・・・」

ローラ「今は深夜ね・・・私はもう寝るわ」

神裂「待ってください!」

ローラ「この建物なら自動で治るから」

神裂「何が終わるのですか!」

ローラ「明日の朝にでもなれば分かるわよ」

ローラが手を振る


693 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:51:30.47 ID:lngF19+70
神裂「待って下さい!一体・・・」

ローラはその言葉に何も返さなかった

ローラ(終わるのよ・・・結末は分からない)

ローラ(私がブラックマンの魔術を完成させるか)

ローラ(ブラックマンが私を殺すか)

ローラ(それとも別の結末か)

考えながら、ローラは歩いた

だが、彼女は同時に別のことも考えていた

ローラ(ブラックマンのヤツ・・・あの魔術をあまり多様しなかったな)

もっと強力な奇跡も起こせるはずだった

だが、彼がローラとの戦いで使っていたのはロンギヌスや塔といった、あまり大規模と言えるものではない魔術だった

ローラ(手加減?いや、違うわね)


694 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:53:47.53 ID:lngF19+70
ブラックマンは使わなかったのではない

もはや使えなかったのだ

あの魔術は非常に強力である

聖書の奇跡を自由自在に操れる

だがそれは、本来人間が操れる奇跡ではない

それを操るには、多すぎる魔力を必要とするのだ

そして、魔力は生命力を精製することによって作られる


彼の体は、命は

もはや限界だったのだ

ローラ「・・・はぁ、復讐のために行き急ぐ・・・か」

ローラ「・・・ブラックマン、貴様・・・」


ローラ「・・・なぜ、死を選んだの」



695 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:54:13.92 ID:lngF19+70
神裂「上条当麻!」

上条「ん?あぁ、神裂・・・」

神裂「みなさんは無事ですか!?」

美琴「ど、どうしたの?」

19090「一応・・・無事ですよ?」

テクパトル「エツァリとショチトルも無事なようだな」

中庭

天草式も、ちょうどそこを通り過ぎようとしていたところだった

上条「で?なんなんだよ慌てて」

神裂「ステイルがインデックスを連れて逃げ出しました!」

美琴「!」

上条「そうか・・・あいつやったんだ・・・」

建宮「んな呑気に言ってる場合じゃないのよな!」


696 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:54:42.35 ID:lngF19+70
上条「な、なんで・・・ってお前達もいたのか」

建宮「いいか!?聖堂の中ならすぐに見つけられる、だがイギリスの街中ならどうだ!?」

テクパトル「待て、イギリス清教は捜索班を出したのか?」

神裂「えぇ、それも出来る限りの人員を裂いて」

19090「・・・ブラックマンは・・・」

神裂「彼も逃げたはずですが・・・」

シェリー「さっきあの穴から落ちてきたよ」

上条「はぁ!?なんで言わなかった!」

シェリー「言う必要がないじゃない」

上条「それでどこへ!?」

シェリー「裏口へ向かったと思う」

美琴「急ぎましょう!インデックスとブラックマンがもし・・・」

五和「もし、イギリス清教の追っ手に見つかったら・・・」


697 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:55:39.45 ID:lngF19+70
テクパトル「俺達じゃ対処出来なくなる、急げ!」

一同が走り出す

闇の中を、静かに駆ける影

深夜のイギリスを走るのは、追っ手達

その目的は二つに別れていた

捕獲をするのはイギリス清教

それを妨害するのが上条達

ただ、そんな単純な理由から

追っ手は、イギリスの中を駆けていた


そして、逃げる側も

とても単純な、しかし曲げられない理由から、ただただ逃げていた

それは、運命からも


698 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:56:05.88 ID:lngF19+70
ブラック「・・・く・・・」

体のあちこちを激痛が走る

静かにしていると、骨が軋む音が聞こえるような錯覚に陥る

いや、軋んでいるのかもしれない

ブラック「・・・もう少し・・・もってくれ・・・」

ゆっくり、足を引きずるようにしてブラックマンは歩く

イギリス清教の追っ手は、少し離れた場所を探しているらしい

まさか、今ブラックマンがいるところには気づかないだろう

そこは小さな森だった

誰も訪れはしない

寂しい、小さな森

そしてつい先日、幻想殺しとブラックマンが戦った森

ブラック「・・・無意識のうちにここに戻ってきてしまったな」


699 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:56:51.53 ID:lngF19+70
小さな墓に、ブラックマンが話し掛ける

そこには名前も刻まれていない

刻む意味もなかった

ブラック「・・・リサ」

返事はない

あるわけがない

ブラック「お前の仇を・・・最大主教を、私は殺すつもりだった」

彼が牢獄から抜け出したのはそのためだったから

ブラック「・・・最大主教は私の魔術をただの力として操るつもりだった」

ただ、聖書を必死に学んだ

結果として彼は、その奇跡の真似事を起こせるようになった

彼は力が欲しかったのではない

熱心に、十字教を信仰しただけだった


700 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:57:17.47 ID:lngF19+70
ブラック「・・・リサ」

ブラック「最大主教は・・・私の魔術で誰かを救うつもりらしい」

ブラック「あの女の言うことなど信じられないはずなのに」

ブラック「なぜか私は迷っている・・・」

そっと、墓に体を寄せる

冷たいはずのそれは、なぜか温もりを持っていた

ブラック「私は過去の亡霊だ、お前を・・・ただお前を引きずっている」

ブラック「最大主教が憎い、だがあの女は・・・誰かを救うためにこの魔術を使うらしい」

ブラック「答えてくれ、私はどうすればいい」

ブラック「・・・この魔術を、最大主教に託すべきなのか?」

ブラック「過去に縛られた私ではなく・・・未来を生きる子供達のために」

ブラック「・・・お前の仇である最大主教が憎い」

ブラック「・・・なぁ、リサ」


701 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:57:44.52 ID:lngF19+70
ブラック「・・・どうすればいい?」

ブラックマンが墓を見つめる

そこには、たった一人の妹が眠っている

ブラックマンを愛した妹

ブラックマンが愛した妹

かつて、唯一自分を恐れずに接してくれた妹

傍にいてあげるはずだった妹

彼が見捨ててしまった妹

救えなかった妹

ブラック(救う・・・か)

ブラック(あの少年は、自分の愛した少女を救ったな)

ブラック(あの少女も・・・少年を救うために私を解放した)

ブラック(うらやましい関係だな)



702 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:58:28.79 ID:lngF19+70
ブラックマンが小さく笑う

あの二人を知ってから、まだ数日だ

敵であるはずのブラックマンを解放した少女

それはきっと、少年を救いたい一心からきた行動だったのだろう

ブラック(・・・私にもあれほどの勇気があれば)

ブラック(お前を守ることが出来たのかな、リサ)

ブラックマンが目を閉じる

ブラック(・・・もう・・・)

ブラック(もう、お前には会えないのだな・・・)

夢の中へ、少しの間堕ちていく

それはとても悲しい過去の夢

忘れたかった、だがずっと忘れられなかった過去の夢だった



703 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 09:59:04.97 ID:lngF19+70
ブラック「どこだ、リサ!?」

ブラックマンがまだ、20歳になったばかりの頃だった

彼の生まれた町がイギリス清教の襲撃を受けたのだ

イギリス清教を信仰させる、ただそれだけのために

ブラックマンが帰った時には、既に町は原型を留めていなかった

イギリス清教の上層部に、ブラックマンは掛け合った

だが上層部の答えは薄情だった

「神の教えを学ばぬ者に、我々が神罰を下した」

ただそれだけだった

ブラック「リサ!いるなら返事をしろ!」

泣きながら、ブラックマンは叫んでいた

自分達の家は焼け焦げている

そんな絶望の中、ブラックマンは一ヶ月も妹を探し続けたのだ


704 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:00:18.04 ID:lngF19+70
ずっと、一人で探し続けた

焼け野原には何も、誰もいなかった

そんな日々が、一ヶ月続いた


だがもう、見つからないと諦めていたある日

突然、妹が見つかった

町にいたと思っていた妹は、町の外から帰ってきた


ブラック「!リサ・・・リサ!無事だったか!」

リサ「・・・」

ブラック「よかった・・・どこかへ逃げていたのか?」

リサ「・・・お兄ちゃん」

ブラック「なんだ?どこか痛むか?」

リサ「なんで神様は私のこと嫌いなの?」

ブラック「何を・・・」

ブラックマンは妹の目を覗き込んだ


705 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:00:46.58 ID:lngF19+70
その時の妹の目を、今もブラックマンは覚えていた

濁った瞳

まるで汚れたオイルのような色

その中には生気がまるで宿っていなかった

ブラック「ど、どうしたんだリサ・・・」

リサ「・・・お兄ちゃん、どうして神父さんもシスターさんも・・・みんなを殺したの?」

ブラック「!みんな殺されたのか!?」

リサ「・・・」

あの妹は

たしかあの時、ブラックマンの胸に飛び込んできた

再会を喜んでいたのではない

ただ、悲しかったのだろう

涙を受け止める器が欲しかったのだろう


706 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:01:12.69 ID:lngF19+70
ブラック「リサ・・・どうしたんだ」

リサ「・・・どうして神様は私を嫌ってるの?」

ブラック「何を言っている、神は・・・」

リサ「私・・・」

ブラック「・・・なんだ?」

リサ「なんでもない」

死んだような瞳のまま、あの妹は首を振った

それがなぜか、とても薄気味悪く思えた

ブラック「リサ・・・何があったんだ」

リサ「・・・」

何度問い掛けても、答えは返ってこなかった

それでも

また二人で暮らせるならばいいと思っていた


707 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:01:57.88 ID:lngF19+70

そんな儚い願いが崩れたのは、再会からわずか三日目のことだった

いつものように家に帰ったら、妹が自分の胸をナイフで貫いていたのだ

深く、それはとても深く

一瞬、何が起きたのか理解出来なかった

誰かが妹を殺そうとしたのだ

そう考えるようにして、妹を抱き抱えた

リサ「・・・ごめんねお兄ちゃん」

ブラック「どうしてこんなことを・・・」

リサ「私・・・私、もう汚されちゃったんだ」

ブラック「・・・なんだって・・・?」

リサ「神父さんが・・・毎晩、毎晩・・・」

ブラック「嘘だろ・・・!?イギリス清教が・・・」

リサ「・・・アンネもレベッカも・・・」


708 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:02:28.05 ID:lngF19+70
ブラック「・・・みんな・・・みんな・・・?」

リサ「もう・・・生きていたくないんだ・・・」

ブラックマンの服を掴んだあの掌

血まみれだったあの掌

その力を、ブラックマンは忘れない

忘れられない

リサ「・・・天国なんて行きたくないよ・・・」

ブラック「リサ!リサ!」

リサ「・・・もう・・・辛い思いはした・・・く・・・」

ブラック「リサ・・・?嘘だろリサ!?リサ!リサ!」

何度揺すっても、それきり妹は目を覚まさなかった

あの時

ブラックマンの心の中で何かが壊れたのだ


709 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:02:54.50 ID:lngF19+70
その日を境に、彼の心はイギリス清教から離れてしまった

ブラック(・・・何が神の教えだ・・・肉体的快楽に溺れた異端者が・・・)

彼が殺したのは、町を襲った神父やシスターだけだった

あの時の仕返しをするために

妹の大切なものを無理矢理奪った人間達を殺すために

彼は、虐殺さえも厭わなかった

ブラック(最大主教が・・・最大主教があの計画を立てた!)

ブラック(殺す・・・あの狂った指導者気取りの化け物を殺す!)

ただ

復讐の炎に駆られた男は、一人の女を殺そうとしていた

それだけだった

それだけの理由が、これほどの悲劇を生んだのだった


710 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:05:37.66 ID:lngF19+70

ブラック「・・・また夢か」

ブラックマンが辺りを見回す

星の位置はほとんど変わっていない

まだ時間はそれほど経っていなかったのだろう

ブラック(・・・あの頃の私はただ・・・復讐に燃えていたな)

小さな墓を見つめながら、ブラックマンが目を細める

ブラック(・・・ならば、なぜ私は今迷っている)

ブラック(・・・あの最大主教が救うと言っていたな)

ブラック(・・・変わったのだな)

ブラック(・・・あぁ、私だって変わったのだ)

ブラックマンが溜め息をつく

体のあちこちの激痛は、だんだん大きさを増していく

ブラック(・・・使いすぎたか)

追っ手の影は、まだ近づいてきてはいない


711 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:07:26.69 ID:lngF19+70
ブラック(・・・う・・・)

傷のなかったはずの左腕が痛む

袖を捲って見てみると、大きな痣ができていた

ブラック(・・・体の中から・・・破壊されるか)

大きすぎた力は己を傷付けてしまう

それは、分かっていた

ブラック(・・・どうすればいい・・・)

最大主教を殺す

その、最大の目的さえ揺らいだ今

ブラック(リサ・・・私は・・・)


イン「だ、誰・・・?誰かそこにいるの?」

ブラック「・・・」


712 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:09:54.81 ID:lngF19+70
ステイル「どうした、インデックス・・・」

イン「だ、誰か・・・」

ステイル「・・・!!ブラックマンか!?」

イン「え・・・?」

ブラック「・・・ルーンの魔術師とインデックスとかいう少女だな」

イン「う、うん」

ブラック「何をしに来た・・・私を追ってきたか?」

ステイル「君だって知っているだろう・・・」

ブラック「・・・追っ手はここには来ないと思われる・・・だが、さすがにずっといることは出来ないぞ」

ステイル「分かっているさ・・・」

ブラック「・・・」

イン「あ、あの・・・」


713 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:11:59.60 ID:lngF19+70
ブラック「・・・なんだ」

イン「そのお墓・・・誰のものなの?」

ステイル「墓・・・?そういえばそう見えなくもないね」

ブラック「墓を作る技術など私にはなかったからな、歪になってしまった」

ステイル「・・・ならそれは君が・・・」

ブラック「妹のものだ」

妹、という言葉を口にする度心が痛む

あれは、あそこには

イギリス清教に殺された妹が眠っている

ブラック「・・・魔術師よ」

ステイル「ステイルだ」

ブラック「・・・ステイルという少年よ」

ステイル「・・・なんだ」


714 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:14:34.54 ID:lngF19+70
ブラック「君はなぜその子を守った」

イン「・・・ステイルは、私を救ったんだよ?」

ステイル「!」

ブラック「・・・ならば問い直そう、なぜその子を救った」

ステイル「・・・僕は一度・・・いや、二度、この子を裏切ってしまった」

ブラック「・・・」

ステイル「それでも、やはり僕は心のどこかでこの子を救いたかったんだ」

ブラック「・・・それを実現は?」

ステイル「出来なかった・・・今までは言い訳をして背を向けていたんだ」

ブラック「・・・」

ステイル「でも・・・今は違う」


715 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:17:38.27 ID:lngF19+70
イン「ステイルは・・・私を救ってくれたんだよ、ちゃんと・・・約束通り」

ステイル「・・・約束・・・か」

ブラック「・・・約束か」

ステイル「・・・僕がこの子を救った理由はただ一つだ」

ブラック「一つだけか?」

ステイル「・・・その過程にはいろいろあったさ、上条当麻の説得、君からの罵倒、インデックスの涙・・・」

ステイル「でもね、究極的には僕は一つだけの理由で動いた」

ブラック「聞かせてもらおうか」

ステイル「・・・僕は」


ステイル「もう一度、インデックスと笑い合っていた日々に戻りたかった」

ブラック「・・・それだけか」


716 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:20:02.62 ID:lngF19+70
ステイル「・・・何、上条当麻などよりはずっとまともな理由だ」

ブラック「・・・」

ステイル「・・・世界を敵に回すことは・・・やっぱり僕には出来ないかもしれない」

ブラック「・・・世界をか」

ステイル「でもね・・・この子を」

ステイルがインデックスを見つめる

その少女を救うために

今まで、いろいろなことをしてきた

殺し、過ち、仕事、そして裏切り

それらが積み重なって彼女を救えたのなら

悪くは無い、と思っていた


ステイル「インデックスを隣にいさせてあげることはできる」


717 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:22:49.76 ID:lngF19+70
ブラック「・・・素晴らしい理由だな」

ステイル「単純な理由さ」

ブラック「清清しい理由だ」

ステイル「愚直な理由だろう?」

ブラック「・・・うらやましい理由だ」

ステイル「・・・格好のいい理由だろう?」

ブラック「・・・そうか、君は・・・大切なものを見つけたのか」

ステイル「・・・君は言っていたな、今のイギリス清教は狂っていると」

ブラック「・・・あぁ」

ステイル「でもね、僕はそれに反論しよう」

ブラック「・・・」

ブラックマンがステイルを睨みつける

だが、ステイルの目は揺るがない

ブラック「・・・なぜだ」

ステイル「・・・インデックスと出会うきっかけをくれたからだ」


718 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:27:14.47 ID:lngF19+70
ブラック「・・・」

ステイル「・・・もしもイギリス清教が・・・禁書目録なんてものを作らなければ」

ステイル「僕をその保護者という、悲しい役職につけなければ」

ステイル「・・・僕は、この子は・・・苦しむことなんてなかっただろう」

ブラック「・・・あぁ」

ステイル「それでも、もしも・・・もしもだ」

ステイルがブラックマンを見つめる

その目にある正義に近いものは、ブラックマンが手に入れられなかったものだった

ステイル「この子が禁書目録でなければ」

ステイル「僕がこの子の保護者でなければ」

ステイル「僕は・・・この子を救うことはできなかった」

ブラック「・・・結果論だな」

ステイル「・・・それの何が悪い」


719 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 10:29:29.20 ID:lngF19+70
ブラック「結果論だよ、君がその子を救えたから言える様な戯言だ」

ステイル「それの何が悪いんだい?」

ブラック「・・・そんなものを、君は許すのか」

ステイル「何を勘違いしている?」

ブラック「・・・」

ステイル「今の結果は与えられたものじゃない」

ブラック「何が言いたい」

ステイル「この結果は・・・僕だけが作り上げたものだ」

ブラック「!」

ステイル「それに満足して悦に浸って何が悪い?」


ステイル「僕はこんなにも素晴らしい結果を作った」

ステイル「・・・その結果のためなら、僕はどんな過程だって認めてやる」


720 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:05:31.93 ID:lngF19+70
ブラック「・・・ステイル、と言ったかな」

ステイル「あぁ」

ブラック「君はその子を守り通せるか」

ステイル「・・・もちろん」

イン「ステイル・・・」

ブラック「・・・知っているか?最大主教の目的を」

ステイル「君の魔術を完成させることだろう?」

ブラック「それをどうやって阻止する?」

ステイル「・・・」

ブラック「その子を連れて世界を逃げるか?無理だな」

ステイル「ならどうしろと」

ブラック「簡単だ、禁書目録と私の魔術、その二つがあって初めて最大主教の目録は完遂する」

ステイル「・・・」


ブラック「ならば、どちらかが欠ければよいのだよ」



721 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:05:58.95 ID:lngF19+70
エツァリ「・・・一体どういうことなんですかね」

エツァリはショチトルとイギリスの西部を駆けていた

外での陽動があらかた終了したところで、上条達がやってきたのだ

ショチトル「・・・ブラックマンとインデックス、両名が逃亡、か」

エツァリ「・・・イギリス清教が二人を捕獲すれば全ておじゃんですね」

ショチトル「・・・我々の味方は・・・天草式だけだ」

エツァリ「・・・イギリス清教の人間はなぜまだ最大主教に従うのでしょうか」

ショチトル「お前も組織にいた頃は殺しだって文句を言わずに行っただろう?」

エツァリ「・・・イギリス清教にも守りたいものがある、と」

ショチトル「ブラックマンの魔術があれば大抵のものは救えるからな」

エツァリ「全く・・・動機が不純でない分質が悪い」

ショチトル「何、私達は私達の理由でイギリス清教を殴るだけだ」

夜道というのはあまり人通りがない



722 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:06:30.47 ID:lngF19+70
そのため、目的の人物がいればすぐに分かるはずなのだが

エツァリ「いませんね・・・」

ショチトル「こんな街中は歩かないだろうな」

エツァリ「・・・えぇ」

二人は走る


上条「・・・美琴、本当に悪かった」

美琴「もう、何回も謝ってるじゃない」

二人はイギリスの南部を捜索している

二人だけでは広すぎるため、こちらには五和と建宮も一緒だ

建宮「二人とも見せ付けてくれるのはいいけど・・・」

五和「・・・ちゃんと探しながらお願いします」

上条「な、なんか五和がいつになく辛辣なんだけど?」


723 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:06:58.31 ID:lngF19+70
五和「そんなことないですよ」

建宮「しかし・・・まさかブラックマンが被害者側とはな」

上条「被害者じゃないさ・・・ただ、黒幕じゃなかっただけだ」

美琴「・・・天草式はこれからもイギリス清教の傘下にいるつもり?」

建宮「あぁ、やはり味方は大きいほうがいいのよな」

五和「もちろん、今回の件は許せない行動ですが」

上条「・・・よかった」

建宮「最大主教は・・・なぜあの魔術を完成させるつもりなんだ?」

上条「さぁ・・・」

美琴「・・・これは推測なんだけどさ」

上条「?」

美琴「最大主教って人にも守りたいものがあるんじゃない?」

建宮「地位か、命か・・・」


724 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:08:18.09 ID:lngF19+70
上条「誰だって守りたいものの一つや二つはあるさ」

建宮「・・・方法が悪かったのよな」

美琴「・・・ブラックマンはどうするかしら」

上条「・・・あいつは妹の復讐だって言ってたな」

五和「・・・それだけのために、最大主教の命を・・・」

美琴「・・・それほど大事な妹だったのかしらね」

上条「だとしても、俺達はあいつを止めなきゃいけない」

上条が空を見上げる

まだ、月が綺麗に輝いている

上条「俺達があいつを救わなきゃいけないんだ」

建宮「その通りなのよな」

美琴「・・・どうやって?」

725 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:10:25.71 ID:lngF19+70
上条「・・・ぶん殴る」

建宮「・・・単純な救いの手なのよな」

上条「救いの手なんていくらでもあるのさ」

五和「・・・」

上条「問題は、差し伸べるかどうかだ」

美琴「はぁ・・・ホント、馬鹿みたいに真っ直ぐね」

上条「あぁ、真っ直ぐだ」

建宮「それがうらやましいのよな」

上条「真似はしないほうがいいって」

ケラケラと上条が笑う

上条「・・・待ってろよ、ブラックマン・・・」

上条「インデックスはステイルが救った、あとは・・・」


上条「お前を救って御終いだ」


726 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:12:31.25 ID:lngF19+70

神裂「・・・見つかりましたか?」

対馬「いえ・・・」

天草式の二人は、イギリス東部を探索していた

少し離れたところではイギリス清教の人間が大勢捜索をしている

人数的には、明らかに二人が不利だ

神裂(・・・どうしましょうか)

対馬「・・・ここの地脈に・・・アクセスしてみますか?」

神裂「いえ・・・それを阻止されてしまう可能性が高いですね」

地脈というのは非常にナイーブなのだ

少し建物を破壊されただけでも、がらりと変わってしまう

神裂「・・・それよりも、ステイルと連絡を取りましょう」

対馬「そうですね・・・」


727 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:14:58.21 ID:lngF19+70
神裂が通信用の護符を取り出す

ステイルも、同じものを持っているはずだった

神裂「・・・おや、出ませんね・・・」

対馬「我々を警戒しているのでしょうか・・・?」

神裂「まさか、インデックスを守るという点で私と彼は協力者ですよ?」

対馬「なら・・・」

神裂「・・・通信できない理由があると考えたほうが・・・」

対馬「まさか、もうイギリス清教の人間に!?」

神裂「・・・どうでしょうか、イギリス清教の追っ手はまだ三人とも探しているようです」

遠くから聞こえる声

イギリス清教の追っ手たちは、ステイルも探せと言っている

神裂(・・・ならば上条当麻か誰かが・・・?)


728 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:17:28.09 ID:lngF19+70

テクパトル「・・・美月、どうだ?」

19090「いえ・・・レーダーには誰も・・・」

二人が捜索しているのは、イギリス北部

こちらにはイギリス清教の追っ手は来ていない

つまり、レーダーに引っかかった人間が十中八九、インデックスかブラックマンなのだが

19090「・・・おかしいですね、こちらには人っ子一人・・・」

テクパトル「・・・もしかして、あの三人は同じ方向に逃げたのでは?」

19090「同じ方向に?」

テクパトル「あぁ、イギリス清教の追っ手から逃げれば、自然と逃げられる場所は狭まってくる・・・」

19090「・・・待ってください、では・・・」

テクパトル「あぁ・・・」


テクパトル「あの三人・・・今頃、接触しているかもしれない」


729 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:19:34.73 ID:lngF19+70

ステイル「!」

ブラック「言っている意味が分かるかね?」

ステイル「まさか・・・インデックスを!!」

ブラック「・・・そうだとしたら?」

ステイル「くそ・・・」

ブラック「やめたまえよ、ここで魔女狩りの王を使うか?」

ステイル(・・・追っ手に気づかれるか・・・!)

イン「ス、ステイル・・・」

ステイル「インデックス、隠れていて・・・」

ブラック「・・・魔術師よ、君に一つ教えよう」

ステイル「・・・なんだ」

ブラック「・・・君は言ったな、結果を自分で掴んだならば、過程はどんなものでも認めると」

ステイル「あぁ」

ブラック「それは愚かなことだ」


730 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:21:35.46 ID:lngF19+70
ステイル「なんだと?」

ブラック「・・・結果がもしも悪ければ?君は過程さえ否定するだろう」

ステイル「当たり前だ、そこから何かを学んでみせる」

ブラック「無理だな」

ブラックマンが墓を指差す

小さな墓を

ブラック「それを見てみろ、それが私の行動の結果だ」

ステイル「・・・」

ブラック「そこに眠っている少女は・・・私の妹は、私が救えなかったのだ」

ステイル「それがなんだ」

ブラック「そこから何かを学べると思うか?無理だよ」

ステイル「それは君だけの場合だ」

ブラック「・・・君は、その子を裏切ったときに何かを学んだか?」

ステイル「・・・」


731 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:23:32.02 ID:lngF19+70
ブラック「何も学ばなかっただろう?」

ステイル「・・・この子を助けようと思えた」

ブラック「だからどうした」

ブラックマンの瞳に力が篭る

ブラック「・・・それは君が学んだわけではない」

ステイル「なに?」

ブラック「失敗から何かを学ぶ?それならそもそも最初から成功させればいい」

ステイル「成功できるとは限らない」

ブラック「そうだな、失敗していいことは世の中に五万とある」

ステイル「・・・」

ブラック「だが、失敗してはいけないこともあるのだ」

墓を見つめながら、ブラックマンが語る

ブラック「その子を生き返らせることができるか?無理だな」


732 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:25:19.36 ID:lngF19+70
ステイル「君だけだ」

ブラック「私がそれから何を学んだと思う?何も学べなかった」

ステイル「失敗から何かを学ばなかったから、お前は人を殺した!!」

ブラック「・・・君は一人も殺していないか?」

ステイル「!」

ブラック「必要悪の教会の人間が・・・」

ステイル「・・・僕が殺したのは異端者だけだ」

ブラック「・・・そこから何を学んだ」

ステイル「それは失敗ではない」

ブラック「人殺しが成功か、頭の中が見てみたい」

ステイル「君も人を殺した」

ブラック「それが失敗だと知っているよ」

ステイル「ならばなぜ」


733 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:27:17.16 ID:lngF19+70
ブラック「・・・ならばどうすればよかった」

ブラックマンが初めて、嘆きの言葉を発する

それは、とても消え入りそうな声だった

ブラック「・・・私は、その子だけが生きがいだった」

ステイル「・・・僕と同じだね」

ブラック「・・・君は守っている、いや・・・救っている」

ステイル「うらやましいのかい」

ブラック「・・・君は今のままでは私と同じだよ」

ステイル「・・・」

ブラック「失敗から学ぶのではない、失敗などしないでくれ」

ステイル「知ったことか」

ブラック「・・・大きな失敗をすれば、君も私と同じ狂った人間になる」

ステイル「僕はならない、この子がいるから」

ブラック「・・・そうか」


734 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:29:14.67 ID:lngF19+70
ステイル「・・・君は、なぜ妹を捨てた」

ブラック「・・・捨てた・・・か」

ステイル「裏切ったのだろう?」

ブラック「・・・イギリス清教の手に落ちるのを黙って見ていたわけではないがな」

ステイル「・・・」

ブラック「ただ、足掻くには力が無かった」

ステイル「そんな魔術を持っておきながら」

ブラック「これは、妹が亡くなってから身に着けた魔術だ」

ステイル「なに?」

ステイルが眉をひそめる

ブラックマンが妹を失ってから最初の殺人を犯すまで、それほど期間はなかったはずだ

ステイル「それほどの短期間で・・・」

ブラック「狂った人間は恐ろしいよ」

ステイル「・・・化け物だな」


735 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:31:14.17 ID:lngF19+70
ブラック「・・・ステイルよ」

ステイル「なんだい」

ブラック「君はその子を救い出した・・・イギリス清教を敵に回したんだ」

ステイル「後悔なんてしていない、この子の温もりを守れるなら」

ブラック「愚かだな・・・私と同じだ」

ステイル「・・・最後に聞いていいかい」

ブラック「なにかね」

ステイル「君はどうして、妹の復讐なんてもののために・・・イギリス清教を敵に回した?」

ブラック「・・・」

ステイル「我々にとって、イギリス清教を敵に回すのは・・・世界を敵に回すのと同じだ」

ブラック「なんだ、そんな簡単なことか」

ステイル「簡単?」

ブラック「単純な理由だよ」


736 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:33:23.88 ID:lngF19+70
ステイル「・・・なんだ」

ブラック「私はね、何もたった一人の少女のために世界を敵に回せるわけではない」

ステイル「・・・待て」

ステイルがその言葉に眉をひそめる

それは、たしか上条が言っていたことと同じだ

ブラック「・・・私はヒーローではないのだよ」

ステイル「・・・」

ブラック「でもね」

ブラックマンがぽつりと呟く

その目には力が宿っていた

寂しい、独りよがりの力が


ブラック「ただ一人の愛した妹のためなら、何だって敵に回せたのさ」

ステイル「・・・君は・・・」


737 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:35:17.56 ID:lngF19+70
そう

上条当麻のようなヒーローと

ブラックマンのような悪人

その二人は、同じ意志から行動していたのだ

ただ、それぞれの結果が真逆だっただけで

深層心理も、行動理念も同じだったのだ

ステイル「・・・そのために、イギリス清教を・・・?」

ブラック「妹の愛したイギリス清教に戻したかった」

ステイル「そんなことのために・・・」

ブラック「私の愛した妹の仇を取りたかった」

ステイル「君は・・・」

ブラック「私は、何も出来なかったのだ」

ステイル「世界を敵に回したのか・・・」

ブラック「だから、今成し遂げるのさ」


738 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:38:11.02 ID:lngF19+70
ブラックマンがロンギヌスの槍を生み出す」

ステイル「貴様・・・!!」

ブラック「・・・私は、最大主教の思惑を破る」

苦しそうに顔を歪めながら、ブラックマンが言う

なぜ苦しそうなのか、ステイルには分からない

ブラック「・・・それが、最後の目的だ」

ステイル「・・・魔力を追われれば、すぐに追っ手が来る」

ブラック「ならばそれまでに片付けよう」

槍を振るうブラックマンの顔は、笑っていた

本当に嬉しそうに

ブラック「そうだ、やっと終わるんだよ」

ステイル「ブラックマン・・・」

ブラック「最後だ、戦おうじゃないか」


ブラック「ルーンの魔術師よ」


739 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:40:16.09 ID:lngF19+70

神裂「!!強力な魔力の流れを・・・」

対馬「向こうです!!」


テクパトル「!なんだこの魔力は・・・」

19090「ま、魔力?」

テクパトル「行こう!!」


五和「!建宮さん!」

建宮「あぁ!!」

上条「な、なんだよ?」

建宮「魔力の流れを感じ取った!!」

美琴「まさかブラックマン!?」

建宮「あぁ!!!」


エツァリ「!!ステイルさんの魔力も感じます!」

ショチトル「ブラックマンと同じ方向・・・!?」

エツァリ「まさか戦っているのですか!!!」


740 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:42:46.41 ID:lngF19+70
アニェーゼ「!みんな、行きますよ!!」

ルチア「まさかここまですぐに魔力を流してくれるとは・・・!」

アンジェレネ「き、気をつけましょうね!!」

シェリー「はぁ・・・もうモチベーションが・・・」

ルチア「急いで!!!」


ローラ(・・・魔力が流れてきてるわね)

ローラ(・・・せっかく寝ようと思ったのに・・・)

ローラ(・・・ステイルもいるみたいね)

ローラ(・・・ブラックマン、貴様・・・魔術を使うのね)

ローラがそっと部屋から外へと向かう

ローラ「はぁ・・・寒い」


ローラ「・・・不気味な話もこれで終わりね」


741 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:44:48.55 ID:lngF19+70

ステイル「・・・こんな魔力、すぐ見つかるぞ」

ブラック「・・・それが何かね」

ステイルは魔女狩りの王を、ブラックマンはロンギヌスを

それぞれ、全力を出して出現させていた

ブラック「・・・素晴らしいな、君はいくつだったかな」

ステイル「14歳だ」

ブラック「才能に溢れているね」

ステイル「・・・この力は、この子を救うためにつけたものだ」

ブラック「救うための力か・・・」

自分のものとは真逆だ、とブラックマンが笑う

ステイル「・・・行くよ」

ブラック「ではこちらも」


742 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:47:20.25 ID:lngF19+70
ステイル「魔女狩りの王!!」

ブラック「・・・」

魔女狩りの王が、周りの木々さえ焼き尽くす

その強大な炎は、すぐさまブラックマンを飲み込もうとする

ブラック「ちっ・・・」

ステイル「どうした、火の炉から身を守ったという奇跡は起こさないのか」

ブラック「君はネブカドネザルかい」

ステイル「違うね!」

ブラック「!」

ステイルの魔女狩りの王は、決して死なない

敵を殺すまで、死なないのだ

ブラック「面倒だ!!」

ステイル「君をここで焼き払う!!」

743 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:51:09.21 ID:lngF19+70
強大な炎が、ロンギヌスの槍さえも焼き尽くす

ブラック「なんという出力だ・・・」

ステイル「さぁ、ノアの洪水でも起こしてみたまえ!」

ブラック「・・・」

ステイル「どうした、なぜ・・・」

ブラック「君は・・・ここまでの力をつけてもなお、やっと一人の少女しか守れないのか」

ステイル「なに?」

ブラック「こんな力があれば・・・」

ステイル「見てみろ、これは焼き尽くすための炎だ・・・温もりを与えるためのものではない!」

ブラック「・・・誰か、もっと大勢を守ろうとは思わないのか!」

ステイル「君に言われたくはない!」

ブラック「これほどの男が!!」

ブラックマンがロンギヌスの槍を掻き消す

生み出したのは、洪水だった

ステイル(来た・・・!!)


744 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:53:54.88 ID:lngF19+70
ブラック「お望みの攻撃だ!」

ステイル「インデックス、こっちに来てくれ!!」

イン「う、うん!!」

インデックスがステイルの元へと走る

ブラック「何を・・・」

ステイル「・・・ノアの洪水をどうやって凌げばいいか知っているかい?」

ブラック「!」

ステイル「箱舟を作るのさ・・・」

ブラック「貴様、仕込んでいたか!」

ブラックマンがすぐさま洪水を打ち消す

今度は、燃え盛る火の剣を

ステイル「掛かったな!!」

ブラック「!?」


745 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:56:17.83 ID:lngF19+70
ステイルが、ルーンのカードを辺りに撒き散らす

ブラック「箱舟など・・・ないではないか!!」

ステイル「卑怯だと思うならまた使ってみろ!!」

ブラック「く・・・」

ブラックマンが燃える炎の剣を構える

ステイル「どうした、なぜ使わない!?」

ブラック「出来るわけがないだろう・・・」

撒き散らされたルーンのカードから、無数の火柱が立ち上がる

ステイル「・・・君の魔術には必ずといっていいほど、弱点がある」

ブラック「神の奇跡など・・・神など、所詮はこの程度のものだ!!!」

ステイル「それを君は知っていた!!」

ステイルが魔女狩りの王を、ブラックマンの元へと走らせる

ブラック「・・・神など・・・いないのだよ、少年」


746 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 15:59:31.47 ID:lngF19+70
ステイル「魔女狩りの王!!」

巨大な炎がブラックマンを包もうとする


イン「やめて、ステイル!!!」

ステイル「!」

それがブラックマンを飲み込む寸前

インデックスがステイルの腕を掴んだ

ステイル「インデックス・・・」

イン「いやだよ・・・ステイルが誰かを殺すところなんて見たくないんだよ!!」

ステイル「だが彼は・・・」

イン「どうして!?どうして殺さなきゃ解決しないの!?」

ステイル「それしか出来ないから・・・!」

ブラック「・・・余所見をするな・・・」

ブラックマンが、いつの間にかステイルの目前に立っていた

ステイル「しまっ・・・」


747 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:01:31.42 ID:lngF19+70
ブラック「サムソンの力だ」

ステイルの顔面を、ブラックマンが殴りつける

ステイル「ぐぁぁぁぁ!!!」

芝の上を、ステイルの体が転がっていく

イン「ステイル!!」

ブラック「・・・愚かだな、少女よ」

イン「!」

ブラックマンが、インデックスを見下ろす

ステイル「インデックス・・・逃げろ・・・!」

イン「あ・・・」

ブラック「君が禁書目録か・・・」

イン「わ、私を・・・」

ブラック「どうするか、聞きたいのかね?」


748 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:04:07.83 ID:lngF19+70
イン「・・・ど、どうしてこんな・・・」

ブラック「・・・ステイルと言ったか、向こうの少年なら・・・私を殺せたはずだ」

顔をしかめながらブラックマンは吐き捨てる

そう、今のブラックマンではもはやステイルは倒せなかった

たとえノアの術式を使えても

ブラック(・・・途中で私の魔力が尽きていただろうな・・・)

イン「・・・どうして・・・あなたもこんなことを・・・」

ブラック「君には分からないさ、何も失ったことのない・・・」

イン「私はたくさん失ってきたんだよ!!!」

インデックスの声が闇夜に響いた

ブラック「・・・なんだと?」

イン「私は・・・何度も失ったんだよ・・・」


ブラック「・・・何を・・・?」

イン「・・・思い出を・・・なんだよ」


749 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:06:31.91 ID:lngF19+70

上条「くっそ・・・この方向って・・・」

美琴「たしか、初めてブラックマンと接触したところよね!」

五和「もしかして・・・何かそこにあるのでしょうか」

建宮「あぁ、わざわざそこに向かったということは・・・」

上条「墓だ・・・」

建宮「墓?」

上条「あいつの妹の墓だ・・・そうだ、あいつはそれを!!」

美琴「・・・でも、あんな狭い森じゃ追い詰められたらもう・・・」

建宮「くそ、俺達が早く回収しないと!!」

五和「!!女教皇様!!」

神裂「みなさん、来ていましたか!!」

建宮「当たり前なのよな!!!」

対馬「どうするの!?イギリス清教の追っ手も向かってるわよ!!!」

上条「急ぐぞ!!」


750 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:08:49.02 ID:lngF19+70

テクパトル「・・・エツァリ!!」

エツァリ「!!テクパトル、どうしてあなたがここに!?」

ショチトル「私が回復魔術を・・・」

テクパトル「今はそんなことはどうでもいい!!」

19090「早く向かいましょう!」

エツァリ「ですがイギリス清教の追っ手はすでに・・・!」

19090「どうするんですか!?」

テクパトル「くそ・・・」


アニェーゼ「!!アンタたちは!!」

テクパトル「あぁ・・・?」

エツァリ「イ、イギリス清教・・・!!」

19090「まさか鉢合わせするとは・・・」

ルチア「あなたたちもブラックマンを・・・!!」


751 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:11:00.73 ID:lngF19+70
アンジェレネ「ど、どうしますか!?」

アニェーゼ「戦うに決まってますよ!!」

ルチア「何を言っているんですか、私たちが足止めされてもメリットはありません!」

テクパトル「・・・エツァリ、俺達はどうする」

エツァリ「・・・向かいましょう」

アニェーゼ「ちっ!!そうは・・・」

アニェーゼが蓮の杖を構える

だが、その体に向けて19090号が銃を突きつける

テクパトル「お、おい・・・」

19090「・・・死にたいならば、どうぞ」

アニェーゼ「う・・・」

エツァリ「19090号さん・・・」

19090「・・・我々には我々の目的があります」


752 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:13:24.43 ID:lngF19+70
ルチア「私達にだって!!」

19090「ミサカたちは友達を守りたいだけです!!!」

アニェーゼ「そんなちっぽけな物のために大きな得を捨てるんですか!!」

19090「ちっぽけな物しか、ミサカの胸には抱きしめられません!!」

アニェーゼ「あぁそうですか!!なら・・・」

ショチトル「・・・よく言った、19090号!!」

ショチトルが黒曜石の槍を取り出す

ルチア「!シスターアニェーゼ!!」

アニェーゼ「この・・・」

エツァリ「おっと、自分も参戦しますよ」

テクパトル「ならば俺も」

アンジェレネ「み、みなさん・・・」

ルチア「・・・この状況は・・・芳しくないですね・・・」


753 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:16:51.51 ID:lngF19+70
エツァリ「どうしますか?ここで我々と戦いますか」

アニェーゼ「・・・」

エツァリ「それとも目標を追いますか」

ルチア「あなた方は人数の点で不利ですよ!!」

エツァリ「それでも、我々には譲れないものがあります!!」

ショチトル「ふん、自分達のことだけしか考えられないお前達じゃ誰も救えないんだよ」

アニェーゼ「好き勝手・・・」

シェリー「・・・はいはいそこまで」

シェリーが突然、手を叩く

テクパトル「・・・てめぇ」

シェリー「よく聞け馬鹿共」

ルチア「シスターシェリー、何を・・・」

シェリー「黙って聞けよあばずれ」

ルチア「あ、あば・・・」

754 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:19:29.18 ID:lngF19+70
シェリー「こんな話をしている間に、他の追っ手たちは相当進んだはずよ」

エツァリ「それもそうですね・・・」

アニェーゼ「あぁもう!!いまさら言っても間に合わないじゃないですか!!!」

テクパトル「・・・なんだ、それが」

シェリー「だがな、面白いことを教えよう」

シェリーが誇らしそうに笑う

シェリー「ブラックマンはどうせ、逃げてくるだろう?」

ショチトル「当たり前だ」

シェリー「それがな、あの場所から逃げるにはおそらく・・・というかほとんどここを通る」

19090「・・・なんですって?」

シェリー「ここを通るんだ、ほぼ確実に」

ルチア「・・・待ち伏せですか」

エツァリ「・・・それでは結局、埒が明きませんよ」


755 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:21:48.98 ID:lngF19+70
シェリー「知るか、私は別に最大主教の言うとおりにするつもりはないわよ」

アニェーゼ「!!ブラックマンを殺すつもりですか!?」

シェリー「さぁ、気まぐれにやるわよ」

テクパトル「・・・そうかよ、なら俺達は進もう」

シェリー「分かってないなお前は・・・」

シェリーが突然、エリスを生み出す

シェリー「一応、お前には借りを返したいのよ」

ショチトル「ほう・・・テクパトル、何かしたのか」

テクパトル「撃退しただけだ」

シェリー「引き分けだ」

テクパトル「・・・あぁそうか」

シェリー「どうした?怖いのか」

テクパトル「・・・ちょうどいい、お前にも借りがあるからな・・・」


756 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:23:46.66 ID:lngF19+70
シェリー「そこの子のこと?」

テクパトル「あぁ」

テクパトルが黒曜石の槍を抜く

エツァリ「二人とも!!一応ここは街中ですよ!!!」

シェリー「そうね」

テクパトル「コロシアムみたいでいいじゃないか」

エツァリ「被害が出ますよ!!!」

アンジェレネ「そ、そうですよ!!」

テクパトル「・・・」

シェリー「・・・」

テクパトル「・・・ちっ、借りはまた今度返してやる」

シェリー「そうね・・・それがいいわ」

一旦、二人が離れる

テクパトル「・・・にしても、魔力の流れが・・・!!」

シェリー「・・・魔力の流れが消えたわね」



757 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:25:39.47 ID:lngF19+70

ステイル「インデックス・・・」

ブラック「・・・思い出を・・・だと?」

イン「・・・私はね・・・昔の記憶を消されてるの」

ブラック「なぜだ」

イン「・・・最大主教がステイルを騙して・・・」

ステイル「インデックス・・・!!」

ブラック「・・・君が消したのか」

ステイル「・・・あぁ、そうだ」

ブラック「それでも君は・・・この子を守ったのか・・・?」

ステイル「当たり前だ・・・」

ブラック「忘れられても尚?」

ステイル「当然だろう・・・僕はその子を守ると・・・救うと決めたんだ・・・」

ブラック「・・・」


758 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:28:21.23 ID:lngF19+70
ステイル「君には分からないだろう・・・」

ブラック「・・・」

ステイル「過去ばかりを見て・・・今を見ることのできない君には!!!」

ステイルが地面に拳を叩きつける

体に力が入らないのだ

ステイル「その子から離れろ・・・離れろ!!」

ブラック「・・・この子を・・・守ったのか」

ステイル「・・・僕が決めた・・・ならば、僕が貫かなければならない!!」

ブラック「・・・綺麗事だ」

ステイル「それを貫かなければ・・・世界は変わらないらしいよ」

ブラック「・・・」

ステイル「インデックスから離れろ・・・でないと君を殺すぞ」

ブラック「・・・そうか」


759 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:32:01.63 ID:lngF19+70
ブラックマンがインデックスの頭に触れる

ステイル「貴様!!!」

空には、いつの間にか太陽がうっすらと昇り始めていた

朝の4時ほどだろうか

美しい夜明けだった

ブラック「・・・君には悪いが、最大主教の思い通りにはできないのだよ」

ステイルのほうを見ながら

いや、その奥にある墓を見ながら、ブラックマンが囁く

ステイル「放せ・・・放せ!!!」

ブラック「私かこの子、どちらかが死ななければならないのだ」

ステイル「やめろぉ!!!」

ステイルの叫び声が響く

インデックスが、ブラックマンを見上げる

そして、訊ねた


イン「あなたは・・・死ぬつもりなの?」


760 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:38:09.18 ID:lngF19+70

神裂「・・・魔力の流れが消えました」

上条「なんだって?」

美琴「じゃ、じゃあ・・・」

五和「おそらく、決着がついたのでしょうね」

上条「ふざけんなよ!!どっちかが・・・」

建宮「落ち着け、死んだとは決まっていないのよな」

対馬「・・・そろそろ夜明けね・・・」

上条「くそ・・・」

神裂「・・・明るくなれば、捜索は簡単になりますね・・・」

上条「あいつらが見つかるのも時間の問題か・・・」

美琴「どうするの?」

神裂「・・・そうですね・・・ここで待ちましょう」

上条「なんだって?」


761 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 16:42:44.68 ID:lngF19+70
神裂「・・・見てください、向こうを」

神裂が指差した方向には、アニェーゼ部隊やテクパトルたちがいた

美琴「な、なんで・・・」

神裂「おそらく、ここにはブラックマンがやってくるでしょう」

建宮「・・・ここしか逃げ道がないはずだ」

五和「・・・そうですね、向こうはもう森だけです」

対馬「・・・そんな中に入って行ったら、どっちにしろ戻れないもの」

上条「・・・そうか」

美琴「・・・もうすぐね」

神裂「・・・最大主教が、今日が最後になると言っていたのが気になりますね」

上条「なに?」

神裂「いえ・・・」



762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/10/27(木) 17:15:57.44 ID:JjC4lDtAO
まだー?
763 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:16:28.85 ID:lngF19+70

イン「・・・そうなんじゃないの?」

ブラック「・・・」

ステイル「インデックス、離れろ!!」

イン「・・・その目・・・知ってるんだよ」

インデックスがブラックマンの目を見つめる

なぜか、少し悲しそうな瞳

何かを諦めたような瞳

それでも、揺るがない瞳

イン「その目は・・・自分を犠牲にするときの・・・」

ブラック「違う」

イン「そうなんだよ!!!とうまもみこともステイルもかおりも!!みんなそんな目をしてたんだよ!!」

ブラック「・・・君には分からないさ」

インデックスの頭に手を置いたまま、ブラックマンが呟く

ステイル「インデックス・・・」

イン「どうして・・・?」


764 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:40:55.90 ID:lngF19+70
ステイル「離れろ・・・インデックス・・・」

イン「ねぇ・・・」

ブラック「・・・君には分からないだろうさ」

イン「どうしてみんなそんなに・・・」

ブラック「死に場所を探しているのさ」

イン「・・・」

ブラック「誰にでも、それを選ぶ権利がある」

イン「でも・・・」

ブラック「・・・私は・・・妹の仇を取るために生きてきた」

ステイル「・・・」

ブラック「別に魔術を完成させるために生きてきたわけではない」

イン「でも・・・」

ブラック「・・・最後の仕事は、妹の仇を取ることだった」

イン「死んじゃダメなんだよ!!」


765 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:43:48.76 ID:lngF19+70
ブラック「なぜ?死ぬことで救われるのだ」

イン「そんなことないんだよ!!」

ブラック「・・・ステイルと言ったな、この少女はどうも十字教を理解していないようだ」

ステイル「ふん・・・最後の審判に救いがある・・・か」

ブラック「君はよく分かっているな」

ステイル「だが・・・生きているときに何も出来なかった人間が、死んだあとに何を出来る?」

ブラック「・・・そうだな、何も出来ない」

ステイル「君はまさにそれだ・・・」

ブラック「分かっているさ」

ブラックマンがそっとインデックスの頭から手を放す

ブラック「・・・君の知識を奪えば、私は最大主教も殺せるのだろうね」

イン「・・・うん」

ブラック「ならば私はそれをする必要がない」

ステイル「・・・諦めるのかい」

ブラック「まさか」


766 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:47:23.81 ID:lngF19+70
ステイル「・・・ならばなぜ?」

ブラック「人に裁きを下すのは神だが・・・罪人に裁きを下すのは人間であるべきだ」

ステイル「・・・人間のまま、君は最大主教を・・・」

ブラック「・・・魔術師よ、この少女を君は守りきれるか」

ステイル「・・・君に言われるまでもないさ」

ブラック「そうか・・・そろそろここにも追っ手が来る」

ステイル「・・・分かっている」

ブラック「ならば出来る限り時間を稼いでくれ」

ステイル「・・・」

ブラック「その間に私は、最大主教と決着をつけねばならない」

ステイル「・・・そうかい」

ブラックマンが墓の前に立つ

ブラック「・・・ここに来るのもおそらくは最後だ・・・どのような結末だろうと」


767 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:50:23.00 ID:lngF19+70
ステイル「・・・君は・・・なぜ戦うんだ」

ブラック「自分を救うためだ」

ブラックマンが歩き出す

ステイル「面白い考えだ・・・」

ブラック「・・・ではな、魔術師」


上条「・・・!!あれは・・・」

神裂「ブラックマンです!!!」

美琴「ウソ・・・ホントに来たわよ・・・」

五和「みなさん、行きましょう!!」

対馬「術式を!!」

建宮「あくまで確保なのよな!!!」

上条「・・・んなまどろっこしいこと出来るか!!!」

神裂「!」



768 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:53:34.65 ID:lngF19+70
上条が走り出す

その先には、ブラックマンがいた

彼らが対峙するのは二回目だった


アニェーゼ「あ、あの少年!!!」

シェリー「・・・どうするの?」

ルチア「止めます・・・」

テクパトル「おっと、ジャマはさせないからな!!」

エツァリ「上条さんだけが・・・ブラックマンを救えます!!!」

ショチトル「そうだとも!!」

アニェーゼ「くっ・・・」

19090「あなた達と違って・・・我々は、信念を持っています!!」

アンジェレネ「私達にだってあります!!」

テクパトル「ならば見せてみろ!!!」


769 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:57:15.21 ID:lngF19+70
神裂「!アニェーゼ部隊と・・・」

美琴「テクパトルたちが戦ってるわ!!」

五和「我々も加勢しますよ!!」

建宮「おっしゃー!!!やってやるのよな!!」

対馬「最後の最後よ、張り切っていくわよ!!」

神裂「もちろん!!!」


上条「・・・よぉ」

ブラック「・・・なんだ、周りに魔術師だらけだな」

上条「みんながお前を待ってたんだぜ」

ブラック「ほう・・・遅かったかな」

上条「・・・いや、ちょうどよかったかもな」

ブラック「・・・夜明けの中で我々にも光が見えるかな」

上条「俺にはもう見えてるさ」

ブラック「そうか」



770 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 17:59:11.39 ID:lngF19+70
上条「・・・周りの戦いは気にしないで行こうぜ」

ブラック「・・・思えば、君には完全に敗北していたな」

上条「まさか、引き分けだろ」

ブラック「・・・君は、なぜ戦う?」

上条「美琴を救うためだった、そして今度はてめぇを救ってやる」

ブラック「傲慢だな・・・」

上条「誰かを幸せに出来るなら、それでもいいだろ」

ブラック「・・・私を救えるか?」

上条「お前が救われたいなら」

ブラック「ならばやってみろ」

上条「あぁ」

上条がブラックマンの懐に飛び込む

だが、なぜかブラックマンは魔術を発動しない


771 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:01:47.17 ID:lngF19+70
上条(・・・なんだ?なんで魔術を使わない?)

ブラック「・・・君にはいくら魔術を使っても消されてしまう」

上条「へぇ・・・無駄なことはしたくない、か」

ブラック「当たり前だろう?」

ブラックマンが蹴りを放つ

だが、所詮は素人の蹴りだ

別に格闘の経験があるわけではない

上条「なんだよ・・・そんなので俺に勝つ気か!?」

ブラック「何も勝つ必要はない・・・最大主教が来るまで持ちこたえれば!!」

上条「お前はまだ最大主教を・・・」

ブラック「恨むに決まっているだろう!!!」

上条「なんでそこまで恨むんだよ!?」

ブラック「そうだな・・・教えてやろうか・・・!!」

拳と拳をぶつけながら、二人が会話を続ける



772 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:05:30.87 ID:lngF19+70
上条「・・・」

ブラック「・・・私の妹はな、イギリス清教に殺された!」

上条「それは知ってるさ!!」

二人が一定の距離を取る

ブラック「分かるか!?イギリス清教のシスターを目指していた妹の絶望が!!」

上条「それだけでこんなことを・・・」

ブラック「それだけ!?まさか!!」

ブラックマンが上条の脇腹に拳を突きつける

上条「ぐっ・・・」

ブラック「私の妹はな・・・すぐに殺されたわけではない・・・いや、それどころか彼女は殺されたのではない!!」

上条「なんだって・・・?」

ブラック「自ら命を捨てたのだ!!!」

上条「自殺・・・?」

ブラック「分かるか!?十字教で最も重い罪と言われることを、妹はしたのだぞ!」


773 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:08:02.95 ID:lngF19+70
上条「そんなこと・・・」

ブラック「なぜか分かるか!?」

ブラックマンが声を荒げる

その瞳には、怒りがあった

ブラック「あの時、もう妹は十字教など捨てていたのだ!」

上条「・・・なんでだよ」

ブラック「天国など信じられないほどに・・・神など信じられないほどに!!」

ブラックマンが何度も上条の顔を殴ろうとする

それを、上条はどうにかかわしていく

上条「・・・何があった」

ブラック「そうだ・・・そうだ、妹はな!!!」

二人が互いの脇腹に拳をぶつけ合う


ブラック「・・・イギリス清教の神父に犯されたのだ!」

上条「!!」


774 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:10:29.06 ID:lngF19+70
その言葉に、周りの戦いの音が病む

それほどまでに、その事実は信じられないことだったのだ

神裂「・・・イギリス清教の神父が・・・?」

建宮「ま、まさか・・・」

アニェーゼ「強姦は・・・十字教では禁忌なんですよ!?」


ブラック「それがなんだ!?妹も、その友人も!!!」

ブラックマンの怒りは収まらなかった

だんだんと、上条が劣勢に追い込まれていく

ブラック「神父に陵辱されたのだ!!捕らえられ、そして・・・毎晩毎晩!!!」

美琴「そんな・・・」

ブラック「その苦しみがお前達に分かるか!?」

バキン、と音がする

ブラックマンの拳が地面に当たったのだ


775 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:12:26.97 ID:lngF19+70
骨が砕けたような音だ

だが、ブラックマンは全く気にしていない

もっと、もっと大きな痛みが彼の中にあったのだ

ブラック「・・・妹はシスターになるはずだった・・・」

ルチア「・・・そ、それは・・・」

ブラック「分かるかね・・・あの子は、16になっても・・・一人の男とも交わりを持たなかったのだ・・・」

テクパトル「・・・」

エツァリ「処女・・・ですか」

ブラック「あぁ・・・だがな、それを踏みにじられたのだ・・・」

拳から血が溢れている

それを見つめるブラックマンの瞳に、涙が溢れていく

ブラック「他でもない、信仰していたイギリス清教の神父にだ!!!」


776 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:14:45.17 ID:lngF19+70
上条「・・・お前は・・・」

ブラック「何が・・・何が十字教だ、何が聖職者だ・・・」

涙を流しながら、ブラックマンがアニェーゼ達を見つめる

ブラック「君達は知らないだろう?ローマの者だったのだから・・・」

アンジェレネ「そ、そんなことを・・・」

ブラック「・・・天草式よ・・・君達はどうだ?」

五和「・・・知りませんでした・・・」

建宮「・・・それを・・・最大主教は命じていたのか?」

ブラック「まさか・・・それなら私はあいつをとっくに殺しているさ・・・」

上条「じゃあなんで・・・」

ブラック「あの襲撃を命じたのは最大主教だったのだ・・・それだけだ」

上条「それで命を狙うのか?」

ブラック「あぁ」


777 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:17:54.38 ID:lngF19+70
上条「・・・そうか」

ブラック「・・・あの子はな、幸せな世界を望んでいた」

上条「・・・その妹さんは・・・」

ブラック「・・・だがな、死ぬ直前には・・・天国さえいらないと言っていたのだ」

上条「・・・それほど辛い思いをしたのか」

ブラック「私には分からないさ」

ブラックマンが首を振る

彼にも、結局は理解できないのだ

上条「・・・」

ブラック「でもな・・・あの子がいない世界を、私は愛せなかった」

上条「そんなに、妹が好きだったのか」

ブラック「唯一の肉親だった!」

ブラックマンが拳を振り回す

778 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:20:16.47 ID:lngF19+70
上条「だったらその子が目指したイギリス清教を作ればいいだろ!!」

ブラック「私なんかに出来るわけがないだろう!!」

拳が上条の胸に突き刺さる

上条「ぐ・・・」

ブラック「・・・っ」

ブラックマンの拳は、片方砕けている

その拳で上条を殴りつけたのだ

ブラック「・・・そうだ、今思えば・・・信仰し始めたのも、あの子といつまでも一緒にいたかったからなんだ」

上条「・・・お前は・・・なんでそんなことしてるんだよ・・・」

ブラック「あの子を救わなければならなかった」

上条「お前の妹はもう死んでるんだ!!!」

ブラック「それくらいは分かっている!!」

上条「いつまでてめぇは妹を苦しめるつもりだ!!」


779 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 18:22:46.42 ID:lngF19+70
ブラック「苦しめるだと!?」

上条「お前の妹が生きていたら、今のお前をどう思う!?」

ブラック「生きていない!!だからこそ私はここまで憤っているのだ!!」

上条「ふざけんな!!だったら復讐の意味なんてねぇだろうが!!」

ブラック「ならばどこにこの怒りをぶつければいい!?」

上条「そんなもの、知るかよ!!」

ブラック「君の言っていることは綺麗事だ・・・」

上条「綺麗事を押し通すんだ・・・」

ブラック「私に何が変えられる!?イギリス清教の何が!?」

上条「お前はなんでそこまで力をつけた!?」

ブラック「妹の仇を・・・最大主教を殺すためだったんだ!!!」

上条「そんなことのためにてめぇは力を振るうのか!!!!」



780 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:03:01.28 ID:lngF19+70
ブラック「そんなこと・・・か」

上条「てめぇの力なら、誰かを守れたはずだ!!」

ブラック「誰を守れと言うのだ?妹のいない世界の誰を」

上条「・・・誰かを守ろうとすれば・・・お前は狂わなかったはずだ」

ブラック「そうはならなかった」

上条「・・・お前は・・・妹を救えなかった」

ブラック「そうだな・・・」

上条「お前が手を放したんだ!!お前のせいで死んだんだ!!」

ブラック「その通りだ!!!」

上条がブラックマンの服を掴む

上条「俺と・・・俺と同じなんだよ!!」

ブラック「!」

上条がそのまま、ブラックマンを投げ飛ばす

ブラック「ぐっ・・・」

上条「俺だって美琴の手を放した!!!」


781 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:05:30.03 ID:lngF19+70
ブラック「君は・・・君の大切な少女は!!死ななかった!」

上条「あぁそうだ・・・死んでたら俺だって狂ってたかもしれない!」

ブラック「ならば偉そうに御託を語るな!」

ブラックマンが体ごと、上条に突っ込む

上条「おわっ・・・!」

ブラック「君には分からんさ!!」

地面に倒れた上条の頭を、ブラックマンが殴りつける

上条「う・・・」


美琴「当麻!!」

建宮「行くな!!」

美琴「でも・・・!!」

建宮「・・・ブラックマンを救えるのは・・・あの馬鹿だけなのよな」

神裂「・・・そうですよ」

美琴「・・・当麻・・・」



782 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:08:11.30 ID:lngF19+70
ブラック「・・・君だってあの子が死んでいたら!!最大主教を恨んだだろう!?」

上条「当たり前だ!!」

ブラック「そんな君が!!偉そうに私に言えるのか!?」

上条「言えるね!!」

ブラック「なぜ・・・」

上条「てめぇだけが手を放したんじゃねぇんだよ!!」

ブラック「!」

上条「てめぇが聞いたか知らないけどな!!ステイルはインデックスの記憶を消したんだ!!」

体の上に乗っているブラックマンを蹴り飛ばす

ブラック「そんなことは・・・」

上条「あいつは自分の手でインデックスを殺した!!」

ブラック「・・・!」

上条「・・・最大主教のせいだと分かったとき・・・あいつはどうしたと思う?最大主教を殺そうと考えたと思うか?」

ブラック「・・・何が言いたい・・・」


783 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:28:55.50 ID:lngF19+70
上条「俺の友達にはな!!たくさんの人間を殺したヤツもいる!」

ブラック「それがなんだ!!」

上条「殺されたのは・・・美琴の妹だった!!」

ブラック「!」

上条「それでも、美琴はそいつを殺そうなんてしていない!!」

上条がブラックマンに頭突きを喰らわせる

ブラック「・・・なぜ・・・」

上条「お前には分からないさ!!」

ブラック「・・・なぜ恨まない!?」

上条「恨んでるさ!!俺だって恨んでる!!!」


19090「・・・お義兄様・・・」

美琴「当麻・・・」


784 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:32:47.68 ID:lngF19+70
上条「でもな、殺したところで何になる!?」

ブラック「そうすることしか出来なかった!!」

上条「お前は・・・お前はいつまで過去に縛られてやがる!?」

ブラック「縛られてなどいない!!」

二人の考えは決して交わらない

ブラックマンは、最大主教を恨んでいる

上条は、そんなブラックマンを救おうとしている

上条「てめぇになら出来たはずだ!そんなくだらない幻想を殺すことが!!」

ブラック「私はそれを選ばなかった!!!」

上条「どうして選ばなかった!!!」

ブラック「許せなかったからだ!!」

上条「あぁそうだ、お前は許せていない!!!」

ブラック「なぜ私が許す必要がある!?」

上条「お前は・・・」



785 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:34:24.42 ID:lngF19+70
ブラック「最大主教が・・・妹を殺した!!!」

上条「違う・・・違う!!!」

ブラック「私はあの女が許せない!!」

上条「違うだろうが!!!」

ブラック「私は・・・私はずっと恨んでいた!!!」

上条「お前は何も分かってない!!!」

ブラック「私は・・・」

上条「ふざけんな!!!」

上条の拳が、ブラックマンの体を殴り飛ばす

ブラック「ぐぁぁぁっ!!」

上条「・・・いい加減許せ・・・」

ブラック「・・・私は・・・」


786 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:36:58.83 ID:lngF19+70
上条「てめぇが許せないのは最大主教じゃない!!自分だろ!!」

ブラック「!」

上条「あの時手を放した自分が!!!」

ブラック「やめろ・・・」

上条「あの時妹を救えなかった自分が!!」

ブラック「君には分からないだろう!?」

上条「傍にいてやれなかった自分が許せないんだ!!!」

ブラック「君に何も分かるわけがないだろう!!」

上条「分かってたまるか!!俺はてめぇみたいな馬鹿とは違うんだ!!!」

ブラック「・・・君が・・・あの少女を殺されて同じ台詞を言えるか?」

上条「・・・殺させない」

ブラック「・・・所詮・・・綺麗事なんだ」

上条「分かってるさ」

ブラック「そんなもので世界を変えるだと!?ふざけるな!!」


787 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:38:45.99 ID:lngF19+70
上条「変えられるさ!!」

ブラック「無理なんだ!!!」

ブラックマンが槍を生み出す

ブラック「・・・っ!!」

上条「な、なんだ・・・?」

ブラック「・・・君に・・・何が分かる・・・?」

槍を持ったまま、上条に向かって突き進んでくる

上条「ちっ!」

ブラック「う・・・」

ブラックマンの額から血が流れる

上条「!?お前・・・」

ブラック「答えろ・・・答えてくれ!!私はどうすればよかったんだ!?」


788 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:41:00.02 ID:lngF19+70
上条「どうすればよかったかだって!?」

上条が槍を打ち消す

上条「そんなことはお前が考えろ!!」

ブラック「私には分からなかった!!」

上条「・・・じゃあ教えてやるよ・・・」

上条が唾を吐き出す

少しだけ、血が混じっている

上条「・・・お前は・・・妹を忘れるべきだった」

ブラック「!!」

上条「忘れられなかったんだろ、それでも」

ブラック「忘れるだと・・・?忘れるなんて出来ると思うか!?」

上条「出来ないだろ!?そこまで命を張れるほど大切な妹だったなら!!!」

ブラック「・・・ならば結局私にはどうしようも・・・」


789 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:44:21.31 ID:lngF19+70
上条「それでも忘れられなかったなら!!それほどまでに大切な妹だったなら!!!」

上条の顔に、ブラックマンの拳が突きつけられる

だが、上条は怯まない

上条「てめぇはそんな妹をずっと愛してやるべきだったんじゃないのか!?」

ブラック「今だって愛している!!」

上条「じゃあどうしててめぇは妹を救い出そうとしない!?」

ブラック「あの子はもう死んでいるんだ!!」

上条「てめぇの心の中にいた妹をどうして救い出さない!?」

ブラック「心の中だと・・・!?反吐が出る!!」

上条「妹さんが愛したお前は!!こんなことをする人間だったのか!?」

ブラック「あの子だって最大主教が憎いはずだ!!」

上条「なんでそうやって妹を言い訳にしてるんだ!!大事な妹を言い訳に使うな!!!」

ブラック「言い訳だと!?」


790 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:46:52.07 ID:lngF19+70
上条「妹の仇を取るために逃げ出した!?妹の仇を取るために最大主教を殺す!?」

ブラック「そうだ!」

上条「てめぇは自分の意志でそれを選んだんだろうが!!!」

ブラック「それがどうした!?」

上条「だったらなんで一一妹のことを口にする!?てめぇにとって妹は言い訳の道具なんじゃねぇか!!」

ブラック「貴様!!!リサを道具だと・・・!?」

上条「・・・お前は・・・どうして戦ってるんだ」

ブラック「リサのためだ!!あの子のためなら世界を・・・」

上条「妹はもういないんだ!!てめぇが世界を敵に回す理由は何処だ!?」

ブラック「御託はいいんだ!!!」

ブラックマンが再び槍を生み出す

彼の体は、あちこちから血が流れていた


791 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:49:28.85 ID:lngF19+70
上条「・・・お前は・・・結局自分が許せなかったんだ」

ブラック「・・・あぁ、そうだ」

上条「・・・最大主教を殺そうと思えば・・・本当は、お前なら出来たはずだ」

ブラック「簡単だったさ・・・」

上条「・・・お前が一番許せなかったのは・・・自分なんだろ」

ブラック「・・・最大主教を殺して・・・たくさんの神父を殺して・・・」

上条「・・・どうしてお前は許せなかった・・・」

ブラック「そうすれば・・・妹は許してくれると思っていた・・・」

上条「お前を許せるのはもう、お前だけなんだ」

ブラック「・・・少年よ・・・君に分かるか?妹を陵辱され、嘲笑われ・・・そして殺された気持ちが」

上条「分からない・・・でもそれはお前のせいじゃない」

ブラック「私のせいだ・・・」


792 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:52:51.38 ID:lngF19+70
上条「・・・お前がまだ自分を許せないなら、俺がまずは許してやるよ」

ブラック「・・・君に許してもらっても意味が無い」

上条「・・・そんな幻想を俺がぶち殺す」

ブラック「・・・私はもう、許されないんだ」

上条「・・・ブラックマン、歯を食いしばれ」

ブラック「少年よ、もしも・・・もしも」

上条「お前がまだ、許されないなんて幻想を抱いてるなら」

ブラック「私が・・・許されるのだとしたら」


ブラック「・・・私は、何と言って・・・妹と別れを告げればよいのだ」

上条「・・・まずは」

ブラック「・・・もう・・・私には・・・分からないよ」

上条「そのふざけた幻想を!!!」


上条「ぶち殺す!!!」



793 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:54:54.57 ID:lngF19+70
上条の拳は、槍を打ち砕いた

そのまま、ブラックマンの顔面を叩きつける

ブラックマンの心の中にある幻想は

悲しすぎる幻想は、崩れた


上条「・・・どうだよ、分かるか」

ブラック「・・・君は私が許せるか」

上条「許せないさ・・・でもな、お前が前に進むためなら許してやってもいい」

ブラック「・・・面白い答えだな」

上条「・・・立ち上がれよ、お前にはまだやらなきゃならないことがある」

ブラック「・・・それはなんだ?」

上条「妹の墓に謝りに行けよ」

ブラック「・・・許されるかな」

上条「・・・あぁ」


794 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:56:32.60 ID:lngF19+70
ブラック「・・・ならば・・・」

行こう、とブラックマンが立ち上がった

その時


ローラ「はいはい、茶番劇はそこまでよ」

遠くから冷たい声がした


上条「!!」

神裂「最大主教!!!」

ローラ「全く・・・私が来る前に派手にやってくれたわね」

ブラック「・・・最大主教」

ローラ「あらブラックマン・・・血だらけではないか」

ブラック「・・・貴様・・・」

上条「ブラックマン・・・」

ブラック「・・・少年よ、引いてくれ」


795 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 19:58:36.34 ID:lngF19+70
上条「お前は・・・」

ブラック「この女と決着をつけなければならない」

上条「!!お前はもう・・・」

ブラック「・・・これをしなければ、私は私を許せない」

ブラックマンが一歩踏み出す

ローラ「・・・どうするの?そんな傷だらけの体で」

ブラック「・・・何も出来ないさ・・・」

ローラ「・・・はぁ」

ローラが指を鳴らす

その瞬間、何かの術式が発動する

ブラック「・・・貴様」

ローラ「悪いわね・・・一応、お前の魔術は脅威に値するから」

上条「まさか・・・術式を封じたのか!?」

ローラ「・・・幻想殺し、お前は少し黙っていて頂戴」

796 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:00:39.91 ID:lngF19+70
その言葉と同時に、何人かの魔術師が上条の体を地面へと押さえつける

上条「ぐぁっ!!」

美琴「当麻!!!」

神裂「最大主教、あなたは!!」

ローラ「・・・インデックスの捜索もそろそろ終わるかしらね」

五和「く・・・」

ローラ「・・・神裂、ブラックマンの体に枷を」

神裂「!!」

ローラ「体の動きを封じなさい」

神裂「そんなこと・・・」

ローラ「出来ないの?イギリス清教所属・・・神裂火織」

神裂「!!!」

テクパトル「くそが・・・」


797 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:03:50.07 ID:lngF19+70
アニェーゼ「・・・神裂さん、やっちまったほうがいいですよ」

神裂「出来るわけが・・・」

ブラック「・・・すればいいさ」

神裂「!」

ブラック「枷でもなんでもすればいいさ」

建宮「ブラックマン、お前!!」

19090「そんなことをすれば・・・」

ブラック「・・・所詮、私はこの力を破壊にしか使えない」

上条「くそ!!放せ・・・」

ローラ「さぁ、神裂」

神裂「・・・インデックスを・・・利用するのでしょう?」

ローラ「・・・はぁ、ならば・・・これが命令だと伝えても?」


798 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:06:10.48 ID:lngF19+70
神裂「!天草式に手を出すことは許しません!!!」

ローラ「ならば枷を」

神裂「・・・」

建宮「女教皇、そんなことする必要ないのよな!!!」

ルチア「・・・神裂さん・・・」

神裂「・・・分かりました」

神裂が護符を撒く

対馬「女教皇様!!!」

神裂「・・・どちらにしろ・・・我々は何かを失わなければなりません・・・」

対馬「それでも・・・」

神裂「・・・あなた達だけは失いたくないんです・・・」

エツァリ「・・・これでは・・・ブラックマンの魔術が・・・!!」

ローラ「・・・ありがとう、神裂」


799 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:13:06.14 ID:lngF19+70
イギリスの街を朝日が照らす

その日に照らされたローラの横顔は笑っている

上条「くっそ・・・」

建宮「女教皇!!!」

神裂「・・・あなた達の居場所を守るには・・・これしか・・・」

五和「・・・女教皇様・・・」

上条「くそ!!インデックスも見つかったらまずい!!!」

美琴「く・・・」

ローラ「あぁ、他の者は動かないでね・・・あまりことを荒立てたくないのよ」

アンジェレネ「・・・」

ローラ「・・・ブラックマン、そろそろ貴様の魔術を完成させるわ」

ブラック「・・・そうか」


800 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:15:15.34 ID:lngF19+70
ローラ「安心しなさい、人を救うために使うのよ」

ブラック「・・・それならば・・・」

上条「放せよ!!放せって!!!」

神裂「・・・上条当麻・・・」

上条「なんなんだよお前らは!!!」

上条がアニェーゼ部隊や天草式を睨む

上条「どうしてそうやって黙ってるんだ!」

アニェーゼ「・・・逆らって何になるんですか」

ルチア「・・・人々を救うのが神のご意向です」

上条「ふざけんな!!何が神のご意向だ!!!!」

「暴れるな!!!」

上条「お前ら神様しか信じられないのかよ!?なんだよそりゃ!!!」

ショチトル「・・・」



801 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:18:33.57 ID:lngF19+70
上条「ふざけんなよ!!」

神裂「上条当麻・・・もういいのですよ」

上条「くっそ!!!」

上条が暴れる

それを、魔術師達はなんとか抑えている

ブラック「・・・少年よ、君には分からないだろう・・・」

上条「分かるさ!!!てめぇは今諦めてんだろ!!!」

ブラック「誰かを救うためにこの力が使えるなら・・・」

上条「妹を救えなかったから誰かを救うって!?ふざけんな!!!」

ブラック「・・・」

上条「てめぇが魔術装置になって・・・それを利用して、イギリス清教が人を救ったってなぁ!!」


上条「結局てめぇが救ったことにはならないんだ!!!」


802 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:20:18.58 ID:lngF19+70

イン「・・・ステイル・・・」

ステイル「隠れていたまえ」

二人は、追っ手から逃げていた

だが、追い詰められれば追い詰められるほど逃げ場は無くなる

イン「・・・どうするの?」

ステイル「・・・もう少しだ・・・ブラックマンが決着をつけるまで・・・」

イン「あの人は・・・死ぬの?」

ステイル「あぁ、死ぬだろうね・・・」

イン「止めに行きたいんだよ!!!」

ステイル「そんなことは無理だ!!」

ステイルがインデックスを見つめる

彼がたった一人、救うことの出来た少女だ


803 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:22:25.10 ID:lngF19+70
ステイル「僕達に止められるか!?あの男を!!!」

イン「止めなきゃ・・・」

ステイル「無理だ!!僕達はあの男を救えない!!」

イン「どうして・・・」

ステイル「!!」

遠くから、水の塊が飛んでくる

ステイル「魔女狩りの王!!」

イン「!!」

魔女狩りの王は、その水を簡単に蒸発させてしまった

ステイル「今僕達が出て行けば・・・最大主教の思う壺だ」

イン「でも・・・」

ステイル「このままノコノコ出て行くのか・・・?」

イン「・・・」


804 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:24:30.59 ID:lngF19+70
ステイル「安心しろ・・・僕の知っている上条当麻は・・・どんな相手でも救えるんだ」

イン「・・・ステイル・・・」

ステイル「君もよく知っているだろう?」

イン「でも・・・でも、私は・・・」

ステイル「・・・もういいんだ、僕達はブラックマンとの約束を守らなければならない」

森の周りは、ほとんど囲まれてしまっている

ならば中心へ逃げるしかない

ステイル「・・・ここで時間を稼ぐんだ」

イン「・・・私も手伝うんだよ・・・」

ステイル「・・・頼む・・・上条当麻・・・」

ステイルが空を仰ぐ

眩しい太陽が、二人を焦がすように照り付ける



ステイル(・・・君なら救えるはずだ・・・!)


805 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:27:29.32 ID:lngF19+70
上条「・・・なんなんだよ・・・神裂!!」

神裂「仕方ないでしょう・・・私は・・・」

上条「てめぇはなんでここにいる!?天草式の仲間を信じたからだろう!?」

対馬「そうですよ女教皇様!!!」

五和「私達なら・・・」

神裂「イギリス清教に従わなければ・・・天草式は潰されてしまいます」

建宮「そんなもの!!女教皇がいれば・・・」

神裂「・・・これしか方法がありません・・・」

建宮「でも・・・」

上条「ふざけんなよ!!何が救いの手だ、これじゃてめぇのことだけしか考えてないだろうが!」

神裂「あなたには分かりませんよ!!」

上条「分かりたくねぇんだよ!!そんなくだらねぇ理想は!!!」

「黙れ!!」

魔術師たちが、上条を押さえつける


806 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:30:00.15 ID:lngF19+70
上条「くそ!!!なんだよ、なんでそんな黙って見てられる!?」

アニェーゼ「・・・あなたは何も分かってないんですよ」

アンジェレネ「・・・どうしても・・・私達は・・・」

ルチア「・・・イギリス清教に逆らえば、私達は生きていけません」

上条「くっそ・・・なんで逆らわないんだよ・・・間違ってるだろこんなの!!!」

アニェーゼ「神のご意向は人々を救うことですよ?」

アニェーゼが鼻で笑う

アニェーゼ「そこになんで自分の意志を介入させなければならないんですか?」

上条「てめぇはなんで人を救いたがってる・・・」

アニェーゼ「それが神の・・・」

上条「神様が救えって言ってるから救うのかよ!?」

アニェーゼ「・・・それの何が悪いんですか」

上条「・・・そんな人間が・・・何を救える・・・」


807 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:34:29.86 ID:lngF19+70
ルチア「あなたには分かりません・・・」

上条「・・・神様だと!?そんな腐れた神様がいてたまるか!!」

ルチア「!!取り消しなさい!!」

上条「取り消さねぇよ!!」

ルチア「取り消せ!!!」

上条「ふざけんなよ!!何が救いだ、一方的に幸せなんていう意味のわからねぇものを押し付けやがって!!!」

美琴「当麻・・・」

上条「人が生き返れば幸せか!?永遠に生きられれば幸せか!?信じた者だけ救うのが幸せか!?反吐が出るんだよ!!!」

19090「・・・」

上条「幸せは自分で掴むためにあるんじゃないのか!!人間が真っ直ぐ歩くにはそれを探さなきゃならないんだよ!!」

ルチア「神の愛は素晴らしいものです!!」

上条「人の愛のほうがよっぽど素晴らしいんだよ!!!」

アニェーゼ「・・・分かってないようですね・・・」


808 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:37:24.46 ID:lngF19+70
上条「誰なんだよ神様なんてものを作ったのは!!!」

ルチア「神は天から・・・」

上条「知ったことか!!俺は神様なんかに幸せを与えてもらわなくても十分だ!!!」

アニェーゼ「・・・頑固ですね」

上条「俺はな!!神様なんて信じなくて十分幸せなんだよ!!あぁ、幸せだ!!!」

テクパトル「・・・イギリス清教の馬鹿にはそれが分からないんだ、上条」

上条「そうだ・・・てめぇらは馬鹿だ」

ルチア「何を・・・」

上条「お前らが今幸せを掴んでるのは神様のおかげか!?違うはずだ!!!」

建宮「上条・・・」

上条「お前らが掴んだんだ!!!お前らが手を伸ばしたから掴めたんだ!!」

アニェーゼ「・・・それが・・・」

上条「神様が与えてくれたなんてもんじゃない!!お前らが自分で掴んだのに・・・」


809 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:41:23.55 ID:lngF19+70
上条「・・・どうしてそんな寂しいことを言うんだ・・・」

ルチア「くっ・・・あなたは・・・あなたは主の偉大さを知らないから・・・」

上条「あぁ知らないね!!俺は神様なんて信じちゃいない!!」

ローラ「・・・幻想殺し、あまりそういうことは言わないでほしいのだけど」

上条「ふざけんな!!神様だと!?そんなもんいないんだ!!いなくたっていい!!」

シェリー「ふん・・・それは人それぞれよ」

上条「そうだ、人それぞれだ・・・それを・・・それを他人に押し付けやがって・・・」

ブラック「・・・」

上条「神のためとか言って、自分の行動に理由をつけて・・・こんな、こんなくだらねぇことも平気でやっちまう!!」

ルチア「これが神のご意向です!!!」

上条「そんな神様なら俺が殺してやる!!!なんで自分の意志を捨てたんだよ!?てめぇらが神様を信じたのはどうしてだ!?それも神様のご意向か!?」

アニェーゼ「・・・自分達が・・・」

上条「選んだんだろう、お前が!!!」


810 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:47:56.43 ID:lngF19+70
五和「・・・上条さん」

上条「何が神様だ!!結局はてめぇらが選んだんだ!!!」

シェリー「・・・」

上条「都合のいいときだけ神のご意向とか言いやがって!!!」

アニェーゼ「・・・何を言ってるんですか・・・」

上条「過ちを神のためと言えば許されるとでも思うか!?てめぇの信じた神は罪人を匿う神様か!」

ルチア「・・・」

上条「・・・自分で選べ・・・この状況を黙って見ていていいのかどうかを!!!」

アンジェレネ「・・・私は・・・」

上条「・・・たった一人の・・・でもな、貴重な一人の命が弄ばれてる!!!!」

神裂「・・・」

ローラ「・・・言いたいことはそれだけ?」

上条「・・・くっそ・・・なんで誰も動かないんだよ・・・」

ローラ「それだけ、神とは偉大なのよ」


811 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:51:14.54 ID:lngF19+70
ローラが手を叩く

イギリス清教の人間は、それに注目する

ローラ「正直、正しくない行動よ」

ローラ「でもね、今そこの少年が言ったように・・・これは私が選んだことよ」

ローラ「たくさんの人々を救うために」

ローラ「病気の人間を救うにはこれしかないの」

ローラ「貴様達はどちらを選ぶ?どちらでもいいわよ」

ローラ「・・・ただし、邪魔をするなら私はその者を許そうとは思えない」

建宮「・・・」

アニェーゼ「・・・」

美琴「・・・当麻・・・」

上条「ははは・・・誰かを救うためになら・・・てめぇなんてどうでもいいそうだぜ・・・」

ブラック「・・・私の命などそんなものだ・・・」


812 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:54:36.71 ID:lngF19+70
上条「・・・ちくしょう・・・」

ブラック「・・・」

ローラ「さて・・・インデックスが見つかるのも時間の問題かしらね」

ブラック「・・・一つ聞きたい・・・最大主教」

ローラ「なに?」

ブラック「・・・貴様には、大切な人はいないのか」

ローラ「なぜ?」

ブラック「・・・お前には分からないだろうな・・・」

ローラ「・・・貴様の妹の話?」

ブラック「・・・貴様は知らないだろう、私の妹は・・・犯されたのだぞ」

ローラ「・・・そう」

ブラック「神父であった人間達にだ」

ローラ「それはまた可愛そうに」

ブラック「・・・」


813 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:56:36.10 ID:lngF19+70
ローラ「・・・それで?私にどうしろと言うの」

ブラック「驚いた・・・謝罪の一つのなしか」

ローラ「・・・謝って許すか?」

ブラック「まさか」

ローラ「ならば謝るのは時間の無駄よ」

ブラック「・・・」

ブラックマンが手を動かそうとする

だが、それはまるで重い鉄のように地面にへばりついていた

天草式の枷のせいだ

ブラック(・・・魔術も・・・)

ブラック(いや、どちらにしろもう使えないか・・・)


テクパトル「・・・最大主教」

ローラ「あら、何?」


814 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 20:59:00.98 ID:lngF19+70
テクパトル「・・・貴様、いつからこんなことを考えていた」

ローラ「そうね・・・考え付いたのはほんの2ヶ月ほど前よ」

テクパトル「・・・こんな汚らわしいことを・・・」

ローラ「・・・貴様には言われたくないわね」

テクパトル「ふん、俺も今までひどいことはしてきたが・・・ここまではなかった」

ローラ「・・・理解などいらないわ」

テクパトル「・・・俺はな、貴様を許さん」

ローラ「あら、私は別に・・・」

テクパトル「俺を直接は傷付けていない・・・」


テクパトル「だがな、義姉さんをさらっただろう」

ローラ「・・・それで?」

テクパトル「・・・貴様を殺したいほど憎んでいる」


815 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 21:01:17.33 ID:lngF19+70
ローラ「殺せるの?」

テクパトル「無理だな」

テクパトルが鼻で笑う

テクパトル「・・・全く、大層なことだ・・・関係ない人間まで巻き込んで」

ローラ「それは悪かったと思ってるわよ」

テクパトル「・・・神裂と言ったな」

神裂「・・・なんですか」

テクパトル「貴様には誇りがないのか」

神裂「・・・天草式を守るためならそんなもの・・・」

テクパトル「ふん、所詮天草式もその程度か」

建宮「!!それは聞き捨てならんのよな!!」

五和「私達を馬鹿にするのは構いません、ですが女教皇様を・・・」

対馬「あなた、私達を怒らせたいの?」


816 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 21:05:05.27 ID:lngF19+70
テクパトル「・・・見てみろ神裂」

神裂「・・・」

テクパトル「お前の仲間達は大きな誇りを持っている」

神裂「それが・・・」

テクパトル「お前を誇りだと思っているのだ」

神裂「・・・分かっています」

テクパトル「だが、お前はそれを踏みにじったのだぞ」

神裂「!!」

五和「そんなこと・・・」

テクパトル「・・・神裂、お前だけではない」

テクパトルが周りを見渡す

誰もが、同じ目をしている


テクパトル「・・・気にいらんな、上条の言ったことがよく分かる」


817 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/27(木) 21:06:09.08 ID:lngF19+70
今日はここまで

やっとスクライド1から見直し終わった

あれを見てると熱いのを書きたくなる


でも、無理ww


ではおやすみなさい


そうだ!!俺は遂に見つけた!!文化の真髄を!!!!



818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/27(木) 21:08:19.56 ID:FGsqRYdAO
乙!

しかし>>1000までで終わるのかねww
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/10/27(木) 21:12:30.22 ID:6qkXk/Mf0
生殺し…だと?
\(^o^)/テクパトルゥゥゥゥゥゥ!!
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/27(木) 21:30:27.14 ID:sg5Os2ySo
生殺し…だと…?


我々の業界ではご褒美です。
821 :小豆にかわりまして名無しがお送りします [[sage]]:2011/10/27(木) 21:44:29.90 ID:vpjsyn690
生殺しかよォォォorz
>>1乙!
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 23:14:48.60 ID:G8HKuGdGo
乙なんだよ!
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/10/27(木) 23:18:23.59 ID:F0J4VbtAO
やっぱりローラはこうでなくちゃな
これで上条さんのそげぶでローラが改心するオチとかだったら嫌だな
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/27(木) 23:54:22.21 ID:sg5Os2ySo
>>823
ローラは芯まで腐ってなきゃな
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2011/10/28(金) 02:21:00.89 ID:tbM+TBnC0
個人的にこのローラさんは最初から内心焦ってる気がする
826 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:37:03.26 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・何が言いたいの」

テクパトル「貴様らには誇りがないのか」

テクパトルがイギリス清教の人間を見回す

テクパトル「天草式を見てみろ、神とやらには頼っていない」

アニェーゼ「ふん、あなたの宗教だって・・・」

テクパトル「神に幸せにして貰おうなどと思ってはいない」

神裂「・・・」

テクパトル「何が神だ、くだらない」

ルチア「・・・あなたも逆らうつもりですか」

テクパトル「全く・・・偉い人間の言いなりか」

テクパトルが槍を抜く

アンジェレネ「!」

アニェーゼ「戦うつもりですか!」

テクパトル「上層部の機嫌を取っていればいい・・・楽なご身分だな」


827 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:37:33.44 ID:GndB6G+n0
ショチトル「ふん、お前は上層部を殺した人間だからな」

テクパトル「・・・貴様達は満足か?顎で使われ、命令される毎日が」

アニェーゼ「それが組織ってもんです」

テクパトル「そして宗教か、吐き気がするほど馬鹿だな」

ローラ「・・・何を言う、異教の人間が」

テクパトル「俺からしたら貴様達こそ神を愚弄しているぞ」

ローラ「我々は神の教えを守っている、それの何が悪い?」

テクパトル「神を言い訳に使い、金のために使い・・・」

アニェーゼ「そんなことはないですから」

テクパトル「ならば神とやらを語らずに自分の行動が正しいと証明しろ」

ルチア「・・・それは・・・」

テクパトル「出来ないだろう?行動理念はどうせ神とやらのためだけだ」

アンジェレネ「それしか・・・知らないんです」


828 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:38:31.80 ID:GndB6G+n0
テクパトル「自分のために、他人のために戦いたくないのか」

ローラ「耳を貸すな」

テクパトル「黙れ、異教の馬鹿が」

ローラ「貴様達の宗教など弱小なのよ」

テクパトル「神に大小をつけようと?愚かしいぞ」

ローラ「神にも大小はあるのよ」

テクパトル「それは神という名の経済力か?」

ローラ「ちっ・・・」

テクパトル「さぁ、誰か自分が正しいと証明しろよ」

ルチア「ならばあなたは出来るのですか!?」

テクパトル「出来るさ」

ルチア「それはなぜ!?」

テクパトル「俺は19090号を守るために戦っている」

829 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:39:20.06 ID:GndB6G+n0
アニェーゼ「まさか、それだけで正しいと?」

テクパトル「俺にとっては正しいさ」

ルチア「なんと愚かな・・・!」

テクパトル「神とやらに正しさを求めるお前達よりはマシだろう?」

シェリー「ふん・・・たしかに一理あるわね」

ルチア「シスターシェリー!」

シェリー「・・・少なくとも、神のためなんて言うあやふやな物よりは」

テクパトル「目の前にいる愛した女性のために戦うほうがいいだろ?」

ローラ「・・・構わないわ、やってしまえ」

ローラが肩をすくめる

アニェーゼ部隊の人間達が構える

エツァリ「全く・・・あなたはいつからそんなに熱くなったのですか」

テクパトル「上条の影響だ」


830 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:40:19.92 ID:GndB6G+n0
ショチトル「昔のお前を知っていると違和感があるな」

テクパトル「いいだろ?俺は変わったんだから」

ショチトル「それは誰のおかげだ?」

テクパトル「俺のおかげだ、神なんかじゃない」

ショチトル「ははは!上等だな!」

美琴「・・・私も加勢するわよ」

テクパトル「危ないぞ」

19090「・・・天草式のみなさんはそのままで」

建宮「だが・・・」

テクパトル「アンタ達は誇りを守る必要がある」

槍を握りながらテクパトルが言う

テクパトル「こんな馬鹿共のために、その誇りを使う必要はない」

五和「ですが・・・」


831 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:40:51.48 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・俺達の誇りなど安っぽいものだ」

アニェーゼ「ふん、その通りですよ」

エツァリ「・・・たしかに、イギリス清教の方々のほうが大義名分を抱えているでしょう」

ショチトル「全く、我々が悪者みたいだな」

美琴「ホント、困っちゃうわよ」

ローラ「・・・貴様達もやるのね」

テクパトル「・・・だがな、安っぽい誇りでも売ったりはしない」

ショチトル「魂を神に売ったお前達よりはまともだ」

ルチア「行きます!」

再び、二つの勢力がぶつかる

アステカの魔術師が三人

狙撃手が一人

超電磁砲が一人


832 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:42:42.67 ID:GndB6G+n0
美琴達は決して劣ってはいなかった

だが、アニェーゼ部隊も退かない

一人一人の能力では敵わないが、それぞれが集団として戦っている

その戦いは、辺りに凄まじい衝撃を撒き散らす

ローラ「全く、血の気が多いわね」

魔術によって防御用の結界を張りながらローラが呟く

上条「くそ・・・みんな!」

美琴「大丈夫!私だってカッコイイとこ見せてやるわよ!」

美琴が電磁波を放つ

それは人間を気絶させる程度の威力だ

ルチア「!よけ・・・」

ルチアの体に、その電磁波が当たる

ルチア「ぐぁぁっ!」



833 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:43:09.09 ID:GndB6G+n0
アニェーゼ「シスタールチア!」

シェリー「・・・」

アニェーゼ「何してるんですかシスターシェリー!」

シェリー「馬鹿馬鹿しい、私は今までこんなもののために戦ってたのか」

アニェーゼ「な、何を!」

シェリー「地位とか安寧とか興味ない!私は私の誇りのために戦う!」

シェリーがテクパトルに近づく

テクパトル「ほう、俺とやるのか?」

シェリー「私のプライドをお前は切り裂いてくれたからね」

テクパトル「・・・イギリス清教のために戦うか?」

シェリー「私のためだ、イギリス清教なんかのために戦えるか」

テクパトル「いいな・・・お前のこと、好きになれそうだ」

19090「浮気はダメです!」

テクパトル「分かってるよ!」


834 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:43:40.71 ID:GndB6G+n0
エツァリ「・・・我々にはもう、誇れるアステカはありません」

ショチトル「・・・組織は壊滅した、アステカだって不安定な治安だ」

アニェーゼ「ふん・・・全くもって意味のない戦いですよ」

エツァリ「意味がない?」

アニェーゼ「そうでしょう?私達は得るものがあります」

ショチトル「私達にはないと?」

アニェーゼ「無駄ですよ」

エツァリ「何を勘違いしているんですか」

エツァリが光線を放つ

アニェーゼ「!」

アニェーゼの近くにあった石畳が割れる

アニェーゼ「ちっ・・・何のための戦いですか」

エツァリ「分かりませんか?」


835 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:44:22.91 ID:GndB6G+n0
ショチトル「友達を傷付けられた、だから仕返しする」

アニェーゼ「・・・下品ですね」

ショチトル「神のためにわざわざ人殺しをするお前達には言われたくない」

アニェーゼ「・・・」

エツァリ「分かっていませんよ、友人を愛せない人間が神を愛せますか」

アニェーゼ「愛してますよ、神を」

エツァリ「愛している?溺れているだけでしょう」

アニェーゼ「うるさいんですよ!」

アニェーゼが蓮の杖を引っかく

ショチトル「ぐぁぁ!」

エツァリ「ショチトル!」

アニェーゼ「私は神を愛して・・・」

エツァリ「ふざけるな!」


836 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:45:17.40 ID:GndB6G+n0
エツァリの放った光線が、アニェーゼの足元を崩す

アニェーゼ「くっ・・・」

エツァリ「神という言葉に溺れている!その響きを利用している!」

アンジェレネ「シスターアニェーゼ!」

アンジェレネがアニェーゼの傍に駆け寄る

そして、その前に立ち塞がった

アニェーゼ「どいてください・・・」

アンジェレネ「イヤです!」

ショチトル「・・・見ろ、この少女はなぜ立ち塞がった!?」

アニェーゼ「・・・」

ショチトル「仕事だからか!?同僚だからか!?」

アニェーゼ「違います・・・」


837 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:45:59.53 ID:GndB6G+n0
エツァリ「あなた達は何のために戦うのですか!」

アニェーゼ「私は・・・」

エツァリ「神を満足させるためか!」

アニェーゼ「私は、みんなとの生活を守りたいから!」

ショチトル「ならばこんなところで何をしている!」

エツァリ「我々と戦うならば誇りを持て!最大主教を止めるならば我々は敵ではない!」

ショチトル「どちらにしろ今のお前は間違っている!」

アニェーゼ「・・・分かってますよ」

アニェーゼが立ち上がる

ショチトル「いい目だ」

アニェーゼ「・・・目を覚まさせてもらったお礼に、全力で潰してやりますよ」

ショチトル「いいだろう!」



838 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:46:41.46 ID:GndB6G+n0
神裂「・・・」

五和「女教皇様」

神裂「私は・・・あなた方の仲間さえ失格ですね」

建宮「仲間を守るのは当たり前なのよな」

対馬「・・・自分の誇りより、我々を選んでくださったのですね」

神裂「私は、あなた方だけは守ります」

建宮「・・・イギリス清教は間違ってるのよな」

神裂「・・・そんなもの、後から変えればいい」

建宮「出来ると思ってたのよな?」

神裂「あなた方がいるなら」

建宮「・・・そうか、なら俺はあなたを責めない」

建宮が一歩前に出る

ちょうど、神裂と並んだ


839 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:47:14.91 ID:GndB6G+n0
神裂「!何をしているのですか!」

建宮「あなたはさっき言った、仲間を守るのは当たり前だと」

建宮が上条を指差す

魔術師に押さえられ、地面に倒れている

建宮「ならば俺は俺の仲間を助ける」

神裂「そんなことをすれば・・・」

建宮「イギリス清教に歯向かうのは俺一人でいい」

建宮がくるりと振り返る

建宮「お前達は後からイギリス清教を変えてくれる」

対馬「何を・・・」

建宮「だとすれば、今変えるのは俺なのよな」

前を見て、ただ建宮は駆け出す

神裂「建宮!」



840 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:48:23.80 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・ちっ」

ローラが建宮を睨みつける

それに呼応したかのように、他の魔術師が彼を迎え撃つ

建宮「・・・誇りも信念もないヤツらなのよな」

「・・・」

建宮「お前達には分からないだろうさ」

「裏切り者が」

建宮「裏切り?俺は常に女教皇の仲間だった、今もな」

「ここで朽ちろ!」

建宮「天草式の糧になれるならそれも一興!」


五和「・・・女教皇様」

神裂「・・・なんですか」

五和「あなたは、間違っていません」


841 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:49:15.93 ID:GndB6G+n0
神裂「・・・」

五和「でも、建宮さんの道が正しさに近いはずです」

神裂「!」

対馬「そうね・・・それに私達はただの天草式」

神裂「待って下さい!」

対馬「あなたはイギリス清教の必要悪の教会の人間ですよ?」

五和「イギリス清教に従って下さい」

二人が建宮の元に駆ける

五和「建宮さん!」

建宮「!なんで来たんだ!」

対馬「一人だけカッコつけないでよ」

建宮「あぁもう!女教皇一人になったのよな!」

五和「女教皇様は一人でも大丈夫です!」



842 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:49:55.78 ID:GndB6G+n0
建宮「分かった!ならば俺達は天草式としての仕事を果たすぞ!」

対馬「もちろん!」

ローラ「・・・面倒なことに・・・」

上条「見ろよ、最大主教・・・」

ローラ「・・・黙れ、幻想殺し」

上条「アンタは力を手に入れたつもりだろうが・・・」

ローラ「黙れ!」

上条「人の心を操ることなんて出来ないんだよ」

ローラ「く・・・それ以上言うなら貴様も殺すわよ!」

上条「・・・いいさ」

ローラ「何を・・・」

上条「俺はな・・・昔からずっと不幸だった」

上条が指を握り締める



843 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:50:43.62 ID:GndB6G+n0
地面に擦れ、痛みが走る

だがそれを気にしない

そんな痛みなど、気にはならなかった

上条「記憶消えるわ、魔術に巻き込まれるわ・・・もう一回死にかけるわ」

ローラ「だからなんなのよ!」

上条「でもな、例え不幸でも神様になんて頼る気にはならないな」

ローラ「・・・貴様」

上条「俺の人生を走ってるのは俺だけなんだ」

ローラ「だが神はそこに救いを見出だして下さる!」

上条「吐き気がするな・・・俺の人生に土足で上がり込むんじゃねぇ!」

ローラ「!」

上条「それが許されるのは美琴だけなんだよ!」

ローラ「貴様のような馬鹿には分からないだろうな!」




844 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:51:25.31 ID:GndB6G+n0
上条「馬鹿だよ、頭悪いし運動もそこまで出来ない・・・」

上条「そりゃな、いい人生送りたいし素敵な人間になりたいさ」

上条「でもさ・・・誰かの救いによって俺が全く違う人間になっても」

上条「結局、それじゃ俺は何も変わらないんだよ」

上条「俺が汗水流して、血を吐き出して・・・そうして変わらなきゃダメなんだ」

上条「神様に助けてもらったって、そりゃ神様のくれた人生ってだけなんだ」

上条「それは上条当麻が作り出した人生じゃなくなってしまう」

上条「俺が決めた人生なんだ・・・なら決めるのは俺だけだ」

上条「別れ道があったら、俺は自分で考える」

上条「神様が正しい道を教えてくれる、なんて思わない」

上条「間違った道なんてな・・・そんなもん、間違ってたら間違ってたで正しくしてやればいいんだ」

上条「最初から正解だけ決めやがって・・・」

上条「それ以外を全部間違い扱いする!それが気に入らないんだよ!」



845 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:51:56.70 ID:GndB6G+n0

ローラ「黙れ!」

上条「お前の考えにも理由があるだろ!?それと同じで俺にも理由がある!」

ローラ「その男を黙らせろ!」

上条「俺が信じてるのは神様なんて大層なもんじゃない!」


上条「ここにいる俺自身だ!」

ローラ「貴様驕るなよ!」

上条「何が神様だ、何が力だ!」

ローラ「私は人々を救うために・・・」

上条「自分の力で救おうとしたか!?」

ローラ「!」

上条「結局、それじゃブラックマンのおかげで人々が救われたことになる!」

上条「お前はただ指揮を取っただけになる!」

ローラ「そんなこと・・・」


846 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:52:34.23 ID:GndB6G+n0
上条「お前はなんで人々を救いたい!?名声のためか!?誰かの笑顔を見るためか!?」

ローラ「貴様には関係ないだろう!」

上条「どんな理由でも構わない!てめぇの夢ならてめぇで叶えろ!」

ローラ「私には無理だからこの男を使うのだ!」

上条「また無理だとか決めやがって!無理なら無理なりに足掻いてみせろ!」

ローラ「吐き気がする!綺麗事なんてやめろ!」

上条「てめぇの言ってることも綺麗事だ!」

ローラ「私のは理想だ!」

上条「神様の奇跡を起こして全ての人々を救う!?ブラックマンはどうなる!」

ブラック「!」

上条「こいつは廃人になるんだろ!?」

ローラ「一人の犠牲など・・・」

上条「あぁそうだ!大勢を救うには誰かがいつも犠牲になる!」


847 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:53:07.85 ID:GndB6G+n0
上条「それが神様の決めたルールなのか!?」

ローラ「く・・・」

上条「クソッタレな神様だな!」

ローラ「貴様のようなヒーローには分からないだろう!?」

上条「分かる!俺は誰かを犠牲になんかしない!」

ローラ「私にはそれが無理なんだ!」

上条「誰かを笑顔にするには、救う必要なんてない!」

ローラ「救わなければあの子供達は笑えない!」

上条「子供達を笑わせることが救いなんだ!」

ローラ「・・・」

上条「救いとかゴチャゴチャ言ってるヒマがあったら、1時間でも一緒に遊んでやれよ!」

ローラ「そんなことで世界の苦しんでいる人間を救えるか!」

上条「無理だな!せいぜい何人かが限界だ!」


848 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:53:40.89 ID:GndB6G+n0
ローラ「何人かでは・・・」

上条「でもな!その何人かを救うだけなら犠牲なんていらない!」

ローラ「!」

上条「誰かを犠牲にしなきゃ救えない!?んなのは言い訳だ!」

上条「犠牲になるはずだった誰かさえも救ってみせろ!」

ローラ「綺麗事を吐くな!」

ローラが上条の頭に杖を振り下ろす

上条「ぐっ・・・」

建宮「上条!」

五和「今・・・」

「させん!」

対馬「っ・・・邪魔なのよアンタ達!」


849 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:54:33.86 ID:GndB6G+n0
ローラ「貴様に何が分かる!?救えないのよ、そんなことでは!」

上条「・・・分からないな・・・なんで世界なんて救いたいんだよ・・・」

ローラ「貴様はヒーローだ!ならば救えるのではないか!」

上条「・・・世界なんて救ったら・・・俺は神様になっちまう」

ローラ「いいではないか!」

上条「誰からも感謝されて、誰からも尊敬されて」

ローラ「貴様が世界を救えば!私がさ世界を救えば!」

上条「そして・・・誰にも近づいてもらえない」

ローラ「!」

上条「・・・友達からも尊敬される」

ローラ「そんなこと、世界を救うことに比べたら・・・」

上条「誰かに自分の価値観で測った幸せを押し付けて・・・」

上条「・・・そんなことで世界を救えるわけがない」


850 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:55:22.51 ID:GndB6G+n0
上条「ブラックマンを見てみろ・・・生きることがこいつの幸せか?」

上条「違う・・・こいつはただ、自分を許したかったんだ」

上条「人の幸せは形が違う、そしてその形は自分だけが知ってる」

上条「金がほしい、女がほしい、仲間がほしい、美味いものが食いたい・・・」

上条「幸せなんてそんなに大層なもんじゃない」

上条「・・・わざわざ神様の奇跡なんて行わなくていいんだ」

ローラ「うるさい・・・」

上条「・・・ただ、ちょっと楽しい時間を積み重ねれば、それが幸せなんだ」

ローラ「うるさいと言っているのよ!」

ローラが再び、杖を振り下ろす

ローラ「貴様に何が分かるのよ!」

上条「・・・分からない」

ローラ「ならば偉そうに語るな!」


851 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:56:14.79 ID:GndB6G+n0
上条「でも、俺は今・・・お前に憤りを感じてる」

ローラ「だからどうした!」

上条「・・・てめぇをぶん殴りたい」

ローラ「やってみろ!」

上条「・・・美琴をさらったのはてめぇだ」

ローラ「憎いなら!私を止めてみせろ!」

建宮「やめろ!」

何度も、ローラが上条に杖を振り下ろす

それは、ただの鈍器として振り下ろされる

美琴「当麻!」

五和「くっ・・・」

対馬「ダメよ!介入するならまずあの結界を破らないと!」

美琴「でも当麻が!」



852 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:56:55.39 ID:GndB6G+n0
ローラ「止めてみせろ!何も出来ないくせに・・・私に偉そうに語るな!」

上条(・・・なんなんだ)

上条(神様ってのはそんなに素晴らしいのか・・・?)

上条(みんなが笑顔になれる世界なのか?)

上条(・・・そんなもののために、美琴は・・・インデックスは、傷ついたのか?)

上条(・・・俺の愛してる人間を・・・何人も傷つけたのか?)

上条(・・・ふざけんなよ)

上条(神様なんてヤツがいるなら・・・俺はぶん殴ってやる)

上条(世界の幸せなんて知るか・・・俺の目玉は二つだけなんだ)

上条(目の前しか見えない、馬鹿な男だ)

上条(神様なんかと違って世界を見回せるわけじゃない)

上条(そうだよ、俺に見える景色なんて・・・世界に比べたらちっぽけだ)

上条(狭いし、そこにいるのは友達だけだ)


853 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:57:42.90 ID:GndB6G+n0
上条(世界の人々からしたら本当に少ない人数だ)

上条が頭に衝撃を感じる

ローラはまだ、杖を振り下ろしていた

上条(・・・でもな)

上条(・・・俺はその世界だけは守れるんだ)

上条(真ん中にいる美琴だけは救えるんだ)

上条(あぁそうだ・・・ちっぽけな胸だ、短い腕だ)

上条(抱きしめられるのは美琴だけだ)

上条(世界なんて守れやしない、誰も幸せになんか出来ない)

上条(最大主教がしようとしてることに比べたら、ホントにちっぽけだ)

上条(・・・不器用だ、馬鹿だ、ただの一人の人間だ)

上条(でもな・・・こんな俺にも幸せがある)



854 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:58:29.97 ID:GndB6G+n0
上条(俺を愛してくれる美琴がいる)

上条(俺とつるんでくれる仲間がいる)

上条(俺には帰る場所がある)

上条(帰りたい場所が・・・居場所があるんだ)

上条(世界からしたらちっぽけだ、あぁ・・・とてつもなくちっぽけだ)

上条(でも・・・でもな!)


ローラ「貴様には何も分からないでしょ!」

上条「・・・い」

ローラ「何・・・?」

上条「自分だけの世界を守って何が悪い・・・」

ローラ「・・・」

上条「俺が生きてるのは俺の世界だ!俺の人生だ!神様も運命も土足で踏み込むんじゃねぇ!」



855 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:58:58.19 ID:GndB6G+n0
上条「俺の人生の神様は俺だ!空のどこから俺の人生を決められる!?」

上条「そうだな、さぞかし雲の上は景色がいいだろうよ!」

上条「俺達を見下して、俺達を馬鹿にして・・・」

上条「でもな!下だけ見て生きてる神様なんかに何が分かる!」

上条「俺達は上を向いてる、前を見てる!」

上条「てめぇらは神様でも信じてろよ!」


上条「俺は俺を信じてる!こんなに身近な、そして絶対に裏切らない俺を!」

上条「そんな俺が信じてる仲間を・・・そして美琴を信じる!」

ローラ「!」

上条「お前らだってそうじゃないのか!?」

上条が他の仲間に、他の全員に呼び掛ける

上条「自分の人生だ、自分で決めろ!」


856 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:59:25.36 ID:GndB6G+n0
上条「神様なんて言い訳にしないで、自分で選べ!」

テクパトル「・・・いい言葉だ、俺はこれで正しいと信じている!」

19090「ミサカもです!」

エツァリ「自分は・・・そうですね、ショチトルも信じましょう!」

ショチトル「ならばお前の人生、正しいと認めよう!」

美琴「私はこれが絶対に正しいと思うわ!だって当麻と同じ道なんだもん!」

アニェーゼ「・・・」

アニェーゼがルチアを見つめる

電撃をくらって気絶している

彼女が傷ついたのはなぜか

アニェーゼ「・・・神様なんて、時として誰かを傷つけるんですよ」

アンジェレネ「シスターアニェーゼ・・・」

アニェーゼ「勘違いしないで下さい、私は神を信じています」


857 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 09:59:55.83 ID:GndB6G+n0
シェリー「私も信じているけど・・・ま、優先順位じゃ私が上かな」

建宮「俺は俺と、俺の仲間を信じるのよな!」

対馬「ふん・・・あなたに信じられても」

建宮「辛辣なのよな!」

五和「私は信じます!女教皇様が教えてくださったこの道を!」

神裂「!」

上条「上出来だ・・・」

ローラ「・・・私だって」

上条「あ?」

ローラ「私だって信じている!」

上条「・・・」

ローラ「お前達が自分の信じた道を行くならば!」

ローラ「私だってこの道を貫いてみせる!」


858 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:00:25.50 ID:GndB6G+n0
ローラが上条を睨みつける

上条「ははは・・・いい目になったな」

ローラ「貴様には・・・貴様には、この道など理解できないだろうな」

上条「あぁ、そんな道なら唾吐いてやるよ」

ローラ「この異教徒が!」

ローラが上条に杖を振り下ろす

建宮「!早く結界を・・・」

ローラ「貴様には!分からないだろう!」

上条「ぐっ・・・」

美琴「当麻!」

ブラック「・・・少年よ」

上条「くそ・・・くそ!放せよ・・・」



859 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:01:07.70 ID:GndB6G+n0
ブラック「・・・」

ブラック(・・・自分の道、か)

ブラックマンが笑う

彼の道はぬかるんでいた

歩きにくく、常に汚れていた

だがその道端に、たった一輪の花が咲いていた

ブラック(リサ・・・)

ブラック(・・・お前の愛した世界は、私がいた世界だったのか)

ブラックマンが、少しだけ笑う

ブラック「・・・聞け」

そして

最後に何かを伝えるのも、彼だった



860 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:01:41.06 ID:GndB6G+n0


イン「・・・ステイル・・・」

ステイル「囲まれたか・・・!」

二人は森の中心にいた

周りにはイギリス清教の追っ手がいる

完全に追い詰められてしまったのだ

ステイル「魔女狩りの王!」

魔女狩りの王が現れる

だが、ルーンの枚数が少ないため、火力に欠けてしまう

「ステイル=マグヌス、大人しく従え」

ステイル「出来ないね」

「禁書目録を渡したまえ」

イン「・・・ステイル、私・・・」

ステイル「ふざけるな」


861 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:02:14.25 ID:GndB6G+n0
ステイルがインデックスの肩に手を回す

イン「・・・」

ステイル「・・・君達はこの子をなんだと思っている」

「素晴らしき同僚だよ、今は仕方なく回収しなければならない」

ステイル「ふざけるなよ」

ステイルが追っ手を睨みつける

ステイル「君達はただ利用するだけだ・・・禁書目録として」

「・・・」

ステイル「・・・そうだろう」

「これは最大主教の命令だ、逆らえば」

ステイル「イギリス清教から除名かい?結構だ」

「なんだと?」

ステイル「この子を守るために・・・いや、救うためにイギリス清教に入ったんだ」



862 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:02:43.40 ID:GndB6G+n0
ステイル「この子を救えないならばいる意味がないだろう?」

「・・・大人しく渡してくれたまえ」

ステイル「・・・あぁ、渡してやろう」

魔女狩りの王が、咆哮を上げる

ステイル「君達に引導を渡してやる」


ステイル「今日の僕は機嫌が悪い・・・地獄の業火より、よほど熱いよ」



ブラック「・・・私には何も出来なかった」

ブラック「こんな力を持ちながら、何も」

ブラック「・・・君達イギリス清教が正しく使ってくれるなら、それが罪ほろぼしなのかもしれない」

上条「ブラックマン!」

ブラック「・・・だがな、やっと分かった」

ブラックマンが笑う

そこまで力強い笑みを浮かべたのは久しぶりだった


863 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:03:20.84 ID:GndB6G+n0
ブラック「そんなもの、何の罪ほろぼしにもならん」

ブラック「この力を貴様達にくれてやれば・・・いずれは過ちに使われる」

ブラック「そんな危険性を無視しろと?」

ローラ「貴様・・・まだ足掻くか」

ブラック「・・・我が名はbrutus666、静寂穿つ咆哮だ」

ローラ「!」

アニェーゼ「殺し名・・・!」

ブラック「・・・私はこのまま、魔術装置にされるだろう」

上条「くそ!」

ブラック「・・・分かるかね?それは」

建宮「そんなの、絶対に間違いなのよな!」

ブラック「そうだ」



864 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:03:58.14 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・貴様達にとってはそうでも・・・」

ブラック「貴様の事情など知るか」

ローラ「なっ・・・!」

ブラック「あぁそうだ・・・この力はリサを・・・私を救うためにつけたのだ」

ブラック「赤の他人を救うためなんぞに使われてたまるか」

ブラックマンがニヤニヤと笑う

ローラをいらつかせるためか

ブラック「・・・誰か、私を救う者はいないか」

ブラック「ここで最大主教に背けば、イギリス清教を敵に回すかもな」

ブラック「さぁ、どこかに馬鹿はいないのか?」

アニェーゼ「・・・」

ブラック「この静寂を穿つ者はいないか」


865 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:04:29.98 ID:GndB6G+n0

エツァリ「・・・自分達はどちらの術式も破れません・・・」

ブラック「誰もいないか」

上条「くそ・・・」

上条がブラックマンに右手を伸ばす

それは、到底届くことはない

上条「くそ・・・」

ブラック「・・・見たまえ、この少年は手を伸ばしたぞ」

上条「ブラックマン・・・!」

ローラ「ちっ・・・」

ローラが上条の右手を踏み付ける

上条「ぐっ・・・」

美琴「当麻!」


866 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:04:55.34 ID:GndB6G+n0
上条「くそ・・・くそ!」

ローラ「誰も、何もするな」

美琴「アンタ・・・なんでそんなに冷たくなれるのよ!?」

ローラ「私は救いたい人間がいる」

美琴「そんなことで・・・」

ローラ「その者達のためなら非情になれるわよ」

ローラが上条を見下ろす

彼はまだ、ブラックマンに手を伸ばそうと足掻いている

ローラ「貴様は届かない」

足を左右に捻りながら、ローラが笑う

上条「ぐぁぁぁっ!」

建宮「上条・・・」



867 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:05:32.65 ID:GndB6G+n0
アニェーゼ「・・・」

シェリー「・・・ちっ、何も出来ないわね」

テクパトル「・・・ここから最大主教を狙い撃つか」

19090「無理です・・・」

ショチトル「あの結界はあらゆる物を跳ね返すぞ」

ローラ「どうした?ブラックマン、所詮貴様は誰からも見放されているのよ」

ブラック「・・・少年よ、礼を言おう」

上条「ふざけんなよ!絶対に俺が・・・」

ローラ「ダメだって言ってるの」

ローラはずっと、上条の右手を踏んでいる

さらに彼の体は魔術師によって地面に押し付けられているのだ

どうしてもブラックマンの元へはいけない


868 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:06:15.50 ID:GndB6G+n0
上条「このままじゃ・・・ダメなんだ!」

美琴「誰か・・・誰か!」

テクパトル「対抗策はないのか!?」

シェリー「無理だ・・・ブラックマンの枷は最大主教と神裂の・・・」

エツァリ「・・・」

五和「女教皇様・・・」

建宮「ダメだ・・・女教皇だけはダメなのよな!」

ショチトル「だが・・・」

対馬「他に!他に何かを考えましょう!」

テクパトル「そんなヒマがあるか!インデックス達はそろそろ回収される時間じゃないか!?」

テクパトルが時計を見る

捜索開始からもう半日近く経った

これではもう、見つかっていないほうがおかしい


869 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:06:46.23 ID:GndB6G+n0
19090「神裂さん・・・」

五和「ダメです!女教皇様は・・・」

神裂(・・・)

神裂(私は情けない人間です)

誰もが、言い争っている

神裂を庇う者

神裂を急かす者

その二つだった

神裂(・・・私は・・・イギリス清教所属の人間です)

神裂(・・・もう・・・天草式の人間ではない)

神裂(・・・イギリス清教に従わなければならないんです)

神裂(・・・建宮、あなたは私を・・・仲間だと言ってくれました)

神裂(ですが、やはり私は・・・イギリス清教の人間なんです)


870 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:07:15.49 ID:GndB6G+n0
神裂(五和・・・私みたいな人間を常に尊敬してくれました)

神裂(ですが・・・自分の信念を貫くあなたを、私は尊敬しています)

神裂(対馬・・・あなたが、傷ついた建宮を守ってくれました)

神裂(彼を守れなかった私などより、よほどあなたは強いです)

神裂(・・・私は弱いですね)

神裂(聖人だと驕り・・・自分に満足していたのかもしれません)

神裂(・・・こんな人間はもう天草式には・・・)


「俺達があなたの隣に行くのよな」


神裂(・・・)

神裂が建宮を見つめる

彼は拳を握り締めていた

上条が目の前で殴られている

それが悔しいのだろう



871 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:07:49.30 ID:GndB6G+n0
大切な仲間が

かけがえない友人が

ただ、殴られている

神裂(・・・建宮・・・五和・・・対馬・・・)

神裂が目を閉じる

神裂(そうです・・・私の所属はイギリス清教)

神裂(すでに名前はそこに連ねられています)

そして、目を開いた

その目に迷いはなかった

神裂(ですが)

救われぬ者に救いの手を

それが天草式の教えだった



872 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:08:17.48 ID:GndB6G+n0

神裂「私の心は、天草式にあります!」

建宮「!」

神裂「あなた方が私の隣にいてくれる限り!私の心は天草式にあります!」

神裂が枷の解除術式を組み上げる

ローラ「!神裂、貴様二度も裏切るつもりか!」

神裂「私の信念なイギリス清教にはありません!」

神裂「私の信念は、私の守りたいものは!私の中にあります!」

ブラックマンの体を縛り付けていた枷が解かれる

ブラック「・・・!」

神裂「・・・これで私は・・・イギリス清教の裏切り者ですね」

五和「女教皇様・・・」

神裂「ですが、帰る場所があるなら構いません」

建宮「当たり前なのよな!」


873 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:08:51.43 ID:GndB6G+n0
ローラ「神裂!」

神裂「行ってください、ブラックマン!」

神裂「あなたの手で・・・あなた自身を救って下さい!」

ブラックマンがゆっくりと立ち上がり、神裂を見つめる

ブラック「ありがとう・・・礼を言うよ」

ローラ「ふん・・・今の貴様に何が出来るの?」

ブラック「・・・」

ローラ「解かれたのは体の枷だけなのよ?」

ブラック「そうだな」

ローラ「今の貴様は魔術を使えない」

ブラック「分かっているさ」

ローラ「・・・殴る?それだけで私を殺せるのかしら」

ローラが笑う


874 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:09:25.24 ID:GndB6G+n0
彼女には余裕があった

それは当たり前のことなのだ

目の前には、ブラックマンがいる

だが彼は魔術以外に戦闘方法を持っていない

素手で人など殴り殺せない

彼は所詮、魔術を封じられれば普通の男なのだ

ローラ「・・・何か方法があるの?」

ブラック「貴様にはずいぶん手を焼かされた」

ローラ「それは私の台詞なんだけど」

ブラック「・・・私の妹・・・リサが犯されたのも、死んだのも」

ローラ「私のせい?ふざけないで」

ブラック「・・・貴様はただ襲撃を計画しただけだ」

ローラ「・・・それで?」


875 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:10:12.57 ID:GndB6G+n0
ブラック「あんな計画がなければリサは死ななかった」

ローラ「それは結果論、妹が死ななければどうせ貴様は異議を唱えなかった」

ブラック「リサは死んだ」

ローラ「だから・・・」

ブラック「死ななければだと?殺した張本人が偉そうに可能性を語るな」

ローラ「・・・」

ブラック「貴様の目を潰したい」

ブラック「貴様の腕を切り落としたい」

ブラック「貴様の首を切りたい」

ブラック「貴様の臓物をぶちまけたい」

ブラック「貴様を凌辱したい」

ブラック「貴様に・・・リサ以上の苦しみを与えてから殺したい」

ブラック「ずっとそう思っていた」


876 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:10:41.96 ID:GndB6G+n0
ローラ「そう」

ブラック「・・・そんな目的だけで、今思えばずいぶん大きな力を手に入れたものだ」

ローラ「それが?そんなつまらない話をするために枷を解かせたの?」

ブラック「リサに謝るつもりはないか」

ローラ「凌辱されたことは可哀相ね、それで?」

ブラック「・・・」

ローラ「妹が死んだのは貴様が守らなかったからじゃないの?」

ブラック「あぁそうだ」

ブラックマンが眉をひそめる

ブラック「だから私は・・・私を許せなかった」

ローラ「ふん、くだらないわね」

ブラック「・・・やっと・・・それが終わるのだ」

ローラ「何?魔術は使えない・・・」


877 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:25:42.72 ID:GndB6G+n0
ローラが愉快そうに肩をすくめる

完全に無防備だった

ブラック「・・・魔術など使わない」

ローラ「・・・」

ブラックマンが衣服のポケットに手を入れる

そして何かを取り出した

美琴「!あれは・・・」

エツァリ「黒曜石の槍!」

テクパトル「俺から奪ったものだ・・・!」

ローラ「!」

ローラが慌てて結界を強めようとした

だが、彼はまだ上条の右手を踏んでいる

ローラ「しまっ・・・」

足を離そうとしたが、それを上条が掴む



878 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:26:10.27 ID:GndB6G+n0
あらゆる異能を打ち消す右手で

バキン、と何かが砕ける

上条「・・・最後の最後にやり返してやったよ」

ローラ「貴様!」

結界が張れない

しかも、目の前には槍を持ったブラックマン

アニェーゼ「最大主教!」

ブラック「終わりだ、この悲劇も」

ブラックマンが高く槍を振り上げる

なぜか、清々しい顔をしている

ブラック「悪くはなかったよ」

そして

渾身の力を振り絞って振り下ろされた槍は、深々と刺さった


ブラックマンの胸に



879 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:26:47.54 ID:GndB6G+n0
上条「・・・え・・・?」

建宮「・・・な」

ローラ「・・・貴様・・・」

ブラック「・・・」

口から血を吐き出したブラックマンが地面に倒れる

上条「おい!おい!」

アニェーゼ「す、すぐに救護班を!早く!」

アニェーゼの呼び掛けで、ようやく魔術師の一人が救護班を呼びに行く

上条「おい!おい!返事をしろよ!」

ブラック「・・・残念だったな・・・最大主教」

ローラ「貴様・・・最初から」

ブラック「あぁ・・・このつもりだったのさ」

神裂「そんな・・・まさか・・・」



880 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:27:17.73 ID:GndB6G+n0
19090「な、なんで・・・」

ブラック「私が生きていれば・・・どうせこの魔術は利用されてしまう」

美琴「だからって!」

ブラック「どちらにしろ先は長くなかった」

上条「!」

テクパトル「・・・あんなに強力な魔術を使用し続ければ・・・」

五和「・・・命を削りますから」

上条「そんな・・・」

ブラック「・・・すまなかったな、君の槍を汚してしまった」

ブラックマンがテクパトルに槍を渡す

ブラック「・・・ありがとう、おかげで私はやっと決着をつけられたよ」

テクパトル「・・・馬鹿者が」

ローラ「・・・貴様・・・」


881 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:27:49.98 ID:GndB6G+n0
ブラック「悔しいか?さっさと無理矢理にでも拘束すればよかったものを」

ローラ「ちっ・・・無駄足になったわ」

上条「てめぇ!なんでそんなことを平気で言えるんだよ!?」

ローラ「・・・ブラックマン、貴様なぜ」

ブラック「・・・これでよかったのだ」


ステイル「くっ・・・」

イン「ステイル!」

「中々悪くはないが・・・ここではルーンは向かないだろう」

ステイル「・・・君達には・・・」

「さぁ、そろそろ・・・」

ステイルを追い詰めていた魔術師達

そのうちの一人の護符が光った



882 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:28:21.30 ID:GndB6G+n0
「・・・通信だ」

「なんだ?手短に伝えろ」

「・・・ブラックマンが」

「何?」

「ブラックマンが、自害を図ったそうだ」

イン「!」

「胸に槍を突き刺して・・・恐らく、回復しないとのことだ」

「そうか」

魔術師達は一斉に、ステイルに背を向ける

ステイル「待て!」

「我々はもはや目的を無くした、戦う理由などない」

ステイル「だからどうした・・・」

「君も早く戻りたまえ」


883 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:28:54.38 ID:GndB6G+n0
ステイル「!」

揃った足並みで、魔術師達は去っていく

イン「ステイル・・・」

ステイル「・・・ブラックマン・・・君は・・・」


ステイル「君は・・・愚か者だ・・・!」


ブラック「こうすれば、天国になど行かなくて済む」

ショチトル「・・・それだけの理由か」

ブラック「・・・こうでもしなければな・・・誰かに殺されるのを待つのはイヤだった」

アニェーゼ「・・・あなたが殺し名を名乗ったのは・・・」

ブラック「見たまえ、私を殺したではないか」

血の泡を吹きながら、ブラックマンが笑う

アンジェレネ「は、早く手当てをすれば・・・」

ブラック「アンジェレネだったかな・・・そんなもの、無意味だよ」



884 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:29:20.44 ID:GndB6G+n0
アンジェレネ「どうして・・・」

ブラック「もういい・・・この世界に私は必要ない」

ブラックマンが深く息を吸う

ブラック「・・・先程の天草式の女性は」

神裂「・・・はい」

ブラック「ありがとう、私は救われたよ」

神裂「こんな終わり方でよかったのですか・・・」

ブラック「あぁ、よかったのだ」

神裂「・・・そうですか」

ブラック「・・・アンジェレネだったね」

アンジェレネ「・・・はい」

ブラック「君達みたいな子供がいれば・・・イギリス清教はまだやり直せるかもしれない」

アンジェレネ「・・・私達が変えてみせます」


885 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:30:14.73 ID:GndB6G+n0
ブラック「頑張ってくれ」

ブラックマンが笑う

ブラック「・・・アステカの魔術師よ」

テクパトル「テクパトルだ」

ブラック「君の槍のおかげだ」

テクパトル「・・・こんな最後とはな」

ブラック「礼を言う」

テクパトル「・・・いらないさ」

ブラック「・・・あの少女は」

美琴「・・・」

ブラック「君の妹も」

19090「・・・なんですか」

ブラック「君達の大切な人を傷つけた、謝るよ」


886 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:30:44.91 ID:GndB6G+n0
美琴「倒れたまま謝るなんて・・・馬鹿よ、アンタ」

ブラック「好きなだけ殴ってくれて構わない」

19090「・・・許せないですけど・・・でも、それでもこんな終わり方はいやです」

ブラック「構わないだろう」

ブラックマンが天草式の三人を見つめる

ブラック「君達は・・・素晴らしいな、その誇りを忘れないでくれよ」

建宮「当たり前なのよな」

対馬「・・・女教皇様がいますから」

五和「・・・あなたも、誇りを守れましたか?」

ブラック「あぁ」

建宮「救われたなら幸いだ」

ブラック「・・・最大主教よ」

ローラ「なんだ」


887 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:31:18.65 ID:GndB6G+n0
ブラック「残念だったな」

ローラ「今すぐ貴様を殴り殺したいわよ」

ブラック「・・・私の遺体は・・・出来れば妹の墓の隣に埋めてほしい、場所はそこの少年が・・・」

ローラ「そんな願いなんか却下だ」

ブラック「・・・はは、貴様らしいかもな」

ローラ「全く・・・無駄足すぎたわ」

ブラック「それも復讐だと思ってくれ」

ローラ「あぁそう」

ブラック「・・・イギリス清教をいつまで率いるつもりだ」

ローラ「すぐに死ぬ貴様には関係ないでしょ」

ブラック「そうだな」



888 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:31:56.15 ID:GndB6G+n0
ブラックマンが最後に、上条を見つめる

ブラック「・・・最大主教、彼を放してはもらえないか」

ローラ「・・・そうね」

ローラが上条を解放させる

上条「・・・ブラックマン」

ブラック「すまなかったな、君の友人を傷つけて」

上条「・・・なんでこんな終わり方を選んだ」

ブラック「誰にも被害は出ない」

上条「んなのは問題じゃない!」

ブラック「いいだろう?」

上条「・・・こんなんじゃお前は救えないじゃないか」

ブラック「何を言う、私は救われたよ」

嬉しそうにブラックマンが笑う



889 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:32:22.93 ID:GndB6G+n0
ブラック「・・・君にはいろいろと言われたな」

上条「お前は見ていていらついたからな」

ブラック「ははは・・・手厳しいな」

上条「・・・なんで・・・こんな終わり方しかなかった」

ブラック「・・・これでよかったのだ」

上条「ちっともよくない・・・結局、お前は世の中に絶望したまま死んでいくんじゃないか」

ブラック「・・・そうかもしれないな」

上条「お前に・・・もっと世界の美しさを教えたかった」

ブラック「知らないわけではないさ・・・リサがいなくなってからは美しさを無くしたが」

上条「そんなこと・・・」

ブラック「・・・」

上条「お、おい・・・」



890 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:33:24.18 ID:GndB6G+n0
ブラック「・・・そろそろ、限界のようだ」

上条「!」

アンジェレネ「救護班は・・・」

アニェーゼ「まだです・・・」

ショチトル「くそ・・・」

上条「おい・・・あともう少しだ!」

ブラック「あぁ、もう少しで眠れる」

上条「違う!お前を救わなきゃならない!」

ブラック「もう救われた」

上条「ふざけんな!そんな救いなんて・・・」

ブラック「少年よ」

ブラックマンが上条の目を見つめる

上条の目はとても純粋だった


891 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:34:06.39 ID:GndB6G+n0
ブラックマンがとても、うらやましいと思うほどに

ブラック「最後に・・・君に教えよう」

上条「・・・なんだよ」

ブラック「君は言ったな・・・世界を変えてみせろと」

上条「あぁ」

ブラック「だがな、そんなことは出来ないのだ」

ブラックマンが目を細める

空は、皮肉にも雲一つない

ブラック「世界を変えられるか?私には無理だった」

上条「・・・」

ブラック「聞こう・・・少年」

上条「上条当麻だ」

ブラック「ならば答えろ、上条当麻」



892 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:34:47.53 ID:GndB6G+n0
ブラック「君は世界を変えられるか?」

上条「・・・」

上条が笑う

まるで、答えなど決まっていると言いた気に

上条「無理だよ、俺じゃ世界は変えられない」

ブラック「・・・そうか」

ブラックマンが苦笑する

この少年にも無理だったのだ、と

最も正義に近い少年でも

上条「俺じゃ世界は変えられない・・・でもな」



上条「俺達なら、世界を変えられる」

ブラック「!」


893 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:35:17.32 ID:GndB6G+n0
上条「俺には仲間がいる、友達がいる・・・美琴がいる」

美琴「そうね・・・私はずっと当麻の傍にいるわ」

上条「だから・・・俺達なら変えられると思う」

ブラック「・・・仲間・・・か」

上条「あぁ」

ブラック「私にも仲間がいれば・・・世界を変えられたのかな」

上条「分からない・・・」

ブラック「・・・上条当麻、か」

上条「あぁ」

ブラック「そちらの少女は」

美琴「御坂美琴」

ブラック「・・・君達みたいな人間ばかりなら・・・世界は幸せだろうな」


894 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:35:58.13 ID:GndB6G+n0
上条「何言ってんだよ、それじゃ幸せが一つしかないだろ」

ブラック「・・・そうだな」

本当に嬉しそうな笑顔を浮かべながら、ブラックマンがため息をつく

ブラック「・・・こんなにも空は綺麗だったのだな」

上条「・・・俺達さ」

ブラック「なんだ」

上条「絶対にこの世界を変えてみせる」

ブラック「・・・」

上条「お前が夢に描いていたような、綺麗な世界に」

ブラック「・・・天国にもしも行けたならば・・・見守っておこう」

上条「頼む」

ブラック「・・・時間のようだよ」


895 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:36:26.62 ID:GndB6G+n0
ブラックマンが目を閉じる

ブラック「上条当麻、御坂美琴」

上条「なんだ」

ブラック「世界を頼んだ」

上条「・・・分かった」

ブラック「・・・リサ」

上条「・・・」

ブラック「・・・お前は・・・幸せだったか」

ぽつり、とブラックマンが呟く

その指から、顔から、腕から

そして心から、命が消えた

上条「・・・」

テクパトル「・・・」


896 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:36:52.67 ID:GndB6G+n0
建宮「・・・俺達は・・・救えたのか・・・?」

エツァリ「救えたはずです・・・彼は笑っていますから」

ローラ「・・・至急、遺体を移送しろ」

上条「!待って・・・」

ローラ「幻想殺し、こいつの妹の墓はどこだ」

上条「・・・森の中だ」

ローラ「全く手の焼ける男だ」

ローラが笑う

ローラ「神裂、まぁ今回は大目に見ておくわ」

神裂「ありがとうございます」

ローラ「幻想殺し、お前とは顔を合わせるのもイヤになりそうよ」

上条「そりゃこっちの台詞なんだよ」

ローラ「・・・ブラックマン」



897 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:38:10.53 ID:GndB6G+n0
返事はない

ローラ「・・・貴様、結局最後は妹のことを思っていたのだな」


ローラ「馬鹿な男よ」 



イン「・・・終わったのかな?」

ステイル「・・・あぁ」

二人は森の中で寄り添っていた

イン「ねぇ・・・ステイル」

ステイル「なんだい」

イン「どうして私を助けてくれたの?」

ステイル「・・・そう決めたからさ」

ステイルがタバコを取り出す

その一服が、非常に心を落ち着ける

ステイル「・・・僕がそう決めたんだ」



898 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:40:31.76 ID:GndB6G+n0
イン「・・・ありがとう」

インデックスがステイルの手を握る

ステイル「あ、あぁ」

イン「嬉しかったんだよ・・・ステイルが助けに来てくれて」

ステイル「・・・そうかい」

恥ずかしそうにステイルが目を逸らす

イン「あ、そっぽ向いてる」

ステイル「違うさ」

イン「ねぇ、ステイル」

ステイル「なんだい?」

イン「ありがと」

ステイル「・・・あぁ」

イン「・・・ステイルかっこよかったんだよ!!」

ステイル「!?」


899 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:42:17.61 ID:GndB6G+n0
イン「とってもかっこよかったんだよ!!とうまよりも!」

ステイル「そ、そそそそそうかい!?」

ステイルの顔が真っ赤に染まる

ステイル「・・・イ、インデックス」

イン「?」

ステイル「・・・僕は・・・」


ローラ「あー・・・こんなところに墓があったのね」

ステイル「」

ローラ「ん?何してるのステイル」

ステイル「最大主教・・・!!!」

ローラの後ろに並ぶ魔術師たちが何かを抱えている

あれは

ステイル「ブラックマン・・・」


900 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:45:56.96 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・それが妹の墓らしくてね」

ローラの合図で、魔術師たちがブラックマンの遺体を降ろす

ローラ「よいしょっと」

パチン、とローラが指を鳴らす

一瞬にして地面がえぐれた

ステイル「・・・何をしたんですか」

ローラ「さぁ?なんでも風圧で土がえぐれるみたいよ」

ステイル「自分でくらい理解してください・・・」

ローラ「・・・こんなことをしてやる義理はないが・・・まぁ退屈しのぎにはなったからね」

ブラックマンの遺体が穴の中へと投げられる

ローラ「・・・そこからはお前の好きな空は見えないが・・・」

ローラ「・・・隣に妹がいれば大丈夫だろう」

笑いながら、ローラが土をかけていく

周りの魔術師が手伝おうとするが、ローラは片手でそれを制する


901 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:48:08.69 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・ステイル、貴様はどうする」

ステイル「イギリス清教に残りますよ」

ローラ「それでいいかもしれないわね」

ステイル「・・・インデックスを傷付けたことを謝って欲しいのだが」

ローラ「ごめん」

ステイル「・・・心が篭っていない」

ローラ「うるさいわね・・・私は今不機嫌なのよ」

手元の砂を固めて、ステイルへ投げつける

ステイル「な、何を・・・」

ローラ「・・・これでよかったと思ってる輩もいるだろうが・・・」

ローラ「ふん、私はこんな終わり方で大層いらついているのよ」

ステイル「・・・そうですか」

ローラ「・・・まぁ、別の方法を考えるしかないわね」


902 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:50:09.49 ID:GndB6G+n0
ステイル「・・・他のみんなは」

ローラ「さぁ・・・今回の事件で確執が生まれたんじゃない?」

ステイル「さらっと言わないでください」

ローラ「・・・」

ステイル「・・・さぁ、インデックス・・・帰ろうか」

イン「うん」

ステイルがインデックスの手を引く

ローラ「・・・ホント、最低の数日を過ごしたわね」

ローラ「・・・ステイル」

ステイル「なんですか」

ローラ「明日、仕事倍にするから」

ステイル「・・・」

ステイルの額を汗が伝う

それは、暑さのせいではないだろう

何しろ今は冬なのだ


903 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:52:37.18 ID:GndB6G+n0
神裂「・・・」

建宮「それからというもの!!女教皇は我々のハートを鷲掴み!!」

神裂「も、もうやめてください・・・」

シェリー「・・・まぁ天草式は今回頑張ってたからな」

アニェーゼ「全く・・・最低ですよ」

ブラックマンの死から一日

イギリス清教女子寮では、そこに所属する人間達が飲み会を開いていた

オルソラ「私は・・・あのあとずーっと宿に泊まっていたのでございますよ」

アンジェレネ「ど、どうしてですか?」

オルソラ「危険だ、と言われてしまって・・・」

五和「当たり前ですよ」

ルチア「・・・なんかまだ体がビリビリしてます・・・」

対馬「はぁ・・・急に緊張がなくなったわね」

904 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:55:33.43 ID:GndB6G+n0
神裂「しかし・・・仲違いしなくてよかったです」

アニェーゼ「私達は恨んでますよ」

神裂「う・・・」

建宮「おー、怖い怖い」

五和「はぁ・・・今回は本当に、建宮さんが活躍しましたね」

建宮「惚れちゃうのよなぁ?そうなのよなぁ!?」

対馬「ちょっと黙って・・・」

アンジェレネ「そ、その・・・」

シェリー「大声出されるといらつくんだよ」

オルソラ「近所迷惑なのでございますよ」

建宮「えぇ!?」

神裂「・・・私が立ち直れたのはあなたのおかげです」

建宮「でしょでしょ!?」


905 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 10:57:41.70 ID:GndB6G+n0
シェリー「・・・それにしても、上条たちはどうした」

神裂「さぁ・・・知り合いの家に行くと言っていましたよ」

アニェーゼ「ちっ・・・せっかくいじってやろうと思ってたのに」

対馬「やめなさいな」

ルチア「・・・もう、今回は災難でした・・・」

神裂「・・・みなさんはこれからどうするのですか?」

アニェーゼ「まだここに残りますよ、最大主教のやり方はあれでしたけど」

建宮「・・・それがいいのよな」

神裂「・・・あなた方は?」

五和「私達は女教皇様のいる場所にいますよ」

神裂「・・・ありがとうございます」

建宮「さぁ!!飲め飲め!!!」


906 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:00:05.30 ID:GndB6G+n0
シェリー「・・・なぁ」

建宮「なんなのよな」

シェリー「・・・お前達は・・・誇りというものを持っていたな」

建宮「そんなもん、誰でも持ってるのよな」

神裂「そうですよ」

シェリー「・・・そうだな」

オルソラ「シェリーさん、美味しいクッキーもあるのでございますよ」

シェリー「もらう」

アンジェレネ「わ、私も・・・」

ルチア「シスターアンジェレネ!!!」

アンジェレネ「ひぃっ!!」

建宮「はぁ・・・」


建宮「やーっと平和になったのよな」


907 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:02:03.12 ID:GndB6G+n0

オリアナ「あら、結局無事に終わったのね」

オリアナの家に、学園都市組は集まっていた

ショチトル「・・・」

美琴「・・・」

オリアナ「あら、こっちの子達は?」

上条「俺の彼女の美琴・・・」

オリアナ「へぇ、この子が・・・」

エツァリ「こちらは自分の恋人のショチトルです」

オリアナ「なかなかグラマーじゃない」

ショチトル「・・・なんなんだ・・・」

オリアナ「?」

美琴「なんなのよ・・・」

オリアナ「お姉さんがどうかした?」


美琴・ショチトル「なんだそのダイナマイトはぁ!!!」


908 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:05:15.41 ID:GndB6G+n0
オリアナ「あら、そんなにすごい?」

美琴「当麻!!」

上条「は、はい!?」

美琴「私もいつかはこうなってみせるからね!!!」

上条「あ、いや・・・これはちょっと」

オリアナ「・・・」

オリアナがじっと美琴を見つめる

オリアナ「そっか・・・君は小さいほうが好みだったか」

美琴「小さいって何よ!?」

上条「俺は大きくても小さくても美琴が好きですよ!?」

美琴「//」

オリアナ「・・・でもあなたは小さくはないわよ」

ショチトル「ライフルと魚雷の違いだ」

オリアナ「?」

ショチトル「挟んで上下に動かしてドピュっと・・・」

テクパトル「やめろ」


909 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:07:49.39 ID:GndB6G+n0
オリアナ「?その声・・・」

テクパトル「・・・アンタと交渉した男だよ」

オリアナ「すっごい・・・もっと渋いおじさん想像してたわ・・・」

テクパトル「もっと頭のよさそうなインテリを想像してた」

オリアナ「へぇ・・・ねぇ、あなた今晩開いてる?」

テクパトル「ふっざけんな!!!」

オリアナ「そう言わずに・・・」

19090「テっくんはミサカの恋人です!!」

オリアナ「あら、そうなの?」

テクパトル「お前・・・見境なしか・・・」

オリアナ「・・・はぁ、独り身は私だけね」

上条「・・・それより紅茶・・・」


910 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:10:11.44 ID:GndB6G+n0
オリアナ「はい、あったかいから」

美琴「ありがとう・・・」

オリアナ「・・・それで?どうなったの」

上条「ブラックマンが・・・自分で命を絶ったよ」

オリアナ「ふーん・・・」

上条「ふーんってなぁ・・・」

オリアナ「そうなるような気もしてたから」

ショチトル「なぜ?」

オリアナ「その人の話を聞いてたら、自然と分かったわよ」

19090「・・・そうですか・・・」

オリアナ「でも、それで救われたならいいんじゃない?」

上条「・・・よかったのかな」

オリアナ「そう思うしかないわよ」


911 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:12:52.73 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・あいた・・・」

19090「?どうかしましたか?」

テクパトル「まだちょっと傷が痛むんだよ・・・」

ショチトル「無理矢理塞いだからな」

美琴「ちょっと・・・無理しすぎだったんじゃない?」

テクパトル「仕方ないだろ・・・」

19090「で、でもテっくんはミサカを助けてくれました!!」

エツァリ「それは・・・そうですけど」

19090「・・・テっくんが負傷したと聞いたときはもう・・・」

上条「あぁ・・・俺も焦ったな」

美琴「・・・でも、無事で何よりよ」

テクパトル「そうだな・・・」

テクパトルが紅茶を一口飲む


912 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:15:36.39 ID:GndB6G+n0
19090「・・・イギリス清教はこれからどうなるのでしょうか」

エツァリ「・・・そうですね、最大主教に不満を抱いた者もいるはずですが・・・」

オリアナ「でも、そこまで大きな変化はないわよ」

上条「なんで?」

オリアナ「この程度の規模の事件、今まで何度かあったもの」

ショチトル「そうなのか?」

テクパトル「なに、お前達の知っていることなら禁書目録の事件もな」

美琴「そういえば・・・あれって当麻が」

上条「・・・なんか俺ってイギリス清教お騒がせ男だな」

テクパトル「イギリス清教に限ったことではないさ」

エツァリ「はは・・・そうですね」

テクパトル「・・・今晩はここに泊まってもいいか?」

オリアナ「あら、お姉さんと夜を過ごしたいの?」

テクパトル「・・・なんか20000号を思い出す・・・」


913 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:17:52.41 ID:GndB6G+n0
オリアナ「・・・いいわよ、みんなも泊まっていきなさい」

ショチトル「じゃあお言葉に甘えて」

エツァリ「ゆっくりと休めるのは久しぶりですね」

上条「そうだな・・・やっと平和な日常が戻ってきたよ」

美琴「そうね・・・」

オリアナ「じゃあ、お姉さんは少し料理を作ってくるから」

上条「おう、悪いな」

オリアナがその場から立ち去る

テクパトル「はぁ・・・力が抜けるよ」

ショチトル「なんだ、死ぬのか?」

テクパトル「てめぇ・・・」

エツァリ「・・・傷はどうですか?」

テクパトル「うーん・・・」


914 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:21:44.09 ID:GndB6G+n0
テクパトルが服を捲る

少し傷跡が残っているが、それ以外はそれほど問題はない

上条「・・・脇腹を刺されたんだっけ」

テクパトル「・・・だが、いつまで経ってもロンギヌスは消えなかったな」

ショチトル「・・・ブラックマンが消さなかったのだな」

美琴「・・・血があふれ出ないように・・・か」

テクパトル「馬鹿なヤツだよな・・・」

上条「・・・はぁ、なんか・・・ちょっと納得いかないよな」

19090「そうですね・・・」

テクパトル「仕方ないさ、あいつはそれで救われたんだ」

上条「・・・あぁ」

19090「・・・傷・・・結構大きいですね」


915 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:24:12.09 ID:GndB6G+n0
19090号がテクパトルの傷に触れる

テクパトル「おわっ!?」

19090「?」

素肌をゆっくりと触る柔らかな手

テクパトル「・・・」

上条「おーい、テクパトル?」

テクパトル「・・・あ、なんだ!?」

美琴「大丈夫?ぼーっとしてたけど」

ショチトル「トリップしてたな」

テクパトル「いやいや!!」

エツァリ「?」


オリアナ「はーい、お姉さんの手料理が出来たわよ」

上条「あぁ、分かった」

美琴「じゃあ行きましょう」

916 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:27:46.66 ID:GndB6G+n0
オリアナの手料理は、中々に豪華なものだった

上条「へぇ・・・こんなにも張り切ったのか」

オリアナ「みんなにお疲れ様ってことで」

テクパトル「・・・すまないな」

オリアナ「それより、学園都市の件はよろしくね」

テクパトル「分かってるよ」

19090「では、いただきます!!」

美琴「いっただきまーす!!」

7人が手を合わせる

こんな、ほのぼのとした食事をするのは何日ぶりだろうか

上条(・・・幸せだな)

上条は、小さく微笑んでいた



917 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:30:45.70 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・」

ローラは、一人で紅茶を飲んでいた

イギリス清教の中からは、特にこれといって反発意見は出ていない

誰もが、今回の件は仕方ないと思っていたのだ

ローラ(・・・あの時ステイルがインデックスを連れて行かなければ・・・)

ローラ(・・・はぁ、私の計画は粉々なりてよ・・・)

机に突っ伏し、ローラが溜め息をつく

ローラ「・・・ん?」

そこで気づく

彼女の机の上に、一枚の手紙が置いてある

ローラ「・・・これは?」

その字には、見覚えがなかった

ローラ(・・・ステイルか?神裂か?それとも・・・)


918 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:34:08.89 ID:GndB6G+n0
便箋には名前が書かれていない

ローラ(・・・直接置かれたわけね)

ローラが便箋を破る

そして、少し驚いたような顔をする

それは、ブラックマンの書いた手紙だった

いつの間に置いたのだろうか

美琴に解放されたときにそんなヒマはなかったはずだ

ローラ「・・・全く、あの男はさまざまな奇跡を起こすわね」

笑いながら、読み進めていく

そこには、全く恨みのない文章がつづられていた

それは、まるで親しい友に宛てるかのようなものだった


919 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:39:14.28 ID:GndB6G+n0

「親愛なる最大主教へ

  君がこれを読んでいる頃には、どうであれ我々には決着がついているのだろう

  それは少しだけ残念に思える

  君にはこの力を与えるつもりは無い

  君が自分自身の力で世界を変えてみたまえ
  
  私にはそれが出来なかった

  君のような汚れた人間なら出来るだろう

  それでは

                 あの少年によろしく伝えていてくれ」



ローラ「・・・」

ローラが、無言でその手紙を破る

ローラ「勝手なことを言うヤツね・・・」

もう一度、紅茶を口にする


 
920 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:43:17.29 ID:GndB6G+n0
ローラ「・・・それにしても、月が綺麗ね」

ぽつり、とローラが呟く

ブラックマンが聖堂を襲撃して二日目の夜だ

もう、すっかり元通りになっている

ローラ「・・・貴様、あのとき私を殺せたはずなのに」

ローラ「・・・くだらんな」

肩をすくめてから、ローラが引き出しを開ける

そこには、さまざまな計画のリストが連ねられている

ローラ「今度はどうしようかしら・・・出来る限り面白いものにしましょう」

ローラ「ブラックマン、世界を幸せになんて変えられないのよ・・・」


ローラ「でも、私好みにならば変えられる」

そう言うローラの横顔は笑っていた

921 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 11:44:34.35 ID:GndB6G+n0
一旦休憩

ローラは根っからの悪人だけど、どこか優しさというか愛嬌があっていいと思う

天草式大好きだよ

だって対馬可愛いよ対馬


五和もいいけど対馬のほうが可愛いよ

たぶん

あとはちょっとしたほのぼのな後日談かな

次スレどうしよう


922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/28(金) 12:01:28.58 ID:MPkHwCXk0

しかし、あれだな、イギリスにいた妹達完全放置されとるww
19090号いるから情報は伝わっているはずなのに
あれだよね、きっと描写されてないところでなんか皆を援護したりしてたんだよね
923 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:06:57.75 ID:GndB6G+n0
>>922 前も言ったんですけど、あんまり科学側の人間を絡ませたくなかったんですよ

魔術側に集中したかったので

援護してません、みんなでお茶飲みながらしりとりしてますw

続きはそろそろ


924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 12:14:20.61 ID:Fxksg5KIO
みことうま
925 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:15:32.32 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・」

19090「テっくん・・・」

オリアナ「・・・ねぇ、君達は人目を気にしないの?」

上条「いや、してるはずだ・・・」

美琴「・・・テクパトル、19090号はかなり心配してたのよ」

19090「そうですよ、テっくん」

19090号がテクパトルの腕に抱きつく

テクパトル「お、おい・・・」

ショチトル「うらやましいぞ」

テクパトル「・・・そ、それとこれとは・・・」

オリアナ「はぁ・・・見せ付けるわね」

テクパトル「違うんだ!!」


926 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:17:55.12 ID:GndB6G+n0
オリアナ「・・・それにしても、君達はホント馬鹿ね」

上条「馬鹿かな?」

オリアナ「わざわざ学園都市からここに来て・・・」

美琴「友達を助けるためだったんだから」

エツァリ「当たり前ですよね」

オリアナ「・・・そう」

オリアナが笑う

19090「・・・そろそろ寝ますか?」

オリアナ「そうね・・・風呂も入ったし」

上条「じゃあ・・・明日には帰るから、早く起きろよ」

テクパトル「分かってる」

時刻は夜の9時

もう、街は静けさを取り戻しつつある

上条(・・・静かになってきたな)


927 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:21:24.41 ID:GndB6G+n0

テクパトル「・・・」

オリアナ「あら、どうしたの?」

テクパトル「・・・ちょっと薬局に行って来る」

一同がそれぞれ寝室に入ってからわずか20分

テクパトルはなぜか外出の準備をしていた

オリアナ「何か買うの?」

テクパトル「・・・聞くな」

オリアナ「・・・なるほど、察したわ」

テクパトル「・・・察したか」

オリアナ「それより・・・ちょっと話、いい?」

テクパトル「・・・なんだよ」

オリアナ「・・・君は、あの子が好き?」

テクパトル「19090号か」




928 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:26:07.14 ID:GndB6G+n0
オリアナ「素敵ね、誰かを好きになるって」

テクパトル「あぁ、素敵かもな」

オリアナ「・・・私も誰かを好きになろうかしら」

テクパトル「あぁそうかい」

オリアナ「ねぇ、あなたちょっと素敵じゃない?」

テクパトル「断る」

テクパトルがドアを開ける

テクパトル「・・・いいな、月が綺麗だよ」

オリアナ「月が好きなの?」

テクパトル「ん?あぁそうだな」

笑いながらテクパトルがドアを閉める

テクパトル「ホント、月は綺麗だ」


929 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:28:24.79 ID:GndB6G+n0


上条「・・・おはよう」

テクパトル「・・・おはよう」

エツァリ「おはようございます・・・」

美琴「?どうしたのよ」

上条「・・・いろいろ疲れました」

19090「テっくん、おはようございます」

テクパトル「おう、おはよう」

オリアナ「遅いわね・・・もう10時よ」

上条「そんな時間か・・・」

ショチトル「一番近い便でもあと3時間だぞ」

上条「そっか・・・少し時間あるな」

テクパトル「どうする?」


930 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:30:40.82 ID:GndB6G+n0
上条「・・・オリアナ、車・・・走らせてもらえるか?」

オリアナ「なに?お土産でも買いたいの?」

上条「いや・・・ちょっと行きたい場所があるんだ」

上条が笑う

美琴「?どこ行くのよ」

エツァリ「・・・あぁ、もしかしてブラックマンの墓ですか」

上条「墓なんて立派なものなのかな」

19090「・・・そうですね、ミサカも行きますよ」

美琴「私も」

ショチトル「みんな行こうか」

テクパトル「そうだな」

オリアナ「はぁ・・・いいわよ、ついでだし」

上条「道は教えるからさ」

オリアナ「分かったわ、行きましょう」


931 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:33:05.32 ID:GndB6G+n0

イギリスの町並みを車が走る

少しきつい座席だが、それには誰も文句を言わない

オリアナ「・・・綺麗な空ね」

上条「あぁ、青空だよ」

美琴「・・・ねぇ、当麻」

上条「なんだよ」

美琴「・・・ありがとう」

上条「?何がだよ」

美琴「私のこと・・・救い出してくれて」

上条「あぁ・・・当たり前だろ」

ショチトル「おいおい、妬けるな」

エツァリ「・・・上条さんもお疲れ様でした」

上条「あぁ」


932 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:35:49.86 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・誰も・・・変わってないな」

車を走らせている間に、一般人とすれ違った

その人々はみんな、笑っている

先日までイギリス清教であれほどの事件があったとは知らないまま

上条「・・・変わらないさ、すぐには」

美琴「でも、私達なら変えられるんでしょ?」

上条「変えてみせるさ」

ショチトル「そうだな、私は協力するぞ」

エツァリ「自分だって協力しますよ」

19090「ミサカもですよ」

上条「あぁ、ありがとう」

テクパトル「・・・世界、か」

上条「お、そろそろ着くぞ」


933 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:38:53.92 ID:GndB6G+n0
車が止まったのは、森の前だった

オリアナ「へぇ、ここなの?」

上条「ありがとう・・・あとは歩くよ」

オリアナ「早くしてね、このまま空港に向かうから」

テクパトル「悪いな」

美琴「すぐ終わらせるから」

ショチトル「・・・行くか」

6人がゆっくりと歩き出す

爽やかな風が、頬を撫でる

とても静かな場所だ

昨日まで、魔術師たちの争いの舞台になっていたとは思えないほどに

上条(・・・いい場所に眠ってるんだな、ブラックマンは)

934 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:41:23.94 ID:GndB6G+n0

美琴「・・・あった」

テクパトル「・・・これか」

森の中ほどにあったのは、小さな二つの墓だ

一つはブラックマンの妹のもの

もう一つは、ブラックマンのもの

上条「・・・ちゃんと並んでるんだな」

19090「・・・これでよかったんでしょうか」

ショチトル「さぁな」

テクパトル「・・・辛かっただろうな、ブラックマンも」

エツァリ「・・・過ちを犯した理由が、純粋すぎましたね」

上条「あぁ」

上条が近くに咲いていた花を一輪、包みとる

上条「・・・」



935 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:44:09.87 ID:GndB6G+n0
美琴「当麻・・・」

上条「ブラックマン、どうだよそっちは」

19090「・・・」

上条「・・・お前のしたことは、許せないけどさ」

ショチトル「全くその通りだな」

上条「でもな・・・こんな終わり方はやっぱり納得いかなかったよ」

上条「・・・どうして、もっと素敵な終わり方がなかったんだろうな」

テクパトル「・・・納得のいく終わりなど、この物語にはなかったんだ」

上条「それでも、俺は作り出したかったよ」

そっとその花を、ブラックマンとその隣の墓の間に植える

美琴「・・・妹さんの隣なら・・・寂しくないかしらね」

上条「・・・あぁ」


936 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:48:26.10 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・なぁ上条」

上条「なんだよ」

テクパトル「お前はどんな世界に変えてみるんだ?」

上条「そうだな・・・」

上条が小さな墓を見つめる

そこに眠っている二人が目指した世界は、どんなものだったのか

上条「結局さ、それぞれの理想の世界は違うんだよな」

ショチトル「そうそう」

エツァリ「・・・では、我々は我々の理想を叶えるしかありませんね」

上条「俺達の理想は、みんなが少しだけ笑ってられる世界かな」

美琴「あ、それいいかもね」

19090「そうですね・・・友達と笑えればいいですよ」

上条「・・・そんな、小さな幸せだよ」


937 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:51:29.29 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・ブラックマンは笑うかもな」

上条「笑われてもいいんだよ」

花が、風に揺られる

まるで笑っているように見えた

上条「それでもさ、誰かを犠牲にしてまで俺は幸せになりたくない」

美琴「・・・」

上条「だったらさ、どんなに小さな幸せでも・・・ただ誰も犠牲にしないで笑えたほうがいいんじゃないか?」

19090「・・・そんな世界を、きっとブラックマンも目指していたはずですよ」

エツァリ「そうだったら・・・彼も優しい人だったんでしょうね」

上条「・・・そうだよな」

綺麗な陽射しが、森の中を照らす

上条「・・・さて、そろそろ帰るか」

美琴「もういいの?」


938 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:55:04.96 ID:GndB6G+n0
上条「あぁ、そんなに長居しても意味ないからさ」

美琴「・・・うん」

上条「じゃあな、ブラックマン」

テクパトル「さて、俺達は俺達の居場所に帰るか」

上条「あぁ」

6人が墓に背を向ける

上条「・・・ん?」

19090「?どうしました?」

上条「・・・いや、なんでもないよ」

エツァリ「どうかしましたか?」

ショチトル「まさか声でも聞こえたか?」

上条「なんでもないって!!行こうぜ!!!」

上条が走り出す


939 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 12:58:53.96 ID:GndB6G+n0
美琴「あ!!待ってってば!!!」

上条「追いついてみせろ!!」

ショチトル「ははは!!やってやるよ!!!」

エツァリ「よーし!!頑張りますよ!」

19090「待ってください!!!」

テクパトル「はぁ・・・転ぶなよ」

上条「おわーっ!!」

テクパトル(俺がフラグを建てたのか)

上条「いって!!」

美琴「だ、大丈夫?」

ショチトル「ははは!!不幸だな!!!」

上条「なにー!?」

ショチトル「次は私が逃げるからな!!」

エツァリ「望むところです!!」


940 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:03:39.66 ID:GndB6G+n0
上条「・・・みんな楽しそうだな」

テクパトル「全くだ」

二人は、はしゃぐ4人を後ろから見つめる

上条「・・・あぁいうのは、幸せにはならないのかな」

テクパトル「世界から見たら・・・ちっぽけな幸せだな」

上条「はは・・・ちっぽけすぎるよな」

テクパトル「でもな、俺は19090号の笑顔を見ていれば幸せになれる」

上条「・・・そっか」

テクパトル「・・・俺はこの幸せが一番好きだ」

上条「俺もだよ」

テクパトル「・・・こんな幸せが、俺の世界を変えてくれたんだ」

上条「お、それいいな」


941 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:07:36.62 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・なぁ、上条」

上条「なんだよ」

テクパトル「・・・俺はこの幸せを守ってみせるよ」

上条「俺だってやってやるよ」

テクパトル「・・・さて、行くか」


19090「テっくんー!!早く早く!!!」

テクパトル「おー!!!」

上条「美琴!!待て待て!!!!!」

美琴「よーし、来なさい!!!!!!!!」

上条「行くぞ!!」

はしゃぐ6人の仲間達

森の中には清清しい風が吹いている

それに揺られている花は、笑っているように見えた

本当に、笑っているように見えた


942 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:10:34.44 ID:GndB6G+n0

オリアナ「・・・どうしてそんなに汚れてるの」

上条「・・・森の中を駆けたら汚れました」

ショチトル「転びました」

エツァリ「・・・我ながら子供っぽいですね」

19090「・・・情けないです」

美琴「・・・でも楽しかったもん」

オリアナ「はぁ・・・早く乗りなさい」

上条「あぁ」

テクパトル「・・・俺は走らなくてよかったな」

美琴「・・・アンタ、ノリ悪いわよ」

テクパトル「一人くらい大人じゃなきゃな」

上条「う・・・お前が言うと説得力があるな」

テクパトル「俺が一番年上だからな」


943 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:13:16.48 ID:GndB6G+n0
オリアナ「ほら、早く学園都市に帰りたいんでしょ」

上条「あぁ!!」

オリアナ「じゃ、乗った乗った」

美琴「うん!!」


7人を乗せた車が空港へと向かった

上条(・・・やっと、この物語も終わるんだな)

上条(・・・やっとだ・・・)

上条が空を見上げる

綺麗な陽射しが、まるで祝福しているようだった

それに向かって、そっと手を伸ばす

上条(神様か・・・そんなもんが今回の事件を起こしたんだよな)

上条(・・・いいぜ、アンタがそれを見てほくそ笑んでたんなら)


上条(まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す)


944 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:15:42.34 ID:GndB6G+n0

オリアナ「じゃあ・・・また来て頂戴ね」

上条「久しぶりに会えて面白かったよ」

オリアナ「あら、お姉さんはいつでもベッドの中で・・・」

上条「そこでは待っていなくていいから!!!」

ショチトル「・・・上条、モテるな」

上条「あぁもう!!」

美琴「あ、飛行機着いたみたいよ」

空港内のアナウンスに美琴が反応する

英語の分からない上条には分からないが

テクパトル「じゃあ・・・帰ろうか」

19090「お世話になりました」

オリアナ「えぇ、またね」

ショチトル「さて、やっと帰れるな」

エツァリ「そうですね」


945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/28(金) 13:18:02.65 ID:MPkHwCXk0
あぁ、エツァリのかっこいい活躍もそろそろ終わりか……

エツァリ先生の来世での活躍にご期待ください
946 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:19:38.64 ID:GndB6G+n0

オリアナ「・・・」

オリアナは、空を飛んでいく飛行機を見つめていた

そこには、彼女を救ってくれた少年が乗っていた

オリアナ「はぁ・・・お姉さんは君達がうらやましいわよ」

オリアナ「誰かを救うためだけに真っ直ぐ進める・・・なんて」

オリアナ「お姉さんには無理よ」

笑いながらオリアナが空港から出て行く

オリアナ「・・・ねぇ、上条君」

オリアナ「私を救ってくれたのはあなただったのよ」

オリアナ「全く、罪な子よ」

時計を見ると、そろそろ午後の3時になりかけている

オリアナ「・・・さて」


オリアナ「お姉さんも、誰かのために仕事してみましょうか!」


947 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:22:08.79 ID:GndB6G+n0

上条「帰ってきたな!!!」

学園都市に帰り着いた一同

時刻はもう朝になっている

上条「・・・さっき朝だったのに」

テクパトル「時差だよ時差」

ショチトル「そんなことも分からないのか」

上条「い、いや!!分かってるって!!!」

エツァリ「イギリスと学園都市の時差は?」

上条「・・・23時間?」

テクパトル「ねぇよ・・・まずはどこに向かう?」

19090「テっくん、仕事はいいんですか?」

テクパトル「今日までは休むよ・・・なんか不安だけど」


948 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:24:21.58 ID:GndB6G+n0
上条「あ、じゃあさ・・・まずは垣根の家に行ってみないか?」

ショチトル「あ、それいいな」

美琴「そうね・・・ここからも近いし」

19090「では行きましょう!!」

テクパトル「・・・出来れば家には帰りたくない・・・」

エツァリ「黙って出てきたんですか・・・」

テクパトル「・・・言わないでくれ・・・」

上条「ははは・・・」

6人がタクシーを拾う

上条「じゃあ、垣根の家に行くか!!」

一同「おー!!」


949 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:27:27.46 ID:GndB6G+n0

上条「・・・あれ?なんか静かじゃないか?」

垣根の家の前に着いた一同

だが、なぜだか家の中からは話し声が聞こえない

いつもならこの時間は垣根が何かしら騒いでいるはずだ

上条「・・・ってそうか、学校に行ってるのかな」

美琴「体験入学だっけ?」

テクパトル「・・・上条、お前学校はよかったのか?」

上条「う・・・ど、どうにか・・・」

19090「ダメだと思いますよ」

エツァリ「そうですね、ダメですね」

上条「・・・言わないでくれ・・・」

肩を落としながらも、上条がチャイムを鳴らす


950 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:29:17.06 ID:GndB6G+n0
少しだけ間が開いた

すると、ドアが急に開かれたのだ

上条「あ、いたのか・・・」

心理「・・・あら、みんな・・・」

美琴「ど、どうしたの心理定規・・・?なんか疲れてるみたいだけど」

心理「・・・どうしてこういうときに限ってどこかに行ってたのよ・・・」

テクパトル「・・・何かあったのか」

心理「・・・こっちは解決したわよ」

上条「お、俺達もイギリスで魔術の事件に・・・」

心理「・・・そう、互いに面倒な事件に巻き込まれたわけね」

ショチトル「・・・互いに?」

心理「・・・いいわ、あがってちょうだい」


951 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:33:33.16 ID:GndB6G+n0
上条「・・・あれ?垣根は?」

心理「・・・いないわ」

上条「いない?学校か?」

心理「違うわよ」

心理定規が紅茶を淹れる

テクパトル「・・・何かあったのか?」

心理「・・・そうね、ちょっといろいろあったのよ」

苦笑しながら心理定規が紅茶を運んでくる

本当に、疲れているようだ

テクパトル「・・・詳しく話してくれないか」

心理「・・・今はいろいろ終わって疲れてるから、あとでね」

19090「あ、あの・・・垣根は今・・・?」

心理「・・・そうね、教えてあげるわ」


952 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:40:45.48 ID:GndB6G+n0
上条「・・・どこなんだ?」

心理「・・・病院よ」

美琴「びょ、病院!?」

テクパトル「何かあったのか?」

心理「・・・ちょっとね」

ショチトル「・・・無事なのか?」

心理「一応は・・・会いに行く?」

上条「あ、あぁ」

心理「・・・じゃあ着いてきて」

心理定規が上着を着る

上条「・・・」

心理「・・・私も彼には会いたいし」

エツァリ「・・・はい」


953 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:52:42.92 ID:GndB6G+n0

上条「・・・ここか」

一つの病室の前で、一同が立ち止まる

美琴「・・・入っていいのかしら」

心理「垣根、入るわよ」

心理定規がドアを開ける

ベッドの上では、垣根が目を閉じている

テクパトル「・・・おい、垣根」

垣根「んー・・・あぁ?お前らか・・・」

美琴「なんだ・・・てっきり死んでるのかと」

心理「それだったらさすがに私も泣いてるわよ」

垣根「・・・どこ行ってたんだ・・・いってぇ!!!」

心理「ほら、動かないの」

19090「怪我してるのか?」


954 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 13:59:44.00 ID:GndB6G+n0
>>953  19090「怪我してるのですか?」だった


垣根「・・・怪我してまーす」

上条「何があったんだ?」

ショチトル「喧嘩か?」

垣根「んなくだらねぇことするかよ・・・」

脇腹を撫でながら垣根が睨みつける

美琴「じゃあ・・・」

心理「でも、元気そうで安心したわ」

垣根「くっそが・・・いてぇ・・・」

テクパトル「・・・何があった」

垣根「いろいろだよ・・・短くなんていえるか」

垣根が呆れたように言う

19090「・・・では、手短に」

垣根「俺の言ったこと聞いてた?」


955 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:02:22.58 ID:GndB6G+n0
上条「・・・何があったんだよ」

心理「・・・そうね、あなた達には実感の湧かない話かもしれないわね」

テクパトル「・・・聞いてみるよ」

ショチトル「教えてくれ」

垣根「・・・白井にでも聞いてみろ」

美琴「なんで教えてくれないのよ」

垣根「俺の口から言いたくねぇんだよ」

垣根がベッドにゴロンと寝転がる

垣根「・・・胸糞悪い数日間だった」

エツァリ「・・・そうですか」

垣根「てめぇとショチトルはこっちにいなくて正解だったかもな・・・」

ショチトル「なに?」


956 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:05:09.59 ID:GndB6G+n0
エツァリ「自分達に関わることですか・・・」

垣根「・・・一方通行もな」

ショチトル「!!まさか・・・」

垣根「安心しろ、俺達は全員生きてる・・・そうだ、全員生きてるんだ」

テクパトル「・・・暗部か」

心理「えぇ」

美琴「ま、待って・・・暗部はもう・・・」

心理「無くなったわ、私たちがいた暗部は」

上条「どういうことだ?」

心理「分からない?」


心理「中には、暗部をもう一度作り出そうなんてする者達もいたのよ」

上条「!!」


957 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:10:11.72 ID:GndB6G+n0
垣根「あーあー、散々だったぜ・・・てめぇらが協力してくれたら楽だったのに・・・」

美琴「だ、だからこっちも忙しかったのよ!!」

上条「そうだって・・・」

テクパトル「俺なんか脇腹ぶっ刺されたんだよ・・・」

心理「それは大変ね」

テクパトル「・・・なんか冷たすぎないか」

心理「あぁ痛そうね」

テクパトル「馬鹿にしてるだろ!!!」

ショチトル「・・・病院では静かにな」

テクパトル「う・・・」

19090「そうですよ、迷惑です」

テクパトル「分かったよ・・・」

垣根「・・・まぁ、いろいろあったんだよ」


958 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:17:21.00 ID:GndB6G+n0
テクパトル「・・・聞きたいな」

垣根「・・・そうかよ」

垣根が体を起こす

垣根「おぉぉぉぉいてぇ!!!」

心理「飛び起きるからよ」

ショチトル「馬鹿だろお前」

垣根「わ、脇腹が・・・」

テクパトル「・・・耐えろ」

垣根「耐えられるか!!!脇腹の痛みだ、耐えられるか!!!」

テクパトル「俺だって痛いんだよ!!」

垣根「じゃあ痛がろうぜ!!!っていうかもうコンビ組もうぜ!!!」

テクパトル「なんでだよ!!!」

垣根「その臓物をぶちまけろ!!!」

テクパトル「やだよ!!」


959 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:24:32.22 ID:GndB6G+n0
垣根「・・・はぁ、でだな・・・」

垣根が心理定規を指差す

垣根「まぁお前らも知ってる通り・・・俺と心理定規は同じ組織にいたわけだが」

心理「・・・それが、悲劇というか・・・面倒なことになったのよ」

ショチトル「・・・そうか」

心理「・・・暗部なんて、なくなったと思ってたのだけど」

エツァリ「・・・自分も・・・そう思っていました」

垣根「まー、俺達が野望は阻止・・・したと思うがな」

テクパトル「・・・思う?」

垣根「どうせ同じようなことをする馬鹿はいるんだよ」

心理「・・・そうね」

上条「・・・垣根、話してくれ」

垣根「おうよ・・・じゃ、教えてやりますか」



960 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:25:50.26 ID:GndB6G+n0








垣根「俺達がもう一度戻った、暗闇の奥底を」











961 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:53:33.22 ID:GndB6G+n0
次スレはこちら

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1319779873/  


てなわけでこのスレはおしまい

最後辺りはちょっと急いだ感じもしたけども

どうにか収拾はついたはず

ローラさんは黒いほうがいいよね

ボスというか敵は、あんまり強すぎるとあれですよね

いろいろ負ける描写とかつけたんで許してくだせぇ

天草式と上条さんとテっくんとエツァリをかっこよくしたかった

というか、最近はエツァリ変態じゃないけども

オリアナの話もちょこっと書きたかったけどまぁこれくらいで

ちなみにブラックマンってのはめちゃくちゃマイナーなんではないでしょうか

ではあとがきはこんなもので


962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/28(金) 15:10:32.79 ID:7BUc/asAO
荒ぶるミサカ達が気になるなww
963 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 15:28:26.46 ID:GndB6G+n0

アフター


20000「おぉぉぉぉぉ!?脇腹に包帯!!!!」

14510「どうしたんですかぁ!?そりゃ大怪我ですよ!?」

テクパトル「・・・いや、これは」

御坂妹「・・・怪我ですよね」

10039「ど、どうしたんですか?」

テクパトル「こう・・・脇腹をぶすっと」

17600「女のもつれか」

テクパトル「ちげぇ!!」

10033「女のもつれ!?」

テクパトル「ちげぇんだよ!!」

19090「大体、これは男性に刺されたんですよ」

ミサカ一同「男のもつれ!?」

テクパトル「お前らなんだ!?」


964 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 15:37:45.65 ID:GndB6G+n0
19090「・・・はぁ、いろいろ大変だったんですよ」

17600「・・・それで?大丈夫なのか?」

テクパトル「まぁな・・・」

20000「・・・大丈夫か?傷とか」

テクパトル「だから大丈夫だって」

20000「・・・で?なんでミサカたちには黙ってた」

テクパトル「急だったから」

10033「それでも、言ってほしかったです!!」

14510「駆け落ちしたかと思いました!!」

テクパトル「する理由がねぇよ!!!」

御坂妹「蒸発したかと思いました」

テクパトル「仕事あるよ俺は!?」

10039「蒸発したかと思いました」

テクパトル「大事なのか・・・」


965 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 16:15:09.80 ID:GndB6G+n0
今日はここまで

雑談でもどうぞw


966 :あずきにかわりまして名無しがお送りします [[sage]]:2011/10/28(金) 17:26:12.92 ID:f8hhBG8A0
>>1おつ!!
次スレも期待して待ってる(
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/28(金) 18:01:22.19 ID:YyCHNCdAO
ブラックマンが自害した後にキリスト(聖書)みたいに墓から復活、そう考えてた時期が私にもありました……
968 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 23:24:44.70 ID:GndB6G+n0
>>967 それはないですよ

もうこの話はここで終わりなんだ

ロック

こっちはもう雑談か後日談で埋めます

ご実弾


スクライドってやっぱ面白いよね

泣けるのはグレンラガン、とも思うけど

でもやっぱり一番はスクライドだよ

クーガーかっけぇよ


ではおやすみなさい


969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/28(金) 23:31:00.95 ID:934JiC4z0
乙乙
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/28(金) 23:42:48.48 ID:DfPzJMq20
やっと追いついた!
読めども読めども1の速さに追い付けず…

まさか1も受験生とは思いませんでしたが、お互い頑張りましょう!

お疲れ様です!
971 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 23:50:44.50 ID:GndB6G+n0
>>970 がんばりましょうね、受験

来週の土曜に面接だけどまぁ気楽に行こう

というか早く髪を短くしたい

もう長い

もうね、さっさと0.5oにしたいの

じゃないとあっついの



寝られない夜はヒップホップでも聞きませんか?

行ってみたいと思いませんか

972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/29(土) 06:35:42.21 ID:52Ze9+Kho
ヒップホップが聞きたいのか
井上陽水が聞きたいのか

どっちなんだ?wwww
973 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 09:00:18.39 ID:nz3CnKox0
こっちは1000取りでもどうぞ

んなこたぁ分かってんだよこの蛇野郎がぁ!!


974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/30(日) 11:32:46.22 ID:rDjQ9vAAO
まだちょっと遠いよww
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/30(日) 12:36:34.73 ID:KwwcEicf0
よし、ならば>>1000なら>>1とサトリナが結婚
それ以外だったら上条さんと美琴が結婚
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 17:47:33.77 ID:MzVFaEfm0
あれ?次スレとべない。
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 18:17:55.94 ID:vupi2qlN0
おお、これはこれはかっこいいスレになっている・・・・・・!!

受験というものは大変すぎて困るね。

やりたいものの時間が本当になくなる。
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 20:59:32.30 ID:GwwjXIXF0
俺に受験は通用しねぇ(キリ
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 23:49:48.82 ID:H0oG0QiKo
なんとなく開いたらこのスレ………
まだ続いてたんだな。読み直すわ
居るか分からんが1乙!
980 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:14:53.02 ID:ngC1UpuW0
衝撃のぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!


ファーストブリッドォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



スクライドは熱くていいね

まだまだ1000取りどうぞ

981 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 11:49:06.72 ID:nmMM+Fpy0

とある学校の屋上雑談


吹寄「・・・ところで垣根」

垣根「なんだよ」

吹寄「・・・どうして貴様はメルヘンを信条にしてるの?」

垣根「あぁ?」

吹寄「メルヘンなんて、学園都市には似合わないじゃない」

垣根「そんなことか」

吹寄「そ、そんなこと?」

垣根「全く・・・お前は分かっちゃいないな」

垣根が地面に何かを書く

垣根「いいか?そこに服があれば脱がしたいと思う、そこに可愛い子がいればさらいたいと思う」

吹寄「思わない」

垣根「それと同じだ、メルヘンはないと言われたらメルヘンを叶えたくなる」

吹寄「ごめん、分からないわ・・・」

垣根「んー、よし、例えを変えよう」


982 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 12:00:37.20 ID:nmMM+Fpy0
吹寄「例え・・・?」

垣根「お前は俺を射止められないと分かっている」

垣根がドヤ顔で説明する

その瞬間、吹寄のオデコアタックが垣根を吹き飛ばした

垣根「ぐぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」

吹寄「それはいいの!!!」

垣根「・・・そ、空が・・・青いわ・・・」

吹寄「誰よ」

垣根「・・・さて、つまりお前も叶わない夢を叶えたいだろう」

吹寄「・・・で?」

垣根「それと同じだ」

吹寄「・・・よく分からないわね」

垣根「だろ?それより飯食おうぜ」

吹寄「・・・そうね」


983 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 12:16:30.77 ID:nmMM+Fpy0

吹寄「そういえば・・・心理定規は?」

垣根「今は購買部行ってる」

吹寄「購買部?」

垣根「シャー芯が切れたんだって」

吹寄「な、なんか心理定規のイメージが・・・」

垣根「・・・でもなんで土御門たちは来ないんだろうな・・・上条の野郎はサボってるけど」

吹寄「さぁ?なんかニヤニヤしながら私を見送ったけど・・・」

垣根「・・・馬鹿は馬鹿ってことか」

吹寄「?」

垣根「なんでもね・・・お、なんかテニス部が練習してる」

吹寄「あぁ・・・大会が近いのよ、二年生が中心になる初めての大会だから張り切って・・・」

垣根「おっほぉ!!ヘソチラだぜ吹寄ぇ!!」

吹寄「・・・」


984 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 12:19:16.63 ID:nmMM+Fpy0
垣根「いやぁ!!やっぱりヘソも捨てがたいよな!!」

吹寄「貴様・・・生粋の変態ね」

垣根「はぁ?世の中に変態じゃない人間はいないんだぜ」

吹寄「稀にいるわよ、私とか」

垣根「・・・ねぇよ」

吹寄「・・・あるわよ」

垣根「ツー」

吹寄「ビート」

垣根「・・・吹寄」

吹寄「何よ」

垣根「お前とは・・・なんか上手くやれそうだ」キラキラ

吹寄「え、えぇっ!?」ドキッ

垣根「漫才コンビとして」

吹寄「ちょっとメリケン買ってくるわ」

垣根「やめてちょうだいな」


985 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 12:24:20.16 ID:nmMM+Fpy0

吹寄「・・・そういえば、垣根は進路とかどうするの?」

垣根「俺・・・まだこの高校に体験入学しにきたばっかなんだけど」

吹寄「でも、大学は行かないの?」

垣根「行けたら行きたいかな」

吹寄「・・・やっぱり上条たちと同じところ?」

垣根「お前はどうすんだよ?」

吹寄「きっと・・・私だけ違う大学ね」

垣根「へぇ・・・寂しくないのか?」

吹寄「そんな理由で将来に関わることは決められないわよ」

垣根「・・・そうか」

吹寄「でも・・・ちょっと寂しいかしら」

垣根「・・・よし、決めた」

垣根がニヤリと笑う

人懐っこいその笑みは、吹寄をドキリとさせる


986 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 12:27:15.79 ID:nmMM+Fpy0
垣根「俺がお前と同じ大学に行ってやるよ!!」

吹寄「ちょ、ちょっと!!」

垣根「なんだよ」

吹寄「なんか・・・それはイヤなんだけど」

垣根「はぁ?楽しいぜ、俺と一緒だと」

吹寄「自分で言わないで・・・」

垣根「どんぶらこ、どんぶらこと」

吹寄「桃は流れ、そして時も流れました」

垣根「ほーら、楽しくなるぜ」

吹寄「ならないわよ!!なんか知らないけど、私までボケに巻き込まないで!!」

垣根「お前がボケだな、俺は突っ込む」

吹寄「ひ、卑猥よ!!」

垣根「そういう意味じゃないけど」


987 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:10:23.77 ID:nmMM+Fpy0

垣根「・・・はぁ、お前は大学は一人か・・・」

吹寄「・・・き、貴様は・・・来ないの?」

垣根「あぁ?来て欲しいのかよ」

吹寄「・・・知り合いがいれば少しは・・・ね」

垣根「・・・じゃあ行こうかな」

吹寄「でも心理定規が許してくれるの?」

垣根「別に俺が大学通っても・・・」

吹寄「・・・私と二人になることよ」

垣根「あぁ、それくらいならいいんじゃねぇの?」

吹寄「・・・そう」

垣根「そうそう、気にするなよ」

吹寄「はぁ・・・貴様は本当に、なんとも思ってないのね」


988 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:13:01.18 ID:nmMM+Fpy0
垣根「そりゃ、なんとも思ってないけどな」

吹寄「・・・地味に傷つくわね」

垣根「そうかい」

吹寄「・・・垣根は、どうしてこの学校に来たの?」

垣根「友達がたくさんいるから」

吹寄「それだけ?」

垣根「うーん・・・そうだな」

吹寄「・・・頭いいんだから、もっといい高校に体験入学すればよかったのに」

垣根「いやいや、頭いい高校はみんな真面目なんだよ」

吹寄「それって偏見よね・・・」

垣根「・・・でもさ、俺は別にいい高校とか通わなくても頭いいから」

吹寄「・・・垣根、それは上条の前で言ったらダメよ・・・」

垣根「分かってるって」


989 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:16:04.28 ID:nmMM+Fpy0

心理「あら、二人とも楽しそうじゃない」

垣根「おー、来たか」

吹寄「・・・お帰りなさい」

心理「ただいま・・・二人で何話してたの?」

垣根「将来の夢」

心理「?」

吹寄「嘘つかないの・・・ただ、どこの大学に通うか話してたのよ」

心理「大学ね・・・私はどうしようかしら」

吹寄「・・・心理定規は、やっぱり垣根と同じ学年で行くの?」

心理「まさか、美琴と同じ学年で行きたいわね」

吹寄「へぇ・・・」

垣根「あぁ?じゃあお前、常盤台にでも通うつもりか?」

心理「それもありかもね」



990 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:20:22.52 ID:nmMM+Fpy0
垣根「・・・空が青い・・・」

心理「綺麗な空ね・・・」

垣根「あぁ・・・空も飛べるはず・・・」

吹寄「垣根は飛べるじゃない」

垣根「・・・そうだけどさ」

心理「・・・それより、もう授業始まっちゃうわよ」

垣根「あれ?お前飯食わなくていいのか?」

心理「お腹空いてないもの」

垣根「へぇ・・・そうかい」

吹寄「じゃあ行きましょう」

垣根「あいよ」

吹寄「・・・教室は今頃、無法地帯ね・・・」


土御門「にゃー!!だから、メイドはロリでこそ・・・」

青ピ「ロリメイドなんて外道や!!可愛いけども!!」


991 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:24:26.59 ID:nmMM+Fpy0
垣根「・・・お前ら、何話してるんだ?」

青ピ「あぁ!!垣根、垣根はロリメイドってやっぱり無しと思うやろ!?」

土御門「いーや!!ロリこそ正義だにゃー!!」

垣根「・・・メイドは正義、ロリも正義!!すなわちロリメイドは天使!!」

青ピ「それじゃ根本的な解決にはなってないんやで!!」

垣根「メイドとロリメイドは別物だ、カレーとカレーパンみたいなもんだ!!」

土御門「そんなことはないんだにゃー!!メイドのカースト制度で一番上にあるのこそ、ロリメイドだぜぃ!!」

青ピ「メイドで一番上は巨乳や!!」

垣根「いーや!!メイドは色気をなくしてこそメイドだ!!」

土御門「あぁ!?」

青ピ「なんやてぇ!?」

垣根「おうおう!?」


吹寄「・・・オデコ・・・使うときがきたわね」

心理(もういや・・・)


992 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:29:57.94 ID:nmMM+Fpy0

とあるイギリスの悪ふざけ

ステイル「最大主教!!」

ローラ「あら、どうかしたのか・・・」

ステイル「どういうことですか!!いきなり僕をあの女子寮に使いに出そうなんて・・・」

ローラ「お前は小さい女の子が好みだ、と土御門が言っていたのよ」

ステイル「あの男は信用なりません!!」

ローラ「私は信じているのよ」

ステイル「日本語でどうぞ!!」

ローラ「信じていたりてよ」

ステイル「ほーら!!それが土御門はちんぷんかんだという証拠だ!!あなたは土御門から日本語を・・・」

ローラ「ちんぷんかん!?よし決めた、女子寮に素っ裸で・・・」

ステイル「出来るか!!」

ローラ「では腹芸を・・・」

ステイル「できねぇんだよ!!」


993 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:32:48.70 ID:nmMM+Fpy0
ローラ「はぁ・・・これがいわゆるキレる若者よ」

ステイル「誰だってキレますよそんなこと言われたら!!」

ローラ「お前はもう少し落ち着きを・・・」

ステイル「落ち着けるか!!」

ローラ「目上の者に対しての言葉遣いもなっていない」

ステイル「尊敬できる人なら敬語を使いますよ!」

ローラ「オマケにロリコンときた・・・」

ステイル「僕はまだ14歳だ!!」

ローラ「・・・え・・・?」

ステイル「どうしてそんなこの世の終わり、みたいな顔をしてるんだあなたは!!あぁもうムカつくな!!」

ローラ「ムカつく!?よし決めた、女子寮に素っ裸・・・」

ステイル「天丼はいいからその命令を取り消せぇ!!」

ローラ「無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!」

ステイル「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」


994 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:35:40.13 ID:nmMM+Fpy0

とある天草式の飲み会

建宮「・・・いやぁ、今回は建宮さん大活躍だったのよなぁ!!」

五和「はぁ・・・さっきからずっとこんな調子です」

対馬「建宮さん、そんなことないわよ」

建宮「女教皇を立ち直らせたのは俺なのよな!!」

五和「でも・・・なんか回想ではかっこ悪い理論とか述べてました・・・」

建宮「ストーップ!!そういう発言は嫌われるのよな!!」

五和「?」

対馬「それにしても・・・女教皇はどこなんでしょうか」

建宮「たしかブラックマンの墓に行ってるのよな」

対馬「律儀ね・・・」

五和「私たちも行けばよかったですね・・・」

建宮「また日を改めて、な」


995 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:38:35.56 ID:nmMM+Fpy0

とあるオリアナの恋煩い

オリアナ(・・・あの坊やが帰ってもうしばらく経ったわ・・・)

オリアナ(・・・今になって、どうして寂しくなるのかしら)

オリアナ(・・・はぁ、恋って・・・大変ね)


オリアナ(そういえば、イギリス清教には彼の電話番号を知っている人間がいるはず・・・)

オリアナ(そして、お姉さんはそういう情報を盗むのが本職・・・)

オリアナ(・・・下手をすれば、イギリス清教を敵に回すわね)

オリアナ(・・・ううん、それでも構わないわ)

オリアナが車のキーを手に握る

クルクル、とそれを回しながら車に乗り込む

オリアナ(だってね・・・)


オリアナ(・・・ただ一人の愛しい男のためなら・・・世界だって敵に回せるもの)


996 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:41:30.69 ID:nmMM+Fpy0

とある再会


ブラック「・・・やぁ」

リサ「あ、お兄ちゃん」

ブラック「久しぶり、そっちはどうだ」

リサ「やっとこさイヤなことも忘れられたよ」

ブラック「そうか・・・もうずいぶん経つからな」

リサ「お兄ちゃんは老けたね」

ブラック「もう・・・ずいぶん経つからな」

リサ「・・・それに、なんだか悪いこともしたみたい」

ブラック「・・・そうだな」

リサ「もっと早く私と会えてたら・・・お兄ちゃんはあんなこと、しなかったの?」

ブラック「どうだろうな」

リサ「・・・私のこと、そんなに好きだったの?」

ブラック「たった一人の肉親だったからな」

リサ「・・・私ね、天国があるって気づいたときは絶望したんだ・・・」

ブラック「・・・辛い思いを抱えたままだからな」

リサ「うん」


997 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:44:17.23 ID:nmMM+Fpy0
ブラック「・・・私が天国なんかに来れるとは思わなかった」

リサ「あはは・・・もしかしたら地獄かもよ?」

ブラック「それでも構わないさ」

リサ「・・・私もね、お兄ちゃんとまた会えたから・・・天国も悪くないって思うよ」

ブラック「そうか」

リサ「うん」

ブラック「リサ、私は間違ってたかな?」

リサ「間違ってた、とっても悲しい間違いをしてたんだよ」

ブラック「そうか・・・そうだな、そうだとも」

リサ「でもさ、お兄ちゃんはその間違いを正しいと思ってた」

ブラック「・・・そうだな」

リサ「だったら私は責めないよ」

ブラック「・・・そうか」

リサ「お兄ちゃん、一緒にいてくれる?」

ブラック「・・・あぁ」


ブラック「・・・もう、手を放すこともあるまい」


998 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:47:10.40 ID:nmMM+Fpy0
さて、ここまでだな

筋肉動画を最後に貼っておしまいに

ミスターオリンピアの1998年

ロニー伝説が始まった年ですね

http://www.youtube.com/watch?v=r-cVyCqi4xg 

関連動画で続きへジャンプできます

懐かしい選手もちらほら

ナッサーとか今どうしてるんでしょ

マーカスが出てきてから消えちゃいましたね

ショーン、ケビン、フレックス、リー

無冠の帝王が勢ぞろいだった・・・

いいですね、今のオリンピアより個性のある選手が多くて


999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/03(木) 15:01:55.67 ID:aYup57qIo
1000なら俺の夢がかなう
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/03(木) 15:37:53.20 ID:tKhY2QEBo
>>1000ならリア充
1001 :1001 :Over 1000 Thread
              わ〜い、>>1001ゲット〜
               __
                    ‖ _~",ー 、,,_
      |           ‖ /  |ノ  ,>
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                ‖/~         ヽ | /
                    ‖     ,   ))
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      / ヽ__/ ヽ/ _‖   _  ヽ.    ∧___∧
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   _l    ∨    ヽ/ ̄)( ̄ ̄`"::::ノ (⌒ヽ, ..ヽノ   ,
  ( ヽ_        /   /ll `'ー、....::ノ ∀\/ー- /`l  ヽ
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1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
橋下 腕は注射痕だらけ! 漏らした @ 2011/11/03(木) 15:34:03.92
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もう秋だけど最近体験した怖い話です @ 2011/11/03(木) 14:15:30.89 ID:yvOzmRwu0
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久しぶりに会う友人のメールがわからん @ 2011/11/03(木) 14:01:49.73
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舞 「ふたりはプリキュアSplash☆Star」 咲 「星空のともだち!」 @ 2011/11/03(木) 11:28:08.24 ID:H9ECZtsNo
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【避難所】この胸のドキドキあの娘に向けてドクンドクン!オナ禁スレ【VIP】 @ 2011/11/03(木) 09:15:39.59 ID:3feRydI7o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1320279339/

安価で東方描く @ 2011/11/03(木) 09:14:51.89 ID:VBPWGjFY0
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住所ギリギリまで晒して近かったらSEX★3 @ 2011/11/03(木) 08:38:05.98 ID:7aGR7p2IO
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Kazarinの日記 @ 2011/11/03(木) 05:42:17.36 ID:Hjbaj/l30
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