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垣根「もう一度堕ちるぞ、あの闇の奥底へ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:31:13.55 ID:GndB6G+n0
1スレ目 美琴「す・・・好きです!!付き合ってください!!」上条「何やってんだ、御坂」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13045/1304506297.html
2スレ目 美琴「当麻♪」上条「なんだ、美琴」垣根「俺も仲間に入れて」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1305/13053/1305377166.html
3スレ目 上条「美琴、愛してる」美琴「私も♪」垣根「俺も♪」心理「ジャマしないの」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306063255/
4スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「えへへ//」垣根「速さが足りない」心理「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306724889/
5スレ目 上条「放さないからな」美琴「うん♪」垣根「話さないからな」心理「しゃべりなさいよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307282872/
6スレ目 上条「抱きしめようか?」美琴「うん//」垣根「抱こうか?」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307709819/
7スレ目 上条「守り続けるからな」美琴「うん//」垣根「これがリア充です」心理「あなたもよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308139244/
8スレ目(番外編) 美琴「私の好きな人のことを、それ以上悪く言わないで!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308667506/
9スレ目 上条「結婚に必要な物は?」美琴「愛!」心理「お金」垣根「念のため三行半」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308992651/
10スレ目 上条「まずは!」美琴「そのふざけた!」心理「幻想を!」垣根「守るのこそ愛だ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309355502/
11スレ目 上条「マイホームか・・・」美琴「い、いいわね//」心理「そうね」垣根「欠陥住宅か」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309860801/
12スレ目 テクパトル「あの月はもう、空には出ない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310283821/
13スレ目 上条「美琴は可愛いな」美琴「//」垣根「心理定規可愛いハァハァ」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310641032/
14スレ目 上条「恋といえば!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311066610/
15スレ目 上条「旅行かぁ・・・」美琴「どこ行く?」垣根「ヤっちゃうのか?」心理「黙って」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311506386/
16スレ目 上条「愛って何かな」美琴「守ること?」心理「信じること」垣根「疑い続けることさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311939697/
17スレ目 上条「始まった・・・」美琴「大覇星祭・・・」垣根「アナウンスは俺」心理「やめて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312451177/
18スレ目 上条「引き続き!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスも俺!」心理「もうイヤ・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312969940/
19スレ目 上条「まだまだ続く!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはMeダヨ!」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313206497/
20スレ目 上条「そして終盤!」美琴「大覇星祭!」垣根「アナウンスはワシじゃよ」心理「誰よ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313568339/
21スレ目 上条「みこと!」美琴「とうま!」垣根「マン」心理「そこまでよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313987737/
22スレ目 上条「1に愛情!」美琴「2に愛情!」心理「3、4がなくて?」垣根「後藤さん」一同「誰だよ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1314/13145/1314512717.html
23スレ目 上条「海外旅行!」美琴「イギリス!」心理「ご飯がまずい」垣根「ひもじいよぉ」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1315/13152/1315277970.html
24スレ目 上条「デートの定番は?」美琴「遊園地!」心理「映画館」垣根「特別な場所なんていらねぇさ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316091462/
25スレ目 上条「熱い思いは!」美琴「止められない!」心理「燃える心は」垣根「バーニングハート!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316955436/
26スレ目 上条「異性のどこが好き!?」美琴「優しさ!」心理「温かさ」垣根「声」テクパトル「背中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318038036/
27スレ目 上条「お前の手で、その幻想をぶち殺せ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1319184599/
黒歴史 今日も学園都市には雨が降る
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1303/13037/1303730725.html
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:43:22.88 ID:GndB6G+n0
キャラ紹介

垣根帝督・・・学園都市第二位の超能力者
      能力は「未元物質」 
      元「スクール」のリーダー
      現在は心理定規の彼氏である

心理定規・・・能力は「心理定規」
      呼び名もそのまま
      元「スクール」のメンバー
      現在は垣根の彼女

一方通行・・・学園都市第一位の超能力者
      能力は「ベクトル変換」
      元「グループ」のメンバー
      現在は番外個体の彼氏

番外個体・・・妹達の一人
      現在は一方通行の彼女


白井黒子・・・風紀委員の一員
      現在は削板の彼女

削板軍覇・・・学園都市の超能力者
      能力は「説明できない力」
      現在は黒子の彼氏
    
土御門元春・・・元「グループ」のリーダー的存在
       現在は平和に暮らしている

麦野沈利・・・学園都市の超能力者
      能力は「原子崩し」
      元「アイテム」のリーダー
      現在は平和に暮らしている

絹旗最愛・・・元「アイテム」のメンバー
      今は平和に暮らしている

滝壺理后・・・元「アイテム」のメンバー
      今は浜面の彼女

浜面仕上・・・元「アイテム」のメンバー
      リア充

フレンダ・・・元「アイテム」のメンバー
      死んでいたが、天国から舞い戻ってきた
      ゴーグル男に少なからず好意を抱いている

ゴーグル・・・元「スクール」のメンバー
      死んでいたが、天国から舞い戻ってきた
      フレンダのアプローチを悉くスルーする鈍感


 
3 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 14:55:28.95 ID:GndB6G+n0
前スレが魔術側の事件だったので

こっちは科学側、「暗部」の事件を

まぁ番外編なので


しかし書き溜めがないために、遅くなります

ご了承を



4 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 15:00:18.96 ID:GndB6G+n0
1月26日

とある学校


垣根「・・・上条の野郎サボリやがったな」

吹寄「・・・はぁ、すぐさまサボりだす・・・」

土御門「・・・」

青ピ「なんや、土御門・・・いつもなら騒ぐはずなのに」

土御門「いや・・・なんでもねぇよ」

心理「?」

姫神「どうしたの」

土御門(・・・イギリス清教で問題が起きたか・・・カミやんならそれに突っ込まれたのかもな)

垣根「おい、土御門」

土御門「・・・あぁ、そうだにゃー、カミやんはどうせ彼女とイチャイチャしてるんじゃないのか?」

吹寄「絶対そうよね」

5 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 15:17:26.33 ID:GndB6G+n0
垣根「つーかよぉ・・・なーんで今日は自習ばっかりなんだ?」

土御門「にゃー、先生達がテストの採点で忙しいんだぜよ」

心理「・・・上条君はどうにかテストは受けたわね」

姫神「・・・はぁ、必要なことだけしてサボる」

垣根「さすが上条だよな」

心理「そうね・・・」

吹寄「・・・まったく困ったわ」

青ピ「ボクもサボリたいんやけどなぁ・・・」

土御門「・・・そりゃダメだぜぃ」

垣根「・・・あーあ、てそいな」

心理「・・・はぁ、上条君がいないと辛いわね」

垣根「つまんないよな」

土御門「にゃー、そうだぜよ」


6 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 15:34:12.56 ID:GndB6G+n0
垣根「・・・あーあ、くっそ・・・」

垣根がつまらなそうに溜め息をつく

垣根「・・・まぁあと一時間だからな・・・」

そっと外を見つめる

雪が降っているのは、冬だからだ

垣根(・・・あぁ、もうどれくらい経ったかな・・・)

青ピ「それでなぁ、今度その店行きたいんやけど」

吹寄「いいわね」

垣根(・・・あの闇から抜け出して・・・)

土御門「にゃー、行こうぜ」

心理「いいんじゃない?」

垣根(・・・ずいぶん経ったな)

青ピ「垣根も行くんやろ?」

垣根「あぁ、いいぜ」


7 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 15:48:59.76 ID:GndB6G+n0

土御門「・・・にゃー、やっと終わったぜよ」

垣根「あーあ、結局自習ばーっかり」

心理「いいんじゃない?それでも」

吹寄「でもやっぱりヒマだったわよね」

青ピ「ボク、プリントすぐ終わったからあとは女の子のスカートを・・・」

姫神「最低」

垣根「死ね」

心理「・・・」

青ピ「あっはぁ!!冗談やって!!」

そんな会話をしながら、一同が校門をくぐる

垣根「はぁ・・・上条がいないと調子出ないよな」

心理「仕方ないわよ」


8 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 16:00:23.81 ID:GndB6G+n0
垣根「・・・っと、いっけねぇ」

青ピ「?なんや?」

垣根「・・・教科書忘れた・・・」

心理「あら、一緒に帰りましょうか?」

垣根「いいよ・・・俺一人で取ってくる」

帰り道の途中

くるり、と垣根が振り返る

垣根「お前らは先に帰ってろ」

土御門「にゃー、そうするぜぃ」

垣根「・・・はぁ」

垣根だけが、もう一度学校へと向かう


垣根「・・・ん?」

その途中

垣根が、何か違和感を覚える


9 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 16:06:08.44 ID:GndB6G+n0
垣根(・・・なんだ?)

垣根が歩くと、後ろから足音が聞こえる

垣根が止まると、その足音は止まる

垣根(・・・あぁ?)

一定間隔の距離を置いて

しかも、完璧に同じ歩幅で歩いてくる足音

垣根(・・・)

彼は知っている

これが何なのかを

垣根(ちっ・・・尾行か)

くるり、と後ろを振り向く

そこには誰もいない

垣根(ま、これで姿を見せるようじゃクズだけどな)

肩をすくめてから、もう一度歩き出す


10 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 16:13:08.89 ID:GndB6G+n0
垣根(・・・にしても、誰だ?)

ファン、とか友人、というわけではないだろう

こんなに見事な尾行を出来るということは

垣根(慣れてる人間なんだろうな)

垣根が笑う

いまさら、垣根を尾行してどうしようとか言うのか

垣根(・・・あーあ、なんだよこりゃ・・・)

垣根が呆れたように溜め息をついたとき

何か、金属音がした

ヒュン、という風を斬るような音

そう


垣根(・・・銃撃か)


11 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 16:14:04.37 ID:GndB6G+n0
今日はここまで

さて、書き溜めがないからまずいww

バイト終わったらがんばりますよ


では


12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/28(金) 17:40:35.98 ID:TNfgCU6AO
おつ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/28(金) 17:46:58.26 ID:bAM8U4eAO
おまえか
まともなスレタイ付けられると開いちゃって迷惑なのでやめてほしい
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/28(金) 19:28:55.37 ID:934JiC4z0
>>13何様?
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/28(金) 19:41:37.74 ID:30MbSUmAO
>>13
気持ちは分かるがわざわざ書き込むなwwwwww
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/28(金) 21:06:28.22 ID:cdq17Z+AO
まだやってんのかよ……ほんとスレタイは統一してくれ。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 21:40:44.61 ID:8JeCDsSIO
わざわざ書き込むことか?
嫌なら見るな
18 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/28(金) 22:31:53.73 ID:GndB6G+n0
そりゃ若干シリアスというかいつもと違う雰囲気で書くのにいつもと同じスレタイじゃダメでしょうと思ったんですよ

さわりの部分でギャグだと判断されるのも悲しいけども

悲しいけども


どうでもいいけど、テレコとかかっぺって今の人は使わないということを今日知った

明日はとりあえず事件勃発辺りまで・・・かな?

入試も近づき、そろそろ限界が近づいてきた今日この頃w



19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/28(金) 23:25:37.86 ID:30MbSUmAO
>>17
嫌なら見るなってどこのロンブーだよwwwwwwww
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/28(金) 23:32:31.36 ID:934JiC4z0
>>19もうROMってろよ
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 23:54:53.85 ID:2wwTBp3/o
乙なんだよ!
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/29(土) 00:31:01.87 ID:J+JVSNsB0
でもまぁ>>19さんの言い方は悪いですけれども気持ちはわからないでも無いですね……。
この板では見慣れたスレタイでしたし、新参の方は近寄りがたいスレだったってことには間違いないですからね。

かといって何か解決策があるわけでもないので、これはこれでしょうがないとは思いますが。


ってことで、>>1さん乙です。番外個体プリーズです!w
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/10/29(土) 02:55:33.66 ID:LSuXL4qAO
別に擁護するわけじゃないけどすげぇ数続いてるわけだし
似たようなスレタイで番外編ってつければ良かっただけじゃね
とは思うよ

俺だって新しいシリアス物だと思って開いたし
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/29(土) 03:23:52.54 ID:G0fFQKqIO
紛らわしいスレタイにすんなよ…
統一してくれ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/29(土) 07:02:23.64 ID:gqnFoXgn0
またおまえか
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/29(土) 08:14:23.63 ID:30fHvECU0
全くだ 立て直せよ
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/29(土) 08:49:45.56 ID:j69GGvVqo
またおまえかと認知されるほど有名だね(ニッコリ
28 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:44:13.79 ID:2CdfttG20
垣根が未元物質を生み出す

翼で、ただ銃弾を弾くだけ

慣れた行動だった

垣根(あぁ?一発だけか・・・)

スキルアウトなら何発も撃ってくるはずだ

垣根「ったくよ・・・なんなんだよ」

くるり、と垣根が振り返る

もちろん誰もいない

垣根「・・・ただの・・・通り魔的犯行でした、ならいいんだがな」

先程までの尾行は、かなり慣れた人間のものだった

垣根「・・・」


垣根「んなわけないよな」



29 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:44:52.71 ID:2CdfttG20
麦野「・・・それで、私はその時・・・」

ゴーグル「あの・・・いつまでその話続くんすか?」

麦野「まだ半分」

フレンダ「長い訳よ・・・」

滝壺「・・・」

浜面「滝壺は寝てるし・・・」

ショッピングからの帰り道

アイテムのメンバーは、麦野の話を聞かされていた

正確にはアイテムではないのだが

ゴーグル「にしても・・・いつの間にかアイテムの仲間になったみたいで」

絹旗「いいじゃないですか」

浜面「そうだぜ、ゴーグル」

ゴーグル「悪くはないっすけど・・・」


30 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:45:32.63 ID:2CdfttG20
フレンダ「文句ばーっか言う訳よ」

ゴーグル「・・・文句じゃないっすよ」

ゴーグル男が肩をすくめる

フレンダ「とか言ってまた呆れてるし」

ゴーグル「フレンダさんはガキですね」

フレンダ「な、何よ!?」

ゴーグル「ガキっす」

フレンダ「はぁ!?」

麦野「はいはいそこまで・・・全く」

一同がアイテムの家へと向かう

だがその途中

そう、麦野の話に飽きてきた時

突然、一同の顔が険しくなった


31 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:46:12.58 ID:2CdfttG20
絹旗「・・・麦野」

麦野「分かってるわよ」

浜面「・・・なんかつけられてねぇか?」

ゴーグル「しっ・・・自然に振る舞って」

フレンダ「これだから浜面はキモい訳よ」

浜面「キモいって何だ・・・」

ゴーグル「静かに」

ゴーグル男と麦野、そして絹旗が耳を澄ませる

後ろから、足音が聞こえる

麦野「・・・偶然かしらね」

ゴーグル「ただのストーカーかなんかじゃないっすか?」

絹旗「そうですよ・・・」

不安を拭うように三人が苦笑する



32 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:46:47.87 ID:2CdfttG20
だが、そんな考えは銃声によって引き裂かれた

浜面「!」

絹旗「のいて下さい!」

絹旗の頭に銃弾が当たる

いや、実際は能力によって銃弾は弾かれていた

麦野「ちっ・・・ナメやがって!」

麦野が足音のした方向に駆け出す

フレンダ「麦野!」

麦野「・・・誰もいない」

ゴーグル「・・・スキルアウトですかね」

ゴーグル男が地面に落ちた薬莢を見つめる

それがなぜか、今の彼等には不気味にさえ見えてしまう

滝壺「・・・?どうしたの?」



33 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:48:07.29 ID:2CdfttG20
浜面「あ、起きたか」

滝壺「何かあったの?」

浜面「いや・・・なんでもない」

フレンダ「・・・」

絹旗「偶然ですよ、帰りましょう」

ゴーグル「そうっすね」

一同がため息をつきながら家へと向かう

麦野(・・・尾行・・・そして狙撃、か)

絹旗(・・・面倒なことになったかもしれませんね)

ゴーグル(・・・ま、楽観的に行くしかないですね)

フレンダ(偶然よ、偶然)

今の彼等はまだ知らない

闇がゆっくりと、背後に近づいて来ていることに


34 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:48:56.47 ID:2CdfttG20
垣根「・・・ただいま」

心理「あらお帰り・・・遅かったわね」

垣根「・・・ちょっとな」

心理「どうしたの?なんだか疲れてるみたいよ」

垣根「気のせいだろ」

垣根がソファーに腰掛ける

その柔らかさが、疲れた垣根の体には優しく感じられた

垣根「・・・ニュースでも見るか」

心理「あら、こんな時間になんて・・・」

普段ではバラエティー一色にテレビが染まる時間帯

だが、垣根がつけたテレビはそうではなかった

何か、建物が爆破されたような映像が映し出されている



35 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:49:49.88 ID:2CdfttG20

垣根「・・・なんだこりゃ」

心理「あら・・・何?」

心理定規も垣根の隣に座り、ニュースを見る

「今日午後6時頃、第7学区の風紀委員支部が何者かによって爆破されました」

情報を読み上げているのは、まだ新米のキャスターだった

後ろに広がる惨状に肩を震わせている

「負傷者は15名・・・そのうち2名は重傷とのことです」

垣根「・・・風紀委員か」

心理「スキルアウトから恨みでも買ったのかしら」

「なお、爆破直前に怪しい人影を見たという目撃情報が・・・」

垣根「・・・どうせ大抵がデマだろうがな」

心理「・・・」

「また、犯人と思われる人間から犯行メッセージが・・・」



36 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:52:35.90 ID:2CdfttG20
垣根「・・・なんだそりゃ」

心理「学園都市なんかでミステリーごっこでも始めるつもりかしら」

垣根「馬鹿だろそいつ・・・」

心理「あら、でも面白いんじゃない?」

二人がテレビを見直す

「・・・なお、次の爆破予告は明日の午後5時、風紀委員の支部を狙うとの声明です」

垣根「・・・風紀委員狙いか」

垣根がふとさきほどの出来事を思い出す

後ろからの狙撃

そして、今は風紀委員の支部爆破事件

垣根(・・・タイミングがよすぎるといえばそれまでか)

「なお、統括理事会はこの事件を重く見て・・・」

垣根(・・・だが・・・こりゃホントに偶然か?)


37 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 09:55:19.44 ID:2CdfttG20
心理「・・・ひどい事件ね、能力者かしら?」

垣根「・・・ここまでの爆破を能力で行ったら身元が特定されるだろ」

心理「それもそうね」

垣根「・・・野蛮な馬鹿がいたってことで終わりだろ」

心理「・・・なんだか、ちょっとあなた変よ?」

垣根「うるせぇ・・・ちょっと散歩してくる」

心理「ついて行きましょうか?」

垣根「いいって、たまには男の一人散歩だ」

心理「そう」

垣根が手を振って家から出る

空には月が浮かんでいる

それがとても薄気味悪い

垣根(・・・風紀委員支部の爆破・・・)


38 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:02:19.55 ID:2CdfttG20
考えながら歩き出す

垣根(・・・だが、俺を狙った人間はおそらく・・・元暗部の人間だ)

垣根(恨みか、面白半分かは分からないが・・・)

垣根(だが、風紀委員は表の組織だ)

垣根(今回の二つの事件には・・・関連性はなしと考えるのが妥当か)

眉をひそめ、垣根が溜め息を吐く

こんなことを考えるなど、いつ以来だろうか

垣根(・・・あ?)

そしてまた

後ろから、足音が聞こえてくる

垣根(またかよ・・・こりねぇ馬鹿だな)

今度は、歩き続けない

立ち止まり、ゆっくりと振り返る

垣根「誰だよ」


39 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:06:42.53 ID:2CdfttG20
返事はない

垣根「・・・なんか用か」

シンとした静寂だけが立ち込める

垣根「・・・答えてもらわねぇとどうしようもないんだよ」

「垣根帝督だな」

垣根「・・・それで」

「スクールのリーダー、未元物質、超能力者」

どこからか聞こえる声は、淡々と垣根のことを述べていく

「一方通行に敗北したと聞いていたが」

垣根「黙れよ、用件を話せ」

「・・・風紀委員の事件は知っているか」

垣根「派手にテレビでやってるからな」

「そうか」


40 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:13:48.79 ID:2CdfttG20
垣根「それがなんだよ」

「君はあれを見てどう思った?」

垣根「風紀委員も大変だな、で終わりだ」

「私と何か関係があるのでは、と睨まなかったか」

垣根「・・・」

「同じ日に、しかも二つの事件が起きる」

垣根「そうだな、不吉なことだ」

「不思議に思わなかったか」

垣根「お前が風紀委員の支部を爆破したのか?」

「そう思ってもらって構わないかもな」

垣根「だがてめぇは裏の住人だったんだろ?」

「だった?今もそうだよ・・・」


「そして君も、そうではないか?」


41 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:19:01.94 ID:2CdfttG20
垣根「俺は抜け出した」

「無理だね、現に君は私の尾行に気づいた」

垣根「・・・それが」

「君の奥底には所詮、闇の感覚が残っている」

垣根「残ってねぇよ」

「君は今もこうして闇に生きる私と話している」

垣根「話す事なら誰だって出来るだろうが」

「・・・君は何も分かってはいない」

ガチャリ、と金属音がする

垣根「・・・またかよ」

「・・・闇から抜け出すことは無理だぞ?」

初めて、その声の主が笑う

とても下品な笑い方だった

「はははは!!お前みたいな人間はこっち側に戻ってくればいいものを!!」


42 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:24:24.53 ID:2CdfttG20
垣根「ムカつく野郎だな・・・」

「・・・さぁ、さっさと能力を使って俺を潰してろよ」

垣根「・・・」

「お前みたいな人間なら出来るだろう?」

垣根「うるせぇな、とっとと失せろ」

「・・・どうしても俺を殺さないか?」

垣根「当たり前だ、てめぇは殺す価値もないんだよ」

「そりゃ残念」

一瞬、二人の会話が止まる

遠くで聞こえる鳥の鳴き声だけがそれを劈いている

「・・・明日」

垣根「あぁ?」

「明日、風紀委員の支部が再び爆破される」

垣根「・・・それがなんだよ」

43 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:27:23.10 ID:2CdfttG20
「お前は俺を止めなくていいのか?関係のない人間が巻き込まれるぞ」

カチャカチャ、と拳銃を鳴らしているのだろうか

声の主が笑っている

垣根「・・・てめぇが一人なわけねぇだろ」

「おやおや」

垣根「俺みたいな人間に喧嘩を売るなら・・・寄せ集めでも集団を作るはずだ」

「ご明答」

垣根「だったらここでてめぇ一人を止めても意味がない」

「なんだよ、つまんねぇヤツだな」

垣根「失せろ」

垣根がくるりと踵を返す

「あぁ、そうそう」

忘れていたかのように声の主が垣根を呼び止める


44 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:33:14.71 ID:2CdfttG20
「・・・一方通行」

垣根「あ?」

「アイテム、土御門元春、結標淡希」

垣根「・・・それがなんだ」

「今頃、全員俺の仲間が接触していると思うぞ」

垣根「!!」

「暗部の人間がオンパレードだ」

垣根「てめぇ・・・何が目的だ」

「さぁ?そんなこと教えるわけにはいかないな」

垣根「・・・オーケーオーケー、ちょっとムカついてきた」

垣根が未元物質を生み出す

それは、先ほどの防御用とは違う

目の前の標的を潰すためのものだ

垣根「誘いに乗ってやるよ」


45 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:44:51.31 ID:2CdfttG20
「そりゃ嬉しいよ」

声の主は、まだ姿を見せない

垣根「・・・なんだよ、チキン野郎が」

「チキン?お前も言ってただろ、てめぇみたいなクソッタレとイーブンな争いなんて出来るかよ」

垣根「・・・」

翼の一枚で、声のするほうにある電柱を切り裂く

だがそこには誰もいない

「ダメダメ、俺はそんな簡単には見つからないよー!」

垣根(・・・声が後ろからするな)

先ほどまでとは正反対の方向

垣根「なんだよ、音波でも操る能力者か」

「・・・バレたか、さっすが第二位だな」

垣根「クソが、雑魚一匹かよ」


46 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:48:17.65 ID:2CdfttG20
「・・・それで?能力を解析したからなんだよ」

垣根「てめぇこそそれしか出来ないだろ」

「ふん」

パン、と銃声がする

先ほどまでならただ銃弾を叩き落すだけでよかった

だが今回は違う

垣根(・・・この銃声もずらされている可能性があるな)

体を翼で覆う

何かが翼に当たった感触がした

「ちっ・・・」

垣根「・・・なんだよ、銃声がしてから銃弾が届くまでは普通の時間だな」

「何が言いたい」

垣根「音波の方向、高さくらいしか操れないのか?時間を変えることも、音を生み出すことも能力では出来ない」

「・・・」


47 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:51:12.94 ID:2CdfttG20
垣根「だっせーだっせー、せいぜいLEVEL3じゃねぇの?」

「能力だけで勝ったと思うなよ」

垣根「能力のないクズが勝ちだ負けだと語るんじゃねぇ」

垣根がくるりと辺りを見渡す

垣根「・・・さぁ、目的を話せ」

「そうだな、とりあえずアンタたちには・・・暗部にもう一度堕ちてほしいんだよ」

垣根「あぁ?」

「もちろんスクールだけじゃない、アイテムも、グループもだ」

垣根「それが・・・暗部の再構成が目的か」

「そう思ってくれてもいいぜ」

垣根「・・・くだらねぇな、三下のやることだ」

「少なくとも表に生きてるつもりでひよったお前には言われたくないな」

垣根「・・・殺すぞボケ」


48 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:53:17.78 ID:2CdfttG20
「・・・まぁいいさ、いずれはお前達もそうせざるを得なくなる」

垣根「・・・どういうことだ」

「そうだな、明日・・・風紀委員の支部を爆破する、それは確実だ」

垣根「・・・」

「だがどこの、とは言えないな」

垣根「裏の住人が表を巻き込むなんて馬鹿じゃねぇのか」

「・・・それでいいんだよ」

垣根「・・・」

「じゃあな、垣根帝督・・・また会うことになるはずだ」

垣根「そんときがてめぇの命日だ」

「そりゃ期待しておく」

声が消える

残されたのは、ただ気味の悪い静寂だ


49 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 10:59:00.83 ID:2CdfttG20
垣根(・・・グループ、アイテム・・・)

垣根(そして・・・スクールの再結成を望んでいる、か)

垣根(どこの馬鹿だ?暗部にでも憧れたガキなのか、それとも・・・)

垣根「っといけねぇ、散歩って言ってたんだな」

垣根が自宅へと向かって歩き出す

だが、その間もずっとそのことを考えてしまう

街灯に照らされ、地面に映った影

その影がとても恐ろしい化け物のようにさえ感じられる

垣根(・・・心理定規も、どうせ巻き込んでしまう)

垣根(だったら暗部の再構成なんてしてたまるかよ)

垣根(それに・・・)


垣根(それに、今の生活は捨てられない)


50 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:05:01.55 ID:2CdfttG20

一方「あァ?なンで俺が買い物なンか・・・」

黄泉川「いいから行くじゃんよ」

一方「ちっ・・・」

番外「ミサカもついて行こうか?」

一方「いらねェよ・・・」

黄泉川「まぁまぁ、最近は何かと物騒だから二人で行くじゃんよ」

一方「・・・物騒だと?」

黄泉川「ニュース見てないのか?風紀委員の支部がまるまる爆破されたじゃんか」

番外「うっわー、それ大丈夫だったの?」

黄泉川「死者は出なかったけど・・・そこの支部のほとんどが壊れて、統括理事会はかんかん・・・」

一方「・・・そォかよ」

一方通行が自宅から一歩外に出る

暗闇だけが広がっていた

一方(・・・表も表でめンどくせェンだな)

番外「じゃ、行ってくるね」


51 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:08:57.63 ID:2CdfttG20

一方「・・・ったくよォ・・・なンで俺がふりかけとか野菜とか・・・」

番外「いいじゃん、もう慣れたでしょ?」

一方「慣れたくねェンだよ・・・」

番外「慣れないとダメだって」

一方「・・・クソ」

夜道を並んで歩く二人

だが、一方通行が突然歩を止める

番外「ん?どしたの」

一方「・・・誰だ」

番外「?ミサカ・・・」

一方「なンだよ、隠れてストーキングか?」

「・・・あなたが一方通行ね?」

一方「・・・てめェ、さっきからつけてただろォが」

「あら、バレちゃった?」

声の主が姿を現す


52 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:11:47.00 ID:2CdfttG20
ポニーテールの黒髪

少し身長の高い女性だ

だが、その目には見覚えがあった

一方「暗部の人間だな」

「どうして分かったの?」

一方「目を見れば分かるンだよ」

「・・・そう、やっぱりあなたは真っ黒ね」

一方「うるせェな」

番外「ねぇねぇ、何の人?」

一方「・・・俺達に用か」

「えぇ、暗部の人間が尾行・・・分からないかしら?」


53 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:16:27.38 ID:2CdfttG20
一方「・・・てめェ、何の用だ」

「そうね・・・単刀直入に言うわ、グループを再結成してほしいのよ」

一方「・・・あァ?」

「暗部をあなたが解散させたせいで・・・私達の目的はおじゃんになったのよ」

一方「はっ、ただの新参のくせによォ」

「あら、どうして分かるの?」

一方「なンとなくだ、勘ってヤツだよ」

「そう・・・それで?聞いてくれるかしら」

一方「却下だ」

「・・・そう」

番外「なになに?あなたも暗部の人なの?」

「あら、そちらの子は?」

一方「関係ねェだろ」

一方通行がチョーカーのスイッチを入れる

「・・・そう、戦うのね」


54 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:21:24.35 ID:2CdfttG20
一方「当たり前だ、てめェみたいな野郎は久しぶりだぜ」

「そう、なら楽しませてあげる」

女がニヤリと笑う

一方「・・・」

「・・・あなたに能力だけで勝てるとは思っていないわ」

一方「当たり前だろォが」

「だったら、これでどう?」

女の手には銃が握られている

その照準は、番外個体に向けられていた

「どうする?人質ってことだけど」

一方「・・・くっだらねェ、無関係の人間を狙うなンて三下のやることだ」

一方通行が脚を踏みつける

彼を中心にして、アスファルトに亀裂が走った

「!!」


55 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:24:59.02 ID:2CdfttG20
一方「ほらほらどォした!?」

「くっ・・・」

女が引き金を引く

だが、そこから飛び出した銃弾は番外個体には当たらなかった

「!?」

番外「ミサカだってLEVEL4程度の電撃使いだよ、ナメられちゃってるね」

一方「雑魚が、天国への片道切符でもプレゼントしてやろォか?あァ!?」

「ふざけないでよ・・・話が違うわよ!!」

女が能力を使ったのだろうか

水の塊が一方通行目掛けて打ち出される

だが、それは彼に当たることなく、むしろ女に向かって跳ね返った

「きゃぁっ!!」

一方「・・・なンだよ、最近の暗部ってのは雑魚ばっかりかよつまンねェ」


56 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:30:10.32 ID:2CdfttG20
「な、なんなのよ・・・」

一方「あァ?俺が能力無くしたままだと思ってたか?それともこいつが電撃使いとは思ってなかったか?」

「こ、来ないで・・・」

一方「どっちにしろ、てめェが三下なのには変わりねェ」

一方通行が女に近づいていく

「や、やめて!!」

一方「暗部にいる人間なら死ぬ覚悟は出来てンだろォ?」

「あなたじゃ私を殺せないわ!!まともな世界を夢見てる・・・」

一方「ンなのはてめェの意見だ」

女の顔を鷲掴みにしながら一方通行が笑う

一方「このままてめェの皮膚を爆発させることも出来る、頭を骨ごと握りつぶすことも出来る」

「ひっ・・・」

一方「誰だ、こンなことを考える馬鹿は」

「わ、私達は組織よ!!目的の一つに、過去の暗部を再結成させることが・・・」

一方「はァ?それだけが目的じゃねェのかよ」

「そ、それだけのために私が命を張ったりするわけないじゃない!!」


57 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:32:35.53 ID:2CdfttG20
一方「・・・詳しく話せ」

「・・・わ、私達の目的は・・・」

番外「・・・一方通行」

一方「あァ?」

番外「ここで話を聞くのはまずいんじゃない?」

一方「・・・」

一方通行が周りを見回す

たしかに、この状況では通報される可能性もある

そうなれば、一方通行は悪人だ

一方「ちっ・・・」

番外「どっか人影のないところで話そうよ」

一方「それがいいな」

「は、放して・・・」

一方「あァ?」

一方通行が少しだけ手に力を込める

骨の軋む音と、女の叫び声がこだました

一方「ごちゃごちゃぬかすな」


一方「話せ、てめェの知ってることを全部だ」


58 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 11:33:30.97 ID:2CdfttG20
一旦休憩

でもシリアスは苦手だから、前スレ以上にまとまらないかも

魔術はオカルト好きならどうにでもなりますけど、科学はね・・・

熱いキャラも削板だけですし

いやぁ、困った


59 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:06:08.95 ID:2CdfttG20

黒子「・・・困りましたの」

黒子がぽつりと呟いた

彼女がいるのは、第7学区

その、風紀委員の支部前だ

支部、といっても今は大半が倒壊している

黒子(・・・犯行声明があったために避難は出来ましたの・・・)

黒子(ですが、もしも声明が無ければ・・・)

大きな建物がほぼ全壊

それほどの規模の爆発なら、人間などひとたまりも無い

黒子(・・・犯人は何を考えてますの?)

スキルアウト、という説もあるだろう

実際、これは能力ではなくただの爆発物によって引き起こされた事件だ

ならばスキルアウトなら誰でも可能、ということになる


60 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:11:13.16 ID:2CdfttG20
黒子(いえ、スキルアウトと決め付けるのは早いですの・・・)

風紀委員に不満を持っているのは、何もスキルアウトだけではない

規律に厳しい、ということは逆に言えば「頑固で真面目すぎる」ということなのだ

普通に楽しみたい学生にとっては案外鬱陶しい存在であったりする

黒子(・・・悲しいことですわね)

自分の信じた正義がもしもそう思われているなら

初春「白井さん、現場検証もある程度終わったみたいです」

黒子「そうですか・・・どうでしたの?」

初春「・・・ひどいですね、相当大型の爆弾を使ったと思われます」

黒子「・・・風紀委員を狙っていたのでしょうか」

初春「さぁ・・・ただ、相当な憎悪があったのかもしれませんね」

黒子「当たり前ですの・・・これをただの愉快犯だとしたら・・・」

それは、恐ろしいほど狂った人間だろう

周りの建物にさえ被害は及ぶかもしれないのだ

初春「・・・次は明日ですよ」

黒子「風紀委員の支部のセキュリティを強化しますの」


61 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:14:31.75 ID:2CdfttG20
初春「・・・それだけでいいのでしょうか」

黒子「どういう意味ですの?」

初春「・・・ここだって、そんなにセキュリティが甘かったわけじゃないですよ」

黒子「・・・たしかに、どうやって・・・」

初春「能力で爆弾を設置した・・・とかでしょうか」

黒子「空間移動なら出来ないこともありませんの」

初春「でも、空間移動なんてそんなに使える人は・・・」

黒子「えぇ、身元が特定される危険性が高いんですの」

初春「・・・もしくは、郵便物として・・・」

黒子「郵便物などでこんなものを運ぶとは思えませんの」

黒子が爆発物の写真を見つめる

相当重そうなものだ

そんなものがいきなり届けられたら不審に思うはずだろう

黒子「・・・爆発物は建物の中心にありましたの」

初春「?はい・・・そうですけど」


62 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:18:15.84 ID:2CdfttG20
黒子「でしたら・・・風紀委員の中に入るのは楽ですの」

初春「・・・!!何かを紛失した、とかスキルアウトに絡まれた、とか・・・」

黒子「風紀委員に保護されるように嘘をつけば誰だって爆発物を置く隙はありますの」

初春「それも・・・たしかに考えられますね」

黒子「そうなると、これだけで身元の特定は・・・」

初春「・・・犯行声明は音声メッセージだったんですよね」

黒子「声紋はとりましたが・・・何やら能力で音を変えているようでしたの」

初春「そうですか・・・」

黒子「・・・この事件、一人での犯行とは思えませんわね」

初春「はい、何人かの組織が計画していると・・・」

黒子「・・・そうなると、私達だけでは危険ですのね」

初春「警備員への要請はもう?」

黒子「もちろん、そんなことくらいはしていますの」

初春「・・・あとは、次の被害がどこになるかですね」


63 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:21:20.79 ID:2CdfttG20
黒子「出来れば・・・被害など出ないでほしいんですの」

初春「そうなればいいですが・・・」


削板「黒子!!」

黒子「?あら軍覇さん」

削板「よかった・・・風紀委員が襲撃されたって聞いて・・・」

初春「私達の支部ではなかったんですから、大丈夫ですよ」

削板「そうか・・・それにしても、相当な規模の事件みたいだな」

黒子「えぇ、これは風紀委員を狙った計画的犯行ですの」

削板「・・・」

削板が風紀委員の支部だった建物を見つめる

壁は焼け焦げ、鉄骨が剥き出しになっている

昨日までは、ただの風紀委員の支部だったはずの場所

そこが今では、惨劇の舞台になっている


64 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:24:50.11 ID:2CdfttG20
削板「・・・手がかりは?」

黒子「ありませんの・・・ただ」

削板「ただ?」

黒子「・・・一つだけ、不審な点がありますの」

初春「?」

黒子「・・・この爆発物を手に入れるルートなんて、そうそうはありませんの」

削板「そうだな・・・裏ルートか?」

黒子「・・・そんなルート、ただの学生は利用どころか存在すら知っていないと思いますの」

初春「そうですけど・・・ですから、スキルアウトが・・・」

黒子「スキルアウトがこんなことをする理由がありませんの」

削板「恨みならかってるんじゃないのか?」

黒子「・・・スキルアウトなら、もっと直接的に・・・占拠なりなんなりすると思いません?」

初春「そうですか?見せしめならこっちのほうが有効なんじゃ・・・」


65 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:28:26.57 ID:2CdfttG20
黒子「・・・そうですのね、気のせいかもしれませんわ」

削板「とりあえず、風紀委員の支部のセキュリティを・・・」

黒子「それはもう大丈夫ですの」

削板「そうか」

初春「じゃあ私達は監視カメラの映像なんかを検証してみますか」

黒子「不審な人物なら映っていませんでしたの」

初春「違いますよ、風紀委員のメンバー以外の人を全員チェックしてみます」

黒子「・・・な、中々に荒療治ですのね」

初春「疑わしきは捕らえよ、です!!」

削板「・・・今はそれしかないかもな」

黒子「・・・そうですわね」

黒子がもう一度現場の写真を見つめる

黒子(・・・それにしても、こんなもの・・・相当の手慣れの犯行としか思えませんの・・・)

黒子(これは本当に・・・スキルアウトですの・・・?)



66 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:31:00.43 ID:2CdfttG20

一方「・・・それがお前らの目的か」

「そ、そうよ・・・もういいでしょ!?解放してよ!!」

一方「・・・」

一方通行と番外個体は、あの事件を起こした組織の女を尋問していた

「ほら・・・は、早く!!」

番外「ねぇねぇ、勘違いしてない?」

「な、何が・・・」

一方「誰も話せば解放するとは言ってねェよ」

「!!こ、殺すつもり!?」

番外「そうだとしたらどうするの?」

「や、やめて!!お願いよ、こんなのいや!!!」

一方「俺達をわざわざ巻き込ンで死にそうになった途端にそれかよ」

「だ、だって・・・」

一方「うるせェ・・・」

裏路地の、暗い物陰

「こ、こんなところで・・・」


67 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:34:07.85 ID:2CdfttG20
一方「・・・あばよクソッタレ」

一方通行が女の頭を素手で掴む

「や、やめ・・・」

一方「ここがてめェの墓場だ」

衝撃が、女の体に走った

すぐさま彼女の意識は無くなった


一方「・・・」

番外「優しいね、気絶させるだけで済ませるなんてさ」

一方「・・・こいつを風紀委員に差し出すか」

番外「それでもいいけどさ、そんなことしたらそれこそ風紀委員は危なくなるよ?」

一方「あァ?」

番外「こいつの仲間が口封じに殺しに来るかもしれないじゃん」

一方「・・・それもそォだけどよ」

番外「ミサカたちは情報を聞けたんだよ?だったらここに放置でいいじゃんか」


68 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:36:45.66 ID:2CdfttG20
一方「・・・ちっ、しょうがねェな」

一方通行がチョーカーのスイッチを切る

今の彼には「ベクトル変換」の能力は無い

番外「ちょっと、まだ敵がいるかもしれないよ?」

一方「だったらてめェのレーダーに引っかかってるだろォが」

番外「ありゃ、バレた?」

一方「帰るぞ・・・こいつは俺達の問題だ、表を巻き込まないよォに解決してやる」

番外「垣根たちには?」

一方「教えねェ、その必要もねェ」

女の顔を睨みながら一方通行が溜め息をつく

一方「・・・こンな馬鹿がまだいたなンてな」

番外「学園都市がある限り、それは続くよ」

一方「知ったことかよ」


69 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:40:33.45 ID:2CdfttG20
番外「・・・で?どうするの?」

一方「・・・明日まで待つ」

番外「風紀委員が襲撃されるのを黙って見てるの?」

一方「事件を起こすにはなンらかのアクションを起こすはずだ」

番外「そこを逆に追い詰めるってわけ?」

一方「そォいうことだ」

番外「でもさ、どこの支部で事件が起きるか分からないよ?」

一方「・・・どっちにしろ、手がかりの一つでも出るはずだ」

番外「ねぇ、やっぱり・・・」

一方「・・・いいか、俺達はもォ暗部から抜け出した」

一方「もしもう一度俺達を暗部に巻き込もうなンて考えてるヤツがいるなら、俺はそいつをぶちのめす」

番外「・・・うん、分かってる」

一方「垣根も、土御門も、他の誰も巻き込まねェ」

一方通行がゆっくりと歩き出す


一方「・・・じゃねェと、こいつの思い通りになる」


70 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:42:47.86 ID:2CdfttG20

「・・・ごほっ・・・」

一方通行が立ち去って15分

女は、意識を取り戻していた

「ふ・・・ふふ、やっぱりあなた達は甘くなったわ・・・暗部の人間だったくせに」

彼女は、一方通行が暗部にいた頃を知らない

彼女の仲間のほとんどがそうなのだ

暗部が解散されたあと、ある目的を持って集まった者達

「そうよ・・・それが私達、エグゼクターよ・・・」

ゆっくりと体を起こそうとする

だが、まだ体には力が入らない

生体電気でも操られたのだろうか

「・・・ずいぶんと・・・面倒なことを・・・」


「あぁ、全くだよ」

「!」


71 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:44:48.02 ID:2CdfttG20
後ろから、男の声がする

「あ、あら・・・いたの」

「俺は垣根帝督と接触した・・・まだダメだったが、おそらくあいつもこの誘いに乗るはずだ」

「そう、よかった」

「そっちは」

「一方通行は誘いに乗るんじゃないかしら・・・甘くなっていたけど」

「そうかよ」

「それより、手を貸して・・・まだ体が痺れてるの」

「・・・」

女の伸ばした手を、男は黙って見つめる

「何よ、どうしたの?」

「・・・お前、情報を話したな」

「!!そ、それは・・・そうよ、一方通行を暗部に引き込むために・・・」

「ならばなぜ真実を話した、嘘八百でも並べればいいものを」


72 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:47:36.74 ID:2CdfttG20
「そ、それは・・・」

「自分の保身の為か?一方通行の迫力に圧されたか?」

「そ、そんなこと・・・」

「言い訳はいらないんだよ」

男が銃を取り出す

「う、嘘よね・・・?私達仲間じゃない・・・」

「仲間?ただの同僚なだけさ」

「やめて・・・そ、そうよ!!私はまだ戦え・・・」

女の腕に風穴が開いた

「あぁぁ!!」

「・・・まだ戦える。無理だな、お前じゃ一方通行に傷一つつけられない」

「や、やめ・・・」

「黙っていろ」

男が銃の照準を、女の頭に定める

「お、お願い・・・私は・・・」


73 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 13:50:18.78 ID:2CdfttG20
「もういいだろう、そんなに惨めに生きて何になる」

男が眉をひそめる

目の前にいるのは、生にしがみつくだけの獣だ

「・・・死を覚悟していない人間が暗部に堕ちたつもりだったか?」

「いや・・・」

「お前はもう用済みだ、口を割った時点でな」

パン、と音がした

女が最後に思い出したのは、一方通行の言葉

「ここがてめェの墓場だ」

(・・・案外、間違っては・・・)

ガクン、と女の頭が後ろにのけぞった

もう、息は無い

「・・・全く、これで一方通行は俺達の計画を阻止しに掛かるだろうな・・・」

地面に落ちた薬莢を足先で転がしながら、男が笑う


「ならまぁ、それを利用するのもいいだろうけどな」


74 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:05:59.69 ID:2CdfttG20

垣根「・・・一方通行の野郎・・・携帯の電源切ってんのか?」

垣根は、一方通行に電話を掛けていた

自宅の寝室

すでに心理定規は眠っている

眠ってからでなければ、彼女に聞かれてしまう

垣根「・・・くそ」

もう一度、電話を掛けなおす

それでも帰ってくるのは無機質なコール音だけだ

垣根(・・・あいつ・・・まさか)

携帯を閉じ、垣根が考える

自分に接触してきた男はなんと言っていたか

垣根(・・・一方通行にも接触したと考えたほうがいいな)

そう、一方通行はグループという組織に所属していた

しかも暗部を解体した本人なのだ


75 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:08:28.19 ID:2CdfttG20
垣根(・・・くそ)

布団のなかに入りながらも、彼はずっと考えていた

垣根(・・・このまま黙って普通の日常を過ごすか?それとも・・・)

垣根(・・・心理定規・・・お前には話すべきかもしれないな)

目を閉じると、過去の自分が思い浮かぶ

人殺しをした自分

一方通行と戦った自分

誰にも愛されていなかった自分

垣根(・・・あんな生活に戻って堪るか)

心の中で毒を吐く

だが、同時にそれは不安へと繋がった

垣根(もしも・・・もしも、もう一度あの生活へ戻ったら)

自分は戻ってこられるだろうか

垣根(・・・ダメだ)

考え続けると、不安に飲まれてしまう

無理矢理、眠りに着く


だが、翌朝目は覚ましてもその夢は覚めなかった



76 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:10:54.36 ID:2CdfttG20

麦野「・・・風紀委員の支部が爆破されたんだってさ」

フレンダ「ふーん」

アイテムの隠れ家

今は隠れる理由もなくなったのだが、そこでアイテムのメンバーは話していた

絹旗「超おかしいですよね」

浜面「スキルアウトにしては、ずいぶんと手の込んだことをするな」

滝壺「?そうなの?」

浜面「俺だったら・・・きっと、占拠するか通り魔的に次々刺していく、みたいにすると思うけど」

フレンダ「野蛮な訳よ」

ゴーグル「・・・昨日の銃撃はなんだったんでしょうか」

麦野「・・・」

ゴーグル男の言葉に一同が口をつぐむ

麦野「・・・あ?垣根から電話か」

麦野の携帯が突然光りだした


77 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:12:58.26 ID:2CdfttG20
麦野「・・・このタイミングで電話、ね」

絹旗「・・・偶然ですよ」

ゴーグル「・・・そうっすよ」

麦野「・・・」

麦野が通話ボタンを押す

きっと、全く関係ない話をしてくれると思いながら

あの垣根なら


垣根『!!麦野、無事か!?』

だがそんな思いは伝わらなかった

麦野「・・・何が」

垣根『あ、あぁ・・・悪い』

麦野「何かあったの」

垣根『・・・俺さ、昨日の夜に銃撃されたんだよ』

麦野「・・・私達もよ」

垣根『・・・なに?』

麦野「私達も狙撃された・・・そして、アンタも」



78 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:15:18.88 ID:2CdfttG20
垣根『・・・本当か』

麦野「・・・誰もいなかったけどね・・・」

垣根『・・・俺のほうは、狙撃手と話した』

麦野「!!」

垣根『なんでも、暗部の人間にもう一度集まって欲しいんだと』

麦野「暗部の再結成・・・?そんなことを」

垣根『ちなみに、風紀委員の爆破事件もそいつらの仕業だってさ』

麦野「・・・本当に?」

垣根『こんな嘘はつかねぇ主義だ』

麦野「・・・待って・・・そうなると、ヤツらの目的は」

垣根『・・・暗部の再結成、それだけじゃないかもしれないが・・・』

麦野「そうよ、風紀委員を襲撃した意味が分からない」

垣根『・・・とにかく、俺はあいつらの誘いに乗ろうと思う』

麦野「!」

垣根『俺の生活は俺が守る・・・お前らはどうする?』


79 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:17:48.77 ID:2CdfttG20
麦野「ふん・・・わざわざ相手の誘いに乗るつもり?」

垣根『あぁ、乗ってやるよ』

麦野「プライドはないの?」

垣根『幸せな生活を守るためだ、だったらプライドなんて喜んで捨ててやる』

麦野「・・・」

垣根『どうだ?俺は元スクールとして今回の事件を解決する』

麦野「心理定規には話したの?」

垣根『まだだ・・・でも、あいつにだって話すつもりだ』

麦野「・・・そう」

垣根『・・・お前はどうする?平和な日常を捨てることになるかもしれない』

麦野「・・・敵の挑発にも、誘いにも乗りたくないわ」

麦野が笑う


麦野「でも、アンタの提案になら乗ってやるわよ」


80 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:20:37.66 ID:2CdfttG20
垣根『・・・あくまで俺はスクールとして動くんだ、アイテムと共同戦線は張れない』

麦野「あとで泣きつかないようにね」

垣根『・・・麦野』

麦野「何よ」

垣根『・・・まだ相手の目的は分かっていない、もしかしたらただの遊び半分なヤツらかもしれない』

麦野「・・・全く、いきなりすぎてついていけないわよ」

垣根『だがな、俺はやるぞ』

麦野「私だってやるわよ」

垣根『・・・絶対に、俺はこの日常を守ってみせる』

麦野「私は友達を守ってみせる」

垣根『じゃあな・・・情報は伝えた』

麦野「ありがとう」

垣根『・・・死ぬな』

麦野「分かってるわよ」

そこで通話が終わる

気まずい沈黙が部屋に流れる


81 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 14:22:48.09 ID:2CdfttG20
麦野「・・・聞いた?」

絹旗「よく分かりませんよ」

麦野「暗部を再結成しようとしてる馬鹿がいる」

フレンダ「・・・へぇ、結局そういう輩は残ってた訳よ」

滝壺「私達は対抗する」

絹旗「当然ですよ」

浜面「・・・で?手がかりは」

麦野「今はないわ、だから今日の風紀委員襲撃が引き金になるかも」

浜面「風紀委員襲撃?あれもそいつらの仕業なのか」

麦野「・・・犯行声明を出している以上、起きるはず」


麦野「しっぽを掴むわよ」


ゴーグル(・・・)

ゴーグル(暗部・・・っすか)



82 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:10:05.64 ID:2CdfttG20
一方「・・・」

一方通行は携帯電話を握っていた

番外「・・・どしたの?」

一方「なンでもねェ」

携帯電話を握りながら一方通行が答える

番外「さっきからずっとそうだよ」

一方「・・・垣根から電話が掛かってきてたンだよ」

番外「・・・」

一方「・・・まさかなと思ってよォ」

番外「・・・掛け直したら?」

一方「・・・そォだな」

垣根の携帯に電話を掛ける

恐らくだが、話の内容は分かっていた

一方(・・・暗部の再結成を望ンでたってことは・・・あいつらにも接触してたはずだ)


83 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:12:45.97 ID:2CdfttG20
コールが何回鳴っただろうか

じれったく思って切ろうかと思ったときに、通話が始まった

垣根『よぉ、どうした』

一方「それはこっちの台詞だ・・・てめェ、昨日の夜に電話掛けてきてただろォが」

垣根『あぁ、あれは・・・』

一方「てめェも接触したのか」

垣根『・・・お前もか』

一方「・・・暗部の再結成、そして表との干渉・・・あンなヤツらがまだいたとは・・・」

垣根『・・・待てよ、表との干渉?』

一方「ンだよ、知らなかったのか」

一方通行が呆れたように笑う

こんな情報、垣根ならとっくに掴んでいると思っていたのだ

垣根『・・・どういうことだ』

一方「あいつらの目的は、表の世界と裏の世界を交差させることなンだとよ」

垣根『・・・本当か?』


84 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:14:49.87 ID:2CdfttG20
一方「本人から聞いたンだよ、間違いねェ」

垣根『本人?簡単に口割ったのか』

一方「尋問だよ、裏路地に連れて行ったらすぐに吐きやがった」

垣根『・・・裏路地?』

一方「あァ?どォしたんだよ」

垣根『・・・もしかしてそいつ、黒髪のポニーテールだったか』

一方「よく分かったな」

垣根『・・・お前ニュース見てないのか』

一方「はァ?」

垣根『そいつ、殺されてたんだとよ』

一方「・・・」

眉をひそめる一方通行

彼は殺してなどいない

加減を間違えたとも思えない

一方「死因は」

垣根『銃殺だとよ』


85 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:17:35.74 ID:2CdfttG20
一方「銃殺・・・仲間にでも口封じされたか」

垣根『その可能性が高いな』

一方「・・・ニュースじゃ大騒ぎだろォな」

垣根『あぁ、風紀委員の事件と今回の関連性を調べる、みたいな話になってるけどな』

一方「あいつらの元まで表の世界が近づくのも・・・」

そこまで言って、一方通行が気づいた

一方「・・・なンでそいつらは死体を処理しなかった」

垣根『表の世界の、警備員に発見してほしかったから』

一方「・・・野郎・・・」

垣根『あくまで俺達のは計画の一つに過ぎないのかもな』

一方「俺達が裏の住人に戻ってしまうのもよし・・・」

垣根『今回の事件の捜査で、表と裏が交差するのもよし』

一方「クソッタレ・・・そォいうことかよ」

垣根『黄泉川はどうした』

一方「行ったよ、風紀委員の護衛にな」


86 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:20:19.89 ID:2CdfttG20
垣根『・・・そうか、お前はどうする』

一方「・・・ンなこと決まってンだろ、ぶち殺す」

垣根『オーケー、俺も同じ考えだ』

一方「てめェとは組まないからな」

垣根『俺だって今回の件は自分でなんとかするさ』

一方「・・・スクールか」

垣根『・・・あそこには戻りたくないんだけどな』

一方「仕方ねェだろ」

垣根『・・・おそらく、他の暗部にいた人間たちも接触しているはずだ』

一方「・・・分かってる」

垣根『いいか?俺達のするべきことはただ一つ』

一方「表の人間がヤツらにたどり着く前に、俺達がヤツらを殺す」

垣根『殺す必要は無い・・・ある程度いたぶったら風紀委員や警備員に渡せ』

一方「表と裏が交差するぞ」

垣根『・・・裏ごといたぶってやればいいんだよ』

一方「・・・」


87 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:29:05.62 ID:2CdfttG20
垣根『俺はやる』

一方「あァそォかよ・・・だったら俺もやってやる」

垣根『・・・なぁ一方通行』

一方「なンだよ」

垣根『・・・死なないようにな』

一方「お前もな」

通話が切れる

こんな淡々とした会話をしたのは久しぶりだった

一方「・・・番外個体」

番外「ミサカは行くよ」

一方「・・・」

番外「アナタが行くならミサカも行かなきゃ」

一方「・・・あァ」

一方通行がもう一度携帯を開く

ある電話番号を見つめる

「土御門元春」

一方「仕方ねェな・・・」


一方「・・・最後だ、これで終わらせてやる」


88 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 18:30:12.11 ID:2CdfttG20
一旦休憩

たしかにスレタイは釣りっぽいですね

自分でも思ってきた

でもまぁ変えられないので許してください

というか、能力をいろいろ考えないといけない

敵役で

どうしよう

科学とかわからんちん


89 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:08:18.53 ID:2CdfttG20

垣根「・・・心理定規」

心理「・・・聞いてたわよ」

ソファーの上で、心理定規はネイルを塗っていた

垣根「・・・いいのか?」

心理「そうね・・・出来れば断りたいわよ」

クスクス、と心理定規が笑う

その目はとても辛そうだった

心理「でもね・・・あの世界にいたんだから、いつかはこうなるかもと思ってたの」

垣根「・・・あぁ」

心理「・・・だとしたら、私はもう一度この世界に帰って来ればいいだけよ」

垣根「その通りだな」

心理「・・・風紀委員の支部爆破予告は・・・」

垣根「午後の五時辺りだ」

心理「・・・そう」

垣根「その爆破音が・・・俺達のゴングだ」



90 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:10:54.59 ID:2CdfttG20
心理「・・・準備は?」

垣根「・・・出来てるさ」

心理「怖いんじゃないの?」

垣根「怖いね、でもいつかはこれと決着をつけなきゃならなかった」

心理「・・・その犯人達は、過去の亡霊ね」

垣根「そうだ」

学校の制服が、壁にかけられている

垣根「・・・もう一度、あれを着れるといいな」

心理「大丈夫よ」

垣根「・・・ニュースをつけろ、最新の情報が欲しい」

心理「えぇ」

心理定規がチャンネルを回す

ニュースは、風紀委員の爆破予告と、裏路地の謎の変死体で持ちきりだ

キャスターがどこか怯えたような顔をしている


91 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:14:18.91 ID:2CdfttG20
垣根「・・・これしきで怯えるなんて、まともな人生だったんだろうな」

心理「あら、これで怯えるのが普通よ?」

垣根「分かってる」

心理「・・・」

垣根「静かに、ニュースの続報だ」


「なお、風紀委員と警備員が厳重な警戒を張っており・・・」


垣根「・・・なるほど、表の住人の中でもとくに目立ちやすい二つだな」

心理「ニュースになれば・・・誰もが犯人に少なからず興味を持つわね」

垣根「考えたもんだな・・・」

心理「・・・もはや手段は選ばないのね」

垣根「焦ってるのか、それともそうする理由があるのか」

心理「どちらにしても、私達の敵であることには変わらないわ」

垣根「あぁ」


92 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:17:10.72 ID:2CdfttG20

一方「・・・ニュースをつけろ」

番外「分かってる」

芳川「・・・大変な事件ね」

打ち止め「ホント、怖いよね・・・ってミサカはミサカは感想を述べてみたり・・・」

一方「・・・あァ」


土御門「・・・あぁ、そうそう・・・悪いな吹寄」

土御門「体調不良でしばらく休むかも・・・」

土御門「にゃー、ちょっと風邪引いただけだから大丈夫だ」

土御門「あぁ、じゃあな」


土御門「・・・ずいぶんナメた真似をしてくれたな・・・こっちはイギリスの事件の応援に行こうと思ってたのに」

土御門「・・・一方通行・・・結標・・・エツァリの野郎はいないみたいだな」

土御門「・・・それでよかったのかもな」



93 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:20:36.65 ID:2CdfttG20

結標「・・・悪いわね小萌」

結標「しばらく留守にするわ」

結標「・・・必ず戻ってきてみせる」

結標「・・・帰ったら、また料理を教えて頂戴ね」


フレンダ「・・・そろそろ爆破予告の時間な訳よ」

麦野「・・・かなり厳重に警戒してるみたいね」

絹旗「・・・空間移動系の能力者ならものともしないですけどね」

浜面「・・・それに、野次馬もかなりいるみたいだな」

滝壺「規制してもやっぱり難しいんだね」

麦野「そうね・・・どさくさにまぎれて爆発物を仕掛けたかもしれないわ」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「?どうかしたの?」

ゴーグル「なんでもないっす」



94 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:26:17.11 ID:2CdfttG20

黒子「・・・わたくし達の支部だったとしたら・・・面倒ですの」

初春「そうですね・・・ある程度のデータはコピーを取ってますけど」

削板「・・・あと2分だ」

黒子「・・・初春、下がっていてくださいな」

初春「・・・私も警護をします」

黒子「いまさらどうしようもありませんの・・・」

削板「建物の中に入って爆発物を捜索するか?ヘタしたら死ぬぞ」

初春「でも・・・」

黒子「今は辛抱するしかできませんの・・・」

初春「・・・はい」

削板「犯人を見つけたらぶん殴ってやる」

黒子「わたくしも少し協力しますの」

削板「・・・下がろう」


95 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:31:43.77 ID:2CdfttG20
誰もが、息を呑んでいた

爆破予告の時間まで、あと30秒

その瞬間は、刻一刻と近づいている

黒子(・・・?あれはなんですの?)

黒子が目の前の建物の入り口付近に、不審なものが置かれていることに気づく

それは小さなキャリーケースのようなものだった

警備員のものと全く同じデザインだ

だが、周りの警備員のものよりも一回りだけ小さい

普段なら、全く警戒などしないだろう

だが

黒子「・・・!!まさか!!」

5時になった

その瞬間、キャリーケースが異常なほどに膨れ上がった

いや、あれは金属が溶けているのだ


黒子「初春!!軍覇さん!!伏せてくださいな!!!」

初春「!」


96 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:39:14.09 ID:2CdfttG20
信じられないほどの爆発音

一瞬にして、聴覚を奪われる

すさまじい爆風に、何人かの野次馬が吹き飛ばされていく

だが、それを気にしていることはできない

建物の破片が、無数に吹き飛んでいく

そのうちのいくつかは、黒子や初春を目掛けて飛んできている

黒子「!!初春、わたくしに捕まって・・・」

初春「ど、どこですか白井さん!!!」

目を閉じているため、二人は距離感が掴めない

何よりも、聴覚が奪われているのだ

削板「くそっ!!!」

削板が、二人を庇うようにして前に駆け出す


97 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 20:49:31.77 ID:2CdfttG20
黒子「・・・?」

黒子の体には、一つも破片が飛んでこない

黒子「・・・まさか」

爆風が止んだ

黒子「軍覇さん!!!」

目の前には、両手を広げた削板が立っていた

初春「削板さ・・・」

削板「いってぇ!!!」

体に当たった破片を、削板が身を振って落とす

削板「!!黒子、ウイーハルさん!!大丈夫か!?」

初春「な、なんとか・・・」

黒子「というかそれはこっちの・・・!!それよりも支部は!?」

砂煙のせいで、まだ全貌が見えない

野次馬や警備員が騒いでいる

あれほどの規模の爆発など、見たことが無かったのだろう


98 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:01:11.22 ID:2CdfttG20
削板「・・・!!!」

そこには、想像以上の光景が広がっていた

建物の上部まで、黒煙が立ちこもっている

ところどころ、火が昇っている

机か椅子の残骸だろう、粉々になった木の破片も見られる

黒子「・・・わ、わたくしたちの支部が・・・」

初春「ひどい・・・」

先ほどまでは目の前にあったはずの風紀委員支部

それが、今では跡形もなくなっている

黒子「・・・そんな・・・」

削板「・・・くそ・・・」

削板が拳を地面にぶつける

警備員が大声で何かを叫んでいる

怪我人が出たらしい


99 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:06:24.97 ID:2CdfttG20
黒子「・・・許しませんの・・・」

初春「・・・絶対に犯人を捕まえますよ・・・」

黒子「分かっていますの」

二人の表情が険しくなる

相当頭にきているようだ

削板「俺も協力するぞ・・・」

黒子「えぇ・・・」

その様子は、テレビで中継されていた

学園都市全土に、その犯行は放送されたのだ


垣根「・・・行くか」

心理「そうね・・・まずはどこに?風紀委員の支部?それとも警備員に情報を聞きに?」

垣根「・・・まず行く場所があるだろう」

心理「・・・分かってるわよ」

上着を羽織った二人が外へと向かう

垣根「・・・もう一度堕ちるぞ、あの闇の奥底へ」

心理「えぇ」


100 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:09:32.10 ID:2CdfttG20

垣根「・・・ここだ」

二人がたどり着いたのは、ある建物の前

そこは、スクールの隠れ家だった場所だ

心理「・・・まさか、戻ってくるとはね」

垣根「全くだ」

文句を言いながら、二人が階段を上がる

心理「・・・どうするの?」

垣根「さぁな・・・だが、もしも・・・もしもあいつらが来ていたら」

心理「来るかしらね」

垣根「・・・いや、それはないかもな」

笑いながら垣根がある部屋のドアを開ける

とうとう、帰ってきてしまったのだ


砂皿「・・・やはり来たか」

垣根「・・・砂皿」


101 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:20:42.22 ID:2CdfttG20
砂皿「・・・聞いたぞ、暗部の話は」

垣根「どっから仕入れた」

砂皿「これでも・・・元は暗部の人間だったんだ」

垣根「・・・そうか」

砂皿「お前達はよかったのか」

心理「えぇ、これは私たちの問題よ」

垣根「俺達だけにしか解決できない」

砂皿「・・・そうか」

垣根「・・・これで全員だな」

砂皿「なに?ゴーグル・・・」

心理「いいのよ、これで」

砂皿「・・・そうかもしれないな」

垣根「・・・早速、これからの行動を決めるぞ」

心理「そうしましょう」



102 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:32:00.82 ID:2CdfttG20

麦野「私達はどうする?」

絹旗「やはり、超今すぐ向かったほうがいいんじゃないですか?」

フレンダ「それがいい訳よ!!」

浜面「そうだな・・・そうしよう」

滝壺「じゃあ、行こう」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・ねぇ、さっきからゴーグルおかしい訳よ」

ゴーグル「・・・みなさん」

ゴーグル男が一同の目を見つめる

フレンダ「・・・なに?」

ゴーグル「俺は、今はみなさんとは一緒にいられません」

フレンダ「!」

ゴーグル「みなさん、ご無事で」

ゴーグル男が一人、家から立ち去ろうとする

フレンダ「な、何よそれ!?」


103 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:36:59.93 ID:2CdfttG20
ゴーグル「・・・俺は、別で行動します」

フレンダ「だから・・・」

麦野「分かったわ、無理しないでね」

フレンダ「む、麦野!!」

ゴーグル「では」

一礼してからゴーグル男が立ち去る

フレンダ「・・・どうして・・・」

麦野「・・・さぁ、行くわよ」

浜面「・・・そうだな」


浜面「ゴーグルは選んだ、なら俺達も選ばなきゃならない」



ゴーグル(・・・ごめんなさい、フレンダさん)

ゴーグル男は走っていた

ある場所を目指して

もう、帰ることは無いはずだったあの場所へ


104 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:40:48.86 ID:2CdfttG20
ゴーグル(一人でもいいっす、たとえ皆さんがいなくても・・・)

ゴーグル(俺は・・・)

階段を駆け上がる

見慣れた建物

そして、見慣れたドア

この向こうには、彼の愛した闇が広がっている

彼の居場所だった、家族だった場所が

ゴーグル(たとえ・・・一人でも)

ガチャリ、とドアを開ける

一瞬、目を疑った

あの頃と変わらない三人がそこにはいた

垣根「遅かったじゃないか」

ゴーグル「・・・ただいま」

心理「おかえりなさい」

それだけでよかった

時間がないから、家族だから

垣根「・・・じゃ、無駄話はいらねぇな・・・」

上着を羽織った垣根がゆっくりと立ち上がる



垣根「スクール、再結成だ・・・着いて来いよ」




105 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/29(土) 21:41:50.70 ID:2CdfttG20
今日はここまで

シリアスに出来れば、と思ったけど難しい

とりあえず暗部の話をやりたいと思ったので

15巻読み直してきます

ではおやすみなさい


106 :小豆にかわりまして名無しがお送りします [sage]:2011/10/29(土) 22:58:06.00 ID:vQkpmYMC0
>>乙! スレタイひびったぜΣ(゚д゚lll)
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/29(土) 23:29:13.91 ID:7dNyfHe40
まさかこのためにゴーグルとフレンダを?
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/30(日) 00:00:38.09 ID:q2u2QRdBo
>>1は伏線を貼っていたのか!!
109 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 08:59:26.15 ID:nz3CnKox0
フレンダとゴーグル出した辺りからぼやーっと書きたいなぁ、と思ってまして

スクールの隠れ家とかいろいろやってたのもまぁ伏線といえばそうでしょうね

投下は夜に


今思えば、能力よりも相手の名前を考えるほうがめんどくさかった

もう厨二な名前でいいやw

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/30(日) 11:26:06.34 ID:q2u2QRdBo
主要キャラ以外はコウスケみたいにカタカナでいいんじゃないか?
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/30(日) 15:30:48.41 ID:BlCUWK+Fo
        /≦三三三三三ミト、          .  ―― .
       《 二二二二二フノ/`ヽ       /       \
       | l  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∨{ミvヘ      /      ,   !l ヽ
       ト==   ==彡 》=《:ヽ     ′ ―‐ァ!l / ̄}
         /≧ァ 7¨7: :ァ.┬‐くミV!ハ    |    (__   _ノ    |
       ′: /: イ: /': :/ |:リ  ヽ }i! : .     |  _j_   ツ    |
      i. /: il7エ:/ }:/ ≦仁ミ ト:.i|: i|   |    d   __ 、、   |
      |:i|: :l爪jカV′´八ツソ Vミ :l|   |   ノ  − ノ    |
      |小f} `   ,    ´  ji }} : .{    {   ┌.  ー ´    }
       }小    _      ,ムイ|: :∧    .    |/   ヨ
       //:込  └`   /| : :i i : :.∧   、  o   ―┐!l /
        /:小:i: :> .    .イ _L__|:| :li {∧   \    __ノ /
.      /′|从 :|l : i :爪/´. - 、 〈ト |ト:ト :'.   /       く
            N V 「{´ /   ヽ{ハ|   `\ /        ヽ
           | }人ノ/   li  V    _.′贈  惜  と  '
       i´ }    //} i′′ ハ 、|   `ヽ.   り   し  ミ   !
       { {     〃ノ {l l!  } :  {     }  ま  み  サ  |
   rー‐'⌒ヽ  ,イ   i{| |   i      |  す  な  カ
   〉一 '   ∨n     ∨   ′  ハ      |      い. は  }
   `r‐‐ ´   V    |       |      !      称     ′
    ‘r‐‐ ´    \   }/i⌒ヽ   {      .      賛    /
      `¨¨` ー .、  ` < ` |    `ト、 }     ヽ     を
         }}\      ̄ `ヽ ト ソ      \     /
         ノi  \        } }         ` ―‐ ´
          //     > .     | ノ
112 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 17:58:48.46 ID:nz3CnKox0



土御門「・・・来たか」

一方「・・・てめェの顔なンて見たくなかったンだけどな」

結標「そんなの、私だって同じよ」

グループの三人は、小さなホテルの一室で落ち合っていた

ただしそこにはもう一人混じっている

結標「妹達かしら」

一方「知ってンのか」

結標「元は暗部の人間よ?ナメないで」

番外「番外個体だよ、よろしく」

土御門「無駄話はそこまでにしておけ」

土御門が部屋にあるテレビをつける

ニュースは、二件目の風紀委員支部爆破事件で持ち切りだ


113 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 17:59:19.52 ID:nz3CnKox0
土御門「知っての通り、暗部の再結成を願う人間が現れた」

結標「私は昨日、いきなり能力をぶっ放されたわ」

土御門「俺は銃撃だった」

一方「俺も銃撃だ」

番外「ふーん・・・一体何人くらいいるんだろうね」

土御門「それは分からない」

土御門が一枚の地図を広げる

風紀委員の支部の配置が細かく載っている

土御門「二つの支部はかなりとは言えないが、ある程度離れている」

一方「・・・つまり、最低でも二人はいる、か?ンなことは分かってンだよ」

土御門「二つ以上アジトがあると考えていい」

結標「それも分かってるわ」

番外「問題は、どうやって殴るのかだよ」


114 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 17:59:55.05 ID:nz3CnKox0
土御門「・・・簡単だ、こちらが誘いに乗ったことを知らせる」

一方「どうやって」

土御門「今からあの爆破された風紀委員の支部に行くぞ」

結標「野次馬にでもなるつもり?」

土御門「あながち間違いではないな」

結標「・・・」

一方「ヤツらがテレビを見てるって確証もねェ」

土御門「いいんだよ、どっちにしろ情報収集には行かなきゃならない」

結標「たしかに一理あるわね」

番外「・・・ミサカ達が向かって危険になる可能性は?」

一方「ンなこと言ってたら行動できねェだろ」

土御門「俺達は進むしかない、ここはそういう世界だ」

結標「じゃあ行きましょう」


115 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:00:28.31 ID:nz3CnKox0
番外「・・・そうだね」

四人がホテルの部屋を出る

土御門「・・・エツァリの野郎は今はいない」

結標「こんな時に限って?」

一方「運の悪いヤツだな、こンなに楽しいイベント逃すなンて」

土御門「あいつはあいつで楽しんでるさ」

番外「ふーん」

土御門「・・・歩きになるが構わないか?」

結標「私が飛ばすのは?」

一方「演算間違えたら木っ端微塵だろ」

番外「そりゃ流石に御免だね」

結標「あら残念、あなたを殺す機会だったのに」

一方「今はてめェみたいな雑魚には構ってられねェンだよ」


116 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:01:02.13 ID:nz3CnKox0
結標「・・・」

土御門「そこまでにしろ、俺達がいがみ合ってどうする」

一方「ちっ・・・」

結標「・・・ここから風紀委員支部までは?」

土御門「歩けば・・・」

土御門が地図に目をやった

その時、一方通行な気づいた

彼の頭に赤い点が浮かんでいるのを

一方「!」

とっさに一方通行が土御門を突き飛ばす

一瞬だけ遅れて、弾丸が飛んできた

結標「!狙撃・・・!」

土御門「どこだ!?」


117 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:01:46.34 ID:nz3CnKox0
一方「あのビルだ」

四人の斜め後方にあるビル

そこから銃弾は飛んできた

番外「・・・あまり距離はないね」

一方「風もそこまで強くねェ」

結標「行ってくるわ」

土御門「待て、俺もだ」

結標「・・・いいの?木っ端微塵になるかもしれないわよ」

土御門「んなこと言ってる場合じゃない」

結標「仕方ないわね」

土御門「二人は今すぐ風紀委員支部へ迎え、情報収集を頼む」

一方「死ぬなよな」

土御門「上手くやる」


118 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:02:17.53 ID:nz3CnKox0
二人の姿が虚空に消えた

番外「・・・中々刺激的だね」

一方「行くぞ、俺達には仕事がある」

番外「分かってる」

頷いてから、二人は駆け出した

既にここからも黒煙が見えている

それ程大規模の爆破だったのだろう

一方「・・・派手にやるもンだな」

番外「・・・それ程目立つようにやる必要があったんだよね」

一方「めンどくせェ・・・」

一方通行が首を鳴らす


一方「野郎共、捕まえたらぶち殺してやる」



119 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:03:01.33 ID:nz3CnKox0

麦野「・・・さっきの風紀委員支部は?」

絹旗「この近くです」

浜面「・・・!黒煙が上がってる・・・」

アイテムのメンバーも、風紀委員支部を目指していた

空に一筋の煙が上がっている

だがそれは決して幻想的なものではない

花火などとは違うのだ

滝壺「・・・かなり人も集まってるね」

フレンダ「野次馬根性ってヤツな訳よ」

たくさんの見物人を押しのけながら、5人は進む

少しすると、惨劇の舞台にたどり着いた

フレンダ「・・・ひどい」

絹旗「・・・こんなになるほどの爆弾ですか・・・」


120 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:03:35.84 ID:nz3CnKox0
浜面「・・・俺達がいた頃の暗部とはずいぶん違うな」

麦野「真似事の暗部に秩序なんてないわよ」

滝壺「・・・行こう、早くしないと」

麦野「そうね」

風紀委員や警備員が相変わらず現場検証を行っている

流石に近づきすぎると不審に思われるだろう

フレンダ「・・・たぶん、時限式の爆弾な訳よ」

浜面「?なんでだよ、遠隔操作かもしれないだろ」

フレンダ「・・・爆弾の形で分かる」

警備員が爆弾と思われるものの写真を持っている

だがそれはあくまで爆発した後の写真だ

浜面「あんなので分かるのか?」

フレンダ「私はああいうのには詳しい訳よ」


121 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:05:57.17 ID:nz3CnKox0
浜面「・・・俺達がいた頃の暗部とはずいぶん違うな」

麦野「真似事の暗部に秩序なんてないわよ」

滝壺「・・・行こう、早くしないと」

麦野「そうね」

風紀委員や警備員が相変わらず現場検証を行っている

流石に近づきすぎると不審に思われるだろう

フレンダ「・・・たぶん、時限式の爆弾な訳よ」

浜面「?なんでだよ、遠隔操作かもしれないだろ」

フレンダ「・・・爆弾の形で分かる」

警備員が爆弾と思われるものの写真を持っている

だがそれはあくまで爆発した後の写真だ

浜面「あんなので分かるのか?」

フレンダ「私はああいうのには詳しい訳よ」


122 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:08:36.11 ID:nz3CnKox0
麦野「・・・時限式ってことはヤツらは近くにいるって確証はないわけか」

絹旗「超面倒ですね・・・」

浜面「・・・なぁ、なんであいつらはこんなことするんだと思う?」

麦野「だから、暗部を・・・」

浜面「これじゃまるで、表の人間が暗部に踏み入るようにしてるみたいだ」

絹旗「!超それかもしれません!」

滝壺「うん・・・これなら風紀委員や警備員・・・ヘタしたら、野次馬も暗部に首を突っ込むかも」

フレンダ「でもなんでそんなことする訳よ?」

麦野「面白半分か、それとも目的があるか」

浜面「・・・何かあるはずだ」

絹旗「・・・ここにほかに手掛かりは?」

麦野「・・・ないと思うわ、中途半端に手掛かりを置いても一気に噂が加速するだけだから」

浜面「?表の人間を暗部に陥れたいなら・・・」

123 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:09:17.78 ID:nz3CnKox0
麦野「違うのよ、暗部にいきなりたくさんの人間が来たらあまり意味がないじゃない」

絹旗「それじゃただ暗部が表に覆われるだけです」

フレンダ「・・・一人一人、少ない人数をじわりじわりと陥れたほうがいい訳よ」

浜面「そういうもんなのか?」

麦野「・・・こうなったら、こっちもどうにかしないとね」

浜面「だからどうするんだよ?」

麦野「・・・ちょっと荒い方法だけど・・・ヤツらはどうやって私達に接触してきた?」

浜面「人のいない道でいきなり・・・」

麦野「なら同じことをすればいいのよ」

浜面「そんな簡単にいくかよ・・・」

麦野「あいつらは私達をなんとしても暗部に戻したいのよ」

長い髪を指先で回しながら麦野が言う


124 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:10:10.36 ID:nz3CnKox0
麦野「だったら、絶好の機会は逃さないわ」

滝壺「でも、気づくかな?」

麦野「もしかしたら今も監視されてるかもしれないわよ?」

浜面「!」

辺りを浜面が見回す

怪しい人影はない

いや、野次馬に隠れているかもしれないのだ

浜面「・・・分かった、俺達が誘い出してやるか」

絹旗「こちらが誘い出された形にもなりますね」

麦野「いいのよそれでも」

フレンダ「そいつらをぶっ飛ばせるなら文句ない訳よ」

滝壺「はまづら、無理しないようにね」


125 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:10:39.04 ID:nz3CnKox0
絹旗「・・・じゃあ行きましょうか」

浜面「出来る限り人のいない道・・・裏路地か」

麦野「気は乗らないけど、仕方ないか」


麦野「ほら、さっさと行きましょう・・・あいつらと戦いに」


垣根「・・・」

ゴーグル「どこに向かってるんすか」

垣根「例の変死体の事件現場だ」

心理「あら、あれが何か?」

垣根「知ってるかもしれないが、あれはヤツらの一員だったらしい」

砂皿「・・・ほう」

垣根「もしもあれが表の人間を暗部に嵌める罠だとしたら・・・」

心理「近くに監視している人間がいるかもしれない」

ゴーグル「でもいいんすか?下手したら俺達と交戦するかもしれませんよ」

126 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:11:10.87 ID:nz3CnKox0
垣根「・・・だったらなんだよ」

砂皿「このままでは被害が増える一方だ」

心理「どこかで一歩を踏み出さないと意味がないわ」

ゴーグル「・・・相変わらず、みなさんは冷静っすね」

垣根「鈍ったんじゃないかゴーグル馬鹿」

ゴーグル「んなこと言わないで下さい」

心理「・・・それで?ゴーグル君、戦闘は大丈夫?」

ゴーグル「そりゃこっちの台詞っす」

心理「あら、普通の人間相手なら私は負けないわ」

砂皿「油断は禁物だ」

垣根「・・・さて、そろそろ黙って歩こうぜ」

死体現場が近づいてくる

いや、近づいているのは垣根達だ

127 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:12:37.32 ID:nz3CnKox0
だがなぜか、闇が勝手に近づいて来ているように錯覚される

垣根「・・・まだ現場検証は続いてるみたいだな」

心理「・・・意外ね、表の人間を暗部に落としたいならあの警備員達を狙撃すればいいのに」

垣根「・・・ゆっくりと落とす必要があるのかもしれねぇ」

ゴーグル「統括理事会の焦る顔でも見たいんじゃないっすか?」

砂皿「可能性などどうでもいい、今は手掛かりを掴むべきだ」

垣根「・・・安心しな、もう掴んだ」

砂皿「なに?」

垣根「・・・裏路地にでも向かうぞ」

砂皿「・・・!あぁ、なるほどな」

心理「・・・いたわね」

ゴーグル「あんなに殺気立たせるなんて、緊張でもしてるんすかね」

垣根「いいから行くぞ」


128 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:13:12.78 ID:nz3CnKox0
四人が自然に裏路地へ入っていく

足音は5つ

垣根(・・・やっぱり来やがった)

砂皿(・・・出来る限り表通りから遠ざからなければな)

心理(・・・なるほど、歩幅は一定じゃない・・・)

ゴーグル(まだ尾行さえまともに出来ない新参っすか)

そんなことを考えながら、段々と奥へ進んでいく

その少し先には、地下街への入口がある

ここの裏路地は、近道として普通の学生が利用することも多い

特に休日は、裏路地と思えないほど通行人が多いのだ

ビルに挟まれた小さな道を通行人が歩く光景は面白いものだろう

だが、今は四人と追跡者だけだ

変死体などが見つかってすぐに近くの裏路地を歩きたがる人間などいるはずがない


129 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:13:47.26 ID:nz3CnKox0
垣根(・・・このまま地下街へ向かうか)

心理(・・・風紀委員以外の学生は学校ね)

ゴーグル(・・・地下街で万が一戦闘になっても問題なし、っすか)

砂皿(全く・・・面倒だな)

追跡者の足音は、相変わらず一定ではなかった

垣根「・・・走るぞ」

心理「えぇ」

四人が目配せをする

それを合図に、地下街へ向かって駆け出す

「!」

追跡者の足音も、リズムが速くなる

垣根(・・・こんなのに掛かるなんて、本当に新参なんだな)

心理(・・・あった)


130 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:14:31.85 ID:nz3CnKox0
地下街へ下る階段

そこも、やはり通行人はいない

それがかなり好都合だった

ゴーグル「行きますか」

砂皿「大きな騒ぎになれば、風紀委員が駆け付けるかもしれないな」

垣根「それは出来る限り避けなきゃな」

心理「・・・そうね、風紀委員を巻き込めないわ」

ゴーグル「・・・地下街で働いてる善良な市民の皆様は」

垣根「守りながら戦えばいいだろ」

心理「あら、そんなこと出来るの?」

垣根「やってみせるさ」

砂皿「いいだろう、賭けてみる」

地下街への階段を駆け降りる


131 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:15:05.74 ID:nz3CnKox0
段々と、立ち並ぶ店が目に入ってくる

そこにはほとんど人がいない

店内には店員以外いないように見える

おかげで、地下街とは思えないほど静まり返っている

垣根「・・・どうする?」

心理「あら、出来る限り店のない場所に行くわよ」

ゴーグル「それが・・・!」

ゴーグル男が

いや、四人全員が足を止める

後ろからの追跡者は一人

だが、今聞こえた足音は6つ

誰かが、もう一人

この場所に来ているのだ


132 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:15:46.53 ID:nz3CnKox0
ただの学生かもしれない

ただの店員かもしれない

聞き間違えかもしれない

そんな淡い希望を抱いてしまう

だが、所詮それは希望なのだ

垣根「・・・ゴーグル馬鹿」

ゴーグル「やりますか」

心理「・・・四人で迎え撃つ?」

砂皿「元々相手を尋問するのが目的だ、それで問題はない」

垣根「・・・さーて、どんなヤツかな」

四人が背中合わせになる

先に現れたのは、後方からの追跡だった

坊主の男だ


133 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:16:32.71 ID:nz3CnKox0
眼鏡を掛けているが、かなり若いようだ

まだ中学生に見える

「・・・くそ、逃げやがって・・・」

垣根「・・・つけられたら逃げるに決まってるだろ」

「・・・ちっ、大人しくしてくれたら問題ねぇんだよ」

砂皿「・・・それで、貴様は一人で勝てるつもりだったのか」

「まさか、もう一人応援がいますよ」

垣根「気づいてる、だがわざわざ警戒するほどでもねぇさ」

「ちっ・・・余裕かましやがって」

垣根「そうだ、お前の名前は」

「・・・んなこと聞いてどうする」

垣根「いいからよ・・・」



垣根「墓に刻むんだ、漢字も正確にな」



134 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:17:49.59 ID:nz3CnKox0
「・・・ふざけんな!」

垣根「あぁ?それがてめぇの名前か?」

風間「・・・風間仁だ」

垣根「ほぉ、いい名前だ・・・」

垣根がニヤニヤと笑う

見る者を怯えさせるような笑みだ

垣根「・・・で?早速本題に入らせてもらうが」

風間「なんだ」

垣根「お前らの本拠地はどこだ」

風間「・・・言えるわけがないだろう」

垣根「そりゃ残念だ、今教えてくれたら無傷で帰してたんだが」

風間「・・・いいのか?応援のほうは」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿、心理定規」


135 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:18:21.89 ID:nz3CnKox0
心理「分かってる」

ゴーグル「・・・」

垣根の後方

ゴーグル男と心理定規の視線の先から、男が現れた

長身で、すらりとした体

見た感じはどこにでもいる高校生といった感じだ

茶髪を短く切り揃えている、全くぱっとしない容姿だ

「・・・全く、こんな所で戦おうというのか」

ゴーグル「・・・広い場所のほうが逃げやすいでしょう」

「逃げることなど考えるか、下らん」

ゴーグル「アンタ達が逃げる側だ」

「・・・」

ゴーグル男の言葉に、眉をひそめる追跡者


136 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:19:01.77 ID:nz3CnKox0
ゴーグル「アンタの名前は」

仙道「仙道白亜だ」

ゴーグル「これまた随分いかつい名前っすね」

仙道「お前は」

ゴーグル「ゴーグルでいいっすよ」

ゴーグル男が首を鳴らす

ゴーグル「さて・・・始めますか」

仙道「いいのか?能力戦になるぞ」

ゴーグル「問題ないっす、俺は能力ないんで」

仙道「・・・」

仙道が右手を前に翳す

何か能力を使うのだろう



137 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:20:09.48 ID:nz3CnKox0
仙道「すまないが・・・」

ゴーグル「・・・?」

仙道の言葉と同時に、不思議な感覚がゴーグル男を襲った

体が、浮いている

ゴーグル「な・・・」

仙道「お前じゃ俺には勝てないな」

仙道が手を軽く下に振る

その瞬間、ゴーグル男の体が地面に強く叩き付けられた



黒子「・・・やはり監視カメラに怪しい人影は映っていませんの」

初春「空間移動でも使ったんでしょうか?」

削板「・・・もしくは警備員に紛れたか」

黒子「警備員に紛れるのは難しいですの・・・あの制服は簡単には手に入りませんし」

風紀委員支部で、三人は話していた



138 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:20:41.42 ID:nz3CnKox0
いつも三人が集まっていた支部ではない

別の支部を使わせてもらっているのだ

彼等が使っていた支部は、数時間前に爆破された

今は鉄筋が剥き出しになるほどに倒壊している

黒子「・・・光学系の能力」

削板「そうか・・・短時間でも自分の姿を消せる能力者なら」

初春「・・・それだったら可能性はありますね」

黒子「となると、数は絞られてきますの」

削板「・・・よし、調べてみるか」

初春「待っていて下さい、今データを・・・」

初春がパソコンに向かった時

いきなり、通信が入った


139 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:21:24.35 ID:nz3CnKox0
黒子「・・・なんでしょうか」

削板「新しい情報でも入ったか?」

黒子「分かりませんの」

通信を開始する

相手は風紀委員の一人だった

「白井さん、民間から通報があったんですが・・・」

黒子「・・・はぁ、どのような?」

「地下街で能力者同士が争っているようなんです」

黒子「能力者同士が?」

「白井さんに相談しておこうかと・・・」

黒子「分かりましたの」

そこで通信が終わる

削板「どうした?」


140 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:22:11.81 ID:nz3CnKox0
黒子「地下街で能力者同士が争っているとの通報がありましたの」

初春「このタイミングですか・・・」

黒子「仕事は山積みですが・・・これも仕事ですわね」

黒子が支部のドアを開ける

削板「俺も行くよ」

黒子「助かりますの」

初春「私は光学系の能力者、探してみますね」

黒子「出来ればアリバイまで」

初春「分かってますよ」

黒子「頼みましたの」

背中を向け、二人が部屋から出る

黒子「さて・・・」


黒子「今のわたくしは不機嫌ですの、ちょっと手荒になりますわよ・・・」



141 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:22:46.07 ID:nz3CnKox0



ゴーグル「ぐぁぁっ!」

心理「!」

仙道「・・・どうした、先程までの余裕がないぞ」

ゴーグル「・・・重力操作」

仙道「当たりだ、だがそれを知ってどうする」

ゴーグル「ちっ・・・」

ゴーグル男が銃を撃つ

だが、銃弾はすぐさま地面に叩きつけられた

仙道「ダメだダメだ・・・銃弾にだって重力は働いてるんだ」

ゴーグル「・・・重力を自由に操作出来る・・・なるほど、こりゃ俺は不利っすね」

ゴーグル男は近接戦闘をメインとしている

だが重力操作が相手ではほとんど無意味なのだ

近づく前に地面に倒される

近づいても、体を浮されれば攻撃なんて出来ない



142 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:23:25.17 ID:nz3CnKox0
仙道「・・・そちらの女が手を貸すか?」

心理「あら、ヘルプが無いなら手は出さないわ」

仙道「仲間を見捨てるか」

心理「仲間?あなた、暗部に仲間なんて求めてたの」

仙道「先程この男が傷つけられたときのお前の顔、それは怒りの表情だった」

心理「・・・そう」

仙道「お前、この男を仲間だと思っているだろう」

心理「・・・だったら何よ」

仙道「手助けしてみろ」

心理「何?私の能力で散らされたいの?」

仙道「・・・口が減らない」

仙道が心理定規のほうを見つめる

心理「・・・あら、やるつもり?」


143 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:24:04.07 ID:nz3CnKox0
仙道「やって・・・」

ゴーグル「よそ見は禁物っす」

仙道「!」

いつの間にか、ゴーグル男は仙道の直前まで来ていた

仙道「お前・・・」

ゴーグル「!」

拳を振りかざし、ゴーグル男がそれを目一杯振り下ろす

仙道「がはっ!」

バキリ、と骨が折れる音がした

仙道「てめぇぇぇぇ!」

ゴーグル「・・・なるほど、目に見えたものの重力を操作する能力っすか・・・相手にかかる重力を操作するんなら、それも当然っすね」

仙道「くそ・・・くそ!」

ゴーグル「心理さんを見ていたから、視界の外にあった俺は重力操作から逃れた・・・」

仙道「死ね・・・」



144 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:24:39.99 ID:nz3CnKox0
ゴーグル「じゃあ簡単なことっす」

ゴーグル男が拳を地面にぶつける

床が壊れ、粉塵が舞う

仙道「!」

ゴーグル「どうしました?俺が見えなきゃ重力操作は出来ないでしょ」

仙道「くそ・・・」

ゴーグル「最初からばかすか能力使うからっす」

ゴーグル男が駆け出す

ほんの一瞬

その一瞬で、仙道の目前まで距離を縮める

仙道「見え・・・」

ゴーグル「演算するのとただ殴るのなら・・・」

仙道の体が吹き飛んだ


145 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:25:25.17 ID:nz3CnKox0
ゴーグル男の蹴りが、脇腹に入ったのだ

ゴーグル「後者のほうが・・・あれ、殴るじゃなくて蹴りでしたね」

仙道「・・・」

心理「あら、気絶してるわね」

ゴーグル「・・・情けないっす」

パンパン、と服についたホコリを払いながらゴーグル男が笑う

心理「・・・垣根のほうはどうかしら」

くるり、と心理定規が振り向く

そちらは最早、一方的な展開だった

垣根「・・・おいおーい」

風間「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

垣根「・・・ちっ、ちょっとは楽しませてくれるかと思ったのによ」

垣根の背中から、六枚の翼が生えている


146 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:25:54.26 ID:nz3CnKox0
「未元物質」

彼の有する能力を最も扱いやすい形状にしたものだ

風間「くっ・・・なんなんだその能力は!」

垣根「お前さ、相手の能力も知らずに喧嘩売ったのか?」

風間「なんなんだ!」

垣根「てめぇ・・・風力使いだな、LEVEL3程度だ」

風間「だから・・・」

垣根「残念だったな、たしかに風力だけは中々の威力だが・・・」

垣根が軽く翼をはためかせる

一迅の風が吹いた

垣根「俺の能力だって風なら起こせる、それも厄介なおまけ付きだ」

風間「何・・・」

突然、風間の体が痛みを覚える

風間「!」



147 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:26:29.79 ID:nz3CnKox0
何か、皮膚が剥がれるような痛みだ

風間「いてぇぇぇ!なんだよこりゃぁ!」

垣根「未元物質に細かい振動を与えた・・・あぁ、さっきの風のおまけに未元物質ばら撒いたんだが・・・分からないよな」

風間「てめぇ!」

風間が風を生み出す

だが、そんなものは垣根にとって脅威でもなんでもない

垣根「・・・細かい振動でてめぇの皮膚を少しずつ剥いでいく、いい趣味だろ?」

風間「化け物・・・」

垣根「化け物?ちょっと力が強いだけで?」

風間「黙れ!」

風間が強い風を打ち出す

だが、何度やっても垣根には通用しない

垣根「ダメだな・・・いい加減やめろって、てめぇの相方もやられたみたいだぜ?」

風間「!」


148 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:26:55.70 ID:nz3CnKox0
くるり、と風間が振り向く

仙道という男は地面に倒れていた

気を失っている

風間「せ、仙道まで・・・」

ゴーグル「・・・まぁ、スクールにたった二人で対抗しようとしたのが間違いっすよ」

垣根「よく言うぜ、最初は圧されてたくせに」

ゴーグル「あれは相手の能力が分からなかったからっす」

垣根「あぁそう」

風間「く・・・なんなんだよ!」

心理「それはこっちの台詞よ、いきなり襲撃してきて」

砂皿「・・・貴様達の目的は暗部と表の交差、か」

風間「ちくしょう・・・この・・・」

風間が腕を振りかざす


149 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:27:22.64 ID:nz3CnKox0
垣根「また・・・」

だが、その腕は振り下ろされる前に、誰かによって捕まれた

風間「な・・・」

黒子「風紀委員ですの!器物損害・・・!垣根さん!?心理定規も・・・」

心理「・・・奇遇ね」

黒子「ど、どうして・・・」

ゴーグル「知り合いっすか?」

垣根「友達だ」

風間「友達・・・?ははは!お前らが友達だって!?」

心理「悪い?」

風間「馬鹿か!お前らは暗部の・・・」

黒子「・・・?垣根さん、一体・・・」

垣根「・・・白井、そいつを放せ」



150 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:27:53.97 ID:nz3CnKox0
黒子「な、何を言ってますの?」

垣根「放せ!」

垣根が黒子を睨みつける

黒子「そんなこと出来ませんの!」

垣根「放せって言ってんだ!てめぇは関わるな!」

黒子「何を・・・」

風間「アンタ風紀委員だったな!?どうだった今日の爆破事件!?」

黒子「!」

風間「予定通りに遂行出来て安心したなおい!」

垣根「てめぇ・・・!」

黒子「・・・あなたが・・・」

削板「黒子!こっちは・・・!垣根じゃないか!」

垣根「・・・お前もいんのかよ」

黒子「軍覇さん、この人が爆破事件の犯人のようですの」


151 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:28:21.74 ID:nz3CnKox0
削板「なんだと?」

風間「あぁその通り!あとそっちに倒れてるヤツもな!俺達の組織が計画・・・」

心理「やめなさいな」

風間「はっはは!風紀委員だったら調べるよな!?俺達の組織について!」

黒子「当たり前ですの!」

垣根「調べるな!てめぇらが関わっていい問題じゃねぇんだよ!」

風間「黙ってろよスクール!」

黒子「スクール・・・垣根さん達が所属していた暗部の・・・」

風間「おぉ、なんだなんだ!アンタも暗部について知ってるのか!」

垣根「白井!帰れ!」

風間「俺達も暗部の人間なんだよ、こいつらも暗部の人間だった!」

削板「!なんでまた垣根が暗部のヤツらと・・・」

風間「気になるよな・・・!?調べてみ・・・」

垣根「クソ野郎が」



152 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 18:30:23.41 ID:nz3CnKox0

垣根が何か能力を使ったのだろう

風間の手からいきなり血が吹き出した

風間「あぁぁ!!!」

黒子「!!か、垣根さん!!」

垣根「白井、帰れ・・・削板もだ」

削板「何言って・・・」

垣根「・・・お前達が関わっていい世界じゃないんだ」

削板「そんなこと言って・・・」

垣根「いいから帰れ!!!」

垣根が翼をはためかせ、一瞬で黒子の前に移動する

黒子「!!!」

垣根「帰れ」

風間の腕を掴んでいた黒子を、垣根が吹き飛ばす

黒子「きゃっ・・・」

削板「黒子!!!」

その体を、削板が受け止める


 
153 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 20:34:31.16 ID:nz3CnKox0
垣根「・・・お前らには関わって欲しくねぇんだよ」

削板「ふざけんな!!風紀委員に被害が・・・」

垣根「こいつらは俺らが片付ける、だからお前らはこの事件から手を引け」

黒子「そんなこと・・・」

風間「・・・お前ら・・・人をおいて話してんじゃねぇ!!」

垣根「黙ってろ」

風間「・・・そろそろ俺らだって応援が来るんだよ・・・」

心理「あら、こっちの子以外に?」

風間「あぁそうだ!!仙道だけが応援だとでも思ってたか!?」

ゴーグル「・・・へぇ、そりゃ中々楽しそうっすね」

黒子「いけませんの・・・」

垣根「お前は関わるな!!いいか、削板!お前もだ!」

削板「だから・・・」

砂皿「・・・静かに、誰かが来た」

垣根「・・・あぁ?」

垣根が通路の先を見つめる


154 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 20:58:56.81 ID:nz3CnKox0

「・・・おいおい、ずいぶん派手にやられてるな」

風間「遅いんだよ!!!お前らすぐ応援に来るとかいいやがって・・・」

「・・・そう怒るな、お前達がやられるのは想定済みだっての」

風間「てめ・・・」

垣根「よぉ、お前らもこいつらの仲間か」

スタン「おう、スタン・ウィリアムズだ・・・よろしく」

垣根「外人か」

スタン「・・・にしても、ホントスクールが来てくれるとはな」

心理「あら、私達を誘き出したつもり?」

砂皿「そちらが誘き出されたのだ」

スタン「そりゃないね、第一ここには風紀委員がいるじゃないか」

スタンという男が黒子を指差す

スタン「ここで派手にドンパチやれば、風紀委員が俺達に接触する」

風間「そうだ!!それこそが・・・」

ゴーグル「・・・アンタ達はどうしてこんなことを」

スタン「それぞれ目的は違うさ、ただの同僚だ・・・必要なくなれば切り離す」


155 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:06:09.54 ID:nz3CnKox0
スタンが風間に銃を向ける

黒子「!!」

風間「お、おい・・・」

スタン「情報を話したか」

風間「話すわけねぇだろ!!それで葛葉のやつも殺されたんだろ!」

スタン「そうか・・・なら問題はないか」

垣根「おいおい、俺達無視しておしゃべりかよ」

スタン「・・・困ったな、仙道は意識がないか」

心理「・・・あなた、一人で私達と戦うつもり?」

スタン「まさか、そんなのは無理さ」

削板「・・・待て、暗部の人間がなぜ風紀委員を狙った!?」

スタン「・・・知ってどうする?暗部に来るか?」

削板「それは・・・」

垣根「・・・させねぇよ」

垣根が翼を広げる

目の前にいる敵を潰すしかないのだ

スタン「おぉ、怖い怖い」

ライターを取り出しながら、スタンが笑う

垣根「・・・何の・・・」

スタン「あばよスクール、俺達は一旦撤退だ」

垣根「!」


突然、空中が爆発した


垣根(水素爆発か・・・!!)


156 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:09:31.51 ID:nz3CnKox0
心理「くっ・・・」

すさまじい衝撃に、思わず目を閉じてしまう

黒子「ま、また爆発ですの・・・!?」

削板「くそ・・・」


スタン「スクール、俺達と会いたいなら第5学区にある建設中のビルに来い」

垣根「何・・・」

スタン「・・・そこが俺たちの本拠地だ」

垣根「待て!!!」


土煙が晴れると、そこには三人の姿が無かった

ゴーグル「・・・逃がしましたね」

砂皿「・・・あぁ」

黒子「い、一体・・・」

垣根「・・・心理定規、ゴーグル馬鹿、砂皿・・・行くぞ」

砂皿「もう向かうのか」

垣根「当たり前だろ」

削板「おい待てよ!!!」

削板が垣根の胸倉を掴む

なぜか、怒っているようだ

垣根「・・・なんだよ」


157 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:15:39.40 ID:nz3CnKox0
削板「お前達は暗部と手を切ったんじゃなかったのか!!」

垣根「・・・あぁ、そうだよ」

削板「だったら・・・」

垣根「・・・でも無理だったのさ」

削板「!!」

垣根「あの闇に一度堕ちた人間は、結局ずっとどこかしらに闇を抱えてしまう」

黒子「そんなこと・・・」

垣根「一方通行、土御門元春・・・麦野沈利を始めとしたアイテム勢、結標淡希」

黒子「・・・」

垣根「あいつらだって、今は闇に再び堕ちた」

削板「そんなこと・・・」

垣根「認められないか?なら認めなくていい、下衆だと笑っても構わない」

垣根が削板の手を掴む

そして、その手を胸倉から離させる

垣根「だがな、お前達はこっち側に来ちゃいけねぇんだ」

削板「俺達にも・・・」

垣根「出来ることがあるか?ふざけんな」


垣根「・・・帰れ、そして二度と関わるな」


158 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:19:56.38 ID:nz3CnKox0
削板「垣根・・・」

垣根「行くぞ、お前ら」

垣根が踵を返す

見つめる先には、スクールの三人がいる

心理「・・・そういうことだから、あなた達はこの事件に深く関わらないで」

垣根「犯人は俺達がどうにかする、表沙汰には出来ないんだ」

黒子「そんなこと許せませんの!!風紀委員の支部が二つも・・・」

ゴーグル「・・・アンタ、名前は」

黒子「・・・白井黒子ですの」

ゴーグル「じゃあ白井さん、一つ言いますけど・・・あなたは暗部に堕ちるつもりですか?」

黒子「堕ちませんの、表から裏を・・・」

ゴーグル「そりゃ無理だ、これは盤と同じなんですよ・・・表が裏に来るには、盤をひっくり返さなきゃならない」

削板「それで友達を救えるなら・・・」

ゴーグル「そうしたら、裏が表になってしまう・・・結局は堂々巡りっす」

黒子「わたくしはみなさんを・・・!!」

垣根「もういい、お前は適当に現場検証でもしててくれ」

削板「垣根!!!!」

垣根「行くぞ」



159 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:33:15.53 ID:nz3CnKox0
削板「垣根!!」

垣根「・・・俺達は絶対に帰ってきてやる」

削板「・・・」

垣根「どんな手を使っても、あいつらをぶちのめすんだ」

黒子「垣根さん・・・」

垣根「だからお前達はもう関わるな、俺たちの問題だ」

削板「・・・分かった、これはお前たちの問題なんだな」

垣根「・・・じゃあな、二人とも」

垣根がゆっくりと歩き出す

向かうのは、第5学区のビル

そこに、敵がいるのだ

垣根(・・・もう、戻ってこれないかもしれないな)

そんなことを考えながら、彼は、彼の仲間は、闇に向かって歩き出す


垣根「・・・懐かしいな、この感じが」

心理「・・・えぇ」



160 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:48:51.75 ID:nz3CnKox0

麦野「・・・やっぱり来たか」

アイテムの全員は、風紀委員の支部から少し離れた裏路地を歩いていた

浜面「・・・ホント、想像通り動くよな」

フレンダ「麦野の読みが当たってた訳よ」

絹旗「どうしますか?もう少し・・・」

麦野「いいわ、ここで」

麦野がくるりと振り返る

足音も、同時に止まった

麦野「出てきなさいよ」

滝壺「いるのは分かってるよ」

絹旗「超早くしてください、こっちはイラついてるんですから」

少ししてから、男が姿を現した


「垣根帝督といい、どうしてお前らはそう急かすんだろうな」

大柄とは言わないが、ある程度長身の男

頬に少しだけタトゥーを入れている


161 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:54:08.24 ID:nz3CnKox0
麦野「・・・アンタが垣根と接触したヤツね」

桐山「おう、桐山大河だ・・・よろしく」

絹旗「自己紹介なんて超どうでもいいですよ、なんですか」

桐山「冷たいな・・・アンタ達、俺達の情報が欲しいんだろ?」

浜面「・・・わざわざ話に来たってわけか」

桐山「そういうことだ・・・」

桐山が一枚の地図を投げる

浜面がそれを受け取った

何か、大きな印がつけられている

浜面「・・・こりゃ第5学区の・・・」

桐山「そこが俺らの本拠地だ」

フレンダ「・・・まだ建設中な訳よ」

桐山「だからこそ、いいんだよ」

ニヤニヤと桐山が笑う

桐山「どうする?誘いに乗ってくれるか?」

麦野「ここがあなたたちの本拠地・・・なんて信じると思う?」

桐山「信じるしかないさ」


162 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 21:58:42.05 ID:nz3CnKox0
浜面「なんでわざわざ・・・」

桐山「何、スクールのほうにはもう仲間が行っているんだ」

麦野「!!」

桐山「グループも・・・そうだな、ちょっと狙撃して誘き寄せた」

絹旗「・・・超喧嘩を売ってますね・・・」

桐山「当たり前だろう?それが目的の一つだ」

麦野「私達をもう一度闇に引き込むつもりね」

桐山「だとしたら?無視してのほほんと生きるのか」

麦野「・・・ここでアンタをぶっ殺すってのも有よ」

桐山「そりゃ嬉しいな、人殺しが表で生きていく、か・・・面白い」

麦野「・・・」

桐山「伝えることは伝えた、後はお前達次第だ」

絹旗「ちょっと待ってください」

桐山「あぁ?」

絹旗「・・・あなた、どっかで会ったことありますか?」

桐山「・・・いや、ないね」

絹旗「・・・」

桐山「これで俺はやることはやった、じゃあな」

桐山が来た道を引き返して行く


163 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 22:02:02.94 ID:nz3CnKox0
絹旗「・・・グループもスクールも、あいつらの本拠地を・・・」

麦野「・・・行くわよ」

浜面「本気か?」

麦野「いい?どっちにしろ、あいつらはもう表に喧嘩は売ってる・・・しかも、わざと証拠を少し残して」

滝壺「だったら、表の人たちが暗部に来る前に片付けないと」

麦野「迷ってるヒマはないわ」

浜面「・・・分かった」

フレンダ「・・・第5学区・・・か」

麦野「行くわよ」

アイテムが動き出した

もう、動き出してしまったのだ

再び闇が、あの暗部が

幸せな日々を飲み込んでいく

麦野(・・・出来れば)


麦野(誰も殺したくないわね)




164 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 22:05:45.86 ID:nz3CnKox0

一方「あァ、そりゃご苦労ォ」

一方通行は、土御門と携帯で通話をしていた

番外「どうしたの?」

一方「・・・狙撃してきた野郎は相手の一員だった」

番外「そりゃそうだ」

一方「・・・土御門と結標の二人が、そいつを拘束したンだが・・・そいつは、情報を伝えるために狙撃したとか言ってたらしい」

番外「へぇ・・・誘き寄せるための狙撃、か」

一方「そいつ本拠地をわざわざ伝えに来たらしくてな」

番外「・・・それで?」

一方「第5学区にある建設中のビルだとよ」

番外「・・・行くの?」

一方「・・・決まってンだろ」

二人が第5学区へ向かうバスの時刻表を見る

番外「暗部へ直行のバスだね」

一方「・・・上等だ」


一方「・・・なンだってやってやる、ここに戻ってこれるならな」


165 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/30(日) 22:06:34.05 ID:nz3CnKox0
今日はここまで

暗部との戦いがメインだから、ここまでは特に急展開に

もうダメかもしれない


ではおやすみなさい


キャラ名なんて、もう適当


166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/30(日) 22:09:25.19 ID:+ZRSOfdAO
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/30(日) 22:09:50.97 ID:iORAZWcqo
168 :小豆にかわりまして名無しがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 00:28:43.41 ID:Dllwi7vh0
乙!
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/31(月) 00:39:43.89 ID:uhZW68dBo

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(;`・ω・)  。・゚    。・゚           。・゚。・゚・。       ・゚・。 ・゚・。・゚ ・。・゚・。・゚・ 。・゚ ・。・。・
/   o━ヽニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニフ
しー-J
         >>1のためにチャーハン作るお!
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 06:03:01.80 ID:qv2ef4hHo
   ○○○
  ○ ・ω・ ○ がおー
   ○○○
  .c(,_uuノ

              ○。  ○
    ミハックシュ   ○    o   ○
    ミ `д´∵° 。 o ○
  .c(,_uuノ  ○ ○   ○


           >>1  ○○○○
                 ○
    ∧∧         ○
    ( ・ω・)       ○    ○
  .c(,_uuノ      ○○○○○
171 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:32:41.75 ID:ngC1UpuW0
土御門「全く・・・気に入らないな」

結標「全くね」

土御門「・・・」

二人が、ある男を見下ろす

彼等を狙撃した人間だ

だが、今は意識を失っている

結標「・・・どう思う?」

土御門「本拠地に俺達を誘い出す・・・か」

結標「・・・それが本当の本拠地ならね」

土御門「・・・相手はいくつか本拠地を持っているはずだ」

結標「でも、人数はそんなに多くないんじゃないかしら」

土御門「・・・そうだな、暗部を再結成なんて大抵の人間は断るだろう」

結標「第一、暗部にいた人間はほとんどが死んでるわよ」

土御門「そうだな・・・」

結標「それで?きっと一方通行達は向かうはずよ」



172 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:33:18.24 ID:ngC1UpuW0
土御門「俺達はあくまで戦闘ではなくサポートに回るぞ」

結標「あら、私はそれでいいけど、あなたはいいの?」

土御門「わざわざ身を危険に晒す必要があるか」

結標「戦うのは一方通行に任せる・・・ね」

土御門「こんなところで万が一死ぬことになったら・・・妹が悲しむからな」

結標「はぁ・・・まぁいいわ、私は情報収集に徹することにするから」

土御門「俺もそうするかな」

結標「・・・じゃあどこに向かう?」

土御門「元々俺達が向かうはずだった場所だよ」

結標「風紀委員支部ね」

土御門「あぁ・・・行くぞ」

結標「飛ばす?」

土御門「・・・今は急ぎたいからな、頼む」

結標「えぇ」



173 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:33:46.66 ID:ngC1UpuW0


垣根「・・・第5学区・・・か」

心理「どうする?四人で行動するのは効率が悪いんじゃないかしら」

ゴーグル「なら、二手に分かれますか」

砂皿「・・・どのように分かれる」

垣根「俺は一人で十分だ、お前らは三人で動け」

心理「随分と余裕ね」

垣根「慣れてるんだよ」

ゴーグル「・・・あと15分ほどで着きますよ」

垣根「・・・どの程度のビルなのか気になるな」

砂皿「・・・敵が本拠地にしているのだ、相当広いと考えたほうがいい」

垣根「そうだな・・・」

心理「・・・ねぇ、砂皿」

砂皿「なんだ」

心理「あなた、ステファニーはどうしたの」


174 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:34:26.26 ID:ngC1UpuW0

砂皿「置き手紙をしてきた、問題ない」

ゴーグル「なんて置き手紙ですか?」

砂皿「追うな、と」

垣根「・・・それ、今頃ステファニーの野郎発狂してんじゃないか」

砂皿「・・・大丈夫だ」

心理「はぁ・・・早く帰って安心させないとね」

砂皿「そうだな、そうしよう」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿」

ゴーグル「なんすか」

垣根「てめぇ・・・フレンダはよかったのか」

ゴーグル「・・・いいんすよ、フレンダさんはアイテムですから」

心理「・・・あなたが守りたいのは・・・」

ゴーグル「これは暗部の問題です、プライベートは挟みませんよ」

垣根「・・・あぁ、そうだな」

砂皿「・・・無駄話など必要ない、作戦を」


175 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:34:53.36 ID:ngC1UpuW0
垣根「・・・俺達の目的は敵の殲滅、それだけだ」

心理「あら、情報収集は?」

垣根「そういうのはグループの土御門がやるだろ」

ゴーグル「・・・他人任せですか」

垣根「馬鹿か、土御門だって自分の役割くらいは分かってるはずだ」

砂皿「随分とその男を信用しているようだな」

垣根「・・・友達だからな、表では」

心理「そうね・・・彼ならきっと分かってるわよ」

ゴーグル「・・・でも一方通行は戦線に立つでしょうね」

垣根「アイテムは恐らく、全員が前線に出るはずだ」

ゴーグル「・・・暗部が勢揃いっすね」

心理「えぇ・・・」

垣根「分かってるな、決して表は巻き込むな」

砂皿「あぁ」

垣根「・・・ヤツらの思い通りには出来ねぇ」

四人が足を止める

目の前には建設中のビルがあった

いや、ビルというよりもショッピングモールのようにさえ見える

まだ細かい外装が作られていないため分かりにくいが


176 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:35:22.62 ID:ngC1UpuW0
垣根「・・・ここか」

心理「一歩踏み出せば相手のテリトリーよ」

砂皿「気を引き締めて行くぞ」

ゴーグル「もちろん」

垣根「・・・心理定規、ゴーグル馬鹿、砂皿」

心理「何?」

垣根「生きろ」

心理「・・・分かってる」

ゴーグル「垣根さんも」

砂皿「ではまたな」

垣根「あぁ」

入口から入り、垣根は右に、残りは左に向かう

かなり広い内装だ

地下にさえ道は続いている

相当大きなショッピングモールのようだ

垣根「・・・さーて」


垣根「やってやろうか・・・殲滅戦を」


177 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:38:48.16 ID:ngC1UpuW0

初春「あ、白井さん・・・どうでした?」

黒子「・・・」

初春「?白井さん?」

黒子「・・・ダメでしたの、すでに能力者は逃亡してましたの」

初春「そうですか・・・その能力者、もしかして爆破事件と関係あったりしてー・・・なーんて、ないですよね」

黒子「・・・えぇ」

初春「あれ?そういえば削板さんは?」

黒子「少し立ち寄るところがあると別行動になりましたの」

初春「へぇ・・・」

二人は風紀委員の支部にいる

少し慣れない支部だが、今はここで行動するしかないのだ

黒子「・・・初春」

初春「なんですか?」

黒子「・・・あなたはあまり、この件に首を突っ込まないほうがよろしいかと」

初春「な、なんでですか!」

黒子「ふふ・・・あなたはあまり戦闘には向きませんし、一度突っ走ると周りが見えなくなりますから」

初春「ひ、ひどいです白井さん・・・」

黒子「この件はわたくしが上手くやりますの」

初春「じゃあ私はサポートに回りますね」

黒子「えぇ」



178 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 09:42:04.48 ID:ngC1UpuW0
初春「・・・それにしても、急な事件ですよね」

黒子「あら、幻想御手、グラヴィトン、そんな事件は全ていきなり起きてましたわ」

初春「・・・0930事件なんてのもそうですね」

黒子「事件なんて、伏線を張られてジワジワ起きるものではありませんの・・・ある日突然、それこそ影のように忍び寄ってきますわ」

初春「・・・なんだか、白井さん・・・」

黒子「なんですの?」

初春「詩人になったみたいですね!」

黒子「・・・は、はぁ・・・初春はいつでも初春ですの」

初春「そ、それどういう意味ですか!?」

黒子「まぁまぁ・・・それより、少し探したい資料があるので・・・」

初春「あ、じゃあ手伝い・・・」

黒子「いえ、初春はこのまま続けてくださいな」

初春「分かりました・・・それじゃ、また後で」

黒子「えぇ」

黒子が支部のドアを開ける

黒子「・・・出来れば」

初春「?何か・・・」


黒子「・・・あまり真相には近づかないでくださいまし」


179 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:25:01.55 ID:ngC1UpuW0


削板「・・・」

削板は一人、歩いていた

大きな無力感が体を締め付ける

目の前で友達が、再び闇に堕ちてしまった

それに手を伸ばすことが出来なかったのだ

彼は、強くなったつもりでいた

スキルアウトを何人も立ち直らせてきた

不良に絡まれていた学生を何人も助けたこともある

能力もLEVEL5だ

彼は、強くなったつもりだった

だが所詮、それは思い込みだったのだ

削板「・・・俺は何も出来なかった」

立ち止まり、そんなことを呟く

今にも夜の空気に消えてしまいそうな声だ

普段の彼からは考えられないほどに

削板「・・・」

何人かの通行人と擦れ違った

彼等は明るい世界で笑って暮らしている

削板の知っている垣根や心理定規もそうだった


180 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:25:31.11 ID:ngC1UpuW0
削板「・・・なんで・・・」

なぜ彼等は自分を、自分達を頼ってくれなかったのか

暗部に巻き込みたくないから、そんなことは分かっていた

だが、それでも納得はいかない

削板「・・・」

吹寄「あら、あなた・・・」

削板「ん・・・なんだ、たしか上条達の・・・」

姫神「・・・残念ながら上条君は学校をサボっている」

青ピ「君はこんなところで何してるん?」

削板「いや・・・ちょっと散歩だよ」

吹寄「そうだ・・・垣根がどうしてるか分からない?」

削板「・・・分からない、悪いな」

姫神「土御門君も。学校を体調不良で休んだ」

青ピ「なんや怪しいんやけどなぁ」

削板「体調不良なんだろ?」

青ピ「心理定規ちゃんも休んだんやで!?怪しいやん!」

削板「・・・そうか」

吹寄「・・・なんだか元気がないみたいだけど・・・」

削板「悪いな、色々あるんだよ」


181 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:25:56.75 ID:ngC1UpuW0
吹寄「ふーん・・・」

削板「・・・なぁ」

青ピ「なんや?」

削板「もし・・・もしもお前達の友達がさ」

姫神「うん」

削板「自分に隠して・・・大きな悩み事を抱えてたらどうする?」

吹寄「そんなの・・・助けるに決まってるじゃない」

削板「相手が・・・友達が、手を出すなって言ってもか?」

青ピ「当たり前やん」

削板「!」

青ピ「ボクにはよく分からないんやけどな・・・」

青髪が頬をかく

少し照れ臭いのだろうか

青ピ「それでもボクは助けるはずや」

削板「・・・なんで」

青ピ「理屈とか理由なんていらないんやと思うけどな」

削板「関わるな、って言われても・・・」

青ピ「君は友達と笑ったりふざけたり喧嘩したりするとき、理屈とか理由と
か考えるん?」

182 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:26:30.44 ID:ngC1UpuW0
削板「いや・・・考えないな」

青ピ「友達って細かいことなんか考えんでも、何となくでも一緒にいたいヤ
ツのことを言うんやで?」

削板「・・・」

青ピ「せやったら、助けるのにも理由なんていらんやんか」

削板「・・・何となくで助けていいのか」

青ピ「君がそうしたいんやろ?相手の理屈は散々聴かされたんやろ?」

削板「あぁ・・・」

青ピ「なら今度は君が押し通す番やで」

削板「・・・押し通す、か」

青ピ「相手が理屈で語って距離を置くつもりなら、君は友情を押し通せばい
いんやで」

削板「・・・」

青ピ「理由なんていらないんや、もしも理由をつけるとしたら・・・」


青ピ「友達だから、それだけでええやん」

吹寄「・・・尤もなこと言うわね」

姫神「でも。間違ってはいない」

青ピ「あっはぁ!女の子に褒められるなんてボク、幸せや!」


183 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:26:57.21 ID:ngC1UpuW0
姫神「それがいらない」

削板「・・・」

削板がくるりと道を引き返す

そちらは、様々な場所に繋がっている

地下街

風紀委員支部

学校

そして、第5学区

青ピ「・・・ボクにはよく分からないんやで、君が何を抱えてるか」

削板「そうかもな」

青ピ「でも悔しくて地団駄踏んでも前には進めないんやで」

削板「・・・押し通す、か」

削板が笑う

彼は一体何を悩んでいたのだろうか

今までの彼からは考えられないほど弱気になっていた

理屈だけで物事を捉えていた

自分の気持ちなんて考えていなかった


184 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:27:23.97 ID:ngC1UpuW0
削板「・・・ありがとよ」

青ピ「垣根に会ったら学校来いって言っててな、吹寄が喜ぶんやから」

吹寄「よ、喜ばないわよ!」

削板「・・・伝えてくる」

彼の目には、ただ愚直な感情が宿っていた

周りから見れば意味のない行動かもしれない

だが彼はやるのだ

出来なくても、やってみせる

馬鹿、暑苦しい、偽善者

なんと呼ばれても彼は構わなかった

削板「でもな・・・臆病者とだけは言われたくない!」

駆け出したのは、無意識だった

闇に向かってただ駆け出す

自分ももしかしたら、平和な日常を失ってしまうかもしれない

削板「だからなんだ!」

彼はそんなこと、興味なかった

表と裏とか、暗部が闇だとか

そして、垣根の悲しい考えだって

興味がなかったし、理解も出来なかった


185 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:27:50.01 ID:ngC1UpuW0
削板「垣根・・・お前は俺達を守るために自分だけ暗部に堕ちた」

削板「十分だ・・・お前はかなりいい男だ、根性がある!」

削板「だったら俺も根性を貫き通す!」

削板「今度は俺が救うために暗部に・・・いや!」

ただ走る

友達の元に


削板「お前の隣に行ってやる!」




一方「・・・ここか」

番外「不気味だね」

二人の目の前には巨大なショッピングモールが広がっていた

まだ建設中だが、もしも完成すればかなり話題になるだろう

それほど大きな建物だ

一方「・・・俺達は地下に行くぞ」

番外「?なんか他の誰かがいる、みたいな言い方だね」

一方「・・・あいつらがいるンだよ」

番外「・・・垣根達?なんで分かるの?」

一方「お前だって分かってンだろ」


186 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:28:16.24 ID:ngC1UpuW0
番外「・・・何となくはね」

一方「・・・わざわざこンなでけェ建物を本拠地にするなンてな」

番外「・・・土御門達は?」

一方「あいつらはどォせ情報収集だろ」

番外「戦力にならないの?」

一方「暗部には超能力者が三人いるンだよ、あいつら巻き込み必要がねェ」

番外「・・・じゃ、頭使うのはあの二人に任せますか」

一方「行くぞ」

一方通行が建物の敷地内に足を踏み入れた

もちろん、細心の注意を払いながら

一方「・・・番外個体、地雷とかねェだろォな」

番外「・・・うん、レーダーには反応なし」

一方「・・・」

首元のチョーカーのスイッチを入れる

念には念を入れて、だ

番外「・・・にしても、不気味だね」

一方「建設中の建物なンざそンなもンだ」


187 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:28:59.02 ID:ngC1UpuW0
番外「・・・!誰かいる!」

一方「あァ?」

一方通行が目を凝らす

建物の入口からすぐの所に男がいた

桐山「・・・一方通行だな」

一方「てめェも暗部の野郎だな」

桐山「もちろん、こんなところに普通の学生は来ないさ」

一方「どォやってここを占拠した」

桐山「ほとんど機械に任せて建設してるんだ、機械にハッキングすればいい」

一方「管理会社にはちゃンと機械が作動してるよォに見せ掛ける・・・中々有能なハッカーがいるみたいだな」

桐山「何、能力だけが全てどはないのだよ」

一方「知るかよ」

一方通行が軽く、近くの鉄骨に足を当てる

ほんの一瞬

桐山のすぐ右を鉄骨が飛んでいく

桐山「・・・ベクトル変換」

一方「よく知ってるな・・・まァ今じゃ有名か」


188 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:29:29.68 ID:ngC1UpuW0
桐山「随分面白い能力だ・・・デフォで反射に設定されているんだろ」

一方「詳しいな」

桐山「お前のことはよく知ってるよ」

一方「そォか」

桐山が銃を構える

だが、そんなものは一方通行には通用しない

一方「あァ?」

桐山「・・・」

無言のまま、桐山が引き金を引いた

一方通行の体に当たったはずの弾丸

それは、全く関係のない方向に弾き飛ばされる

一方「なンのつもりだ」

桐山「俺に向かって反射しなかったな」

一方「だからなンだ」

桐山「人を殺すのが怖くなったか?」

一方「ナメンなよ」



189 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:30:02.82 ID:ngC1UpuW0
桐山「・・・表の世界に戻ったつもりか一方通行」

一方「黙れ」

桐山「・・・俺の能力は音波操作・・・それも、波の高さやタイミングを変えることしか出来ない」

一方「ンなの俺の敵じゃねェ」

桐山「分かっているさ」

番外「ねぇねぇ一方通行、さっさと・・・」

桐山「お前は妹達だな」

番外「!」

桐山「御坂美琴の体細胞クローン、一方通行のために作られた偽の生命」

一方「黙れ、今度はてめェを殺すことになる」

桐山「イヤではないか?一方通行がいたからお前達の命わ弄ばれた」

番外「ミサカはこの人に助けられた、だからイヤなわけないじゃん」

桐山「・・・お前は馬鹿だな」

番外「何?」

桐山「そんな感情論だけで一方通行を許せるのか」

一方「・・・」


190 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:30:43.98 ID:ngC1UpuW0
一方通行が地面を蹴る

信じられない速さで、桐山の隣に移動したのだ

桐山「・・・うかつに近づくな」

一方「反射があンだよ」

桐山「・・・俺の能力は全くお前に歯が立たない・・・だがな」


一瞬、一方通行の体が痛みを覚える

一方「!」

桐山「・・・牙を剥くだけなら出来る」

一方「何をした・・・」

桐山「お前の反射は・・・不必要な物を完全に反射しているだけだ」

桐山がニヤリと笑う

彼の「声」はまだ聞こえる

桐山「見たことがないか?ワイングラスを声で割る人間を」

一方「全ての物体には、振動しやすい周波数がある・・・音波じゃねェが電子レンジと似たよォな原理だ、振動を続ければいずれガタがくる」

桐山「共鳴振動とか言うらしいが・・・俺は音の高さを操れるんだ」

一方「!声の周波数を変えやがったな・・・」


191 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:31:16.33 ID:ngC1UpuW0
桐山「人間だって共鳴振動が起きる・・・お前の体は今、内部から音波によって破壊されている」

一方「なら簡単だろォが」

一方通行が「声」を反射対象にする

桐山「・・・そうだな、それじゃ俺はお前に攻撃が出来ない・・・」

一方通行には桐山の声は聞こえない

だがなぜか、桐山の表情だけであることを理解した

この男は、何かを考えている

桐山「・・・俺だけの声、なんて曖昧な反射は難しいだろ?周波数を割り出しても俺はそれを変えるから意味がない」

桐山「全ての声を反射してるなら・・・」


桐山「愛しい女の叫び声も聞こえないな」

番外「!」

突如、番外個体の腕が誰かに捕まれた

風間「捕まえた!」

番外「てめ・・・」

風間「油断したのが運のつきなんだよ!」



192 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:31:45.64 ID:ngC1UpuW0
風間が番外個体にゼロ距離から風撃を撃ち出す

番外「がはっ・・・」


一方「・・・あァ?」

何か異変が起きている

そう気づいた一方通行がくるりと振り返った

一方「!番外個体!」

風間「動くんじゃねぇ!」

番外個体の首筋に、風間が銃を突き付ける

風撃のせいか、番外個体はぐったりとしている

一方「てめェ番外個体に何しやがった!」

声の反射を切り、一方通行が怒鳴る

風間「動くなって!こいつは人質なんだぜ?」

一方「っ・・・」

桐山「いいタイミングだ風間」

風間「垣根帝督にゃこてんぱんにやられたけどな・・・今回はいい感じだろ!?」


193 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:33:03.03 ID:ngC1UpuW0
一方「・・・番外個体を放せ」

桐山「それは無理だな」

再び、一方通行の体に痛みが走る

桐山の能力によって体の内部から振動させられているのだ

一方「・・・」

桐山「垣根帝督がこっちに向かって来た・・・そうだな、入口からすぐの場所にずーっと待機してたんだぜ、俺達」

一方「だからなンだよ・・・」

桐山「・・・なんで俺達が垣根とドンパチやらなかったか分かるか?」

一方「・・・知るか」

桐山「お前とドンパチやるためさ・・・正確には俺の事情なんだがな」

風間「全くだ、俺は付き合わされただけだって」

桐山「いいだろ?グループの主戦力の一方通行をここで潰せるんだ」

風間「仙道のヤツもさすがに認めてくれるだろ」

桐山「スクールの一人にやられた男に認められてもな」

風間「そりゃそうだな」

一方「・・・なンで俺だけを狙った」

桐山「お前に恨みがあったからさ」


194 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:33:35.71 ID:ngC1UpuW0
一方「俺はお前らみてェな野郎は知らないンだよ・・・」

ぐったりした番外個体を見つめながら一方通行が呟く

自分の一番大切な人が、人質にされている

それが、どうしようもなく一方通行をイラつかせる

桐山「そうだな・・・お前は知らないだろうな」

一方「・・・」

桐山「だが、お前だって・・・少しくらいは関わっているんだ」

一方「知るか、てめェらの事情を一一気にしてられねェンだよ」

風間「おいおい動くな!!ここに人質が・・・」

番外「・・・誰が・・・人質だって!?」

風間「!」

風間が銃を突きつけていた番外個体

彼女は気を失っていたはずではなかったか

番外「ミサカをナメすぎだね!!!」

番外個体の体から、強力な電撃が発せられる

風間「ぐぁぁぁ!!!!」

それは、並のスタンガンよりも強力なものだった


195 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:34:04.17 ID:ngC1UpuW0
風間の体が、一瞬にして吹き飛んだ

桐山「!!あの馬鹿・・・」

一方「・・・どこ見てンだよクソ野郎が!!!」

桐山「!!」

一方通行が桐山の体に軽く拳を当てる

だが、そこにあるのは巨大なベクトルだ

反作用、重力、引力、推進力

さまざまなベクトルをただ一点に集中して打ち出す

一方通行が操るのはベクトルの向き

大きさを操るわけではないのだ

それでも、彼は学園都市最強の超能力者

並の能力者が敵う相手ではない

桐山「がぁぁぁっ!!!」

一方「ほらほらァ!!!さっきまでの威勢はどォした!?」

一方通行が、風のベクトルを操る

それは、風間の打ち出す風撃の何倍も強い威力だ

桐山「ごほっ・・・」

桐山の口から血があふれ出す


196 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:34:31.81 ID:ngC1UpuW0
だが、一方通行は止めない

一方「番外個体を人質にした時点で・・・お前らは死体決定なンだよ」

番外「おー、カッコイー」

一方「・・・あァ?聞いてねェか」

すでに二人の敵は、意識を失っている

暗部というには非常に甘い人間たちだ

すぐに油断するし、すぐに負ける

こんな人間たちが暗部を名乗っているのか、と一方通行は頭を抱える

一方「・・・行くぞ、こいつらはどォでもいい」

番外「えー?なんで?」

一方「・・・こいつらにも、一応頭領がいるだろ」

番外「そいつを叩くの?」

一方「そォしねェとどォしようもねェだろ」

番外「じゃ、行きますか」

後ろに転がっている相手を気にせず、二人は進んでいく



197 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:35:02.64 ID:ngC1UpuW0



麦野「・・・すでに中じゃドンパチやってるみたいね」

絹旗「超めんどくさいですね」

アイテムの一員は、建物の入り口をくぐったところだった

そして、すぐに二人の男が倒れているのに気づいた

滝壺「・・・こっちの人、さっきの・・・」

浜面「・・・こんなにめちゃくちゃなやり方・・・一方通行か垣根だな」

麦野「・・・あいつらは到着済み・・・か」

フレンダ「どうする?このまま行けば私達何もしなくて済むんじゃない?」

麦野「・・・このまま、ねぇ・・・」

絹旗「超引っかかりますね」

浜面「何がだよ?」

絹旗「わざわざ入り口に二人も護衛を置きますか?信じられませんよ」

滝壺「・・・中に、もっと大きな戦力があるんだと思う」

浜面「大きな戦力?能力者か」

フレンダ「どっちにしろ、警戒して進む訳よ」

麦野「いい?私達は固まって動きましょう」


198 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:35:29.02 ID:ngC1UpuW0
絹旗「いいんですか?」

麦野「垣根はどうせ一人で動いてるはずよ・・・派手にやるのが好きなヤツだから」

フレンダ「・・・となると、全部で4チームかな」

絹旗「スクールは残り3人で動くでしょうからね」

麦野「・・・相手はどれくらいいるか分からないけど、負けはしないはずよ」

浜面「一方通行は大丈夫なのか?あいつ能力に制限が・・・」

麦野「大丈夫よ、どうせ妹達の彼女がついてるはずだから」

浜面「・・・じゅ、充電できるのか?」

麦野「多分ね・・・!!!!」

麦野が突然、顔色を変える

麦野「みんな伏せて!!!」

フレンダ「?」

麦野の視線の先を全員が追う

そこには、昔見たことのある機械が浮かんでいた

「六枚羽」

ただ、殺戮を行うためだけに作られた機械が宙に浮いていた

一つだけではない

幾つも、不気味なほど綺麗に整列しながら飛んでいた


199 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:36:01.85 ID:ngC1UpuW0
浜面「ろ・・・」

そのうちの一体が、アイテムの姿を捉えた

そして

絹旗「!!!来ました!!」

アイテムを殲滅するために、六枚羽が動き出した




心理「・・・?なんだか下が騒がしいわね」

ゴーグル「・・・垣根さんですかね」

砂皿「・・・いや、人数が多いようだ」

心理「・・・アイテムかしら」

スクールの三人は、ショッピングモールの三階にいた

まだエスカレーターは動いていないため、階段のようにして登ったのだ

心理「・・・ホント、広い建物ね・・・」

ゴーグル「・・・そういやニュースでやってましたよ、ここの特集」

心理「たしか全長3kmのショッピングモールだったかしら」

砂皿「・・・一つの街になっているな」



200 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:36:28.62 ID:ngC1UpuW0
心理「・・・学園都市でも有数のショッピングモールよね」

ゴーグル「完成すればさぞかし大儲けできるでしょうね」

心理「・・・完成すれば、ね」

ところどころ鉄骨が剥き出しになっている

何か分からないが、工事用の目印もつけられている

心理「・・・ここまで広いなら、相当派手に戦えるわね」

ゴーグル「・・・心理定規さんは派手にやっちゃダメっすよ」

心理「あら、そうなの?」

ゴーグル「・・・直接的な戦闘は苦手じゃないですか」

心理「苦手っていうよりも、向かないわね」

砂皿「・・・これでも持っていろ」

砂皿が心理定規にレディースの拳銃を差し出す

心理「あら・・・なんでこんなの持ってるのよ?」

砂皿「念のため持ってきた・・・お前は持っていないだろうからな」

心理「ありがとう・・・気が利くじゃない」

ゴーグル「・・・砂皿さんは大丈夫っすか?


201 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:37:00.85 ID:ngC1UpuW0
砂皿「こちらは大丈夫だ」

砂皿がなにやら小型の拳銃を見せる

ゴーグル「・・・あの、スチェッキン・・・」

砂皿「近接戦闘ならば小型のほうがいいのだ」

ゴーグル「は、はぁ・・・」

心理「・・・しっ、誰かいるわ」

砂皿「・・・」

なにやら柱の影から、こちらを伺っているものの姿が見える

一人だけだ

ゴーグル「・・・隠れなくてもいいっすよ、こっちは正面からぶつかりますから」

「・・・そう」

姿を現したのは、一人の女性だった

脱色しているのか、茶色の髪を短く切りそろえている

心理「・・・あなたも暗部の人間ね」

霧野「霧野沙々よ、よろしく」

ゴーグル「・・・すぐにお別れですけどね」



202 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:37:38.61 ID:ngC1UpuW0
霧野「あら、そんなこと言わないでよ・・・」

霧野という女が、何かを取り出す

それは

ゴーグル「チェ、チェーンソー!?」

心理「野蛮ね・・・」

大型のチェーンソーだった

霧野「私の能力は肉体強化なの・・・だから、拳銃なんてのよりもこういうののほうが合うわけ」

ゴーグル「ちっ・・・」

ゴーグル男が駆け出す

彼も、ゴーグルによって筋力が増幅されているのだ

ゴーグル「先手必勝・・・」

霧野「ダメダメ、そんな単調な攻撃じゃ!!」

霧野がチェーンソーを振り回す

それは、すでに切り裂くための道具ではなくなっていた

ただ、周りのものを叩き潰すための武器になっている

ゴーグル「おわっ!!」


203 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:38:13.54 ID:ngC1UpuW0
柱の一本が、半分ほど抉られる

女とは思えないほどの力だ

ゴーグル「な、なんて・・・」

霧野「無粋?まさか、破壊っていうのは創造と同じほど素敵なことよ」

ゴーグル「くっ・・・」

霧野「それにね!!!」

霧野がチェーンソーをゴーグル男に向かって投げる

ゴーグル「!!」

砂皿「ゴーグル!!」

ゴーグル男の頬が少しだけ切れる

それはチェーンソーが当たったのではない

ただの風圧による傷だった

ゴーグル(あ、あの重さのチェーンソーを・・・!!)

霧野「あら、外れちゃった!!」

ゴーグル「ちっ・・・」

ゴーグル男が体ごと霧野に突っ込んでいく


204 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:38:43.26 ID:ngC1UpuW0
心理「ゴーグル君!!」

霧野「全く・・・!!!」

霧野が拳を振りかざす

霧野「そんな直線的な攻撃で、正面からぶつかるつもり!?」

ゴーグル「!」

二人の拳がぶつかる

先に顔をしかめたのは、ゴーグル男だった

ゴーグル(く・・・!!なんなんすかこの・・・)

霧野「私はね・・・LEVEL4なの」

ゴーグル「!?」

霧野「あなたみたいな・・・ただの筋力だけを増強してるあなたみたいな卑怯者と一緒にしないで!!」

ゴーグル「圧し・・・」

霧野「はぁっ!!」

ゴーグル「ぐぁぁっ!!」

大きな衝撃と共に、ゴーグル男が吹き飛ばされた

何か不可思議な力が加わったわけではない

ゴーグル男の最大の武器である破壊力が、ただ霧野のそれを下回っただけだ


205 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:39:12.84 ID:ngC1UpuW0
霧野「ふん!!所詮そんなものよ!!あなたのそれは、機械で筋力を補助してる・・・もちろん、誰だって扱えるものではない・・・」

砂皿「・・・どうする」

心理「・・・全く、ゴーグル君ったら・・・ダメじゃない」

心理定規がゴーグル男に近づく

ゴーグル「う・・・あ、ありゃダメっすね・・・」

心理「ほら、変わってあげるから」

ゴーグル「お願いします・・・」

ゴーグル男が苦笑する

霧野「あら、私の相手になってくれるの?」

心理「私の能力は知ってるかしら」

霧野「心理定規・・・相手の心の距離を操ることが出来る」

心理「あなたの・・・そうね、大切な人は誰かしら」

霧野「それくらい分かるんじゃないの?」

心理「・・・その人間との距離単位は・・・10・・・」

心理定規が笑う


206 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:39:39.95 ID:ngC1UpuW0
霧野「操作する?私の心を」

心理「・・・やってみましょうか?」

霧野「やめておきなさいな、そんなことしても意味は無いわよ」

心理「・・・そうかしら」

霧野「・・・」

霧野の感情が、偽りの感情に塗りつぶされる

彼女にとって一番大切なのは「友人」だった

彼女のたった一人の友人

その友人との距離単位は10

非常に近しい存在だ

そして心理定規と霧野の心理距離は、10に設定された

心理(これで・・・)

霧野「・・・どうして」

心理「!!!」

霧野「どうして裏切ったのよ!!」

霧野がチェーンソーを拾う

いや、拾ったと同時に心理定規に向かって投げ飛ばした


207 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:40:06.17 ID:ngC1UpuW0
心理「何・・・」

霧野「どうして・・・どうして!?」

心理「ちっ・・・」

心理定規の考えていたことと違った

彼女の能力は、たしかに便利なものだ

どんなに力のある人間でも、普通なら近しい人間を攻撃することは出来ない

だだ、時として身近な人間が敵に回ったことに激昂する人間もいるのだ

霧野は、そういった類の人間だった

霧野「どうして裏切ったのよ!!!」

すさまじい形相で、霧野が心理定規の脇腹に蹴りを入れる

心理「がっ・・・」

ゴーグル「心理定規さん!!」

砂皿「くっ・・・」

砂皿が拳銃で応戦する

だが、霧野はそれをものともせず突っ込んでくる


208 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:40:38.94 ID:ngC1UpuW0
砂皿「化け物か・・・」

霧野「どうして!!!」

心理「・・・」

心理定規が能力を解除する

今の二人の距離は、先ほどまでの平常時と同じ

霧野「・・・」

心理「はぁ・・・くっ・・・」

脇腹がジンジンと痛む

もしも、もう少し当たり所が悪ければ肋骨を折られていただろう

心理「・・・ゴーグル君・・・訂正、私も敵わないかも」

ゴーグル「マジっすか・・・」

霧野「・・・よくもやってくれたわね・・・心理定規ォ!!!!」

心理「!」

霧野がチェーンソーを振りかぶる

霧野「死ね!!!」

ビュン、と風を切る音がする



209 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:41:04.96 ID:ngC1UpuW0

地面を無様に転がり、どうにか心理定規がそれをかわす

だが、まだ追撃は止まない

ゴーグル男が拳で止めようとするが、霧野はそれを蹴りの一発だけで退けてしまう

砂皿の放った弾丸も、チェーンソーに弾かれる

心理(・・・相性の悪い敵ね・・・最悪よ)

霧野「もらった!!」

霧野の振りかぶったチェーンソーは、心理定規の真上に来ている

心理「!」

霧野「これで・・・」

おしまいになるはずだった

だが、その前に霧野の体が吹き飛んだ

どこから飛んできたのか分からない

「説明できない力」に吹き飛ばされたのだ



210 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:41:38.22 ID:ngC1UpuW0



削板「・・・黒子!!」

黒子「・・・あら、軍覇さん」

黒子は風紀委員の支部から抜け出し、一人で夜道を歩いていた

初春には調べ物だ、と言ったがそんなつもりはなかった

垣根に関わるな、と言われた以上彼女は関わる気はなかったのだから

削板「よかった・・・偶然見つけられたよ・・・」

黒子「・・・どうかされましたの?」

削板「第5学区に行くぞ!!」

黒子「第5・・・!!」

黒子が思い出す

たしか、あの暗部の男は第5学区に本拠地があると言っていたのではないか

黒子「待ってくださいな!!垣根さんはわたくし達に・・・」

削板「あいつは言ったな、暗部に関わるなと」

削板がトントン、と靴を地面にぶつける

削板「だが、自分たちに関わるなとは言っていない・・・あいつらがどこにいようが、友達なのには変わりないだろう?」


211 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:42:09.61 ID:ngC1UpuW0
黒子「ですが・・・」

削板「俺は決めた、あいつらを救う・・・俺が力を持ったのは、誰かを守るためなんだ」

拳を握りながら、削板が呟く

そこには、今は誰の手も握っていない

これから、友達の手を握りに行くのだから

削板「黒子、俺はここでお前が待っていることを選択しても責められない・・・正直、そっちのほうが安全だ」

黒子「・・・軍覇さんは行くのですね」

削板「あぁ、根性を見せてやる」

ニコリ、と削板が笑う

誰よりも力強い笑みだ

そんな笑みが、黒子にも勇気を与える

黒子「・・・軍覇さん、ここから第5学区まではまだ遠いんですのよ」

削板「それもそうだな・・・本気で走るか・・・」

黒子「体力はとっておかないといけませんわ」

212 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:42:39.11 ID:ngC1UpuW0
黒子が、そっと削板の手を握る

削板「・・・黒子」

黒子「わたくしが空間移動を使いますの」

削板「危険だぞ?」

黒子「あら、わたくしだっていろいろと危険な事件に巻き込まれたことはありますの」

削板「・・・そうか」

黒子「行きますわよ、軍覇さん」

削板「あぁ」

二人は闇の中へと向かう

堕ちるのではなく、ただ向かう

大事な友達を救うために

彼らの手を握るために



213 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:43:05.14 ID:ngC1UpuW0
心理「・・・まさか・・・」

心理定規が振り返る

今の力には、見覚えがあった

全く関係ないところから、全く説明できない力が降り注ぐ

それは、彼女の友達の能力だった

削板「・・・危ない危ない」

黒子「いいタイミングでしたの」

心理「あなた達・・・」

霧野「だ、誰よ!?暗部にいた人間じゃないわね!?」

削板「ん?なんだ、相手が変わってるな」

黒子「この前の男ではありませんの」

ゴーグル「・・・白井さん・・・でしたっけ・・・」

黒子「えぇ・・・お久しぶり、というには早すぎる再会ですのね」

ゴーグル「どうして来たんすか・・・」

心理「そうよ・・・あなた達が関わっていい問題じゃ・・・」


214 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:43:31.94 ID:ngC1UpuW0
霧野「無駄話は後にしてくれないかしら!?」

霧野が再びチェーンソーを振るう

だが、またも「説明できない力」によって吹き飛ばされる

霧野「がはっ・・・」

削板「友達を助けるのに理由がいるか!?」

心理「それだけでここに来たの!?これからの人生が狂うかもしれないのよ!?」

削板「あぁそうだな!!」

霧野に攻撃を加えながら、削板が返答する

その声に迷いなど見られなかった

それが、心理定規の心を揺さぶる

心理「どうして・・・あなた達が関わっていい世界じゃないのよ!!」

削板「そんなことは知らねぇな!!!」

霧野「この・・・っ!!」

チェーンソーが遠くへ弾き飛ばされる

霧野の唯一の武器であったチェーンソーが


215 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:46:39.06 ID:ngC1UpuW0
霧野「くっ・・・」

削板「俺の友達に手を出した罪はでかいぞ!!」

霧野「友達・・・?あっはは!!!あなた、そこの女達が何をしたか知ってるの!?」

削板「あぁ知ってるね!!」

霧野「それでも友達ですって!?バカみたい、まともな神経じゃないわね!!」

削板「そうだ!!俺は馬鹿で結構だ!!」

心理「削板く・・・」

削板「俺の友達を見捨てることがまともっていうならな!!俺はまともなんかじゃなくていいんだよ!!」

削板が拳を前へ突き出す

それだけで、霧野の体が遠くに吹き飛ぶ

霧野「くっ・・・そんな感情論で語れるような世界じゃないのよ!!」

削板「そうかもしれないな!!この世界は真っ暗だ、綺麗事だけじゃ測れないし、感情論だけじゃこの世界は語れないかもしれない!」

否定的なことを口にしながら

しかし、削板は立ち続ける

心理「やめなさい・・・」

黒子「・・・心理定規、あれがわたくし達の出した答えですの」

心理「・・・」


216 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:50:32.65 ID:ngC1UpuW0
削板「だからって諦めていいとは思えないんだよ!!俺には!!」

霧野「そんな綺麗事をこの世界に持ってこないでよ!!!」

霧野が削板に突進する

捨て身の攻撃だ

彼女には、削板のような人間が眩しすぎたのだろう

暗部に堕ちる人間には、少なからず何か理由があるのだから

削板「・・・そうだ、この世界には綺麗事なんて通用しない・・・綺麗事では語れないのが暗部だ」

削板が、そっと拳を振りかざす

彼は、抗い続ける

たとえ、それが平和な日常を壊すのだとしても

削板「でもな!!!」

霧野の体と、削板の拳

「説明でき得る限り、最も強大な力」と「説明すら出来ない力」がぶつかる

削板「そんなことを俺は講釈しに来たんじゃないんだ!!!」

心理「・・・削板君・・・」

ゴーグル「・・・」


217 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:56:31.42 ID:ngC1UpuW0
削板「削板軍覇はな!!感情論だけで語れる熱い男だ!!」

削板「夢、愛、友情、希望!!負けん気、ガッツ、情熱、そして!!!」

削板の拳が霧野の体を押し返す

信じられないといった顔を浮べる霧野

削板「俺は!!何よりも根性を愛する男だ!!」

霧野の体が柱にぶつかった

衝撃で頭が揺れる

その揺れる頭で聞いたのは、ただ一人の馬鹿の言葉だった

削板「ここにいるのはスクールでも、心理定規でも、暗部の人殺しでも、お前の敵でもない!!」

削板「たった一人の俺の友達だ!!その友達を救うためなら、俺はなんだってやってやる、なんだって手に入れるしなんだって失ってやる!!」

バン、と胸を叩きながら削板が続ける

削板(あぁ、そうだ)

関わるな、なんて無理な話なのだ

彼らは友達なのだから

削板「暗部だ!?人殺しだ!?平和な日常だ!?今までこいつらと暮らした日々に一々タイトルなんてつけてられるか!!」

心理「!」

削板「そんなくだらねぇことなんて言うんじゃねぇ!!!」

霧野は、なぜか笑っていた

呆れてしまうほどに、この男は真っ直ぐだった




削板「俺は俺のやりたいことを、俺の考えで、俺の手でやってみせる!!他人が俺の道に入ってくるんじゃねぇ!!!」





218 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 16:58:15.93 ID:ngC1UpuW0
今日はここまで

このスレで唯一熱い男は削板だ

だからこそ、彼は熱く、そして他は少し暗く描かなきゃ

ショッピングモールを戦場にしたことを後悔している

でも、イメージはしてもらえる・・・よね?

真っ暗で電気の通っていない、まだ鉄骨剥き出しなでかすぎる建物

いいじゃん、なんとなく

B級映画の見過ぎかもしれない

ではバイト行ってきます



219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 17:02:12.02 ID:qDVmQEbjo
スレタイに釣られたけど、開いたら>>1が見えなかった
気持ち悪いからスレタイ統一しろNGスレに入れてすっきりするから
頼むわ
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 18:08:55.26 ID:6PTPKifJo
乙!
ソギータの説教が上条さんに見えたwwww
221 :called [sage]:2011/10/31(月) 18:24:24.58 ID:JS54wuVAO
>>219
スレタイ統一するしないのは>>1の自由だろうが
わざわざ書き込むな

>>1乙です゚∀゚)ノ
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/10/31(月) 18:28:17.35 ID:f9ej1PAmo
邪魔なものに邪魔って言ってなにが悪いんだよ
統一されてりゃ俺もこんなスレ見ないし、文句も言わない
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/10/31(月) 18:30:02.96 ID:UT5GG0HI0
>>219 そのスレタイを毎回楽しみにしてる人だっているんだよ。俺とか。
trick or treat♪
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/10/31(月) 18:34:17.63 ID:f9ej1PAmo
じゃあ統一はしなくていいから、何でも良いからNG用の言葉を入れといてくれ
それNGにしとけばこのスレをみなくていいようにさ
225 :called [[sage]]:2011/10/31(月) 18:36:31.94 ID:JS54wuVAO
>>224
つーかよぉお前が見なければいいだろ?
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/10/31(月) 18:40:47.76 ID:f9ej1PAmo
>>225
ばか?今回みたいな普通のスレタイだったら開いてしまうって言ってるんだけど
俺だってみたくないんだって
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/31(月) 19:04:21.51 ID:Q/uSVWdHo
>>266
別に開いただけだろそれだけだったら別によくね?
あんまりそんな言い方すると反感買うだけだから
オブラートに言葉を包んでその旨を>>1に伝えればいいじゃないか
そんなこともできん「人叩ける俺カッコいい」な厨房はさっさと勉強しなさい
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/31(月) 19:05:48.67 ID:Q/uSVWdHo
>>227
の安価は>>226
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/31(月) 19:07:13.34 ID:TkcAfMlIo
>>226
しつこい黙って閉じろ
てかその硬い頭使えよ。垣根が暗部から足を洗った奴はこのシリーズぐらいだ
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/10/31(月) 19:12:10.33 ID:f9ej1PAmo
>>227
そういうレッテル貼り気持ち悪い
この場でオブラートに包む必要性を感じない
このスレの初めのあたりでも誰かがこんな感じのこと言ってるのに聞く耳もたなかったみたいだし
>>229
いや、よんでないから知らんよ
>>1に前スレっていってあの気持ち悪いスレが紹介されてるから気持ち悪いスレの続きと判断したけど
231 :名無しNIPPER :2011/10/31(月) 19:15:37.26 ID:7L2Y0n9AO
荒れてるなー
232 :名無しNIPPER :2011/10/31(月) 19:16:11.89 ID:7L2Y0n9AO
荒れてるなー
233 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/31(月) 19:16:59.49 ID:7L2Y0n9AO
連投スマソ
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/10/31(月) 19:17:23.84 ID:f9ej1PAmo
>>231
ごめんなぁ、俺だって嫌なんだ
はやいとこ解決して、このスレ閉じたいんだわ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/31(月) 19:20:16.61 ID:TkcAfMlIo
>>234
だったら黙って閉じろ

荒らしてすいませんでした半世紀romってきます
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 19:22:07.06 ID:dMvU6Dj0o
いやぁだって解決してねぇし
まーたこの>>1が次スレ立てた時普通のスレタイだと見ちゃうじゃん?
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 19:22:50.46 ID:h10ZImnL0
>>234
じゃあ早くスレ閉じてPC切ってシャワー浴びるなりして冷静になって二度とスレ開くな
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/31(月) 19:26:21.55 ID:8dSg3eHEo
>>230
見たくないなら閉じろ
チラ裏
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/10/31(月) 19:29:32.59 ID:Zd+kRUn/0
>>234
嫌なら見なければいいだろう
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 19:30:06.05 ID:dMvU6Dj0o
見たくなくても、スレタイが普通だと見てしまうって言ってるんだけど?
だから何か目印になる言葉をスレタイに入れてくれればNGできるから、お願いします

>>1さん、まじでお願いします
あなたのスレみたく無いんで、NGしやすくしてください、お願いします
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/31(月) 19:33:51.26 ID:B7XwqpiHo
いつから>>1はミサカ以外の罵倒で悦ぶような変態になったのですか、この浮気者め……(ry
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 19:33:52.97 ID:h10ZImnL0
>>240
嫌なモン見ただけでクレーム突きつけるのはよくないな、>>1がどれだけお前のレス1つで不安になるか分からないのか

偉そうに荒らしてすいませんでした>>1
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/31(月) 19:36:19.60 ID:8dSg3eHEo
>>240
その文章書き込んでる間にスレを閉じろ
また開いてしまったらすぐ閉じろ
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 19:37:49.50 ID:dMvU6Dj0o
>>242
俺が>>1のスレ見ただけでどれほど不快になっているか
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/10/31(月) 19:40:03.14 ID:Zd+kRUn/0
>>244
不快になるのなら忘れろよ
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 19:43:51.63 ID:dMvU6Dj0o
>>245
忘れるたびにこのスレ開いて不快になるよ?
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/31(月) 20:10:57.70 ID:n1dj+hz1o
>>246 お前一人が不快になるのと
俺等みんなが不快になるのとじゃ
お前一人が不快になってる方がいいだろうが
いいから黙って閉じろ
そして二度とくんな
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/31(月) 20:14:17.48 ID:uhZW68dBo
うんよくあるよ俺も
誰とは言わないけどスレタイがいつもと違って開くことあるから気持ちはわかる

でもそんなに見たくないなら黙ってスレ閉じろよ
相当書きこんで>>1説得させるよりスレ閉じた方が早いだろ?
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 20:15:00.68 ID:dMvU6Dj0o
>>247
数は関係ないだろ
お前らにいってもしゃあないな

>>1さん、ほんとお願いします!
あなたのSS見たくないんです!
こんなことも本当は書きたくないです、住み分けのためにNGしやすくしてください!
お願いします!!
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/31(月) 20:25:22.30 ID:B7XwqpiHo
>>1は死にました……
死因は無数の釣り針によってミンチ状態になるまでグチャグチャされたとか……ヒヒッ

続きワッフル
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/31(月) 20:34:07.99 ID:8dSg3eHEo
>>249
てか「 ◆G2uuPnv9Q」をNGしときゃよくね?
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/31(月) 20:35:26.10 ID:KB3pJpo2o
>>251
奴にそんなスキルがあるわけない
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 20:49:35.85 ID:Biu435Nfo
>>251
安心しろ、もう既にやってる
それでもまたかよってなってうざい
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/31(月) 20:50:41.87 ID:uhZW68dBo
>>253
誰だよ
専ブラなら透明あぼーんしとけ捗るぞ
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 20:51:52.91 ID:RK11JL8IO
めんどくさいやつもいるもんだなぁ
放置放置
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 20:52:11.10 ID:Biu435Nfo
>>254
ID変わってしまってるな

透明にしててもレス番飛んでて気付いてしまうだろ
内容見なくて済むだけましだけど
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/31(月) 20:53:14.60 ID:JS54wuVAO
>>253
お前が居なくなればいいだけじゃね?


お前だけの意見じゃあ動かないよ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2011/10/31(月) 21:02:59.45 ID:7+oGG9Gno
今まで我慢してたがいつまでも終わりそうにないので一度だけ言うが
お前ら反応すんな
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 21:06:08.47 ID:Biu435Nfo
とりあえず、>>1
まじでお願いします
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/31(月) 22:22:45.98 ID:qmgGRFiAO
まず第一につまらない。
淡白な地の文。(下手)
ストーリーが面白くない。
キャラが掴めてない。
原作キャラのオリキャラ化(テクパトルとか。てっくん笑。美月笑)
オリキャラ。(さだのり爆笑)
大量投下超スピード早さが足りないとか言いつつ密度のないすっかすかな1レス。
気持ちの悪い掛け合いばかりのスレタイ。
お前らみたいなまんせー信者。
みんな敢えて触れないのにこのスレが腫れ物扱いされてるのをわかっていない>>1
そして調子に乗ってつまらないシリアス()とかやっちゃう>>1

SSで嫌われる要素を一気に詰め込んだのがこのスレ。いい加減我慢の限界って奴も多いんじゃない?まぁ荒らしに負けず頑張って続けてください笑。読むことはないだろうけど笑
261 : ◆G2uuPnv9Q. [saga]:2011/10/31(月) 22:27:50.93 ID:ngC1UpuW0
次スレからまた平常になるんで、上条「」美琴「」垣根「」心理「」

の流れのスレタイをNGでどうぞ

>>241 >>1はMでもSでもないけども、うん

ミサカの罵倒ならいつでもいいのである

あれですよ、今回のは>>1が悪かったので


上条「」美琴「」垣根「」心理「」

の流れのスレタイをNGでどうぞ


重要だから一応二回言っておく

かなみが可愛い


262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 22:42:52.64 ID:qv2ef4hHo
>>261
>>1乙 大人ですなぁ
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/31(月) 22:45:37.99 ID:VrdXR8vso
>>261
それなら美琴をNGにしてるから大丈夫です
これからもそのままでお願いします
あと、>>260は俺じゃない
264 :Called [sage]:2011/10/31(月) 22:48:53.19 ID:JS54wuVAO
>>1は悪くない決して悪くない

悪い奴はsageが出来ない>>260や無駄にNGNG五月蝿い>>259だぜ
とりあえず……>>1乙です゚∀゚)ノ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/31(月) 23:08:59.53 ID:AB9drO2IO
まぁ言い方の良し悪しはあれど、
>>260さんがあながち間違っていることを言ってるとは思わないで真摯に受け止めて置いた方がいいのではないですかね。
別にどちらを擁護するわけでもないですが確かに本編ではほとんど出てこないキャラの活躍などで一部オリキャラ化しているところだってあるし、地の文だって特徴があるのだって事実だし。

なので全てをスルーするんじゃなくてそういう意見もあるって言うことを念頭にいれつつ今後もSSを書いて行くべきだと思います。

たぢ、一概につまらないとか話を作り込んでないとか言うのはいただけませんね。
正直私も前作で急に路線変更があった時は戸惑いましたが、読んでて良くできてるなぁって思いましたし。
そこら辺は個人の好みなのに反論を許さないような書き方での感想はやめた方がいいと思います。


……と荒れ過ぎて目立ってたので長い長いマジレスでした。
失礼しましたー。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 23:11:02.07 ID:AB9drO2IO
そして下げわすれ失礼orz

たぢ→ただ

です。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/11/01(火) 00:12:58.47 ID:8xVuSqAAO
常識的に考えりゃ
スレタイ見て開いたら「またかよ」ってなる奴も当然いる
書き込んじゃう奴だってもちろんいるだろう
それを煽るような言い方したり嫌なら見るなだの…
そりゃ荒れるし、端から見たら信者さんキモいですねってなるわな
要はどっちもどっち
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/01(火) 00:15:51.13 ID:D6n8lYU80
<<265
自演乙
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/01(火) 13:00:25.77 ID:bWpRTb5AO
失礼

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270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/01(火) 15:18:19.12 ID:T1SKaolVo
なんでこんなに荒れてんだよwwwwwwwwwwwwwwwwww

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271 :Called [sage]:2011/11/01(火) 16:59:55.45 ID:U26WmfvAO

これ何だ…………??ただ単にまだ投下してないだけかな……?

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272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/01(火) 17:17:16.82 ID:gdzKmy1AO
なんか荒れてるみたいだね、一応流れは見たけど、このスレに限らず
読むほうにも内容の好き嫌いはあるからNGがどうとかは、別にいいんだけど

NGする奴の為に書き手が気を使う必要は一切無いと俺は思う。

そもそもNGしたいからスレタイ変えろとか直接言うなんてマナーもモラルも全く無いですよね?

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273 :Called [sage]:2011/11/01(火) 21:12:48.78 ID:U26WmfvAO
今日はもう投下ないのかなぁ?

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274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/01(火) 22:13:19.67 ID:WACz8TVgo
反応してしまって申し訳ない
半年ROMってますね

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275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 22:46:46.98 ID:tbA/4WENo
なんか荒れてるけど>>1は気にせず自分のペースで続ければいいよ
このシリーズ大好きな人だって多いはず

しかし↓邪魔だなwwwwこの表示いつまで続くんだろうか…

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276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/02(水) 01:31:25.88 ID:BiBP/mRIO
>>1の作品を読んでいない人もいることを忘れるなよ
そういう人たちが、このスレタイを見て新しい垣根SSかと思ってワクワクしながらスレを開いたらそりゃガッカリもするわ
>>1も一言書けばいいのにスルーだもんな

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277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 02:16:14.60 ID:HD6k96fw0
>>1気にせず頑張りなよ!
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/11/02(水) 05:54:06.86 ID:PWUmURNAO
速さにこだわらずに
もっとスレを大切に使ってほしい

容量がもったいない
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/02(水) 06:26:53.80 ID:UEyXao520
正直もうちょい詰めて書けば10スレくらいに収まりそうだしな
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/02(水) 06:56:19.31 ID:FqnbGDbAO
スレタイ統一してほしいってのはスレたった時も少し出てた話題だしね
その時点で対応しなかった>>1も悪い
たまにしか読めないから探しやすいように
って奴もいたかもしれんのにさ

とりあえず次から元に戻すみたいだし、もういんじゃね
確かに続き過ぎな感じは否めないが
まぁ好きに書いてくれ
281 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 10:58:56.55 ID:DBs1oSTz0
どうも

釣られる人が極力少なくなるようにこのスレはsage進行で行きますね

スレタイ統一も昔は考えてたんですけど、なかなかいいものが思いつかず仕舞い

詰めて書くのは読みにくいかな、と

1レス12〜15行くらいが個人的に読みやすいギリギリかと思ってますんで

受験終わったらシリーズ終わらせる予定だったんで、多分次辺りで最後です

高校生までだ、きっと時間が自由に使えるのは

では続きを

282 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 11:00:17.83 ID:DBs1oSTz0
六枚羽

学園都市で作られた殺戮兵器

縦横無尽に飛び回れる機動性、機関銃さえも積んでいる攻撃性

値段は一機250億円近い、最新鋭の兵器だ

それが、アイテムの面々を狙って近づいて来ている

麦野「ちっ・・・絹旗、やれる?」

絹旗「超難しいですね・・・ここは柱や段差が多いですから」

フレンダ「・・・全く、面倒な訳よ・・・」

浜面「・・・フレンダは爆弾とかで一掃出来ないのか?」

フレンダ「あんな大量のは無理な訳よ」

滝壺「こんな未完成のビルで爆弾なんて使ったら、危険だよ」

浜面「それもそうか・・・」

物陰に身を潜めながら、5人は話す

だがそうしていられるのもほんの少しの間だろう

麦野「・・・あいつら、どういう原理で動いてるのかしら」

フレンダ「自己の機械内で電力を生み出せるんじゃない?」


283 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 11:01:18.03 ID:DBs1oSTz0
浜面「じゃあ半永久的に動くじゃねぇかよ・・・」

絹旗「超人生の終わり、みたいな言い方はやめてください」

浜面「あんなのから逃げられるか・・・大体さ、なんであれが残ってんだよ!?」

麦野「・・・たしか全て破壊されたんじゃなかったかしら」

滝壺「・・・劣化作なのかも」

フレンダ「劣化作?」

滝壺「一つ250億もする機械をあんなに準備できるわけがないから」

浜面「・・・じゃあ何か?機内で電力を生成出来ないとか?」

麦野「・・・機関銃も安いのにしてるのかも」

絹旗「なら、意外と安く出来そうですね・・・しかも中々悪くないクオリティーが」

滝壺「でも所詮は模造品だよ」

浜面「・・・所詮、なんて言ってられる数じゃないけどな」

浜面が六枚羽を睨みつける

数にして15機ほど

それが、クルクルと360度を見回しながら近づいてくる


284 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 11:02:07.44 ID:DBs1oSTz0
フレンダ「・・・さっきは偶然逃げられたけど・・・」

麦野「・・・熱源を追うタイプみたいね」

浜面「熱源?」

麦野「人間の体温辺りの熱源を自動攻撃するのよ」

絹旗「そうすれば、確実に相手を仕留められますから」

浜面「でも俺達に熱操作の能力者がいたら・・・」

麦野「相手は私達を隅々まで調べてる・・・そんな能力者がいないってことは筒抜けよ」

フレンダ「それに、万が一あれが私達に撃墜されても問題ない訳よ」

浜面「?いや、模造品でも結構高そうだし・・・」

フレンダ「あれ」

フレンダが指差したのは、模造品六枚羽の下に付いている小さな筒状の物だ

見た感じはただの金属管だ

リレーのバトンを一回り小さくしたような大きさのそれは、端がちかちかと点滅している

浜面「何かの機械か?」

フレンダ「爆弾」

浜面「ば、爆弾!?」


285 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 11:03:01.58 ID:DBs1oSTz0
麦野「大きい声出さないで」

滝壺「敵はたくさんいるんだよはまづら」

浜面「わ、悪い・・・」

絹旗「・・・とにかく、今は逃げたほうが得策です」

浜面「原子崩しは?」

麦野「・・・こんな不安定な建物の中でバカスカ撃っていいものじゃないわよ」

滝壺「むぎのの原子崩しは威力が高いけど・・・細かい調整が難しいから」

フレンダ「六枚羽だけを撃ち落とす、ってのは不可能に近い訳よ」

麦野「ちょっと建物が崩れてもいいなら別だけど」

浜面「・・・ちょっと?」

麦野「・・・ここと上の階の境目が無くなるわよ」

浜面「ちょっとじゃねぇよなそれ!?」

麦野「・・・だから逃げたほうがいいのよ」

絹旗「私の能力で下手に破壊しても、多分あの爆弾を起爆させてしまいます」

フレンダ「・・・爆弾ごと破壊しなきゃならない訳よ」


286 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 11:03:56.87 ID:DBs1oSTz0
滝壺「・・・でも簡単なことじゃないよ」

フレンダ「・・・よりにもよってこんなルート選ぶなんて・・・」

麦野「ただの能力者が相手なほうがマシよね・・・」

浜面「・・・文句言ってもどうにもならないんだろ、なら突破口を作ろうぜ」

六枚羽は未だに麦野達の姿を捉えようとしている

広い建物ではあるが、まだ建設中なため細かい物陰はない

柱の陰やエスカレーターの陰など以外、隠れられる場所はない

トイレなどの密室に隠れた場合、万が一見つかれば大惨事だ

この状況ではどうしても、六枚羽を破壊しなければならない

浜面(考えろ・・・人間の体温くらいの熱源・・・なんて用意出来ない)

浜面(・・・俺達が体温を上げるのも無理だ)

浜面(熱感知を狂わせるか?周り一体をフレンダの爆弾・・・)

浜面(いや、下手をしたら六枚羽の爆弾まで起爆しちまう・・・)

麦野「・・・段々近づいて来てるわね」

浜面「いい策はあるか?」

麦野「ないわね、浜面が百発百中の射撃が出来るなら別だけど」


287 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 11:39:24.62 ID:DBs1oSTz0
浜面「・・・百発百中か・・・」

六枚羽は、縦横無尽に飛び回っているのだ

それら全てを確実に撃ち落とすなど、浜面に出来る業ではない

むしろ、それを出来る人間が世の中にどれほどいるだろうか

浜面「・・・熱源に向かって確実に攻撃する・・・か」

フレンダ「誰かが囮になれば楽勝な訳よ」

絹旗「・・・浜面、お願いします」

浜面「いやいや!!おかしい・・・」

麦野「そうね・・・浜面ならどうにかいけるかも」

浜面「・・・」

滝壺「?はまづら、どうしたの静かになって?」

浜面「・・・囮か・・・」

絹旗「ちょ、超冗談ですから本気にしないでくださいよ!!」

麦野「そ、そうよ・・・」

浜面「いや・・・もしかしたら」

ニヤリ、と浜面が笑う


浜面「俺は救世主になれるかもしれないな」


288 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 12:06:28.15 ID:DBs1oSTz0

垣根「・・・おかしいな」

広い通路、不気味な物陰

それら全てが非日常な風景

だが、垣根帝督はそれら以外に非日常なものを見つけられなかった

建物だけが非日常

武装した集団も、空飛ぶ殺戮兵器も、彼の進んだルートには存在していない

普段ならそれは喜ぶべきことだろう

垣根(・・・おかしい)

新暗部の人間は、彼をもう一度闇へと引きずり込む予定のはずだった

人を殺し、表を憎み、心を封じ込んでいたあの暗部へと

垣根「・・・隠れてるなら出て来いよ」

返事はないと分かりつつ、垣根は呟く

帰ってくるのは不気味な沈黙だけ

垣根(・・・ここのルートが平和的だったのか、それとも・・・)

垣根(・・・これが罠・・・か、あり得なくは無いな)

垣根(・・・だがそれにしてもおかしい)

罠にしては、仕組まれた平穏というものを感じない

まるで、本当にここだけは無防備だった、というようなものさえ感じる


289 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:18:50.89 ID:DBs1oSTz0
垣根(・・・ここには配置する余裕がなかった?)

垣根(・・・そうだな、相手には兵器を大量に用意する余裕はないはずだ)

垣根(・・・となると、俺以外のルートにはそこそこ面倒な敵がいる・・・かもな)

自分の足音だけが、ただ静寂を切り裂いていく

周りには誰もいない

ほんの少しだけ、世界に自分だけ取り残されたのではないかという錯覚に陥ってしまう

垣根(・・・このまま進めば・・・たしかレストラン街になるんだっけか)

柱に貼られていた、簡単な完成予定図を見ながら考える

相当に大きなショッピングモールだ

本当に、戦闘の舞台になっているのが悲しいほどに

垣根(・・・あいつらはここが本拠地だと言っていたが・・・頭領はどこにいるんだ?)

レストラン街、ファッション街などの無防備な場所にいるわけがない

ならばどこか隠れることの出来る場所だろう

垣根(・・・警備員室・・・?いや、1階にいるとは考えにくい)

垣根(・・・となると)

彼が目をつけたのは、最上階にある小さな部屋だ

電力制御室

垣根(・・・とは言っても、まだ電気なんて通ってないけどな)

それ以外の場所はほとんど可能性がない

完全に外と隔てられているのは、そこだけだ


290 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:20:52.45 ID:DBs1oSTz0
垣根(・・・しかし、ずいぶんと大雑把な場所をアジトにしたもんだよな)

アジトというのは、大きければいいのではない

いかに小さく、しかし必要なものを全て詰め込むか、なのだ

大きすぎれば敵に見つかりやすくなる

小さすぎれば必要なものを全て配置できなくなる

だからこそ、いくつかアジトを用意してそれぞれに役割を分担させる組織も多い

一つが潰れてもさほど大打撃を受けないようにするためだ

垣根(・・・余裕が無かったか、よほどの馬鹿か)

垣根(・・・複数のアジト自体は持っているみたいだがな)

風紀委員の支部は二つ爆破された

その二つの支部は、かなり離れているのだ

二日連続で爆破するのは、二つのアジトがなければ不可能に近い

垣根(・・・ここはメインのアジトなのか?)

くるり、と辺りを見回してから、その考えを否定する

垣根(こんな何もねぇ所をメインのアジトにはしないだろうな)

あくまでここは戦闘の場なのだろう

垣根(・・・ここは破壊されても構わないってことか)

そうなってくれば、話は変わってしまう

垣根(・・・メインのアジトを破壊しない限り、ヤツらを根絶やしには出来ないな)



291 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:26:18.99 ID:DBs1oSTz0
万が一ここにほとんどの人員が集まっていたとしても、結局データはメインのアジトにあるのだ

彼らの細かい目的が分からなければ意味が無い

もしかしたら、その意志を受け継いで暴れだす輩が現れるかもしれない

垣根(・・・ここのヤツらを尋問するしかねぇな)

眉をひそめなが垣根は歩く

相も変わらず、何もない通路が続く

店の装飾もほとんどされていない段階なのだ

華やかさなんてものはどこにもなく、無機質な空間だけが広がっている

垣根(・・・静かだな)

遠くではおそらく、心理定規達が交戦しているはずだ

だがその音さえ聞こえてこない

自分が今、新暗部の人間たちと敵対しているという事実さえ怪しくなってくる

垣根(・・・油断は出来ねぇけどな)

寝首を掻かれて殺される、なんてことだけは御免だった

垣根(さて・・・電力制御室にでも行くか)

更に上の階へ登るため、エスカレーターを階段代わりにして上がっていく

垣根(・・・ここまではまるで無傷・・・大体、戦闘自体ほとんど行ってない)

垣根(・・・俺が正解だったか、あるいは・・・)


ゆっくりと、上の階に足を踏み入れる

そこには、一人の男がいた

垣根「・・・やーっぱハズレだったか」

スタン「よぉ・・・スクールだな」


292 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:31:06.92 ID:DBs1oSTz0
垣根「・・・たしか、スタン・ウィリアムズだったな」

スタン「覚えててくれるのは嬉しいな」

垣根「記憶力はいいんだよ」

スタン「さすが第二位だな」

垣根「・・・ムカつく言い方だな」

スタン「スペアプラン、第二候補・・・所詮は一方通行の計画が失敗したときの補欠だった人間だ」

垣根「お前はLEVEL4程度の能力者だな」

スタン「一度見ただけで理解するのか、そりゃすげぇ」

垣根「水素を操ることが出来る・・・絹旗と同じで水素が無ければ使えない能力だ」

スタン「そいつはちょっと違うな」

垣根「何?」

スタン「絹旗最愛がLEVEL4なのは自動制御があるからだ・・・だが、俺にそんなものはない」

垣根「・・・なのに、絹旗と同じLEVEL4・・・」

スタン「・・・水素ってのは宇宙で最も数の多い元素だ・・・暗黒物質とかを除いてな」

垣根「それがなんだよ」

スタン「・・・大抵の有機化合物には水素が含まれる」

垣根「・・・」


293 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:38:57.69 ID:DBs1oSTz0
スタン「俺の武器になる水素が、だ」

垣根「阿呆かてめぇは、絹旗の操る窒素だって・・・」

スタン「あいつは窒素を操れるが、窒素を作り出すことは出来ないだろう?」

垣根「!」

垣根の体に向けて、何かが発射される

それを咄嗟に翼で押し返す

垣根「・・・水素を噴射した・・・か」

スタン「俺の能力は水素を操ることだが・・・オマケとして、有機化合物を分解、水素を作り出せる」

垣根「そりゃまたずいぶんと便利だな」

スタン「周りに有機化合物がある限り、俺の能力は使えるんだ・・・どうだ?便利だろ」

垣根「便利だが、所詮はこの世の物理法則に従ってやがるな」

スタン「・・・お前の能力は、この世に存在しない素粒子を組み上げることだ」

垣根「それがなんだ」

スタン「その未元物質に触れた物質は、全てこの世の物理法則から外れた動きを見せる」

垣根「てめぇに演算しきれるか?無理だな」

スタン「・・・一方通行だからこそ解析できたようなものだ」

垣根「分かってるならそこをどけ、俺は・・・」

スタン「そいつは出来ねぇな、未元物質」

垣根「・・・その呼び方はやめろ」

スタン「・・・この世に存在しない物質・・・」

垣根「・・・あぁ?」

スタン「そいつにだって、なんだかんだ弱点はあるだろ」

垣根「・・・」

スタン「どんなにその物質で硬い翼を作ろうが、その耐久以上の攻撃を当てれば砕け散る」

垣根「てめぇの能力じゃ端から勝負にならねぇよ」



294 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:44:12.54 ID:DBs1oSTz0
スタン「あぁ、そりゃそうだが・・・」

スタンが腕を振るう

床のタイルが砕け散った

彼の手からは、水素が噴射している

スタン「・・・それでも俺達にはやる理由があるんだよ」

垣根「そうかい・・・じゃ、ここで死んどけ」

6枚の翼が、垣根の背中に現れる

それらは大気内の水素を、ありえない方向へ捻じ曲げた

スタン「・・・」

垣根「どうした、演算しきれないか?」

スタン「なるほど・・・こりゃ、教科書になんて載ってない動き方だな」

垣根「だから、お前は俺に勝てないんだよ」

スタン「・・・一方通行がどうしてお前に苦戦したか知っているか?」

垣根「あぁ?」

スタン「あいつはベクトル、なんていう大雑把過ぎる物を扱っている」

垣根「・・・それがなんだよ」

スタン「ベクトルにはさまざまな種類がある、推進力、反作用、重力、速度、その他にもたくさんな」

垣根「・・・」

スタン「あいつは、それら全てを演算して操っている・・・逆に言えば、お前の能力でベクトルを全てずらされれば、全て演算し直さなければならない」

垣根「・・・そうだな、あいつはそれに若干時間が掛かった」

スタン「だが俺は違う、熱量だの質量だのそんな細かいことはどうでもいいんだ」

垣根「水素だけを正しい動きに戻すか?」

スタン「お前が何度ずらしても、俺はそれを修正する」

垣根「出来るならやってみろよ三下」

スタン「やってやるよ格上」


295 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:52:03.19 ID:DBs1oSTz0
垣根が翼を使い、空中へ舞い上がる

天井を突き破り、スタンの遥か上空で立ち止まる

スタン「昔絵本で見た天使にそっくりだな、お前」

垣根「天使よりは悪魔に近いかもな」

スタン「それにしてはよく表情が変わるもんだ」

垣根「・・・あんまり無駄話は好かねぇんだ、行くぞ」

自分の体を弾丸へ変え、垣根がスタンへと突っ込んでいく

スタン「・・・」

足場の水素を操り、スタンが後ろへ飛びのく

垣根「おぉ、足場の水素だけは正しい物理法則に戻したか・・・やるなぁ」

スタン「・・・驚いたな、全ての水素を戻したつもりだったが・・・」

垣根「それぞれ、別々の動きにしてるんだよ」

スタン「・・・ある程度の法則はあるようだが・・・俺には分からないな・・・」

垣根「それが出来れば、てめぇは第二位に並べるんだぜ」

スタン「なら無理だな」

垣根「・・・」

今度は、翼自体を刃物の変わりにする

鋭いそれは、建物の柱ごとスタンを切り裂こうとする

スタン「・・・衝撃から自分を守るには、二つの物質のうちどちらかを盾にすることだ・・・俺はそう考えている」

垣根「あぁ?」

スタン「一つはとてつもなく硬い物質・・・鉄なんかより、ずっと硬いもの・・・炭素などだ」

垣根の翼がスタンに当たる

だが、それはスタンを切り裂くことは無かった

衝撃を吸収されたようなその感覚に、垣根が眉をひそめる

垣根「何をした」

スタン「もう一つは・・・とてつもないほどに柔らかく、衝撃を吸収するものだ」

垣根「!」

スタン「柔らかい・・・それは、結合が弱い、質量が軽く分子そのものが動きやすいことが条件だ」

垣根「水素か・・・!!」



296 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 16:59:50.74 ID:DBs1oSTz0
スタン「その通り・・・」

水素を盾にし、スタンは垣根の攻撃を吸収したのだ

垣根「・・・なんだよ、お前・・・LEVEL4止まりにするにはもったいないな」

スタン「よく言う・・・お前こそ、なぜわざわざ俺の周りの水素を普通のままに留めている?」

垣根「・・・雑魚を雑魚のまま倒してもプライドが傷つくんだよ、強い敵を倒したほうがカッコイイだろ?」

スタン「素晴らしい考えだな、そしてありがたい」

垣根「・・・水素を生み出す・・・か、厄介だな」

スタン「そうか?」

垣根「大気中の水素は非常に少ないんだ・・・知ってるだろ?」

スタン「もちろん」

垣根「だが、自由に生み出せるなら別だ」

垣根が翼をはためかせながら呟く

垣根「・・・弾数に制限のない武器ほど恐ろしいものはねぇんだよ」

スタン「お前のそれこそ無制限だろう」

垣根「・・・俺のこれは特別だからな」

スタン「・・・どうする?俺を雑魚のまま片付けてもカッコイイとは思うが」

垣根「クズだな・・・そんなことしてたらみんなに笑われちまうんだ」

スタン「・・・プライド・・・か、それを持っているのは素晴らしいことだ」

垣根「・・・一つだけ聞きたいことがある」

スタン「なんだ」

垣根「お前は外国の人間だよな?」

スタン「あぁ」



297 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 17:04:50.25 ID:DBs1oSTz0
垣根「なんで学園都市に来たんだよ」

スタン「・・・いろいろとあったんだ、俺にも」

垣根「・・・くだらねぇ、それでわざわざ暗部にまで堕ちたか」

スタン「お前もそうだろう?人間、生まれたときから人生が決まってるのさ」

垣根「そうだとしたら楽だよな」

スタン「そして、限りなく残酷だ」

スタンがポケットからライターを取り出す

垣根「また水蒸気爆発か?」

スタン「・・・風紀委員支部の爆破に、俺の能力を使う案もあったんだがな」

垣根「んなことしたら一発で素性が割れるぞ」

スタン「だから断ったんだ」

垣根「・・・残念だな、面白いヤツだが・・・こっちは急いでるんだ」

スタン「お前にも一つ聞きたいことがある」

垣根「なんだよ」

スタン「お前は本当に、暗部から抜け出したと思っているか?」

垣根「そのつもりだ、思い込みでも構わないんだよ」

スタン「・・・思い込み、か」

手元のライターを、スタンがカチャカチャと鳴らす

その音が、少しだけ垣根をイラつかせる

スタン「それは悲しい、お前だけがそう思っているかもしれないのだ」

垣根「それでも構わないんだよ、俺は誰の考えも押し付けられない・・・だからこそ、こんな常識の通用しない力を手に入れた」

スタン「はは・・・そうだな」

ライターの先から火柱が立ち上がる

その瞬間、水素爆発が起こった


298 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 17:10:25.48 ID:DBs1oSTz0
垣根「・・・」

翼で体を覆い、垣根が自らの体を守る

一方のスタンは、近くの物陰に隠れて身を守る

今の爆発の中で水素を操るのは難しいのだろう

下手をすれば、手元に集めた水素さえ爆発してしまう

垣根「・・・所詮この程度だ・・・てめぇの一番の攻撃はこれだろ?」

スタン「そうだな、威力はこれで精一杯だ」

垣根「・・・残念だ、もっと楽しませてくれるかと思ったのによ」

スタン「・・・翼の内部の水素にも引火させようと思ったんだが・・・なるほど、その翼自体が未元物質だったな」

垣根「・・・危なかったぜ、この翼じゃなきゃ俺は今頃蒸し焼きだ」

スタン「・・・そうはならなかった」

垣根「形勢逆転だ、今度は俺の番ってことだな」

未元物質を空気中にばら撒く

スタン「・・・水素のベクトルを変えたな」

垣根「それだけじゃねぇ」

スタン「何?」

垣根「この未元物質は300〜500hzの振動で、共振を起こす」

スタン「!」

垣根「ちょうど・・・」


垣根「男性の声と同じ周波数でな」

スタン「貴様・・・!!」

スタンが声を発してしまう

それは

彼の首を自ら絞める縄となった



299 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 17:15:11.39 ID:DBs1oSTz0
スタンの体を、痛みが襲う

体のありとあらゆる皮膚が剥がれるような痛み

実際に、剥がれているのかもしれない」

だが今の彼にはそんなことを考える余裕はない

スタン「がぁぁぁぁっ!!!」

悲鳴を上げれば上げるほど、未元物質は共振を起こす

細かい振動が、体の皮膚を剥いでいく

垣根「・・・いっけねぇな、こんなことしてたら残酷な人間だと思われちまう」

スタン「おぉぁぁぁ!!!」

垣根「・・・そんな痛みの中じゃ、演算なんて出来ないだろ?」

垣根がつぶやく

その声でさえ、未元物質は共振を起こしている

通常なら、そんなことはあり得ない、と言われるだろう

だが彼の能力はその「あり得ない」ことを起こしてしまうのだ

スタン(・・・物体の固有振動数は・・・そんなに幅広く・・・)

痛みの中、スタンが考えるのはそんな下らないことだった

能力のための演算でもすればいいのだ

だが、彼にはもうまともな思考は出来ない

スタン(・・・そうだ、それは・・・この世の物質ならの話だ・・・)

垣根「・・・」

突然、スタンの体が痛みから解放される

スタン「ごほっ・・・」

口からは、何か赤黒い液体がこぼれだす

それが床のタイルにおかしな模様を描いていく



300 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 17:24:45.21 ID:DBs1oSTz0
垣根「・・・分かったか、俺に勝とうなんて無理な話なんだ」

スタン「・・・てめぇ・・・」

体のあちこちが、おかしな痛みを訴えている

ヤケドのような、切り傷のような、内出血のような

様々な痛みが混在しすぎて、どれが本当の痛覚なのかも分からなくなる

もしかしたら、全てなのかもしれない

垣根「・・・ほら、戦えよ・・・」

スタン「くそ・・・」

スタンの体の周りの水素が、槍へと姿を変える

目に見えるほど、大気が歪んでいる

建物の柱を薙ぎ倒し、床のタイルを捲り上げながら、スタンが垣根の元へと突っ込んでいく

水素の噴射をロケット代わりにしている

垣根「・・・捨て身の攻撃か」

スタン「おぉぉぉぉ!!!!!!!!」

もはや、それは声ではなかった

垣根「・・・くっだらねぇ・・・気合でどうにか出来るもんじゃないんだ」

垣根の翼が、スタンの体をいとも簡単に弾き飛ばす

剥き出しの鉄骨に衝突したスタンは、そのまま気を失った

垣根「・・・残念だな」


垣根「・・・本当に・・・残念だ」


301 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 18:01:09.16 ID:DBs1oSTz0

浜面「・・・あいつら、熱源に向かってとにかく攻撃するんだよな?」

麦野「多分ね・・・」

滝壺「でも、それがどうしたの?」

六枚羽に見つからないように、隠れているアイテム

浜面が突然、柱の影から走り出す

絹旗「は、浜面!?何してるんですか!!」

フレンダ「危ない訳よ!!」

浜面「・・・」

六枚羽の中の一機が、浜面の姿を捕捉する

一瞬のうちに、無数の弾丸が浜面の体目掛けて放たれる

浜面「おぉぉぉぉぉ!!!」

止まらないように駆け続ける浜面

すんでのところで、弾丸は彼の後ろばかりを打ち続ける

浜面(あっぶねぇ!!)


麦野「・・・何考えてるのかしら・・・」

絹旗「・・・超意味が分からないです」

フレンダ「・・・結局浜面はバカな訳よ・・・」

滝壺「・・・はまづらなら何か考えてるはず」

麦野「・・・それに賭けるしかないわね」


302 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 21:06:51.89 ID:DBs1oSTz0
浜面「くっそ・・・」

弾幕を掻い潜りながら、浜面は少しずつ六枚羽を麦野達から遠ざける


滝壺「はまづら・・・」

麦野「まさか本気で囮に・・・」

絹旗「わ、私も行ってきます・・・」

フレンダ「あ、あの中に行ってもどうしようもない訳よ!!」

絹旗「でもあのままじゃ浜面が・・・」

滝壺「・・・大丈夫、きっとはまづらは何か考えてるはず」

麦野「あれのどこが・・・」

滝壺「・・・はまづらは、いざという時は頼りになるから」

麦野「・・・」


浜面「はぁ・・・く、くそっ・・・中々いい場所が・・・!!」

六枚羽からどれほど逃げただろうか

浜面が、少し開けた場所に出る

どうやらイベントなどのために用意された広間のようだった

浜面「よし・・・」

くるり、と振り返ると六枚羽は全機、浜面を後ろから追いかける形になっていた

浜面(・・・頼む)

浜面が、円を描くように走り出す

六枚羽は、もちろんそれを追いかけるように後ろからついてくる

浜面(よし・・・このまま行けば!!)

だんだんと、六枚羽も円を描くように隊列を成していく

くるり、と浜面は周りを六枚羽に囲まれる形になった


303 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 21:07:19.64 ID:DBs1oSTz0
麦野「・・・もう、浜面が見えなくなったわ・・・」

絹旗「さ、さすがに追いかけたほうが・・・」

フレンダ「・・・そうしようか」

滝壺「・・・ねぇ、むぎの」

麦野「なに、滝壺?」

滝壺「・・・もしかしたら・・・原子崩し、使うことになるかもしれないけど・・・」

麦野「いいわよ、別に」

滝壺「・・・お願い」

麦野「分かってるわよ、行きましょう」


浜面「さぁ・・・来い!!」

浜面を目掛けて、六枚羽が一斉に弾丸を放つ

それらは、確実に浜面の頭を狙っていた

浜面(今だ!!)

浜面が、その弾幕を避けるようにしゃがみこむ

六枚羽は、全てが円になるように隊列を組んでいたのだ

そこから放たれた弾丸は、浜面の頭上を通り過ぎ、向かい合っていた六枚羽を打ち落とした

それも、相当な威力の銃撃だ

六枚羽が本体の下についていた爆弾ごと、粉々になっていく

浜面(・・・や、やったか!?)

辺りを見回すと、六枚羽の無残な残骸が転がっていた

筒状の爆弾も、完全に真ん中がひしゃげている

誤爆しないか、という心配もあるがひとまずは溜め息をついてしまう

浜面「・・・あぶねぇ・・・」

ふと、上を見上げて浜面が呟く

だが、その顔はすぐに驚愕の色に変わる

あと一機

六枚羽が、浜面を狙っていたのだから


304 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 21:08:05.12 ID:DBs1oSTz0
心理「・・・全く、どうしてあなた達が関わったのよ・・・」

黒子「分かりましたから、とりあえず傷を見せてくださいな」

心理「・・・」

心理定規が傷を見せる

打ち付けられた部分が青い痣になっている

削板「・・・心理定規」

心理「文句ならあとで聞くわ・・・」

黒子「・・・わたくし達も協力しますの」

心理「・・・どうしても、そう決めたの?」

黒子「もちろんですの」

ゴーグル「・・・表の人間が裏に来ても・・・いいことなんてないっすよ」

削板「それでも俺達は助けに来たんだ」

砂皿「簡単に言ってくれるな」

削板「簡単じゃないだろうな・・・でも、俺はやってみせる」

心理「・・・全く、本当にあなた達は・・・」

黒子に巻かれた包帯を見つめながら、心理定規が苦笑する

黒子「・・・困ったものだと思っているのでしょう?」

心理「えぇ、分かってるじゃない」

黒子「・・・ですが、わたくしは逃げませんの」

心理「どうして?」

黒子「そこにあなたがいるからですの」

心理「・・・そう」

砂皿「おい」

心理「・・・何?」

砂皿「また、刺客のようだ」

心理「!」

通路の向かい側から、黒い影が現れる

その男に、見覚えがあった


仙道「・・・全く、俺は本当に運が悪いな・・・」


305 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 21:09:51.37 ID:DBs1oSTz0
今日はここまで

浜面って原作で地味に一番すごいと思う

ラッキー続きだし

うらやましい


ではおやすみなさい


306 :Called [sage]:2011/11/02(水) 21:13:43.65 ID:IsfKO97AO

1>>乙です゚∀゚)ノ



やっぱ垣根カッコいいなぁ

浜面もやってくれる時はやってくれる男だな
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 21:19:22.31 ID:6Q8Ub04DO
>>1

だがちょっと待て、次が最後、だと…?
308 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/02(水) 21:21:52.05 ID:DBs1oSTz0
>>307 場合によっては、と

大学の生活が忙しければ、そりゃ続けるのが難しいので

まったーり更新でよければそのままボチボチひっそりと続けたいですが

あと、今回の件でスレタイ統一考えてるんで、何かいいスレタイの案を下されば嬉しいです


309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 23:56:01.56 ID:DvYYRTzpo
忙しくなったら週1くらいでもいいんだよ!
3510スレまで続けて欲しいかも
スレタイはPART29みたいに数字をつければ少しは違うのかなぁ
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 00:28:29.62 ID:jDdntAXVo
>>1
行く学部によって違うけど
大学はクソみたいにヒマだぞwwwwww

理系は忙しいみたいだが…
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/03(木) 05:25:17.70 ID:yFBDh2aAO
いちょつ

まあ浜面は主人公補正がなかったらただのチンピラだからなあ
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/03(木) 07:22:30.62 ID:vDBnAtfAO
スレタイの形式は同じにして何スレ目かつけたら?
何スレ目かつけてもスレタイががらりと変わってたら
初めて見る人はシリアス物のパートスレだと思うんじゃないの

どうしてもシリアスなスレタイにしたいなら
完全に切り離して別作品として立てるのも手
その場合なら>>1に前スレとか書かなくていいし
「またか」と言われる事もないと思うよ
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 08:32:32.86 ID:2Dnr+GYQ0
1乙!

理系で忙しいのは四回生の時だからそれまでは結構ヒマだな
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/03(木) 09:03:50.47 ID:Rg87SC7qo
ということは当分はこのシリーズ続けられるな
315 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:38:55.48 ID:nmMM+Fpy0
バイトして筋トレして大学行って、でヒマだったらボチボチと細々と続けますかね

何スレ目かつけるのがいいかもしんないですね

上条「」美琴「」垣根「」心理「」 partサトリナ

これならいける気がする

もうちょいしたら投下


316 :Called [sage]:2011/11/03(木) 09:40:17.81 ID:Ob79+7FAO

1>>頑張れ(・∀・)
317 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:48:22.75 ID:nmMM+Fpy0
一方「・・・相変わらず不気味だな」

番外「いつまでこんな無機質な空間が続くんだろうね」

建設中の建物

本来なら、まだ工事に関わる人間しか立ち入れない場所のはずだ

だが、今は違う

客でもなければ工事関係者でもない第三者が立ち入っている

暗部の再構成、及び暗部と表の接触

それを企む者と阻む者の戦場になっているのだ

一方通行と番外個体は既に二人の敵を撃破している

息の根を止めなかったのは彼等なりの慈悲だった

いや、甘えだったのかもしれない

一方(・・・表の世界にまた戻るには・・・殺しなンて許されねェからな)

番外(・・・ミサカには誰かを殺すなんて無理になってるんだね)

一方「・・・番外個体、敵は」

番外「誰もいないよ・・・」

一方「・・・相手が何人いンのかも分からねェからな・・・」

番外「ミサカ達が倒したのは二人だけだったね」

一方「・・・あァ」


318 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:49:32.23 ID:nmMM+Fpy0
番外「・・・でも他のみんなも交戦してるはずだよ」

一方「・・・負けてねェならそれでいいンだ」

眉をひそめながら、一方通行が歩く

一歩、また一歩

だが少しして、番外個体が足を止めた

一方「あァ?なンだよ」

番外「・・・レーダーに反応あり」

一方「ちっ・・・また新手かよ」

番外「ううん・・・これは人じゃないみたい」

一方「・・・人じゃないだと?」

番外「この大きさは・・・明らかに機械だね、それも」

番外個体がニヤリと笑う

それと同時に、曲がり角から巨大な機体が姿を現す

それは二人がよく知っているものだった

かつて二人が交戦したこともある相手

彼らの保護者である黄泉川とも関わりのある相手

いや、学園都市では知らないものなどいないであろう有名なそれは


番外「駆動鎧だ、ちくしょう」


319 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:50:35.96 ID:nmMM+Fpy0
浜面「まずっ・・・」

浜面の視線の先には六枚羽が迫っていた

それも、かなりの至近距離

浜面(くそっ・・・!奇数の機体だったら相打ちでも一機余る・・・考えたら分かりきったことじゃねぇか!)

六枚羽の右翼についた機関銃の一部がチカチカと光る

目的を補足した合図か

それとも銃撃開始を知らせる合図か

そんなことを考えている暇はない

まずはこの六枚羽の攻撃を避ける必要がある

浜面(どうやって・・・?)

そして、自分の拳銃で六枚羽を撃ち落とす

浜面(爆弾はどうする?)

後は、アイテムの元に勇者のように帰還するだけだ

浜面(出来ないじゃねぇかよ・・・)

浜面が目を閉じる

地面に伏せている彼が今更回避行動をとってどうなるのか

横に転がって初撃をかわしたとしよう

だから、なんなのだろうか

六枚羽の一番の武器はその機動性なのだ

攻撃力だけならば駆動鎧や、前に見た量産型の超電磁砲が上だ



320 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:51:58.72 ID:nmMM+Fpy0
浜面が一度回避行動をとれば、すぐ次の攻撃が来る

ゴロゴロと無様に地面を転げ続ければ逃げられる、なんて甘いものではない

初撃の後の二撃目で、浜面の人生は終わりだ

今避ければ0.5秒ほど人生が伸びるだろう

そんなわずかな時間のために動こうと思えるほど、浜面は楽観的ではなかった

目を閉じたままでも分かった

何か、耳を劈くような音がしたのだ

ギィン、という金属の崩れる音と大きな爆発音、そして何かが溶けるような不気味な音

最初、それは六枚羽の攻撃が自分の体を破壊する音だと思った

だが、少ししてからそれが違ったと理解する

そう、それを理解出来た時点で彼は生きていたのだから

浜面「・・・な、なんで?」

恐る恐る目を開けると、そこに六枚羽は存在していなかった

地面に転がっている残骸の数は変わらない

つまり、残骸さえ残らないほどの攻撃によって消滅させられたのだ

そんなこと、もちろん浜面には出来るわけがない

浜面「・・・だ、誰・・・」


麦野「全く・・・無理してくれるわね、浜面」

浜面「!麦野!」


321 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:52:49.21 ID:nmMM+Fpy0
滝壺「はまづら!」

浜面「滝壺!よかった、無事だった・・・」

滝壺「それは私の台詞だよ!なんでいきなり飛び出したの!?」

浜面「わ、悪い・・・」

絹旗「全くですよ・・・麦野があと少し遅れてたら死んでましたよ」

フレンダ「無理してカッコつけるなんて馬鹿な訳よ」

浜面「み、みんな来てくれたのか・・・」

麦野「・・・浜面」

浜面「ん?どうした麦野・・・」

浜面が麦野の顔を見た瞬間

彼の頬に衝撃が走った

麦野がその頬に平手打ちを喰らわせたのだ

麦野「・・・滝壺がどれだけ心配したか分かるか」

浜面「・・・それは」

麦野「私達は全員揃ってもう一度帰るって決めたんだ!お前がいなくなってどうする!?」

浜面「だ、だけどこうやって・・・」

麦野「無事だったから結果オーライか!?ふざけんな!」

滝壺「・・・はまづら、なんで私達を信用してくれなかったの?」

浜面「・・・信用はしてた、ただ巻き込みたくなかったんだよ」


322 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:53:31.41 ID:nmMM+Fpy0
絹旗「超今更ですね、反吐が出ます」

フレンダ「・・・浜面はアイテムの中で一番下っ端な訳よ、カッコつけて飛び出すなんて百年早い」

麦野「・・・浜面、勝手な行動は控えなさい」

浜面「・・・アイテムのリーダーとしての命令か?」

麦野「あなたの友達としてのお願いよ」

麦野が浜面の目を見つめる

彼女はかつて、浜面の手によって救われたのだ

だからこそ、彼が一人で突っ走っていくことが許せなかった

麦野「・・・浜面」

浜面「分かった・・・」

滝壺「・・・はまづら、私達だって戦えるんだよ?」

絹旗「別に浜面のためじゃなく・・・自分達のためです、超勘違いしないで下さいね」

フレンダ「まぁ、浜面は馬鹿だから勘違いしちゃいそうな訳よ」

浜面「ははは・・・悪いな」

麦野「・・・ほら、行きましょう」

浜面「あぁ」

アイテムが再び歩き出す

だが、彼等はまだ知らない

その先には、六枚羽など比べものにならないほどの兵器が待ち構えていることを



323 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:53:58.33 ID:nmMM+Fpy0


垣根「・・・」

スタンを撃破した垣根は、その後順調に階を登っていた

やはり、彼の選んだルートは敵が少ない

スタン以外の敵はいない、と言っていいほどだ

一つだけ簡単なトラップはあったものの、彼の能力で簡単に破壊することが出来た

本当にラッキーだ、と普通の人間なら言うはずだろう

だが垣根はそうは考えていなかった

垣根(俺が当たりを引いた・・・ってことは他のルートはハズレってわけだ)

もちろん、心理定規が進んで行ったルートも

垣根ならばどんな敵にも負けることはないはずだ

だが、心理定規は違う

彼女の能力は便利ではあるが、一部の相手にはまるで効かない

もしも彼女が進んだルートにそんな相手がいたら

垣根(・・・ゴーグル馬鹿と砂皿はいるが・・・安心は出来ないな)

砂皿は遠距離からの狙撃では真価を発揮するが近接戦闘はあまり向いていない

ゴーグル男も、近接戦闘は得意だが強力な能力者が相手となると歯が立たなくなる

垣根(・・・こんなに広い建物だ、下手したらあいつらが分散してるかもしれない)

垣根が物陰をちらりと見つめる

やはり、そこにも脅威はない

彼の選んだルートは本当に「当たり」だったのだ

垣根「・・・全く」


垣根「・・・なんでこういうときばっかり当たりを引くんだろうな」


324 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 09:58:21.61 ID:nmMM+Fpy0


土御門「・・・結標、どうだ」

結標「・・・そうね、やはりここらへんにアジトをもう一つ持っている、と考えるべきかもしれないわ」

土御門と結標は、戦場の只中にはいなかった

彼らが使うのは力ではなく、頭だった

土御門「・・・ビルしか並んでいない場所だな・・・」

結標「大きいアジトなら大丈夫、とか思ってるんじゃない?」

土御門「だとしたら愚かだな」

地図にはたくさんの丸がつけられている

それは、新暗部がアジトとして使っている可能性のある建物の目印だ

結標「・・・どう?ここまでは絞れたけど」

土御門「・・・これ以上は一つ一つ回るしかないな、ここから離れているだけに情報も足りない」

結標「また飛ぶの?」

土御門「そうだな・・・あぁそうそう、あと一つ知りたいデータがあるんだがな」

結標「何かしら?」

土御門「ヤツらが持っている武器の種類、数、入手経路・・・」

結標「そんなことも?」

土御門「そこもついでに潰すんだよ、そうしないとどうせ真似をする馬鹿が現れてくる」

結標「はぁ・・・私達もかなりハードね」

土御門「・・・能力者と戦うよりはまともだろ」


325 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 10:09:38.30 ID:nmMM+Fpy0

心理「・・・あなたとはよく会うわね」

仙道「・・・俺は会いたくないんだよ」

削板「こいつ・・・たしか地下街の」

黒子「・・・そうですの」

仙道「なんだ、アンタたちも地下街に来てたのか・・・途中で意識飛ばしてたから知らなかったな」

仙道が苦笑する

だがそれは、決して人懐っこい笑みではない

ただ、その場を自分だけが楽しんでいるという笑み

仙道「・・・ったくよ、なんで5人もいるんだろうな・・・」

ゴーグル「残念っすね、こっちには一人超能力者もいますよ」

仙道「削板軍覇だろ、最高の原石だ」

削板「知ってるのか」

仙道「あぁ、知ってるとも・・・よーく知ってる」

仙道が削板を睨みつける

憎悪、悲しみ、哀れみ

そんなものが、その視線には含まれている

黒子「どういうことですの?」

ゴーグル「・・・あいつの能力は重力操作・・・」

砂皿「気をつけろ、やつに近接戦闘で勝利するのは難しい」

削板「そんなこと知らねぇな!!!」

削板が右手を振りかぶる

ゴーグル「ま、待って・・・」

削板「すごいパーンチ!!!」

すさまじい衝撃が、仙道の体を襲う

上か、下か、右か、左か

どこから襲ってきたかも分からない衝撃は、仙道の体を容赦なく柱へと叩きつける


326 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 10:22:35.12 ID:nmMM+Fpy0
仙道「ぐぁっ!!」

バキン、と背骨が鳴る

あまりの衝撃に、口から酸素が全て吐き出されてしまう

胸を思い切り殴られたときと同じだ、いくら息を吸おうとしても吸えないのだ

仙道「ごほっ・・・」

削板「どうした!!俺の怒りはまだ収まってない!!」

黒子「ぐ、軍覇さん!やりすぎですの・・・」

削板「あいつは俺の友人を傷付けた、あいつは俺たちの大切な場所を爆破した!!」

仙道「て・・・てめぇには何も分からないだろうな・・・知りもしない」

削板「何が分かるか!!そんな卑怯な方法で片付けようとしてるお前らの・・・」

仙道「・・・原石・・・か」

衝撃から少しだけ解放された体を揺らし、仙道が立ち上がる

近くの柱に寄りかかりながら、彼は笑っている

仙道「・・・それが何か分かるか?」

黒子「・・・自然と能力開発を受けたのと同じ環境で暮らしていた人の・・・」

仙道「それがなんだ?それだけじゃないか・・・」

砂皿「何が言いたい」

仙道「そいつらは・・・力を手に入れたかったわけじゃない・・・その力で誰かを傷付けてしまうことがある・・・」

黒子「それを抑え、保護するために学園都市は・・・」

仙道「保護?拘束の間違いだろう・・・その子達が望んでいなくても、学園都市は原石を保護するのさ」

ゴーグル「・・・それが、アンタ達の戦う理由っすか」

仙道「俺の理由だ・・・俺たちの組織はな、ただの運命共同体だ・・・全員が全員、同じ目的を持ってるわけじゃない・・・」

黒子「・・・他の理由で戦う人もいるんですのね」


327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/11/03(木) 11:30:37.40 ID:1ZzxgMpAO
前スレのHTML化しないのか?
328 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 12:06:26.02 ID:nmMM+Fpy0
>>327 どうにかして埋めてきます


仙道「お前達には分からないだろうな」

黒子「・・・理由が正義でも、行っていることは悪ですの」

仙道「正義だ悪だはどうでもいい」

黒子「どうでもいいわけがありませんの!!」

仙道「正義とはなんだ?主観なしに語れるわけではない」

黒子「わたくしの信じた正義が・・・わたくしの世界の正義ですの」

仙道「ならばそれは俺も同じだ」

仙道が近くの瓦礫を黒子に投げつける

いや、正確には黒子の真上に

黒子(・・・なんのつもりですの?)

空間転移で黒子がそこから遠くへ移動する

仙道「!空間転移・・・」

カラン、と音を立てて瓦礫はそのまま地面に落ちる

ゴーグル「・・・なるほど、本当はその瓦礫に掛かる重力を増して、白井さんを潰すつもりでしたね」

黒子「!」

仙道「・・・そうだ、俺の能力は近接戦闘に特化しているからな・・・相手が遠くでは意味がない」

ゴーグル「・・・目視できる部分の重力だけを操れる能力・・・」

仙道「だから、LEVEL4止まりなんだ」

半ば自嘲気味に、仙道が呟く

本来なら、これほどの重力操作を出来るなら超能力級でもおかしくないのだ

何かしら、それに達することができないだけの理由がある


329 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 13:53:18.46 ID:nmMM+Fpy0
ゴーグル「・・・それでも尚、LEVEL4っすか」

仙道「アルミを起点にすれば爆弾も作れるぞ」

黒子「グラヴィトン・・・!!で、ですがあなたはあのときバンクのデータに・・・」

仙道「あの時・・・?あぁ、グラヴィトン事件か・・・そりゃそうだろう、俺は組織の中で一番先に闇に堕ちていたからな」

砂皿「その時はすでに、バンクから消されていたのだな」

仙道「そういうことだ・・・」

心理「・・・一つ聞いていいかしら」

仙道「なんだ」

心理「あなたは原石のことで戦ってるみたいだけど・・・そこまでして原石にこだわる理由は何?」

仙道「簡単なことだ、俺の恋人は原石だった、そして学園都市に保護され・・・研究と称した人体実験に使われた」

黒子「!」

削板「じ、人体実験!?」

仙道「お前のような最高の原石なら関係ないだろうが・・・原石と呼ばれる者でも個人差はある、中にはそこまで強い能力ではない者もいた」

心理「あなたの恋人も?」

仙道「そうだ・・・だからこそ、別に死んだところで構わないと判断されたのさ」

ゴーグル「いかにも研究者のいいそうなことっすね」

仙道「頭に電極を差し、意味の分からない薬品を注入され、毎日脳波を測られ24時間行動を監視され・・・脳味噌だけを取り出されて、それを薬品に漬け・・・それぞれの部位にそれを分け、細かい原石の原理を調べた」

黒子「う・・・」

光景を想像しただけで、黒子は吐き気を催してしまった

人間を、そこまでゴミ同然のように扱う研究者もいるのだ


330 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 14:00:47.53 ID:nmMM+Fpy0
仙道「最後は焼却処分だ」

心理「・・・ずいぶんと、ひどいことね」

仙道「そうだな・・・だが、俺はそれをどうすることも出来なかった」

砂皿「そんな自分が許せない、か」

仙道「・・・ならば俺に出来ることはなんだ?その事実を表に晒すことだ」

黒子「!表と裏の交差・・・」

仙道「そうだ・・・そうすれば、あの残酷な実験に関わった人間は法的に罰せられる」

ゴーグル「・・・下手をすれば、アンタも消されますよ」

仙道「消されるな、だがそれがなんだ?暗部なんていつ消されてもおかしくない人間の集まりだ」

仙道が近くの鉄骨を拾う

仙道「・・・俺は、それでもやらなければならない」

黒子「・・・あなたは・・・」

仙道「誰かを愛するということは・・・俺にとっては狂うことだった」

その鉄骨を、ゴーグル男の真上へと投げつける

心理「!ゴーグル君!!」

その鉄骨に掛かる重力が、急激に増していく

10倍か、20倍か

鉄骨が巨大な弾丸となって、ゴーグル男の頭蓋を叩き割ろうとした


ゴーグル「・・・そりゃ、大層な理由っすね・・・そして反吐が出る」

その鉄骨を、ゴーグル男が弾き飛ばす


ゴーグル「・・・本当に、反吐が出ますよ」


331 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 14:07:52.71 ID:nmMM+Fpy0
仙道「反吐が出るだと?なぜ」

ゴーグル「そんな言い訳ばっかしてますけど・・・どうせアンタは人を殺すことしか出来ないクソッタレだ」

仙道「・・・」

ゴーグル「アンタの愛した彼女が復讐を望んでいようがいまいが関係ない、自分の愛した女を言い訳に使ってる時点でアンタはクソだ」

仙道「なんだと?」

ゴーグル「くっだらない、俺だったら暗部に堕ちた理由に他人を使わないっすよ・・・」

砂皿「ゴーグル」

ゴーグル「ここは俺がやります、この男は二度潰さないといけません」

仙道「・・・お前には分からない!」

ゴーグル「・・・そうっすか」

信じられないほどの重力がゴーグル男の体を地面に叩きつける

ゴーグル「ぐっ・・・」

仙道「お前には分からないだろう!!愛した女を殺された俺の悲しみが!!」

ゴーグル「・・・そりゃ・・・分からないっすよ・・・」

仙道「・・・ふざけるな!!」

ゴーグル「・・・仕方ないっすね・・・」


重力は何倍も掛かっている

だが、ゴーグル男はゆっくりと立ち上がった

体のあちこちが軋みながら、それでも

仙道「な・・・」

ゴーグル「・・・教えてあげますよ・・・」

ニヤリ、とゴーグル男が笑う

それは、アイテムのメンバーと暮らしているときの彼の顔とは違った


ゴーグル「本当の暗部ってやつを」


332 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/03(木) 14:09:03.54 ID:nmMM+Fpy0
今日はここまで

大学ってヒマなのかな

大学行ったら本格的にウェイトトレーニングもしたい気がする

オリバみたいになりたい、なれないけれども

では


333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 16:16:00.79 ID:0YHRPrU7o
大学は文学系が超暇
文系イコール暇ではないが理系よりは遥かに暇
と思いきや理系でも[ピーーー]るレベルで忙しい分野か[ピーーー]るレベルで暇と幅広い
前者は機械、電子、建築とか後者は数学とか良くわからん学科とか

文系であっても何か目標とかあれば暇ではないかも、あと大学によっても全然忙しさは
違う

まあようは入ってみればわかるぜ頑張れ>>1


ソース:現在理工学部二年な俺
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 17:46:51.43 ID:2Dnr+GYQ0
乙!

ちなみに大学生ってのはどんどん太っていく生き物なんだぜ

ソースは ry
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/11/04(金) 00:14:07.83 ID:Pq5tZCFAO
>>334
ピザ乙
336 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 10:46:54.43 ID:z6BIv6gD0
>>334 痩せやすい体質な>>1には関係ない

高校生までは、大抵誰もがそう思っていた


仙道「・・・暗部から逃げ出したお前が何を言う」

ゴーグル「抜け出す勇気もなかったクズがどの口叩いてんすか」

仙道「・・・抜け出す勇気だと?」

ゴーグル「アンタは怖かったんだ、世界に自分の恋人がいなくなったことが」

仙道「それがどうした」

ゴーグル「裏の事情によって恋人が死んだ、だからアンタは裏にいる・・・」

ゴーグル男が馬鹿にしたように笑う

普段の彼からは想像出来ないほど残虐で下品な笑みだ

ゴーグル「どうせ恋人の面影を追いかけてるんでしょう」

仙道「それの何が悪い」

ゴーグル「気持ち悪いんすよ」

心理「・・・ゴーグル君」

ゴーグル「死んだ人間をグチグチと・・・アンタがここでさ迷えば恋人が化けて出てくれるんすか、そりゃ大層めでたいっすね」

仙道「お前には分からないだろう!大切な人間などお前にいるはずがない!」

仙道がゴーグル男の体を叩き潰そうとする

彼の能力の限り、目一杯の重力をゴーグル男の体に掛けた


337 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 10:47:28.49 ID:z6BIv6gD0
ゴーグル「ぐっ・・・」

その瞬間、ゴーグル男の膝が軋んだ

バキリ、という嫌な音がして関節に異常な痛みが走る

上半身がガクリと折れ曲がり、地面に腕をついてやっと耐えられる、といった苦しい体勢を余儀なくされる

仙道「そんな冷たいことを言える人間が・・・大切な相手を持っているわけがない!」

ゴーグル「・・・アンタは何も分かっちゃいない・・・」

体はもはや、起き上がることを諦めていた

信じられないほどの負荷が関節に掛かる

背中に大岩を乗せているような感覚だった

だがそれでも、顔だけは仙道を見つめていた

いや、睨んでいた

ゴーグル「・・・こんな世界に・・・アンタみたいなまともな人間がいていい訳がない」

仙道「ならば表で安穏と生きていろと!?無理だ・・・無理なんだよ!」

仙道の言葉が重しとなり、更にゴーグル男の体は地面に近づく

削板「くっ・・・」

黒子「待っていてくださいな!今・・・」

心理「やめなさい二人とも」

黒子「ですが!」

砂皿「ゴーグルは今戦っているんだ」

削板「あんな能力者に簡単に勝てるわけがないだろう!」

砂皿「違う」


338 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 10:48:03.27 ID:z6BIv6gD0

ゴーグル「・・・俺はクソみたいな人生を送ってきた・・・」

ゴーグル「・・・母親は・・・あの女は俺を捨てた!」

ゴーグル「父親は目の前で刺された!」

ゴーグル「暗部に来てからも何も変わらなかった!垣根さんと出会って、心理定規さんと出会って・・・それでも、何も変わらなかったんだ!」

仙道「お前と俺は違う!」

ゴーグル「あぁ違います!だからこそアンタはこんな所にいたらダメなんだ!」

仙道「うるさい!誰かの・・・恋人のために戦うことが悪いのか!?」

ゴーグル「他人のために戦える人間が裏にいたらいけない・・・」

ゴーグル男が足に力を入れる

彼の体には相当の重力が掛かっている

内臓も何かしら、影響を受けているようだ

吐き気のようなものが体の内から沸き上がっている

だがそれでも彼は立ち上がろうとする

ゴーグル「・・・アンタみたいな人間が・・・未だに羨ましいと思う・・・」

体のあちこちに血管が浮かび上がる

何かチラチラとした雪のようなものが目の前を飛んでいく

それでも、ゴーグル男は立ち上がった

仙道「な・・・」

ゴーグル「・・・アンタみたいな人間を見てると吐き気がする」

近くの柱に拳を叩きつける

粉塵が舞って、ゴーグル男の体がそれに隠れる


339 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 10:48:41.34 ID:z6BIv6gD0
仙道(しまっ・・・)

仙道の能力は、相手を黙視しなければ使えない

正確な位置を把握することで、その場所に重力を加える能力だからだ

ゴーグル「・・・俺みたいに・・・垣根さんや心理定規さんみたいに知らない間に堕ちたわけじゃない・・・そんな人間が」

ゴーグル男が全力で駆け出す

足の筋力が異常なほどに増強されている

今の彼は、体全てが凶器と化していた

一瞬

ほんの一瞬で、ゴーグル男の体が仙道の前に現れる

仙道「てめ・・・」

ゴーグル「・・・安心して下さい、目が覚めたら・・・」

グシャリ、と肉を潰すような音がした

ゴーグル男の体が仙道の体に当たった

そのまま、二人の体が建物の壁へと突っ込んでいく

壁に激突する寸前、ゴーグル男は足に思い切り力を入れた

ゴーグル男はその場に留まり、ただ仙道だけが壁に速度を落とさず突っ込んでいった

意識の有無など決まっている

下手をすれば死んでいるかもしれない

ゴーグル「・・・目が覚めたら、全てが終わってますよ」

だからこそ、ゴーグル男は呟いた

そんな優しい声を、敵には聞かせられなかった

心理「・・・やるじゃない」

ゴーグル「言ったでしょ、鈍ってなんかいないって」

砂皿「・・・どうする」



340 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 10:49:11.40 ID:z6BIv6gD0

砂皿が意識を無くした仙道に銃を突き付ける

黒子「!」

削板「おい!それは・・・」

ゴーグル「やめときましょう、それをしたらまた裏に逆戻りですから」

砂皿「・・・そうだな」

心理「しばらく意識は戻らないでしょうし、脅威にはならないはずよ」

砂皿「ならば進むか」

黒子「・・・この方は・・・悲しい過去を持っていたんですのね」

ゴーグル「敵の過去になんか同情しなくていいんすよ」

黒子「ですが・・・」

ゴーグル「誰にだって辛いことはある・・・彼の場合、それが大きすぎただけです」

心理「早く行きましょう、同じ所にいてもどうしようもないわ」

削板「・・・俺達は別ルートを進むよ」

心理「・・・そうね、残酷な私を黒子には見られたくないわ」

黒子「・・・ではご無事を」

心理「あなたこそ」

笑い合ってから、二組に別れる

それはまるで、永遠の別れにさえ感じられた

ゴーグル「・・・いいんすか?」

心理「いいわよ、行きましょう」

心理定規がスタスタと歩く

その先には、更に分かれ道が続いていた


341 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 11:07:46.09 ID:z6BIv6gD0

一方「・・・駆動鎧・・・」

番外「やっばいね・・・結構な数だ!!」

巨大な機体が、広い通路をゆっくりと歩いて来る

普通の銃器では全く歯が立たないほどの重厚な装備

そして、片手に握られているのは巨大な機関銃

何よりも6本の脚によって安定感が増しているため、普通の駆動鎧よりも高速移動が可能なようだ

一方(・・・こっちにはまだ気づいてねェか)

番外(・・・電力で動いてるなら、ミサカでもハッキングできるはず・・・)

一方「番外個体、お前・・・あいつのハッキング、出来るか」

番外「やってみるよ」

番外個体が目を閉じる

駆動鎧の制御回線にハッキングを掛けているのだ

だが、その数秒後、駆動鎧の本体から嫌なアナウンスが流れた

「外部からのハッキングによる、不正なアクセスを確認・・・最優先事項、ハッカーの殲滅、繰り返す、ハッカーの殲滅」


一方「!くっそ、ハッキング対策までしてやがったか!」

番外「あいつらが改造してたのか・・・!」

「熱源確認、数二つ・・・」

ジャキン、と音がして駆動鎧が駆け出す

どうやら、駆動鎧の後ろにまた駆動鎧が隠れていたらしい

思っていた以上の数の駆動鎧が、二人を狙っている

一方「くそ・・・!」

首もとのチョーカーのスイッチを一方通行が確認する

もちろん、オンになっている


342 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 13:59:44.07 ID:z6BIv6gD0
「これより殲滅を開始します」

機械的なアナウンスが終わったと同時に、弾幕が二人を襲う

一方「番外個体!」

一方通行が番外個体の体を抱きしめる

それは、ただ守りたいという意志の表れだけではない

彼は今、能力を使用している

「反射」が適用されるため、彼の体には傷一つつかないのだ

それどころか、彼を目掛けて放たれた弾丸が全て駆動鎧へと向かって跳ね返されている

弾丸を多く受ければ受けるほど、相手に与えるダメージは大きくなる

防御も攻撃も兼ね備えた反射を使い、番外個体を守りつつ敵を攻撃しているのだ

番外「ひゃー!!怖い怖い!!」

そんなことを言いながらも、番外個体は笑っている

一方「てめェ・・・緊張感がねェンだよ・・・」

番外「怖いね!!でもスリル満点じゃん!!」

一方「ちっ・・・」

一瞬だけ、この弾丸の嵐の中に放り込んでしまおうかと思える

だがそんな考えは一瞬だけだった

「銃撃を停止・・・これより」


「一酸化炭素ガスによる殲滅を開始します」

そんなアナウンスが流れたのだ

一方(!まずい!!)


343 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 16:03:40.19 ID:z6BIv6gD0
少し息苦しさを感じた瞬間、一方通行が無理矢理床に穴を空けた

そのまま二人は一階下まで落ちていく


番外「おわっ!」

一方「野郎・・・ガスまで使いやがンのかよ」

番外「なんで逃げるのさ!」

一方「てめェが死ぬンだよ!」

番外「ミ、ミサカなら電気分解・・・」

番外個体が顔を真っ赤にして反論を始めるが、一方通行はまるで聞いていない

一方(あの機体なら落ちてきても傷一つつかねェはずだ・・・)

予想通り、駆動鎧は次々と落下してくる

その重さに耐え切れず、床のタイルがめくれ上がる

番外「さ、さっきアナタが弾丸跳ね返したのに・・・」

一方「あンな攻撃で壊れるわけねェだろ」

番外「・・・ミサカがもう一回・・・」

一方「効かねェ攻撃ばっか繰り返しても意味がねェ・・・」

一方通行が地面を蹴る

全てのベクトルを脚の裏に集めることによって、彼の体はすぐさま駆動鎧の隊列の中に割り込んだ

一方「・・・」

右手で駆動鎧の中の一機に触れる

その瞬間、駆動鎧が気味の悪い音を立てて停止した

彼が操ったのは電気の流れだ

一カ所に必要以上の電気を集めたため、駆動鎧が故障したのだ

一方(・・・めンどくせェがやれない相手じゃ・・・)



344 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 16:04:18.89 ID:z6BIv6gD0
番外「!一方通行!」

一方「あァ?なンだ・・・」

一方通行の後方

駆動鎧の隊列の少し左のほうに一人の人間が現れた

「見つけた・・・一方通行だな」

一方「・・・また新手かよ」

現れたのは薄気味悪い格好をした青年だった

この寒い時期にしてもおかしいと思えるほどの厚着

しかも全身が黒で統一されている

真っ白な印象を与える一方通行とは正反対とも言える

新屋「新屋無法・・・一応仲間にはそう呼ばれてるよ」

一方「・・・てめェで何人目だ?くそ・・・」

新屋「いやぁ・・・ごめんね、割と暗部と表の交差を願ってる人間は多いんだ」

一方「・・・駆動鎧を操ってたのはてめェか」

新屋「違うよ、こいつらは自動で動くんだ」

一方「だったらなンで急停止したンだよ」

新屋「電源だけはこっちが握ってるからね・・・警備員の装備を掻っ払ってそのままちょっと改造しただけだからそこまで高度な操作も出来ないし」

新屋という男はかなり饒舌だ

他人と話すことが好きな人間なのだろうか

一方「・・・一つ聞くが・・・ここにはお前以外の能力者はいンのか」

新屋「あれ、風間と桐山は?」

一方「あンなヤツらはどォでもいいンだよ」


345 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 16:05:09.27 ID:z6BIv6gD0
新屋「・・・だっせぇ、風間は何回負ければ気が済むんだよ・・・」

やれやれ、と新屋が頭を振る

新屋「ん?霧野は別ルート、仙道も霧野と同じ・・・スタンはまた別ルート・・・」

一方「・・・何人か知らねェ名前もあるな」

新屋「気にしない気にしない・・・ってことはあと小鳥遊さんだけだね、能力者は」

一方「小鳥遊?」

新屋「たかなしって珍しい苗字だよね」

一方「・・・そいつだけは敬称をつけたな」

新屋「僕らのボスなんだ」

一方「・・・そいつの能力は」

新屋「心理操作系だよ」

一方「あァ?」

一方通行が眉をひそめる

冗談で尋ねた質問にまさか答えが返ってくるとは思わなかったのだ

新屋「LEVEL4でさ・・・なんだっけ、心理停止とかいう能力だよ、強制的に相手の精神を無くすんだ」

一方「・・・」

新屋「しかもそこに自分の感情の中の一部を植え付けるから一時的に自分の操り人形も作れるとか・・・まぁ一気にたくさんを相手にするのは難しいみたいだけど」

一方「心理掌握に比べたらちゃちいが・・・中々なもンだな」

新屋「超能力者と比べたらかわいそうだって」

一方「ちなみに・・・てめェは能力者か」


346 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 16:08:33.23 ID:z6BIv6gD0
新屋「一応ね」

一方「さっきからペラペラ喋ってたンだ・・・今更てめェの能力だけ隠そうなンてしねェよな」

新屋「・・・それもそうだ」

新屋が地面を踏み鳴らす

その瞬間、地面に亀裂が走った

番外「!一方通行がやるのと同じ・・・」

一方「・・・今・・・何をしやがった」

新屋「同じ系統の能力者と戦うのは初めてだな・・・君もそうかな」

一方「・・・」

新屋「ベクトルの向きを操るのが君の能力、そして僕は・・・」


新屋「触れたベクトルの大きさを操る能力・・・能力名は決まってないんだけど、とりあえず・・・万力変化でいいかな」

一方「・・・」

新屋「そんなに怖い顔しないでよ、僕も触れたベクトルしか変えられないし、君と違って自動制御はないんだから」

一方「それでも相性が悪いンだよ」

新屋「そうかな?」

新屋がポン、と足元の瓦礫を蹴飛ばす

それは信じられない速度で一方通行の顔面へ向かった

だが、それが当たることはもちろんない

デフォで設定されている「反射」によって、それは新屋の元へと向かう

新屋「おー、すげ・・・」

新屋が何か面白いものを見たかのように口笛を吹く

新屋「でもそれだけじゃダメだよ、第一位」

新屋の顔面に当たったはずの瓦礫は、まるで力を失ったかのように地面に落ちる

一方「・・・ベクトルをゼロにしやがったな」

新屋「ありゃ、バレちゃったか・・・まぁいいや」

新屋が再び足元の瓦礫を蹴飛ばす


新屋「こっからは持久戦だ、どっちが先に疲れるか・・・競争しよう」


347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/04(金) 18:01:24.48 ID:mauYJAx7o
今のゴーグルって確かAIMの集合体みたいな感じだったよな?
死んだらどうなるんだ?
348 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 18:16:03.71 ID:z6BIv6gD0
>>347 痛覚はあるけど、死にはしないってヤツです

痛いのにずーっと痛いまま体は回復、そしてまだ痛めつけられると

風斬とちょこっと似てるのかもしれないです


垣根「・・・くそ、本当にヒマじゃねぇか・・・」

聞こえるのは垣根の足音だけだ

おそらく、相手は能力者だけではないはずだ

ところどころから少しだけ、戦闘の音がしている

垣根(・・・ちっ、遠すぎてどんな状況か分からないな・・・)

近ければ、音からある程度の戦況を判断することも出来るはずだ

だが、この建物はとにかく入り組んでいる

ただでさえ直線距離が遠い上に、何階にも分かれているためかなりのルートがある

その全部に護衛を配置することは、相手にも不可能だったらしい

そして、偶然当たりのルートを垣根は引いたのだ

垣根(・・・他のヤツらが全員当たりを引いている可能性はないな・・・)

だとしたら、こんな戦闘音はするわけがない

おそらく他のルートでは激しい戦闘が行われているはずだ

垣根(・・・応援に行くべきか・・・)

ちょうど、目の前にはエスカレーターがある

ここから降りれば、下の階に応援に行けるだろう

垣根(・・・そうなると、一旦退くことになるな・・・)

このまま進むべきか

それとも、仲間の元に行くべきか

垣根(・・・信じてみるか)

垣根が、エスカレーターの前を通り過ぎる


349 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 19:13:16.70 ID:z6BIv6gD0
垣根(・・・そうだ、あいつらだって相当な実力者だ・・・)

垣根(・・・俺だけでも頭領を叩きに・・・)

遠くでは相変わらず、大きな音が鳴っている

それが、なぜか気に掛かる

垣根(・・・さっきからずっと音が続いている・・・)

垣根(・・・おかしいな、そんなに梃子摺ってるのか・・・?)

垣根の知っている仲間達は、相当の手慣れのはずだ

一瞬にして、相手を蹴散らしてしまうほどの

しかし、今は違う

ずっと同じ方向から、ずっと同じような音が聞こえている

それは戦闘が長引いているということを表している

垣根(・・・)

くるり、と垣根が向きを変える

さすがに心残りのあるまま進むつもりにはなれなかった

垣根「めんどくせぇな・・・」

向かうのは、下の階

音を辿るようにして、垣根が進んでいく

垣根「これでもしも不利になってたら・・・キレるぞ、マジで」


350 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 20:59:54.44 ID:z6BIv6gD0
ゴーグル「・・・分かれ道っすね」

心理「えぇ・・・」

砂皿「そうだな」

三人の前には分かれ道があった

一つは上の階へ向かうもの

一つは別棟へ向かうもの

ゴーグル「・・・心理定規さんは砂皿さんと組んでください」

心理「・・・いいの?」

ゴーグル「心理定規さんは直接戦闘には向かないですから」

砂皿「・・・いいのか?お前は一人になるぞ」

ゴーグル「上手くやりますよ」

心理「じゃあ・・・私達は別棟のほうに向かうわね」

ゴーグル「それじゃ・・・気をつけて」

砂皿「お前もな」

三人が目配せをしてから別々の道を歩く

ゴーグル「・・・さて、行きますか」

ゴーグル男は一人で通路を進んでいく

少し暗い通路が、とても不気味に感じられる

足元を照らす非常灯も、なぜか薄気味悪い色に見えてしまう

ゴーグル(・・・ん?)

そんな不気味な雰囲気に少し飲まれそうになっていると、どこからか地響きが聞こえた


351 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 21:00:31.15 ID:z6BIv6gD0
ゴーグル(・・・俺の前っすね・・・)

彼の進んでいる通路から、地響きが聞こえるのだ

駆動音とも言うべきか、何かの脚が地面を踏み鳴らしている、そんな音だ

ゴーグル(・・・この重さは明らかに機械のものですね・・・)

ちらり、と通路の先をゴーグル男が覗き込む

そこには、少し形の変わった駆動鎧が佇んでいた

ゴーグル(・・・ファイブオーバー・・・?)

機体に書かれているのは、見覚えのない言葉だった

外観は蟷螂のようだった

後ろ足と言っていいのか、二本足だけで立っているのだ

あれほどの重さをたった二本で支えているのは、少し不思議に思える

ゴーグル(・・・あれは機動性が高いんでしょうか・・・)

目を凝らし、その機体をじっと見つめる

だが外観からだけでは分かることが少ない

ゴーグル(・・・本体に主砲を固定している・・・あれは命中率はそこまで高くはなさそうですね・・・)

鎌の先には、何やら銃口のようなものがある

ゴーグル(・・・!!Gatling Railgun!)

超電磁砲

それは、たしか第三位の能力ではなかったか

彼もあるデータで読んだことがある

能力者の能力を機械に応用する計画がある、と


352 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 21:07:31.96 ID:z6BIv6gD0
ゴーグル(となるとあれは・・・!!)

ギリリ、と音を鳴らしながらファイブオーバーがゴーグル男を見つめる

その一瞬後、銃口から、何かが飛び出した

ゴーグル「くっ・・・」

耳を劈くような音がして、辺り一帯が吹き飛んだ



麦野「・・・な、何なのよあれ・・・」

浜面「・・・ファイブオーバーだ・・・」

滝壺「ファイブオーバー・・・?」

六枚羽の猛攻を凌いだアイテム勢の前にも、ファイブオーバーが佇んでいた

浜面「駆動鎧の改良型・・・しかも、主砲はあの超電磁砲の能力を応用した・・・」

絹旗「・・・Gatling Railgun・・・相当まずそうですね」

浜面「あぁ、威力だけならあの第三位も超えてるんだよ」

フレンダ「・・・超ヤバい訳よ」

滝壺「・・・どうするの?あんなのがウジャウジャいるよ?」

そう、アイテム勢の前に佇んでいたファイブオーバーは一機だけではない

何機ものそれが、辺りをうろついているのだ

麦野(・・・このルートはどうも兵器を大量投入しているみたいね・・・)

麦野が辺りを見回す

防火シャッターや広い通路がいくつもある

適当に進んでいる間に、どうやら建物の中心部へ来ていたようだ

麦野(・・・この防火扉は三重にもなっているのか・・・これならあの主砲も防げるかもしれない・・・)

浜面「お、おい・・・どうしたんだよ麦野」




353 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 21:18:21.49 ID:z6BIv6gD0
麦野「この防火扉・・・相当分厚いわね」

浜面「あぁ、たしか・・・例のグラヴィトンとか連続爆破とかの事件の影響でビルのセキュリティーにかなり力が入ってるんだっけか」

滝壺「へぇ・・・なんでそんなこと知ってるの?」

浜面「この前たまたまニュースで・・・」

絹旗「今はそんなこと言ってる場合じゃないですよ」

フレンダ「大体・・・こんな防火扉、閉まるまでに時間が掛かる訳よ」

麦野「・・・この道を迂回すれば、先には進めるけど・・・」

浜面「迂回するなら今の・・・」

浜面がちらり、とファイブオーバーを見つめる

なぜ、その銃口が彼のほうを向いているのだろうか

浜面「!!み、みんな伏せろ!!」

滝壺「?」

音はほとんどなかった

一瞬の間に、何発もの銃弾が打ち込まれる

絹旗「!!」

絹旗が滝壺とフレンダの脚を払う

浜面は麦野を若干押し倒すようにして突き飛ばす

麦野「い、いきなり・・・」

浜面「くっそ・・・命中率が低くて助かったな・・・」

何百発銃弾が打ち込まれただろうか

だが、それほど時間は経っていない

それほどまでに連射性は優れているのだ

浜面「・・・麦野、また相手は照準を定めてくる・・・」

麦野「・・・分かってるわよ」

浜面「・・・原子崩し、いけるか?」

麦野「見てなさい」


354 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 21:35:59.45 ID:z6BIv6gD0
麦野が手を前にかざす

ファイブオーバーは、見失った標的を捜索しているようだ

麦野(・・・もらった)

麦野の手から放たれるのは、強力な破壊光線だ

原子を曖昧な状態に固定することで打ち出される攻撃

それは、一瞬にして一機のファイブオーバーを消し飛ばした

絹旗「・・・超爽快ですね・・・」

フレンダ「あっはは!!あれ一機いくらくらいする訳よ!?」

浜面「知るかよ・・・とにかく、まず一機・・・」

麦野「・・・ま、まずい・・・」

浜面「ん?どうし・・・」

麦野が原子崩しを放った場所に、ファイブオーバーが集まってくる

おそらく、異常な熱量を感知したのだろう

搭乗者がいない自動型にするため、熱量で敵を感知するのだ

そして、今の麦野の攻撃で相当の熱量が発せられた

浜面「・・・」

麦野「くっ・・・」

再び、銃弾が打ち込まれる

麦野「仕方ないわね・・・」

麦野がポケットから拡散支援半導体を取り出す

絹旗「も、持ってきてたんですか?」

麦野「当たり前でしょ・・・」

麦野が拡散支援半導体を空中へ放り、そこに原子崩しを放った

全ての銃弾が、確実にアイテムを狙う

だが、それらの全てがたった一度の原子崩しによって掻き消される

麦野「・・・ホントはもう少しあとで使いたかったけど・・・」

ゆっくりと麦野が立ち上がりながら呟く


麦野「・・・いいわ、ここでぶっ潰してあげるから」



355 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/04(金) 21:37:01.26 ID:z6BIv6gD0
今日はここまで

スーパーパンプってどういう原理なんだろ

あれすっごいけどもよく分からない

ではおやすみなさい


356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 21:50:26.16 ID:b3LPYNFeo
乙乙乙乙
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/04(金) 21:56:17.27 ID:mauYJAx7o


最近何か足りないと思ってたら筋肉動画が無かったのに今気が付いた
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 22:44:29.70 ID:QZoZ1SYVo
>ゴーグル(・・・!!Gatling Railgun!)

ゴーグルがネイティブ発音してるように見えてわろたwwww
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(福岡県) [sage]:2011/11/04(金) 23:39:31.58 ID:0cOMNpM70
この事件のこと☆はどう思ってるんだろう
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 23:58:33.15 ID:LEcbJQyqo
今日でちょうど半年だったんだね
361 :小豆にかわりまして名無しがお送りします [sage]:2011/11/05(土) 01:29:14.81 ID:96co5TK30
>>1乙!
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 02:57:56.69 ID:M5eN735SO
万力変化はLEVEL5でもおかしくない能力だな
不意打ちじゃないと超電磁砲以下は勝てないし
363 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:11:52.78 ID:znz7aIjQ0
麦野「・・・しかし、中々数が多いわね・・・」

浜面「・・・やっぱり防火扉でやり過ごしたほうがいいんじゃないか?」

麦野「えぇ、そうしましょう」

麦野が近くにあった防火扉のスイッチを押す

いくら麦野の攻撃が強力だとは言っても、これほどの敵を相手にするのはキツイのだ

彼女の能力は威力こそ高いものの、連射性に難がある

また、何度も連続して撃ち続けられるほど楽な能力でもない

半分ほど数を削っただけでも大したことなのだ


滝壺「・・・むぎの、大丈夫?」

麦野「・・・ちょっと疲れたけど大丈夫よ」

少しずつ防火扉が降りてくる

後は残りの機体の攻撃をかわすだけでいい

ファイブオーバーの射撃は攻撃力は高いが命中率が低い

体を少し捻るだけで避けられるのだ

絹旗「・・・超手間取りましたね・・・」

麦野「あんな大量にいるとは思わなかったわ・・・」

フレンダ「でもさっすが麦野な訳よ・・・あの半分を一気に吹き飛ばすなんて」

麦野「・・・そうでもないわ、拡散支援半導体、壊れちゃったもの」


364 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:12:26.76 ID:znz7aIjQ0
麦野が肩を竦めながら何かを差し出す

真っ二つに割れたそれは、麦野の能力の弱点をカバーするものだった

浜面「な、なんで割れたんだよ」

麦野「相手の銃弾に当たったみたいでね・・・」

滝壺「麦野はギリギリ避けたの?」

麦野「えぇ・・・」

そう言いながら、麦野が左の腰を摩る

よく見ると、コートのポケット辺りがまるごとちぎれていた

浜面「お、おい・・・銃弾掠ったんじゃないか?」

麦野「これくらい平気よ」

絹旗「へ、平気って・・・」

フレンダ「血も出てる訳よ・・・!」

麦野「・・・いいからよそ見しないの、相手はまだうろついてるわ・・・」

防火扉を降ろしたとは言ってもまだ安心は出来ない

完全に防火扉が降り切る前に相手に見つかれば大変なことになる

むしろ防火扉が退路を妨げてしまうのだから

かといって今、すぐさま背を向けて駆け出すことは出来ない

万が一見つかれば全員が蜂の巣だ

滝壺「・・・よし、なんとか上手くいきそうだね」

滝壺が上を見上げながら呟く

ゆっくりと降りてきた防火扉は、もう半分ほど降りきっている


365 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:13:03.71 ID:znz7aIjQ0
麦野「そろそろ退くわよ」

麦野が相変わらず腰を摩りながら言う

浜面「あぁ」

絹旗「・・・これからどうしますか?超重要な点です」

麦野「迂回して先に進むわ・・・このルートなら行けるはずよ」

柱に掛かれた簡単な地図を指差しながら麦野が指示を出す

その地図には既にどこがどの店になる、ということも書き込まれていた

夢のショッピングモールが完成することは恐らくないだろう

それが少しだけ、胸を締め付ける

麦野(・・・平和の裏側には常に闇が・・・)

浜面「!む、麦野!」

麦野「どうしたのよ、慌てた声・・・」

麦野が浜面の視線を追う

そこには、恐れていた光景が広がっていた

そう、ファイブオーバーが浜面達を捉えたのだ

防火扉が完全に降りてくる前に

麦野「!」

麦野が慌てて原子崩しを撃とうとする

だが間に合わない

銃弾をかわすことで精一杯だ

地面にしゃがみ込んだため、退くことも出来なかった


366 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:13:43.29 ID:znz7aIjQ0
麦野「みんな!一か八か、防火扉の向こうに駆け込むわよ!」

絹旗「危険です!背中を向けたら・・・」

麦野「今のままじゃどっちみち蜂の巣よ!」

滝壺「・・・防火扉が降りてきたら、私達は追い詰められた形になる」

フレンダ「逃げよう!」

浜面「くそ・・・」

出来る限り急いで立ち上がり、アイテムが駆け出す

防火扉の下を潜るようにして、浜面と滝壺が通路に抜ける

浜面「早く!」

麦野「分かってるわよ・・・」

絹旗「麦野!早くして下さい!」

後から二人もギリギリで駆け込んだ

あとはフレンダだけ

防火扉の下にも、まだ若干の余裕があった

フレンダ「よし・・・これなら・・・」

フレンダが脚に力を入れた

だが、すぐさまその力がガクンと抜けてしまう

ファイブオーバーの放った銃弾は、彼女の左膝を貫通していた



367 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:17:06.24 ID:znz7aIjQ0


一方「・・・」

新屋「・・・さすが一方通行・・・僕の攻撃なんか通りはしない」

一方「よく言うな・・・」

一方通行が新屋を睨みつける

たしかに、一方通行の体には傷一つない

全てのベクトルを反射しているのだ、当然のことであった

だが、もう一つの現象を、一方通行は体験したことがほとんどない

一方「・・・てめェも無傷じゃねェか」

新屋「まぁそりゃね」

一方「・・・攻撃のベクトルをゼロにすればそもそも攻撃では無くなるからな」

新屋「でも君には敵わないな・・・いくらベクトルを大きくしても反射されたら意味がない」

一方「ちっ・・・」

一方通行が新屋の目の前に移動する

新屋「!」

一方「これで・・・」

新屋「甘いよ!」

新屋が拳を一方通行目掛けて振り下ろす

一方(はン・・・ンなもン反射・・・)

だが

バキリ、と鳴ったのは一方通行の顔だった


368 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:17:35.34 ID:znz7aIjQ0
一方「なっ・・・」

新屋「何度か試して分かったんだ・・・君の反射の壁をすり抜けるまではベクトルをゼロにして、反射の壁をすり抜け終わったらまたベクトルを戻せば・・・」

一方「馬鹿か・・・ゼロになってもベクトル自体は存在するンだ・・・第一反射の壁をすり抜けるなンざ・・・」

新屋「そう・・・それはもう一度試したけど失敗した」

新屋が顔をしかめる

ベクトルをゼロにするのは、反射の壁に触れた瞬間でなければならない

その前にゼロにしてしまえばそもそも拳は動かないのだから

しかしそれでは矛盾が起きる

ベクトルの大きさをゼロにし、反射の壁に触れても反射されなかったとする

だが、そのまま拮抗状態が続くのだ

動かない物体は反射されない

反射はされないが、同時に動かないのだから半永久的に反射の壁の中に拳が留まり続ける

手を引き抜くにしても突っ込むにしても、結局はベクトルをまた生み出さなければならない

それをした瞬間、反射が適用されて新屋はダメージを受けてしまう

一方「・・・ならなンで・・・」

新屋「・・・君が一度、ただの人間に敗北したことがあると聞いたんだ」

一方「木原か・・・!」

新屋「拳が反射の壁に当たった瞬間、全く反対に引き抜く動作に切り替えたら・・・それが更に反射され、結果的に君に当たる」

一方「・・・あンな芸当、俺の自分だけの現実を熟知した人間にしか出来ねェ・・・」

新屋「全く同じことなら・・・でもさ、僕の能力なら可能なんだ」

一方「・・・ベクトルの大きさを・・・プラスからゼロまで自由・・・!」


369 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:18:18.81 ID:znz7aIjQ0
一方通行が何かに気づく

新屋の体を振り払い、一旦距離を置いた

一方「・・・マイナスにしやがったな・・・」

新屋「ベクトルがマイナスなら、全く逆向きに動く・・・君の反射の壁に触れた瞬間、ベクトルをマイナスにすればいい」

一方「木原の野郎は自分の拳だけだったが・・・」

新屋「僕は触れた物ならなんだって操れる・・・万が一君が反射の角度を変えても、僕の体には傷一つつきはしない」

一方「・・・俺がいくらベクトルを操っててめェに攻撃しようが・・・ゼロにされたら意味がねェ」

新屋「どうする?なんならそっちの女の子に助けてもらえば?」

番外「ミサカの出る幕じゃないからね」

新屋「残念・・・このままじゃ拉致が明かないのに」

一方「・・・」

口の中に血の味が広がる

先程の新屋の一撃によって口内が切れたのだ

一方(考えろ・・・あいつは・・・)

新屋「さて・・・僕も長々とはやってられないんだ」

新屋が鉄骨を一方通行の横顔目掛けて振りかぶる

一方「!」

反射の壁に当たった瞬間、その鉄骨は勢いを増した

新屋「振りかぶる力が5だとしても・・・マイナス200に設定すれば、君に当たる瞬間の衝撃は強く・・・」

一方「なンだ・・・」

一方通行がその鉄骨に拳をぶつける


370 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:18:52.37 ID:znz7aIjQ0
新屋「!」

勢いよく一方通行のほうに向かっていた鉄骨が、はるか後方へ弾き飛ばされる

新屋「あっぶねぇ・・・」

一方「そォだな・・・てめェは体表面に触れたもののベクトルの大きさを変えてる・・・一々律儀に演算し直して、な」

新屋「!」

一方「今の一瞬の間では、ベクトルの演算は終わらなかった・・・当たり前だ、俺の拳に掛かっていたベクトルまで瞬時に演算出来るわけがねェ・・・そもそも、俺の拳はてめェの体表面には触れてなかったからな」

新屋「な・・・」

一方「なら話は簡単だ」

一方通行が近くの鉄骨を拾い上げる

一方「ほらよ」

ポン、と軽く弾くだけで、その鉄骨はスピードを得た

新屋「ちっ・・・」

新屋はそれが自分に当たった瞬間、その力をマイナスに変えた

鉄骨は一方通行を目掛けて飛んでいく

一方「やっぱりな」

新屋「なんだよ・・・」

一方「てめェは一々演算し直さなけりゃ能力を使用出来ねェ・・・俺みたいな向きを操る能力なら楽だったのにな」

新屋「・・・」

一方「いらないベクトルは全て向きを正反対に・・・俺はそれだけでいい、だがてめェは違う」


371 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:19:18.53 ID:znz7aIjQ0
新屋「そうさ・・・僕の能力は、力の大きさを操ること・・・全てをゼロにしたらそもそも生きていられなくなる」

一方「不必要なものを全てゼロにする、なンて自動制御もない」

新屋「・・・触れたものの力を確認し、その大きさを適切に処理する・・・でもそれがなんなの?」

一方「なンなのかって?」

一方通行が新屋のすぐ真横に移動し、その左手を握る

新屋「こんな・・・!」

一方「俺が今てめェに掛けてるのは握力だけ・・・だがな」

ニヤリ、と笑いながら一方通行が続ける

一方「生体電気や皮膚の動き・・・そンなもンも一瞬で逆流させられンだ」

新屋「しま・・・」

一方「俺とお前の違いはそこだ、全てをゼロにするには全ての大きさを知らなければいけない・・・1と0だけじゃねェ、プラスもあればマイナスもある・・・」

新屋の頭に衝撃が走った

生体電気を操られたのだ

一方「・・・その全てを操る必要があるンだ」

一方「それに自分の生体電気の大きさなンて操れないよな・・・ゼロにしたら死ンじまうンだからよ」

朦朧とする意識の中、新屋は悪魔の声を聞いた

一方「向きは楽だ・・・大きさなンて関係ねェ、全部一本の矢印で表せるンだからな」

一方「・・・てめェの能力の弱点はな・・・」

ガクリ、と新屋が地面に倒れ込んだ

もう意識はない

一方「無駄が多いってことだ」

鼻で笑いながら一方通行が番外個体の元に歩く


372 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:21:33.08 ID:znz7aIjQ0
一方「進むぞ」

番外「キャー、カッコイイー」

一方「うるせェ」

横目で新屋を見つめながら一方通行が顔をしかめる

一方(・・・まさかベクトル操作系でLEVEL4がいたなンてな・・・)

一方(・・・はン、ベクトル操作は俺だけの独壇場じゃねェってことだな)

一方(・・・ベクトルの大きさか・・・)

一方(もしも自動制御があれば・・・)

一方(いや、俺たちの能力にもしもはいらねェ)

もしも万力変化に自動制御があったら、と考えるのは間違っている

そんなことをいうなら、未元物質や超電磁砲、原子崩しだって自動制御があれば第一位に匹敵するのだから

結局、一方通行の最たるものは「ベクトル制御」ではなく「自動制御」および「現象の解析」なのだ

一方(・・・気を引き締めねェとな・・・)


一方(面白くなってきやがった・・・)


373 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 12:22:07.23 ID:znz7aIjQ0
削板「なんなんだよこの機械は!」

黒子「叩いても叩いてもキリがありませんの・・・」

削板「くっそ・・・」

削板と黒子は大量の六枚羽を相手にしていた

削板がいるので圧されているということはない

だが凄まじい弾幕をかい潜るのは非常に神経を使ってしまう

黒子「・・・暗部の恐ろしさを身を持って知りますの!」

近くの鉄骨を六枚羽の真上にテレポートさせる

だがそれでは一機しか破壊出来ない

黒子「・・・軍覇さん、わたくしは援護に回りますの」

削板「あぁ・・・頼む!」

黒子と削板が背中合わせになる

額を伝う汗が気持ち悪い

削板(・・・なんだ、たしかに数は多いが・・・)

黒子(・・・セキュリティーの割にはあまり手強くありませんの)

削板(・・・このルートは当たりだったのか・・・)

六枚羽が次々と撃ち落とされていく

相変わらず、残りの機体の数は気が遠くなるほど多い

だが、それよりもあまりの不甲斐なさが気になってしまう

削板「・・・ん?六枚羽の機体の下に・・・」

そこで削板が気づいた

機体の下に、筒状の何かが取り付けられていることに


374 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 13:42:45.31 ID:znz7aIjQ0
削板「・・・!!黒子!!」

黒子「ば、爆弾ですの!」

黒子が削板の手を握る

一瞬してから、爆弾のスイッチが入った

轟音と共に、辺り一面のタイルが剥がれる

床の一部に穴が開き、下の階が筒抜けになってしまった


削板「あ、危ないところだった・・・」

黒子「・・・あと一瞬でも遅れていれば巻き込まれていましたの・・・」

その爆発から少し離れた場所で、二人は安堵の溜め息をついていた

もしも黒子に能力がなければ

もしも削板が気づくのがもう少し遅ければ

もしもあの爆弾がもっと威力の強いものだったら

そんな、「もしも」を考えるだけで背筋が凍ってしまう

削板「・・・六枚羽はダミー・・・」

黒子「建物の崩壊ごと、敵を葬るのが目的でしたのね・・・」

削板「でもこれで先に進めるはずだ!」

削板が黒子の手を取り、走り出す

ここでまごついている理由は無い

罠があるとしても、どうせいつかは嵌ってしまうのだ

ならば急いだほうがいい


削板(・・・待ってろよみんな・・・もうすぐこの闇の底から引きずり出してやる!)


375 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 14:05:15.30 ID:znz7aIjQ0

土御門「・・・どうだった」

結標「・・・銃器や爆発物の入手ルートは分かったわ」

二人は、暗い夜道を歩いていた

垣根達がビルで交戦している頃、二人は頭を使う作業をしていた

土御門「・・・なんだ、俺たちの入手ルートとは全く違うんだな」

結標「当たり前じゃない、ちょっと調べただけでバレるルートなんて・・・」

土御門「使うやつが新参なら、スポンサーも新参か・・・」

結標「・・・ただ、少し気になることがあってね・・・」

土御門「・・・なんだ」

結標「・・・電気機器関係のものを大量に入手しているらしいのよ」

土御門「どうせ六枚羽や駆動鎧の劣化コピーでも作るつもりだったんだろ」

結標「・・・それと、ファイブオーバーって知ってる?」

土御門「・・・新入生共が使っていた兵器か」

結標「あれも入手してるみたい・・・そっちは本家を」

土御門「そんなものを買える財力が・・・」

結標「あったのよ、それが」

結標が何枚かの資料を見せる

暗闇の五月計画、プロデュース、負の遺産

学園都市の研究のために様々な人間が犠牲になったのだ

その、犠牲者名簿とでも言うべき資料を

土御門「・・・これは」

結標「・・・この研究に使われた人間の親類には、相当な謝礼金が出たそうよ」

土御門「命の値段・・・か」


376 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 14:11:48.15 ID:znz7aIjQ0
結標「そう、その金でファイブオーバーを入手・・・」

土御門「ちょっと待て・・・ならなんだ、新暗部の人間はそういった犠牲者の親類だったのか?」

結標「中にはそういうのもいたって話」

土御門「・・・だから表と裏の交差を・・・」

結標「みんなも同じように不幸にしたかったのか・・・それとも家族が犠牲になった実験を公にしたかったか」

土御門「どっちにしろ、クソみたいな理由なのには変わりない」

結標「全くよ・・・こっちは巻き添え食ってるだけ」

土御門「・・・しかし、それにしてもずいぶんと手の込んだことをするな」

結標「相手には相手の意地があるのよ」

結標が肩をすくめる

正直、暗部から抜け出した人間にとって自ら暗部へ飛び込む人間の気持ちは理解できない

土御門「・・・さて、入手ルートはあとで潰すか」

結標「あぁ、私の仲間に潰させてるから大丈夫よ」

土御門「・・・そりゃ助かる」

結標「あとは、相手の他のアジトだけよ」

土御門「あぁ」


土御門「ま、おいしいとこだけ持っていこうぜ・・・昔からそうやっていたんだからな」


377 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:23:19.17 ID:znz7aIjQ0


ゴーグル「・・・な、なんなんすか・・・」

柱の陰に隠れながら、ゴーグル男は悪態をついていた

彼は今、ファイブオーバーと呼ばれる駆動鎧から逃げている最中だ

だが逃げている、というよりも追い掛けられている、という表現のほうが合っているかもしれない

ファイブオーバーの移動は中々の速さを誇っている

いくら筋力を増強しているとはいえ、ゴーグル男は生身の人間だ

疲れを知らない機械が相手では分が悪い

ゴーグル「・・・くっそ・・・銃なんか効きやしない・・・」

相手は一機だけ

その一機が全く倒せないのだ

ゴーグル「・・・後ろに回れれば、動力を伝えるケーブルを切れる・・・」

問題はどうやって後ろに回るか、だった

彼が走っているのは広い通路だ

このままぐるりと回れば後ろに回れないことはない

だが下手をすれば、無駄に体力を消耗してしまう

もしも後ろに回ったところを見つかればおしまいだ

ゴーグル(AIMの集合体である今の俺は死にはしない・・・)

いくら銃弾を撃ち込まれても、ゴーグル男は死なない

そして、死ねないのだ

分間に何千という銃弾を受けても、苦痛を感じるだけで死ぬことはない

ゴーグル(実際そうなったら・・・気が狂うでしょうね)

全身を銃弾が貫く痛みなんて想像もしたくない

ゴーグル「・・・にしてもどうしますかね」


378 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:28:33.87 ID:znz7aIjQ0
このままでは、体力が尽きてしまう

逃げられる間に、何らかの手を打たなければならないのだ

ゴーグル「・・・でも俺にはどうしようも・・・」

通路を走りながら、ゴーグル男が顔をしかめる

そう、彼は筋力こそ増強されているものの、それ以外に取り柄はないのだ

銃器が効かない相手には、もちろん直接打撃も効かない

こんな状況を、彼ではひっくり返すことが出来ない

ゴーグル(とにかく・・・)

出来る限りファイブオーバーとの距離を開こう、と考えたゴーグル男が不意に誰かにぶつかった

突然、その誰かは上の階から降りてきたのだ

ゴーグル(!敵か・・・)

垣根「いってぇ・・・ってお前、ゴーグル馬鹿か」

ゴーグル「あ、あれ・・・垣根さんがなんでいるんすか」

垣根「いや、お前達が苦戦してるみたいだから手助けしてやろうかって・・・ていうか、なんで心理定規と砂皿がいないんだよ?」

ゴーグル「それは・・・」

立ち止まって話している二人のすぐ傍に、ファイブオーバーが近づいてくる

垣根「あぁ?なんだありゃ」

ゴーグル「しまった・・・ファイブオーバーっていう、なんだかよく分からない敵っす!!」

垣根「駆動鎧の改良型か?」

ゴーグル「さぁ・・・」

ファイブオーバーの鎌のような部分の先が、二人を捉える

そこから、銃弾が放たれた


379 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:32:59.56 ID:znz7aIjQ0
垣根「ちっ・・・あぶねぇな」

翼を用いて、垣根が体を守る

もちろんゴーグル男も一緒に保護している

ゴーグル「す、すげぇ・・・」

垣根「あぁ?なんだよ、連射性ヤバイな」

翼の中に閉じこもったまま、垣根が笑う

彼の翼には、何百発もの銃弾が当たっている

それらの全てはむなしく弾き返され、地面へと落ちて行く

垣根「・・・あいつはどうやって敵を発見してるんだ」

ゴーグル「たぶん、熱ですよ」

垣根「・・・熱源を追うのか」

垣根が未元物質を操作する

その特性は、「熱量を捻じ曲げる」こと

未元物質に当たった全ての熱量は、相手に伝わることなくおかしな動きを始める

ファイブオーバーの攻撃が止んだ

熱量を感知できなくなったため、攻撃目標を見失ったようなものなのだ

垣根「ったくよ・・・めんどくせぇな」

6枚のうち、1枚の翼でファイブオーバーを真っ二つに切り裂く

スパン、と上下に切られたそれはまるで人形のようだった

あんなにも簡単に金属は切れるのか、とゴーグル男は感心する

ゴーグル(・・・違いますね、垣根さんが強いだけっす・・・)

垣根「あれ一機だけか?」

ゴーグル「あ、あぁ・・・そうっすよ」


380 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:36:20.75 ID:znz7aIjQ0
垣根「・・・ま、超電磁砲の劣化コピーじゃ俺には敵わないな」

ゴーグル「・・・そう考えたら、俺が敵う相手じゃないっすね」

垣根「アホか、上手くやればてめぇでも勝てるだろ」

ゴーグル「そうっすかね・・・」

垣根「それで?心理定規と砂皿は」

ゴーグル「別のルートを進んでますよ・・・」

垣根「・・・あの二人がファイブオーバーに遭遇してたらどうなる?」

ゴーグル「心理定規さんの能力はそもそも意味がないっすね」

垣根「砂皿の射撃も通用する相手じゃない」

ゴーグル「・・・でも、あんな高そうな機体をたくさん用意できますか?」

垣根「・・・たしかにそれは思ったが・・・」

垣根が眉をひそめる

何か、引っかかることがあるようだ

ゴーグル「どうしたんすか?」

垣根「・・・いや、進んでみるぞ」

垣根がゴーグル男を先導する

垣根(・・・なんだ・・・)


垣根(何か、イヤな予感がしやがる・・・)



381 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:39:35.84 ID:znz7aIjQ0

フレンダ「・・・あ・・・」

フレンダが自分の膝を見つめる

そこには、何か真っ赤な染みが広がっていた

一瞬遅れて、とてつもない痛みが襲い掛かる

フレンダ「あぁぁぁぁ!!!!」

麦野「フレンダ!!」

防火扉の向こうから、麦野が顔を覗かせる

あと一歩で防火扉をくぐれるのだ

そこに行けば、ファイブオーバーの脅威からも解放される

あと一歩

フレンダ(な、なんで・・・)

AIMの集合体である彼女は、死ぬことがない

だが痛覚は残っているのだ

また、どのような仕組みかは分からないが血も流れるらしい

それを、今まさに身をもって体験したところだ

ズキズキ、なんていう優しい表現ではすまない

脚が千切れたのではないか、というほどの凄まじい痛みが膝を貫いている

麦野「フレンダ!!早く・・・」

麦野が防火扉の向こうから手を伸ばしてくる

フレンダ「麦野・・・」

382 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:43:01.43 ID:znz7aIjQ0
フレンダも、必死に手を伸ばす

だがその手も、あと少しというところで届かない

無情にも、防火扉はゆっくりと、しかし確実に下りてきている

麦野「くそっ!!」

麦野が防火扉を再びくぐろうとする

だが、その体を浜面が掴んだ

浜面「馬鹿野郎!!お前まで巻き込まれるぞ!!」

麦野「放せ!!まだフレンダが・・・」

絹旗「今麦野が行っても何にもなりません!!」

滝壺「フレンダ・・・」

フレンダ「・・・」

フレンダがくるり、と振り返る

そこには相変わらず、何機ものファイブオーバーが佇んでいる

もしもここに麦野が来てしまえば

フレンダ(私もろとも蜂の巣な訳よ・・・)

麦野「フレンダ!!フレンダ、早く掴まれ!!!」

麦野が必死に手を伸ばしてくる

その手の少し横を、ファイブオーバーの放った銃弾が掠める

フレンダ「!」

麦野「フレンダ!!何やってるの、早く!!」

浜面「む、麦野!!危険だ!!!」


383 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:46:42.76 ID:znz7aIjQ0
麦野「フレンダ・・・」

フレンダ「・・・麦野」

フレンダがニコリ、と笑う

何か寂しそうな顔だった

フレンダ「麦野、行って」

麦野「!な、何・・・」

フレンダ「浜面・・・麦野のこと、頼んだ訳よ」

浜面「・・・すぐに助けに来るからな!!」

フレンダ「あはは・・・頼りなーい」

麦野「フレンダ!!アンタ、何言ってるの!!」

フレンダ「・・・」

フレンダがファイブオーバーを見つめる

それは、防火扉目掛けて銃弾を放とうとしていた

このままでは、浜面達まで巻き添えを食ってしまう

フレンダ(それだけは御免な訳よ)

ポケットから、小型の爆弾を取り出す

いざというときのために取っておいた爆弾だ

そこそこの威力があるため、防火扉が完全に閉まるまでの時間なら稼げる

ほんの15秒ほどを、それで稼がなければならない

フレンダ(・・・結局、私は情けない訳よ・・・)


384 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:49:55.04 ID:znz7aIjQ0
ピンを外し、ファイブオーバーの隊列を目掛けて爆弾を投げる

まばゆい閃光と共に、火柱が上がる

麦野「フレンダ・・・!!」

フレンダ「・・・麦野、ありがと」

麦野「フレンダ!!!」

麦野の腕が、フレンダの腕を掴んだ

それは、とても力強く、そして暖かかった

フレンダ(・・・ありがと、もう十分な訳よ)

苦笑してから、フレンダがその手を突き放す

麦野「フ・・・」

フレンダ「浜面、麦野を引っ張って」

浜面「あぁ!!!」

浜面に引っ張られたのだろう、麦野の腕が防火扉の向こうへ引っ込んだ

そのすぐ後に、地面と防火扉がぴったりとくっついた

そこにはもう、少しの隙間もない

フレンダ(・・・やった・・・みんなを守った訳よ)

嬉しそうにフレンダが笑う

だが、彼女の目の前には絶望的な光景が広がっている



385 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:53:18.12 ID:znz7aIjQ0

麦野「フレンダァァァ!!!!」

麦野が防火扉を叩く

その向こうからは、信じられないほど多くの銃声が聞こえる

そこに、少しだけ悲鳴が混じっていた

誰の悲鳴なのか、なんて考えるまでもない

絹旗「・・・麦野・・・」

麦野「浜面!!どうして・・・」

浜面「あぁしなきゃお前もやられてた!!」

麦野「フレンダを見殺しにする気か!!」

浜面「・・・仕方ない」

麦野「ふざけんな・・・」

麦野が浜面を殴り飛ばす

理不尽、と思われようが今の麦野は止まれなかった

麦野「私はあいつを二度も殺しちまった・・・ちくしょう・・・」

滝壺「・・・進もう、むぎの」

麦野「何言ってるのよ!!今からフレンダを・・・」

滝壺「この防火扉を破って戦うつもり?そんなことしても、すぐに蜂の巣になるよ」

麦野「ならどうするのよ!!フレンダが撃たれてるんだ、今だって・・・それなのにすましやがって!!」

浜面「麦野!!」

滝壺「・・・進もう」


386 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 21:59:31.67 ID:znz7aIjQ0
麦野「・・・フレンダを見捨てるつもり・・・?」

滝壺「迂回して進もう、そうすれば活路は・・・」

麦野「あの数のファイブオーバーをどうする!?あんなの、簡単に倒せるわけ・・・」

浜面「だったらここで止まってても意味がないだろ!!」

絹旗「そうですよ!フレンダがどうして私達を逃がしたと思ってるんですか!!」

麦野「うるせぇ!!お前達は・・・お前達はなんでそんなに冷静になれるんだ!」

浜面「ここは表の世界じゃないんだ!」

浜面がきっぱりと言い放つ

それはとても冷たい言葉だ

仲間が傷つくのが当たり前、なんて言いたくもなかった

浜面「・・・それが当たり前の世界だっただろ、忘れたのか?」

麦野「・・・私は・・・」

浜面「・・・もういいんだ、今は進もう・・・フレンダのためにも」

浜面が麦野の手を取る

その手は、力など入っていなかった

麦野はただ、自分の無力さを嘆いていた


387 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 22:04:26.40 ID:znz7aIjQ0
フレンダ(・・・痛い)

体のあちこちを、銃弾が突き抜ける

どれほどの時間が経っただろうか

もう、痛覚が鈍ってきている

だが死ねない

少しすれば、体は回復してしまうのだ

まるで、再び痛めつけてもらうためのように

フレンダ(・・・また一人ぼっちな訳よ)

隣には誰もいない

前には、殺戮兵器だけが佇んでいる

それが、無性に悲しかった

フレンダ(・・・ゴーグル・・・)

いつも傍にいてくれた仲間の名前を心の中で呼ぶ

だが、その声に返事はなかった

どこからも、返事はなかった


388 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/05(土) 22:13:43.90 ID:znz7aIjQ0
今日はここまで

久々に筋肉動画を

久々はやっぱりこの方

セルジオ・オリバ

でかい、とにかくでかい

アーノルドもすごいですが、やっぱこの人の逆三角形というか、でかすぎる体はヤバイ

これで35年前ですからね・・・

アーノルドがかつて、ミスターオリンピアの主催側にあることを訊ねられました

その時、オリバとの一騎打ちが期待されていて、すでにアーノルドはボディビル界のアイドルでした

その訊ねられたのは、「今度のオリンピアの舞台、背景は何色がいいと思う?」ということ

アーノルドは迷わず「黒」と言ったんですね

黒人のオリバはその背景にシルエットを呑まれ、筋肉がぼやけて見えます

一方白人のアーノルドは、むしろシルエットがくっきりと目立って有利なんです

結果、アーノルドは勝利を収めました

もちろんアーノルドもすごいですが、やっぱりオリバが好きですね・・・

何と言っても背中、そしてこの長い腕や胸

脚もかなり太い

もう、才能に溢れすぎていて・・・かっけぇ

http://www.youtube.com/watch?v=ixK6aO8r0qM




ではおやすみなさい
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/06(日) 09:02:22.04 ID:sCmipX98o
銃弾に撃たれ続けるとか想像しただけでめちゃくちゃ痛い
390 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:34:36.66 ID:owzxJoKX0
心理「へぇ・・・中々面白いのがいるわね」

砂皿「全くだ」

柱の陰に隠れている二人

視線の先には、何人かの人間がいる

ただの人間ならばどれほど楽だっただろうか

だが、この場にいるのはただの人間ではない

では能力者なのか、といえば厳密には違う

問題は、その人間が身に纏っている装備

そこには「Equ.DarkMatter」という文字が浮かんでいた

未元物質

この世に存在しない素粒子を組み上げ、自在に操る能力

それは二人がよく知っているものだった

心理「・・・どうして彼等があんなものを持っているのかしら」

砂皿「だいたい、あれは何だ?」

心理「垣根の能力を使用して作った兵器かしら・・・人間が装備してる辺り、色々その場に応じて応用出来るはずね」

砂皿「・・・どう思う?あれには垣根の何パーセントの力が宿っているのか」

心理「あら、試してみればいいじゃない?」

砂皿「・・・」



391 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:35:25.49 ID:owzxJoKX0
砂皿が銃を構える

この距離から彼が外すことは有り得ない

砂皿「やってみるか」

パシュ、という静かな音がする

消音器によって銃声が消されているのだ

放たれた弾丸は、敵の腕を貫いた

「ぐぁぁぁぁっ!」

「!ど、どこかに潜んでいるようだ!」

「ち、ちくしょう・・・こっちにも来てたのかよ!」

「あ、安心しろ!こっちにはこの装備があるんだ!」

敵兵士は非常に混乱している

その様子を見る限り、あまりこのような状況には慣れていないらしい

心理(・・・銃弾を防げないのは仕方ないわね、未元物質には自動制御はないもの)

砂皿(問題は・・・)

「!いたぞ、そこの陰だ!」

心理「!見つかったわ・・・」

砂皿「ちっ・・・」

迫ってきた敵を、砂皿が狙撃する

だが今度は、その銃弾が傷を与えることはなかった


392 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:35:53.99 ID:owzxJoKX0
相手が頭につけているヘルメットのようなもの

そこについていた翼が弾丸を弾いたのだ

砂皿「!」

「ははは!見たかよ!こいつはすげぇ!」

心理「・・・さすが未元物質ね・・・」

心理定規が相手の心理を操作しようと演算を開始する

だが、なぜかいくら相手の思考を読もうとしてもそれは出来なかった

心理(・・・生体電気を捩曲げてる?それとも精神の波を・・・)

「さぁ!今度はこっちの番だな!」

敵兵士の一人がニヤリと笑う

ヘルメットについた翼が広がる

そこを通った光が、あらゆる方向へと乱反射する

砂皿「な、なんだ・・・」

「今だ!撃て!」

砂皿「!」

とっさに砂皿が体を伏せる

彼が先程まで立っていた場所を銃弾が通り過ぎる


393 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:36:21.12 ID:owzxJoKX0
心理「ちっ・・・砂皿、退くわよ」

砂皿「あぁ」

「させるかよ!」

そう言った兵士が、今度は翼をはためかせる

たったそれだけの動作にも関わらず、信じられないほど強靭な風が吹いた

心理「きゃっ・・・」

砂皿「くっ・・・」

砂皿が心理定規の腕を掴み、物陰へと引き込む

「追え!小鳥遊さんに借りでも作っとこうぜ!」

「あぁ!」

心理(小鳥遊・・・?相手の仲間かしら)

砂皿「走るぞ、心理定規」

心理「えぇ」

二人が出来る限り足音を殺しながら駆け出す

普通の相手ならばそれだけで逃げられただろう

だが、今回の相手に「常識」は通用しない


394 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:36:54.82 ID:owzxJoKX0
「いた!あそこだ!」

砂皿「!思っていたよりも見つかるのが早いな・・・」

心理「・・・まさか、未元物質を私達の体に!」

砂皿「何?」

心理「未元物質を相手の体に付着させれば・・・相手の位置を特定出来るみたいなのよ」

砂皿「・・・どこまで逃げても追い掛けてくるのか」

心理「恐らくは」

そう話している間にも、追っ手の足音は後ろから聞こえてくる

心理「一旦体勢を立て直す?」

砂皿「いや、二手に分かれてみよう」

心理「あら、それじゃキツイんじゃない?」

砂皿「相手は見たところ5人・・・そのうちの一人は俺の狙撃で傷を負った」

心理「足音は4つ・・・二手に分かれれば二人ずつになるかしら」

砂皿「上手く分かれてくれれば、だがな」

心理「・・・二人ならなんとかなるかもしれないわ」

砂皿「危険になったら逃げることだけを考えろ」

心理「それじゃ、気をつけて」

砂皿「お前もな」

二人が分かれ道にたどり着く

まるで訓練されているかのように、左右に分かれて走っていく


395 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:37:22.15 ID:owzxJoKX0
「いた!あそこだ!」

砂皿「!思っていたよりも見つかるのが早いな・・・」

心理「・・・まさか、未元物質を私達の体に!」

砂皿「何?」

心理「未元物質を相手の体に付着させれば・・・相手の位置を特定出来るみたいなのよ」

砂皿「・・・どこまで逃げても追い掛けてくるのか」

心理「恐らくは」

そう話している間にも、追っ手の足音は後ろから聞こえてくる

心理「一旦体勢を立て直す?」

砂皿「いや、二手に分かれてみよう」

心理「あら、それじゃキツイんじゃない?」

砂皿「相手は見たところ5人・・・そのうちの一人は俺の狙撃で傷を負った」

心理「足音は4つ・・・二手に分かれれば二人ずつになるかしら」

砂皿「上手く分かれてくれれば、だがな」

心理「・・・二人ならなんとかなるかもしれないわ」

砂皿「危険になったら逃げることだけを考えろ」

心理「それじゃ、気をつけて」

砂皿「お前もな」

二人が分かれ道にたどり着く

まるで訓練されているかのように、左右に分かれて走っていく


396 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:39:39.29 ID:owzxJoKX0
「くそ!二手に分かれやがった!」

「俺達も分かれるぞ!」

「気をつけろ!」

「分かってるって!」

追っ手も二手に分かれた

もちろん、心理定規の後ろにも追っ手はいるのだ

心理(・・・砂皿は有利よね、隠れながらの狙撃はあの相手に有効・・・)

心理(問題は私がどうするか、ね)

手に握ったレディースの銃を見つめる

一般人相手なら瞬殺できそうなそのレディースの銃

だが、今の相手を一撃で仕留められるか、と言われれば答えはNOだ

相手は未元物質を応用した装備をしている

一方の心理定規には、ただの拳銃しかない

能力も通用しない

他に応援もいない

正直、絶望的な状況だったのだ

心理(全く困ったわ・・・)

心理(・・・垣根、あなたの翼は素敵だけど・・・)


心理(今だけは、その素敵な翼を恨むわよ)



397 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:46:37.46 ID:owzxJoKX0

一方「・・・ちっ・・・あの新屋って野郎を倒してからまた駆動鎧が動き出しやがった・・・」

番外「なんなんだろうね・・・どういう仕組みなんだろ?」

一方「知るかよ・・・」

二人の後ろには、駆動鎧の隊列が並んでいた

一方通行の背中に銃弾が当たっている気がする

気がする、というのは彼が全て反射しているためである

何かが反射の膜に当たったということは分かるのだが、それが何なのかをわざわざ確認する必要もないだろう

一方「・・・お前には流れ弾、飛ンでないか」

番外「アナタが反射してくれてるから・・・」

番外個体がくるり、と振り向いて一方通行の顔を見つめる

今の彼女は、一方通行の前を走っている

一方通行が銃弾から庇う形になっている

番外「なんか間抜けな光景だね」

一方「あァ?」

番外「アナタが反射してるせいで攻撃が届かないからさ・・・なんかただミサカ達が駆動鎧を先導してるみたい」

一方「知ったことかよ・・・」


398 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 09:55:55.29 ID:owzxJoKX0
番外「・・・にしても、これからどうするの?」

一方「・・・お前、電撃使いだろ」

番外「うん」

一方「あいつらの電源ケーブルにでもコイルガン打ち込めよ」

番外「えー・・・」

一方「・・・」

一方通行が駆動鎧のほうを見る

何機もいるが、それに恐怖は覚えない

彼にとって駆動鎧などただのオモチャに等しいのだ

一方「・・・番外個体、15秒待ってろ」

番外「15秒でいいの?」

一方「ガキの相手なンてそれで十分だ」

一方通行が駆動鎧の隊列に突っ込んでいく

駆動鎧の側面に触れ、内部の電気を操る

それだけで、機械というものは壊れてしまうのだ

ただでさえ精密な機械の制御システムに、一瞬で大きな電気が加わるのだ

気味の悪い音を立てて駆動鎧が停止する

あとはそれの繰り返しだった


番外「うひゃー・・・こりゃホント、世界の軍隊を相手にしても負けないね」」

399 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 10:28:04.67 ID:owzxJoKX0
一方「あァ?核を打っても死なない、が俺の売り文句だからなァ」

番外「でもさ、そうなったら寂しくない?」

一方「無駄話はいいンだよ」

一方通行がスタスタと歩いていく

響いているのは、二人の足音だけだ

一方(他のヤツらも来てるはずだ・・・)

一方(・・・無事ならいいけどな)

遠くで戦闘の音が聞こえる

だが、あまりに遠すぎるためどこから聞こえてくるのかが分からない

番外「・・・みんな派手にやってるみたいだね」

一方「いいことじゃねェか」

番外「まぁね」

並んで歩く二人の前に、再び駆動鎧が現れる

一方「・・・ま、あいつらも派手にやってンだ」

一方通行がニヤリ、と笑ってから近くの鉄骨を軽く蹴る

ベクトルを操作された鉄骨は、駆動鎧をいとも簡単に叩き潰した


一方「こっちも派手にやろォぜ」

番外「はーい」


400 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 16:29:47.81 ID:owzxJoKX0

フレンダ「・・・」

フレンダの体に、幾度となく銃弾が撃ち込まれる

撃ち込まれた部分は、少ししてから修復される

フレンダ(・・・どれくらい経ったんだろ)

ファイブオーバーの銃弾が尽きるまで、あとどれほどだろうか

どうやら、一機ずつ交代で撃っているらしい

そのためかなり銃弾を節約している

ファイブオーバーの難点は、命中率が低いことだ

動く相手を狙うにはあまり向いていない

だが抵抗をやめたフレンダは、ただの止まっている的と同じ

いくらファイブオーバーの命中率に難があるといっても、これではそんなことは問題ではない

フレンダ(・・・みんな、何してるんだろう)

アイテムの仲間達は、きっと自分をどうにかしようと奔走しているはずだ

そう信じるしかなかった

フレンダ(・・・後ろから回り込んでくるのかな)

苦笑しながら、フレンダがそんな図を想像してみる

正義のヒーローのように飛び込んでくるアイテム

それは中々面白そうな絵面だ


401 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 16:33:50.71 ID:owzxJoKX0
フレンダ(・・・ゴーグルは何やってる訳よ・・・)

こんなにも自分が待ち焦がれているのに

いつもならヘラヘラとしながら自分の隣にいてくれるのに

今、彼はここにはいない

フレンダ(・・・当たり前だよね)

アイテムとスクールはそもそも一緒に行動していなかった

フレンダがこんな目に遭っているとは知るわけがない

第一、アイテムがここにいるということも分からないかもしれないのだ

フレンダ(・・・痛い)

何度目だろうか、肋骨を砕きながら銃弾が体を突き進んだ

脚ももう変な方向に曲がっている

肩も半分以上えぐれている

フレンダ(少ししたら・・・どうせ治っちゃう訳よ)

それが少しだけ辛かった

不死の戦士、といえば聞こえはいいのだがこれでは「わざわざ痛めつけられるために体が治るマゾヒスト」ではないか

フレンダ(・・・マゾヒストじゃないのに)

そんな、冗談めいたことを考える


402 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 16:39:21.76 ID:owzxJoKX0

ゴーグル「・・・ん?なんか、こっちからすごい音がしないですか?」

フレンダのいる場所から少し離れた場所

そこに、垣根とゴーグル男はいた

垣根「あぁ?・・・銃撃か」

ゴーグル「でも、かなり連射してるみたいっすよ」

垣根「知るかよ・・・マシンガンじゃねぇの?」

ゴーグル「・・・誰でしょうか」

垣根「・・・心理定規じゃねぇだろうな」

ゴーグル「いえ、心理定規さんは方向的に正反対っす」

垣根「ならいいや」

ゴーグル「い、いいやって・・・」

垣根「・・・俺達は今、暗部にいるんだ」

ゴーグル「分かってますけど・・・」

垣根「余計な情は捨てろ、スクールのメンバー以外のことを考える必要はねぇんだ」

ゴーグル「・・・」

垣根「・・・ま、あっちのルートに進むのも悪くはないけどな」

ゴーグル「ありがとうございます」

音のする方向へ二人が歩く

だが、銃声はしても狙撃手が見えない

それもそのはずだ、ファイブオーバーと二人がいる場所の間には防火扉があるのだから

垣根「・・・なんだ?こりゃ防火扉だな」

ゴーグル「誰かが落としたんですかね」


403 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 16:43:11.27 ID:owzxJoKX0
垣根「・・・この向こうだな」

ゴーグル「・・・誰かいるんすか」

ゴーグル男が少し大きめの声で呼びかける


フレンダ(・・・聞き間違いだよね)

フレンダは、自嘲の笑みを浮べていた

まさかこんなところにゴーグル男が来るわけがないのだから

自分の悲鳴なんて聞こえない、自分の居場所も知らない彼が


ゴーグル「・・・誰かいるんですか?」

フレンダ「・・・ゴーグル?」

ゴーグル「!!フレンダさん!?」

フレンダ「ゴーグルなの?」

ゴーグル「ど、どうしたんですか・・・」

フレンダ「あっはは・・・ヘマやっちゃって・・・アイテムのみんなは逃げられたから大丈夫・・・」

ゴーグル「だ、大丈夫じゃないっすよ!!」

二人の会話を遮るかのように、けたたましい銃声が響く

ゴーグル「!!だ、大丈夫ですか!?」

フレンダ「・・・気にしないで、改良型の駆動鎧がいるだけ・・・」

ゴーグル「か、改良型・・・?」

垣根「・・・お前、圧されてるのか」

フレンダ「あれ・・・なんか垣根の声も聞こえる訳よ・・・」

垣根「いるんだよ、俺も」



404 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 16:46:36.93 ID:owzxJoKX0
フレンダ「・・・圧されてる訳よ」

ゴーグル「そ、そんな・・・」

垣根「・・・ゴーグル、行くぞ」

ゴーグル「!?何言ってるんですか!!」

垣根「フレンダは死なない体だ、問題ないだろ」

ゴーグル「そんなことはどうでもいいんですよ!!」

ゴーグル男が声を荒げる

防火扉の向こうでは、フレンダが痛めつけられているのだ

ゴーグル「そんなことを見過ごすなんて・・・」

垣根「悪魔と笑うか?鬼と見下すか?ふざけんなよ」

垣根が呆れたように首を振る

垣根「てめぇはスクールの一員だ、アイテムの一員じゃねぇんだよ」

ゴーグル「!」

垣根「ここでフレンダを救って何の得がある?こいつはたしかに銃器には詳しいがヘマをやらかしてむしろ仲間に損をさせるような人間だ」

ゴーグル「そんなこと・・・」

垣根「いいか、俺は俺とスクールのメンバーを守ることは出来る・・・だがそれ以上を背負うつもりはない」

ゴーグル「だったら俺が背負います!!」

垣根「てめぇには無理だ、駆動鎧の一機だけに苦戦してたてめぇに何が出来る」

ゴーグル「・・・」



405 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 16:50:48.88 ID:owzxJoKX0
垣根「フレンダ、アイテムのやつらはお前を助けるつもりだと思うぜ」

フレンダ「分かってる訳よ・・・」

垣根「恨んでもらって構わない」

垣根が歩き出す

こんなことが起きているのに、澄ました顔だ

ゴーグル「・・・垣根さん」

垣根「言っただろ、情は必要ないんだよ」

ゴーグル「情を捨てた人間はただの猿です」

垣根「それでも構わないんだよ」

ゴーグル「・・・スクールのメンバーを・・・あなたは守るんでしたよね」

垣根「あぁ」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・ゴーグル、行って」

ゴーグル「フレンダさん・・・」

フレンダ「相手はとっても多い訳よ・・・ここにアンタが来てもどうしようもない」

ゴーグル「・・・」

フレンダ「いいから・・・それより、こんなことを企んでたヤツらを・・・」

再び銃声が鳴り始める

フレンダの悲鳴が、ゴーグル男の脳内に響く

銃弾を何百発も、それも長い時間浴びているのだ

本来なら気が狂うほどの苦しさだろう

ゴーグル「・・・垣根さん」

垣根「・・・なんだよ」


ゴーグル「・・・俺は、スクールの一員です・・・でも、その前にフレンダさんの友達なんですよ」

垣根「・・・」



406 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 18:57:56.52 ID:owzxJoKX0
ゴーグル「・・・俺は、行きます」

垣根「アホかてめぇ」

ゴーグル「アホで結構ですよ」

ゴーグル男が跳躍する

その体は、一つ上の階まで飛び上がった

天井の固さをものともせず、飛び上がったのだ

上からゴーグル男が垣根のいる場所を覗き込む

ゴーグル「・・・スクールから脱退することになっても・・・俺は行きますよ」

垣根「・・・覚悟は堅いんだな」

ゴーグル「・・・堅いかは分かりません、でも曲がらないことは確かです」

垣根「・・・俺は手伝わない」

ゴーグル「分かってますよ、これは俺の問題です」

垣根「・・・じゃあな」

くるり、と背中を向けた垣根が去っていく

ゴーグル(・・・そう、これは俺の問題っす)

少し移動してから、地面に拳を打ち付ける

地面を砕き、再び下の階へと戻る

彼が降りたのはちょうどファイブオーバーの隊列の後ろだった

ゴーグル(もう、戻れませんね)

そう笑いながら、ゴーグル男が突っ込んでいく



407 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 19:05:58.75 ID:owzxJoKX0
ゴーグル「おぉぉぉぉぉ!!」

ファイブオーバーの中の一機に狙いを定める

外にある電源ケーブルを無理矢理引きちぎる

ゴーグル(よし、これで・・・)

次の一機を見つめた瞬間、彼の頭に衝撃が走った

銃弾ではなく、ファイブオーバーの腕にあたる部分が直撃したのだ

ゴーグル「っ!」

グラリ、と視界が揺れる

世界がグニャグニャと曲がっている様に見えてしまう

だが、そこで倒れるわけにはいかない

ゴーグル(まだっす・・・)

その直撃した腕を、無理矢理な体勢で掴む

ゴーグル(あつっ・・・!)

銃弾を放ったばかりだったのだろうか、その腕は信じられないほど熱を帯びていた

ジュッ、というイヤな音がしてゴーグル男の腕の皮膚が溶けていく

ゴーグル「ぐぁぁぁっ!!」

咄嗟に腕を放すと、溶けた皮膚がベッタリとファイブオーバーの腕に引っ付いてしまった

何か不気味な肌色の粘着質なものが、ファイブオーバーの腕に付いているのだ

ゴーグル(・・・くっそ・・・)


408 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 19:13:31.34 ID:owzxJoKX0
ファイブオーバーはすでにゴーグル男の姿を捉えている

このままでは蜂の巣にされてしまうだろう

ゴーグル「・・・まだ」

近くの瓦礫を拾い上げ、ファイブオーバーへ向かって投げつける

そんな攻撃が効かないのは分かっていた

だが、彼はやらなければならないのだ

ゴーグル「おぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

体を丸め、出来る限り表面積を小さくする

そうすることで、少しでも狙撃されにくくなるはずなのだ

実際、その考えは間違ってはいなかった

フレンダの元にたどり着くまでに受けた銃弾は二発だけ

その二発も、ほとんど掠っただけなのだ

ゴーグル(よし・・・腕も治ったっすね)

先ほど溶けてしまった皮膚も元に戻っている

フレンダ「・・・」

ゴーグル「フレンダさん!」

ゴーグル男がフレンダの体を抱きかかえる

そして、驚いたような顔をする

彼女を抱きかかえた腕に、べっとりと赤黒い液体が付いたのだ

ゴーグル「フレンダさん・・・」

フレンダ「・・・あれ・・・ゴーグル・・・?」

ゴーグル「フレンダさん!!大丈夫っすか!!」

フレンダ「・・・なんで・・・ここに・・・?」

ゴーグル「助けに来ましたよ、早く・・・」

ガクン、とゴーグル男の頭が揺れる

油断しすぎたのだろう、後ろから頭を撃たれてしまったのだ


409 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 19:17:34.40 ID:owzxJoKX0
ゴーグル「あっ・・・」

口からドロリ、と血が零れ出す

フレンダは何度こんな痛みを繰り返したのだろうか

吐き気や目眩が襲ってくる

フレンダ「・・・ゴーグル・・・」

ゴーグル「・・・大丈夫っす・・・行きますよ・・・」

ゴーグル男がフレンダの体を抱きかかえる

その脚に、無情にも銃弾が撃ち込まれる

ゴーグル「・・・早く・・・帰りましょう・・・」

フレンダの正面に立ち、彼女を庇うようにして立ち上がる

それでも、グラリと体は揺れてしまう

ファイブオーバーの「Gatling Railgun」は、威力こそが一番の武器なのだ

命中率、また機動性を犠牲にした代わりに大きな攻撃力を得ている

あの第三位の「超電磁砲」をも凌ぐ威力だと言われている

ゴーグル男は、そんなことは知っていない

だが目の前に佇んでいる駆動鎧達が危険だということだけは理解していた

ゴーグル「・・・なんなんすか、こいつら・・・」



410 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 19:37:49.13 ID:owzxJoKX0
フレンダ「・・・よく分かんないけど・・・」

ゴーグル「くっ・・・」

眼球に銃弾が命中した

ゴーグル「くっそ・・・」

フレンダ「ゴーグル!」

ゴーグル「痛みには慣れてますから・・・っ!」

次の銃弾は、彼の胸に突き刺さった

ゴーグル「っ!!」

心臓が貫かれたのだろうか

そんな経験がないため、正確なことはわからない

ゴーグル「・・・ここで・・・」

フレンダ「ゴーグル・・・なんで来た訳よ・・・」

ゴーグル「・・・なんでって・・・」

ファイブオーバーが銃撃を開始する

まだゴーグル男の頭が揺れる

彼がここに来てまだ2分程度だ

それなのに、すでに何度死んでいるだろうか

ゴーグル(・・・フレンダさんは・・・こんな痛みをずっと・・・)

意識が朦朧とする

それでも、彼はフレンダを庇っていた


411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) :2011/11/06(日) 19:50:50.33 ID:/uIlpfKAO
久しぶりに見に来ました
412 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 19:57:27.70 ID:owzxJoKX0
フレンダ「もういい訳よ・・・早く垣根のとこに・・・」

ゴーグル「イヤっすよ・・・」

フレンダ「なんで・・・」

ゴーグル「俺が決めたことです、俺以外がどうこうすることは出来ません」

フレンダ「・・・でも・・・」

ゴーグル「・・・大丈夫ですから」

ゴーグル男が脚に力を入れる

普段の彼なら、一瞬でかなりの距離を移動できるはずだ

しかし、今は彼の脚はボロボロになっている

せいぜい、ファイブオーバーの隊列の真ん中に飛び込むことしか出来なかった

ゴーグル(いや、これでもいい・・・ここなら相手が攻撃してくれば、互いを攻撃させられる・・・)

ファイブオーバーは綺麗に整列しているのだ

もしもそれら全てが銃撃を始めれば、互いの機体を攻撃し合うことになる

ゴーグル(・・・よし・・・)

フレンダ「!ゴーグル!!」

ゴーグル「・・・?」


413 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 20:15:46.22 ID:owzxJoKX0
ゴーグル男の足元に何かが転がってくる

それは

ゴーグル(!!爆弾・・・)

そう気づいたのと同時に、凄まじい火柱が二人を包んだ

フレンダ「あぁぁぁぁ!!!!!!!!」

ジュワリ、という音が聞こえる

耳も顔も、腕も脚も胸も背中も全てが焼けていくのが分かる

ゴーグル「フレンダさん!!」

口を開いただけで、その中までヤケドを負ってしまう

それでも彼は、フレンダの名を呼んだ

ゴーグル「大丈夫ですか・・・」

フレンダ「あっはは・・・破片が思いっきり・・・」

フレンダが腕を指差す

爆弾の破片が、深々と突き刺さっている

ゴーグル「!」

フレンダ「・・・ゴーグルも・・・ボロボロな訳よ・・・」

ゴーグル「いいんすよ・・・俺は・・・」


414 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 20:34:14.75 ID:owzxJoKX0
フレンダ「・・・こんなに血が出てる訳よ・・・」

ゴーグル男の頬を撫でながらフレンダが呟く

とても泣きそうな表情をしている

ゴーグル「・・・いいんすよ」

フレンダ「でも・・・」

ゴーグル「・・・まさか駆動鎧が爆弾を装備・・・」

そんなことを考えている時間はなかった

彼らは今、ファイブオーバーの隊列の中心にいるのだ

ゴーグル「!フレンダさん、伏せて!」

フレンダ「え・・・」

ゴーグル男がフレンダの体を押し倒す

ちょうど、ファイブオーバーが彼女の頭に狙いを定めていたのだ

放たれた銃弾は、別のファイブオーバーに命中した

いくら分厚い装甲のファイブオーバーとはいえ、超電磁砲の威力には耐えられないようだ

ゴーグル(・・・今撃たれた一機はもう動けないみたいっすね・・・)


415 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 20:41:34.84 ID:owzxJoKX0
ちらり、と横目でファイブオーバーの残りを数える

ゴーグル(・・・10機・・・こりゃ絶望的だ)

一機を片付けるのにどれほどの時間が掛かるだろうか

今は偶然避けられただけなのだ

ゴーグル「・・・そうだ」

ゴーグル男が、ある場所を見つめる

それはゴーグル男が開けた穴だった

天井にぽっかりと穴が開いているのは、二人がいる場所から50Mほど離れた場所だった

ゴーグル(・・・フレンダさんだけでも・・・)

フレンダ「ゴーグル・・・もう、どうしようもない訳よ・・・」

ゴーグル「悲観的にならないでくださいよ」

フレンダ「・・・うん」

ゴーグル「行きますよ・・・」

血の流れ出す脚を引きずり、少しだけ前に進む

だがその瞬間、また銃弾がゴーグル男の頭を打ち抜いた

ゴーグル(・・・まだだ・・・)

フレンダ「ゴーグル・・・!」

ゴーグル「・・・」

横に大きく体を揺らしながら、しかしゴーグル男はフレンダを庇いながら歩く


416 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 20:48:19.53 ID:owzxJoKX0
フレンダ「どうしてそんなに・・・」

ゴーグル「・・・ごめんなさい、あの時アイテムと離れて」

フレンダ「!そ、そんなの仕方ない・・・!」

ゴーグル男の耳たぶが弾け飛んだ

銃弾がフレンダの顔のすぐ横を掠める

フレンダ「・・・ゴーグル・・・」

ゴーグル「・・・当たり前だったんです、俺がスクールと行動するのは」

虚ろな目でゴーグル男が笑う

フレンダはほとんど体が回復しきっている

それは、ゴーグル男が彼女を庇い続けているからだ

フレンダ「ゴーグル!!もういいから!!もう・・・」

ゴーグル「・・・ダメっす」

フレンダ「どうしてそんなに構う訳よ!?私は・・・」

ゴーグル「・・・簡単な理由っす」

ゴーグル男がフレンダを力強く抱きしめる

彼の体に、無数の銃弾が突き刺さる

それでも彼は倒れなかった

フレンダ「どうして・・・」


417 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 20:59:03.95 ID:owzxJoKX0
ゴーグル「・・・フレンダさん、俺は・・・スクールに入って様々なことを学びました」

ゴーグル男が足元の瓦礫をファイブオーバーに投げつける

そんなものは、すぐさま撃ち飛ばされてしまう

無駄な抵抗だということは分かっていた

ゴーグル「・・・仲間との連携、優しさや悲しさ・・・何もかも、あの二人が教えてくれました」

そんなことを呟きながら、ゴーグル男が歩く

少しずつ、あの天井の穴へと近づいていく

ゴーグル「・・・俺は、垣根さんと心理定規さんからたくさん・・・学びました・・・それこそ、愛情も」

フレンダ「・・・だったらあの二人の傍に・・・」

ゴーグル「・・・それでも、俺はフレンダさんの傍にいたかったんです」

ゴーグル男が血だらけの腕に力を入れる

その温もりが、フレンダに安心感を与える

決して強い能力を持っているわけではない

決してこの状況を打破できるわけではない

そんな彼が、なぜかとても頼もしかった

フレンダ「・・・どうして?」

ゴーグル「・・・あの二人は俺にたくさんの感情を教えてくれました・・・」


ゴーグル「でも・・・与えてくれたのはあなたが初めてでしたから」

フレンダ「・・・」





418 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 21:06:55.05 ID:owzxJoKX0
ゴーグル「・・・だからこそ、俺はあなたを守ってみせます」

銃弾を背中に受けながら、やっとゴーグル男が天井の穴の下にたどり着いた

ゴーグル「・・・ここからなら逃げられますよ」

フレンダ「こ、これ・・・どうしたの?」

ゴーグル「さっき俺が開けました・・・」

ゴーグル男がフレンダの体を抱きしめる

ゴーグル「・・・ここからなら逃げられるんですよ」

フレンダ「・・・待って・・・ゴーグルは・・・」

ゴーグル「すぐに追いますよ・・・」

フレンダの体を、ゴーグル男が投げ飛ばす

天井の穴を通った彼女は、そのまま一つ上の階に移動したことになる

フレンダ「で、でも・・・どうせその駆動鎧は・・・」

ゴーグル「そうっすね、このまま俺も逃げたら・・・上の階に上がって追ってきますよ」

ゴーグル男が振り返る

後ろには、もうファイブオーバーが迫っていた


ゴーグル「でも、ここで俺が撃ち続けられれば問題ないっす」



419 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/06(日) 21:13:53.35 ID:owzxJoKX0
早いですが今日はここまで

筋肉動画はケビンを

http://www.youtube.com/watch?v=cO5KyARU9cE 

M3というのも彼の異名ですね

Maryland Muscle Machineの頭文字です

メリーランド出身なため、そんな異名がつきました

三頭と肩が作る独特のシルエット

完璧なバランスの上半身

背中がロニーやフレックスと比べると若干精密さに欠けますがそれでもすごいです

彼がオリンピアになれなかったのは驚きですね

しかしカッコイイ

男前ですしね

ではおやすみなさい


科学側の兵器ってよく分からない


420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/06(日) 22:26:19.15 ID:ucPMjHcAO
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 23:53:26.91 ID:ly6/XRMbo
乙です
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 23:53:54.10 ID:uQq49Dopo
乙なんだよ!
423 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:55:10.75 ID:eR7935xk0
フレンダ「・・・な、何言って・・・」

ゴーグル「・・・俺が囮になります」

フレンダ「!」

ゴーグル「そうすればファイブオーバーを引き付けられますから」

ゴーグル男が身を屈める

銃弾がそのすぐ上を通り過ぎる

彼一人なら、しばらくの間ならどうにか逃げ続けることは出来るはずだ

フレンダ「ふざけないで!私も・・・」

ゴーグル「・・・フレンダさん、麦野さん達の所に行って下さい」

フレンダ「だから・・・」

ゴーグル「あなたがここに帰ってきても足手まといです」

フレンダ「・・・」

ゴーグル「・・・あなたはアイテムの一員でしょう、アイテムの所に行って下さいよ」

フレンダ「私は・・・アンタも守りたい訳よ」

ゴーグル「自分に重きを置いて下さい、俺は大丈夫です」

ゴーグル男が一度だけフレンダの目を見る

絶望的な状況であるはずなのに、とても満足げな顔をしていた

ゴーグル「・・・フレンダさん、お願いします」

フレンダ「・・・待ってて」


424 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:55:42.79 ID:eR7935xk0
フレンダが駆け出す

逃げるのではなく、助けを呼びに行ったのだ

ゴーグル「・・・はぁ」

ファイブオーバーはいつの間にかゴーグル男の回りを囲んでいた

地面にしゃがみ、互いが撃ち合うことを願う

だがそんな願いは叶わなかった

ファイブオーバーが、すぐさまゴーグル男に照準を合わせたのだ

ゴーグル(・・・あぁ・・・こりゃ)

しゃがみ込んだため、逃げることさえままならない

ただ撃たれるための的となってしまったのだ

弾丸が体を突き抜ける感触は何度体験しても慣れなかった

痛みがあまりにも強すぎて、逆に何も感じない

現実離れしすぎた痛みだった

ゴーグル(・・・あとどれくらい・・・弾丸は・・・)

ゴーグル男の喉元に、照準が合わせられた

銃声がして、何かがゴトリと転がる

しかしすぐさまそれは生えてきた

ゴーグル男は死ねない

何度も回復しては撃たれる

最早何も感じなかった

何も


425 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:56:24.91 ID:eR7935xk0
フレンダ「はっ・・・はっ・・・」

焦りと悲しみに背中を押されながら、フレンダは走っていた

今もゴーグル男は銃撃を受けている

自分を逃がすために、囮になったのだから

フレンダ「・・・待ってて・・・」

傷は塞がっても痛みは残っている

頭はズキズキと痛み、脚もあまり力が入らない

走れていることすら奇跡に思えた

フレンダ「・・・」

ゴーグル男はフレンダを選んだ

スクールよりも、フレンダを

フレンダ「・・・私だって・・・本当はアンタを選びたい訳よ」

フレンダ「・・・だけど・・・そんな簡単には選べなかった」

ゴーグル男が別行動をすると告げた時にフレンダもついていけば

こんな迷惑は掛けなかったはずだ

フレンダ「・・・ゴーグル・・・」

涙が頬を伝う

彼を助けなければならない

フレンダには不可能だ

だから


フレンダ「麦野!」

麦野「!フレンダ!?」

だから、超能力者を頼るしかない


426 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:56:53.77 ID:eR7935xk0
フレンダ「麦野、お願いがある訳よ!」

麦野「ま、待って・・・なんでアンタが・・・傷は!?」

浜面「よかった・・・無事だったんだな!」

絹旗「超安心しましたよ・・・」

滝壺「・・・みんな待って・・・フレンダ、どうかしたの?」

フレンダ「お願い・・・ゴーグルを助けて・・・」

麦野「・・・ゴーグル君を・・・?」

フレンダ「私を助けに来てくれて・・・私を逃がすために囮に・・・」

浜面「!本当かよ!?」

絹旗「な、なら今すぐ・・・」

麦野「ま、待ちなさい・・・あの数の駆動鎧を相手にするのは無理よ・・・」

麦野が顔をしかめる

アイテムがあの場から逃げ出したのもそれが理由だった

フレンダ「でもゴーグルが!」

麦野「・・・分かってる、でも私達が行っても結局変わらないわ・・・」

フレンダ「どうして!?ゴーグルは友達なんじゃないの!?」

浜面「・・・フレンダ、この世界には情なんてものはないんだ」

フレンダ「知らない訳よ!ねぇ、助けてあげて!」

絹旗「・・・フレンダ、だったらなんであなたは逃げて来たんですか」

フレンダ「・・・それは」



427 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:57:24.28 ID:eR7935xk0
絹旗「・・・分かってますよ、私だってゴーグルを助けたいです」

フレンダ「だったら・・・」

絹旗「でも方法が無いんです・・・自分を犠牲にしてまで守る理由もありません」

フレンダ「!」

滝壺「・・・フレンダ、私達は・・・ゴーグルのことを嫌いなんじゃないよ」

麦野「・・・ただ、今は彼を助ける時間がないの」

フレンダ「時間って何!?関係ない訳よ!」

麦野「・・・スクールの問題じゃない」

フレンダ「私達の問題な訳よ!」

浜面「フレンダ、俺達には何も出来ない」

フレンダ「なんで・・・」

フレンダが走ってきた方向からは銃声が聞こえ続けている

そこにはゴーグル男がいるのだ

フレンダ「なんで・・・どうして!?麦野も絹旗も滝壺も!私と違って能力があるじゃない!」

絹旗「フレンダ・・・」

フレンダ「私は無力だから!ゴーグル一人を助けることも出来ないから・・・だから・・・」

フレンダが地面に膝をつく

脚が痛むが、そんなことを気にしていられない

フレンダ「お願い・・・ゴーグルを助けて・・・」

麦野「・・・断るわ」

フレンダ「・・・」


428 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:58:00.01 ID:eR7935xk0
麦野「見下してもらっても構わない・・・でもね、私はアイテムのリーダーなの・・・ここで迂闊な指示は出せない」

フレンダ「・・・麦野・・・」

麦野「・・・ごめんなさい、フレンダ・・・でも私の力じゃあなたたちを守るだけで精一杯なのよ」

フレンダ「・・・」

麦野の声は震えていた

フレンダを助けたのはゴーグル男だ

ならば恩返しを、なんて甘いことは通用しない

それが悔しかった

麦野「・・・フレンダ、私には無理よ・・・」

フレンダ「・・・なんで・・・なんで・・・」

浜面「・・・フレンダ、これはスクールの問題なんだ」

フレンダ「ゴーグルはスクールより私を選んでくれた訳よ!」

浜面「・・・俺達はそんなに優しくない」

フレンダ「浜面・・・」

浜面「・・・フレンダ、これは・・・」


垣根「その通り、これはスクールの問題かもな」

浜面「!垣根!?」

垣根「・・・ったくよ、フレンダさんを助けます!とか言って駆け出したくせにやられてたとはな」


429 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:58:31.38 ID:eR7935xk0
垣根が笑いながら歩いてくる

ゴーグル男と別れた後、垣根は迂回しながらここにたどり着いたのだ

フレンダ「・・・垣根、なんで・・・」

垣根「でもフレンダがここにいるってことは・・・お前を助けるって目的は果たしたんだな」

フレンダ「・・・ゴーグルは・・・私を助けてくれた訳よ」

垣根「全く馬鹿だよな、アイテムのヤツなんか助ける必要はねぇのによ」

浜面「垣根!」

浜面が垣根の胸倉を掴む

浜面「ゴーグルの行動は正しかった!それを馬鹿だと・・・?」

垣根「正しい?誰が決めたんだよ・・・まさかお前か?」

浜面「・・・あぁ」

垣根「神様気取りならやめろ、吐き気がする」

浜面「・・・」

垣根「・・・それにお前達も言っただろ?スクールの問題だってよ」

見下したような表情で垣根が笑う

そこには少し、自嘲も混ざっていた

垣根「俺だってそうだ、フレンダが撃たれてるのを無視して進んできた・・・だがそれをお前達は非難出来るか?」

麦野「・・・出来ないわ」

垣根「お前達も言った、スクールのヤツは助けられないと・・・結局それはゴーグル馬鹿の行動を否定したことになる」

浜面「・・・仕方ないんだ」


430 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:59:07.04 ID:eR7935xk0
垣根「仕方ないで済ませるなんて屑だな、出来ないだけだろ」

垣根が浜面の腹に蹴りを入れる

浜面「がはっ・・・」

滝壺「はまづら!」

麦野「垣根!てめぇ・・・」

垣根「・・・俺はお前達を責めないぜ、俺はフレンダを見捨てたからな」

垣根がフレンダを顎で差す

垣根「だがお前達もゴーグルを見捨てた、だったらお前達に俺をどうこう言う権利はない」

フレンダ「・・・垣根、ゴーグルを・・・」

垣根「知るかよ、あいつはスクールよりお前を選んだ・・・いわば裏切り者だな」

フレンダ「そんなことない!」

垣根「・・・あるんだよ」

麦野「・・・垣根、これはスクールの問題なのよね」

垣根「言っておくが、あいつはスクールを裏切った・・・助ける理由なんてねぇだろ?」

滝壺「・・・かきね」

垣根「やなこった、悪いけど俺は心理定規と砂皿を探してるんだよ」

絹旗「スクールだから・・・ですか」

垣根「当たり前だろ」

絹旗「悲しいですね・・・心理定規はあなたの恋人でしょう?」

垣根「暗部でそんな甘ったれたことを言うつもりだったのか、てめぇは」

絹旗「・・・違います」


431 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 08:59:46.07 ID:eR7935xk0
垣根「・・・俺は行く、お前達も行くんだろ?互いに目を背けて進もうぜ」

フレンダ「待って・・・」

歩き出した垣根をフレンダが呼び止める

垣根「・・・なんだよ」

フレンダ「助けて・・・ゴーグルを助けて!」

垣根「・・・言っただろ、裏切り者を切り捨てるのは当然のことだ」

フレンダ「友達なんじゃ・・・」

垣根「友情だの愛情だのは表に置いてきた」

フレンダ「ゴーグルはアンタと心理定規に感情を教えられたって言ってた訳よ!」

垣根「・・・知るかよ、昔から暗部に私情は挟んでない」

フレンダ「・・・どうしても駄目なの・・・?」

垣根「見返りがないだろ、スクールの裏切り者を助けて何になる?」

フレンダ「・・・分かった」

フレンダが垣根の目を見つめる

フレンダ「・・・私の持ってるものは何だって渡す訳よ」

垣根「あぁ?」

フレンダ「お金なんてあげる訳よ・・・鯖缶もいらない!服だって心理定規にあげる!・・・処女だって何なら命だって・・・ゴーグルのためなら捨てていい訳よ!」

浜面「・・・フレンダ・・・」


432 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:00:28.11 ID:eR7935xk0
フレンダ「ねぇ!私はそんなにゴーグルを助けたい訳よ!お願い・・・助けて・・・垣根は力があるじゃない・・・」

垣根「力のある人間は弱者を守るべきってか?綺麗事だな」

フレンダ「・・・なんでそんなに非情になれる訳・・・?」

垣根「・・・暗部はそういう場所だっただろ」

フレンダ「浜面も垣根もおかしい訳よ!なんでそんなに暗部にこだわるの!?ゴーグルはそんなこと捨てて私を助けに来てくれた訳よ!」

垣根「・・・だからなんだ」

フレンダ「なんでそんなに暗部のやり方に戻ろうとする訳よ!?暗部に戻りたいの!?」

垣根「!」

フレンダ「情けない訳よ!暗部から抜け出した人間がまた暗部のやり方に従うなんて・・・」

麦野「フレンダ・・・」

フレンダ「分かってる・・・綺麗事だし、ゴーグルを助けたいだけの言い訳なのも!」

滝壺「・・・」

フレンダ「でも私は少なくとも、ゴーグルのほうが正しいと思う訳よ!」

垣根「正しいかなんててめぇが・・・」

フレンダ「私が決めて何が悪いの!?私が正しいものを決めなきゃいつまでも暗部の真っ只中にいた訳よ!」

垣根「・・・うるせぇな、俺にはわざわざあいつを助ける理由がない」

フレンダ「・・・理由がなきゃ助けられないの・・・?」

垣根「・・・」

フレンダ「アンタはゴーグルのことを好きじゃなかったの!?ゴーグルと笑って、ゴーグルと話して・・・少しでも楽しかったことはないの!?」


433 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:00:55.52 ID:eR7935xk0
垣根「暗部ではそんなこと、気にしてなかった」

フレンダ「暗部の話なんかしてない!今のアンタの話な訳よ!」

垣根「・・・」

フレンダ「・・・イヤだよ・・・みんながまた暗部の人間になったみたいで・・・」

絹旗「フレンダ・・・」

麦野「・・・仕方ないわね」

麦野がフレンダの頭に手を乗せる

フレンダ「・・・麦野?」

麦野「フレンダを助けてもらったお礼はしないと」

滝壺「・・・むぎの、勝算は?」

麦野「無いわよ、正直死ぬと思うわ」

浜面「・・・行くか」

フレンダ「・・・みんな」

麦野「このままだったら暗部の化け物のまま生きる羽目になる・・・だったら人間らしく死んだほうがマシよ」

垣根「感情的だな」

麦野「・・・私達だって感情くらいあるのよ」

垣根「・・・言ったろ、これはスクールの問題だ」

麦野「・・・そんなこと、どうだっていいじゃない・・・本当はアンタも助けに行きたいんじゃない?」


434 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:01:33.17 ID:eR7935xk0
垣根「・・・」

麦野「迂回してここに来る理由なんて二つだけ、前に進むかゴーグル君を助けたかったからか」

垣根「前者だったらどうする」

麦野「アンタ言ったじゃない・・・闇の中に光を作り出したって、だったらそれを自分の手で消したらダメよ」

垣根「・・・分かったよ、アイテムはこのまま進め」

浜面「!じゃあお前は・・・」

垣根「フレンダ、今度はお前が選ぶ番だ」

垣根がフレンダを手招く

垣根「アイテムを選ぶか・・・ゴーグル馬鹿を選ぶか」

フレンダ「決まってる訳よ」

フレンダが垣根の後についていく

フレンダ「・・・どっちも選ぶ」

垣根「いい度胸だ、お前」

麦野「・・・フレンダ」

フレンダ「ゴメンね、麦野・・・でも私はゴーグルも助けたい訳よ」

麦野「いいのよ、あなたが選んだ道なら」

フレンダ「・・・絶対にゴーグルを連れて帰ってくるから」


435 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:02:39.60 ID:eR7935xk0
麦野「・・・垣根、フレンダを頼むわよ」

垣根「任せろ」

麦野「みんな、行きましょう」

絹旗「フレンダ!あんまり無理したらダメですからね!」

滝壺「そうだよフレンダ」

浜面「ま、垣根がついてるから大丈夫かな」

フレンダ「一人でも大丈夫な訳よ!」

垣根「・・・借りてくぜ麦野」

麦野「ちょっとうるさいけど・・・でも、絶対に無くさないでね」

垣根「安心しろ、ゴーグル馬鹿が一番喜ぶもんだからな・・・無くせねぇよ」

フレンダ「・・・行こう」

垣根「あぁ」

垣根がつまらなそうな顔をしながら、しかし嬉しそうに呟く

垣根「全く・・・馬鹿な仲間を持つと大変だな」

フレンダ「・・・馬鹿だけど、ゴーグルはいいヤツな訳よ」

垣根「あぁ、よーく分かってる」


垣根「・・・ホント、ムカつくくらいにお人よしだ、あの馬鹿は」



436 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:03:22.00 ID:eR7935xk0
削板「・・・かなり建物も傷ついてきたな」

黒子「そうですわね・・・」

ビルのある一角で、二人は息を切らしていた

駆動鎧や六枚羽との連戦により、体力をかなり消耗してしまっている

削板「・・・これしきのことでバテるなんて、俺もまだまだだな・・・」

黒子「・・・わたくしも鍛練に励まなければなりませんの」

削板「さて・・・ある程度は片付けたな」

後ろには機械の残骸がゴロゴロと転がっている

六枚羽だけではなく、自立型の駆動鎧の中にも爆弾付きのものがあった

それらに注意しながら戦闘を行ってきた

体力だけではなく精神も削れてしまった

削板「・・・ずいぶんと多いもんだな」

黒子「・・・かなり経済的に負担がありそうですの」

削板「この金は一体どこから・・・」

黒子「さぁ・・・」

二人は知らない

暗闇の五月計画やプロデュースなどの実験を

闇に脚を踏み入れていない二人が知るはずもないのだ

削板「・・・進もう、垣根達も多分進んでるはずだ」

黒子「そうですわね」


437 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:03:51.55 ID:eR7935xk0


一方「・・・番外個体」

番外「何?」

一方「・・・レーダーに敵は引っ掛かってねェか」

番外「いないよ」

一方「・・・」

辺りを警戒しながら、二人は歩く

駆動鎧や六枚羽など敵ではなかった

一方通行がすぐに片付けてしまう

一方(・・・あの新屋って野郎が一番面倒だったな)

新屋を倒した後は全くと言っていいほど危険に晒されていない

それがあまりにも不思議なのだ

一方「・・・なンであいつらは俺達を殺しに掛からない?」

番外「?手を抜いてるってこと?」

一方「・・・もっと正確に位置を掴ンでピンポイントを攻撃する・・・そっちのほうが効率はいいはずだ」

番外「うーん・・・やっぱり表と裏が交差した時のためじゃない?」

一方「どォいう意味だ」

番外「ミサカ達に比べたら今の暗部は戦闘力が低い・・・表とドンパチする時に利用するんじゃないかな」

一方「あいつらは表と争うつもりとは言ってねェ」

番外「そうだっけ?」


438 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:05:36.06 ID:eR7935xk0
一方「・・・俺達を罪人に仕立てるつもりか」

番外「表でミサカ達を信じてた人達を絶望させるために?」

一方「・・・あァ、あいつらは昔表で幸せに暮らしてたヤツらだ」

番外「・・・となるとその腹いせってことかな?」

一方「多分な」

番外「だとしたら最低だね、こっちには損しかないや」

一方「・・・グダグダ言ってねェで進むぞ」

番外「はいはーい」

目の前に現れた駆動鎧を一瞬で一方通行が処理する

一度触れるだけで構わないのだ

一方「・・・表と裏、か」

番外「もしかしたら偶然ミサカ達が幸運なだけかもよ?ミサカ達が強すぎて倒せない、とか」

一方「だといいけどな」

眉をひそめ、思考をめぐらせる

敵の目的が、全く分からない

ビルの戦闘音は外に漏れ出しているだろう

敵は警備員や風紀委員が来るまでにどうにか片付けたいはずではないのか

それなのに、ダラダラと戦闘を長引かせている


一方(・・・敵は何を考えてンだ・・・)


439 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 09:18:32.63 ID:eR7935xk0

「くっそ・・・どこに行った?」

「・・・逃げられてる間に未元物質も落ちたみたいだ、地面にしか反応がない」

「・・・まぁいいさ、どうせこっちに逃げたのは決まってる」

「そうだな、虱潰しに探してみるか」

「女をジワリジワリといたぶるのも面白いだろ」


心理(・・・悪趣味な会話ね)

心理定規は、追っ手の会話を柱の影から聞いていた

右腕に少し傷を負っている

未元物質を応用した装備

それを身に着けた敵に追われているのだ

心理(・・・砂皿は上手くやってるかしら)

脈打つように痛む腕を押さえながら溜め息をつく

心理(・・・ったく、未元物質は本当に常識が通用しないわね・・・)

いくら心を操ろうとしても出来なかったのだ

これでは彼女に成す術はない

心理(・・・さすが垣根ってとこかしら・・・あんなの、垣根の力のほんの一部だけど・・・)

心理(・・・その一部でも私じゃ敵わないのね)


440 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 17:59:12.16 ID:eR7935xk0

「さーて、ここの建物の設計図はこっちが握ってる・・・」

「追い込んでから男の怖さを教えてやろうぜ!」

「そりゃいいな!!」

ケラケラ、と追っ手の二人が笑う

とても下品な笑みだ

心理(・・・あんな男なんて、こっちから願い下げよ)

とはいっても、このままでは心理定規が不利なことに変わりはない

心理(・・・そうね・・・どうしましょう)

何か、彼らにも有効打となるものはないか

未元物質の装備に慣れていない彼らの裏をかける何かが

心理(・・・どこかにあるはずよ・・・)

心理定規が腕を押さえながら歩き出す

わざと、少しだけ足音を立てながら

「!!おい、いたぞ!!」

「ははは!!足音隠す余裕もねぇのかよ!!」

「よし、さっさと終わりにしてお楽しみといきますか!」


心理(・・・そうよ、相手の人数だけでこの建物のセキュリティを賄えるわけがない・・・)

心理(きっとあるはずよ・・・彼らの側に、学園都市製の兵器が)


441 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 18:05:03.90 ID:eR7935xk0

砂皿「・・・こんなものか」

目の前に転がる二人の男を見つめて、砂皿が息を吐く

殺したわけではない

空砲を食らわせて意識を奪っているだけだ

砂皿(・・・武器が一級品だとしても、使うものが優秀でなければ意味がない・・・)

砂皿(この男達はそれが分かっていない)

くるり、と背中を向けて砂皿が歩き出す

砂皿(・・・心理定規のところには・・・ここからは遠いな)

追っ手と戦っている間に、ずいぶんと離れた場所へ来てしまったらしい

砂皿(・・・どうする、俺一人ではさすがに能力者を相手にするのは・・・)


浜面「だ、誰だ!?」

砂皿「ん・・・?」

麦野「あら、アンタってスクールのスナイパーよね」

砂皿「そうだが・・・お前達は」


442 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 18:08:59.34 ID:eR7935xk0
絹旗「アイテムですよ」

砂皿「・・・元暗部か、ならば我々と共闘・・・と考えていいな」

麦野「まぁ・・・敵ではないわね」

浜面「なんだよ・・・銃持ってるからてっきり敵かと思ったよ」

砂皿「そうだ、垣根や心理定規を見てはいないか?」

麦野「垣根は無事よ・・・あいつがやられるわけないけど」

滝壺「心理定規は見てないよ・・・私たちも適当に歩いてたらここに来ただけだもん」

砂皿「そうか・・・」

砂皿が柱に貼られている地図を見つめる

心理定規はおそらく、垣根がいる場所と正反対にいるのだろう

そもそもこの建物の入り口で二手に分かれたのだから当たり前と言ってもいい

砂皿「・・・お前達はこれからどうする?」

浜面「相手のボスをぶっ潰したいんだけどさ・・・」

絹旗「どこにいるのか超見当がつきません」

砂皿「・・・そうだな」


443 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 21:04:47.83 ID:eR7935xk0
絹旗「・・・あなたはどうしますか?」

砂皿「そうだな、一人能力者を貸してはもらえないか」

絹旗「・・・では私がついていきますよ」

麦野「・・・絹旗、無理は禁物よ」

絹旗「超分かってますよ」

滝壺「・・・じゃあ、またね」

砂皿「行くぞ、とりあえず上の階に向かわなければならない」

浜面「・・・よし、二手に分かれればすぐに行けるだろ」

麦野「だとすればいいわね」

砂皿「・・・心理定規を見つけたら回収していてくれ」

麦野「そんなに心配になるの?」

砂皿「・・・相手が悪かったからな」

麦野「・・・相手?」

砂皿「未元物質の能力を応用した装備をしていた」

浜面「!!あれか・・・」


444 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 21:09:32.86 ID:eR7935xk0
砂皿「・・・出来れば、あまりあれとは戦闘をするな」

麦野「・・・いいのよ、未元物質の劣化コピーには前に一度勝ったから」

麦野が砂皿に背中を向ける

麦野「・・・そうだ、アンタはもう見たのかしら?」

砂皿「・・・何を」

麦野「ファイブオーバーっていうのよ」

砂皿「・・・初耳だ」

麦野「超電磁砲を応用した砲弾を装備してる・・・駆動鎧の改良型よ」

砂皿「・・・まて、駆動鎧?」

麦野「・・・どうしたの?」

砂皿「・・・いや・・・行こう、急がなければならない」

砂皿が一人で走り出す

絹旗「で、では!!」

浜面「あぁ、気をつけてな!!」


445 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 21:13:41.34 ID:eR7935xk0

砂皿(・・・駆動鎧だと・・・?)

砂皿の額を汗が伝う

嫌な予感がしているのだ

彼の先ほどまで掲げていた目的は「敵頭領の殲滅」だった

だが、今は違う

今の目的は「心理定規の回収」だった

砂皿(・・・相手が未元物質の劣化コピーならばまだ問題はない・・・)

砂皿(だが駆動鎧と接触すれば危険だ・・・)

心理定規

相手の「心」の距離を操る能力


砂皿(・・・心のない機械などにそんなものが使えるわけがない・・・!!)


446 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/07(月) 21:20:56.63 ID:eR7935xk0
早いですが今日はここまで

そろそろゆっくり更新になります

そこは大目に見てください

では筋肉動画

神からの贈り物の素質、「ギフト」 フィル・ヒース

肩はすごすぎるほど丸く、腕はまさに「史上最高の幅」

背中のシンメトリーは完璧、胸も綺麗

腹筋もかなり綺麗ですし、下半身も文句なし

フレックスやリー、デキスターのようないわゆる「プロポーション型」とロニーやマーカス、ジェイのような「超バルク型」の特徴を両方持っています

1分05秒の背中を見てください

ここまで精密な背中は、歴代のビルダーでもそうはいません

本当に、単体で見るともはや弱点がない選手です

ですが、たった一つ、今のオリンピアで戦うのに不利と思われる弱点が

「骨格が小さい」ことです

もちろん背中は大きいですが、ジェイやロニーのような圧倒的な幅がないんですね

ラットスプレッド(腰に手を当てて背中を広げるポーズ)をとると、骨格の差が明らかになってしまいます

もしも幅がつけば・・・それこそ、化け物になります

ロニー超えも可能なほどの化け物に

http://www.youtube.com/watch?v=s5K5zUEz80Q 

しかし腕が太すぎる・・・

ではおやすみなさい



447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/07(月) 22:18:41.68 ID:jWQQs0xAO
448 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:32:39.30 ID:+0brljSC0
垣根「・・・ここだったな」

防火扉の降りた通路に、垣根とフレンダは佇んでいた

フレンダ「・・・まだ銃声が鳴ってる・・・」

垣根「こりゃまずいな、早く助けねぇと」

軽い調子で垣根が笑う

まるでふざけているようにも見えたが、横顔はかなり引き攣っていた

垣根「・・・麦野の野郎は駆動鎧を相手に出来なかったらしいな」

フレンダ「あんな数の駆動鎧なんて・・・」

垣根「・・・情けねぇな、仮にも第四位なのによ」

フレンダ「じゃあ垣根は相手に出来るの?」

垣根「・・・見てろ」

垣根が6枚の翼を生み出す

フレンダがそれを見るのはいつ以来だろうか

最後に見たのは垣根に尋問された時だった

それが最初に見た時でもあった

フレンダ(あの時はただ圧倒されてたけど・・・そういえばあんまり垣根の能力は詳しく知らない訳よ)

垣根「下がってろフレンダ、巻き込まれるぞ」

フレンダ「・・・?巻き込まれるって何に・・・」


449 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:33:07.24 ID:+0brljSC0
垣根の翼が防火扉を貫いた

ファイブオーバーの超電磁砲でも完全には貫けない三重の防火扉

それがほんの一瞬で粉々に砕け散る

フレンダ「な、何これ・・・」

垣根「堅い壁を突き破るのに難しい理論をいらない、それより堅い物質をぶち当てればいいんだ」

フレンダ「・・・どんな能力な訳よ・・・」

垣根「今はそれじゃないだろ」

防火扉に開いた穴から垣根がその向こうへと進む

フレンダ「ま、待って!そっちには駆動鎧・・・」

垣根「知ったことか」

銃声が響いた

フレンダは咄嗟に目を閉じる

目を開ければ、きっと蜂の巣になった垣根が地面に倒れている

そんなことを考え、ずっと目を閉じていた

だが

垣根「早く来いよ」

垣根の声は、何一つ変わっていなかった


450 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:33:42.27 ID:+0brljSC0
声が聞こえてきたことも信じられない

しかしそれ以上に、その声に焦りや恐れが含まれていないことを信じられなかった

フレンダ「な、なんで無事な訳よ・・・」

垣根「こんなのにやられるような人間が第二位でいられると思うか?」

フレンダ「・・・麦野はこんなに一気には相手に出来ない・・・」

垣根「麦野なんかと一緒にすんなよ」

つまらなそうに垣根が吐き捨てる

彼は第四位の麦野をそんなふうに言える人間なのだ

フレンダの知っている中で最も強かった麦野も、垣根と比べたら子供のようなものなのだ

フレンダ「・・・ゴーグルは?」

垣根「今探してるんだよ」

ファイブオーバーの中の一機を破壊しながら垣根が答える

一体どのような原理なのか、ファイブオーバーは全く攻撃をしていない

フレンダ「なんで止まってる訳よ・・・?」

垣根「未元物質で電子を操ってるんだよ」

フレンダ「・・・アンタって電撃使いなの?」

垣根「そんなちゃちいのと比べるな・・・それは御坂の能力だ」

フレンダ「御坂・・・?たしか第三位・・・」

垣根「お、いたいた」

フレンダ「!」


451 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:34:14.03 ID:+0brljSC0
フレンダがそれを聞いて駆け出す

垣根が見つめる先に、ボロボロになったゴーグル男がいた

右腕はちぎれている

左足も膝から下が潰れ、腹部には巨大な穴が空いていた

顔も血だらけになっていて、傍から見れば明らかに死んでいるように見える

それでも彼は死んでいない

死ぬことが出来ないのだ

ピクピクと左手の人差し指が動いている

意識がほとんどないようだった

フレンダ「ゴーグル!」

フレンダがゴーグル男の左肩を揺する

ドサリ、と力無く彼の体は倒れた

フレンダ「ゴーグル・・・」

ゴーグル「・・・フレンダ・・・さん?」

フレンダ「ゴーグル!大丈夫!?」

ゴーグル「なんで戻ってきて・・・」

垣根「よぉ、派手にやられてるみたいだな」


452 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:34:43.80 ID:+0brljSC0
ゴーグル「垣根さん・・・フレンダさんが連れてきてくれたんですか?」

フレンダ「そうよ・・・感謝してよね・・・」

ゴーグル「あはは・・・ありがたいっす」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿、本当はお前を助ける義理はないんだけどな」

ゴーグル「またまた・・・そういうことをわざわざ言う辺り照れ隠しですね・・・」

垣根「・・・うるせぇな」

ファイブオーバーの中の一機が垣根達の背後に回る

フレンダ「!垣根!」

垣根「邪魔すんじゃねぇよ」

一枚の翼で、それを難無く叩き潰す

粘度細工だったのかと思うほど、駆動鎧は綺麗にプレスされた

フレンダ「・・・すごい」

ゴーグル「久々に見ましたよ・・・未元物質」

垣根「そうか?中々いいだろ」

ゴーグル「相変わらず化け物じみてて・・・何も出来なかった自分が嘘みたいっす」

垣根「しゃあねぇさ、俺が特別なんだよ」

フレンダ「そんなことを・・・」

垣根「フレンダ、頭下げろ」


453 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:35:17.50 ID:+0brljSC0
フレンダ「は?」

垣根「いいから・・・痛い目に遭いたくないだろ」

フレンダ「!」

垣根がフレンダの頭目掛け、翼を地面と水平に動かす

フレンダ「危な・・・」

頭の上、スレスレを翼が切り裂く

その時になって、フレンダの後ろにファイブオーバーが佇んでいたことに気がついた

フレンダ「さ、さっさと言ってくれたらよかったのに!」

垣根「・・・無駄に話したくないんだよ」

垣根が眉をひそめる

三人を囲むように、ファイブオーバーが移動してくる

垣根「・・・めんどくせぇな」

フレンダ「・・・どうするの?」

垣根「あーあー・・・能力者なら少しは俺にも抵抗出来るかもしれないのによ」

呆れたように垣根がため息をつく

垣根「・・・誰か能力者はいねぇのかよ」

虚空に向かって垣根が呟く

もはやファイブオーバーの動きなど気にしてすらいない


454 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:35:54.63 ID:+0brljSC0
ただ翼で叩き潰すだけだった

それだけでファイブオーバーは破壊される

電子を未元物質によって操られてしまえば、殺戮兵器などただの独活の大木なのだ

垣根「・・・つまんねぇ」

ゴーグル「垣根さん・・・わざわざ強敵を望まないで下さいよ」

垣根「いいだろ別に」

フレンダ「・・・あんなにいたファイブオーバーがもう全部片付いた訳よ・・・」

垣根「すごいだろ?こりゃ・・・」


新屋「・・・あれ、一方通行はこっちに来たわけじゃなかったんだ」

垣根が自分の能力を自慢し始めようとした時、いきなり後ろから声が聞こえた

新屋「いけね・・・一方通行にやられてどれくらい経ったんだっけ」

垣根「・・・なんだお前」

新屋「・・・ここにいるってことは元暗部だよね」

垣根「悪いかよ」

新屋「別に・・・でも悪いね、僕は一方通行以外には大して興味ないんだ」


455 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:36:22.30 ID:+0brljSC0
垣根「はぁ?」

垣根が顔をしかめる

目の前にいる男は正直、かなりボロボロになっている

致命傷ではないにしてもその体で戦うというのは些か無理があった

垣根「・・・待て、一方通行を探してここに来たってことは・・・一方通行もこの近くにいるのか」

新屋「知らないよ、適当に歩いてたらここに来たんだから」

垣根「・・・ムカつくな、なんで偉そうに言いやがるんだよ」

新屋「君こそ何?なんか偉そうな態度だけどさ」

垣根「駆動鎧倒し終わって爽快感に浸ってるところにお前みたいなヤツが来たんだ、そりゃムカつくだろ」

新屋「ファイブオーバーを?」

新屋が地元に転がる機械の残骸を見つめる

ぺしゃんこに押し潰されたそれは、たしかにファイブオーバーの残骸に見えた

だがあんなにも厚いファイブオーバーをここまで押し潰せるとは考えにくい

新屋「能力でも使ったの?」

垣根「あぁ」

新屋「へぇ・・・能力者か、悪くないじゃん」

垣根「誰に向かって口聞いてんだよクズ」

新屋「・・・一応、名前は聞いておこうかな」


456 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 10:36:50.89 ID:+0brljSC0
垣根「垣根帝督だ」

新屋「!」

垣根「・・・あぁ?なんだよ、怖じけづいたか?」

新屋「いや・・・そりゃいいや!」

嬉しそうに新屋が手を叩く

パチパチという音だけが、静かな通路に響き渡る

新屋「一方通行の次に強い超能力者だ、それはそれで楽しめそうだからね!」

垣根「・・・手負いの雑魚には負けないんだよ」

新屋「・・・そんな大口を叩けるのも今のうちだよ」

新屋がファイブオーバーの残骸を持ち上げる

ゴーグル「!あんな重さの残骸をいとも簡単に・・・」

フレンダ「肉体強化・・・?」

新屋「さぁ、行きますよ・・・」

重さはどれ程だろうか、鉄の塊が垣根を目掛けて投げ飛ばされた


新屋「前哨戦って感じで・・・出来る限り楽しくやろう、第二位」


457 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:16:12.10 ID:+0brljSC0

一方「・・・なァ」

番外「ん?どうしたの」

一方「・・・やっぱりおかしくねェか」

番外「何が?」

一方「あいつら・・・まるで俺達を敢えて泳がせてるみたいだ」

番外「そりゃ、ミサカ達を倒せる戦力がいないからじゃない?」

一方「・・・ちげェ、それだけじゃねェンだよ」

一方通行が眉をひそめる

相手の目的は暗部の再結成、および表と裏の交差だ

一方「・・・表と裏の交差・・・?」

番外「どうしたの?」

一方「・・・表への干渉は・・・今どうなってる」

番外「・・・そりゃ、風紀委員に二回襲撃を・・・」

一方「・・・そこだ」

携帯を取り出し、一方通行が誰かに電話を掛ける

その相手は、土御門だった


土御門『どうした、何かあったか』

一方「お前ら、今どこにいる」



458 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:20:11.96 ID:+0brljSC0
土御門『俺達は敵の他のアジトにいる』

一方「・・・そっちに敵はいるのか?」

土御門『いや、ほとんどいないな・・・そっちは戦闘用、こっちは恐らく風紀委員への襲撃や武器の倉庫などに使っていると思われる』

一方「・・・風紀委員の支部への攻撃はまだ続いてるか?」

土御門『どういうことだ?』

一方「俺達がここに集まったことで、暗部の再結成の目的には近づいてる・・・だがな、まだ表の人間は裏の存在にほとンど気づいてねェンだ」

土御門『・・・また風紀委員の支部が襲撃を受ける、と?』

一方「そうじゃねェ・・・考えろ、相手は俺達の襲撃によって大きな打撃を受けてる・・・わざわざ風紀委員だけを襲撃する必要はなくなった」

土御門『・・・手当たり次第、誰でもいいから暗部へ引き込むつもりか』

一方「相手に時間はなくなった、俺達が奪ったンだ」

土御門『・・・ということは、無差別的に爆破事件を起こすってことか?』

一方「・・・土御門、俺達は今からこの建物の外に向かう」

土御門『なに?』

一方「お前らのサポートに回ってやるって言ってンだ」


459 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:25:03.05 ID:+0brljSC0
土御門『・・・敵を表で叩くつもりか』

一方「・・・出来る限り目撃者は減らしたい」

土御門『それでも何人かには目撃される可能性が高いぞ』

一方「能力者の喧嘩ってことで終わらせろ」

土御門『そんな簡単に言うな』

一方「・・・どっちにしろ、俺達は敵を殲滅しなきゃならねェンだ」

土御門『・・・敵はどこを襲撃すると思う?』

一方「お前のいるのは作戦用のアジトなンだろ?どっかにデータは落ちてないか」

土御門『いや、銃器の入手経路や駆動鎧を盗んだというデータは見つかってるが・・・』

一方「あァ?わざわざそンなデータだけは置いてるのか」

土御門『どういうことだ』

一方「銃器の入手経路をお前らが潰せば、口止めを自分達がする必要が無くなる・・・駆動鎧の盗難だって、下手をすれば警備員が暗部を捜査しに来るかもしれねェ」

土御門『・・・わざとこのデータを置いてるってことか?』

一方「・・・そもそも、俺達にこのビルの在り処を教えた理由が分からなかった」

一方通行が辺りを見回す

そこは、すでにボロボロになっている

壁の塗装が剥がれ、タイルは捲れ上がり、天井にも穴が開いている

土御門『・・・そこでお前達を再結成させるためじゃないのか?』


460 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:29:53.84 ID:+0brljSC0
一方「・・・いや、ちげェンだ・・・そもそも俺達をここに集めたところで、表との距離が開くだけだ」

土御門『・・・もっと目立つところでドンパチしたほうがいいってことか』

一方「ここはまだ建設中だ、多少の金属音や騒音がしても工事の音だと思われる可能性も高い・・・周りには民家自体ほとンどねェしな」

土御門『なら、なんで相手はそこを舞台に選んだ?』

一方「・・・俺達を表と遠ざけるためだ」

土御門『表と遠ざける?目的と逆じゃないか』

一方「・・・表と裏の交差が目的、なんてメンバーの一人が言っただけだろ」

土御門『なに?』

一方「・・・あいつらには特定の目的が無い、暗部の事件を表の明るみに出すことが目的なヤツがいれば・・・ただ表を暗部に巻き込ンで楽しみたいだけのヤツもいる」

土御門『・・・そうか、そして表への襲撃だけを目的としているヤツもいる・・・』

一方「表に恨みを抱えてるのか、それとも表の特定の組織を潰したいのか・・・それは分からねェ」

土御門『・・・目的の定まっていない組織か』

一方「それぞれが違う目的を持った組織だ」

土御門『・・・表の襲撃・・・もしそこに俺達がいれば阻止されてしまうからな』

一方「こっちはダミーって訳だ・・・いや、こっちもメインではあるのかもな・・・暗部の再結成はなされてる」

土御門『そして、俺達が何も知らないで戦っている間に表で大きな事件を起こす・・・』



461 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:33:55.76 ID:+0brljSC0
一方「分かるか?表に恐怖を与え、闇を復活させる・・・学園都市の治安は最悪になるぞ」

土御門『それこそ、学園都市自体が全て暗部の世界になるな』

一方「・・・それがヤツらの頭領の目的なンだろ」

土御門『・・・メンバーには一切それを伝えていないのか』

一方「そうかもな、頭領だけしか知らない、頭領だけの目的だろ」

土御門『・・・全く、面倒だな・・・ここのアジトも調べきったぞ』

一方「・・・そこに爆発物は?」

土御門『・・・保管していたと思われる倉庫は見つかった、倉庫って言っても一つの部屋を代わりに使ってただけだが』

一方「・・・保管されてた物は」

土御門『すでに持ち出されてたよ・・・どこに持って行ったと思う?』

一方「・・・そうだな、相当人が集まる場所だろ」

土御門『・・・今は平日、そしてここは学生の集まる街だ』

一方「・・・ショッピングモールでもなければ映画館でもない、ヤツらの狙いは・・・」


土御門『・・・学校、それも同時多発的にテロを行うつもりだ』

一方「表と裏の交差なンて生ぬるいものじゃねェ、表自体を消滅させるつもりだ」


462 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:39:03.21 ID:+0brljSC0
土御門『・・・そうだな、それがヤツらの目的だとすれば合点がいく』

一方「どォしてヤツらは俺らを殺さなかったか」

土御門『決まってる、表が消滅したあと、俺達と派手にドンパチをやらかす・・・それに触発された学生達がぞろぞろと組織を組み上げることを狙った』

一方「どォして最初は風紀委員の支部だった」

土御門『表の治安維持組織だからじゃない・・・出来れば、自分達の暗躍に気づかれないよう、治安を維持する組織を潰したかったからか!!』

一方「・・・特に二つ目の被害場所には相当な腕のコンピューター管理者がいるンだとよ」

土御門『・・・そいつを殺そうともしたって訳か』

一方「・・・なぜ俺達を少しずつ暗部に落とした」

土御門『早過ぎれば・・・計画が終わる前に、組織を全て壊滅させられるから』

一方「・・・なぜ、あいつらは駆動鎧なンていう金の掛かるものを用意できた?」

土御門『・・・あいつらの中には実験被験者の家族がいる、相当な謝礼をもらってたはずだ』

一方「・・・実験被験者の家族、そいつらはなンで表と裏の交差を目的にしてる?」

土御門『その事件が明るみに出ることを目的としてるんじゃないのか?』

一方「もう少し単純な理由だろ」



463 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 12:43:05.49 ID:+0brljSC0
土御門『単純な理由・・・?』

一方「お前は思ったことは無いか・・・もしも自分が普通の学生だったら、裏の事情なンてものを知らない、ただ笑って過ごせる学生だったら、なンてことを」

土御門『・・・それはあるさ』

一方「ヤツらもそれに似た感情を持っているンだ」

土御門『羨望・・・いや、嫉妬に近いな』

一方「自分の家族は実験で死ンだ、なのに表のヤツらはそンなことを知らずにヘラヘラ笑って暮らしている」

一方通行が溜め息をつく

その表の人間には、もしかしたら彼も入っているのかもしれないのだから

一方「そこまで追い詰められた人間が、理性的に実験を明るみに公表しよう、なンて考えられるか?」

土御門『無理だな』

一方「そォだ、そンな平和的かつ有効的な解決なンてあいつらはもう考えられない・・・家族を失った人間の悲しみは相当なもンだろォからな」

土御門『じゃあ聞くぞ・・・ヤツらの中にいる、そんな悲しい被害者の目的は』

一方「・・・」


一方「全員に、自分と同じ不幸を味わわせることだ・・・それも、自分の手によって」


464 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 14:28:13.83 ID:+0brljSC0

垣根「・・・前哨戦・・・だと?」

新屋「・・・そうだよ、ちょっとダメージが残ってるのが残念だけどね」

新屋が首を鳴らしながら呟く

額には少し血の塊がある

一方通行との戦いで受けた傷だ

垣根「・・・てめぇ、俺をそんな言い方するなんてナメてやがるな」

新屋「別にナメてないよ、でも一方通行に負けた第二位は所詮前哨戦用の相手ってことでしょ」

垣根「・・・面白いな」

新屋「そう?冗談じゃないんだけどな」

垣根が翼に力を込める

バキバキ、という嫌な音がしてそれは大きさを増していく

新屋「へぇ・・・すごいね」

垣根「ビビったかよ、三下」

新屋「別に・・・一方通行みたいに反射の壁があるわけじゃないからね」

新屋がちらり、とフレンダとゴーグル男を見る


465 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 14:32:38.23 ID:+0brljSC0
新屋「いいの?そっちの二人は逃げなくて」

ゴーグル「・・・なんで逃げる必要があるんですか」

新屋「別にいいけどさ・・・能力者同士の戦いに巻き込まれていいのかな、と思って」

ゴーグル「・・・」

ゴーグル男が駆け出す

拳を握り、新屋の顔を目掛けてそれを振りかぶる

新屋「はぁ・・・めんどくさいな」

新屋の顔に当たった拳は、その瞬間に動きを止めた

ゴーグル「!?」

新屋「どうしたの?さっきまでの威勢がないけど」

ゴーグル男の拳を握り、新屋が彼の体を投げ飛ばす

新屋は決して筋肉質なわけではない

そのはずなのに、ゴーグル男の体は相当遠くまで飛ばされた

ゴーグル「なっ・・・」

柱にぶつかってから、ゴーグル男が地面に激突する

フレンダ「ゴーグル!!」

ゴーグル「な、なんなんすか今の・・・」

垣根「・・・肉体強化か?」

新屋「そんなんじゃないよ」


466 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 14:45:04.89 ID:+0brljSC0
垣根「・・・ゴーグル馬鹿、フレンダ・・・下がってろ」

垣根が一歩前に踏み出す

新屋との距離は約15m

そんな距離は、垣根にとって射程圏内もいいところだ

垣根(・・・なんだこいつ・・・構えてねぇな)

新屋「・・・言っておくけど、多分そっちの女の子でも僕には対抗できないよ」

フレンダ「・・・そんなこと分かってる訳よ・・・」

フレンダが拳を握り締める

彼女には、新屋の能力の正体は掴めていない

しかしゴーグル男の攻撃を凌いだ男に彼女が勝てるとは思えなかった

垣根「フレンダなんてどうでもいいんだよ」

新屋「おっと、そうでしたね」

垣根「・・・行くぞ」


467 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 15:22:18.94 ID:+0brljSC0
垣根が翼をはためかせる

周りに落ちていた瓦礫が風によって巻き上げられる

垣根「・・・あ?」

新屋の体にも、もちろん瓦礫は当たっているように見える

だが、彼の顔色は何一つ変わっていない

当たっているはずの瓦礫は、彼に傷を与えていないのだ

垣根(・・・試してみるか)

それに引っ掛かりを覚えた垣根が、翼での直接打撃に切り替える

新屋「!!」

その攻撃を身を捻って新屋がかわす

垣根「・・・なるほどな、肉体強化なら今の攻撃も避ける必要はない」

新屋「・・・ありゃ、バレちゃいましたか」

垣根「俺の未元物質はまだ解析出来てないんだな」

新屋「・・・ご明答」

垣根「・・・てめぇの能力はベクトル操作系だ、一方通行と戦ったときと似てるんだよ」

新屋「へぇ・・・感覚で分かるんですか」


468 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 15:40:51.53 ID:+0brljSC0
垣根「・・・それなら合点がいくんだよ、ゴーグル男の攻撃も、瓦礫の雨も効かなかった理由がな」

新屋「・・・僕の能力はベクトルの大きさを操ることだよ」

垣根「ほぉ、そりゃ一方通行も苦戦するだろうな」

新屋「・・・そうでもないね、すぐにやられたよ」

垣根「あぁ?もう一度戦ったのかよ」

新屋「・・・だからこんなにボロボロなんだって」

垣根「そうかい」

新屋「・・・君の未元物質は解析が難しそうだ・・・」

垣根「・・・当たり前だろ、常識に縛られてるてめぇじゃ解析なんてできねぇんだよ」

新屋「どうかな・・・やってあげるよ」

垣根「あぁ?出来るならな」

新屋「・・・さて、今度は僕の番かな」

新屋が壁から剥き出しの鉄骨を抜き取る

何か電気系統のケーブルのようなものがついている


469 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 16:54:22.90 ID:+0brljSC0
垣根「・・・すげぇな、ベクトル操作系は一方通行以外知らねぇもんでな」

新屋「・・・あんまり多い能力ではないよ」

鉄骨を適当に振り回しながら、新屋が垣根ににじり寄っていく

新屋「触れてるもののベクトルの大きさを変えられる・・・この鉄骨に掛かっているベクトルもね」

垣根「重力をゼロにして、振り回す推進力だけを増大させてるのか」

新屋「そういうこと」

鉄骨が、垣根の頭を横から薙ぐ

だがそれを、垣根は翼で防いだ

新屋「・・・すごいね、その翼」

垣根「カッコイーだろ、お前なんかのちんけな能力と比べるなよ」

新屋「・・・そっか」

新屋が翼の一枚に触れる

垣根「!!」

新屋「・・・一方通行みたいに、未元物質全てを解析できるほどの演算能力は持ってない・・・」

垣根「放せ!」

垣根が新屋の体を吹き飛ばす

だが、空中で新屋は立ち止まる

重力を調整し、空中で静止しているのだ


470 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 16:58:36.31 ID:+0brljSC0
新屋「・・・なるほど、ベクトル自体は存在してるわけだ・・・」

垣根「ベクトルの存在しない素粒子はあり得ない・・・いや、作り出せるがそれは結局動かないままだからな」

新屋「生み出せるけど応用の仕方がないわけか・・・」

垣根「ま、そんなもん作る必要もないんだよ」

垣根の翼が、新屋の喉下を目掛けて伸びていく

柔らかそうなその翼は、鉄をいとも簡単に砕くほどの硬度を誇っている

新屋「・・・やってみるかな」

垣根「あ?」

新屋がそれをかわし、翼の側面に触れる

その瞬間、強制的に翼の一部が分解された

垣根「!!」

新屋「・・・どんなベクトルだろうと、大きさをいじれば消すことが出来る・・・」

垣根「てめぇ・・・解析しやがったのか」

新屋「ちょっと違うかな・・・今の翼のベクトルをゼロにしただけだよ、どうせ君はすぐ別の翼を生み出せるんでしょ?」

垣根「ちっ・・・」

舌打ちと同時に、垣根が再び翼を組み上げる

その構成式は、やはり新屋に理解できるものではない



471 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 17:02:38.31 ID:+0brljSC0
新屋「僕の能力の弱点は、一一相手のベクトルの本質や大きさを解析しなきゃいけないことだね」

垣根「はん・・・それでもLEVEL4だ、この世の物理法則ならある程度すぐに解析できるんだろ?」

新屋「うん・・・でも、君は違う」

足元の瓦礫を蹴りながら、新屋が答える

新屋「・・・僕が解析した物質と違う物質で翼を組み上げれば、また僕は解析しなおさなきゃならない」

垣根「しかも、俺は無尽蔵に物質を作り上げられる」

新屋「意味のないことさ、君の攻撃をゼロにしようなんて」

だから、と新屋が続ける

新屋「攻撃を避けて、自分の一撃を当てることだけに集中する」

垣根「相手が誰であろうと変わらないってことか」

新屋「・・・未元物質、この世には存在しない素粒子・・・それでも、いつまでも永劫に形を保ち続けるのは不可能だ、それの硬度以上の物体をぶつけられれば崩れ去る」

新屋が無数の瓦礫を一瞬で垣根へと放る

新屋「だとしたら、僕はそれを実行するだけだ」

垣根「いい度胸だ、褒めてやる」



472 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 17:23:58.22 ID:+0brljSC0
新屋「・・・そうだ、一つだけ聞いていいかな?」

瓦礫や鉄骨を放り投げながら、楽しそうに新屋が笑う

垣根「なんだよ」

それらをかわしながら、めんどくさそうに垣根が答える

新屋「・・・君はなんで暗部から抜け出したの?」

垣根「イヤになったからだ、このクソッタレな世界が」

新屋「そっか・・・そりゃ残念だね、こんなに強いんだから暗部で人殺しを続ければよかったのに」

垣根「てめぇはなんで暗部にいるんだ」

新屋「・・・理由はないんだけどさ、ただここ以外に居場所もないし」

垣根「・・・つまんねぇ理由だ」

垣根が未元物質をばら撒く

性質は、「電子を殺人光線に変える」こと

電子を通常の物理法則ではあり得ない動きにすることで、敵の肉体を破壊するのだ

新屋「・・・電子だね」

新屋は、電子のベクトルの大きさをゼロに変える

垣根「なるほどな・・・一方通行は無意識にベクトル反射の穴を持ってたからこの攻撃は効いたが・・・」

新屋「・・・僕には効かないよ、動きじゃなくて大きさを操るんだから」

垣根「そりゃ中々だな」


473 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 17:43:44.22 ID:+0brljSC0
新屋「・・・でもさ、なんでわざわざ電子を使って攻撃するの?」

垣根「はぁ?」

新屋「君のそれなら、別にこの世のものに頼らなくても僕くらい簡単に殺せるでしょ」

垣根「アホかてめぇ、そんなんじゃつまらないだろ」

垣根がニヤニヤと笑う

まるで新屋を見下しているかのような言い方だった

実際、見下しているのだ

彼は学園都市の第二位、しかも一方通行と違って科学の範疇に収まりきらない能力の持ち主なのだ

垣根「分かるか?雑魚を雑魚のまま倒しても面白くない・・・せめて楽しまなきゃな」

新屋「なんかムカつく台詞だね」

垣根「当たり前だ、ムカつかせてるんだからよ」

新屋「・・・いいよ、ならやってあげる」

突然、新屋の姿が消える

垣根(・・・なるほど、光のベクトルをゼロにしたか・・・光が反射しなけりゃ人間の目にものは見えない・・・)

垣根(・・・あぁそうか、もしかしたらこいつが風紀委員の支部に爆発物を仕掛けたのかもな)

そんな関係ないことを考える余裕が、垣根にはあった



474 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 18:09:37.05 ID:+0brljSC0
新屋(・・・今、垣根帝督の目に俺は見えていないはず)

新屋は、垣根の後方に忍び寄っていた

自分に触れた光のベクトルをゼロにすることで、自分の姿を垣根の視界から消しているのだ

新屋(・・・僕の能力は攻撃一辺倒じゃない・・・)

新屋(こうやって敵に自分の姿を捉えさせず、後ろから大きなダメージを与える・・・)

新屋(・・・たしかに威力だけなら明らかに超能力者には劣ってしまう、それでもこういった細かいギミックなら負ける気がしないよね)

足元に落ちている瓦礫にそっと新屋が触れる

もちろん、それに当たっている光のベクトルもゼロにしてしまう

それにより、その瓦礫も垣根やフレンダ達の目には映らなくなる

新屋(・・・この方法なら、感知されることなく・・・)

その時、くるりと垣根が新屋のほうを振り向いた

まるでそこに新屋がいると分かっているかのように

新屋(・・・なんで・・・)


垣根「見つけたぜ」


475 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 18:31:58.69 ID:+0brljSC0
新屋(!!)

垣根「いつまで隠れてるつもりになってんだよ、てめぇはカメレオンじゃねぇだろ」

垣根の翼が、新屋の体を吹き飛ばす

新屋「がぁぁっ!!」

垣根「あぁ?なんだよ・・・複数のベクトルの大きさを一気に操るのは無理なのか?それとも演算が難しすぎてお前の頭じゃ処理しきれないか・・・」

垣根が地面に唾を吐く

先ほどまでの愉快そうな雰囲気と違い、どこか幻滅しているようだった

垣根「・・・それでよく俺を前哨戦だとか言えたな」

新屋「ごほっ・・・」

演算を妨害された新屋の姿が浮かび上がる

痛みによって、演算を行えなくなったのだ

垣根「ったくよ・・・ベクトル操作ってのは相当細かい演算らしいな・・・そりゃ残念だ」

新屋「くっ・・・」

垣根「動くな、悪いけどお前には興味なくなったんだよ」

新屋「まだだ・・・」

新屋が自分の体に当たっている「大気」のベクトルを操作する

背中に巨大な風の噴射を作り、垣根へと突っ込んでいく

新屋「まだ僕は負けてない!!」

垣根「・・・まだ負けてないだと?」

垣根の翼と新屋の体が衝突する


476 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 18:42:50.34 ID:+0brljSC0
新屋「がはっ!」

垣根「・・・大気のベクトルをお前の演算できる限り最大にしてるわけだな・・・だがな、さっきからずーっと引っかかってたんだよ」

垣根がトントン、と自分のこめかみを叩く

彼には一つだけ、分からないことがあったのだ

垣根「お前さ、さっきからなんで自分の投げた瓦礫のベクトルを一定以上に上げてないんだよ」

新屋「!!」

垣根「決まってるよな・・・そうだ、決まってることだ」

垣根が新屋へと寄っていく

その足音が、まるで地獄へ向かうカウントダウンであるかのようにさえ聞こえる

垣根「お前は今まで、どれほどのベクトルを演算したか・・・そんなこと俺にはわからないがな」

新屋「く、来るな・・・」

垣根「だがてめぇが生み出せるベクトルは、所詮てめぇの脳味噌で演算しきれるレベルに過ぎないんだよ」

新屋「来るな!!」

垣根「・・・ビッグバン並のプラスのベクトルも、ブラックホールのように全てを打ち消すマイナスのベクトルも生み出せない・・・当たり前だ、そんな規模のベクトルを操れるならてめぇは神にだってなれるんだからな」

新屋「くそ!」

新屋が足元に転がっているファイブオーバーの残骸を垣根に投げつける

彼が演算し、生み出せるありったけのベクトルを垣根にぶつけるために



477 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 19:32:44.59 ID:+0brljSC0
垣根「・・・つまんねぇな、所詮は一方通行よりも下のベクトル操作系だ」

新屋に背を向け、垣根が呟く

新屋「シカトしてんじゃねぇよ!!!!」

垣根「・・・くっだらねぇ」

凄まじい衝撃が、辺りを包み込んだ

瓦礫が巻き上がり、ゴーグル男とフレンダは思わず目を閉じてしまった

粉塵のせいで何も見えず、轟音のせいで何も聞こえない

そんな世界が、二人を包んでいたのだ

ゴーグル(・・・か、垣根さんは・・・)

まるで至近距離からスタングレネードを喰らったかのような感覚に、ゴーグル男の脳味噌は揺れていた

下手をすれば意識さえ失ってしまうほどの衝撃だったのだ

それは、恐らく垣根にあのファイブオーバーの残骸が命中したことによる衝撃だとゴーグル男は思っていた

だが、違ったのだ

粉塵が晴れ、ゴーグル男の視覚が回復したときに彼は知る

そこにいたのは、スクールのリーダー、第二候補、第二位、そして未元物質


「垣根帝督」だということを


478 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 19:37:25.00 ID:+0brljSC0
新屋「・・・う、嘘だろ・・・僕の作り出せる最高値のベクトルを・・・」

垣根「・・・てめぇの作り出せる最高値?知るかよ」

ポンポン、と服についたホコリを払いながら垣根が呟く

彼の体には、傷一つついていない

あれほどの衝撃の中で、それでも彼は無傷だったのだ

垣根「相当なもんだ、重戦車の大砲なんかよりよっぽど正確で大きい威力だったな・・・」

新屋「・・・な、なんで・・・なんで君は・・・」

垣根「バカか、戦車の大砲より強いからなんだよ、そんなので超能力者を相手に出来ると思ったのか?驕るのも大概にしろよ出来損ない」

新屋「で、出来損ないだと・・・?」

垣根「てめぇの能力は全ての大きさを操れる、そう思ってたか?違うな、てめぇが知覚出来る速度のものを、てめぇの皮膚上に触れさせ、てめぇが一一演算しててめぇが一一操らなきゃならない」

垣根「全部、無駄なんだよ」

垣根がこめかみに人差し指を立て、それをクルクルと回す

垣根「ここの作りがそもそも違う、俺とお前じゃ違うんだ」



479 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 19:43:58.54 ID:+0brljSC0
新屋「・・・ふざけんなよ・・・なんだよお前!」

垣根「そう慌てるな・・・正直俺はガッカリしてるんだ・・・てめぇなら超能力者の俺も楽しませられるかもってな」

垣根が翼を折りたたむ

まるで鳥が巣に戻って、体を休めるかのような光景だった

彼は、休んでいるのだ

敵を前にしても、気を張る必要さえない

垣根「・・・超電磁砲相手じゃどうする?あれを皮膚上に触れさせ、てめぇがベクトルをゼロにする前にそれが体を貫く」

垣根「原子崩しも同じだ、いくら事前に演算しようが触れた瞬間に体が消し飛ぶ」

垣根「一方通行の反射はすげぇよな・・・触れた瞬間にベクトルを反射し、全てを真逆の方向に捻じ曲げる」

垣根「・・・お前の能力もそれに近いことは出来るはずだ、実際不必要な全てのベクトルをゼロにするように設定していればそれに近いことが出来る・・・いや、むしろそれが出来ればてめぇは一方通行を超せるはずだった」

垣根「だがな、だったらなんでてめぇはLEVEL4止まりなんだろうな」

垣根「答えは簡単だ、ベクトルの大きさというのは常に変わっている・・・分かるか?ほんの小さな単位での誤差だが、それでも重力や加速度・・・反作用なんかで変わってるんだ」

垣根「向きなんてそうそう変わらない、自分に向かってこなければそもそも関係ないし自分に向かってきても反射できる」

垣根「意味が分かるか?向きはひっくり返せば自分には当たらないが、力はそう簡単じゃないんだ」

垣根「・・・坂の上からボール転がして、そのボールがどこへ向かうのか予想するのは簡単だ・・・向きなんて最初の時点で決まってるも同然だからな」

垣根「だが速度は?それが何かにぶつかったときの衝撃は?そんなもん、簡単には予想できない・・・そういうことさ」


480 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 19:47:43.05 ID:+0brljSC0
新屋「な、何が言いたい・・・」

垣根「能力は恐ろしいほどに強靭だったが・・・操る人間が馬鹿だったな」

新屋「・・・」

垣根「俺や一方通行並の演算処理能力がお前にあれば、お前はそれこそ学園都市最強だっただろうな」

新屋「・・・それがなんだよ!!俺は戦わなきゃ・・・」

垣根「戦うか?お前の最大出力を無効だと知っても尚?」

新屋「当たり前だろ・・・俺はここじゃなきゃ生きていけないんだ・・・」

垣根「・・・ここでもお前は生きていけないんだよ」

新屋「お前に何が分かる!!」

垣根「・・・力を失った人間が暗部に残ってどうする?雑魚だけ狩って、自分より弱いやつを相手にして満足しながら寂しく生きるか?自慰と同じだな、一瞬の快楽の後は空しさだけが残るぞ」

新屋「うるさい!!」

垣根「・・・分かった、だったら教えてやるよ・・・これが暗部ってもんだ・・・いや」

垣根が翼を再び広げる

だが、先ほどまでと何かが違う

翼の先まで、何か恐ろしいほどの力が篭っているのだ

新屋「な・・・」


垣根「これが、未元物質だ」


481 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:19:13.50 ID:+0brljSC0

心理(・・・やっぱり、学園都市製・・・しかも相当な兵器があるじゃない)

心理定規がたどり着いたのは、大きな広場だった

広場と言ってもまだ整備されていないため、ただのだだっ広い空間になっている

観葉植物でも設置する予定なのか、大きな植木鉢やプランターだけは用意されていた

天井は最上階まで筒抜けになっていて、恐らくは上階からもこの広場を見て楽しむことが出来るのだろう

最近の学園都市は緑化政策に力を入れているらしく、ショッピングモールの中に観葉植物を設置するということもあまり珍しくはない

心理(・・・むしろ珍しいのは、こんなところに駆動鎧がいることよね)

自動で動いているのだろう、一定の規則的な動きを繰り返している駆動鎧が二機、遠くに見える

心理(・・・恐らくは熱源を感知して手当たり次第に攻撃するんでしょうね・・・)

あくまでそれは予想に過ぎない

かといって、今彼女が自分の身を晒して実験台になることなんて出来ないのだ

心理(・・・そろそろ来るかしらね)


「!!いた、あいつだ!!」

「オッケー、片付けてやる!!」

「手足撃つだけにしろよ!!楽しみが無くなっちまうからな!」

「分かってるって!!」


482 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:23:14.68 ID:+0brljSC0
後ろから、追っ手の声が聞こえる

心理(・・・今ね)

柱の影から、勢い良く心理定規が飛び出した

熱源を感知した駆動鎧が、一斉に銃撃を開始する

心理(・・・出来れば頭にだけは喰らいたくないわね)

頭を庇うようにして、心理定規が走り続ける

心理「っ!」

一発の銃弾が右腕を貫通した

焼けるような痛みが走るが、ここで歩を止めるわけには行かない

心理(・・・来た)

追っ手はここに駆動鎧がいるということを知らされていなかったのだろう

恐らく、末端も末端の下部人員だ

「な、なんだありゃ・・・」

驚いたような顔をした一人を、駆動鎧の放った弾丸が容赦なく貫いた

「ぐあぁぁぁっ!!」

「お、おい・・・どうし・・・」

もう一人が柱の影から飛び出した

駆動鎧は、そちらへ向けて銃撃を始める

それはちょうど心理定規が向かいの柱に隠れたのと同時だった


「がぁぁぁぁっ!!」

「な、なんだこい・・・」

二人の叫び声を制止させたのは、たった三回の銃声だった


483 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:27:35.47 ID:+0brljSC0
心理(・・・終わったわね)

地面には二人の体が横たわっている

息はないだろう、あれほどの弾幕を受けてしまったのだから

心理(・・・自分が直接手を下した訳ではないけど・・・後味は最悪ね)

右腕から流れ出す鮮血を見つめながら、心理定規が天井を見上げる

広場と違い、横の通路はすぐそこに天井が見える

心理(・・・誰かが今の騒ぎに気づいてくれたならいいんだけど・・・恐らくはありえないわね)

垣根はそもそも正反対の方向へ進んでいる

一方通行たちも来ているのだろうが、ここに来る確証はない

アイテムのメンバーもどこにいるか、定かではない

砂皿が一番可能性があるだろうが、彼ではこの状況をどうすることも出来ないだろう

心理(・・・隠れられたのは幸いだけど・・・これからどうしましょう)

彼女が立っている通路の先は、行き止まりなのだ

なんでも非常階段に続いているらしく、まだ光の灯っていない非常灯が天井からぶら下がっている

心理(・・・外に出たって何の意味もないわ・・・)

右腕の疼くような痛みに少しだけ苛つきを覚えながら、心理定規が思考を巡らせる


484 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:31:17.90 ID:+0brljSC0
このまま飛び出すのは得策ではない

今の彼女にはどうすることも出来ないからだ

かといってここでじっとしているわけには行かない

いずれは駆動鎧も彼女のいる通路の近くを通るだろう

もしも自分の存在が気づかれれば、そこで終わりだ

後ろの行き止まりに退路を阻まれているため、蜂の巣になる末路を辿ってしまう

外へ逃げる、というのが今のところは一番いい選択なのかもしれない

だが彼女は、それを捨てていた

心理(いつまでも逃げ続けることはできないもの・・・)

どちらにしろ、ここで外に出たところでそこに敵がいないとは限らないのだ

暗部の人間をみすみす見逃すくらいなら撃ち殺したほうがマシ、という人間が非常階段を見張っていても無理はない

心理(・・・もう少しだけ、ここに留まりましょう・・・それから移動するなり諦めるなり、決めればいいわよね・・・)

左手についた指輪をふと見つめる

なぜか、そこには泣きそうな顔の心理定規が映っている



心理(・・・垣根・・・あなた、どこにいるのよ・・・)


485 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:36:56.88 ID:+0brljSC0

垣根「・・・すげーだろ、これを使うのはお前が初めてかもな」

新屋「な、なんだそれは・・・」

垣根「・・・俺も・・・つい最近までは知らなかった」

垣根が冷めたような表情で語りだす

その翼には、未元物質以外の何かの力も加わっているようにさえ感じられる


そんな垣根を見つめるフレンダとゴーグル男は、少し体に負担を覚えていた

ゴーグル(・・・おかしい・・・さっきから体が安定しないっす)

フレンダ(・・・AIMの異常・・・?そんなわけ・・・)


垣根「・・・AIMって知ってるか?あれは科学でもまだ解明できていない、能力者が放っている微弱な力なんだってよ」

新屋「知ってるよ・・・それを今研究中なんだろ」

垣根「・・・一方通行の翼は見なかったのか?」

新屋「翼・・・?あいつはそんなもの・・・」

垣根「残念だな・・・それを見てれば少しは認識も変わったのかもしれないのによ」

垣根が翼に力を篭める度、辺りの空気がビリビリと震える

何か嫌な圧力を、他の三人は感じていた


ゴーグル「・・・AIM・・・?垣根さん、まさかあなたは・・・」

垣根「・・・一方通行がなぜメインプランだったか、俺がなぜスペアプランだったか・・・それはな、AIMを操れるかどうかの問題だったんだ」

ゴーグル「どういうことっすか・・・?」

垣根「一方通行の役割は・・・AIM制御装置」

新屋「な、何を言ってるんだ・・・?」


486 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:41:55.50 ID:+0brljSC0
垣根「ベクトルを操作することで、AIMを操ることも出来るからな・・・」

新屋「な、何の話なんだ!!」

垣根「そう、一方通行はAIMを・・・非科学的、オカルトの力も手に入れてしまったんだ」

新屋「非科学・・・?第三次世界大戦で戦ったあの魔術とかいう能力の・・・」

垣根「そうだ・・・そして、俺もまたそうだったのさ」

垣根の翼は、どんどんと大きさを増していく

それも、先ほどまでのただ真っ白な翼とは何かが違う

まるで透明のような、まるでガラスのような、まるでこの世のものではないような色をしている

垣根「・・・一方通行に比べたら、まだ俺はオカルトには詳しくない・・・それにそこまで解析できるわけじゃない」

だから自分は所詮第二候補だったんだ、と垣根は自嘲する

だがそれでも構わなかった

誰かを守るための力が得られたのなら、第二候補だろうが格下だろうが構わないのだ

垣根「・・・一方通行と戦ったとき、俺はAIM・・・オカルトの片鱗に触れてしまった」

垣根「そして手に入れたんだ」

垣根が翼を動かした

たった一振りで、辺りに信じられないほどの旋風が巻き起こる


垣根「・・・誰かを守る力をな」


487 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:47:49.21 ID:+0brljSC0
ゴーグル「な、なんなんすかこれ・・・!?」

フレンダ「す、すごい力が・・・!!」

AIMの集合体である二人の体が、まるで古い映像のようにユラユラとぶれる

ゴーグル(・・・!!垣根さんが・・・AIMを生み出してる・・・!?)

フレンダ(な、なんかヤバい訳よ!!)


垣根「・・・一方通行は操る能力、俺は生み出す能力・・・思えばそれは、創造と制御だったんだ」

この世の理を超えた一人の男が、ゆっくりと新屋に近づいていく

新屋「あ・・・あ・・・」

垣根「まるで神話みたいだよな・・・俺は作ることが出来る・・・この世に存在しないものを・・・そう、まるで別の世界から何かを引き出すように」

垣根「そして一方通行は全てを操ることが出来る、てめぇみたいなちんけなもんじゃない・・・それこそ、神のように全ての事象を操れるんだ」

垣根「・・・怖いか?理解できないか?頭がパンクしそうか?そうだろうな、こんな事象、お前には理解どころか直視さえ出来ないだろうからな」

垣根は何もしていないはずだ

それにも関わらず、周りの柱が次々と折れ曲がっていく

垣根「・・・人間が初めて炎を見たときのような、人間が初めて雷を見たよきのような、人間が初めて新たな存在に気づいたときと同じような感情を、お前も味わってるんだろ?」

新屋「く、来るな・・・」


488 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:51:21.71 ID:+0brljSC0
垣根「・・・ここまで力が漲ってるのは初めてでさ、俺もちょっと興奮してんだよ」

垣根の感情に呼応するかのように、翼が光を放った

その光は、新屋の右腕を砕く

新屋「がぁぁぁぁっ!?」

垣根「すげぇなこりゃ・・・一方通行のあの黒い翼と同じレベルの威力だ・・・」


フレンダ(このままじゃ・・・このままじゃ、垣根があいつを殺しちゃう訳よ!!)

ゴーグル「垣根さん!!そこまでっす!!」

垣根「どうだ?何もしていない相手に右腕を折られた気分は」

ゴーグル「垣根さん!!!」

垣根「・・・こんなもんじゃないんだぜ、俺がもっとオカルトに触れれば、もっともっと大きな力が手に入る」

新屋「は、ははは・・・お、お前はやっぱり暗部の人間だ!!力を欲する、破壊を求める、こうして誰かをいたぶる事に快感さえ覚えている!!お前はただの人殺しなんだよ!!」

垣根「・・・そうかもしれないな」

新屋「ほら、どうした・・・さっさと殺してみろ!!!」


489 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 20:57:19.06 ID:+0brljSC0
垣根「・・・」

無言のまま、垣根が翼の先を新屋の首元に突きつける

ゴーグル「垣根さん!!」

フレンダ「垣根・・・!!」

垣根「・・・俺は、力を手に入れたんだ」

新屋「あぁそうだ!!すっげぇ力だよ、僕なんか簡単に殺せるだろ!?」

新屋が狂ったように叫びだす

命の瀬戸際に立たされて、気がふれてしまったのだろう

新屋「ここで俺を殺してみろ!!お前はまた暗部に逆戻りだ!!人殺しの化け物に成り下がるんだ!!それでいいんだよ!!お前に表の世界なんて似合わない、普通の暮らしなんかしてひよってるんじゃねぇよ第二位!!人を殺して、格下を見下して、力を求めてこその超能力者だろ!?なぁ!!ここで俺を殺せば、お前はまた一歩前に進める!そのすんげぇ力を利用して、誰かを殺せばもっと強くなれるんだ!!昔のお前に戻ってみろよ、体裁だの世間体だのどうでもいい!!お前は俺を殺したくて堪らない筈だ、手に入ったその新しい力を試し打ちしてみたくて堪らない筈だ!!仲間が見てるからなんて遠慮することはないんだよ!!お前のやりたいことを、自分勝手に思いのままにやってみろ!!さぁさぁさぁ!!!第二位、垣根帝督!!暗部に戻って来いよ!!!」

垣根「・・・俺のやりたいことをやってみろ、か・・・俺もそのつもりだ」

垣根が翼を振りかぶる

その振りかぶる動作だけでも、周りには甚大な被害が広がっている


490 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:00:55.07 ID:+0brljSC0
ゴーグル「垣根さん!!やめてください!!」

フレンダ「せっかく表の世界に戻ってきたんじゃない!!」

新屋「戻ってきた!?バカ言ったらいけない、この男は所詮暗部が居場所だったんだ!!暗部が戻る場所なんだよ、それを今からこいつ自身が証明してくれるんだ、目をかっぽじって見とけよ!!」

垣根「・・・そうだ、俺の選んだ答えを黙って見とけ」

ゴーグル「垣根さん!!」

垣根「・・・」

垣根が、翼を叩きつける

凄まじい轟音と共に、辺り一帯の天井や壁が崩れ落ちる

これほどの衝撃でよくも建物が壊れないものだ、とフレンダは感心していた

彼女は知らない、これでも垣根は出来る限り手加減をしていたことに


垣根「・・・終わったな」

ゴーグル「垣根さん・・・」

ゴーグル男が、垣根の翼の先を見つめる

その少し隣には、驚いたような顔の新屋がいた

ゴーグル「あ・・・」


491 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:04:36.26 ID:+0brljSC0
新屋「な・・・なんで・・・」

垣根「俺のやりたいことを自分勝手にやった結果だ、てめぇがそう言ったんだろ」

翼を打ち消した垣根が、新屋を見下ろすような形で立ち尽くす

垣根「だからやった、俺のやりたい解決法をな」

新屋「・・・な、なんでだよ・・・なんで殺さなかった・・・」

垣根「言わなかったか?これは大切な誰かを守るための力だ・・・てめぇみたいな雑魚一匹殺すのに使ってられるほど安売りできるもんじゃないんだよ」

新屋「くそ・・・」

垣根「お前言ったな・・・ここでてめぇを殺せば一歩進めるって、全くその通りだったのかもしれないな」

垣根が新屋の腹に蹴りを入れる

そこには、相当の憎しみが篭っていた

新屋「ぐっ・・・」

垣根「そうだ、誰かを殺せば俺は一歩進む、その先にあるのは地獄だ・・・暗部の先には地獄しかねぇ、一歩進むごとに破滅の道へと進むだけなんだよ」

新屋「くそ・・・表の世界に帰ったつもりの弱者のくせに・・・」

垣根「・・・お前、暗部に浸ったつもりにでもなってたか?」


492 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:19:52.66 ID:+0brljSC0
新屋「俺は浸ってる!!暗部の真っ暗闇にまで染まってるんだ!!」

垣根「染まってねぇんだよ、てめぇは甘甘なんだ」

垣根が新屋の髪を掴む

新屋「ぐっ・・・」

垣根「調子に乗るなよ、お前には無理なんだ・・・人を何人殺した?殺すことにためらうだろう?」

新屋「うるさい・・・」

垣根「そんなてめぇが・・・暗部に浸ってるだと?」

新屋「うるさいんだよ!!お前みたいなヤツに偉そうにされたくない!!!」

垣根「暗部にいることに誇りでも持ってるのか?クズだな、てめぇはクズだ」

新屋「ふざけんな!俺は殺すことにためらいなんて持ってない!!」

垣根「じゃあやってみろ」

新屋「・・・」

垣根「俺は無防備だぜ、殺すなりいたぶるなりしてみろよ」


ゴーグル「!垣根さん!!」

垣根「黙ってろ」


493 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:27:58.18 ID:+0brljSC0
ゴーグル「・・・でも」

垣根「ほらどうした、殺してみろよ」

新屋「・・・いいよ、やってあげるよ・・・」

すぐ下にある瓦礫を新屋が掴む

それに全力のベクトルを込め、垣根に向けて投げつけた

そのはずだった

だが、それは垣根の頭に軽くぶつかっただけですぐに地面に落ちた

垣根「・・・見てみろよ」

新屋「・・・違う・・・」

垣根「だっせぇな、誰かを殺すのを躊躇うなんてな」

新屋「お前だって躊躇ってるだろ!!」

垣根「俺殺さない覚悟を決めてるんだ」

新屋「・・・ふざけんな・・・」

垣根「いたって真面目だ」


494 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:40:03.44 ID:+0brljSC0
新屋「ふざけんなよ・・・」

垣根「・・・つまんねぇな、俺にはお前の考えは理解できないしそんな下衆な考えを理解するつもりもない」

新屋「うるせぇ!!」

新屋がゆっくりと立ち上がる

新屋「うるせぇ・・・うるせぇ!お前に分かるわけがない!!俺が暗部に誇りを持って何が悪いんだよ!?」

垣根「・・・」

新屋「くっそ・・・てめぇに分かるかよ・・・」

ユラユラと横に体を揺らしながら、新屋が歩く

垣根「・・・あぁ?どこ行くんだよ」

新屋「うっるせぇな・・・チクショウ・・・」

虚ろな目をした新屋が、垣根たちから徐々に離れていく

だが、少しして彼が歩を止めた

新屋「な、なんだ・・・お前もいたのかよ・・・」


495 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:47:50.49 ID:+0brljSC0
風間「・・・よぉ」

新屋「な、何しに来たんだ・・・てかかなりボロボロじゃないか」

桐山「・・・一方通行にやられたんだよ」

新屋「き、桐山も・・・」

垣根「あぁ?てめぇ・・・」

桐山「久しぶりだな、垣根帝督・・・まぁ実際はそこまで時間は経ってないが」

垣根「・・・そっちのは地下街の雑魚だな」

風間「うっせぇな・・・相変わらず空かした野郎だ」

垣根「ナメたこと言うな・・・」

新屋「な、なんだ・・・応援に来てくれたのか?」

桐山「・・・そういうのじゃないんだよ」

新屋「じゃ、じゃあ・・・」

桐山「お別れを言いに来たんだ」

新屋「は・・・?」

素っ頓狂な声を上げた新屋の胸に、桐山が銃を当てた

垣根「・・・」

ゴーグル「な、何・・・」

桐山「悪いな、新屋」

乾いた音がして

新屋の体がぐらりと揺れた



496 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/08(火) 21:51:18.23 ID:+0brljSC0
今日はここまで

筋肉動画は「ビンス・テイラー」

高い位置にある胸筋が美しい

カットやシンメトリーも完璧ですね

黒人独特のリズミカルなポージングも素晴らしい

2006年のオリンピアにも出場するなど、非常に息の長い選手です

http://www.youtube.com/watch?v=KvPJ-9juCE0 


ではおやすみなさい


497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(島根県) [sage]:2011/11/08(火) 21:53:39.38 ID:qp/iNrmSo
>>1乙です
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 02:35:36.73 ID:VtU+OUibo
乙なんだよ!
499 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:18:47.92 ID:K9c9ZcQE0
新屋「・・・は・・・?」

訳が分からない、という表情をしたまま、新屋は地面に倒れた

フレンダ「な、何やってる訳よ!?アンタ達仲間なんじゃ・・・」

桐山「仲間?違うな、ただの同僚だよ」

新屋「お前達・・・」

風間「残念だったな・・・ま、用済みってことだよ」

新屋「用済み・・・だと・・・?」

垣根「へぇ・・・なんだよ、お前達の中にもちょっとはマシな黒さのヤツもいたわけだ」

風間「・・・暗部から抜けたお前が偉そうに言うんじゃねぇよ」

ゴーグル「・・・な、なんで・・・」

桐山「なぜか、だと?こいつは暗部に誇りなんて物を持ってやがる・・・それがまず気に食わない」

桐山が拳銃を新屋の眉間に当てる

少しでも指を動かせば、新屋の命はそこで終わりなのだ

桐山「そして垣根帝督・・・お前の力を引き出してしまったんだよ、こいつは」

垣根「あぁ?」

桐山「一方通行がおかしな力を手に入れていたという話は聞いていたが・・・まさかお前までとはな」


500 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:19:36.21 ID:K9c9ZcQE0
垣根「ふざけんなよ、そいつがいなくたって俺はこの力を発現させられた」

桐山「だがこいつがいなければ、お前は俺達に対してその力は使わなかっただろ」

垣根「当たり前だろ、お前達みたいな雑魚にこんな大層な力なんて使えるか」

風間「よく言うぜ、どうせ使いこなす自信がなかったくせ・・・」

風間が肩をすくめ、馬鹿にするように呟いた

だがその言葉は途中で途切れてしまった

垣根が未元物質によってその体を吹き飛ばしたのだ

いつの間に生み出したのだろうか、その背中には翼が生えていた

桐山「・・・全く、本当にこの世のものとは思えない能力だな」

垣根「この世の能力じゃないんだよ」

風間「てめぇ・・・」

桐山「風間、身の程を知れ・・・お前も俺も、この能力の前では太刀打ちなんて出来ない」

風間「でもよ・・・」

桐山「それに、俺達の目的は垣根帝督との戦闘じゃないだろ」

新屋「くそ・・・小鳥遊さんの指示か・・・」

桐山「余計なことを喋るな」


501 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:20:03.21 ID:K9c9ZcQE0
新屋の眉間に当てた拳銃を、桐山がカチャリと鳴らす

撃鉄は上がっている

新屋が軽率な言葉を述べて引き金を引くか、それともそれ以外か

桐山「この引き金はお前が握っている、余計なことを喋ればてめぇはすぐに死ぬ」

新屋「くそ・・・なんなんだよ・・・」

桐山「これがてめぇの憧れてた暗部ってやつなんだよ」

垣根「ご明答、分かってんじゃねぇか」

桐山「・・・本当はここでお前達も片付けたほうがいいのかもしれないな」

垣根「まさか、ここで俺達を殺すつもりはないんだろ?」

桐山「・・・」

フレンダ「ちょ、ちょっと・・・どういう意味な訳よ?」

垣根「・・・表を暗部に引き込むというより、表の世界自体を破滅に追い込むつもりなんじゃないのか」

桐山「どうしてそう思う」

垣根「・・・風紀委員を襲撃した理由も、それなら説明がつく」

桐山「・・・そうだな、俺達のリーダーはそんな目的を持ってるみたいだ」

垣根「興味がないのか」


502 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:20:30.14 ID:K9c9ZcQE0
桐山「・・・俺の目的が叶うならそれで問題ないのさ」

垣根「・・・お前の問題は憂さ晴らしか」

桐山「・・・それもあるかもしれないな、今更そんなことは考えられないが」

垣根「・・・そうかよ」

新屋「・・・何俺を無視して話してやがんだよ!」

新屋が拳を地面に当てる

桐山「!」

ベクトルの大きさを出来る限り最大にすることにより、地面に穴を空ける

桐山「ちっ・・・」

その穴から、下の階に新屋は落下した


風間「あの野郎・・・」

新屋「ははは!俺のことをそんな簡単に・・・」

上を見上げながら笑っていた新屋の頭が、ガクンと揺れた

いや、吹き飛んだと言ったほうが正しいだろう


503 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:21:06.98 ID:K9c9ZcQE0
風間「なっ・・・」

桐山「なんだ・・・!?」

垣根「・・・!駆動鎧じゃねぇか・・・」

新屋の頭を吹き飛ばしたのは、ファイブオーバーだったのだ

ゴーグル「ま、まさか・・・俺達の下の階にまでファイブオーバーがいたなんて・・・」

フレンダ「い、一体どれだけいる訳よ!?」

垣根「・・・」

桐山「ちっ・・・まぁ新屋は呆気なく死んだみたいだな」

新屋の胴体に向けて、桐山が二、三発銃弾を撃ち込む

風間「あーあ、死人に鞭打つなよな」

桐山「一応俺の銃弾で死んだってことにしとこうぜ」

風間「悪くねぇな」

二人が呆れたようにくるりと背中を向ける

階下ではファイブオーバーが他の目標を探すために規則的に動いている

垣根「待てよ」

風間「あぁ?なんだよ」

垣根「てめぇらどこ行くつもりだ」

桐山「・・・ここで戦う理由がないんだよ・・・こっちは手負いだ」

垣根「見過ごすとでも思うのか?」


504 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:21:38.47 ID:K9c9ZcQE0
桐山「ちっ・・・めんどくせぇな・・・」

フレンダ「・・・アンタ達・・・最低な訳よ」

桐山「何を言う?同僚の情報をペラペラと喋るような人間を粛清するのは当たり前だろ」

フレンダ「・・・」

垣根「はっ、たしかにそりゃ当たり前だな」

桐山「それだけだ、つまんねぇ正義感は語らないでくれよ」

垣根「正義感?ふざけんな、こっちは敵を倒すって単純な理由でてめぇ達を潰したいんだよ」

桐山「・・・なるほどな」

桐山が垣根のほうを振り向く

彼の能力は音波の高さや速度を変えるというものだ

そんな能力で垣根を相手に出来るわけがない

桐山「・・・だが、お前のその新しい力ってのにも興味がある」

垣根「そうかよ」

バキバキと音を鳴らしながら、垣根の翼が広がっていく

風間「お、おい・・・なんかヤバいぞ」

桐山「・・・それほどの力を持っていながら、お前は平和な日々を望むのか」

垣根「こんな力を手に入れられたのは・・・平和な日々を守るためだったからな」


505 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:22:30.96 ID:K9c9ZcQE0
翼の放つ輝きが増していく

まるで太陽を直接見たかのような眩しさに、桐山が目を細める

桐山「・・・すげぇな」

垣根「カッコイイだろ」

風間「くっそ・・・もしかしたらここでおしまいかもしんねぇ・・・」

風間も構える

だが彼の能力も、垣根の前では意味がない

垣根「・・・辞めとけ、俺の力を止めることなんか出来ないんだよ」

桐山「・・・風間、お前は状況を小鳥遊さんに報告しとけ」

風間「・・・お前はどうすんだよ」

桐山「・・・ここでこいつを足止めしておく」

風間「マジかよ!死ぬぞ!」

桐山「元々死んだような人生だ、何を恐れる必要があるんだ」

風間「・・・いいのか」

桐山「さっさとしろ」

風間「・・・あばよ」

風間が垣根に向けて風撃をぶつける

垣根「ちっ・・・」

垣根はそれに対処する素振りさえ見せない

だが、その風撃は掻き消されてしまった


506 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:23:39.86 ID:K9c9ZcQE0
空中にばら撒かれた未元物質が、その風のベクトルを乱したのだ

桐山「はっ・・・置き土産ってか」

桐山が拳銃を取り出す

彼の能力は直接戦闘には向いていない

そのため、銃器を使わなければならないのだ

垣根「つまんねぇ物持ち出してんじゃねぇよ」

垣根がその翼を振りかざす

天使を彷彿とさせる彼の姿に、一瞬だけ桐山でさえもが見とれてしまう

垣根「・・・どうだ、綺麗だろ」

桐山「・・・暗部にいた人間には似合わない能力だな」

垣根「そうか?天使ってのはいつだって闇の中にいる生き物だ」

凄まじい風が桐山の体を撫でる

ほんの少し堪えただけで、彼の体は疲労を訴える

桐山(化け物か・・・!)

垣根「・・・暗闇の五月計画、てめぇの親族が関わってたな」

桐山「!」


507 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:24:49.12 ID:K9c9ZcQE0
垣根「どっかで見たような顔だと思ってた・・・桐山って名字の被験者がいたってのも資料で読んだことがあるんだよ」

桐山「・・・記憶力がいいんだな・・・俺の弟だよ、その被験者は」

垣根「それの腹いせにこんなつまらない計画に肩入れか、死んだ弟が泣いてるぜ」

桐山「・・・下らないな」

垣根「・・・ちなみに聞いとこう、てめぇの弟はどうなったんだ」

桐山「そうだな・・・たしか被験者の中では割と生きてたほうだったらしくてな・・・1週間はもってたらしい」

垣根「そいつはすごいんじゃねぇか」

桐山「あいつは俺と違って優秀な能力者だった・・・炭素を操る能力者だったんだ」

垣根「・・・炭素か、硬さを操ればダイヤモンド並の防御力も鉛筆並の柔軟さも得られる」

桐山「・・・例の自動制御とか言うのが手に入れば・・・あいつは絹旗最愛にも並べたかもな・・・いや、もしかしたら超えてたかもしれない」

垣根「絹旗のことも知ってるのか」

桐山「向こうも俺の顔に見覚えがあると言っていたな・・・弟と会ったことでもあるのかもな」

垣根「・・・羨ましかったんじゃないのか?暗闇の五月計画で生き残った絹旗が」

桐山「まさか、羨ましいとは思わないさ・・・絹旗最愛は絹旗最愛の苦しみを抱えているだろう」

垣根「・・・つまんない話だ、もっと人間味溢れる兄弟愛が聞きたいんだがな」

桐山「ならばここでその話は終わりだな」


508 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:25:51.02 ID:K9c9ZcQE0

桐山が拳銃の撃鉄を起こす

その小さな音が、二人の戦闘再開のゴングになった

戦いは、ただ一方的なものになっていた

垣根の未元物質の前で、ただ桐山は傷を増やすだけだった

桐山「くっ・・・」

垣根「・・・銃弾がまっすぐ進まないのが不思議か?未元物質で衝撃を与えれば捩曲げられるんだよ」

桐山「・・・チートだな」

垣根「チート?冗談だろ、これでも目一杯の手加減はしてるんだ」

桐山の頭が後ろにのけ反る

空中に散布された未元物質が彼の頭を叩いたのだ

叩いた、というには強すぎるその衝撃は桐山の意識の半分近くを奪ってしまった

桐山「・・・な、なんだ・・・」

垣根「・・・この世の常識で俺の能力は測れない」

桐山「・・・全くもってその通りだちくしょう・・・改訂版の教科書が必要になっちまったな・・・」

垣根「改訂版はページが増えるばかりだぜ」


509 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:26:54.69 ID:K9c9ZcQE0
垣根が新たな未元物質を作り出す

性質はそれぞれ全く違うものだ

桐山が一つの性質を見破る前に、新たな性質の未元物質が作り出されてしまう

桐山「くっそ・・・流石だな」

垣根「・・・見てみろ、これが第二位ってやつだ」

桐山「・・・!」

垣根の翼の色が少しずつ変わっていく

垣根「・・・一方通行はたしか真っ白な翼になったんだっけかな」

桐山「・・・何の話だ・・・」

垣根「・・・すげぇよな、真っ白ってのはあいつに一番似合う色かもしれねぇ」

垣根の翼は、本当に美しいものだった

一方通行の翼は純白の、この世で見られる限り一番美しい色と言える

そして垣根の翼は、この世の言葉では表現出来ない美しさだった

透明、クリスタル、それらの言葉で表すにはもったいないほどの澄んだ翼だった

色は白にも似ているが、どこか透明な印象を与えているのだ


510 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:27:43.72 ID:K9c9ZcQE0
桐山「なんだそりゃ・・・」

垣根「この世に有り得ない色・・・俺にピッタリだろ?」

自信に溢れたような顔で、垣根が笑う

相当自分の翼が気に入っているのだろう

桐山「・・・違う、たしかに色も不思議だが・・・」

桐山が指差しているのは垣根の頭の上だ

もちろんそこに翼などあるわけはない

桐山「なんなんだ・・・その輪っかみたいなのは・・・!」

垣根「あぁ?」

ゴーグル「!か、垣根さん・・・なんか天使の輪みたいなのが頭の上にありますよ!」

フレンダ「か、かなりメルヘンな訳よ・・・」

垣根「・・・天使、ねぇ」

大きさは直径30cm程度だろうか

それほど大きなものではない

だが、翼と同じ色をしているということはそれもまた垣根によって生み出された、ということなのだ

垣根「・・・どうだっていい、俺は今めちゃくちゃ最高潮なんだ」


511 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:29:00.36 ID:K9c9ZcQE0
桐山の肩に乗る空気が重さを増していく

桐山「!じゅ、重力操作か!?」

垣根「違う、未元物質の性質で・・・あぁ説明もめんどくさい」

垣根が信じられない速度で桐山の目の前に移動した

普段の彼も、かなり高速で移動することが出来る

しかし今の彼は最早、人間の速度ではなかった

垣根「捕まえた」

桐山「てめ・・・」

垣根「あばよ、三下」

桐山「!」

垣根が桐山の頭を掴む

どのような推進力を生み出したのか、桐山の体が50M以上離れた柱にぶつかった

桐山「ごっ・・・」

胸の中から、全ての酸素が強制的に吐き出される

背中からバキリ、という嫌な音がした


512 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:33:14.61 ID:K9c9ZcQE0

桐山「・・・てめぇ・・・今何を・・・!?」

垣根「こいつはすげぇ・・・面白い力だな」

ゆっくりと垣根が桐山に近づく

辺りのタイルは完全にめくれ上がっている

垣根が一歩を踏み出す度に、地面には亀裂が走っていく

彼が纏っているものは、人間の気配ではなかった

桐山「・・・くそ、本当に化け物か・・・」

垣根「化け物か・・・天使ってのは化け物になるのかもな」

桐山「・・・お前・・・本当にただの超能力者か・・・!?」

垣根「ただの超能力者って言い方はやめてほしいんだよな」

垣根が桐山の姿を見下ろし、不敵に笑う

垣根「ただの、ってことは他の超能力者と同等に考えられてるんだろ・・・?そりゃ違うな、俺は他の超能力者と全く違って独自の法則に一人だけ従ってる・・・この世に存在しない法則にだ」

桐山「・・・そもそもお前は・・・科学側でいいのか?」

垣根「どっちだっていいんだよ、どっちにいても俺の能力と比べられるやつはいない・・・そうだ、俺は常識が通用しないんだからな」

桐山「・・・こんな化け物の敵になってたんだな・・・俺達は・・・」



513 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:38:30.40 ID:K9c9ZcQE0
垣根「・・・さて、長引かせても飽き飽きしちまうし・・・」

桐山「・・・そうだな・・・」

ガラガラ、と音を立てて天井の一部が崩れてくる

垣根はそれを、翼で粉々に砕く

垣根「ちっ・・・派手に暴れすぎたな」

桐山「はは・・・そうみたいだな、垣根帝督・・・」

桐山の足元の地面が、少しずつ崩れていく

下の階は、ファイブオーバーがうろついているのだ

新屋はそれによって撃ち殺された

そして、恐らくは桐山も

桐山(・・・いい、これが俺にお似合いな終わり方じゃないか・・・)

垣根「・・・てめぇ、名前はなんだっけ」

桐山「・・・桐山だ」

垣根「桐山・・・か、そうかいそうかい」

桐山「・・・」

ガラン、と桐山の下の床が落ちた

無数の瓦礫が、下の階の通路に降り注いでいく

誰もそこにいなかったからよかったようなものの、かなりの衝撃や粉塵が辺りを包んでいる


514 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 10:47:22.86 ID:K9c9ZcQE0

桐山「・・・どうして・・・」

だが、桐山の腕は垣根に握られていた

垣根「・・・つまんねぇな、こんなところで死なれたらよ」

桐山「お前・・・同情などいらないのにな・・・」

垣根「アホか、間接的にも誰かを殺すのはあんまりいい気にはなれないんだよ」

桐山「そうか・・・お前はもう表に戻っているんだったな・・・」

垣根「羨ましいか」

桐山「羨ましくはないが・・・呆れるよ」

垣根「呆れるか・・・昔の俺だって今の俺を見たら呆れてたかもな」

垣根が桐山を近くの壁を目掛けて投げ飛ばす

桐山「て、てめぇ・・・!!」

垣根「・・・一つだけ情報を聞き出したいんだよ」

桐山「!!そのために生かしてたのか・・・」

垣根「お前達・・・あの駆動鎧をどれくらい所持してるんだ」




515 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 11:02:04.74 ID:K9c9ZcQE0
桐山「は・・・?そんなことだけ聞くのか・・・」

垣根「いいから答えろ・・・どれくらいいるんだよ」

桐山「知らないな・・・だが相当な数だと思うぞ」

垣根「相当か・・・どうやって手に入れた」

桐山「駆動鎧の製造工程で盗むことも出来たし・・・警備員からかっぱらったのもあるみたいだが」

垣根「・・・待て、そうなったら・・・この建物の中にはどこに駆動鎧を配備してる」

桐山「・・・どこか・・・正直な話、どこにでも配備しているぞ」

垣根「・・・そうか」

垣根が桐山に背中を向ける

桐山「どこへ行くんだ」

垣根「野暮用だ・・・ゴーグル馬鹿、こいつは適当に眠らせとけ」

ゴーグル「は、はぁ・・・」


516 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 11:11:58.68 ID:K9c9ZcQE0
桐山「・・・一つ言っておくが、この建物をあまりうろつかないほうがいいぞ」

垣根「あぁ?なんでだよ」

桐山「駆動鎧だけじゃない・・・六枚羽や未元物質を応用した装備の兵士もいる」

垣根「そんなのどうでもいいんだよ」

手を振りながら、垣根が去っていく

フレンダ「・・・す、すごい自信な訳よ」

ゴーグル「・・・さて、一応垣根さんの頼みなんで・・・」

桐山「必要ないさ・・・抵抗するつもりもない」

フレンダ「・・・アンタの弟は暗闇の五月計画に利用されたの?」

桐山「そうだ・・・もう何年か前の話になるがな」

ゴーグル「・・・だったらアンタは暗部で暮らしてたらダメですよ」

桐山「・・・」

ゴーグル「弟さんが味わえなかった、表での普通の生活をしなきゃならない、天国で弟さんにその話をしてやれるように・・・いつまでもこんな泥の底で足掻いてたらダメなんすよ」

桐山「・・・そうだな、そうかもしれない」

フレンダ「・・・ゴーグルは綺麗事が得意な訳よ」

ゴーグル「そんなことないっすよ」

桐山「・・・お前達が羨ましいな」

ゴーグル「はい?」


517 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 11:16:29.02 ID:K9c9ZcQE0
桐山「・・・そうやって、仲間と笑い合えるなんて・・・俺には考えられない世界だ」

フレンダ「何言ってるの、アンタだってやろうと思えば出来るはずな訳よ」

ゴーグル「そうっすよ、誰かのことを思えば、自然と出来るようになります」

桐山「それは・・・」

綺麗事だ、と笑おうとした桐山の視線が一箇所を見つめたまま静止した

ゴーグル「・・・どうしたんすか」

桐山「・・・なるほどな、そりゃそうだ・・・ファイブオーバーがこの階にもウジャウジャいたはずだからな」

フレンダ「!?」

通路の先に、不気味な機体が並んでいるのが見える

それは、彼らを苦しめたファイブオーバーのものだった

フレンダ「ま、まずい・・・!!」

ゴーグル「くっそ・・・逃げますよ!!」

桐山「やめておけ・・・あいつらは相当な駆動力を持っているぞ」

ゴーグル「だったらここで諦めろって言うんですか!!!」

桐山「・・・爆弾でも持ってないか」

フレンダ「・・・あるけど、どうするの?」


518 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 11:24:17.70 ID:K9c9ZcQE0
桐山「俺がどうにかしとくさ・・・」

ゴーグル「ア、アンタじゃ無理っすよ!!」

桐山「あいつらを倒すんじゃない・・・お前達が逃げるまでの時間は作ってやるよ」

フレンダ「な、何言って・・・」

桐山「・・・言ったじゃないか、誰かのためを思えって・・・俺はそれを初めてやってみるんだ」

ゴーグル「で、でも・・・ここで死ぬことになりますよ・・・?」

桐山「・・・死ぬのが怖くてこんなところにいられるか」

フレンダ「・・・いいの?」

桐山「行ってくれ・・・もしかしたら、お前らなら表と裏なんていう下らない境目を壊してくれるかもしれない」

ゴーグル「・・・分かりました、頼みますよ」

桐山「あぁ」

ゴーグル男がフレンダの手を引いて駆け出す

その背中を、桐山は少し笑いながら見つめていた

桐山「・・・ホント、羨ましいよ」

ファイブオーバーがジリジリと近づいてくる

桐山(・・・どうせ失敗するだろうが・・・賭けてみるのも悪くないかな)

519 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 11:37:05.34 ID:K9c9ZcQE0
ファイブオーバーが銃撃を開始するまで間もないだろう

だからこそ、一度の起死回生に賭けるしかない

桐山(・・・どうせ死んだような命だ、いまさら何も怯えることはない!)

フレンダから受け取った爆弾を、ファイブオーバーの足元へと投げつける

それは、決してファイブオーバー本体を破壊することを目的としたわけではない

凄まじい轟音が響く

そして、ファイブオーバーの足元の地面が一斉に崩れた

垣根の未元物質の攻撃により、最初から傷付けられていた床に、さらに爆発の衝撃が加わったのだ

全てのファイブオーバーが、一気に下の階へと落ちて行く

苦し紛れだろうか、何発かの銃弾が桐山のすぐ傍を通り過ぎる

だが、決して命中することはない

そもそも下に落ちながらも相手に正確に銃弾を当てるなど、命中性に難のあるファイブオーバーには出来ないことなのだから

桐山「は・・・ははは!!やったぞ!!」

桐山がその場からすぐさま駆け出す

ファイブオーバーがその下の階から這いずり出してくる前に

桐山(・・・やってやった・・・俺はやってやったんだ!!)

傷だらけになりながら、しかし彼は歓喜に打ち震えていた



520 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 12:00:28.16 ID:K9c9ZcQE0

一方「・・・ここからどォやって移動するか、だな」

番外「・・・案外簡単に外には出られたね」

一方「土御門たちはまだ来てねェか・・・」

番外「・・・それにしても、表であいつらが事件を起こすっていう確証は?」

一方「ない・・・だが万が一ってこともあンだろォが」

番外「そうだけどさ・・・」


土御門「いた!悪かったな、少し遅くなった!」

一方「よォ・・・お前達のほうのアジトはどォなった」

土御門「適当に破壊しといた、あれじゃアジトにはならないな」

結標「全く・・・手当たり次第に私の能力を使ってもの壊すのよ」

番外「へぇ・・・そりゃ大変だね」

結標「・・・それで?どこへ向かうの?」

土御門「・・・行く場所はいくつかあるが、学校なら・・・」

土御門が地図を広げる

何箇所の学校に爆発物が仕掛けられるかなど分からない

だが逆に言えば、学校をマークすれば問題はないのだ

この時間帯に学校以外を爆破されたところで大した被害は出ないからだ

相手もわざわざそんなところを選ぶことはないだろう


521 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 12:54:05.19 ID:K9c9ZcQE0
土御門「・・・そろそろ授業の始まる時間になるな」

結標「あら、もうそんな時間なの?」

結標が腕時計を見る

現在、午前の9時になろうとしている

番外「・・・建物に篭ってると時間の感覚がなくなるね」

一方「・・・風紀委員にも警備員にも応援は頼めねぇな」

土御門「それなら安心しろ、統括理事会に頼んで元暗部の下部人員を集めといた」

一方「・・・相変わらず不気味な野郎だな」

土御門「こういうときには頭を使わなきゃな」

土御門が地図の中の、ある学校を指差す

そこは土御門にとって最も重要な場所だった

土御門「俺やカミやんの学校だ・・・ここを俺達は担当しよう」

一方「・・・目撃されたらどォすンだよ」

土御門「隠れて捜索するんだ、結標の能力があれば見つかってもすぐ移動できる」

結標「まるで私達が悪役ね」

土御門「少なくとも真っ黒であることには変わりないさ」

番外「よーし、やってやるか!」


522 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 13:11:56.90 ID:K9c9ZcQE0

一方「・・・土御門」

土御門「あぁ、なんだ?」

一方「・・・てめェがクラスのヤツらに見られようが俺には関係ないが・・・それでいいのか?」

土御門「・・・元々嘘をついて入った学校だ・・・嘘の平和な日常だ、それが崩れるのは仕方ないことだ」

一方「・・・そォかよ」

土御門「・・・嘘で塗り固めた日々だったんだ、それを守りたいのも嘘なのかもな」

一方「・・・それでもてめェはやるンだろ」

土御門「あぁ」

四人の姿が虚空に消えた

結標の「座標移動」によって、目的地へと向かう

土御門(・・・そうだ、全てが嘘かもしれない・・・)

土御門(それでも俺はやるんだ・・・あいつらを死なせるわけにはいかない)


土御門(・・・嘘でもなんでも構わない、それは俺の真実だ)


523 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 15:54:10.52 ID:K9c9ZcQE0

吹寄「全く・・・今日も垣根と心理定規は休み・・・」

青ピ「土御門もやね」

姫神「上条君も。休んでる」

吹寄「・・・はぁ、あんな事件があったのと同時だとちょっと心配じゃない?」

青ピ「・・・そうやねぇ、もしかして爆破に巻き込まれてたりしてなぁ」

吹寄「そ、そんなこと・・・ないと思うわよ」

姫神「・・・そういえば。あのハチマキ君はどうなったのかな」

青ピ「削板やろ?上手くやってるはずやで」

吹寄「?でも削板は別に垣根たちに会いに行くわけじゃ・・・」

青ピ「・・・そうやね、そうなんやけどね」

姫神「・・・何か引っかかってるの?」

青ピ「なんでもないで、そろそろ授業が始まるし準備しようや」

吹寄「・・・そうね」

三人は学校の中でそんな話をしていた

彼らは知らない

自分達の友人が、暗部の事件に巻き込まれていることを


524 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 16:50:12.35 ID:K9c9ZcQE0

絹旗「・・・どういうことですか?」

砂皿「分からないか・・・ヤツらは所詮、俺達を敵としては見ていないんだ」

絹旗「で、でもかなり本気で戦ってきていますよ!?」

絹旗と砂皿は、暗い通路を歩いていた

非常灯にも、豪華なシャンデリアにも電気は通っていない

ここで二人が歩いているのは、素敵なデートなどではない

絹旗「・・・どういうことなんですか」

砂皿「ヤツらは・・・俺達も味方にするつもりだ、味方というよりは同胞に近いかもしれないが」

絹旗「同胞?」

砂皿「この程度の人員に殺されるようなヤツは、所詮その程度ということだ」

絹旗「・・・私達を試してると?」

砂皿「試してる・・・というよりは、面白がっているのかもな」

絹旗「面白がっている・・・ですか、確かに私達もどうせ暗部の人間としか見ていないんでしょうね」

砂皿「・・・そうだ、俺達もあいつらと同じ人間ということだ・・・肌には他人の血の匂いがついている」

絹旗「・・・間違いないですね」


525 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 16:58:39.42 ID:K9c9ZcQE0
砂皿「・・・分かるか?あいつらは俺達を・・・いや、一方通行や垣根のような人間を再び暗部に引き戻した、その理由は」

絹旗「表と交差したときのためですね」

砂皿「・・・垣根や一方通行・・・あと麦野沈利もそうだろうが、表の人間にはあいつらが脅威にもなりえる」

絹旗「・・・私達はあくまでオマケなんでしょうね」

砂皿「・・・そして、ヤツらは表の人間をこの世界に巻き込むつもりだ、まだ表で何か事件を起こすだろう」

絹旗「!!なら今すぐ表に・・・」

砂皿「・・・俺達が行って何になる」

絹旗「・・・それは・・・」

砂皿「俺の武器は銃だけだ・・・貴様の能力は自分の掌から数p、それだけだろう?」

絹旗「・・・ここで敵を潰すことに専念するんですか?」

砂皿「あぁそうだ、表の事件は他のヤツらが上手くやるだろう」

絹旗「他のヤツら?」

砂皿「・・・あぁ、グループの一人はどうも統括理事会と繋がっているようだ」


526 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 17:06:46.70 ID:K9c9ZcQE0
絹旗「グループの人間が・・・?」

砂皿「統括理事会は恐らく裏がまだ存在していることを知っている・・・いや、それどころかそれを容認しているだろうな」

絹旗「・・・ですが、それが表に露見することは嫌うはずですね」

砂皿「当たり前だ、あくまで学園都市は能力開発を行っている研究都市という名目になっている・・・それが、裏が表と交差してしまえば壊れてしまう」

絹旗「・・・なるほど、それなら統括理事会も力を貸してくれるでしょうね」

砂皿「・・・だから、俺達は生き残ることだけを考えればいいんだ」

絹旗「・・・そうですね、垣根や一方通行がここにいますし・・・」

砂皿「あの二人ならあいつらの頭領を潰せるさ」

絹旗「・・・頭領・・・ですか、本当にそれが頭領なんでしょうか」

砂皿「どういうことだ?」

絹旗「・・・暗部に堕ちた人間は、暗部が無くなってもその暗闇を抱えたまま生きていくんですよ」

砂皿「・・・俺達のようにか」

絹旗「はい」


527 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 17:16:45.78 ID:K9c9ZcQE0
砂皿「・・・あいつらを潰したところで、暗部全てが消えるわけではないってことだな」

絹旗「・・・そうです、結局は暗部は消えないんですよ・・・」

砂皿「・・・それでも俺達はやるしかないだろう」

砂皿が握った拳銃の撃鉄を起こす

向かいの通路に、六枚羽の姿が見えたのだ

砂皿が相手にするには向かない相手だ

絹旗「・・・私が行きましょう」

砂皿「いや待て・・・ここで派手にやれば、残っている人員がやってくるかもしれない」

絹旗「そ、それはめんどくさいですね・・・」

砂皿「・・・ここは迂回して進むべきだ・・・俺達はあくまでフォローに回る、そうだな・・・垣根達の進む道を俺達が作るべきだ」

絹旗「・・・そうですね・・・面倒な相手を私達が片付けるべきですね」

砂皿「・・・そして俺達が傷ついては、ただの足手まといになる」


528 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 17:28:17.00 ID:K9c9ZcQE0
絹旗「・・・私達が傷ついてはいけない、と」

砂皿「・・・面倒だな、敵を倒しつつこちらは傷ついてはいけない」

絹旗「そんな面倒を・・・どうやって乗り越えますか?」

砂皿「そうだな・・・ヤツらは熱源に攻撃を仕掛ける、ってことか」

絹旗「?」

砂皿「ならば簡単な話だ・・・」

絹旗「?どうすればいいんですか」

砂皿「・・・熱を感知されなければいい、俺達の熱を隠すだけだ」

絹旗「あ、あの・・・?」

砂皿「・・・少し耳を塞いでろ・・・」

砂皿がポケットから取り出したのは、手榴弾だった

そんなものを彼が持っていること自体、おかしなことではある

狙撃手が爆発物を使うなど、プライドを捨てたようなものだ

絹旗「・・・なんでそんなものを?」

砂皿「・・・いつか必要になると思ってな・・・建設中の建物には面倒な場所もあるだろう?」

絹旗「はぁ・・・道を切り開くために爆発物を・・・ね」


529 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 17:37:42.74 ID:K9c9ZcQE0
砂皿「これで熱を生み出せば、俺達の熱など隠せるはずだ」

絹旗「・・・失敗すれば?」

砂皿「そうだな・・・相手は俺達の熱を感知して攻撃してくる、だが俺達は目であいつらの位置を確かめなければならない」

絹旗「・・・爆発による粉塵が起きれば、私達の不利ですよ」

砂皿「そんなことは分かっている、だから撃鉄を起こした」

絹旗「さっき迂回するって言ってましたよね」

砂皿「・・・無理になってしまってな」

砂皿が迂回路を指差す

そちらには、ファイブオーバーが二機、並んでいた

絹旗「・・・なるほど、前も後ろも崖っぷち・・・ですね」

砂皿「ならば下に川のある崖へと進もう・・・生き残る可能性はそれしかない」

絹旗「・・・私が先に行きましょうか?」

砂皿「同時に行く必要がある」

絹旗「・・・どうしてですか」

砂皿「爆発によって熱が生まれる時間は限界がある・・・もちろん、しばらくは続くが」

絹旗「・・・なるほど、無駄に手榴弾は使いたくない、と」

砂皿「三つしか持っていなくてな、そのうちの一つをここで使うことになる」

絹旗「分かりました、あなたがそれを投げ・・・爆発した瞬間が、私達のレースの始まりですね」

砂皿「・・・地獄へ直行のレースだな」


530 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 18:00:05.88 ID:K9c9ZcQE0
絹旗「・・・幸運を祈りますよ」

砂皿「こんな悪人共を神様は助けちゃくれないさ」

砂皿が手榴弾のピンを抜く

それを、向かいの通路の真ん中へと投げる

ファイブオーバーの足元の転がったそれは、少しして轟音を放った

凄まじい爆風が辺りを包む

その熱によって、ぶら下がっていた非常灯が溶けていく

ドロドロと溶けたそれは、まるで何かの生物の体液のようにさえ見える

砂皿(・・・よし、ファイブオーバーは位置を移動していない)

粉塵の中に見える黒い陰を見て砂皿が判断する

絹旗(・・・まさかこんなことが上手くいくなんて!)

粉塵が晴れたときには、二人は移動を完了していた

ファイブオーバーが二人の姿を捉えることはなかった


砂皿「全く・・・運のいいものだ」

絹旗「悪運が強いですね・・・」

砂皿「・・・手足はついているか」

絹旗「手足どころか、傷一つないですよ」

砂皿「それはよかった、俺もだ」


531 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 18:08:40.32 ID:K9c9ZcQE0
絹旗「・・・悪魔にも祈るものですね」

砂皿「・・・だが悪魔は俺達を愛しているわけじゃない・・・ただ掌の上で転がしているだけだ」

絹旗「・・・このまま進みますか」

砂皿「当然だ、俺達はそのために移動したんだからな」

絹旗「・・・ここからは私が先に行きます、何がなんでも」

砂皿「・・・奇襲でもお前ならば耐えられるからな」

絹旗「・・・そういうことです」

絹旗が先導して通路を進んでいく

周りの状況、地面の状態を確かめながら歩いていく

先ほどの爆発によって、辺りの壁は焦げてしまっている

下手に休んで背中をつけるものなら、それは一瞬にして火傷を負わせる鉄板へと変わってしまうだろう

絹旗「まだ大丈夫です」

砂皿「そうか・・・敵の戦力は落ちてきているようだな」

絹旗「・・・そうですね、急ぎましょう」

砂皿「・・・あぁ」


532 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 19:51:28.54 ID:K9c9ZcQE0

心理(・・・最低ね・・・)

傷ついた右腕を押さえながら、心理定規は顔をしかめていた

駆動鎧は、相変わらず彼女の見つめている先に佇んでいた

出来る限り体を小さくして息を潜める

だが、熱源を感知して攻撃してくるタイプのため、あまりその行動は意味がないのだ

柱や物陰に隠れて、熱源感知をさせないことだけが唯一の対処法なのだ

心理(・・・膠着状態がずっと続くわね・・・)

駆動鎧はそれほど移動していない

このままでは、心理定規は身動きを取れないままだ

心理(・・・私が持っているのはレディースの拳銃だけ・・・)

駆動鎧の装備は、爆弾と銃器、そして巨大なアーム

どちらが有利なのか、など考える必要も無い

拳銃だけで駆動鎧に立ち向かうなど、愚かしすぎる

心理(・・・竜に立ち向かう騎士の気分は・・・こんなものなのかしらね)

そんなことを考えて、少し苦笑する

心理(・・・待って、爆弾・・・?)



533 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 20:02:37.18 ID:K9c9ZcQE0
心理定規が手に握った拳銃を見つめる

右腕に傷を負っているため、慣れない左手で撃たなければならない

心理(・・・それでも・・・もしかしたら)

駆動鎧の本体の下についている爆弾に照準を合わせる

もしもそれを起爆させられれば、心理定規にも活路が見える

心理(・・・お願い!!)

パンパン、と乾いた音がする

一発目は、かなり外れた方向へと飛んでいく

心理(・・・やっぱり左腕じゃブレるわね・・・)

二発目は、駆動鎧の左足に当たって弾かれる

心理(・・・いける)

三発目が、爆弾に命中した

駆動鎧の体がグラリと揺れたのと同時、大きな炸裂音が鳴り響いた

粉塵が巻き上がり、心理定規も一瞬だけ怯んでしまう

心理(・・・今しかないわね!)

全力を振り絞り、心理定規が駆け出す

駆動鎧は体勢を崩されているため、照準を定められないでいるようだ

心理(・・・あまり熱は発しなかったみたいだけど、これなら・・・!!)


534 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 20:36:19.80 ID:K9c9ZcQE0
弾幕の中を心理定規は縫って行くように走る

照準が定まっていないため、危険な高さには銃弾が飛んでこない

それがいくらか安心感を与える

心理(よし・・・これなら行ける!)

だが、安心感というのは時として油断に変わるときもある

緊張の糸が途切れた瞬間に不幸が襲ってくるというのはよくあることなのだ

一発の銃弾が、心理定規の左ふくらはぎを貫いた

心理「!!」

血しぶきと一緒に、何か赤い塊も傷口から噴出した

ドロリ、とした生ぬるい感触を覚えたときには彼女の体は地面に伏していた

心理(しまっ・・・)

心理定規が急いで立ち上がる

すでに左足には力が入らない

それでも彼女は、動かなければならなかった

駆動鎧は先ほどの爆発をものともしていない

恐らく、人間を吹き飛ばす程度の威力だったのだろう

心理(このままじゃ・・・まずい・・・)

出血により頭がクラクラとする

近づいてくる駆動鎧の姿が少しずつブレていく

心理(・・・なんで・・・)

瞼が、重くなる



535 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 20:59:15.42 ID:K9c9ZcQE0

削板「・・・くそ!!また道に迷った!!」

黒子「・・・広すぎますの・・・」

削板「ホント・・・なんでこんなに広いんだ・・・」

二人は同じ道を何度もグルグルと回っていた

上の階に上がるエスカレーターも見つからない

削板「・・・くっそ・・・俺はなんで方向音痴なんだ!!」

黒子「・・・この広さでは空間移動を使ってもあまり・・・」

削板「敵のボスがどこにいるかも分からない!!!」

黒子「はぁ・・・どうしましょう・・・」

削板「手がかりがほしい!!」


スタン「・・・ならくれてやろうか・・・」

削板「!!だ、誰だ!?」

スタン「・・・お前達は・・・地下街で一度だけ会ったな」

黒子「・・・たしか・・・」

スタン「スタンだ・・・ったく、垣根帝督に負けたと思ったら今度はナンバーセブンだ・・・」

削板「・・・垣根に?」

536 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:17:53.75 ID:K9c9ZcQE0
スタン「・・・ったく・・・出来れば見回りで平和にいきたかったんだけどな・・・」

黒子「・・・わたくし達もそうですの」

スタン「・・・そうもいかないのさ」

スタンがライターを取り出す

彼の能力は「水素」を有機物から精製、および操作することだ

水素爆発によっての攻撃を得意としている

削板「いいじゃねぇか・・・やってやるよ!!」

スタン「・・・正直、ここで足止めでも出来ればと思ってるんだ」

削板「足止め?」

スタン「お前達を出来る限り長くこの建物に滞在させられれば俺達の勝ちだ」

削板「・・・どういうことだ?」

黒子「まるで外で何かが起きている、というような言い方ですの」

スタン「そう言っているんだ」

黒子「・・・どういうことですの?」

スタン「話しすぎたな・・・ここでお前達には止まってもらう」


537 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:22:12.12 ID:K9c9ZcQE0
削板「ちっ・・・」

削板が音速の二倍で動く

一瞬でスタンとの距離を詰めてしまう

削板「おらぁ!!」

削板の突き出した拳がスタンの頬に当たる

だが、何か手ごたえがおかしい

まるで硬い壁を殴りつけたような感覚だった

削板「・・・!!水素の壁か!!」

スタン「その通り・・・高密度の水素の壁を作れば、物理攻撃もある程度防げるのさ!」

ライターに火をつけ、スタンが笑う

スタン「ショータイムの始まりだ!!」

ボン、と間抜けな音がして巨大な火柱が上がる

削板「ぐぉっ・・・!!」

削板の体が爆風によって吹き飛ばされる

だが、体が柱にぶつかる前に空中で静止する

削板「中々やるな!!!」


538 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:26:08.66 ID:K9c9ZcQE0
スタン「・・・どうやって空中で静止してるんだ・・・」

削板「知らない!!いくぞ!!!」

グルグル、と腕を回しながら削板がスタンに向かって突っ込んでいく

スタン「言っただろう、物理攻撃は・・・」

削板「すごいパーンチ!!!!」

スタンの体の回りには水素の壁が出来ていたはずだ

しかし、その壁を突き破って不可思議な力が彼にぶつかった

いや、その壁を突き破ってきたのではないのかもしれない

水素の壁の内側からその力は生み出されたようにも感じる

スタン「ごほっ!」

胸に大きな衝撃が加わったスタンが、地面を転げる

水素の壁によって瓦礫が体に当たることはなかった

スタン(ば、馬鹿な・・・壁はちゃんと生み出されていたはずだ!!)

削板「ほらほらどうした!?」


539 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:32:25.08 ID:K9c9ZcQE0
スタン「・・・なんなんだ一体・・・」

スタンが近くの瓦礫を握る

それを削板に向けて投げつける

風力使いのように、水素を噴射して瓦礫を投げつけたのだ

銃弾にも劣らないほどの速さで瓦礫が削板の顔へと向かう

削板「甘い甘い甘い!!!温い拙い柔らかい!!」

銃弾ほどの速度の瓦礫を削板が歯で受け止める

スタン「なっ・・・」

削板「そんなんじゃ俺の根性には敵わないな!!」

削板の背中から七色の閃光が飛び出す

どうしてこのタイミングで発動したのか、スタンには理解できない

削板にさえ理解できないのだから

削板「よっしゃ、俺の番だ!!」

ビュン、という音がしたと思った瞬間、スタンの頭が横からの衝撃を受けた

スタン「何・・・」

削板「すごいパンチだ!!!」

削板はいつの間にか、スタンの真横に移動していた

スタン(・・・見えなかった・・・)

削板「どらっしゃぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

スタンの体が柱にぶつかる

水素の壁を作っていても、衝撃だけは通ってしまう

スタンの頭がぐらりと揺れる

スタン(・・・ま、まだだ・・・)


削板「さぁ!!!まだまだお前の根性を見せてもらってない!!立てよ!!!」



540 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:40:08.60 ID:K9c9ZcQE0


心理(・・・もう、ダメね)

いつの間にか、駆動鎧は心理定規のすぐ傍に佇んでいた

左足の感覚が無くなってしまっている

走って逃げても、距離は縮まる一方だったのだ

そもそも、それは走っていると言える速さではなかった

駆動鎧の速さから逃げることなど、全快の彼女でも難しいかもしれない

傷を負っていたのならばなおさらだ

もう逃げることさえ出来ず、彼女は広い通路に座り込んでいた

心理(・・・脚が痛いわね・・・)

ズキズキ、と脈打つ痛みから冷めたような感覚に変わっていく

人が死んで冷たくなるのと同じなのだろうか、と考える

心理「・・・垣根・・・」

呼んでも返事はないはずの名前を口にする

駆動鎧が、まるでそれを嘲笑うかのように銃口を突きつけてくる

心理(・・・ごめんね垣根・・・)

目を閉じて、そっとその時を待つ

乾いた音が二発、通路に響いた

541 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:44:18.52 ID:K9c9ZcQE0
彼女がよく知っている音だった

それで何度、人の命を狩ってきたのだろうか

最後に聞く音がそれというのは、少し皮肉なものだった

心理(・・・きっと・・・私の血が空を舞うのね)

鮮血が一瞬だけ、空中に絵画を描くのだろう

それは美しいものなのか、それとも醜いものなのか

彼女の死ぬ瞬間を彩るのは、ただ紅の絵の具だけなのだ


しかし、いつまで経っても彼女の体には痛みが走らなかった

心理(・・・何・・・?外れたのかしら・・・)

駆動鎧と心理定規の距離は非常に近かった

その距離から、銃撃を外すとは思えなかった

そっと目を開ける

目に飛び込んできたのは、まるで絵画のような光景だった

心理(・・・どうして・・・?)

542 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:51:50.52 ID:K9c9ZcQE0
宙を舞っているのは、この世の言葉で表現できないほど美しい羽だった

キラキラと輝くそれは、心理定規を明るく照らしている

まるで雪のように、まるで花のように、まるで太陽のように

そして、それは6枚の翼から舞い散っているものだった

美しい6枚の翼は、天使のそれに似ていた

もしもそれが天使ならば、心理定規は死んでいることになるのかもしれない

だがその後姿に、心理定規は見覚えがあった

男にしては長い部類に入るその茶髪も

スラリとした長身な体も

大人っぽい、といつも思っていたその服装も

面倒に巻き込まれた時に、いつもポケットに手を突っ込む癖も

そして、心理定規が危険に晒されれば助けに来てくれる、その優しさも


垣根「あーあ・・・ホント、嫌なこと続きだな」



543 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 21:56:18.82 ID:K9c9ZcQE0
心理「・・・どうして・・・?」

垣根「はぁ?お前助けに来るのは当たり前だろ?」

心理「あなたは・・・私と違う方向に進んでたじゃない・・・」

垣根「あぁ・・・でも別に俺の能力使えば移動も早くできるし・・・」

心理「私がどこにいるのか分かるわけがないじゃない・・・」

心理定規の声が震える

泣いているのだろうか、それとも喜んでいるのだろうか

垣根には分からなかった

心理「・・・なんで・・・どうして・・・?遠くにいたのに・・・私とあなたは離れてたのに・・・」

垣根「・・・そうだな、たしかに俺達は距離的には離れてたし・・・お前のピンチにもしかしたら他のヤツじゃ気づけなかったかもしれないな」

心理「・・・なんで・・・離れてたのに・・・」

垣根「離れてなんかねぇさ」

垣根が、心理定規の左手を指差す

そこには、かつて垣根が彼女に贈った指輪がはめられていた




垣根「ずっと傍にいたじゃねぇか」





544 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/09(水) 22:00:23.58 ID:K9c9ZcQE0
今日はここまで

筋肉動画は、ロニー・コールマンの2004年オリンピア

この年は彼のキャリアで最も体重の重い年でした

それだけ、筋肉の量が多かったんですね

前年、衝撃の2003年から15kg以上増量

カットがバリバリの状態で体重が130kgを超えてます

全盛期のドリアンより18kg近く重いですね

すっげぇ背中、脚です

ただやっぱり腹筋は・・・

http://www.youtube.com/watch?v=PDqWEJNPphM


彼は今も一応トレーニングしてますが・・・ステロイドの多量摂取のせいで筋肉が崩れてきてるみたいですね

なんか残念です

でもカッコイイですよ、彼も


ではおやすみなさい

545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/09(水) 22:30:44.05 ID:SFNLGYt8o
乙!

ふと前スレ読み返してみたけど筋肉動画が無いとなんか物足りないな
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/09(水) 23:11:57.05 ID:ZukJv2J+o
垣根さんかっけえええええ
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 23:17:33.13 ID:hSuS76Odo
乙です
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 23:49:59.80 ID:k29XdYx9o
乙なんだよ!
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 00:06:54.95 ID:RTAKOn/ro
ていとくんかっこよすぎて鼻水でたwwww
550 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:49:06.14 ID:1Wr/Gi5s0
心理「垣根・・・」

垣根「悪かったな、ちっと遅れたが・・・」

心理「・・・本当よ・・・右腕と左足に感覚がないもの・・・」

垣根「・・・包帯なんか持ってるわけないか」

心理「!垣根、駆動鎧を・・・」

駆動鎧の銃口は新たに現れた熱源に向けて突き付けられた

垣根「・・・あぁ?なんだよつまんねぇ」

翼の一枚がその腕を切り裂いた

中には誰もいないため、不気味な空洞が顔を覗かせる

心理「・・・相変わらず化け物じみてるわね・・・」

垣根「そんなこと言うなよ」

残りの一機を翼で叩き潰す

その反動で辺りの壁に亀裂が走る

ビリビリという衝撃が地面を伝って心理定規の体を揺する

心理「・・・すごい威力ね・・・昔のあなたより強いんじゃない?」

垣根「こいつは新しい力なんだよ」



551 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:49:47.22 ID:1Wr/Gi5s0
翼を畳みながら、垣根が心理定規に近づく

垣根「ったくよ・・・油断しすぎたんじゃ・・・」

心理「垣根!」

心理定規が垣根に強く抱き着く

その肩は激しく上下している

温かい雫が、垣根の頬に触れる

垣根「泣いてるのかよ・・・情けないな」

心理「仕方ないでしょ・・・どれだけ不安だったと思ってるのよ・・・」

垣根「・・・ほら、傷見せてみろよ」


心理定規が右腕と左足を垣根に差し出す

垣根「見事に貫通してるな・・・そっちのほうがいいだろうけど」

上着を引きちぎり、包帯の代わりにする

グルグルと手慣れたような手つきで垣根が心理定規の傷を塞ぐ

心理「・・・ごめんなさい」

垣根「・・・野暮用だから気にすんな」

心理「でもどうしてここが・・・?」

垣根「敵の一人が・・・駆動鎧はそこら中にいるって言ってたんだよ」


552 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:50:23.16 ID:1Wr/Gi5s0
心理「でもそれだけじゃここは分からないでしょ」

垣根「俺の進んだルートには能力者はいたが駆動鎧はほとんどいなかった・・・てことは反対のルートにはある程度いると考えられた」

心理「だからここに?」

垣根「お前の能力じゃ対抗策がないだろうからな・・・一方的に同じ銃声が鳴ってたら恐らくそこだと思ったんだよ」

心理「はぁ・・・あなたが来てくれなかったら私は死んでたわね」

垣根「死なせるわけないだろうが」

垣根が心理定規の手を握る

垣根「立てそうか?」

心理「少し痛むわね・・・」

垣根「なんだよ・・・じゃあここで止まるか?」

心理「置いていかれるのは御免なの」

垣根「・・・分かったよ」

垣根が心理定規を背中に背負う

心理「あら・・・いいの?」

垣根「・・・これなら視界を遮らないからな」

心理「ふふ・・・それならよかったわ」


553 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:51:00.02 ID:1Wr/Gi5s0
垣根の肩に顎を乗せ、心理定規が目を閉じる

心理「・・・ありがとう、垣根」

垣根「・・・悪かったな、やっぱり俺が一緒に動くべきだった」

心理「いいのよ、それは」

垣根「・・・このまま敵の頭領を叩きに行く」

心理「・・・場所が分かってるの?」

垣根「電力制御室だ、最上階にあってしかも完璧な個室だからな」

心理「なるほど・・・それなら当たりかもしれないわ」

垣根「・・・問題は相手の能力だろうな」

心理「頭領なら何かしら強力なものでしょうね」

垣根「・・・まぁ俺に敵うわけないから問題ないか」

コツコツ、と一つの足音が響く

垣根「・・・土御門達は上手くやってるかな」

心理「?何か言った?」

垣根「なんでもねぇ」


554 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:51:46.31 ID:1Wr/Gi5s0


麦野「・・・フレンダは上手くやったかしら」

浜面「そう信じるしかないだろ」

滝壺「・・・はまづら、敵は?」

浜面「こっちにはいない」

広場の真ん中を、三人は歩いていた

周りから三人の姿はまる見えになっているだろう

だが駆動鎧が相手ならば隠れても意味はない

相手が人間だとしても、結局いずれは気づかれる

ならば相手が攻撃してきたところを迎撃したほうが手っ取り早い

その広場は上まで吹き抜けになっているため、上の階の状況も若干だが把握することが出来る

広場の中心にはベンチが並んでいる

周りの仮説店舗を見る限り、ここは飲食店が並ぶ予定だったらしい

浜面の知っているチェーン店の名前が書かれた看板がぶら下がっている

ファーストフードを買った学生がすぐに食べられるようにベンチを設置しているのか

それも、今の状況では全く役には立たない


555 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:52:44.46 ID:1Wr/Gi5s0
麦野「・・・こうもどこから敵が来るか分からないと、ピリピリしちゃうわね」

浜面「こんな感覚は久しぶりだ・・・死に神がずっと首元に鎌を突き付けてるみたいだな」

滝壺「・・・振り向いたら首が落とされそうだね」

麦野「ふん・・・死に神ならまだいいわよ、生きた人間が相手なら最愛よ」

浜面「・・・そうだな」

自分の呼吸音にさえビクリと反応してしまう

あまりに神経を研ぎ澄ましているからか、実際にありもしない音が聞こえてくる

浜面(・・・このままじゃ神経を擦り減らしちまうな)

麦野「・・・移動してみる?ここには何もなさそうよ」

浜面「そうだな・・・あんまり目立ちやすい場所にいるのは得策じゃない」

滝壺「むぎの、これからどこに向かう?」

麦野「絹旗達が向かったのはこのルートだから・・・」

柱の地図を指差しながら麦野が思考を巡らせる

麦野「こっちにはゴーグル君がいて・・・となると、上の階に行くしかないかもね」

浜面「・・・上か」

滝壺「・・・ここから上に向かうと・・・ちょうど別棟との通路に着くよ」

麦野「・・・別棟にはあまり可能性はないと思うわ」


556 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:53:39.16 ID:1Wr/Gi5s0
浜面「同感だ・・・わざわざ小さくて攻められやすい別棟に頭領がいるとは思えない」

滝壺「でも上の階は別棟に移動するか・・・少し離れたエスカレーターで上に向かうしかないよ?」

麦野「どうせ移動するなら上に向かいましょう」

浜面「・・・かなり距離が遠いな」

麦野「・・・エスカレーター付近には恐らく何かしらの対応がされてるはずよ」

浜面「能力者か、それとも駆動鎧か」

麦野「駆動鎧も見つからないうちになら簡単に倒せるんだけど」

滝壺「・・・そんなに都合よくはいかないかもね」

浜面「・・・注意して進もう、最上階までもうすぐだ」

麦野「馬鹿とお偉方は高い所が好きなのよね」

浜面「上から人間を見下したがるヤツらだからな」

滝壺「でも上から見すぎるあまり、戦況を把握しにくいんだよ」

麦野「・・・行きましょう、きっと他の連中も上に向かってるわ」

浜面「了解」

ポケットに入った拳銃を確認して、浜面が先に進む

彼がまず先導し、危険がないかを察知する

もしも麦野がしんがりを勤めて何かしらの攻撃を受ければ、直接的な戦力がゼロになってしまうからだ


557 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:54:16.22 ID:1Wr/Gi5s0
浜面(くっそ・・・いきなり物陰から狙撃、とかないだろうな・・・)

よく言えば先導だが、実際はただの実験台に近い

今から進む道は安心なのか、確認するためのいけにえだ

浜面「よし、今は大丈夫だ!」

麦野「・・・エスカレーターは見える?」

浜面「・・・あぁ、見えた・・・すぐそこだ」

三人がエスカレーターを登る

上の階に行って真っ先に目に入ったのは大きな傷痕だった

地面には穴が空き、壁には不可解な亀裂が走っている

浜面「なんだこりゃ・・・」

麦野「・・・多分垣根が暴れてたのよ」

滝壺「分かるの?」

麦野「駆動鎧の攻撃なら銃弾が残ってるし、ただの能力者じゃこんな破壊は起こせない」

浜面「一方通行かもしれないだろ」

麦野「あいつは一点に集中して力を加える天才よ?ここまで痕跡は残さないはず」

浜面「なるほど・・・ってことはこの近くに垣根が?」

麦野「どうかしら・・・!」


558 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:54:57.64 ID:1Wr/Gi5s0
麦野が右腕を前に翳す

地面に、一人の男が横たわっていることに気がついたからだ

桐山「・・・あぁ?なんだ、アイテムか・・・」

麦野「アンタ・・・たしか私たちに接触してきたヤツね」

桐山「・・・そうだ」

浜面「・・・なんでそんなところで休んでるんだ」

桐山「垣根帝督とやり合ったんだ・・・惨敗だ」

麦野「はっ、当たり前だろ・・・この私でさえ歯が立たないんだから」

桐山「・・・そのあとゴーグルの男とフレンダとかいうヤツを逃がした」

滝壺「逃がした・・・?どうして?」

桐山「下からお前達は来たんだろ・・・?ファイブオーバーには遭遇しなかったか?」

麦野「しなかったわよ」

桐山「・・・なるほど、移動したのかもしれないな・・・運のいいヤツらだ」

浜面「・・・そのファイブオーバーに二人は追われてたのか?」

桐山「正確には・・・ここで俺達三人が留まっていたらファイブオーバーが現れたんだ」

麦野「アンタが二人を逃がした理由は」

桐山「・・・誰かのために行動してみろと・・・ゴーグルのヤツに言われたんだよ」


559 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:55:46.80 ID:1Wr/Gi5s0
麦野「・・・アンタ、暗部にいるにはもったいないわね」

桐山「知ったことか・・・結果的に俺はここにいるんだ」

浜面「・・・それで?二人はどこに向かった?」

桐山「お前達がやってきた方向へ行ったはずだ」

滝壺「・・・あっちは別棟に移動する道だよね」

桐山「別棟に一度移動すれば・・・最上階までのショートカットがあるんだ」

麦野「何?」

桐山「あいつらがそれを知ってたのかは分からないが・・・柱の地図を見れば遅かれ早かれ分かるだろう」

滝壺「・・・私達もそっちに行ってみる?」

麦野「こいつの言葉を鵜呑みにしてもいいのかしら」

浜面「・・・今は手掛かりがない、このまま進んでもどうせいつか駆動鎧と接触するだろうさ」

麦野「・・・ならばそっちの可能性に賭ける、ね・・・」

麦野が桐山をちらりと見つめる

垣根との戦闘で出来た傷だろうか、とても動けるような状況ではない

浜面「・・・お前はどうするんだ」


560 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:56:21.47 ID:1Wr/Gi5s0
桐山「行ったところで何も出来ないな」

麦野「それでも、自分の過ちの終わりを見る必要はあるんじゃないかしら」

桐山「・・・そうかもしれないな」

浜面「着いてきたいなら手は貸すけど」

桐山「・・・頼んでいいか」

浜面が桐山に肩を貸す

桐山「・・・このまま別棟に行けば、後は俺が道を伝える」

滝壺「・・・そろそろこの事件も終わるのかな」

桐山「暗部はいつまでも無くなりはしない・・・誰かが心に闇を抱えていれば、存在し続けるんだ」

麦野「それは言い訳よ」

桐山「何?」

麦野「そんなことを言うのは、自分の力では何も出来ないと諦めてる人間だけよ」

桐山「ならば敢えて聞くが・・・お前は何か出来るのか?」

麦野「・・・少なくとも、無理と決め付けて逃げ出したりはしないわ」

浜面「俺達は罪を背負ってる・・・だから前に倒れやすいんだよ」

麦野「前に走るには便利なんじゃないかしら」


561 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:56:59.28 ID:1Wr/Gi5s0
桐山「・・・全く、どうしてお前達がそんなに強いのかがよく分かる」

浜面「行こう、俺達が決着をつけなきゃいけない」

滝壺「・・・うん」

麦野「・・・終わらせるわよ、こんなくだらない茶番劇は」

アイテムの三人が歩き出す

浜面に肩を貸されて歩く桐山は、なぜかそれに憧れさえ感じていた

桐山(・・・なるほどな・・・俺には・・・強さが足りなかったわけだ)


削板「甘い!」

スタン「くそ・・・!」

削板の説明出来ない力に、スタンは翻弄されていた

どこから、どれだけの大きさの力が、いつ飛んでくるのか

全く読むことが出来ないのだ

しかもそれの全てが、スタンの体力を確実に削っていく

スタン「ナメるなよ!」

水素爆発は、よく説明出来ない方法で防がれる

水素を固めて打ち出した拳も、音速で避けられる

防ぐことも、攻めることも出来ないのだ


562 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:57:31.60 ID:1Wr/Gi5s0
スタン「・・・出鱈目過ぎる・・・」

削板「説明出来るということは、所詮は他人に測られてしまうということだ!」

削板が拳を握り締める

その動作だけで、スタンは背筋が凍ってしまう

削板の攻撃は読むことが出来ない

威力が分からないためどのように構えればダメージを軽減出来るかが分からない

スタン(一撃一撃がびっくり箱だと・・・?やってられるか!)

拳を地面に打ち付け、粉塵を起こす

削板とスタンの間に分厚い煙の壁が生まれた

スタン(よし、今のうち・・・)

削板「まだまだ!」

スタン「なっ・・・」

削板「すごいパーンチ!」

上下左右、どこから飛んできた衝撃なのか

それを理解する前にスタンの体が吹き飛ぶ

スタン「く・・・」


563 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:58:15.56 ID:1Wr/Gi5s0
削板「はぁっ!」

吹き飛んだスタンの後ろに、削板が回る

その背中に削板が拳を打ち込む

スタン「てめぇ・・・」

削板「そろそろトドメにしてやる!」

柱にぶつかったスタンの正面に削板が佇む

スタン「ふざけんな・・・!」

スタンが水素を発生させ、ライターのスイッチを入れる

黒子「!軍覇さん!」

至近距離であの爆発を喰らってしまったのだ

大怪我を負っていても無理はない

スタン「ごほっ・・・」

粉塵を少し吸い込んでしまったスタンが咳込む

水素の壁を作り出すことによって、ダメージを最低限に留めたのだ

それでも、体は衝撃を覚えていた


564 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:59:06.56 ID:1Wr/Gi5s0
スタン(今ほどの爆発なら・・・いくらあいつでも無傷ではいられないだろうな)

粉塵の中には、人影が見える

それは、しっかりと地面を踏み締めて立っているように見えていた

スタン「・・・まさか・・・」

晴れた粉塵の中に立っていたのは、削板だった

削板「なるほど、今のがお前の全力だったのか・・・」

スタン「・・・む・・・無傷だと!?」

削板「お前の全力受け止めた!だがしかし、俺はそれでも止まらない!」

削板がくるり、と体を回転させる

勢いの加わった彼は、拳を突き出す

削板「俺は止まらない、そしてお前はここで止まる!」

スタン「くそが・・・」

削板「すごいパーンチ!!!」

先程の水素爆発など比にならないほどの衝撃が生まれる

スタンが寄り添っていた柱ごと、彼は吹き飛んだ

スタン「・・・な、なんなんだ・・・よ・・・」


565 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 09:59:39.60 ID:1Wr/Gi5s0
削板「己の正義を持っていない人間が、俺の根性を曲げることなんて出来ない!」

スタン「・・・俺にはそんなもの・・・」

削板「言い訳をするな!お前にだって見つけられるはずだ!」

スタン「・・・簡単に・・・言ってくれるな・・・」

削板「・・・つまらない言い訳だな!俺には全く分からない!」

スタン「暗部にいない人間が何を・・・」

削板「暗部も表も変わらない!」

スタンの襟首を掴みながら、削板が叫ぶ

削板「お前はなんでここにいる!?」

スタン「理由なんてない!俺達にはこの世界しか・・・」

削板「違う!お前はまだ表に戻れる!垣根や一方通行も戻れたんだ!」

スタン「戻れてなんかいない・・・!」

削板「戻った!あいつらは戻ったんだ!」

スタン「・・・何が分かる・・・」

削板「・・・ならお前はなんで俺達を殺さないんだよ」


566 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 10:00:13.64 ID:1Wr/Gi5s0
スタン「・・・殺せなかったんだ、力が足りなかった」

削板「なら今・・・俺を殺してみろ」

スタン「・・・」

黒子「ぐ、軍覇さん!それは・・・」

削板「殺せるならやってみろ!俺はお前の中にある良心を信じてやる!」

スタン「俺の良心・・・だと?」

削板「お前は人を殺すなんて出来ない!俺がそう認めてやる!」

スタン「ふん、初めて会った人間を信じるなんて馬鹿としか思えないな」

削板「・・・それでもいい、馬鹿でも誰かを信じることは出来るんだ」

スタン「・・・くだらねぇな・・・」

両手両足を投げ出し、スタンが地面に横たわる

削板「・・・それでも、お前は俺を殺せなかった」

スタン「・・・うるせぇ」

削板「安心したよ、やっぱり暗部にだって救いの道はあるんだ」

スタン「・・・どこへ行く」


567 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 10:00:55.81 ID:1Wr/Gi5s0
削板がゆっくりと歩き出す

彼が向かうのは、もちろん上の階だ

黒子「さて・・・わたくしも行きますの」

削板「じゃ、行くか」

スタン「・・・上へ向かうつもりか」

削板「じゃあな、俺達は俺達の道を進むだけだ」

黒子「そうですの、わたくしは誰の正義を押し付けられるでもなく・・・わたくしが決めた正義を貫きますの」

削板「行こう、黒子」

黒子「はいですの」

二人の背中が、離れた通路へと消えた

スタン「ったく・・・表の人間ってのはなんであんなにも生温いんだろうな」

はぁ、とため息をつきながらスタンが目を閉じる

体のあちこちが痛むが、決して致命傷にはなっていない

削板が意図的に手を抜いていたのだろう

スタン「ははは・・・超能力者ってのはどいつもこいつも出鱈目なヤツばっかりだ」

体を床に預け、あの真っすぐすぎる青年の顔を思い出す


568 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 10:03:16.09 ID:1Wr/Gi5s0
スタン「・・・正義か」

スタン「くだらねぇ言葉だが・・・そんなものを見つけるのも悪くないかもな」

スタンがゆっくりと体を起こす

遠くには六枚羽が見える

それを片付けたら彼も進むつもりだ

スタン「まずは・・・お前達の正義を見せてもらうか」

ライターをカチャカチャと鳴らしながら、スタンは六枚羽へ向かっていく

その顔は今までと違って、清々しいものだった



土御門「・・・いいか、俺達の行動は出来る限り表の住人には露見しないようにしろ」

結標「・・・それは、あなた個人の理由?」

土御門「それが表と裏のルールだ」

一方「分かってンだよ・・・」

番外「・・・ここが上条達の学校か・・・」

学校の裏口

四人はそこから進めずに隠れていた


569 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 10:25:08.19 ID:1Wr/Gi5s0
学校の裏口というのには、大抵教師が見張りに立っているものだ

遅刻してきた生徒が隠れて入校してくるから、とか不良生徒が授業を抜け出してタバコを吸っているから、とかそんな下らない理由だ

学校側からしてみれば下らなくないのだろうが、今の四人にとってはそれが鬱陶しかった

土御門(・・・敵のアジトにあったデータでは、ヤツらの下部人員はそれほど数はいない・・・)

土御門(・・・となると、せいぜい20の学校に爆発物を仕掛けるので精一杯だろうな)

地図上の、爆発物の仕掛けられている可能性のある学校を土御門がチェックする

可能性があるのは全部で36

そのうちの20に爆発物が仕掛けられていると考えるべきだ

土御門(・・・ヤツらが入手していたのは学校一つ吹き飛ばすのにはもったいないほどの爆弾だ・・・)

土御門「・・・どうやって入る」

結標「・・・私の能力でも一応はいけるわよ・・・」

そういう結標の額には、冷や汗が浮かんでいる

あまりにも能力を酷使しすぎたのだ


570 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 10:34:24.68 ID:1Wr/Gi5s0
番外「・・・ううん、これ以上能力を使ってもきついでしょ」

一方「てめェ一人がぶっ倒れるのは構わねェが俺達の足手まといにはなンなよ」

結標「・・・ふん、分かってるわよ」

土御門「・・・正門から堂々と入るわけにはいかない・・・」

一方「・・・なンでだよ」

土御門「当たり前だろ、俺達は・・・」

一方「・・・そォだ、てめェが囮になれよ土御門」

土御門「は・・・?」

一方「お前はこの学校の生徒なンだ、遅刻してきた生徒を装ってあの見張りの教師を引き付けろ」

一方通行が指差すのは、生徒の間で「ゴリラ」と恐れられている生徒指導の教師だ

土御門「そ、それでもいいが・・・」

番外「うん、そうだね・・・爆弾の解体なら一方通行やミサカにも出来るし」

結標「最悪の場合、私がどっかの川にでも座標移動すればいいもの」

土御門「・・・どこに隠されてるのか見当は?」

一方「・・・授業中なンだ、おそらく校舎をダイレクトに狙う」

土御門「・・・くっそ、そうなると下の階を崩すに決まっているか・・・」


571 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 10:44:31.93 ID:1Wr/Gi5s0
一方「下の地盤が崩れれば建物は全て・・・まァお前の言ってた爆弾ならそンなことしなくても校舎は全壊、生徒は大勢死ぬだろうけどな」

土御門「それだけは防ぎたい」

一方「同感だ・・・頼むぞ」

土御門「・・・あぁ」

土御門が先に裏口をくぐる

わざと教師に見つかるように、だ


土御門「にゃー!!遅れちまって申しわけないぜぃ!!」

「・・・一年の土御門だな」

土御門「いやぁ、体調不良で休んでてやっと体調は良くなったんですけどにゃー!!」

「・・・言い訳はそこまでか?」

土御門(・・・こ、これだからこの役はイヤだったのに・・・)


結標「・・・本当に、裏表を使い分けるわね」

番外「・・・でもおかげでかなりこっちから目を反らせてるね」

一方「行くぞ」

説教する教師と説教される土御門の裏に回るように、三人は進んでいった


572 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 11:11:52.90 ID:1Wr/Gi5s0
一方「・・・ちっ・・・慣れないな、こンな雰囲気は」

番外「そう?ミサカは大好きだけどな」

一方「・・・ちげェ、こンな雰囲気を事件に巻き込むのが辛いンだよ」

結標「あら、良心の呵責かしら」

一方「・・・さっさと探すぞ」

結標「・・・そうね」

番外「校舎なら・・・下駄箱とか?」

一方「いや・・・そンな目立つ場所には置かないはずだ」

結標「・・・そうね・・・設置しやすい場所は?」

一方「・・・あいつらがどうやって侵入したかは分からないが・・・そうだな、夜の学校はそこまでセキュリティが厳しくない」

結標「・・・一階で、しかもあまり深入りしていない場所・・・」

番外「なおかつ校舎にダイレクトにダメージが届く場所・・・か」

一方「・・・渡り廊下」

番外「なに?」

一方「・・・渡り廊下だ、剥き出しで校舎に直結している」

結標「・・・なるほど、ありえるわね」




一方「・・・」
573 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 11:24:00.91 ID:1Wr/Gi5s0
結標「・・・どこかしら」

渡り廊下は大きい、というほどではない

だがご丁寧に目立つ場所に目立つカバンに入れて、ということはない

出来る限り目立たないように置いているはずなのだ

結標「どう思う?いくつも爆弾を用意してるかしら」

一方「・・・いや、全部の爆弾が爆発しなくたって問題はないンだ」

番外「そうだね・・・どっか一個でも爆発すればそれだけで大騒ぎだ」

一方「生徒を外から預かってる体裁の学園都市は躍起になって解決しようとする」

番外「でも、そこには裏の人間が絡んでる・・・」

結標「・・・警備員や風紀委員におおっぴらに調査はさせられないってことね」

一方「・・・だが、そうなったら絶対に統括理事会に反感を持つヤツが出てくる」

番外「・・・統括理事会の面目は丸つぶれ、しかも絶対に面白半分で裏に踏み込む人間が続出する」

一方「探偵ごっこが好きなガキはいつまでもいなくならねェ」

結標「はぁ・・・めんどくさいことこの上ないわね」

番外「・・・唯一出来ることは、全ての爆発物を発見して未然に事件を防ぐことだね」



574 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 11:27:08.79 ID:1Wr/Gi5s0
一方「・・・探せ、どォせこの辺にあるはずだ」

番外「そうだね・・・めんどくさいけど、探し・・・」


青ピ「あれ?一方通行やんか」

一方「!」

姫神「どうしてこんなところに。あなた達がいるの?」

結標(まずい・・・生徒に見つかった・・・!!)

番外「あ、い、いや・・・」

吹寄「・・・学校に用?上条も垣根も休んでるけど・・・」

一方「・・・そォじゃねェ・・・」

青ピ「なんかあったん?渡り廊下でさっきからなんかしてたみたいやけど」

結標「あ、あら・・・ちょっと教室が分からなかっただけよ」

吹寄「やっぱり上条に会いに来たの?」

一方(・・・めンどくせェことになったな・・・)

番外(・・・ここで爆弾が仕掛けられてます、なんて素直には・・・)


土御門「おーい、どうだった・・・」

青ピ「あれ、土御門?」

一方(・・・最悪だ・・・)


575 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 11:30:25.38 ID:1Wr/Gi5s0
土御門「お、お前達・・・今授業中じゃないのかにゃー!?」

吹寄「貴様・・・!!体調不良なんじゃなかったの!」

土御門「きょ、今日は体調が良くなってやってきたんだにゃー!!」

番外「そ、そうそう!!」

結標「私達は彼の付き添いよ・・・体調が良くなったとはいっても一応倒れる可能性も考慮しないとね」

一方「・・・だがこいつはどンくさいから生徒指導の教師に見つかったってわけだ」

青ピ「なんや、もう風邪治ったん?」

土御門「あ、あぁ・・・もう全快だぜぃ」

姫神「それなら。さっさと教室にカバン置いてきたら?」

吹寄「一時間目は移動教室よ」

土御門「だ、だからここを通ったのかにゃー・・・」

吹寄「ったく・・・」

三人が渡り廊下を進んでいく

どうやら土御門たちが爆発物を探していることには気づいていないようだ

一方「・・・あぶねェ・・・」

番外「ひゃー・・・ヒヤヒヤした・・・」


576 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 11:43:59.28 ID:1Wr/Gi5s0
一方「・・・土御門、おそらく爆発物は渡り廊下だ」

土御門「・・・それならあとは簡単だぜぃ」

結標「あら、どうして?」

土御門「・・・ここの渡り廊下にはついでに水道が設置されていてな・・・」

番外「?たしかにそうだけど・・・」

土御門「・・・この水道の裏は、死角になっているんだにゃー」

土御門が水道の下にしゃがみこむ

そして、その縁の裏を覗き込んだ

土御門「ほーら、あったぜよ」

一方「何!?」

一方通行が土御門の隣に移動し、その下を覗き込む

とても小さな、トランシーバーよりも遥かに小さな大きさのものがそこに貼り付けられている

一方「・・・マジかよ・・・」

ゆっくりとテープを剥がし、一方通行がそれを手に握る

番外「そ、そんなに小さいの?」


577 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 11:54:24.99 ID:1Wr/Gi5s0
一方「・・・かなり強力なヤツだ」

ぐしゃり、と一方通行がそれを握りつぶす

全てのベクトルをそれに集中させることで、簡単にひしゃげてしまう

土御門「おいおい、念のため丁寧に解体しろよ」

一方「うるせェな、俺が触れてれば爆発の衝撃は全て互いに相殺できるンだよ」

土御門「はぁ・・・ま、これでいいのかもしれないな」

土御門が時計を見つめる

土御門「・・・時間もちょうどいい、あとは・・・」

一方「おい、土御門」

土御門「どうした?」

一方通行が、壊れた爆弾の中から何かを取り出す

小さなチップのようなものだ

耐熱、および耐衝撃のケースに入れられている

結標「あら、何かしら」

一方「・・・なるほどな、あいつらは警備員が万が一来たときのために手がかりも残すつもりだったンだ」

番外「?それがなんなの?」

一方「マイクロチップだ・・・おそらくあいつらのデータが記されている、しかも爆発してもこのケースでこれだけは守られるってわけだ」

土御門「・・・念のためパソコンで解析してみるか」

一方「あァ」

小さなマイクロチップを握り、一方通行が笑う


一方「・・・そろそろ幕を降ろさなきゃならねェ」


578 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 15:50:30.57 ID:1Wr/Gi5s0

垣根「・・・大丈夫か」

心理「えぇ・・・ちょっと感覚がおかしくなってるけど」

垣根の背中に背負われながら、心理定規は答えた

彼女の左足と右腕には大きな傷が出来ている

垣根「・・・悪いな、これが解決するまでは我慢してくれ」

心理「・・・分かってるわ」

垣根「・・・そろそろ電力制御室だな」

柱の地図をもう見る必要もない

あとは、目の前にあるエスカレーターを一度上がるだけだ

そこに、敵の頭領がいると思われる

垣根「ここまで来て・・・いませんでしたってオチはないだろうな」

心理「・・・それでも構わないんじゃない?」

垣根「アホか・・・また探すのは御免だぞ」

心理「・・・そうね、私も早く傷を・・・!!垣根、向こうの通路!!」

垣根「あぁ?」

心理定規の言葉に反応して、垣根が通路を睨む

そこには一人の男が佇んでいた

タバコを吸いながら、悠々と笑っている


579 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 15:56:04.94 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「ちっ・・・せっかくここまで来たのによ」

心理「また敵ね・・・」

垣根「・・・めんどくせぇ、ぶっ潰してやる」

垣根が心理定規をゆっくりと下ろす

その体を、柱に寄り添わせるようにして座らせる

垣根「・・・」

ゆっくりと、その男に近づいていく

男はタバコの煙を吐きながら、時計を見つめていた

まるで誰かを待っているかのように


垣根「おい」

「ん?お、垣根帝督だな」

垣根「・・・てめぇ、新暗部の人間か」

「そうそう、やっと来てくれたのか・・・待ちくたびれたぞ」

ケラケラと笑いながら、男がタバコを地面に捨てる

「・・・やっとここまでたどり着いたんだな、褒めてやるよ」

垣根「あぁ?」

小鳥遊「とりあえず自己紹介だ・・・俺は小鳥遊翔だ、よろしく」

垣根「・・・へぇ、もしかしててめぇが頭領か」

小鳥遊「その通り、待ちくたびれたから出てきちまったよ」


580 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 16:06:21.72 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「そりゃ悪かったな」

小鳥遊「いいって、タバコが一箱ほど無くなったが」

タバコの箱を踏み潰し、小鳥遊が一歩前に進む

小鳥遊「悪いが、もう少し待ってもらっていいか」

垣根「何をしたい」

小鳥遊「いや・・・そうだな、他のメンバーが集まるのを待っていたいのさ」

垣根「・・・てめぇの仲間が集まるのなんか待ってられるか」

小鳥遊「おいおい、お前の仲間も待ってやれよ」

垣根「そんな義理はねぇな」

小鳥遊「ったくよ・・・」


風間「小鳥遊さん!!」

小鳥遊「ん?風間か、よく来たな」

風間「桐山が・・・って垣根帝督!」

垣根「あぁ?俺より早く出たくせに俺より遅く着いたのか」

風間「う、うるせぇ・・・小鳥遊さん、桐山も恐らく戦線離脱・・・これで戦えるのは俺と・・・小鳥遊さんだけです!」

小鳥遊「・・・スタン、仙道、霧野はどうした」

風間「そ、そりゃ・・・一応生きてはいますけど、でも戦闘には・・・」

小鳥遊「・・・あいつらが来るまで待っておくか」

風間「マ、マジですか!?」

小鳥遊「そっちのほうが便利だ」


581 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 16:12:41.09 ID:1Wr/Gi5s0
風間「で、でも・・・」

垣根「おいおい、シカトこいてんじゃねぇよ」

垣根がイライラとしながら二人の会話を遮る

垣根「こっちはお前らの事情とか知らないんだよ・・・さっさと終わらせて家に帰って美味い紅茶でも飲みたいんだ」

小鳥遊「そうか、それなら酒の肴も必要だろう?」

垣根「・・・何のつもりだ」

小鳥遊「なーに、滑稽に踊る馬鹿共でも作り出してやるよ」

垣根「・・・」

小鳥遊「お?ありゃアイテムじゃねぇのか?」

垣根「何?」

垣根が小鳥遊の視線を辿る

その先には、三人の見方の姿が見えていた


滝壺「あ、かきねだ」

麦野「・・・!何か知らないヤツがいるわね・・・」

浜面「・・・もしかして、敵か?」

麦野「恐らくは、ね」



582 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 16:16:30.20 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「お前ら・・・ってかなんでそいつがいるんだよ!?」

桐山「・・・小鳥遊さん・・・」

風間「き、桐山・・・生きてたのかよ」

桐山「・・・小鳥遊さん、俺は・・・」

小鳥遊「よぉ、なんだか知らないが・・・敵に担がれて運ばれてるなんて面白いことになってるな」

桐山「俺は、もうアンタには従えない」

小鳥遊「・・・なぜだ」

桐山「・・・俺は今まで、逃げることだけを考えてきた・・・だがこれからは向かい合うことを選ぶ」

小鳥遊「はぁ・・・そいつらに何か吹き込まれたか?」

桐山「そんなんじゃない・・・」

小鳥遊「言い訳はいいんだよ、ったく・・・」

めんどくさそうに小鳥遊が頭を掻く

心理「あらどうしたの?余裕でも無くした?」

小鳥遊「・・・いや、こりゃ中々いい状況だ」

垣根「なに?」

小鳥遊「・・・スタンと霧野・・・仙道も出来れば回収したかったが、仕方ないといえば仕方ないか」

浜面「・・・何を言ってる?この状況じゃお前が明らかに不利だぞ」

小鳥遊「そんなことはないさ」


583 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 16:23:45.04 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「なら見せてみろよ・・・」

翼を広げ、垣根が不敵に笑う

今の翼はただの「白い」翼だ

最初から奥の手を見せる必要は無い

最も、それを解放する必要のある相手などこの世に数えるほどしかいないのだが

小鳥遊「ほぉ、そりゃすげぇ」

垣根「どうだ?勝てるか?あぁ?」

小鳥遊「・・・いや、俺が勝つ必要はないんだよ」

垣根「なに?」

小鳥遊「風間、仙道と霧野・・・スタンに至急連絡を取れ、ここに集まっていないメンバーはすぐさま集合だ」

風間「い、いいんですか?」

小鳥遊「どうせこいつらにボロボロになるまでやられてるはずだ、だったら有効活用しなきゃな」

桐山「小鳥遊さん、アンタ・・・」

小鳥遊「さて・・・未元物質に心理操作系・・・原子崩し、それは俺に相手をすることは出来ないな」

麦野「・・・当たり前でしょ」

小鳥遊「・・・だがな、残りの二人はどうかな」

麦野「・・・?」

その言葉に、麦野が眉をひそめる

残りの二人、浜面と滝壺は


垣根「!!麦野、しゃがめ!!」

麦野「なに・・・」

麦野がくるり、と振り向く

その瞬間、麦野の腹に拳が食い込んだ


他でもない、滝壺の拳が


584 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:05:05.56 ID:1Wr/Gi5s0

砂皿「・・・めんどうだな・・・また駆動鎧だ」

絹旗「超鬱陶しいですね・・・」

砂皿「・・・やはりこちらの道が正解のようだな」

狭い通路を、二人は駆けていた

電力制御室へと向かう通路は、退路がない

後ろには駆動鎧が見えている

幸い、二人はまだ見つかってはいないようだ

砂皿「くそ・・・あと少しで広間に出る、それまで見つからないようにしろ」

絹旗「分かってますよ!!」

砂皿「・・・恐らく他のヤツらはもう到着している・・・」

絹旗「・・・遅れて登場するなんて、ヒーローみたいですね」

砂皿「ヒーローか・・・くだらんな」

絹旗「・・・手榴弾は?」

砂皿「残り一つだ・・・ここに来るまでに一つ使っただろう」

絹旗「そうですね・・・」


585 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:16:06.03 ID:1Wr/Gi5s0
砂皿「・・・よし、逃げ切った・・・!!」

砂皿が通路の出口にたどり着く

視線の先には、アイテムのメンバーやスクールのメンバーがいた

そこにいないのは、グループとゴーグル男、フレンダだけだった

絹旗「みなさ・・・」


麦野「た、滝壺・・・!」

麦野の顔に怒りが浮かんでいる

滝壺が、麦野の腹部に拳を打ち込んだためだ

それは裏切りでもある

垣根「ちっ・・・なんの真似だ、滝壺」

滝壺「・・・」

滝壺の体がぐらりと揺れる

その目には、生気が宿っていない

麦野「た、滝壺・・・」

滝壺「・・・」

再び、滝壺が拳を振り上げる

それは、麦野の顔を狙っている

垣根「麦野、どけ・・・!!」

垣根が麦野を跳ね除け、滝壺の体に軽い衝撃を与える




586 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:22:13.52 ID:1Wr/Gi5s0
滝壺「うっ・・・」

麦野「滝壺・・・アンタ何やってんの!!」

絹旗「ど、どうしたんですか!?」

麦野「滝壺が私を攻撃してきて・・・」

滝壺「そ、そんなことしてないよ・・・?私・・・」

麦野「何・・・」

垣根「麦野、どけ」

麦野「・・・な、なによ」

垣根「・・・」

垣根が翼を広げ、それで麦野の後ろを突く

そこには拳を振りかざしている浜面がいた

麦野「!?」

砂皿「・・・どういうことだ、アイテム」

心理「・・・ねぇ、あなた・・・」

小鳥遊「ははは!!こりゃ愉快だろ、風間も桐山もそう思うだろ!?」

桐山「心理停止・・・!!」

小鳥遊「何を考えてるんだ、お前達は・・・力が強いやつが必ず勝てるなら、政治家は全員軍隊出身だとは思わないか?」

垣根「てめぇ、何かしやがったな」

小鳥遊「そこの女は分かってるみたいだな」

心理「・・・私と同じ系統の能力よ」

麦野「!心理操作系ね・・・!」


587 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:30:14.73 ID:1Wr/Gi5s0
小鳥遊「俺の能力は心理停止・・・相手の思考を完全に停止し、なおかつそこに俺の意識の一部を植え付けることが出来る」

心理「・・・弱点は、さっきの垣根がやったように衝撃を加えられれば意識が戻ってしまうことね」

小鳥遊「意識がない状態と同じだ・・・それよりいいのか?そいつはまだ、お前達を殺そうとしているぞ」

滝壺「!はまづら!!」

麦野「ちっ・・・」

浜面の腕を麦野が掴み、軽く捻りあげる

普通の人間ならばその痛みに耐え切れず、動くことをやめるはずだ

だが浜面はそうはしなかった

むしろ、自らの腕を痛めつけるかのようにおかしな方向へそれを動かす

麦野「!!」

絹旗「麦野、手を放してください!!」

麦野「ちっ・・・」

浜面の手を放し、麦野が彼と距離をとる

ダラン、とぶら下がった腕は少し紫に変色している

小鳥遊「ははは!!意識がない人間が痛みなんかを恐れると思うか!?」

垣根「・・・なるほどな、複数の人間にも同時に使えるようだ」

小鳥遊「一時的で外部からの干渉を受けてしまう能力の代わりに、たくさんの相手に同時に使える・・・」

心理「・・・LEVEL4級の能力者ね」

小鳥遊「さて・・・どうする?俺を殺すか?」


588 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:40:03.15 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「それが出来るなら苦労はしないんだよ」

桐山「・・・気をつけろ、あの人は他人を巻き込むことを躊躇などしない・・・」

風間「・・・小鳥遊さん、俺も参戦しましょうか」

小鳥遊「おう、やってくれるならありがたいな」

風間「さて・・・いきますか」

風間が風撃を麦野に向かって打ち付ける

麦野「てめぇ・・・」

原子崩しを発動するために、麦野が右手を前にかざす

だが彼女と風間の間に、絹旗が割り込んだ

麦野「!!」

絹旗「・・・」

彼女が拳を振り上げる

相手に心理を操作されているなら、普通は能力を発動することは出来ない

だが絹旗の能力は「自動制御」つきなのだ

思考が停止していても、自動的に窒素の壁は発生している

その拳が凶器であることは変わらないのだ

麦野「くそっ!」

絹旗の拳を、無理矢理体を捻って麦野が避ける

だがあまりにも無理な体勢であったため、脚をおかしな方向へ捻ってしまう

589 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:45:24.01 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「絹旗・・・」

砂皿「・・・」

砂皿が拳銃を垣根に向ける

彼も、思考を操られてしまっているのだ

垣根(・・・心理操作系の能力は、生体電気が関わっている・・・)

ちらり、と心理定規を見つめる

彼女は顔をしかめていた

同じ能力系統の持ち主なだけに、この厄介さが分かるのだろう

垣根(俺は未元物質で電気を捻じ曲げられる・・・麦野もそうだ、心理定規だって心理操作系だから同じ系統の能力は通じない・・・)

垣根(だがそれ以外はどうだ・・・?浜面や砂皿はそもそも無能力者だ、絹旗も滝壺も・・・それを防ぐ術を持っていない)

パン、と乾いた音が鳴る

銃弾を翼で弾き飛ばすが、適当な場所に弾くことは許されない

下手をすれば操られている仲間に当たるかもしれないのだ

垣根(・・・めんどうだな)

風間「油断してるんじゃねぇ!!」

後ろからは、風間が風撃を打ち出してくる


590 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 17:53:17.56 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「黙ってろクズが」

翼を振るい、風間の体を吹き飛ばそうとする

だがその間に、浜面が割り込む

麦野「!!浜面・・・」

垣根「めんどくせぇな」

浜面ごと、風間を吹き飛ばす

風間「ぐあぁぁぁっ!!」

麦野「!!垣根!!!」

垣根「何を勘違いしてやがる、こいつらは意識がないんだ」

麦野「だから・・・」

垣根「だったらただの障害物だ、俺には関係ない」

麦野「ふざけんな!」

麦野が垣根に近づく

だが、彼らの間には砂皿が割り込む

麦野「!!」

麦野の能力は、照準を定めることが難しい

そのため、砂皿のような狙撃手相手には向かない

狙撃手の攻撃は、単純なものだ

それでいて威力が高い

麦野(くそ!!)

痛む足を無理矢理動かし、麦野が地面に倒れる

その上を銃弾が通過する

麦野「めんどくさい・・・」

垣根「・・・麦野、どうする」


591 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 18:06:57.73 ID:1Wr/Gi5s0
麦野「どうすることも出来ないわよ!!アンタの能力で・・・」

垣根「・・・そうだな、それが一番なんだが・・・」

垣根が顔をしかめる

生体電気を操るには、もちろん電気を操ることが必要である

そのため、垣根が「電子をあり得ない法則で動かす」未元物質を作ればこの能力は防げるはずなのだ

だがその未元物質を作る前に、小鳥遊が何かを仕掛けるかもしれない

意識の一部を植え付けられるのならば、自らの喉を切らせることもできるのだ

垣根(・・・下手に手は出せないんだよ)

麦野「なんなんだよ!心理定規、策は!?」

心理「ないわよ・・・心がないなら、私は手出しできない」

垣根「・・・麦野、俺達の不利になっちまってる」

麦野「分かってるわよ!!」


垣根に吹き飛ばされたはずの浜面が、麦野に向かって突っ込んでくる

麦野「ちっ・・・」

風間「くっそ・・・仲間共々吹き飛ばすとか狂ってやがる・・・」

風間も、浜面の後方から風撃を麦野に向けて放つ


592 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 18:24:03.25 ID:1Wr/Gi5s0
麦野「がはっ!」

垣根「・・・」

小鳥遊「どうした?あまりの状況に対応できないか」

垣根「そうでもねぇさ・・・こりゃ中々面白い」

小鳥遊「なに?」

垣根「・・・そうだな、意識がなくなった人間はたしかに傷つくことを恐れない」

翼を広げ、垣根が浜面へと近づく

麦野「か、垣根・・・」

垣根「だがな」

翼を振るい、浜面の垣根は吹き飛ばす

柱に当たった浜面は、そのまま力なく地面に伏せる

垣根「傷つかないわけではない・・・こうやって衝撃を与えれば再び意識は失う、柱にぶつければ骨も軋む」

麦野「垣根!!」

垣根「・・・そら見ろ」

飛び掛ってくる絹旗も、翼の一振りで遠くへと放り飛ばす

絹旗の窒素装甲さえも、垣根の能力の前では無に等しかった

小鳥遊「ほぉ・・・操られた仲間は敵でしかない、と」


593 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 18:40:54.13 ID:1Wr/Gi5s0
垣根「そうじゃねぇよ、そもそも俺達は仲間じゃねぇ・・・」

砂皿「・・・」

垣根「ここではただの同胞だ、性別も地位も過去も日常も・・・何もかも関係ない、ただの同胞だ」

後ろから拳銃を突きつけた砂皿を、地面へと叩きつける

麦野「お前・・・!」

垣根「・・・麦野、ここは戦場だ・・・背中を安易に預ければ、同胞にさえも裏切られる」

麦野「だからって・・・!!」

垣根「なら操られたあいつらに気を遣って殺されるか?馬鹿馬鹿しいな」

翼を広げた垣根が、小鳥遊を睨みつける

小鳥遊「・・・何のつもりだ?」

垣根「能力を使ってるヤツをぶっ潰せばあいつらだって元通りだ、ハッピーなんだよ」

小鳥遊「・・・なら、やれるものならやってみろ」

広場の中心にあるベンチに座り、小鳥遊がニヤニヤと笑う

彼が見ているのは、下の階の広場だ

そこには、彼の部下のうち二人の能力者が走ってきていた

小鳥遊(・・・仙道と霧野か・・・スタンは来ていないようだが)

垣根「何よそ見してんだよ」

小鳥遊「さて・・・そろそろこの話も幕を降ろさなければならないのでな」

時計をもう一度見てから、小鳥遊が笑う


小鳥遊「最初で最後の全面戦争だ、派手にやろうぜ先輩方」


594 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 19:39:42.61 ID:1Wr/Gi5s0

土御門「・・・結標、一方通行、番外個体・・・そのチップの情報を読み取っててくれるか」

結標「あら、あなたはどうするの?」

土御門「・・・俺はもう少しこの校内を探索する」

一方「・・・てめェ、一抜ける気じゃねェだろォな」

土御門「出来るならそうしたいさ」

呆れたように土御門が笑う

本当なら、彼は今頃この校舎の中で授業を受けているはずなのだ

土御門「・・・出来るなら、すぐさまあそこに戻りたいんだ」

校舎の一部屋を見つめる

そこでは、今頃青髪や吹寄達が授業に耳を傾けているのだろう

下らない話をして先生を怒らせ、窓の外のテニスをしている女子達を見て、授業時間を過ごすのだ

土御門(・・・こんなに近くに、普通の日常があるのにな)

番外「・・・じゃ、ミサカ達は一旦移動しようか」

結標「あら、この学校のパソコンでいいわよ」

一方「あァ?ンなのでいいのかよ」



595 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 19:56:28.20 ID:1Wr/Gi5s0
結標「データを消すにはちょうどいい能力者がいるじゃない」

一方「・・・」

番外「オッケー、ミサカが協力してあげる」

一方「・・・見張りは俺、か」

結標「データのハッキングも出来るかしら?」

番外「パソコンさえあればね」

土御門「中身が見れたらすぐに来てくれ・・・この付近を捜索しておく」

一方「・・・あァ」

土御門を残し、三人が身を隠しながらパソコン室へと向かう

授業に遅れてきた生徒はこうやってコッソリ教室に入るのだろうな、と一方通行はガラにもないことを考えてしまった


結標「あら、誰もいないみたいね」

番外「ひゃっほー、なんか不良生徒になったみたいだぜ」

一方「ンな冗談はいいンだよ・・・さっさとチップの中身を見てみろ」

結標「ま、恐らくは自分達のアジトの場所なんかを記してるんでしょうね」

一方「当たり前だろ・・・表の組織が裏にやってくればいいンだからな、それが手っ取り早い」

番外「パソコンつけるよ」


596 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 20:00:43.69 ID:1Wr/Gi5s0
結標「・・・それにしても、ずいぶん手の込んだ相手ね」

一方「・・・こォいうところだけは周到に用意してンのな」

番外「そりゃそうだ、一番の目的は表の破壊なんでしょ?だったら大勢を裏に巻き込みたくて・・・っと、ついたついた」

明るいディスプレイが、少しだけ眩しく感じる

部屋の明かりを灯すわけにはいかないため、少し教室は暗かった

こんなところで学園都市の治安に関係するデータを覗き見るのも、気が引けてしまう

一方(・・・時間がねェンだ、仕方ない)

結標「・・・よかった、チップの接続コードもあるわね」

一方「はン・・・最近の学校はすげェな」

番外「・・・接続した、今起動してるみたい」

よく分からない文字が通り過ぎ、パスワードを入れる画面になった

番外「・・・パスワード・・・?」

一方「・・・おかしいな」


597 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 20:34:34.50 ID:1Wr/Gi5s0
番外「・・・簡単に発見してほしいはずなのに、わざわざパスワード?」

結標「・・・もしかして、短時間で見られたくはないのかもしれないわね」

一方「なンでだ・・・?これの爆破時刻はいつだか知らないが、その後すぐにたどり着かれたいンじゃねェのか」

結標「・・・ちょっと事情が変わったわね」

番外「急いで見てみようか」

番外個体がそのパスワードを簡単に解除する

正当な方法ではなく、無理矢理解除したのだ

結標「電撃使いは便利ね・・・」

一方「こォいうときはな」

番外「・・・簡単なコードだね、パスワードさえ解ければあとは簡単に内容が・・・」

そこまで言って、番外個体の表情が固まる

一方「どォした」

番外「・・・これ、見て」

一方「あァ?」


598 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 20:53:06.47 ID:1Wr/Gi5s0
番外個体が指差すのは、ディスプレイに並んだ文章の一文だけ

そこには、「午後の6時に、学び舎の園を中心にした爆破事件を起こす」と書いてあった

番外「・・・どういうこと?」

一方「待て・・・土御門がチェックをしていた場所に学び舎の園は入ってねェ」

結標「・・・だからこそ遅れて爆破させるのよ」

一方「遅れてだと?」

結標「えぇ・・・きっとこの爆弾はここに書いてるように、午後の3時に爆破するつもりだったのよ」

文章の中の文字を結標が差す

たしかに、学校を同時に狙ったテロは3時きっかりに行うと書かれていた

結標「・・・調査が進み、このチップが見つかるまでに1時間、そしてさっきのパスワードを解読するのに1時間・・・」

一方「・・・そして、学び舎の園の爆弾を探しきるまでに・・・」

番外「待って、学び舎の園を中心に・・・だよ?」

一方「・・・おい、敵の入手していた爆発物のリストを渡せ」

結標「・・・どうするの?」

一方「貸せ」


599 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 21:01:42.08 ID:1Wr/Gi5s0
一方通行がリストに目を通す

一方(・・・大型の爆弾は考えるな・・・そンなもン、到着してすぐに見つかり、解体される・・・)

一方(だとしたら、どこにでも隠せる、そして何よりも威力の高いものが・・・)

リストの中には様々な爆弾も載っている

そのほとんどは、あまり威力の高くないものだった

一方(・・・!)

一方通行が一つの爆弾の名前を見て、目を見開く

一方「・・・C4だ」

結標「C4・・・?正直、そんなもので学園都市を揺るがすのは・・・」

一方「数は・・・500」

結標「500ですって!?」

番外「・・・500個あったらどれくらいの被害が出ると思う?」

一方「ダイナマイト並の威力だ・・・くそ、あいつらは学園都市ごと吹き飛ばすつもりか・・・」

普段冷静な彼の声が、今は信じられないほど震えている

600 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 21:14:47.75 ID:1Wr/Gi5s0
一方「・・・学び舎の園に人員を配備しなきゃならねェ」

結標「・・・土御門に知らせましょう・・・」

番外「ふん、学校だけを爆破なんて・・・中々生ぬるいと思ってたけどこりゃ大変だ」

一方「・・・学び社の園の近くには大きな研究施設もある、統括理事会は真っ青だろうな」

番外「それはそれで面白いから見てみたいけど」

結標「あら、だったらこのまま見過ごしてみる?」

一方「・・・冗談はやめとけ」

一方通行が時計を見つめる

現在は午後の10時

これから捜索すれば、全ての爆弾を処理できるだろうか

一方(・・・めンどくせェ・・・)

結標「あら、見てちょうだい・・・丁寧にも、どこに何個の爆弾を配備するかは書かれているわ」

一方「・・・なンでそれを・・・!警備員がそこに向かう頃にちょうど爆破するつもりだったか!」

番外「・・・たしかに予定は6時だけど、警備員が早くついたら爆破すればいいだけだもんね」

結標「・・・でも、それなら私達が到着しても爆破されない?」

一方「・・・いい方法がある」


601 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 21:16:22.49 ID:1Wr/Gi5s0
番外「いい方法?」

一方「その見張りのヤツを先に潰せばいい・・・何人も見張りにつけてるわけはねェ、どォせ一箇所に一人か二人だろ」

番外「・・・そうだね」

ディスプレイに表示された地図は全部で3枚

学び舎の園に400以上の爆弾を、あとはバラバラに、小分けに置かれている

結標「・・・あら、文章の最後に・・・」

一方「・・・親愛なる小鳥遊へ・・・だと?」

番外「・・・もしかして、これってその小鳥遊ってヤツに宛ててるんじゃ?」

一方「・・・たしか、敵の頭領の名前だったな」

結標「でもどうしてこんなチップに?」

一方「警備員がこのチップの情報を公開するかもしれないだろ、そうすればテレビはこのニュースで持ちきりだ」

番外「その小鳥遊って名前を手がかりにすれば、警備員はより暗部に堕ちやすくなる・・・」

結標「違うわよ、だったらここに地図を載せる必要は無いわ・・・だってそうでしょ?せいぜい学び舎の園を中心にした爆破事件を起こす、でいいんじゃないの?」

一方「・・・たしかにな、わざわざ地図まで丁寧に・・・早く見つけられても問題はねェが、決してそれが得になるわけじゃない」

番外「もしかしてさ、その小鳥遊ってこの爆破事件を知らないんじゃない?」


602 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 21:17:39.77 ID:1Wr/Gi5s0
結標「何言ってるのよ、敵が言ってたでしょ、あれは・・・」

一方「いや・・・それは案外いい線いってるのかもな」

結標「どういうこと?」

一方「話は後だ、土御門の所に行く・・・痕跡は消しとけ」

番外「了解」

パソコンの中にある、事件と関係するデータを全て消去する

復元も行えないように、ダミーを上書きしてから番外個体が電源を切る

番外「完了、もう大丈夫だよ」

結標「・・・歩きながら話してもらっていいかしら」

一方「手短にな」

一方通行が部屋のドアを開ける

最後の出陣になるのだろうか

一方「さて・・・垣根達には悪いが、いいところを持ってくのは俺達だな」

結標「あら、それは嬉しいわね」

番外「・・・じゃ、行こうか」

一方「・・・あァ・・・楽しみだぜ、こりゃ・・・」


一方「最後にどンな結末を迎えるか・・・楽しみだ」



603 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/10(木) 21:19:58.13 ID:1Wr/Gi5s0
今日はここまで

爆弾とか詳しくないからわかんない

筋肉動画は最強の腹筋、「アーマッド・ハイダー」

バルクは上位と比べると若干劣るものの、そのプロポーションの良さは評判がよかった選手です

なんといっても、形、厚み共に完璧なこの腹筋

いやぁ、本当にバランスがいい

http://www.youtube.com/watch?v=uEfiPBoR2iQ

ではおやすみなさい
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/10(木) 21:21:23.42 ID:SGmwjOYAO
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:51:17.29 ID:iqoOTmVYo
乙なんだよ!
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 12:09:17.36 ID:SQ3jgLMIO
乙乙
これは乙乙じゃなくてZZなんだから云々
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/11(金) 12:46:04.48 ID:XNqV3KEAO
お前に足りないものはぁぁぁぁ!!
それは!!
情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!!
そして何よりもォォォォォ!!!
速さが足りない!!
608 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:38:50.82 ID:RVBhst950



垣根「・・・あぁ?」

垣根が鬱陶しそうに振り返った

小鳥遊と睨み合った状態がどれ程続いただろうか

下の階から、他の敵がやって来たのだ

決して応援と呼べるような状態ではない

だが、垣根を前にして怯える様子はなかった

仙道「・・・ちっ、あのゴーグルのヤツはいなかったか」

霧野「あら、あのハチマキの男はいないのね・・・」

風間「仙道、霧野!ちょうどよかった!」

麦野「ちっ・・・」

垣根「・・・なんだ?お前ら・・・」

仙道「ようやくここに来たって訳か・・・垣根帝督」

垣根「呼び捨てにすんな、格下がよ」

仙道「・・・格下、か」

仙道が辺りに転がっている人間を見つめる

それは全て、垣根の味方であるはずの人間だ

意識を失っているように見える


609 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:39:20.10 ID:RVBhst950
垣根「・・・なんだよ」

仙道「小鳥遊さん・・・アンタ、能力を使ったのか」

小鳥遊「当たり前だろ?さすがに正面からぶつかったら勝てるわけがない」

霧野「・・・でも三人残ってるじゃない」

小鳥遊「仕方ないさ、効かない相手もいるんだ」

風間「大丈夫だって、一人は手負いだぜ?」

心理「あら・・・ナメないでもらえる?」

霧野「ふん、アンタは後でいいわよ・・・とりあえずそっちの超能力者から片付けるから」

霧野が麦野に近づいていく

麦野は浜面や滝壺の攻撃を受けてしまっている

そのため、若干ではあるがダメージが残っているのだ

麦野「・・・やる気かしら?」

霧野「ふん・・・アンタの能力、威力は強くても照準を定めるまでに時間が掛かるでしょ!」

霧野がチェーンソーを取り出す

麦野「!」


610 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:39:47.65 ID:RVBhst950
霧野「ここで砕けなさい!」

不気味な音を立て、チェーンソーが床を削っていく

下から麦野の顔を狙い、チェーンソーが上がってくる

麦野「ちっ・・・なんて乱暴なヤツ!」

原子崩しを放ち、麦野がチェーンソーを破壊しようとする

だが霧野はそれを横に飛んでかわす

床に穴が空いただけで、二人の戦況に変化はない

霧野「・・・やっぱり威力だけは一級品ね」

麦野「うるさいわよ、女版のジェイソンが」

霧野「ジェイソンなんて言わないでよ、美学がないわ」

チェーンソーを鳴らしながら、霧野が笑う

霧野「あのハチマキの男は・・・私に、表に戻れるはずだと言っていた」

麦野「なに?」

霧野「でもね、やっぱり私の生活には誰かを殺すことが不可欠なんだわ」

チェーンソーを麦野に投げつけ、霧野が走り出す


611 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:40:21.64 ID:RVBhst950
麦野(二段攻撃!)

チェーンソーは、身を捻ってかわす

霧野の拳は、自分の拳を打ち付けて受け止める

そうするはずだった

だが、グシャリというイヤな音を立てて麦野の拳は砕けた

麦野「がぁぁっ!」

霧野「あら、私の能力を見破ってなかったのね」

心理「麦野さん!その女は肉体強化系よ!」

麦野「早く言ってちょうだいよ・・・」

紫色に変色した拳を見つめながら、麦野が悪態をつく

右手はもはや使い物にならない

下手にそこから原子崩しを撃とうものなら、拳が反動でさらに削れるだろう

麦野「・・・アンタを倒しても敵は・・・」

仙道「・・・霧野、助太刀するぞ」

霧野「あらいいの?垣根帝督がこっちを見てるけど」

垣根「冗談だろ?悪いけど俺は麦野が交代を頼むまでは動かないぜ」


612 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:40:52.12 ID:RVBhst950
風間「てめぇ!俺達はまるで関係なしか!」

小鳥遊「いいじゃねぇか、ならゆっくり戦いでも見物しようぜ」

タバコを吸いながら、小鳥遊が時計を見つめる

午後の11時を回った

小鳥遊「・・・この決着は1時間で着くか着かないか・・・風間、どっちに賭ける」

風間「はん、そんなに掛からないですよ」


麦野「・・・そっちの男はどんな能力者なのかしら」

仙道「教えると思うか?」

麦野「ムカつくわね・・・」

原子崩しを仙道に向けて放つ

原子に掛かる重力など、操作しても意味がない

そもそもその光線を目で捉えることなど不可能に近い

仙道「!」

自分に掛かる重力を操作し、仙道が空中に移動する

麦野「!何を・・・」

霧野「よそ見しすぎなんじゃない!?」


613 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:41:20.51 ID:RVBhst950
麦野「あっ・・・」

麦野の脇腹に、霧野のチェーンソーが掠る

いつの間に拾い上げたのだろうか

彼女の筋力によって振り回されたチェーンソーは、下手な兵器よりも恐ろしい

麦野「ちっ・・・掠っただけでもかなり痛いじゃない!」

左手を構え、麦野が呟く

だが霧野は笑っている

原子崩しなど恐れていないかのように

麦野「さっさとくたばりな!」

霧野「甘いわよ・・・あなた」

麦野の拳から原子崩しが放たれるほんの一瞬前

霧野の蹴りが、彼女の腹に入った

麦野「ぐっ・・・」

霧野「ほらほら!どうしたの!?」

前に屈んだ麦野の顔に、今度は膝が入る

口の中を切ったのだろうか、途端に鉄の味が広がる


614 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:41:51.46 ID:RVBhst950
麦野「ちくしょ・・・」

仙道「動くな」

後ろにのけ反った麦野の体が、まるで磁石に吸い寄せられたかのように地面に張り付く

麦野「!重力操作か!」

仙道「さて、これでアンタは追い詰められたことになるな」

霧野「そしてすぐに死ぬわ」

チェーンソーの回転する刃が、麦野を目掛けて振り下ろされる

麦野「ナメんじゃ・・・ないわよ!」

原子崩しを足場に放ち、霧野の体勢を崩させる

霧野「ちっ・・・危ないわね!」

チェーンソーが全く関係ない方向を切り刻む

タイルが削れ、火花が散る

その火花が麦野の傷口に当たる

麦野「痛っ・・・」

仙道「霧野、さっさと片付けろよ」

霧野「分かってるわよ!」


615 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:42:21.08 ID:RVBhst950
霧野がチェーンソーを出鱈目に振り回す

タイルや壁、柱の瓦礫が麦野の上に舞い上がる

麦野「こんなもの・・・」

仙道「そのままの速度なら、ただの瓦礫だ」

麦野「!」

咄嗟に麦野が原子崩しを放つ

だが、それをくぐり抜けた瓦礫が麦野の脛を貫いた

麦野「ぐっ・・・あぁぁぁ!」

霧野「あらあら、もっと綺麗に鳴きなさいよ」

仙道「ふん・・・原子崩しは射程も拾いのがやっかいだな、ただの直線攻撃ならほとんどの瓦礫は消えなかったのに」

霧野「あら、おかげでもう少しこの女で遊べるじゃない」

麦野「ふざけな・・・!」

麦野の足は、瓦礫によって地面に縫い付けられている

瓦礫と言ってもただの石ころではない

巨大な釘のようなものだ

それを抜かないことには身動きが取れない


616 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:42:55.31 ID:RVBhst950
麦野「この・・・」

足に刺さった釘を握る

少し釘を抜くだけで、激痛が脛に走る

麦野「っ!」

霧野「可哀相・・・なんなら私が足ごと切ってあげましょうか?」

麦野「うるさいわよ!」

苛立ち混じりに放った原子崩しは間一髪で避けられる

霧野「そんなにバカバカ撃たないでよ・・・一撃でも喰らえば死んじゃうわよ」

仙道「そうだぜ、その能力は人を殺さない程度に、って加減が効かないんだろ」

麦野「ぐ・・・」

釘を抜き去り、麦野が立ち上がろうとする

しかしダラダラと血が流れているそれは、いくら力を入れても地面に立とうとはしない

真っ暗に見える穴の向こうには床のタイルが見えている

骨を貫き、肉を断ち切り、血管を破いた釘は非常に直径が太かった

このままでは失血死の可能性さえある

麦野「動け・・・!」


617 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:43:27.28 ID:RVBhst950
頭がいくらそう命じても、足は動いてくれない

神経は繋がっているようなので、痛みだけは明確に伝わってくる

麦野「くそ!」

仙道「ふん・・・超能力者だからと油断したな」

霧野「全く、情けないわね」

心理「麦野さん!」

垣根「・・・やめろ、心理定規」

心理「でも!」

垣根「・・・麦野をここで助けても、あいつはプライドを傷つけられたことになる」

心理「命が一番じゃない・・・!」

垣根「あいつが助けを求めてくるのを待て、あいつが誰かを・・・俺達を頼るのを」

心理「・・・」

垣根「あいつは一人じゃない、そう教えてやる」

仙道「ははは!一人じゃないだと!?くだらない、人間は常に孤独な生き物だ!」

垣根「うるせぇな、ゴチャゴチャと」

仙道「貴様みたいに馴れ合っている人間が何を言う!」


618 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:44:09.82 ID:RVBhst950
垣根「馴れ合ってるねぇ・・・くだらないこと言って俺を怒らせるな」

仙道「・・・仲間なんていうただの群れを作るお前達には分からないさ」

垣根「はいはい、クールぶっちゃって」

霧野「仙道の言う通りよ、人間は孤独なの・・・誰かの温もりを求めても、凍ってしまった心は溶けてしまうだけ」

仙道「温もりなんて身を焦がすだけだ」

垣根「言い訳してんじゃねぇよ、他人を背負うことも出来ない臆病者が」

仙道「・・・背負うだと?」

垣根「仲間ってのはどっちかがどっちかを助けるだけじゃない、互いが互いを助け合うんだよ」

霧野「ふん、吐き気がするような綺麗事ね」

垣根「自分を背負わせ、自分が背負う・・・そんな強い覚悟が出来る人間にしか、仲間なんて出来ない」

仙道「・・・甘ったれたことを言うな」

垣根「甘い?他人と関わらず、傷つくことから逃げてるお前達が甘いんだよ」

風間「耳を貸すなよ二人とも!垣根帝督、俺達は真理を知っただけだ!世の中に仲間なんていないんだ!」

垣根「真理?クソッタレな神様が決めた真理だな、だったら俺には関係ない」

麦野「・・・垣根」

垣根「俺の真理は俺が持ってる・・・そうだな、神様のレールに交差するようなレールさ」


619 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:44:57.78 ID:RVBhst950
霧野「カッコつけて何様?」

垣根「・・・仲間がいない、友情なんてない、それはもしかしたら世の中の常識かもしれねぇがな」


垣根「俺にそんな常識は通用しない・・・そして」

垣根が麦野に近づく

見下ろすようにしているが、その瞳はとても優しかった

垣根「麦野、てめぇは神様なんていうクソッタレな野郎に躍らされるだけの存在か?」

麦野「まさか・・・私だって、仲間の存在を信じてる」

仙道「!お前達・・・!」

麦野「垣根、背負ってもらっていいかしら」

垣根「お前は胸がでかいからな・・・しっかり押し付けろよ、それくらいの役得が必要だ」

麦野「頼むわ、垣根」

垣根「了解」

垣根が翼を広げる

純白のそれは、やがて形容出来ない色へと変貌を遂げる

仙道「ちっ・・・霧野、やれるか」

霧野「余裕余裕!」

チェーンソーを振り回す霧野に目もくれず、垣根が麦野に肩を貸す


620 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:45:37.54 ID:RVBhst950
垣根「たくよ・・・また一人怪我人が出ちまった」

麦野「悪かったわね」

垣根「ほれ、心理定規の隣で休んで・・・」

霧野「無視してるんじゃないわよ!」

ビュン、という音がしてチェーンソーと翼がぶつかる

だが、砕けたのはチェーンソーだけだった

霧野「!」

垣根「・・・雑魚が、そんなもんで俺の未元物質に傷をつけられると思ったか」

霧野「ふ、ふざけないで!」

体を回転させ、霧野が垣根の頭目掛けて蹴りを放つ

それを翼で弾き返し、垣根が麦野を柱に寄り添わせる

垣根「・・・そこで見とけ、これが未元物質だ」

麦野「垣根帝督でしょ?」

垣根「・・・そうだな」

一歩踏み出し、垣根が霧野を睨みつける

垣根「お前の名前は」

霧野「・・・霧野よ」


621 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:46:09.45 ID:RVBhst950
垣根「霧野か、オーケー・・・弔辞くらいは読んでやる」

霧野「!」

言葉が終わってすぐ

霧野の目の前に垣根が現れた

霧野「空間転移・・・!?」

垣根「違うな、てめぇの目に見えない速度で動いただけなんだよ」

霧野「この・・・」

霧野が拳を振るう

垣根の翼とぶつかった拳は、おかしな音を立てた

見ると、中指と薬指の付け根から何か白い物が飛び出ている

それが外れた骨なのだと気づいたときには、次の攻撃が霧野を襲っていた

下から突き上げられた翼が、霧野の顎に当たる

アッパーカットと同じだ、脳が揺さぶられて霧野が地面に倒れ込む

霧野「う・・・」

垣根「さて・・・たしかこれくらいの釘だったか」

霧野「!」


622 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:46:38.05 ID:RVBhst950
その言葉にギョッとして、霧野が体を動かそうともがく

朦朧とした意識を必死に覚醒させる

その体が動くまで実に7秒近く掛かった

見ると、垣根は手に釘を握っている

霧野「ひっ・・・!」

垣根「こいつが脛に刺されば・・・」

仙道「霧野、伏せろ!」

仙道が自らの体を弾丸にする

体に掛かる重力を最大にし、垣根の元へ突っ込む

それを垣根が翼で打ち返す

まるでバドミントンのような光景だが、それの勝敗を決めるのはポイントではない

命があるか無いか、それだけだ

仙道「う・・・なんなんだその翼は・・・!」

垣根「さーて・・・磔の時間だな」

釘を霧野の脛に宛がい、垣根がニヤリと笑う


623 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:47:38.03 ID:RVBhst950
霧野「や、やめて!」

垣根「自分の時だけは懇願するのか」

霧野「嫌!やめて!」

足をジタバタとさせるが、それは垣根にとって鬱陶しい抵抗でしかなかった

垣根「騒ぐな」

右手で足を地面に押さえ付ける

霧野「あ・・・」

涙が頬を伝う

全く状況は違うが、ギロチンでの処刑を待つ人間はこんな気持ちなのだろう

目の前に迫る恐怖を、ただ待つことしか出来ない

相手が縄を放つタイミングで、自分の首は撥ねる

霧野「嫌!やめて!お願い!」

狂ったように霧野が叫ぶ

霧野「やめて!やめてやめてやめてやめて!」

垣根「・・・ちっ」

ガン、と垣根が霧野の顔を殴りつける

霧野「あ・・・」


624 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:48:03.44 ID:RVBhst950
垣根「黙れよクソガキ、傷つけることしかしらない化け物が」

霧野「痛い・・・」

ブルブルと震えながら、霧野が泣き出す

垣根「クソガキ、よく聞け・・・さっき麦野はそこまで無様に命乞いなんかしなかった、なぜだか分かるか」

霧野「やめて・・・」

垣根「殺される覚悟があったからだ、命乞いをして醜く生き残るのは美徳じゃねぇ」

もう一度、垣根が霧野の顔を殴る

バキリ、と鼻から音がする

真っ赤な血が鼻から口へと流れる

垣根「あぁ?死ぬ覚悟が無い人間が生きる覚悟を持てるか?」

霧野「お願い・・・やめて・・・」

垣根「・・・てめぇみたいな人間が一番ムカつくんだよ」

垣根がゆっくりと立ち上がる

釘を放り捨て、仙道を睨みつける

垣根「こいつ、なんかこういうことにトラウマでもあったのか」


625 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:48:31.79 ID:RVBhst950
仙道「・・・ガキの頃に虐待を受けていたみたいだ、詳しくは知らない」

垣根「そりゃ哀れだな」

心の篭っていない台詞を吐きながら、垣根が仙道に寄っていく

垣根の攻撃によって吹き飛ばされた仙道は、近くの壁に叩きつけられていた

仙道「ちっ・・・霧野は錯乱しやがった・・・」

垣根「・・・てめぇはどうだ?まさか命乞いをするような人間じゃねぇだろうな」

仙道「・・・桐山と同じだ」

垣根「あぁ?」

垣根が桐山を見つめる

戦闘の余波を受けたのか、浜面達の近くに倒れ込んでいる

仙道「もはや死んだも同じ人生でな・・・あまり生には執着がないんだ」

垣根「そりゃ楽でいいな」

翼を振り上げ、垣根が笑う

垣根「そういう相手は嫌いじゃないぜ」

仙道「ははは・・・だが、俺はやっぱりもう少し生きていたいな」

垣根「あ?」


626 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:49:03.25 ID:RVBhst950
フワリ、と垣根の体が浮かぶ

仙道の能力によって、彼の体に掛かる重力が減らされたのだ

仙道「こんな楽しい戦いは・・・やはり少しでも長く楽しみたいからな!」

仙道も、自身に掛かる重力を減らす

そうすることによって彼は空中へと浮かび上がる

垣根「・・・いいじゃねぇか、やっと歯ごたえのあるヤツとやれるわけだ」

仙道「なに・・・地下街では邪魔が入って俺の能力の全ては見せられなかったが」

ポケットから何かを取り出した仙道が笑う

垣根「!」

仙道「・・・知ってるか?学園都市の中には、稀に暴走状態のほうが力を出しきれる能力者もいるんだ」

垣根「体晶・・・てめぇ!」

仙道「アイテムの滝壺理后もそうだったかな・・・だから知っているだろ!?」

白い粉末を、仙道がペロリと舐める

その瞬間、周りの大気がビリビリと震え始めた

仙道「・・・原石の末路も、五月計画やプロデュースの被験者の今も・・・そしてこの体昌の作られた方法も俺は知っている」


627 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:49:32.31 ID:RVBhst950
人差し指を仙道が垣根に向ける

その先に、何かが生み出される

垣根「・・・重力子!」

仙道「・・・すごいだろ?」

垣根「馬鹿言うな・・・アルミを基点にしないで重力子を生み出し、それを自在に操れるならてめぇは今頃超能力者だ!」

仙道「言っただろ、暴走状態じゃなきゃ力を出し切れない・・・」

笑う仙道の目は、どこか少し色を失っている

垣根「まさか・・・!」

仙道「・・・体晶を使いすぎればどうなるか、知ってるだろ」


麦野「・・・あいつ、もう体が限界なんじゃ・・・!」

心理「・・・体晶が体に与える影響は恐ろしいはずよ・・・」

麦野「命を捨てて垣根と戦うつもりか・・・馬鹿だ・・・」

心理「あらそう?退路を断った人間は強いものよ」



628 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:49:58.95 ID:RVBhst950
垣根「・・・てめぇ、今まで何回それを使った」

仙道「今日で三回目だ・・・全く、三回目でもう頭がぼーっとしやがる」

重力子が急激に大きさや速度を増す

垣根「!」

仙道「滝壺理后はかなり恵まれてるんだぜ、そもそも体晶なんて普通は二回も使えば死ぬもんだ」

大きな爆発が空中で起こる

周りの壁を破壊し、仙道が笑う

仙道「・・・俺だって割ともってるほうなんだ」

垣根「ちっ・・・思ったより厄介だな」

翼で体を覆った垣根が仙道を睨みつける

無傷

今の爆発の衝撃など、彼の翼で防ぎきれるのだ

仙道「・・・そうだ、その力だ・・・」

仙道が足に力を入れる

そこは空中なのだ、その行為に意味はないはずだった

だがなぜか、彼の体は垣根に向かって突っ込んでいく


629 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:50:24.40 ID:RVBhst950
垣根「!重力操作は縦方向だけじゃ・・・」

仙道「・・・重力加速度」

垣根「!?」

仙道「そいつも暴走状態なら操れる・・・そもそも、暴走状態だと重力の向きも操れるんだぜ」

仙道の拳が垣根の翼とぶつかる

霧野の拳は、それで砕け散った

だが仙道は違う

操作出来る限り最高の重力を掛けた拳だったのだ

垣根の翼が少しだけ舞い散る

キラキラとしたそれに跳ね返った光がレーザーのように仙道を狙う

仙道は地面に落ちている瓦礫を巻き上げ、それを防いだ

垣根「はん・・・視界に入ってなくても操作出来るのか」

仙道「何、範囲はちょっと広がるだけだから安心しな」

バキン、と音がして垣根の真上にあった天井が崩れる

そこから覗いた空は、真っ青だった

630 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:50:53.27 ID:RVBhst950

垣根「いつの間にか昼になってたか・・・」

天井の瓦礫を翼で砕く

下にいる心理定規達に当たらないように、粉々に砕くのだ

垣根(はっ・・・誰かを守りながら戦うなんて一方通行みたいでムカつくな)

仙道「何をしている、まずは自分に気を遣え」

垣根「!」

翼を広げたことで、体の前に僅かな隙が出来る

仙道はそれを見逃さなかった

素早く移動し、垣根の腹に拳を叩きつける

仙道「ん・・・?」

手応えはなかった

意図的に衝撃を吸収されたのだ

仙道「まさか・・・今の短時間で未元物質をばら撒いたのか!」

垣根「俺の状況判断力をナメるな」

今の仙道は垣根の真ん前にいる


631 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:51:33.88 ID:RVBhst950
上から振り下ろされた翼により、仙道が地面に向かって叩かれる

仙道「くっ・・・」

重力を操作し、激突を回避する

上空から、垣根が恐ろしい速度で仙道に向けて降りてくる

もはや落下に近いそれは、辺りの床をまるごと砕いた

心理「垣根!」

麦野「下の階に行ったか!?」

小鳥遊「さて・・・今の間かな」

麦野「!?」


垣根「・・・やるじゃねぇか、御坂よりは楽勝だが・・・麦野と同じくらいだぜ」

仙道「よく言う・・・こんなにも一方的じゃないか」

頭から血を流しながら、仙道が忌ま忌ましそうに吐き捨てる

垣根「麦野も一方的だったんだ、変わらないだろ」

仙道「化け物じみてるな」

垣根「さて・・・ここなら加減はいらないかもな」


632 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:52:07.09 ID:RVBhst950
先程までいた階から、2つしたの階の広場に二人はいた

仙道は傷だらけ、一方の垣根は全くの無傷

垣根「いやぁ、運がいいな・・・傷を負わなくて済んでるなんて」

仙道「・・・運?実力だろ」

重力子を垣根にぶつける仙道

それらは全て、未元物質によって防がれる

垣根「重力を捩曲げることも出来るんだけどな、ちょっと演算が面倒なんだ」

仙道「・・・!?頭の上のそれは・・・」

先程までそこにはなかったもの

まるで天使の輪のようなものが、垣根の頭上に浮かんでいる

垣根「綺麗だろ・・・」

仙道「メルヘンだな・・・てめぇにはお似合いかもしれない」

垣根「自覚はある」

その輪に、仙道は目を奪われる


633 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:52:50.44 ID:RVBhst950
かつて何かの映画で見た天使とそっくりだった

その天使は、罪人に裁きを下すために地上に降りてきたのだ

仙道「ふん・・・俺は罪人ってことか」

垣根「何一人で笑ってやがる」

背中から生やされた翼が、怪しい光を放つ

美しく、不気味で恐ろしい光だ

見ているものの心を狂わせてしまうほどのそれが、仙道の腕を貫いた

仙道「っ!?」

垣根「・・・電子を操ってみたが、こいつは便利だな」

仙道「面倒だな!」

電子を重力によって捩曲げることは可能なのか

可能、という答えも返ってくるだろう

しかしそれは「この世の物理法則」に則った場合の話に過ぎない

いくら重力を操作し、僅かな歪みを作れたとしても、所詮はこの世の法則から抜け出せないのだ

垣根の未元物質に対抗するにはそういった常識をかなぐり捨てなければならない


634 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:53:17.48 ID:RVBhst950
仙道「・・・いや、わざわざそんな回りくどいことはしなくていい」

仙道が宙に浮かび上がり、垣根目掛けて急降下する

先程垣根に弾かれた時とは違う

体晶によって導き出された、彼の全力

あまりの速度に衝撃波が生まれている

音速を遥かに超えたそれは、ミサイルにも近かった

垣根「・・・なるほど、そいつは大層だ・・・体晶使ってる時限定なら超能力者にも匹敵するな」

垣根がまるで見下しているかのように、冷静に分析を始める

慌てる気配は一切ない

この戦いを楽しんでいるのだ

垣根「だが、それは結局超能力者止まりだ」

仙道「!」

突然、仙道の視界から垣根が消えた

地面に激突する寸前に、仙道は急停止した

やはりそこに垣根はいない

目の前からまるでマジックさながら消えたのだ


635 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:53:45.28 ID:RVBhst950
仙道「どこに・・・」

垣根「消えてなんかないんだよ」

仙道「!」

声と同時に、垣根が仙道の右に現れる

垣根「光を全て通せば・・・光をてめぇの目以外に向けて反射すれば・・・お前は俺の姿を見られない」

仙道「きさ・・・」

垣根「物理法則なんて異物が混じればガラリと変わる」

ズバン、と何かを裂く音がした

裂かれたのは仙道の右肩だった

血が噴き出し、堪らず仙道は肩を押さえる

仙道「ぐっ・・・てめぇ!」

垣根「面倒なことだろ?俺が何かを生み出す度にこの世の物理法則は変わる」

仙道「死ね!」

重力子が空中に現れた

それはすぐさま爆発する


636 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:54:12.85 ID:RVBhst950
仙道も巻き添えを喰らってしまい、床を転げ回る

裂かれた肩から血しぶきが溢れる

しかしそんなことはどうでもよかった

垣根帝督が何事もなかったかのように佇んでいることが、彼を驚かせる

垣根「無理なんだよ・・・てめぇは科学の枠から抜け出せていない」

翼が放った色は、赤に見えた

次の瞬間には仙道の左腕に傷が生まれる

垣根「俺は抜け出してしまった・・・そして手に入れた、もはや人間には余るほどの力を」

再び翼が光を放つ

今度は青だ

仙道の体を凄まじい風が打つ

羽ばたいてなどいない

ただ、未元物質を生み出しただけだ

演算を行い、物質を作り出す

それだけの攻撃が、確実に仙道の体力を削っていく


637 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:54:43.13 ID:RVBhst950
垣根「・・・この力は確かに誰かを抱きしめるには強すぎる」

バキバキ、と仙道の右足が音を立てる

そのつま先がおかしな方向に曲がっていく

不思議な光景を、仙道は何も考えずに見つめていた

垣根「だからこそ、傷つけるにはもってこいなんだ」

バキン、と砕けるような音がして、つま先が真横を向く

激痛が体を駆け巡るが、仙道は叫ぶことも出来ない

既に体は限界だった

もしかしたら、体を駆け巡る激痛は体晶のせいなのかもしれない

仙道「ははは・・・ダメだ、お前には敵わない」

垣根「当たり前だ、ただの人間が俺に勝てるわけがない」

翼を広げ、垣根が羽ばたき始める

巻き起こった風の中に、一体どれ程の未元物質が混じっているのだろうか

その空気を吸うことさえ、なぜか命を削るように思われる


638 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:55:29.15 ID:RVBhst950
仙道「・・・そんな力、表で暮らすには余計なだけだろ」

垣根「あぁ、たしかに余計なだけだ」

ニヤリ、と垣根が笑った

それはとても純粋な笑顔だ

決して上品なわけではないが、なぜか仙道には眩しく見えた

仙道(あぁそうだ・・・)

昔、何かの映画で見た天使も素晴らしい笑顔を浮かべていた

行っているのは処刑に近いはずなのに、その笑みは美しかった

仙道「・・・垣根帝督・・・小鳥遊を止めてくれ・・・表の世界は無くなったらいけないんだ」

垣根「てめぇに言われるまでもないんだよ」

仙道「そうか」

仙道が笑う

ポケットから体晶の入っているケースを取り出して


639 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:55:56.21 ID:RVBhst950
垣根「・・・なんの真似だ」

仙道「・・・なぁ、もしもの話を聞いてくれるか」

垣根「なんだよ」

仙道「もしも・・・もしも、俺が暗部の悲劇に触れなかったら・・・」

体晶の入ったケースから、粉末を掌に出す

全て、出しきった

仙道「・・・もしも、俺が体晶なんか意味のない能力者だったら」

それらを悲しそうに見つめ、仙道が笑う

仙道「もしも・・・もしもだ」

粉末を一気に飲む

少し飲んだだけで体に苦痛を伴うはずのそれを

仙道「・・・もしも、もっと早く・・・俺がお前達みたいな人間に出会えていたら・・・俺は今と違う人生を歩んでいたのかな」

垣根「知るかよ、結局てめぇはこの人生を選んだ」

仙道「・・・そうだな、間違いない」

ボロボロになった右手を前に突き出し、仙道が吐き捨てる


640 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:56:22.60 ID:RVBhst950
仙道「それでも、もしも違う人生だったなら・・・俺はそちらを選びたかった」

垣根「・・・残念だったな、てめぇはそうならなかった」

仙道「・・・羨ましいよ、お前が」

垣根「そうか」

仙道「・・・もしも・・・もしも生まれ変われたら」

掌の先に重力子を生み出す

体晶の力によって、彼の能力は限界を超えていた

仙道「・・・お前達みたいな、普通の人生を歩みたい」

たった一度、命を懸けた一撃が垣根を襲う

威力も速さも、それまでと桁違いな一撃

垣根はそれを、冷めた目で見つめていた

垣根「・・・無理さ、生まれ変われたらなんて甘いことを言ってる時点で無理なんだ」

爆風が、垣根を包み込む

だがその中から、垣根の声ははっきりと聞こえた


641 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:56:49.99 ID:RVBhst950
垣根「・・・てめぇの人生は一度しかない、てめぇはそれを自ら捨てた」

捨て身の一撃が、命を懸けた全力が

垣根の翼によって、いとも簡単に掻き消される

翼の一振りだけで爆風も衝撃も、何もかも振り払われる

垣根「残念だ・・・俺はお前みたいなヤツは嫌いじゃない」

仙道「ははは・・・すげぇなこりゃ」

垣根「・・・だから、残念だ」

仙道「・・・もう体晶もない・・・体晶があっても、どうしようもないが」

垣根「・・・仙道だったな」

仙道「なんだ」

垣根「・・・最後に言い残すことは」

垣根が翼を折りたたむ

攻撃する必要はない

体晶の影響により、仙道の余命はほとんどないはずだ

仙道「・・・俺の遺体は・・・出来れば共同墓地に埋めてくれ」


642 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:57:23.00 ID:RVBhst950
垣根「共同墓地?」

仙道「友達がそこに埋まってるんだ・・・もう昔の友達だが」

垣根「分かったよ、死体が残ってたら埋めてやる」

仙道「すまんな」

仙道が力無く笑う

垣根の背中に生えた翼を見つめ、やがて一言だけ呟いた

仙道「そいつがあれば空は飛べるか」

ぽつり、と独り言のように

その問いに答えるように、垣根は翼を広げた

次は、小鳥遊と戦わなければならない

全てを終わらせるために

垣根「・・・空を飛ぶにはもう一つ必要なもんがある」

仙道「それは」

垣根「今からそいつを守りに行くんだ」

翼に力を込め、垣根が上の階へと戻る


643 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:57:54.10 ID:RVBhst950
仙道(はは・・・いいな、あんなふうに飛べたら楽しいだろう)

力の入らない体を地面に預け、仙道が目を閉じる

仙道(全く・・・暗部にいた人間があんなふうに変われるなんてな)

そこには嘲りも、憎しみもなかった

たった一つあるのは、憧れだけだった

仙道(・・・俺は裏のど真ん中で死ぬんだな)

闇が少しずつ、彼の意識を削っていく

目を開けることももはや出来ないはずだ

それでも彼には見えていた

背中から翼を生やした青年が、美しく空を飛ぶ光景が

仙道(・・・あぁ・・・羨ましいな)

仙道(・・・今度は俺も・・・)

ガクリ、と力が抜ける

彼はもう何も考えられない

その物言わぬ屍に一瞥をくれてから、垣根が上の階の床を踏んだ

そして、目にしてしまった


644 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 15:58:34.36 ID:RVBhst950
小鳥遊「遅かったな」

小鳥遊が、心理定規を人質にとっているのを


小鳥遊「・・・」

垣根が仙道と下の階に落ちてすぐ、小鳥遊は動き出した

麦野「!てめぇ何を・・・」

小鳥遊「風間、こいつは邪魔だ」

麦野を顎で示しながら小鳥遊が風間を呼ぶ

風間「了解!」

風を操り、麦野の体を吹き飛ばす

麦野「ぐっ・・・!」

足に傷を負っている麦野は、簡単には抵抗出来ない

痛みの走る頭で演算をしても、下手をすれば心理定規や地面に転がっている浜面達を巻き込むだけだ

小鳥遊「・・・さて、こっちは役に立つ」

心理「あら・・・私に何か用なのかしら」

小鳥遊「お前も心理操作系だな」


645 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 16:00:39.08 ID:RVBhst950
心理「・・・だから?」

小鳥遊「同じ能力系統なんだ、仲良くしようぜ」

心理「悪いけど・・・あなたみたいな男は好みじゃないのよ」

小鳥遊「そうかよ・・・別にそんなことは聞いちゃいねぇ」

心理定規の髪を掴み、乱暴に立ち上がらせる

心理「っ・・・」

小鳥遊「右手と左足に怪我、ねぇ・・・能力一辺倒でそれ以外を磨かなかっただろ」

心理「うるさいわよ・・・」

小鳥遊「心理操作系は人間が相手じゃなきゃ意味がないんだ、だったらそれ以外の敵への対処法も考えておけ」

ガン、と壁に心理定規の頭をぶつける

ヌルリとした生暖かい感触が後頭部に生まれた

心理「う・・・」

小鳥遊「・・・ほら、どうした?能力の効かない相手にはどうしようもないのか」

心理「・・・う、うるさいわよ・・・」

左手で、ゆっくりとレディースの拳銃を握り締める

だが小鳥遊が、その左手に膝蹴りを入れた


646 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 16:07:12.22 ID:RVBhst950
心理「っ・・・」

小鳥遊「動くな、どうせ垣根帝督もそろそろやってくる」

麦野「てめぇ・・・心理定規を放せ・・・」

小鳥遊「うるせぇな」

パンパン、と小鳥遊が麦野の脚に二発、銃弾を撃ち込む

麦野「ぐっ!!」

心理「麦野さん・・・」

小鳥遊「・・・お?音が止んだな・・・」

下の階を小鳥遊が覗き込む

仙道が地面に倒れているのがそこからも見えた

小鳥遊「ははは!!そりゃそうだな、垣根に勝てるわけがねぇ!!」

風間「小鳥遊さん、これからどうすんですか?」

小鳥遊「麦野もこいつも戦力にはならねぇさ」

心理定規のこめかみに拳銃を当てながら、小鳥遊が笑う

小鳥遊「垣根はこいつを人質にしてれば問題ねぇ」

風間「はぁ・・・倒れてるヤツらは?」

小鳥遊「・・・そうだな、起きたところで脅威にはならないさ」


647 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 16:13:34.62 ID:RVBhst950
心理「・・・いいの?垣根がもしもここに来たら・・・あなた殺されるわよ」

小鳥遊「お前を人質に取っているからか?」

心理「それだけじゃないわ・・・麦野さんや他の仲間を傷つけたからよ」

小鳥遊「そりゃ楽しみだ」

拳銃の撃鉄を起こし、小鳥遊が床に開いた穴を見つめる

そこから垣根が飛び出してきた


垣根「!!てめぇ・・・」

小鳥遊「よぉ、人質なんて汚いと笑うかい?」

垣根「放せ、今なら許してやるよ」

小鳥遊「ほぉ・・・許してもらったら特典はつくのか?」

垣根「半殺しで済ませてやる」

小鳥遊「だったら必要ねぇな、てめぇをここで殺せばいいんだ」

垣根「・・・オーケー、てめぇだけは土に埋めてやる」

翼を広げながら、垣根が唇を噛む

小鳥遊「どうした?手が出せないか?」


648 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 16:22:36.94 ID:RVBhst950
垣根「・・・ちっ、俺を止めるにはちょうどいい人質ってことだな」

小鳥遊「・・・そういうことだ」

垣根「・・・クソが」

心理「垣根・・・構わないで」

垣根「無理だね」

心理「・・・」

小鳥遊「自分の大切な人間は見捨てられない、か・・・美談だな」

垣根「美談だと?てめぇがいなきゃ最高の映画になるんだよ」

小鳥遊「・・・つまらないことを言うな、撃鉄はもう起こしてるんだ」

時計をチラリと見つめて、小鳥遊が笑う

垣根「そんなに何かが気になるか」

小鳥遊「なに、表でそろそろ面白い事件が起きるからな」

垣根「あぁ?」

時刻は正午を回ったところだ

麦野「ちっ・・・また爆弾テロでも起こすつもりか・・・」


649 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 16:35:34.46 ID:RVBhst950
小鳥遊「そんな生ぬるいもんじゃないかもな」

垣根「・・・どういうつもりだ」

小鳥遊「さぁな、今更表を気にするなよ」

垣根「・・・ちっ、裏に浸って悦に入ってる馬鹿が」

小鳥遊「表に戻ったつもりの軟弱者が何を言う」

垣根「・・・ムカつく野郎だな」

心理「・・・垣根・・・」

垣根「心理定規、安心しろ・・・俺が助けてやるからよ」

小鳥遊「おいおい、こんなところでラブロマンスはやめてくれよ」

垣根「・・・麦野、てめぇは戦えるか」

麦野「・・・ちょっとキツイわね」

風間「おいおい、人質が・・・」

小鳥遊の後ろで笑っていた風間の体が吹き飛ぶ

風間「いってぇ!!てめ・・・」

垣根「ぎゃあぎゃあ喚くな・・・殺すぞ」

風間「っ・・・!!」


650 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 16:47:21.65 ID:RVBhst950
垣根の瞳が、風間の喉を見つめる

風間には、未元物質というものがどのような原理なのか未だに理解しきれない

しかし、その気になれば離れた位置から風間を殺すことなど簡単に出来るはずだ

垣根「・・・小鳥遊だったか」

小鳥遊「なんだよ」

垣根「・・・心理定規を放せ、そうすれば俺は別にてめぇを殺しはしない」

小鳥遊「うるせぇな・・・放した瞬間にやられる可能性があるんだよ」

垣根「・・・んなことしねぇよ」

小鳥遊「どうだかな、暗部の人間なんて汚いのばっかだ」

タバコを片手で取り出し、小鳥遊がそれを口に咥える

垣根「やめろ、心理定規はタバコの煙が苦手なんだよ」

小鳥遊「知るかよ」

垣根「・・・放せ」

小鳥遊「さっきから同じことばっか言いやがって、そんなに俺をイラつかせたいのか?あぁ?」



651 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 17:19:18.06 ID:RVBhst950

土御門「あぁ、どうだった」

学校の渡り廊下を捜索していた土御門の元に、三人が集まった

一方「最悪なニュースだぜ」

土御門「なに?」

番外「今日の午後6時あたりに、学び舎の園を中心にした爆破事件を起こすんだってさ」

土御門「・・・そうか、そりゃ大層だな」

結標「しかも爆弾はちょうど500個・・・C4みたいよ」

土御門「C4を500!?ヤツら学園都市をまるごと無くすつもりか・・・」

一方「はン、どォせ本人達は地下かどっかに隠れるつもりなンだろ」

番外「壊滅状態になったところを叩けば楽だもんね」

土御門「それで?どこに爆弾があるかは分かるか?」

結標「丁寧に、新暗部のリーダーに宛てた地図があったわ」

土御門「地図?」

一方「この学校を爆破してから見つかるはずだったこのチップには、その爆破の詳細が書いてある」

土御門「学び舎の園を爆破なんて・・・新暗部のリーダーは知ってるんじゃないのか?」


652 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 18:50:57.98 ID:RVBhst950
一方「いや・・・恐らく、爆破事件と暗部の再結成はそれぞれ別の組織がやってン

だ」

土御門「・・・なぜ」

一方「片方が潰れても片方が残っていれば・・・表を破壊することが出来る」

番外「ミサカ達が暗部に堕ちれば、それこそ暗部の戦力は膨れ上がる」

結標「爆破事件が成功するだけでも、最悪はいいのよ」

土御門「なるほど・・・互いに必要以上の情報は伝えていなかったのか」

一方「だからこォやって、隠れて情報をやり取りしてンだろォな・・・」

番外「警備員達にこのチップが見つからなかったら後から回収して中身を見

る・・・」

結標「万が一警備員が見つけても、結局表の人間に暗部をちらつかせることが出

来る」

土御門「全く困ったヤツだな・・・」

土御門が半ば強引に、一方通行の手から地図を奪い去る

3枚それぞれに、爆弾の数が記されている

土御門「大体の配置も決まっているわけか」

一方「・・・俺達はまず、それの見張りをしてるヤツらを叩く」

土御門「そうだな、起爆されたら元も子もない」

結標「さて・・・まずはどこに向かう?」

一方「この学び舎の園を見張れる建物は」

土御門「・・・研究所や学校には入れないだろうからな・・・」

番外「となると、このビルが怪しいんじゃない?自由に借りることの出来る・・・」


653 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 18:53:00.64 ID:RVBhst950
一方「いや、そこはねェな・・・たしかに見つかる可能性は低いが、ここからだと

学び舎の園の中に結構死角ができる」

土御門「・・・そうだな、全体を見張るのには向いていない」

結標「!この建物、たしか今改装工事中だったわよ」

一方「あァ?本当かよ」

結標が指差しているのは小さな会社の入っている建物だった

地図上では分からないが、そこは現在改装工事をしているらしい

番外「よし!!じゃあ殴りこみに行こうぜ!!」

土御門「待て、どうせ見張りにはそこまで大層なヤツはいない」

一方「・・・俺と結標が行く、土御門と番外個体は爆弾の捜索に向かってくれ」

番外「えー、ミサカはアナタとがいいな」

一方「駄々こねてる場合じゃねェンだ」

番外「冗談だよ、ミサカだってこんくらいの空気は読めるって」

土御門「さて・・・俺達の目的は爆弾の回収および見張りの殲滅だ」

結標「手荒にしてもいいのかしら」

土御門「あぁ、やりたいようにやってくれ」

一方「・・・行くぞ結標」

結標「えぇ」

二人が座標移動によって、見張りがいると思われるビルへ向かう

土御門「俺達も向かうか」

番外「うん」



654 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 21:24:06.10 ID:RVBhst950

ゴーグル「フレンダさん、大丈夫っすか?」

フレンダ「ちょ、ちょっと休憩・・・」

ゴーグル男とフレンダがいるのは、垣根達がいるフロアの二階下

ちょうど、垣根と仙道が争った階だった

とは言っても、二人はそこからもう少し離れた場所にいる

フレンダがゴーグル男のペースについていけないため、休憩を挟みながら入っているのだ

フレンダ「アンタ・・・意外と体力ある訳よ・・・」

ゴーグル「いや、筋力が増強されてるんで一歩で思いっきり・・・」

フレンダ「何それずっるい!!そのゴーグル貸しなさいよ!!」

ゴーグル「いいっすけど、拒否反応が出たら半端ない痛みっすよ?」

フレンダ「・・・や、やっぱやめとく」

ゴーグル「それがいいっすね」

ゴーグル男が柱に載せられている地図を見る

ここから真っ直ぐ進めば、最上階まで続くエスカレーターにたどり着く

一方、途中の分かれ道を曲がれば別のルートから最上階にたどり着くことになる

ちょうど、広場の後ろに回りこむような形になる

ゴーグル(・・・わざわざ遠いルートを通る必要はないっすね)

フレンダ「よし!!走れる訳よ!!」


655 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 21:31:06.84 ID:RVBhst950
ゴーグル「いいんすか?」

フレンダ「レッツゴー!!」

フレンダが通路を真っ直ぐ走っていく

ゴーグル男は溜息をついたあと、それの後を追いかける

出来る限り無駄に体力を使わないようにしながら走り続けた


しばらくして、だんだんと開けた場所に変わる

フレンダ「・・・あれ?誰か倒れてる・・・」

ゴーグル「!!あれはたしか仙道とかいう・・・」

二人が仙道に駆け寄る

その顔には、もう血の気がない

ゴーグル「・・・死んでますね・・・」

フレンダ「う、嘘・・・」

ゴーグル「・・・あちこち傷だらけっすね」

フレンダ「も、もしかして・・・垣根がやったの・・・?」

辺りに、不思議な色の羽根が落ちている

おそらく垣根のものだろう


656 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 21:39:40.53 ID:RVBhst950
ゴーグル「・・・これ、見てください」

ゴーグル男が仙道の足元に転がっている何かのケースを差し出す

それは、フレンダも見覚えのあるものだった

フレンダ「・・・これって・・・滝壺が持ってた訳よ」

ゴーグル「恐らく体晶のケースですね」

フレンダ「じゃ、じゃあこいつも・・・」

ゴーグル「・・・」

目の前に倒れている仙道を、ゴーグル男が見下ろす

一度、互いの拳を交えた男

暗部の悲劇に触れて狂ってしまった男

きっと、立ち直ることが出来ると信じていた男

その男は、もう物を言うことはない

ゴーグル「・・・馬鹿っすね」

フレンダ「?何が?」

ゴーグル「なんでもないっす、行きましょう」

フレンダの手をゴーグルが引っ張る


657 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 21:43:07.07 ID:RVBhst950
フレンダ「あ・・・」

ゴーグル「?なんすか?」

フレンダ「な、なんでもない訳よ!!」

ゴーグル「そうっすか」

ゴーグル男がスタスタと歩く

上の階に一度上がり、一旦息を休める

次の階には垣根達がいるはずだ

もちろん、敵の頭領も

ゴーグル(・・・ここまで来たら退くことは出来ないっすね)

エスカレーターに一歩を踏み出し、ゴーグル男がそこで止まる

フレンダ「?どうしたの?」

ゴーグル「・・・おかしいっすね」

フレンダ「お、おかしいって何が?」

ゴーグル「争う音が全く聞こえないんですよ」

フレンダ「そういえば・・・もう決着が着いてるのかな?」

ゴーグル「だったら俺達に連絡をするはずですよ」


658 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 21:57:02.29 ID:RVBhst950
フレンダ「・・・じゃあ、もしかして垣根達が・・・」

ゴーグル「・・・負けるとは考えられません・・・何かあったんですよ、きっと」

フレンダ「何かって何よ!?」

ゴーグル「しっ」

ゴーグル男がフレンダの口に人差し指を当てる

上の階から、垣根の声が聞こえたのだ


垣根「・・・心理定規を放せ」

小鳥遊「・・・うるせぇんだよクソが」


ゴーグル(・・・放せ・・・?そうか、人質を取られてるわけっすね)

フレンダ「ね、ねぇ・・・」

ゴーグル「・・・引き返しますよ、フレンダさん」

フレンダ「ひ、引き返すって・・・」

ゴーグル「いいから・・・俺達には俺達の仕事がありますよ」

ポケットから拳銃を取り出し、ゴーグル男が笑う


ゴーグル「垣根さん達に借りを作るのも悪くないですからね」


659 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 22:02:32.76 ID:RVBhst950

一方「・・・ここか」

結標「・・・相変わらず、悪役って言うのはこういう暗いビルが好きなのね」

学び舎の園

その近くの、見張り役がいると思われるビルに二人は足を踏み入れた

あまり人気がなく、シンとした雰囲気だ

改装工事のため、人などいないのだろう

一方「・・・はン、馬鹿はこういうところが好きなンだよ」

結標「あなたも好きでしょ」

一方「うるせェな」

結標「・・・それで?どこにいると思う?」

一方「適当に探せばいるはずだ」

結標「はぁ・・・ちゃんと計画的にいきなさいよね」

一方「うるせェ」


660 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/11(金) 22:03:31.20 ID:RVBhst950
中途半端だけど今日はここまで

筋肉動画はショーン22歳

http://www.youtube.com/watch?v=nYym0IMZEsw 

ではおやすみなさい


661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/11(金) 23:25:52.80 ID:NbK28Jguo
┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/12(土) 00:02:20.28 ID:6HOsjkNgo
乙です
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県) [sage]:2011/11/12(土) 01:00:20.85 ID:WkKlIsNvo
いちょつ
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 01:04:25.74 ID:hbKcS9VAo
乙なんだよ!
665 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:41:52.89 ID:dz58NyyH0
階段を上がる度、静かなビルの中に二人の足音が響く

カツン、カツンと響くそれは二人の耳に嫌というほど聞こえてくる

一瞬、それが敵に聞かれているのではないかと不安になってしまう

もしも先に気づかれれば学び舎の園に仕掛けられた爆弾を起爆されるだろう

彼等はそれを防ぐためにここに来たのだ

一方「・・・ちっ・・・神経が擦り減るな」

結標「あら、だったら帰ってもいいのよ」

一方「てめェみたいな雑魚一人でどォにか出来ンのかよ」

結標「あら・・・ずいぶんと言ってくれるじゃない」

至近距離で二人が睨み合う

結標にとって、一方通行はかつて自分を傷つけた人間だ

対する一方通行にとっても、結標は妹達の実験を再稼動させてしまいそうだった危険因子である

表に帰った二人の間から、憎しみが完全に消えたわけではない

顔を合わせるのも嫌なほどにいがみ合っている

一方「・・・ちっ、学園都市の命運が掛かってなけりゃてめェから殺してるのによ」



666 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:42:30.44 ID:dz58NyyH0
結標「それはこっちの台詞よ」

一方「急げ、さっさとしねェと6時になっちまう」

一方通行が腕時計を確認する

タイムリミットまであと5時間もない

ここの見張りを片付けてから、学び舎の園の中にある爆弾を回収するのだ

一分一秒が惜しい

一方「・・・どの部屋にいるンだよ」

ところどころ、建設用の機械が移動しているのが目に入る

学園都市はあまり大人がいない

そのため、もちろん建設業に関わる人間も少なくなっている

それをカバーするために、建設はほとんど機械が行っている

改修工事やリフォームから、新築を建てるまで、全て機械に任せられる

科学の総本山である学園都市だからこそ出来る業である

結標「・・・従業員なんかに見つからなくて済むからありがたいわね」

一方「あァ・・・通報なンてされちまったら堪らないからな」

結標「・・・でもそれは相手も同じよ」

一方「こンな建物なら簡単に忍び込めるな」


667 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:43:18.20 ID:dz58NyyH0

結標「・・・油断してくれてたらいいわね」

一方「そろそろ計画を実行するンだ・・・それも、かつて起こしたことのないような計画を」

結標「・・・油断というよりは緊張かしら」

一方「今は起爆されてねェみたいだからな、少なくともこの建物に入ったことには気づかれてない」

結標「そう考えてもいいかもね」

一方「だとすれば後は見つけ出すだけだ」

結標「・・・敵は武装をしていると思う?」

一方「関係ねェ」

首元にあるチョーカーに、一方通行が触れる

番外個体にフル充電してもらったため、まだ十分に可動時間は残っていた

これなら20分は能力使用も出来るはずだ

結標「・・・あなたがいれば一人で大丈夫かもしれないわね」

一方「当たり前だ、てめェはお荷物なンだよ」

結標「ふん・・・そのチョーカーが万が一タイムリミットになったら?」

一方「それまでには片付ける」

結標「・・・だったら徹底的によろしく」


668 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:44:02.88 ID:dz58NyyH0
二人がまた階段を上がる

やはり響いているのは二人の足音だけだ

あまりにも目立つそれを、出来る限り抑えながら二人は進む

残るのは最上階だけだった

一方「・・・この階には二部屋しかねェ」

結標「・・・ドアを開けたら一瞬で攻撃、いいわね」

一方「あァ」

一つのドアの前に立つ

これを開け、そこに敵を確認したらすぐさま攻撃しなければならない

二人の存在に気づかれ、起爆スイッチを押されたらそれで終わりだ

すでに学び舎の園の中で捜索を始めようとしている番外個体と土御門は粉々に吹き飛ぶだろう

一方「・・・開けるぞ」

結標「えぇ」

一方通行がゆっくりとドアノブを回す

それさえも気づかれてはいけない


669 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:45:56.77 ID:dz58NyyH0
ドアを少しだけ開けて、中を確認する

その部屋の中には誰もいなかった

一方「・・・スカだ、こっちじゃなかったみてェだな」

結標「そうね・・・となると隣の部屋ね」

一方「・・・気を引き締めろ」

一方通行がその部屋から外に出る

音を立てないようにして、もう一つの部屋の前に立った

一方「・・・中に気配を感じる」

結標「あら奇遇ね・・・私もよ」

一方「開けるぞ」

もはやゆっくりと開ける必要はない

全てのベクトルをドアに叩きつける

まるで板チョコかと思えるほど簡単に曲がったドアは、そのまま部屋の中へと突っ込んだ

「!だ、誰だ!?」

結標「ちょっと失礼」

部屋の中心にいた男が驚いたような声を上げる

あまりに急な展開に対応出来ないのだろう


670 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:46:46.46 ID:dz58NyyH0
一方「喚くな」

足元に落ちていた双眼鏡を、男に投げ付ける

学び舎の園を監視するのに使っていたのだろうか

一方通行の能力により、それは恐ろしい凶器に姿を変えた

「がっ・・・」

頭に双眼鏡が直撃した男は、一瞬で意識を失った

一方「・・・スイッチみたいなもンはないか」

結標「・・・あからさまには置かれてないわね」

一方「・・・あァ?このパソコンをなンだ」

男が先程までいた場所には、パソコンが設置されていた

そこには何かの文字が羅列している

結標「あら・・・ビンゴよ、これば爆弾のスイッチみたい」

一方「はァ?今時はこンなので爆弾を起爆すンのか」

結標「たくさんの爆弾には電波を飛ばしやすいんじゃないの?」

一方「・・・めンどくせェな、解除パスワードが必要みてェだ」


671 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:47:32.11 ID:dz58NyyH0
倒れている男の頭を一方通行が掴む

無理矢理生体電気を操ることで、強制的に意識を戻させる

「な、なんだお前達・・・」

結標「グループと言えば分かるのかしら」

「!な、なんでお前達がここにたどり着いたんだ!?」

一方「ゴチャゴチャうるせェな、今はどォだっていいだろォが」

「くそ・・・まさか学校に仕掛けた爆弾を・・・」

結標「あんな計画くらいならすぐに気づいたわ・・・まさか学び舎の園を中心に爆破テロを行うとは思わなかったけど」

「ちくしょう・・・もうそこまでたどり着いたのか・・・!」

一方「答えろ、起爆の解除パスワードは」

「はっ!教えられるかよ!」

一方「答えろって言ってンだよ」

男の左手を一方通行が握り締める

ベクトルを集中させることによって、彼の指が男の左手にぐいぐいと食い込んでいく

「がぁぁぁっ!」


672 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 09:52:24.09 ID:dz58NyyH0
一方「もう一度言うぞ、解除パスワードを答えろ」

「で、出来るわけが・・・」

一方「そンなに左手を折られたいか、分かったよォ」

「!DEADだ!DEADで解除出来る!」

一方「ちっ・・・不吉な解除パスワードなンか作りやがって」

文句を言いながら一方通行が文字を打ち込む

少ししてから、起爆スイッチの解除を完了したというメッセージが表示される

一方「・・・これで解除できたンだろォな」

「あ、あぁ!!もうこれでいくらいじっても学び舎の園の爆弾は起爆しない!!!」

結標「さて・・・あと二箇所のところも終わったかしら」

「!!そ、そこまでバレて・・・」

一方「はン、わざわざ細かい計画をチップの中に書いてあるなんざバカなことだ」

「あ、あれを見つけたのか・・・!?」

結標「えぇ」

「お前達・・・」

一方「所詮新参者なンてそンなもンだ」




673 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:13:02.75 ID:dz58NyyH0
「くそっ・・・俺はどうなるんだ!?」

結標「あら、ここでいたぶってもいいのよ?」

「ひっ・・・!!!」

一方「そォだな・・・学び舎の園には今頃統括理事会から派遣された爆弾捜索班がウジャウジャ集まってきてる」

「くそっ!!」

結標「どうせ、時限式でもあるんでしょうけど・・・6時まであと4時間あるわ、いくら400近い爆弾があるとはいってもさすがに見つけられるわよ」

「ふざけんな!!邪魔すんなら・・・」

一方「なンだ?俺達に楯突く気かてめェ」

「ちくしょう!!もうちょっとなんだよ!!」

結標「あなた達がどうして暗部に堕ちたのかなんて知らないけど、表を巻き込んだ時点でそれは断罪するべき存在になったのよ、私達にとっても」

「う・・・」

一方「・・・てめェは他の場所のどこに爆弾があるか知らねェのか」

「し、知らない!それぞれの場所の担当が割り振ってるんだ!!」

結標「はぁ・・・めんどうね」

一方「・・・ちっ、ならてめェの知ってる情報を全て教えろ」

「で、出来るかそんなこと!!」


674 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:17:27.52 ID:dz58NyyH0
一方「・・・仕方ねェな」

一方通行が男の頭に触れる

「な、何を・・・」

一方「口止めだ」

「こ、殺すつもりか!?表の世界に戻ったはずのお前が・・・」

結標「あら・・・そんなこと?くだらないわね」

一方「あァくだらねェ」

ニヤリと笑う一方通行の顔に、狂気が浮かんでいく

かつての彼のような笑みを浮かべ、生体電気を操る

「がはっ・・・」

男の意識の糸がそこで途切れる

結標「・・・あら、気絶だけで済ませたのね」

一方「わざわざこンな雑魚のために手を汚すことはねェ」

結標「それもそうね・・・で?私達はこれからどうするの?」


675 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:23:30.41 ID:dz58NyyH0
一方「・・・あのビルに残ってるヤツらはどォなってると思う」

結標「あら、あなた垣根達が負けるとでも思ってるの?」

一方「・・・負けるとかじゃねェ、今はもう終わってるかどうかだ」

結標「そうね・・・終わってるかもしれないわね」

一方「・・・それなら問題ねェ、行くぞ」

一方通行が部屋の外に出る

ドアを破壊しているため、わざわざそれを開ける必要は無い

結標「可愛そうに、改修工事の手間が増えちゃったわね」

一方「・・・関係ねェ、どォせ機械がやる仕事だ」

結標「・・・そろそろ終わるわね・・・早く小萌のところに戻りたいわ」

一方「もォすぐ帰られるンだよ」

結標「そうね・・・それなら悪くはないわ」



676 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:28:16.27 ID:dz58NyyH0
カツカツ、と足音を響かせながら二人が階段を降りる

来たときとは真逆で、決してそれを隠す必要はない

一方「・・・さァて、俺達は爆弾の捜索にでも当たるか?」

結標「いいんじゃない?」

一方「めンどくせェ仕事だが・・・最後だからな」

首のチョーカーのスイッチを、通常モードに切り替える

能力を使えるのは、残り5分程度か

一方(・・・ちっ、能力を使ったのは無駄だったな・・・まさか見張りがあそこまで不甲斐ないとは思わなかった)

結標「・・・学び舎の園にはもちろん、学生がたくさんいるわよ?」

一方「気にすンな、バレないよォに探せばいいンだよ」

結標「簡単に言うわね・・・」

一方「・・・行くぞ」

結標が一方通行の肩に触れる

向かうのは学び舎の園の中心部


一方「さて、幕引きだクソッタレ」


677 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:33:50.36 ID:dz58NyyH0

垣根「・・・イラついたか?」

小鳥遊「ちっ・・・」

小鳥遊がタバコの火を心理定規の腕に当てる

そこは、ちょうど彼女が銃弾を浴びて負った傷のある場所だ

心理「ぐっ!」

垣根「心理定規!」

小鳥遊「あんまりイラつかせんな・・・こっちは別に殺そうなんて言ってるわけじゃねぇんだからよ」

そのタバコを口に咥え、小鳥遊が時計を見つめる

現在時刻は午後2時10分

小鳥遊(たしか6時辺りに爆破テロだったか?くそ・・・詳しい情報を先にやり取りしときゃよかったな)

垣根「・・・放せ、そいつを今すぐにだ」

小鳥遊「・・・だから何度も同じことを言うな、楽しめないだろ」

タバコの火を、今度は心理定規の顔に近づける

垣根「!!」

小鳥遊「あんまり俺をイラつかせんな・・・ただでさえ部下がやられてムカついてるんだぜ?」


678 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:42:21.41 ID:dz58NyyH0
垣根「・・・それだけはやめろ」

小鳥遊「はっ、ヤケドなんてすぐに治るぜ?なんなら唾でもつけて治してやろうか」

垣根「・・・殺すぞマジで」

小鳥遊「そういう表情は、やっぱりそそるもんだな」

心理定規の頬に、軽く小鳥遊がタバコを押し当てる

心理「っ・・・」

垣根「やめろ」

小鳥遊「・・・いいっての、唾でもつければいいんだろ?ゆっくりキスでもしてやるよ」

垣根「・・・」

垣根が拳を握る

強く握りすぎて、掌から血が流れ出している

垣根「・・・放せよクソが」

小鳥遊「放さねぇよクズが」

垣根「・・・てめぇ・・・」

小鳥遊「ははは!!自分の女がこんな風にされて悔しいか!?こいつの頬に舌でも這わせりゃもっと面白くなるのかよ?」


679 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 10:53:46.63 ID:dz58NyyH0
垣根「・・・やってみろよ、次の瞬間にはてめぇは死ぬぞ」

小鳥遊「やってみたくなるじゃないか」

垣根「・・・」

小鳥遊「風間、生きてるか」

風間「な、なんとか・・・くそっ、垣根の野郎・・・」

小鳥遊「外の状況はどうなってる?連絡は取れるか」

風間「学び舎の園のヤツでいいんですか?」

小鳥遊「あぁ、それでいいぞ」

垣根「学び舎の園?」

小鳥遊「てめぇらには関係ないんだよ」

風間「・・・あれ?連絡取れないですよ」

小鳥遊「ちっ・・・監視にでも集中しすぎてんじゃねぇのか?これだから俺の部下を使いたかったのによ」

風間「いいじゃないっすか、仮に失敗しても向こうの責任っすよ」

小鳥遊「それもそうだな」


680 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 11:11:53.55 ID:dz58NyyH0
垣根「・・・てめぇら何かやらかすつもりか」

小鳥遊「答える必要があるか?」

垣根「答えろよクソッタレが」

小鳥遊「・・・風間、お前刃物は持ってないか」

風間「そういうのは持ち歩いてないですよ」

小鳥遊「じゃあお前の能力でもいい」

小鳥遊が心理定規の頬を指差す

さきほど、タバコを押し当てた部分だ

小鳥遊「ここを切れ」

風間「なんでですか?」

垣根「てめぇ!!」

小鳥遊「こうやって見せ付けるのも面白いんだよ」

垣根「サディストが・・・!!」

小鳥遊「んなんじゃねぇよ、ただてめぇみたいなすかした野郎を見下すのが面白いだけだ」


681 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 11:19:49.14 ID:dz58NyyH0
風間「はぁ・・・じゃあ行きまーっす」

風間がニヤニヤと笑いながら手の周りの風を操る

まるで鎌鼬のようなそれは、触れればすぐに皮膚を切ってしまう一撃だ

垣根「!」

風間「さーて、可愛い女の子の頬に傷を・・・」

風間が一歩踏み出した瞬間、どこからか銃声が聞こえた

一瞬、それがどこから聞こえたものか分からなくなる

風間や小鳥遊のいる、遥か後方

そこに、二つの人影があった

風間「・・・あ・・・?」

風間が自分の脚を見つめる

そこには、綺麗な風穴が開いていた

風間「がぁぁぁっ!!」

小鳥遊「・・・誰だ」


682 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 11:28:06.61 ID:dz58NyyH0

ゴーグル「はぁ・・・やっぱり心理定規さんが人質でしたか」

コツコツと足音を立てながら、ゴーグル男が歩いて来る

その後ろにはフレンダがいる

風間「てめ・・・」

ゴーグル「しゃべるな」

ゴーグル男が小鳥遊の握っている拳銃を正確に打ち抜く

小鳥遊「!」

垣根「よくやったゴーグル馬鹿!!」

垣根が一瞬で小鳥遊の目の前に移動する

その背中には、すでに翼が生まれている

小鳥遊「クソが!」

垣根の攻撃を避けた小鳥遊が、ポケットから、もう一丁の拳銃を取り出す


683 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 11:37:33.27 ID:dz58NyyH0
心理「!!垣根!」

垣根「ナメてんじゃねぇよクソが!!」

小鳥遊「ちっ!」

パンパン、と二回銃声が響く

垣根が二つの銃弾を翼で弾き返す

小鳥遊「く・・・」

垣根「オーケー、形成逆転だクソッタレ」

風間「小鳥遊さん!!」

垣根が小鳥遊の体を翼で吹き飛ばす

小鳥遊「がはっ・・・」

垣根「心理定規、大丈夫か」

心理「えぇ・・・ちょっと痛いけどね」

頬と腕のヤケドを見せて、心理定規が笑う

垣根「・・・あの野郎殺してやる」

翼を通過した光を殺人光線に変え、垣根が小鳥遊を追い詰める


684 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 11:40:35.83 ID:dz58NyyH0
小鳥遊「ちっ・・・」

拳銃の照準を、ゴーグル男へと向ける

ゴーグル「・・・垣根さん」

垣根「なんだよ」

ゴーグル「こいつは俺が先に叩きますよ」

垣根「俺の得物だ、よこせ」

ゴーグル「俺が半分、垣根さんが半分・・・これで全部でしょう?」

ゴーグル男も、拳銃を構えた

その目には憎悪が宿っている

ゴーグル「自分の仲間は見捨てるわ・・・垣根さんや心理定規さんを傷つけるわ・・・」

ジャキリ、と撃鉄の上がる音がした


ゴーグル「挙句の果てにフレンダさんをズタボロにしやがって」

小鳥遊「粋がるじゃないか・・・スクールのお荷物が」

ゴーグル「お荷物?ナメたらいけない、俺だってそれなりに戦力ではありましたよ」

小鳥遊「ふん、だったらここで証明してみせろよ!!」


685 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 12:19:51.05 ID:dz58NyyH0
ゴーグル「上等」

パンパン、とゴーグル男の拳銃が叫ぶ

銃弾は、小鳥遊のすぐ傍を撃ち抜く

だが決して、それが彼に当たることはない

ゴーグル(・・・この距離で避けるなんて、さすがっすね)

小鳥遊「どうしたどうした!?」

ゴーグル「逃げてばかりなんて雑魚の極みっすね」

小鳥遊「吼えるじゃねぇか」

小鳥遊が地面に転がっている浜面たちを見つめる

彼らは今、意識を失っている

だがその中で、一人だけ意識を取り戻しつつある人間がいた

絹旗「う・・・」

ゴーグル「!!絹旗さん・・・」

小鳥遊「もらった!!」

ゴーグル「!?」

小鳥遊が演算を開始する

絹旗の思考を停止させ、そこに自分の思考の一部を無理矢理植えつける

そうすることによって、痛みを恐れない操り人形が出来上がるのだ

麦野「ゴーグル君気をつけて!!そいつの能力は心理操作系よ!」

ゴーグル「なるほど・・・絹旗さんを操ってるわけっすね」


686 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 12:51:01.76 ID:dz58NyyH0
小鳥遊「どうする?仲間を傷付けられるか?」

ゴーグル「愚問っすね・・・そりゃ、出来ないですよ」

ゴーグル男が両手を挙げる

まるでお手上げだ、とでも言うように

小鳥遊「ははは!!そりゃそうだろうな、てめぇ・・・」

ゴーグル「でもアンタ、勘違いしてますよ・・・もう一人、敵を見落としてます」

小鳥遊「はぁ?何を・・・」


フレンダ「私のことを忘れたらダメな訳よ!!」

小鳥遊「!!」

フレンダが小鳥遊の足元に爆弾を投げつける

小鳥遊「ナメるな!!」

それを勢い良く小鳥遊が蹴り飛ばす

ちょうど、ゴーグル男の足元にそれは転がった

フレンダ「まっず・・・」

ゴーグル「ちょうどいいっすね」

ドン、と衝撃が走って辺りに火柱が立ち上がる

その爆風に吹き飛ばされた絹旗は、再び意識を失う

小鳥遊(ちっ・・・まぁいい、ゴーグルの男は爆発に巻き込まれてる・・・)


687 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 13:07:07.83 ID:dz58NyyH0
小鳥遊がくるりと踵を返す

その目が捉えたのはフレンダだ

小鳥遊「さぁ・・・まずはてめ・・・」

ガシリ、と誰かの手が小鳥遊の肩を掴んだ

小鳥遊「垣根帝・・・」

小鳥遊が振り返る

だが、彼の肩を掴んでいるのは垣根ではなかった

さきほど、爆発に巻き込まれた男

死んだはずの男

顔の半分が砕けているが、顔の中に骨は無く、おかしな空間が広がっていた

何か核のようなものを中心として、宇宙に似た空間が広がっているのだ

小鳥遊「お前は・・・!!」

ゴーグル「言ったでしょう?俺が半分、殺してやるって」

ニヤリ、と笑った口からはそんな言葉が流れ出す


688 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 13:10:18.62 ID:dz58NyyH0
小鳥遊「なぜ・・・」

パン、と一発の銃声が響く

小鳥遊の胸に小さな風穴が開いた

小鳥遊「がはっ!」

信じられないほどの痛みに、つい小鳥遊が地面を転げまわる

小鳥遊「クソがぁ!!てめぇ・・・」

拳銃をゴーグル男に突きつけ、引き金を引く

ガクン、とゴーグル男の頭はのけぞった

だが彼は死なない

小鳥遊「な、なんだってんだよ一体・・・」

ゴーグル「いってぇ」

ゴーグル男が、小鳥遊の腕を全力で踏みつける

バキリ、という不気味な音が響く

小鳥遊「あぁぁ!!!」


689 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 13:14:09.80 ID:dz58NyyH0
ゴーグル「・・・拳銃はいらないっすね」

小鳥遊の手の中にある拳銃を、ゴーグル男が放る

風間「てめぇ!!小鳥遊さんを放せ・・・」

垣根「黙ってろよ三下」

垣根の翼に打たれた風間が、地面へうつ伏せになる

風間「ごっ・・・」

垣根「死にたくないなら黙ってろ、死にたいんなら遺言を並べな」

風間「くそっ・・・」

ゴーグル「さて・・・俺達はアンタのせいで散々な目に遭った」

カチャリ、と手元の拳銃の撃鉄を起こす

ゴーグル「そうだな・・・まず、暗部に引き込まれた」

パン、と一発目の銃声が響く

小鳥遊の右腕に、弾丸が突き刺さる

小鳥遊「ぐっ・・・!!」

ゴーグル「次に・・・フレンダさんが何度も死ぬほどの痛みを受けた」

二発目の弾丸は、小鳥遊の脚を貫く


690 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 13:18:18.36 ID:dz58NyyH0
ゴーグル「俺だってそうだ・・・ありゃ痛かった」

三発目は、小鳥遊の耳を半分削る

ゴーグル「心理定規さんだって傷付けられた」

小鳥遊のポケットから、タバコを取り出す

その一本に火をつけ、ゴーグル男が吸いだす

ゴーグル「アイテムの皆さんは操られて・・・そうだ、垣根さんが止めなければ今頃同士討ちになっていたはずだ」

垣根「はん・・・俺が止めたって分かるのかよ」

ゴーグル「手負いの麦野さん一人じゃこの人数を相手にはできないでしょう」

垣根「その通りだ」

ゴーグル「・・・麦野さんだって傷ついた」

真っ赤に染まるタバコの先を、小鳥遊の傷口に当てる

ジュウ、という焼けるよな音と共に傷口が爛れていく

小鳥遊「やめろ!!クソがぁ!!いてぇ!!!」

ゴーグル「ゴチャゴチャうるさい」

小鳥遊の頭を、全力で地面に殴りつける



691 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 16:10:34.72 ID:dz58NyyH0
小鳥遊「ごっ・・・」

ゴーグル「・・・垣根さん、どうします?ここでこいつを殺しても誰も責めないっすよ」

垣根「やめとけ、てめぇが手を汚す必要は無い」

ゴーグル「あなたもですよ」

垣根「・・・そいつはよこせ」

ゴーグル「まぁ待ってくださいよ・・・もうちょいっす」

ゴーグル男が小鳥遊の髪を掴む

先ほどまでの余裕は消え、小鳥遊の額を冷や汗が伝っていた

垣根「・・・どうした?さっきまでは粋がってたくせによ」

小鳥遊「は・・・ははは!!俺を殺せば御終いと思ってるのか!?哀れだな!!」

垣根「・・・外で何かやってんのか」

小鳥遊「こっちとは比べ物にならないほどの派手なことをな!!」

ゴーグル「・・・何?」

小鳥遊「学び舎の園を中心にした爆破テロ・・・」

麦野「そんくらいはもう分かってるのよ」



692 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 16:14:10.23 ID:dz58NyyH0
小鳥遊「それだけじゃないさ・・・」

垣根「あぁ?」

小鳥遊「・・・お前達には分からないだろうな!!」

小鳥遊が時計を見る

時間は午後の3時

もう、あと3時間しかない

小鳥遊「俺が・・・俺が外部と連絡を取ればすぐに爆破を起こせる!!」

ゴーグル「出来るものならやってみればいいっすよ」

タバコを小鳥遊の傷口に押さえつけながら、ゴーグル男が笑う

小鳥遊「・・・ナメるなよ」

垣根「どう・・・」

小鳥遊「風間!!外部と連絡、すぐさま爆破を行え!!」

風間「い、今ですか!?」

小鳥遊「今だ!!」

垣根「!!させるか・・・」

小鳥遊「邪魔はさせねぇんだよ!!」

小鳥遊が演算を開始する

今の状態では、一人を操るのが精一杯だ



693 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 16:26:24.10 ID:dz58NyyH0
小鳥遊(・・・ゴーグルの野郎を操っても垣根がいる・・・なら)

小鳥遊が横目でフレンダの目を見つめる

フレンダ「え・・・?」

小鳥遊「てめぇだ・・・!!」

フレンダの意識が突然黒へと変わる

何をされたのか理解する前に、彼女の思考は停止した

ゴーグル「!!お前・・・!!」

小鳥遊「ははは!!どうするスクール!?」

フレンダが無言で、ゴーグル男へと近づく

ゴーグル「フレンダさ・・・」

驚いたような顔のゴーグル男を、フレンダが殴り飛ばす

ゴーグル「ぐっ・・・」

垣根「クソ!!」

翼を広げる垣根の元に、フレンダが爆弾を投げる

今の彼女はまともな思考など持っていない


694 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 16:45:19.27 ID:dz58NyyH0
垣根「ちっ・・・」

近くにいる心理定規やゴーグル男を守るように、垣根が翼を広げた

心理「!!垣根!!!」

垣根「・・・クソが」

凄まじい衝撃が辺りを包む

ゴーグル男と心理定規は無傷だった

垣根の翼によって守られたためだ

心理「垣根!!」

小鳥遊「ははは!!あんな爆発に巻き込まれたら死ぬに決まってんだろ!!」

二人を守るために、垣根は自分の体を無防備にしてしまったのだ

彼の体には、爆発の衝撃が全て加わっているはずだった

ゴーグル「垣根さん・・・」

小鳥遊「さーて、風間!!!外部との連絡は!?」

風間「相変わらず取れませんよ」

小鳥遊「仕方ね・・・」


垣根「あーいってぇ・・・ムカつくぜクソ野郎が」


695 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 16:56:09.51 ID:dz58NyyH0

土御門「こちら土御門・・・そっちはどうだ」

『こちら第18学区捜索班、順調に爆弾を発見、現在23個確認』

土御門「・・・残り二つだな、順調だ」

『しかし、25個ものC4爆弾を一つの学区に・・・』

土御門「そんなの可愛いものだ」

土御門は、電話で元暗部の人間と話していた

今回の事件は表沙汰に出来ないため、元暗部の人間だけで片付けるしかない

警備員ほどの人数は集められないが、皆爆発物の処理には手馴れている

土御門「学び舎の園には423ものC4だぞ?まぁここはお嬢様学校が多い分、外にもニュースとして知れ渡らせられるからな」

『ですが、そちらはもうほとんど発見したのでしょう?』

土御門「あぁ、もう419は見つけた・・・あと4つだ」

土御門が時計を確認する

残り2時間30分

これだけの時間があれば、全ての学区の爆弾を見つけられるはずだ

爆弾の入手リストに載っていた数も偽りとは思えない


696 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 18:31:21.75 ID:dz58NyyH0
土御門「はぁ・・・めんどうだな」

番外「おーっす、どうだって?」

土御門「ほとんど見つけられているようだ、そっちは?」

番外「第1学区もオーケー、そっちはもう全部解体したって」

土御門「順調だな」

土御門が地図を見つめる

大体のこと細かい配置場所が書かれているため、あとは微調整で探すだけで済んでいる

土御門「・・・しかしすごいな、学び舎の園に423・・・第18学区に25、第1学区に20だぞ?」

番外「正直、その三箇所だけの被害じゃ済まないよね」

土御門「どこに設置しても学園都市は全滅だ・・・どうせ風評のダメージがでかいところを選んだんだろうな」

番外「そういうことかもね」

二人がもう一度地図を見つめる

残り4つの捜索には、50人ほどが出向いている

土御門「・・・ん・・・?ちょっと待て」

番外「?どうしたの?」

土御門「しまった・・・そんな初歩的なことを見落としてるなんて・・・」

番外「・・・?」

土御門「・・・クソ・・・」


土御門「こりゃ面倒は続くな・・・」


697 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 18:43:20.77 ID:dz58NyyH0

一方「・・・なァ」

結標「何よ・・・あまり話しかけないで、演算に集中したいのよ」

座標移動を使い学び舎の園へ向かっている途中、一方通行がふと結標の名を呼んだ

一方「もォ一度例の地図、見せろ」

結標「・・・はい」

手渡された地図を、一方通行が凝視する

結標「そんなに難しく考えなくていいわよ・・・どうせ、元暗部の人間が手伝ってくれて・・・」

一方「結標、第10学区には原子力関係の研究施設があったな」

結標「・・・言っておくけど、そこには仕掛けられてないわよ・・・言ったでしょ?学舎の園のある7学区と1、18学区の三箇所・・・」

一方「・・・初歩的なことを忘れてンだよ、俺もお前も」

結標「・・・何よ?」

一方「学舎の園に423、第18学区に25・・・第1学区には20」

結標「・・・爆弾はちょうど500・・・」

一方「2つ、どこにあンだよ」

二人の間に気味の悪い沈黙が流れる


698 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 18:50:54.27 ID:dz58NyyH0
結標「・・・その二つはどこかに仕掛けられてるって言うの?」

一方「新暗部のヤツらとこの爆破事件のヤツらは、協力体制にはあるが同じ組織じゃねェ・・・ってことはだ、勝手にこォいうアドリブを入れようが文句は言われないンだろ?」

結標「面倒ね・・・第10学区にはたしかに原子力関係の施設があるわ」

一方「そこにはわずかだが原子力発電の施設もあるはずだ」

結標「それだけじゃないわよ・・・原子爆弾なんかの開発も行ってるって噂があるわ」

一方「・・・そんな場所の近くで爆破でもあってみろ」

結標「・・・下手をすればここは一瞬で死の街ね」

一方「・・・そこに一つ」

結標「・・・原子力関連の建物をピンポイントで狙えば一つで十分・・・」

一方「俺達はそれを片付けるぞ」

結標「もう一つは?」

一方「問題ねェ・・・恐らく、この爆破事件を起こしたヤツらは口封じをするはずだ」

結標「・・・!!みんながいるあの建設中のビル!?」

一方「一つだけであの新暗部のヤツらを殺せる・・・しかも暗部の存在もどォせ明るみに出る・・・」

結標「考えたわね・・・この学舎の園の爆破もダミーなのかしら?」

一方「全部がメインなンだよ・・・だからめンどくせェ」


699 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 19:19:12.21 ID:dz58NyyH0
結標「・・・第10学区に移動先を変えるわね」

一方「あァ」

一方通行が地図を見つめる

10学区は全くのノーマークだったため、どこに爆弾が仕掛けられているかを考えてはいなかった

一方(原子力関連の研究所・・・そして、その中でも大きな被害を与えられる場所)

一方(・・・となると・・・ここしかねェな)

大きな研究所の一角に、爆弾を仕掛けるのに向いている場所がある

研究所のゴミを捨てる施設だ

もちろん、原子力とは何の関連も無い、研究員の日常生活で出てしまうゴミを捨てるための施設

そこは、普段は全くのノーマークなはずなのだ

研究のデータがあるわけではない、そこを調べても何の得も無い

研究員をストーカーでもしているのなら話は別だが

一方「・・・急げ、ここからどれくらいで行ける?」

結標「そうね・・・30分は掛かるわよ」

一方「問題ねェ」



700 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 19:22:18.61 ID:dz58NyyH0
結標「・・・もしも、私達がその爆弾を見つけられなかったら?」

一方「知ったことかよ」

結標「研究員に見つかってしまったら?」

一方「・・・もしもの話なンて興味がねェ」

結標に一瞥をくれた後、一方通行が空を見上げる

そろそろ日が傾き始める時間だった

一方「急げ・・・俺達には守りたいものがあるンだ」

結標「はぁ・・・そうね、ここで日常を終わらせることは出来ないわね」

一方「・・・行くぞ、最後の詰めだ」

結標「・・・えぇ」

二人の姿が虚空に消える

彼らが向かうのは地獄か、それとも天国か


一方(・・・終わらせてやるよ、これで)


701 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 19:29:31.75 ID:dz58NyyH0

削板「・・・ここはどこなんだ!?」

黒子「・・・分かりませんの」

ビルの中、二人はまだ道を彷徨っていた

柱の地図を見て進めばいいのだが、あいにくそんなことをするほど細かい性格ではない

削板「・・・どっかで大きな音が鳴ってるのは分かるんだけどな・・・」

黒子「そうですわね・・・上の階ですの」

削板「それしか分からない!!」

黒子「胸を張って言わないでくださいな・・・」

黒子が肩を落とす

出来れば、すぐさま仲間の元に飛びたいのだが、下手に能力を使うことも出来ない

黒子「・・・おや?」

削板「どうした?」

黒子「・・・あれはなんでしょうか」


702 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 19:36:12.31 ID:dz58NyyH0
黒子が、柱の影に置かれているものを見つめる

よく戦闘の余波で破壊されなかったものだ、と感心するほどの位置にある黒い機械的な物

トランシーバー大のそれは、決して目立つものではない

しかしこの壊れかけているビルの中で、それは確かに異質なものだった

黒子「・・・こんなところに落ちているとなると・・・」

削板「爆弾とかか?」

黒子「・・・」

削板「・・・」


黒子「そ、そんなわけが・・・」

削板「でも、なんか時計表示がされてるぞ?」

黒子「!!」

黒子が爆弾と思われるものに近づく

たしかに、全時代的ないかにも「時限爆弾です」というような物が表示されている

黒子「・・・ほ、本当に爆弾・・・」


703 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 19:43:31.52 ID:dz58NyyH0
削板「・・・でも、六枚羽とかに取り付けられてたのと違わないか?」

黒子「そうですわね・・・これは筒状ではありませんもの」

削板「となると・・・これはあれとは別の物か」

黒子「・・・形からすれば・・・C4爆弾ですの」

削板「・・・ダイナマイト並の破壊力の爆弾だな」

黒子「・・・解体・・・は出来ますの?」

削板「・・・解体か・・・」

削板が爆弾を手に持つ

黒子「そ、そんなに気軽に持たないでくだ・・・」

削板「こんなものは!!握りつぶせばいいんだ!!」

バキリ、と削板がC4爆弾を握り締める

もちろん、そんなことをすれば小さな爆発は起きてしまう

バン、という音がして削板の掌の中でC4爆弾が弾けた


704 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 19:49:40.95 ID:dz58NyyH0
黒子「ぐ、軍覇さん!!」

削板「いってぇ!!」

削板が手をプルプルと振るわせる

その手の中では、既にC4爆弾が砕かれていた

黒子「・・・な、なんという・・・」

削板「いって・・・でもこれで解体したことになるんじゃ・・・」

黒子「もしも爆発していたらどうするつもりでしたの!?」

削板「わ、悪い・・・」

黒子「・・・軍覇さん、たしかに軍覇さんは強いですの・・・ですが、それを過信するのはよくありませんわ」

削板「・・・悪かった」

黒子「いえ・・・ですが、誰がこのようなものを仕掛けたのでしょうか?」

削板「・・・誰かが仕掛けたのは間違いない」

削板が爆弾の欠片を見つめる


705 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 20:52:35.69 ID:dz58NyyH0
黒子「・・・!!となると、ここを爆破するつもりでしたの!?」

削板「あぁ、それもこの建物の中にいる人間じゃない・・・こんな爆弾を使えば自分ごと崩れるからな」

黒子「・・・外にまだ組織が・・・?」

削板「それはまだ定かじゃないな」

削板が爆弾の欠片を地面に投げ捨てる

削板「・・・でも、何かがあると考えたほうがいい」

黒子「・・・相手は何を考えているのでしょうか・・・?こんな裏切りのような行為を・・・」

削板「爆破を行ったヤツらと、ここにいるヤツらは多分ただの協力関係にあるだけなんだろう」

黒子「・・・なるほど、それなら説明がいきますの」

削板「・・・行くぞ黒子」

黒子「?そちらは外へ向かう通路ですの」

削板「垣根達がいるから大丈夫だ・・・俺達は、表の人間を抑えなきゃならない」

黒子「ですが・・・風紀委員の支部を爆破したということは、既に表の住人にも・・・」

削板「・・・そうだな・・・」


706 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 20:58:08.49 ID:dz58NyyH0
黒子「・・・誰かが爆破を起こしたことは明白ですの、ですが・・・」


スタン「・・・そいつは俺が請け負うかな」

黒子「!!あなたは・・・!?」

削板「お前・・・なんでこんなところにいるんだよ!?」

スタン「・・・どっちにしろ俺は外に行くつもりだったからな・・・」

黒子「ちょ、ちょっと待ってくださいな・・・請け負うとはどういうつもりですの?」

スタン「・・・俺の能力は水素操作だ・・・風紀委員の爆破事件は全て俺のせいにしてみろ」

削板「い、いや・・・爆弾によっての爆破って・・・」

スタン「爆発物の残骸は、爆弾による爆発に見せかけるためだった・・・と言え」

傷だらけの体を引きずりながら、スタンが歩いてくる

削板との交戦で負った傷は、思いのほか彼の体力を削っていた」

だがそれを気にしてはいられない

スタン「・・・どさくさに紛れてあの爆発物の残骸を置き・・・能力者の仕業ではないと見せかけた・・・筋は通っているだろう?」

削板「で、でも・・・」


707 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:03:20.58 ID:dz58NyyH0
スタン「何・・・暗部が表に流れ出し、表が無くなるよりはよっぽどマシだろう?」

黒子「ですが・・・そんなことになれば、最悪あなたは一生・・・」

スタン「牢の中か?そんなことはいいんだよ」

削板「・・・どうしてそんなことをするんだ?」

スタン「・・・俺だって・・・もうイヤになったんだ、誰かを殺してそれで喜ぶ生活が・・・お前らみたいな馬鹿正直な人間を見たからな」

腕を押さえ、よろめきながらスタンが削板に近づく

スタン「お前が俺を捕まえた・・・そうしろ」

削板「・・・お前をそうやって貶めることは出来ない」

スタン「なら・・・俺が変わる手助けをすると思ってくれないか」

削板「・・・」

スタン「・・・俺はこうでもしないと、誰かのためにはなれない・・・この責任を俺が背負う、もちろん表の世界での事件の責任を」

黒子「・・・そうですわね・・・統括理事会は恐らく、この事件の真犯人を求めるでしょう」

削板「そうなれば、もちろん他のヤツらも捕まるな」


708 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:06:22.94 ID:dz58NyyH0
スタン「むしろ得だとは思わないか?俺は表で罰せられる分、ただの犯罪者になるだけだ」

黒子「・・・中々あざといですわね」

スタン「だが、これが一番の解決策なんだ」

削板「・・・悪いな、お前は表で相当バッシングを受けることになるが・・・」

スタン「構わないさ、それで変われるなら安いもんだ」

黒子「では行きましょう・・・私達は、表の対処をしますの」

スタン「いいのか?まだ垣根たちは交戦しているようだぞ」

削板「じきに終わるだろうさ」

削板がくるりと背を向ける

その頭にあるハチマキがなびく光景が、まるで何かの漫画のようだった

削板「じゃ、俺達は一足先に闇とはおさらばかな・・・」

黒子「・・・事後の整頓は大変ですの」

削板「風紀委員と警備員がお冠だろうがな」


削板「ま・・・平和的な解決をしよう、表立ったところでは」



709 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:11:45.36 ID:dz58NyyH0

垣根「・・・いってぇいってぇ」

小鳥遊「・・・な、なんでてめぇ・・・無事なんだ!?」

垣根「こんな爆弾なんかで死んでたら今頃俺は天国にいるぜ」

ケラケラと笑いながら、垣根が翼を広げる

それらは全て、仲間を守っていたはずだ

小鳥遊「・・・未元物質を空気中に撒いたのか・・・!?」

垣根「・・・そんなことはどうでもいいだろ・・・そうだな、風と熱、衝撃の三つをクリアすれば爆弾なんて怖くもないんだよ」

フレンダ「・・・」

フレンダが再び爆弾を手にする

だが、その首筋にゴーグル男が主刀を喰らわせた

フレンダ「っ・・・」

ぐらり、と揺れて倒れた体をゴーグル男が優しく支える

小鳥遊「てめぇ・・・」


710 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:15:55.78 ID:dz58NyyH0
ゴーグル「・・・卑怯な人間ですね」

垣根「他人の思考を停止すれば、自分が憎く思われることは無い」

ゴーグル「・・・自分の操り人形を作って、自分の思い通りにする」

垣根「・・・はん、軟弱でクズみてぇな能力だな」

小鳥遊「うるせぇ・・・」

小鳥遊が傷だらけの体を無理矢理起こす

血があちこちから噴出しているが、それらを全く気にしていないようだ

小鳥遊「クソ・・・黙れよ、てめぇらみたいな甘いことを・・・」

垣根「甘いか・・・ならてめぇは自分が辛くて悲劇な人生を歩んでるとでも思ってるのか?」

小鳥遊「俺の人生は悲劇だ!!だから表も裏も悲劇に巻き込んでやるんだよ!!」

拳銃を構え、小鳥遊が叫ぶ

もはや冷静を繕うことも無かった


711 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:20:01.29 ID:dz58NyyH0
小鳥遊「てめぇらがとやかく言えることじゃねぇんだよ!!」

パンパン、と何度も音が鳴る

狙いを定めることも無く、ただ怒りに任せて引き金を引く

そんな人間の放った弾丸が、誰かに当たることはない

垣根が翼で打ち落としているためだ

垣根「・・・心底ムカつく野郎だ」

小鳥遊「来るんじゃねぇよ!!」

心理定規に銃口を向け、引き金を引く

その銃弾も、垣根によって呆気なく地面に叩きつけられる

垣根「・・・てめぇは死刑なんだよ」

小鳥遊「クソ!!泥の中にいたお前達が・・・どうしてそうやって表の世界に戻れるんだよ!?」

垣根「泥の中から太陽は見えなかったか?寂しいヤツだな」

小鳥遊「うるせぇんだよ!!!」

小鳥遊が拳銃を投げ出し、垣根に突っ込んでくる

その右足を、垣根の翼が貫いた

小鳥遊「ぐぁぁっ!!」


712 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:23:57.72 ID:dz58NyyH0
垣根「・・・てめぇには分からないさ、俺達がどれほど足掻いたか」

垣根がゆっくりと歩く

その足音が、小鳥遊の鼓動と重なる

どんどんと、それは速さを増していくのだ

垣根「普通の友達と笑っていても・・・その日常を味わってよかったのかと後悔する」

垣根「・・・時々夢で、人を殺す夢を見る」

垣根「こうやって暗部に帰ってきたら・・・懐かしさを感じてしまう」

垣根「・・・誰かが死ぬのを見ても・・・悲しめない」

小鳥遊の正面に、垣根が立ちふさがる

彼の体が、小鳥遊には巨人にさえ見えた

垣根「・・・そんな俺達の足掻いた日々を・・・甘かったなんて言うな」

小鳥遊「は・・・ははは!!見ろよ、やっぱりてめぇらは化け物だ!!」

垣根「あぁ・・・化け物だ、人殺しのろくでなしだ」

垣根が小鳥遊の顎を蹴り上げる



垣根「・・・だがな、そんなろくでなしを・・・友達と言ってくれたヤツらがいるんだよ」



713 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/12(土) 21:28:18.26 ID:dz58NyyH0
今日はここまで

サトリナのブログ、可愛いよ

筋肉動画はこちら

ジョニー・ジャクソン

ビルダーの中でも屈指の筋力を持つ彼は、リフターとしても活躍してます

若干フレックスに似てる気がしますね

http://www.youtube.com/watch?v=e9_qLd2wpKk  

にしても、黒人はみんなダンス好きなんですね

リズム感が素晴らしい

ではおやすみなさい



714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/12(土) 21:32:27.63 ID:AZs6zNuAO
垣根△
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/12(土) 21:38:08.56 ID:6HOsjkNgo
乙です
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 22:12:21.38 ID:MKIfN9m8o
乙なんだよ!
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 22:56:17.70 ID:KPJlqmxIO
乙乙乙
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県) [sage]:2011/11/13(日) 01:01:54.73 ID:rAYkfGT8o
ダブルオーツ
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/13(日) 02:32:06.71 ID:ErJLcuSko
いつもお疲れ様です、とミサカは>>1にエールを送ります。
720 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:43:10.96 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「ふざけたことを・・・」

垣根「・・・ふざけてなんかいねぇんだよ」

小鳥遊の顎に、もう一度垣根が蹴りを入れる

垣根「・・・俺達はな・・・みんなクズだ、人を殺し、闇を渡り・・・」

垣根「そんなクズが、表の世界で暮らすなんてたしかに馬鹿なのかもな」

心理「・・・垣根」

垣根「見てみろ、俺の目を・・・心理定規やゴーグル馬鹿の目を」

小鳥遊「・・・」

小鳥遊が横目でその場にいる人間の顔を見つめる

誰もが、どこか悲しそうな顔をしている

垣根「分かるか?俺達はみんな死んだ人間の目をしてやがる」

垣根が辛そうに呟く

表の世界にいくら馴染んだとしても、恐らく彼はその死んだ人間の瞳で無くなることはない

どこか悲しく、虚ろな瞳

垣根「・・・こんな目を見て、それでも普通に接してくれる人間がいるんだ」


721 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:43:54.59 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「何言ってやがる・・・てめぇらが表の人間とまともに関われるわけないんだよ!」

垣根「・・・そうかもしれないな」

小鳥遊の左手を踏み付けながら、垣根が睨みを効かせる

垣根「・・・それでも、俺は太陽を見たんだ」

小鳥遊「太陽だと!?真っ暗闇の中にいたお前みたいな人間が何を言ってやがる!」

垣根「・・・表の人間が・・・生きた人間の目をしてる人間が、見つめてるのと同じ空だ」

小鳥遊「ふざけんな!てめぇは俺と同じ泥の中の人間だ!」

垣根「・・・泥の中・・・か、たしかに泥の中の人間だ」

足を左右に揺らしながら、垣根が笑う

垣根「・・・泥の中にいた人間が表を歩いたら・・・それだけで明るかった道が汚れちまう」

小鳥遊「そうだ!てめぇみたいな人間が・・・」

垣根「だったらなんだ!」

ガン、と垣根が小鳥遊のこめかみを殴りつける

小鳥遊「がっ・・・」

垣根「他人が・・・表の人間が俺達のせいで汚れる!?ナメんなよ、あの明るい世界で生きてる人間がそう簡単に汚れるかよ!」


722 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:44:35.54 ID:Q9QONdl20
憎しみと怒りを込めた瞳で、垣根が小鳥遊を睨みつける

垣根「俺達が簡単に表に戻れないのと同じだ!表の人間が簡単に裏に堕ちるわけがないんだ!」

ガツン、と小鳥遊の頭から音がした

殴られたのだ、小鳥遊の視界が不気味なほどに揺れる

垣根「羨ましかった、妬ましかった!表の世界を眩しがらずに歩ける人間が!」

小鳥遊「・・・てめぇは・・・泥の中がお似合いなんだよ!真っ暗闇で一生這いつくばって光を探してろ・・・」

垣根「あぁそれでも構わねぇ!だがな・・・だがな!そこまで苦しんだ俺達を甘いなんてナメた言葉で片付けてんじゃねぇよ!」

小鳥遊「甘いんだよ!てめぇらは吐き気がするほど甘いんだよ!そうやって・・・」

垣根「光を求めて何が悪い!?表のヤツらが俺を友達と呼んでくれたんだ!」

垣根が小鳥遊の髪を掴む

何度も何度も、地面に彼の頭をぶつける

額から血が流れ出しても、垣根は手を止めない

垣根「見てみろ!こんな最低な人間なんだ!人を傷つけることに抵抗なんかねぇ!」

麦野「垣根!もういい・・・」

垣根「こんな人間を!あいつらは名前で呼んでくれたんだ!そこに気遣いなんてなかったんだよ!」


723 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:45:17.70 ID:Q9QONdl20
ゴーグル「垣根さん・・・」

垣根「甘いだと!?甘えて何が悪いんだよ!」

小鳥遊「がはっ・・・」

垣根「あいつらの優しさに・・・あいつらの温もりに甘えて悪いのか!?」

小鳥遊「くそ・・・てめぇは何も分かっちゃいねぇ・・・」

垣根「分かりたくないんだよ!てめぇのそんな理屈なんか知りたくねぇ!」

床のタイルが真っ赤に染まっていく

垣根「お前の言い分は確かだろうな!表の人間に憧れたところでどうせ俺達は死んだような人間なんだ!」

垣根の頬に何か熱いものが伝う

死んだはずの瞳から、生きた温もりを持った何かが

垣根「だがな!それでも俺はそんな理屈に歯向かいたいんだよ!」

麦野「垣根!それ以上やったらそいつ・・・」

垣根「俺はあいつらが好きなんだ!学校に行って・・・友達とコンビニでたむろって!」

ガンガン、という鈍い音が響く

小鳥遊の口からうめき声が溢れる


724 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:45:45.96 ID:Q9QONdl20
垣根「そんな・・・そんな日常を求めて、やっと手にしたんだ!」

小鳥遊「・・・手にしただと・・・?ふざけやがって!」

垣根「手にしたんだ!俺はやっと・・・やっと手にしたんだよ!」

小鳥遊「てめぇみたいなクソッタレが何を出来る!表の人間なんかとてめぇは関われない!」

垣根「そんなてめぇの理屈なんて関係ないんだよ!」

小鳥遊「ははは!暗部のルールを忘れたか垣根帝督!暗部に堕ちた人間はもう元には戻れないんだよ!」

垣根「戻れないさ・・・それでも俺は戻ってみたいんだ!」

小鳥遊「無理だな!てめぇはずーっと暗部の泥の中なんだよ!」

垣根「上等じゃねぇか!」

垣根の拳が、小鳥遊の頬に当たる

垣根「あぁそうだ・・・俺はな・・・心理定規がいる場所が好きなんだよ・・・」

心理「!」

垣根「そしてその心理定規が一番輝くのは表の世界だ!光の当たる・・・スポットライトの当たる世界なんだよ!」

小鳥遊「そんなくだらねぇ理由でてめぇは暗部から表に戻ろうなんて言ってたのかよ!つまんねぇ!」


725 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:46:16.99 ID:Q9QONdl20
垣根「つまんねぇだろうな!あぁそうだ三文芝居だ!」

小鳥遊「コメディーだクソが!」

垣根「だったら最高のハッピーエンドだろうよ!」

胸倉を掴み、小鳥遊の顔を自分の顔の高さに持っていく

垣根「・・・てめぇは今も死んだ目をしてやがる」

小鳥遊「お前もだ・・・表の世界に戻ったつもりでも・・・てめぇの心は死んでんだ・・・」

垣根「・・・死んでなんかねぇ、眠ってただけだ」

小鳥遊「・・・甘いことばっか言いやがって・・・」

垣根「・・・誰かの温もりを得て・・・表の世界で光を浴びて・・・やっと心を取り戻した」

小鳥遊「・・・ちくしょう・・・何が・・・」

垣根「羨ましいか?妬ましいか?悔しいか?」

小鳥遊「吐き気がするんだよ!」

動かない腕に力を入れながら、小鳥遊が叫ぶ

小鳥遊「てめぇみたいな真っ黒の人間が・・・真っ白な世界で何を出来る!?」

垣根「・・・真っ白な世界なんかじゃないさ」


726 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:46:50.03 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「あぁ・・・?」

垣根「・・・表の世界にだって、なんだかんだ暗い部分だってあるんだ」

小鳥遊「はっ・・・ここの黒さに比べてみろ!そんなもん暗い内には入らないんだよ!」

垣根「・・・それでも、真っ白なんかじゃねぇ」

翼を広げ、垣根が力を込める

彼の持てる限りの全力を

垣根「・・・俺達は暗部の人間だ・・・でもな、それはどうだっていい」

不思議な力が、小鳥遊の体を弾き飛ばす

垣根「・・・表にだって悲劇なんてあるんだ、俺達はたまたま悲劇にのめり込んだだけだった」

悲しそうに笑いながら、垣根が地面に落ちていた小鳥遊の拳銃を握る

垣根「・・・人間の命は安い、ここに入ってる一発の弾丸の値段と同じだ」

パン、とそれを床に向けて撃つ

垣根「・・・これで一人、俺は死んだ」

続けて何度も垣根が撃つ

垣根「・・・心理定規もゴーグル馬鹿も・・・フレンダも麦野も、みんな死んだ」


727 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:47:29.03 ID:Q9QONdl20
地面には放たれた弾丸が突き刺さっている

垣根「見ろよ、これが俺達の墓標だ・・・暗部にいた俺達の、な」

拳銃を投げ捨て、もう一度垣根が小鳥遊に近づく

垣根「暗部の俺達は今死んだ・・・なら、これからは表で生きていく」

小鳥遊「ふざけんな・・・」

垣根「・・・表の世界は眩しいな・・・太陽も眩しい、みんなの笑顔が眩しい」

小鳥遊「表の世界がてめぇを認めるわけがあるか!表の世界はてめぇを憎んでんだよ!」

垣根「・・・」

小鳥遊「神様だっててめぇみたいなクソッタレはお断りだろうぜ!」

垣根「神様だと?んなもんこっちもお断りだ」

小鳥遊を見下ろし、垣根が笑う

垣根「・・・俺の世界に神様なんていらねぇ」

小鳥遊「・・・クソ・・・」

垣根「この俺の世界を愛してくれるのは心理定規だけでいいんだよ」


728 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:48:07.95 ID:Q9QONdl20
心理「垣根・・・どうするの?」

垣根「・・・本当なら殺したいな」

小鳥遊「だったらそうしろ!ここで俺を殺せば、てめぇが暗部の人間だって証明になる!」

垣根「・・・」

小鳥遊「見逃すか!?やってみろ、だったら俺はずっとてめぇの背中を追い掛けてやる!」

下品な笑みを浮かべ、小鳥遊が唾を吐く

小鳥遊「てめぇをいつまでも追い掛けて、いずれはまた暗闇に引っ張ってやる!」

垣根「だったらてめぇも表の世界に来なくちゃならねぇな」

小鳥遊「覚悟しとけよ!てめぇの影を這いずり回って、地獄の底に引きずり込んでやるからな!」

垣根「影?んなもん有り得ないな」

小鳥遊の前で、垣根が翼を広げる

彼が持っている、誰かを守るための力を

垣根「俺は心理定規と空を飛んでるんだ、地面に這いつくばってたら捕まえられないな」

小鳥遊「・・・!」


729 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:48:37.89 ID:Q9QONdl20
垣根「・・・ま、てめぇは一生這いつくばってろ」

垣根がしゃがみ込み、中指を立てる

垣根「・・・俺はもう二度と、地面に倒れ込んだりはしない」

小鳥遊「・・・」

垣根「・・・元暗部の下っ端に連絡だ、こいつらを回収する」

心理「気は済んだの?」

垣根「あぁ・・・」

ゴーグル「相変わらず・・・心理定規さんを大切にしてますね」

麦野「吐き気がするくらい甘いわ・・・」

垣根「うるせぇ・・・浜面達も叩き起こすぞ」

垣根が浜面の頬を叩く

だが意識を失っているため、そんな簡単には起きない

心理「はぁ・・・フレンダは?」

ゴーグル「まだ意識がないっすね・・・ちょっと強く当てすぎたかな」

麦野「起きたら文句言われるわよ」

ゴーグル「う・・・まぁ覚悟しときますよ」


730 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:49:12.34 ID:Q9QONdl20
垣根「・・・さて、これで一件落着ってことか」

小鳥遊「・・・は、ははは!」

垣根「あぁ?何笑ってんだよ、まさか気でも狂ったか」

小鳥遊「・・・さっき風間が外部と連絡を取ったんだよ・・・!」

垣根「だから?」

小鳥遊「クズが・・・お前らは俺達の計画の導火線に火をつけちまった!」

垣根「何を言ってる・・・」

小鳥遊「今頃一方通行達は爆弾テロを警戒して学舎の園やそこらの周辺を捜索してるだろうな!」

心理「・・・それがあなた達のもう一つの計画でしょ」

小鳥遊「あぁそれもあったな!だが俺達と協力関係にある組織はもう一つだけ、最後に保険を取ってたんだよ!」

垣根「何!?」

小鳥遊「ははは!もう遅い、そろそろ計画は実行だ!」

小鳥遊が垣根に中指を立てて向ける

小鳥遊「火をつけちまった、他でもないお前達がなぁ!」



731 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:49:59.31 ID:Q9QONdl20


一方「ちっ・・・あと2時間もねェな」

結標「あら・・・それだけあるなら十分じゃないかしら」

一方「アホか・・・解体なんて簡単じゃねェンだよ」

結標「・・・そうかしら」

一方「・・・とりあえず、ゴミ捨て場に行くぞ」

二人が原子力関係の研究所にたどり着いたのは午後の4時

爆破を行う時間まで、もう少しゆとりがある

結標「・・・あら?あれは誰かしら」

一方「!」

遠くに人影を見つけて、二人が咄嗟に物陰に隠れる

一方「ちっ・・・研究員か」

結標「それにしてはおかしな格好じゃない?」

一方「・・・」

その人影は、たしかにおかしな格好をしていた


732 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:50:36.76 ID:Q9QONdl20
普通、研究員ならば清潔感のある白を基調とした服を着ているはずだ

だがその人影はそんな色の服を着てはいなかった

むしろその逆で、真っ黒な服装だった

まるであまり目立たないようにしているような格好

普通ならそこまで目立たない、しかし今はあまりにも怪しく見える格好

一方「・・・研究員じゃない人間がなンでここにいるンだよ」

結標「あら・・・可能性なんて二つしかないんじゃない?」

一方「・・・一つは研究所のデータを盗むために来た外部の人間」

結標「でもこんな明るい時間にそんなこと、すると思う?」

一方「まずしねェだろォな」

結標「だとしたら、残る可能性はたった一つ」

一方「・・・あいつが、爆弾を仕掛けた人間」

結標「でもどうしてまた戻ってきたのかしら」

一方「今仕掛けに来たってわけじゃなさそォだからな」

結標「・・・どう思う?」


733 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:51:33.40 ID:Q9QONdl20
一方「・・・起爆させに来たンじゃねェか」

結標「なんですって?」

一方「・・・遠くからの遠隔操作はここじゃ無理だ」

一方通行が辺りを見渡す

どこかの研究所にデータを送るためか、電波を発生する装置がたくさん並んでいる

もちろん、電波など簡単に混線することはない

しかし爆弾などという繊細なものを操るときは万が一を考えるだろう

そういう理由から、恐らく設置された爆弾は時限式と思われる

勝手にスイッチが時間で入るならば、わざわざ電波を考える必要はない

一方「・・・手動で押しに来るとは中々勇気のあるヤツだな」

結標「スイッチを押して、少ししてから爆破されるんじゃない?」

一方「・・・この近くには核シェルターがあるからな、そこに逃げ込めば一先ず問題ねェ」

結標「なるほどね・・・だったら、彼は今からスイッチを押しに行くと」

一方「・・・予定を早めたンだな」



734 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:52:11.61 ID:Q9QONdl20
結標「行くわよ」

一方「・・・あァ」

二人が人影を追い掛ける

もはや、姿を隠すことに気を遣ってはいられない

一刻も早く人影に追いつく必要があった

一方「・・・!おい、立ち止まった」

結標「・・・何か取り出したわね」

人影が辺りをキョロキョロと見渡している

二人からは、その顔は見えない

体格からすると男だろう

一方「・・・おい」

「!」

一方通行がその人影に一歩近づく

「な、なんだ!?」

一方「そいつよォ・・・爆弾だろ」


735 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:52:56.29 ID:Q9QONdl20
「!お前まさか一方通行か・・・!?」

一方「今更気づいたのかよ」

「クソ!」

顔を見ると、やはりそれは男だった

険しい表情に、死んだ人間のような目

暗部の人間特有のものだ

その男が、目の前にある爆弾のスイッチを押した

一方「!てめェ!」

「そこをどけ!」

男が一方通行を跳ね退けようとする

だが、それは叶わなかった

一方通行がその一瞬前にチョーカーのスイッチを入れたのだ

一方通行の体に触れようとした男の手は、おかしな方向に曲がった

「がぁぁっ!」

一方「・・・ナメやがって・・・こいつの爆破まであとどれくらいあるンだ」


736 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:53:39.63 ID:Q9QONdl20
「あと5分もすれば・・・無理矢理壊そうなんてするなよ!そもそもこれだけは外部からの刺激に敏感なようにしてんだ!」

一方「ちっ・・・無理矢理破壊は出来ない訳か」

一方通行が辺りを見渡す

原子力関係の建物

そこにもしも引火すればどうなるか

原子力が撒き散らされれば、もちろん言うまでもない結果になる

では仮に撒き散らされなかったら

それでも人間は不安というものを抱えてしまう

風評とは恐ろしいものなのだ

誰かがあらぬ嘘をついたとしても、それがいつしか真実として伝わってしまう

原子力というもの自体が化け物なのだから、無理はない

一方「・・・残りの時間で対処法を考えるか」

結標「あら・・・対処法なんてないんじゃない?」

一方「考えるンだよ」

一方通行がもう一度辺りを見渡す


737 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:54:37.98 ID:Q9QONdl20
爆弾のある位置から建物まではわずか20m程度しかない

ゴミ捨て場をわざわざ建物から遠い場所に設置するわけはない

当然といえば当然であるその構造が今はひどく憎い

一方(・・・爆発しちまえば、爆風や炎が建物へ向かう)

頭を指で叩きながら、一方通行が考える

その全てを建物に向かわせなければ問題ない

だがそんなことが可能なわけがないのだ

風なんていうものを操れる能力者は学園都市にもあまりいない

更に、そこに炎や衝撃も加わるのだ

多彩な能力者なんていない、能力者につき能力は一つ

全てを司る能力者は

一方「・・・いや、いるじゃねェか・・・ここに」

ニヤリ、と一方通行が笑う

彼の能力は「触れた物のベクトルを操作すること」だ

向きを全て建物から遠のければ、建物には傷一つつかない


738 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:55:32.98 ID:Q9QONdl20
問題なのは「触れ」なければならないことだ

もちろん彼は普通の青年である

手が伸びる訳でもなければ、瞬間移動できる訳でもない

全てのベクトルに触れられなければ意味がない

自分に掛かって来るベクトルを反射するだけでは、自分以外が傷ついてしまう

一方「・・・広げりゃいいだろ」

皮膚、というよりも体の一部を

いや、その方法ならわざわざベクトルを操る必要さえないのかもしれない

圧倒的な威力で全てを掻き消してしまえばいい

風に対抗するほどの衝撃を

炎など打ち消すほどの突風を

衝撃など緩和してしまう吸収剤を

その全てを賄えるものを、彼は手にしている

爆弾の表示によれば、もうすぐ爆発するらしい


739 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:56:10.56 ID:Q9QONdl20
一方「結標、その男を連れて離れてろ」

結標「あら・・・高見の見物しろって?」

一方「てめェまで守り切れねェンだよ」

結標「・・・何か方法があるの?」

「無理だ!お前の能力でも、触れなければ操れない!」

一方「ゴチャゴチャうるせェンだよ」

一方通行が男の肩に足を当てる

そう、端から見れば本当に当てただけに見える

しかし男の肩は一瞬で外れてしまう

「ぐぁぁぁぁ!」

一方「はン・・・大人しくしてろ、こンな能力者様がここにいンだ」

両手を広げ、一方通行が笑う

結標「なら・・・任せたわよ」

一方「あァ」


740 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:56:52.99 ID:Q9QONdl20
結標が男と一緒に座標移動する

残されたのは一方通行だけだ

一度、建物のほうを振り返る

その中にいるであろう研究員は、まさかすぐ近くに爆弾があるなんて思ってもいないのだろう

一方「・・・関係ない人間まで巻き込ンで堪るかよ」

眉をひそめてから、一方通行が目を閉じる

ザワリ、と周りの空気が震える

彼が操るのは「ベクトルの向き」だ

それはかつて、科学側のものに限る能力だった

それも今では違う

魔術に触れたことにより、両方のベクトルを操れるようになったのだ

一方「矛盾した二つの力を自由に操れる・・・か、悪くねェ」

楽しそうに笑ってから、一方通行が翼を生み出す

垣根の物とは違う、真っ黒な翼を

まるで闇の怪物の象徴だった


741 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:57:39.57 ID:Q9QONdl20
垣根の翼が「天使」の物だとすれば、一方通行のそれは「悪魔」の物だ

見る者を恐れさせる翼

その色は、彼の根本にある色だ

真っ暗闇の中で、彼が見つけたのはただの「黒」だったのだから

一方「・・・さて、始めてやるか」

翼の先まで力を入れ、一方通行が構える

シンとした空気が少し息苦しい

彼がもしも失敗してしまえば、学園都市は滅びてしまうのだ

彼に学園都市なんて大きな物は背負いきれない

正直な話をすれば、学園都市なんて物を守る義理は彼にないのだ

そんな物のために、彼は命を張ることは出来ない

一方(でもな・・・学園都市には番外個体や打ち止めがいるンだ)

一方(学園都市が無くなればあいつらだっていなくなる)

歯を食いしばり、来たる衝撃に備える


742 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:58:38.70 ID:Q9QONdl20
一方(あァそォだ・・・学園都市なンて背負えるわけがねェ、俺の背中はあまりにちっぽけだ)

カチッ、と変な音がした

爆弾が一瞬にして弾ける

一方(だがな・・・こンな俺のちっぽけな背中に、あいつら二人は縋ってくれてンだよ!)

凄まじい爆音と共に、衝撃や熱風、火柱が一方通行目掛けて進んでくる

一方「あいつらのためなら俺は命なンてくれてやる!」

翼を広げ、全ての衝撃に触れる

翼は100枚以上もあるように見えた

垣根の物と違い、洗練されているイメージはない

だが今は洗練されている必要はなかった

ただ、触れさえすればいいのだから

一方(翼に当たったベクトルを全て反射してやる!)

熱風のベクトルを反射する

全ての翼に神経を集中させる


743 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 16:59:33.01 ID:Q9QONdl20
今まで行ったことがないほどの演算処理を一瞬で行う

体の中を、気味の悪い痛みが走る

かつて魔術を使った時に覚えたのと同じ感覚だ

一方(だからなンだよ・・・!)

自分一人が血まみれになって、大切な人を救えるのならば

一方通行はそちらを選ぶ

例え、二度と表の世界であの二人と笑い合えなくても

一方(あァそォだ・・・関係ないンだ!)

暗部と表なんていうつまらない垣根は関係ない

彼が守りたい人は、変わらないのだ

彼がどこにいようと、あの二人は彼の心の中にあり続けるのだから

一方「・・・!」

ピーッ、という聞き覚えのある音が聞こえた

それは首にあるチョーカーから発せられた


744 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:00:09.62 ID:Q9QONdl20
かつて木原数多と戦った時にも、彼を絶望させた音だ

チョーカーの電池が切れたのだ

それが切れれば、彼は最早普通の人間以下になってしまう

能力が使えないどころか、まともな思考さえ出来なくなるのだから

体がグラリと揺れる

翼が、凄まじい衝撃に圧されていく

一方(・・・ふざけンな・・・)

だが、彼はなぜか意識を保っていた

科学のベクトルを操ることは、今の彼には出来ない

ならば全く別の方式のベクトルは操れる

一方(知ったことかよ・・・俺は背負ってるンだ・・・あの二人を!)

重すぎて押し潰されそうになったこともある

大きすぎて放しそうになったこともある

もしかしたら、守り切ることなんて出来ないかもしれない


745 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:00:50.91 ID:Q9QONdl20
一方(ンなこと知らねェンだよ!)

未来には失ってしまうかもしれない

それでも、今はまだ彼の背中に乗っている

不器用な彼に温もりを教えてくれたのは誰だったか

一方「おォォォォォォ!」

暗部の化け物だった彼が誰かを守るなんて、美談にも程がある

しかし、彼にはその美談を貫く覚悟があった

例え何度闇に引きずり込まれようと、彼はあの二人を守るのだ

一方「ふざけンじゃねェ・・・俺はなァ・・・!」

バキバキ、翼が音を立てる

いくつもの翼が一瞬で消え去る

代わりに現れたのは、たった二枚の白い翼だった

垣根のそれと同じ色の、しかしそれよりどこか暖かさを与える白い翼

誰かを殺すためでも、誰かを傷つけるためでもない


746 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:01:30.60 ID:Q9QONdl20
一方「あの二人だけは守ってやンだよ!」

ただ、守るための力

先程まで圧されていたはずの一方通行が、少しずつ全てのベクトルを制御する

いや、制御するのではなく「破壊」しているのだ

向きを操って、被害を無くすのではない

そんな向きなど消えうせてしまうほどの膨大なベクトルをぶつける

一方「あァァァァァァ!」

一方通行の咆哮と共に、翼が輝き始める

頭の上には、真っ白な輪が現れた

垣根の輪よりも、よりはっきりとしたものが

空を舞う羽の一枚一枚が、凄まじいベクトルを放つ

目には見えない「ベクトル」という概念の世界

向きという、この世における有機の全て

彼はそれを、力をもって押さえ付けようとしている

この世の理を、自らの力だけで


747 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:02:09.93 ID:Q9QONdl20
熱風のベクトルが少しずつ破壊されていく

火のベクトルも消えていく

そこにあったベクトルは、全て崩れていく

おかしな光景だった

火が力を増そうとする「事象」のベクトルさえが操られているように思える

それは科学的ではない

力を増すための「推進力」や「燃焼」のベクトルは存在している

だが「力を増そうとする」などという物に科学的なベクトルは存在していない

時間を戻せないのと同じ原理だ

そんな有り得ないことが、わずかながら一方通行の能力によって引き起こされている

キラキラと光を反射する翼が、より一層強い輝きを放った

バキン、という音がする

彼の翼の奥に、何かが写る

美しいそれは、この世の言葉では言い表せないものだった


748 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:02:45.80 ID:Q9QONdl20
垣根の翼と同じように、それは「形容出来ない」ものなのだ

この世のあらゆる言葉など意味がない

まるで「今の時代」のフォーマットでは表せないものであるかのような光景

一方「俺はァァァ!」

一方通行の翼が力強く羽ばたいた

凄まじい量のベクトルが、爆発によって生まれたベクトルを目掛けて進む

熱、風、衝撃波、音、光

全てのベクトルだけを貫いた一方通行の「能力」

周りに被害は一切出ていない

ただ、ベクトルという架空の空論だけの世界で彼は争った

そして、勝利を収めてしまった

一方「あいつらを守るンだよ!クズでも化け物でも構わねェ!」

建物に被害は全く出ていない

言葉通り、本当の「無傷」

一方「俺はあいつらを守れるなら・・・化け物にでも何にでもなってやる」


749 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:03:15.59 ID:Q9QONdl20
翼を空中へと散らす

光を反射したそれらは、まるで雪のように見えた

そっと地面に降り立った一方通行が、体を崩す

チョーカーの電池がないため、彼は今話すことさえ出来ない

一方「・・・」

ぼーっと、ただ地面を見つめる

やがて、彼が拳を握り


立ち上がった

チョーカーの電池が無ければ、動くことが出来ないはずの彼が

一方「・・・やっぱり・・・無理矢理あっちの力を・・・動力に使うのはキツイか・・・」

ゆらゆらと体を揺らしながら、一方通行がポケットから何かを取り出す

チョーカーの電池を充電するための機材だ

今、彼は「非科学的」な物を操って一時的に動いている

一方「・・・」


750 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:03:51.37 ID:Q9QONdl20
建物の外にあるプラグに、そっとコードを差し込む

一回では綺麗に差し込めない

何度かして、ようやく成功した

一方(・・・AIMの力を意識的に操れれば・・・電池が切れても問題なさそうだが・・・)

充電を開始したため、体がすっと楽になる

一方(無理だな・・・本格的にオカルトに手を出してる訳じゃねェ、今だって偶然成功しただけだ)

無意識の内に、少しだけ非科学的なベクトルを操ったに過ぎない

こんな綱渡りに命を懸けることは無理だ

結標「あらあら・・・学園都市を救ったダークヒーローが充電?」

一方「あァ?てめェなンでいるンだよ」

結標の声は後ろから聞こえた

充電しているコードが抜けないように、ゆっくりと一方通行が振り返る

彼女は爆破を企てた男の首を掴みながら歩いてきていた

結標「あなただったらどうせ成功させるでしょうから、近くで見物してたのよ」


751 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:04:20.52 ID:Q9QONdl20
一方「ちっ・・・見物料でも取るか」

結標「やめてよ、この仕事はタダ働きなんだから」

「あ・・・あ・・・」

一方「あァ?なンだそいつ、ブルってンのか」

結標「あなたのあの力を見た瞬間に腰を抜かしてね・・・」

一方「もしかしてパンツの中までぐっしょりなンじゃねェか」

結標「そうかもしれないわね」

結標が馬鹿にしたように男を見下ろす

そんなことを言われても言い返さない辺り、相当怯えているのだろう

結標「全く・・・私もちょっと驚いたわ」

一方「何がだよ」

結標「あの能力・・・何なの?」

一方「・・・守る力だ、だから簡単には見せられねェ」

結標「は?」


752 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:04:48.78 ID:Q9QONdl20
意味が分からない、といった顔で結標が首を捻る

一方「・・・終わったな」

空を見上げ、一方通行がため息をつく

彼の携帯に着信が入った

土御門からだ

一方「なンだよ」

土御門『・・・こっちは全て見つけだした、1、7、18学区の爆弾・・・全て解体し終わった』

一方「でも、あと二つどこかにか仕掛けられている・・・違うか」

土御門『あぁ、それで・・・』

一方「一つなら俺の目の前にある、もォ起爆することはねェけどな」

土御門『!見つけたのか!?』

一方「全く、あまりにも初歩的な確認を忘れちまってたな」

土御門『全くだよ・・・そこに爆弾は一つだけだな?』

一方「後の一つはどォせ垣根達のいるビルにでも仕掛けてンだろ」


753 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:05:19.47 ID:Q9QONdl20
土御門『・・・口封じか』

一方「それが一番手っ取り早いからな」

土御門『さて・・・どうしたものか』

一方「知るかよ・・・俺はこれから何をすればいい」

土御門『そうだな、爆弾の解体は終わったんだし・・・敵のトドメは垣根に任せておけばいいさ』

一方「あァ・・・じゃあな」

ピッ、と携帯を鳴らしてそれをポケットにしまう

結標「どうだった?」

一方「他の爆弾は全部解体したそォだ」

結標「あら、よかったじゃないの」

一方「・・・これでハッピーエンドってわけだ」

ニヤニヤと笑いながら、一方通行が男を見つめる

「ひ・・・」

一方「こいつはどォする?俺は結構頭に来てるンだけどよォ」


754 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:06:13.38 ID:Q9QONdl20
結標「私も割と虐めてあげたいわ」

ジリジリとにじり寄る二人から、少しでも遠ざかろうと男が足を動かす

無情にも彼の後ろには壁があった

一方「さァて・・・どォするかな」

「あ・・・あぁぁ!」

結標「やめてよ、楽しむ前に発狂しちゃったら意味がないわ・・・」

男の頬に指をなぞらせながら結標が笑う

ダラダラと流れる男の冷や汗が、なんとも言えない滑稽な感触を生み出している

男が何かを叫ぼうとした時、突然ピリリ、という電子音が響いた

どうやら携帯の着信音のようだ

一方「あァ?こいつの携帯かよ」

男のポケットに手を突っ込み、携帯を奪う

それを開いた一方通行が愉快そうに笑う

結標「どうしたの?まさか知り合いなわけないわよね」


755 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:06:52.28 ID:Q9QONdl20
一方「見てみろ、こんな相手から掛かってきやがった」

一方通行が携帯の画面を結標に差し出す

そこにあった名前は



土御門「ったく・・・この後はどうすればいいのか」

番外「ミサカも考えてるけど全く思いつかないや」

土御門「警備員や風紀委員に差し出すことなんて出来ない」

番外「でも相手は風紀委員の支部を襲撃したんだよ?建前だけでも犯人を作らなきゃ」

土御門「ちっ・・・相手にそんなことをしてくれるヤツが・・・」

番外「あ、ちょっと待って」

番外個体の携帯に着信が入った

削板からの着信だった

番外「はいはい」

削板『番外個体か!?今どこにいる!?』

番外「悪いけどそのビルからはもう出てるよ」


756 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:07:23.09 ID:Q9QONdl20
削板『よし!俺達と同じだ・・・』

番外「あり?もしかして削板もヤツらが爆破テロを起こすことに気づいたの?」

削板『それはそっちが上手くやってくれてるんじゃないか?ビルには一つ爆弾があったけど、そいつは俺が壊しといた』

番外「おー、聞いてよ土御門、残り一つの爆弾は削板が処理してくれたって」

土御門「そりゃ何よりだ!」

削板『・・・あと、表に言い訳をするための犯人も仕立て上げられる』

番外「どういうこと?」

削板『敵の一員だった水素系の能力者が、自分を表への建前に使っていいって言ってきたんだ』

番外「水素系なら爆発も起こせる・・・爆弾の残骸は後で仕掛けた、でオーケーだね」

削板『もちろん、風紀委員や警備員も簡単には納得しないだろうが・・・』

番外「こっちには統括理事会と繋がってる土御門がいるから、上手くやるよ」

削板『頼む、今からそっちに向かうから・・・どこにいるんだ?』

番外「学舎の園だよ、入るのは出来る限り目立たないようにね」

削板『こっちには黒子がいる、学舎の園の住人だぜ?』

番外「そりゃ便利なパスポートだね」


757 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:08:04.00 ID:Q9QONdl20
削板『とびっきり可愛い写真付きだ!』

番外「惚気はいいから・・・じゃ、早く来てよね」

削板『あぁ』

会話がそこで終わる

番外「何もかもが上手くいったよ、土御門」

土御門「・・・どういうことだ」

番外「敵の一人が、表の建前に自分を使っていいって言ったらしいよ」

土御門「・・・表で裁かれれば、少なくとも闇に葬られることはないからな」

番外「相手にもメリットはあるってわけだ」

土御門「だがそいつはありがたい、利用させてもらうぞ」

番外「・・・じゃ、ミサカ達はこれで仕事もおしまいってとこかな」

土御門「・・・あとは面倒な雑用が待ってるぞ」

番外「・・・協力くらいならしてあげてもいいけど」

土御門「頼む」



758 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:08:46.03 ID:Q9QONdl20


垣根「・・・何を企んでやがる」

小鳥遊「ははは・・・知るかよ、爆破テロ班は俺達と必要以上の連絡は取ってない」

地面に倒れながら、小鳥遊が笑う

小鳥遊「今頃学園都市を揺るがす大きなテロを起こしてるはずだ」

垣根「何?」

心理「だったらここに騒ぎが来てもおかしくないわよ?」

小鳥遊「そんな楽観視してていいのか!?下手をすれば学園都市の人間は全滅だ!」

ゴーグル「・・・面倒なヤツっすね」

フレンダを柱に寄り添わせた後、ゴーグル男が小鳥遊に近づく

筋力の増強された彼は、化け物並の力を手に入れている

それらを全て足に集中させ、小鳥遊の左足を砕く

小鳥遊「ぐぁぁぁっ!」

ゴーグル「ったく・・・そんな叫ばないで下さいよ、俺達は悪役じゃないんだから」

垣根「・・・残念だったな、お前達の計画なんて全部おじゃんだ」


759 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:09:39.60 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「ははは・・・本当にそうかな・・・?」

心理「・・・さっき、風間って男が外部と連絡を取っていたわ」

垣根「・・・分かってる」

小鳥遊「爆破を早めろ、と連絡をな・・・!」

垣根「・・・今頃表は大騒ぎってことか」

小鳥遊「あぁそうだ!俺があいつら全員、泥の中に引きずり込んでやる!」

垣根「・・・ナメた真似しやがって!てめぇがいくら足掻いても・・・」

小鳥遊「足掻く!?違うな!俺は表になんか戻るつもりはねぇんだよ!」

体のあちこちを砕かれながら、しかし小鳥遊は笑っていた

小鳥遊「チェスの盤と一緒だ!表の住人はしっかりと地に足つけて立ってやがる!」

麦野「・・・」

小鳥遊「裏を表にしてやれば・・・表をひっくり返してやれば、表に立ってたヤツらは全員地面を転げ回る!裏が表になれば表は裏になる!」

垣根「無理だな、だからお前達は表そのものを破壊しつくそうとした」

小鳥遊「ははは!愉快だろう!?表の人間が死んでいくのが見られるんだ!」


760 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:10:35.16 ID:Q9QONdl20
麦野「クズが・・・最低の人間だ」

小鳥遊「お前達だってそうだった!忘れてんじゃねぇよ大先輩!」

心理「忘れてなんかないわ、でも今は違うもの」

小鳥遊「違わねぇんだよ!てめぇらは所詮化け物だ!」

垣根「こりゃまた説教してやらなきゃいけないか?」

小鳥遊「この暗部にいる限り、お前達は表を救えない!今から表じゃ断末魔の演奏が始まるぞ!」

麦野「・・・ふざけないで」

小鳥遊「こんな所に戻って来なけりゃお前達は表を救えたのかもしれねぇな!でも結局てめぇらはここにいる!表なんて救えやしねぇんだ!」

ゴーグル「くそっ!」

小鳥遊「聞かせてやる!俺達の勝利の賛美歌をな!」

小鳥遊が携帯を取り出す

表示されている電話番号は、協力関係にあった組織の人間の物

小鳥遊「・・・ははは」

通話ボタンを押し、コールが始まった


761 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:11:03.02 ID:Q9QONdl20
ゴーグル「てめぇ!」

小鳥遊の背中に衝撃が走る

ゴーグル男が彼の背中を踏み付けたのだ

その拍子に、携帯のスピーカーボタンを押してしまう

だがそれには何の問題もない

むしろ、表の悲惨な状況をリアルタイムで垣根達に伝えられる

小鳥遊「!掛かったぜ・・・残念だったな!チェックメイトだ先輩!」

垣根「ふざけんな・・・」

小鳥遊「そっちはどうだ!?こっちはちょっとしくじったが・・・」

親しげに小鳥遊が相手に話し掛けた

きっと返ってくるのは、何度か電話で話したあの声だと思って

だが


一方『大成功だぜクソッタレが』

返ってきたのは、悪魔の声だった



762 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:21:01.80 ID:Q9QONdl20

垣根「・・・一方通行か・・・?」

一方『あァ?垣根もいンのかよ・・・スピーカーモードにでもしてンのか?』

心理「・・・その電話先にあなたがいるってことは・・・」

一方『残念だったな・・・爆破事件は全部解決だ、本当に全部な』

小鳥遊「・・・う・・・嘘だろ・・・」

そこに来て、初めて小鳥遊の顔から驕りが消えた

先ほどまで、自分達の計画にはまだ保険があった

だが今は違う

もう、彼らには何の方法もないのだ

逆転の方法は、存在などしていない

完全な敗北

それが、彼らの境遇だったのだ

小鳥遊「は・・・ははは!!なんなんだよお前達は!?」

狂ったように小鳥遊が叫ぶ

小鳥遊「くそ・・・化け物が!!俺達なんか比べ物にもならねぇ悲劇だ!!」


763 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:41:38.04 ID:Q9QONdl20
垣根「はぁ?何言ってやがる」

小鳥遊「お前達はどれほどの期間暗部と離れてた!?あぁ!?」

心理「・・・それが何よ」

小鳥遊「ははは!!ほら見ろ、てめぇらは長い間暗部と離れてたくせによ!!結局こうやって暗部のやり方を忘れちゃいねぇ!!」

ゴーグル「あんまり騒ぐな」

小鳥遊「俺達みたいな新参者とは比べ物にならねぇ!!やっぱりお前達は暗部の人間だ!!」

麦野「・・・」

小鳥遊「あーすげぇよ!!俺達みたいな新参者が考えた計画なんてすぐにバレちまう!!すっげぇすっげぇ!!」

垣根「黙れ、それ以上口を利いたらぶっ殺す」

小鳥遊「やれよ!!俺はてめぇらみたいな人間が一番ムカつくんだよ!!」

穴の空いている腕をバタバタと動かしながら、小鳥遊が喚く

小鳥遊「ははは!!風間!!おい風間、聞こえるか!」

風間「・・・ちくしょう・・・いてぇ・・・」


764 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:45:41.69 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「ほら!!そろそろお前らの仲間が迎えに来るんだろ!?」

垣根「当たり前だ・・・てめぇらは人殺しなんだよ」

小鳥遊「そしてお前の手からも血の匂いは消えない」

小鳥遊が挑発するような目で垣根を見る

その下卑た笑みが、垣根をイラつかせる

垣根「・・・調子に乗るなよ」

小鳥遊「認めちまえよ・・・てめぇが化け物だってよ」

垣根「あぁ?」

小鳥遊「てめぇも心理定規も麦野沈利もそこのゴーグルの野郎も!!全員が全員化け物だ!!」

ゴーグル「垣根さん、もう到着したみたいですよ」

垣根「そうか・・・ならこいつらもすぐ拘留できるな」

小鳥遊「ははは!!俺はこれからどうなるんだ!?」

垣根「知るかよ・・・統括理事会の判断によるだろ」

小鳥遊「見ろよ・・・お前らのやってることは、昔のお前達と同じことだ!!」

765 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:50:33.78 ID:Q9QONdl20
垣根「同じじゃねぇ、俺達は今回守るために戦った」

小鳥遊「守るための戦い!?ナメた言い訳してんじゃねぇ!!」

ゲラゲラと笑う小鳥遊の額からは、血が流れている

意識が朦朧としてもおかしくないほどの出血量だ

小鳥遊「誰かを守るのに戦う必要なんてねぇ!!」

垣根「・・・お前達と戦わなきゃ、俺はみんなを守れなかった」

小鳥遊「言い訳だ・・・守るためだと言って、てめぇは誰かと戦った!!」

風間「そうだ・・・結局お前達は戦いたいだけなんだろ!!」

ゴーグル「・・・」

無言で、ゴーグル男が風間の頭を打ち抜く

だが、拳銃に弾は込めていない

空砲の衝撃により、一時的に風間の意識が無くなる

小鳥遊「・・・そうやって誰かを傷つけるだけだ・・・」

ゴーグル「うるさいっすよ、俺達はアンタ達と違う」


766 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 17:58:10.26 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「それは精神論だ・・・結果論なら、やってることに大差はない」

垣根「・・・てめぇらみたいな無差別に傷つける戦いじゃねぇ」

小鳥遊「だが、結局お前達は俺達を傷つけた」

垣根「敵だったからだ」

小鳥遊「敵ならば傷つけ、味方は守る・・・なんとも素晴らしい綺麗事だな」

垣根「・・・何が悪い」

小鳥遊「ははは!!こりゃ傑作だ、最高じゃねぇか!!!暗部のクソッタレがよ!」

垣根「俺はもう暗部の人間じゃねぇ、てめぇが一一俺達をそれに引き戻そうとしているだけだ」

小鳥遊「逃れられないんだよ」

小鳥遊が垣根をじっと見つめる

その瞳に宿る闇が、とても懐かしく感じる

小鳥遊「帰って来いよ垣根帝督」

垣根「・・・」


767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/13(日) 18:08:53.25 ID:qlt5NKPAO
人の姿になったアレイ☆さんの出番はまだですか?
768 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 18:09:17.95 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「さぁ、帰って来いよ・・・」

垣根「断る、俺の帰りたい場所はここじゃねぇ」

小鳥遊「ははは!!じゃあてめぇはどこに帰るんだ!?」

垣根「・・・友達のいる場所だ」

小鳥遊「友達だと!?てめぇみたいな人間にそんなものは必要ねぇ!!」

垣根「・・・お前は俺を勘違いしている」

垣根が小鳥遊の目を見つめる

かつての垣根は、そんな目をしていたのだろうか

垣根「・・・俺はお前みたいに狂うことは出来なかった・・・結局、どこかで逃げ道を作ってた」

垣根「・・・闇に浸った化け物なんかじゃない、闇に憧れたただの哀れな男だったんだ」

小鳥遊「んなわけねぇだろ・・・」

垣根「そうだったんだよ」

小鳥遊「ふざけんな・・・てめぇはどうせ化け物だ!!」

垣根「・・・暗部に憧れてただけのガキだ、てめぇは・・・」

小鳥遊「ふざけんなよちくしょう・・・」

小鳥遊が泣き出しそうな顔になる



769 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 18:20:07.61 ID:Q9QONdl20
>>767 あの人は、人には戻しませんw
 

垣根「・・・ついて来い、てめぇはもう終わりだ」

垣根が小鳥遊の胸倉を掴む

垣根「・・・俺の目を見ろ」

小鳥遊「はっ・・・結局は死んだ目をしてやがる」

垣根「死んでなんかいねぇ・・・俺は今、生きてるんだ」

小鳥遊「てめぇは一生心のどこかに闇を抱える・・・所詮、俺達はそんな人間だ」

垣根「その闇を照らしてくれた人間がいた」

小鳥遊「ふざけんなよ・・・」

麦野「さて・・・私達もここで暗部とはお別れかしら」

垣根「こいつ曰く、俺達は闇からは抜け出せないらしいぜ」

心理「あら、抜け出した私達が羨ましいだけなんじゃないの?」

ゴーグル「・・・そうやって誰かを僻んでばかりだから、アンタはいつまでもクソッタレなんですよ」

小鳥遊「・・・くそ・・・」

小鳥遊と風間を引っ張りながら、一同がビルの外へと向かう

もちろん、浜面達を起こすことも忘れずに



770 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 18:23:59.56 ID:Q9QONdl20
浜面「くっそ・・・いつの間にか決着が着いてたみたいだな・・・」

絹旗「いってて・・・何も思い出せません・・・」

滝壺「・・・たしか、かきねに吹き飛ばされたと思う」

浜面「・・・」

垣根「仕方ねぇだろ、あのままじゃお前達は暴れるだけだったんだ」

フレンダ「・・・私はゴーグルに殴られた気がする・・・」

ゴーグル「気のせいっす」

麦野「はぁ・・・」

砂皿「・・・すまないな、ここぞという時に足手まといになってしまった」

垣根「いいってことよ」

麦野「どうにか一件落着かしらね」

ポンポン、と麦野が手を叩く

心理「はぁ・・・やっと表の世界に帰れるのね」

浜面「・・・って言っても、ほんの二日、三日の出来事だけどな」

771 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 19:20:01.07 ID:Q9QONdl20
垣根「・・・そうだな、たったそれだけの出来事だ」

眉をひそめながら、垣根が小鳥遊を引きずる

ダラダラと流れる血が、地面に嫌な模様を生み出していく

小鳥遊「なんなんだよクソ・・・」

垣根「・・・てめぇは、暗部に・・・俺達に幻想を抱いていた」

垣根がぽつりと呟いた

本当に小さなその声は、浜面達の話し声に掻き消されるほどだった

だが、小鳥遊にだけは、とても大きく聞こえる

まるで、心の奥底に話しかけるかのように

垣根「・・・暗部になら・・・自分の居場所があると思ってたんだ、お前は・・・きっと、その闇の中なら自分は決して一人にはならないで済むんだと、数々の狂気の中でならお前の小さな狂気を隠しきれると」

小鳥遊「・・・何が分かるんだよ・・・」

垣根「てめぇがなんで暗部に堕ちたのかなんて興味が無い」

冷たい声で垣根が言い放つ


772 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 19:24:13.08 ID:Q9QONdl20
垣根「・・・それでも、てめぇの気持ちなんて簡単に読めるんだよ」

小鳥遊「表で安穏と生きているてめぇには分かるわけないだろ」

垣根「・・・暗部で悦に浸ってるてめぇの考えなんて、水溜りより浅いんだよ」

決してその水溜りには、太陽など映らない、と垣根が笑う

垣根「・・・こんなことを起こさなきゃ、もう少しいい悪党になれたかもしれねぇのにな」

小鳥遊「いい悪党になんてなる必要はねぇんだよ」

垣根「・・・少なくとも、てめぇは俺達以下だった」

小鳥遊「お前達以下だと・・・?安穏と今の日常だけに満足して居座ってるお前達以下だと!?」

垣根「・・・表と裏の区別もつけられないガキが」

小鳥遊「うるせぇ・・・うるせぇんだよクソ・・・分かったような口利きやがって・・・」

小鳥遊が歯軋りする

彼の苦しみを、垣根は簡単に言い当ててしまう

彼が暗部に堕ちた理由は単純だった

そこにいれば「自分の中の闇」に怯える人間がいないから

ただそれだけだった


773 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 19:28:24.88 ID:Q9QONdl20
彼は狂った人間だ、表の世界にいれば「狂人」と罵られ、周りから白い目で見つめられる

人と肩をぶつけることはない

誰もが、彼を避けて歩くからだ

誰かが隣に並んで歩くこともない、向かい合って歩いてくれる人間はいない

そして、彼は自分が狂っていると知っていた

幼い頃から、動物を殺すことに喜びを覚えていた

喧嘩で誰かに血を流させることが好きだった

能力を手に入れてからは、それは更にエスカレートしてしまった

彼の能力は、同士討ちをさせるにはもってこいなのだ

それも、無意識のうちに、知らない間に、自分の仲間を自分の手で殺させることが出来る

そんなことを何度も繰り返した

嘆き叫ぶ人間を見ては笑い、そして殺す

それが、小鳥遊の日常だった


774 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 19:34:30.68 ID:Q9QONdl20
そんな彼がある日、偶然暗部の存在を知ってしまった

そこは狂気が渦巻き、狂った人間達が暗躍していると聞いたのだ

学園都市最強の能力者もそこにいる

狂った人間が狂った世界で狂った生活をしている

それは、まるで小鳥遊の描いていた理想郷そのものだった

誰もが狂気を抱えていて、その中にいれば狂っているとは言われない

狂っていることが当たり前で、まともな人間こそ狂っている

本当に、「表」と「裏」は正反対なのだ

優しい人間がいるのが表、そうではない人間がいるのが裏、などという甘い理屈ではない

表と裏の住人は、もはや同じ人間ではなく、それぞれがそれぞれの世界の生き物だった

彼はそう聞いていた

裏の人間は慈悲や感情など持っていなくて、ただ狂ったままに踊る存在だと

彼は、そう思いこんでいた

そんな世界に、彼は憧れていた



775 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:14:43.37 ID:Q9QONdl20
しかし、彼の思っていた暗部と、実際の暗部は違った

たしかにそこには狂った人間が多かった

だが、表面上はそこまで表と変わらなかったのだ

表面上を繕っているだけだ、と言う人もいるかもしれない

しかし表面を繕うだけの理性ある、ということでもある

狂った世界ではなく、狂った調和が取れた世界だった

毎日殺しが起きている世界なんて、小鳥遊は興味が無かったのに

殺しなんて、表の世界でも起きているのに

結局、裏というのは表で生きていけなかった弱者がたどり着く墓場だったのだ

ただ死んだ目の人間が集まっているだけの、肥溜めだったのだ

彼の憧れていた一方通行は、こともあろうかそんな暗部を解散させた

そんな正義ぶった人間を、小鳥遊は憎んだ

だからこそ



小鳥遊(俺は・・・違うってことを証明してやる・・・)

776 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:21:19.10 ID:Q9QONdl20

垣根「・・・ちっ、さっさと歩けよ」

小鳥遊「・・・うるせぇ・・・」

麦野「あ、いたいた」

ビルの外には、もう元暗部の人間達が集まっていた

垣根「・・・霧野とかいうのと風間ってのも一緒だ・・・あと、浜面が背負ってるのは桐山だったか」

「お疲れ様です」

麦野「・・・ちゃんと護送車両も持ってきたのね」

「仕方ないですよ・・・統括理事会が回してくれたんです」

ゴーグル「お疲れ様です・・・ったく、めんどくさかったですよ」

「そっちの新暗部は能力者だらけですね」

垣根「あぁ・・・でも対処法はあるんだろ?」

「もちろん、AIMジャマーを応用した装置が入ってる護送車ですよ」

垣根「へぇ・・・そりゃすげぇな」


777 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:25:10.17 ID:Q9QONdl20
心理「お疲れ様・・・たしか、あなたはスクールの下部人員だったわね」

「メ、心理定規さんですか!!お久しぶりです!!」

心理「久しぶり・・・なんだか同窓会みたいね」

浜面「まぁ・・・そうかもな」

小鳥遊「・・・同窓会だと・・・?生ぬるいことを・・・」

「うるさい!!さっさと歩け!!」

小鳥遊が手錠のようなものを嵌められる

もう、彼が抵抗することは出来ないのだろう

「さて・・・あとは俺達が連行しますので、みなさんは先に帰っていてください」

垣根「悪いな」

「いえ、俺達にはこれくらいしか出来ませんから」

心理「それじゃ・・・よろしく」

絹旗「超疲れました・・・」

スクールとアイテムのメンバーがくるり、と新暗部の人間に背中を向ける


778 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:28:10.89 ID:Q9QONdl20
垣根「お、そうだ・・・心理定規は脚も怪我してるんだっけ」

心理「あぁ・・・でも大丈夫よ」

垣根「ほれ、俺が送ってやるから」

心理「・・・」

垣根が心理定規の体を抱き上げる

いわゆる「お姫様抱っこ」というヤツだ

フレンダ「わ、わわ!!」

滝壺「・・・すっごいね、かきね」

浜面「はぁ・・・こういうの見てると、やっと日常を取り戻した気になるよ」

麦野「・・・それじゃ、私達も帰るか」

ゴーグル「そうっすね」

フレンダ「はぁ・・・疲れた訳よ」

垣根「行こうか心理定規」

心理「・・・えぇ」

垣根が、心理定規を抱きかかえたまま歩き出す



779 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:31:43.64 ID:Q9QONdl20
垣根「はぁ・・・やっと終わったな」

心理「そうね・・・これで、平和な日常を取り戻せるわ」

笑いながら、二人が話す


小鳥遊「・・・ざけんなよ・・・」

「おい、早く歩け!!!」

小鳥遊「・・・」

そんな垣根と心理定規を、小鳥遊が睨みつける

彼の憧れていた暗部の中でも、最も暗いところにいたはずの二人が

あんな風に、表の人間のように安穏と生きている

それがとてつもなく、許せなかった

小鳥遊「ふざけんな・・・」

「おい!!聞いてるのか!!!」

小鳥遊「ふざけてんじゃねぇよ!!暗部を抜け出したてめぇらなんか生きてる意味がねぇんだよ!!」

「お、おい!!」

小鳥遊「風間!!」

風間「な、なんですか?」



780 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:37:09.62 ID:Q9QONdl20
小鳥遊が、風間の目を見つめる

風間「あ・・・」

小鳥遊「あいつらを・・・殺してやるんだよぉぉぉ!!!」

風間の思考が停止する

そして、そこには一つの簡単な感情だけが無理矢理植えつけられる

「殺意」

ただ、垣根と心理定規を殺すために

風間「・・・」

「!!お前、それ・・・」

風間が拳銃を構える

垣根の頭に、その照準は定められていた

「てめぇ・・・!!!」

風間「・・・」


パン、と乾いた音が鳴った

元暗部の男が、咄嗟に風間の腕を叩いた


781 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:40:35.69 ID:Q9QONdl20

垣根の脇腹に、衝撃が走った

生ぬるい感触が、服の中を伝っていく

心理「・・・?垣根?」

垣根「・・・」

垣根がくるりと後ろを振り返る

既に風間は取り押さえられていた

ただ、狂ったように小鳥遊だけが笑っている

小鳥遊「ははは!!!その痛みでも覚えてろよクズが!!!」

垣根(・・・脇腹に・・・)

小鳥遊「忘れるなよ!今はこの男に邪魔されたがな・・・!!」

「くそ!!黙れ!!」

男に殴られながら、しかし小鳥遊は笑う

小鳥遊「今度はその痛みをてめぇの頭に植え付けてやるからな!!」

麦野「垣根!!」

垣根「・・・」

782 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:48:06.28 ID:Q9QONdl20
ぐらり、と垣根の体が揺れる

心理「!!垣根・・・!!」

垣根「・・・クソが・・・」

心理定規が地面につかないように、垣根が体を回す

その気遣いさえも、なぜか無理をしているように思えた

ゴーグル「垣根さん!!」

絹旗「どうしたんですか!?」

「こいつが垣根さんを撃ちやがった!!」

麦野「何を・・・」

麦野が風間を見つめる

しかし、風間の顔には生気がない

まるで何も考えていないように

麦野「違う・・・そいつだ!!」

小鳥遊「あはははは!!垣根!!気を抜きすぎなんだよクソが!!!」

麦野「てめぇ!!!」



783 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:54:19.76 ID:Q9QONdl20
小鳥遊「てめぇは一生泥の中にいるんだよ!!」

「黙れ!!!」

男が小鳥遊の顔面を強く殴りつける

小鳥遊「・・・ははは・・・てめぇら全員・・・クソッタレなんだよ・・・」

心理「垣根!!!垣根!!!」

垣根「・・・あぁ・・・ムカつく・・・」

垣根の脇腹から、ドクドクと血液が溢れる

ゴーグル「くそ!!急いで病院に運びますよ!!!」

「は、はい!!!!」

小鳥遊「ははは!!!結局てめぇは最後の最後で負けるんだよ!!」

垣根「・・・」

垣根が、担架に乗せられる

傷口は思ったよりも深いらしく、時間が経てば経つほど血は溢れていく


784 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 20:57:07.16 ID:Q9QONdl20
麦野「垣根!!!おい垣根!!!」

垣根「・・・」

垣根の目は、焦点が定まっていなかった

耳も、何かの音を捉えることしか出来ない

それが誰の声なのか、判断が出来なかった

心理「垣根!!!」

何か熱いものが、垣根の頬を濡らしたのも分かった

それが何なのかは分かっていた

垣根「・・・」

小鳥遊「はははははは!!!!」

狂ったように笑う小鳥遊が護送車に乗せられる

彼が垣根と会うことはないだろう

統括理事会によって、闇に葬られるはずだ

小鳥遊が大好きだった、「本当の闇」に


垣根「・・・心理定規・・・いるか・・・?」

心理「!!垣根!!!」


785 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:00:04.09 ID:Q9QONdl20
垣根「悪いな・・・」

心理「イヤよ・・・そんな弱気なこと、言わないで!!!」

垣根「・・・心理定規・・・愛してる・・・」

心理「分かってるから・・・お願い・・・」

心理定規が垣根の手を握り締める

不思議な温もりが、垣根の手を包んだ

垣根(・・・あぁ・・・見てみろよ小鳥遊・・・)

垣根(そうだ、俺は表の世界で生きていけるほど綺麗な人間じゃねぇ・・・死んだ人間の目をしてる・・・クズなんだ・・・)

垣根(暗部に戻ってきたときに懐かしさを感じる・・・クソッタレなんだ・・・)

垣根(でもよ・・・だったら・・・この頬に触れてる熱い物はなんだ・・・)

垣根(誰かが・・・心理定規が俺のために泣いてくれてるんだよ・・・)

心理「垣根!!」

そっと、垣根が目を閉じる


垣根(・・・てめぇには一生分からないさ・・・この温もりが・・・)


786 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:03:12.86 ID:Q9QONdl20

一方「よォ」

土御門「ん?あぁ、お疲れ・・・」

結標「そっちもお疲れ様・・・迅速な対応だったじゃない」

番外「ミサカも役に立ったし、文句無いね」

一方「・・・それで?今回の事件はどォやって片付けるンだ」

グループの三人と番外個体は、学舎の園のすぐ近くで話していた

土御門「削板が上手く解決してくれるらしい」

一方「はン・・・ンな簡単に出来るのかよ」

番外「黒子と・・・敵の一人が協力してくれるらしいから」

一方「・・・そいつを建前に使うのか」

土御門「何の問題もない、表の人間は今回のを、愉快犯の起こした爆破テロとしか思わない」

結標「理由なんてでっち上げられるものね」

一方「ご苦労なことだな」

土御門「全くだよ」



787 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:06:18.67 ID:Q9QONdl20
一方「敵はどォなった」

土御門「連絡があった、生きているヤツは全員捕獲」

一方「どォせクソッタレみたいな人生を送ることになるけどな」

土御門「そうでもないさ・・・統括理事会も、今回の件は出来る限り穏便に済ませたいらしい」

土御門が肩をすくめる

一体この男は何処まで統括理事会と繋がっているのか

それが、少し不気味に思えた

一方「・・・あいつらはどォなった」

土御門「無事勝利を収めた・・・そうだな、たった一つの問題を除いては」

番外「問題?ねぇ、さっき電話で話してたのがそれ?」

土御門「あぁ」

結標「まさか、また爆弾があるとか?」

土御門「そうじゃない・・・無関係な人間にはどうでもいい話なのかもな」

一方「どォいうことだ」


土御門「垣根帝督が狙撃を受けた・・・至近距離から、脇腹に一発」

一方「!!!」


788 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:09:01.51 ID:Q9QONdl20
番外「垣根が・・・撃たれた?」

土御門「現在病院に搬送中」

一方「おい・・・助かるのか?」

土御門「俺に聞かないでくれ・・・だが、意識を失ったらしい」

一方「クソ・・・」

結標「・・・それは・・・確かに忌忌しき事態ね」

土御門「・・・アイテムとスクールのヤツらは付き添いらしいな」

土御門が三人にくるりと背中を向ける

一方「どこ行くンだよ」

土御門「なに・・・俺も付き添ってやろうかと思ってな」

一方「あァ?スクールには不干渉なンじゃねェのか」

土御門「もうこの事件は終わった・・・なら、そんな下らない理屈はいらないだろ?」

番外「友達だから見舞いに行く・・・か、悪くないね」

土御門「そういうことだ、結標はどうする」


789 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:11:19.41 ID:Q9QONdl20
結標「私は垣根と親しいわけじゃないもの」

一方「・・・そォだな」

土御門「じゃ、俺達は行って来る・・・」

番外「垣根の無事を願ってる人間はこんなにもいるんだって、垣根に教えてやろうよ!!」

一方「出来れば新暗部のクズ共にも見せてやりたかったな」

土御門「やめておけ、どうせ嫉妬するに決まってる」

三人が病院の位置を確かめる

向かうのは、恐らくよく知っているあの病院だろう

一方「・・・行くか」

結標「ねぇ、ちょっと待って」

一方「なンだよ、喧嘩なら後にしろ」

結標「そうじゃないわ」

建物の壁に背中を預け、腕を組みながら結標が笑う


790 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:14:55.35 ID:Q9QONdl20
結標「・・・もしもよ」

番外「何?」

結標「もしも、私が垣根の立場だったら・・・あなた達は付き添いに来てくれるの?」

一方「・・・あァ」

結標「あら、どうして?あなたは私を憎んでるじゃない」

一方「裏にいるお前を、だ・・・間違えるな」

結標「・・・」

土御門「お前は俺達の友達だ、だったら当たり前だろう?」

結標「・・・そう、ありがとう」

番外「ほら、行こう」

結標「待ちなさい」

一方「まだ何かあンのかよ」


結標「・・・移動の時間がもったいないんじゃない?送っていくわよ」


791 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:18:07.37 ID:Q9QONdl20



冥土「全く・・・銃創を拵えてやってくる患者なんて久しぶりだね」

心理「・・・お願い、理由は詮索しないで」

とある病院の待合室

救急患者として運ばれて来た垣根は、現在手術室にいる

担当しているのは一般の医師だ

冥土返しが手術をするのがもちろん一番だろうが、しかし彼はそれ以上に治さなければならない患者を見つけていた

心理「私が・・・私が気づいていれば・・・」

麦野「・・・心理定規」

心理「彼ね・・・私に笑いかけたのよ?痛みに堪えながら・・・馬鹿よ、本当に・・・」

両手で顔を覆い、心理定規が泣き出す


一方「おい!!垣根はどォなった!?」

ゴーグル「おや・・・グループの皆さんも来たんですか」

土御門「・・・その様子じゃ、まだ治療中ってところか」

冥土「全く・・・こうもゾロゾロと人がやってくるのは珍しいね」


792 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:33:54.18 ID:Q9QONdl20
麦野「・・・土御門、そっちは?」

土御門「順調そのものだ、なんならニュースでも見てみるか?」

待合室の備え付けのテレビでは、風紀委員支部連続爆破事件の続報が流れている

風紀委員に個人的な恨みを持っていた能力者が憂さ晴らしに爆破した、らしい

土御門「全く見事なもんだな」

浜面「・・・情報操作か?」

土御門「表のヤツらは事件の解決を急いでた・・・そこに犯人を名乗る男が現れたんだ」

浜面「・・・しかもつじつまが通ってる、か」

麦野「・・・今はそんなこと、どうでもいいのよ」

麦野が心理定規の肩に手を載せる

麦野「・・・アンタのせいじゃないわ、あの小鳥遊ってヤツが・・・」

心理「どうして私は垣根を守れないのかしら・・・?いつだってそうよ」

滝壺「・・・違うよ、垣根は・・・」

心理「・・・なんで・・・垣根が撃たれなきゃならなかったの?」

絹旗「・・・理由なんてないです、きっと相手がただ憂さ晴らしに・・・」

心理「・・・どうして・・・」


793 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:35:47.28 ID:Q9QONdl20
フレンダ「・・・ここで泣いてもどうにもならない訳よ」

一方「そォだ・・・ここでゴチャゴチャ言って何になる」

番外「・・・垣根だって、心理定規を悲しませるために笑ったわけじゃないよ」

心理「分かってるわよそんなこと・・・」

番外「・・・心理定規」

冥土「・・・いいかい?あれほどの銃創にも関わらず、彼はまだ死んではいない」

冥土返しが手術室を見つめる

そこでは、きっと一人の青年が死に抗っているのだろう

たった一人の、愛しい少女のために

冥土「・・・それは、君がいるからじゃないのかい?」

心理「分からないわ・・・」

頭を横に振り、心理定規が嗚咽を上げる


794 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:42:47.58 ID:Q9QONdl20
冥土「・・・君の苦しみは分かる、だが・・・君のために彼は戦っているんではないのかい?」

心理「・・・そうよ、きっと・・・」

冥土「なら君が泣いていてどうする?それはまるで彼が死ぬのではないかと疑っているようだよ」

心理「・・・」

冥土「信じたまえ、彼のことを」

心理「・・・信じてるわよ・・・」

冥土「なら笑っていたまえ」

くるりと背中を向けた冥土返しが、もう一度心理定規のほうを振り向く

その顔には、なぜか自信が浮かんでいる

冥土「・・・僕は二人の患者を救わなければならないんだね」

心理「二人・・・?」

冥土「仕方ない」


冥土「君のために特別だ・・・僕が執刀してくるよ、二人の患者のためでもある」


795 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:50:51.97 ID:Q9QONdl20

フレンダ「・・・も、もしもさ・・・」

ゴーグル「それは言ったらダメっす」

待合室の中は、気味の悪い沈黙で満たされていた

麦野「・・・安心しなさい、あの先生なら大丈夫よ」

心理「・・・分かってるわよ・・・」

心理定規が手を強く握り締める

一方「・・・不安か」

心理「当たり前でしょ・・・垣根がいなくなったら私は・・・」

ゴーグル「・・・」

ゴーグル男が時計を確認する

冥土返しが手術室に向かって、20分だ

ゴーグル(・・・手術ってどれくらい掛かるんすかね)

そんなことを思ったのと同時に、手術室のドアが開いた



796 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:56:10.80 ID:Q9QONdl20
冥土「はぁ・・・」

麦野「!!もう終わったのか!?」

絹旗「そ、その・・・垣根はどうでしたか!?」

冥土「そうだね・・・一命は取り留めたよ」

心理「・・・よかった・・・」

心理定規の口から、安堵の溜め息が漏れる

ゴーグル「・・・でも、なんか引っかかる言い方っすね」

番外「まさか後遺症とか・・・」

冥土「違うね・・・僕がそんなものを残すと思うかい?」

冥土返しが呆れたように笑う

冥土「・・・少し入院しなければならないんだよ、それだけの話だ」

心理「・・・そう、それくらいなら問題ないわ・・・」

一方「・・・あいつは寝てるのか?」

冥土「あぁ・・・そうだね、でも病室にはまず君だけがいてあげるべきだ」

心理「・・・私?」

冥土「そうだね」


冥土「一番守りたかった人を守れたということを、真っ先に証明してあげなければ可愛そうだからね」


797 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/13(日) 21:59:12.08 ID:Q9QONdl20
今日はここまで

あとは後日談とかになりますね

筋肉動画は「クリス・カーミア」

彼もオリンピアになれなかった偉大な選手でしょうね

http://www.youtube.com/watch?v=Gq_VtzO97LU

ではおやすみなさい


798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 22:04:12.32 ID:YI2EYMoko
乙です
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 22:15:44.33 ID:ENrHIuRuo
乙乙乙乙でででですすすす
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/13(日) 22:21:42.57 ID:uIjAUnq8o
ぬああああていとくんーー!
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 01:46:08.78 ID:tbFlDX0Qo
乙にゃんだよ!
802 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:29:25.59 ID:tK5BGLBx0


垣根「・・・あぁ・・・?」

垣根が目を開けると、真っ白な天井が見えた

彼の家のものではない

垣根「・・・どこだよここ・・・?」

心理「目が覚めた?」

垣根「・・・心理定規か?」

心理「・・・あなた、半日も寝てたのよ」

垣根「半日?なんで・・・」

そこまで言って垣根が思い出す

自分達が新暗部の人間達と戦ったこと

その頭領を潰したこと

そして、その頭領に狙撃されたこと

垣根「・・・ここは病院か」

心理「そうよ・・・あなた、相当ひどい傷だったんだから」

垣根「お前は?ちゃんと手当てしたか?」


803 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:30:06.34 ID:tK5BGLBx0
心理「!」

垣根「あー・・・こんな時間じゃ誰も見舞いには来てないか」

心理「・・・」

垣根「?なんだよ、黙りこくって」

心理「馬鹿じゃないのあなた・・・」

垣根「はぁ・・・?あぁ、みんな見舞いに来てるのか?」

心理「なんでそんなに私のことばっかり気にするのよ」

垣根「・・・」

心理「あなたは撃たれたのよ・・・?」

垣根「お前も手足撃たれたじゃねぇか」

心理「・・・あなたの傷は大きかったのよ・・・」

垣根「知るかよ・・・でもよかった、お前が生きてるならそれで」

心理「・・・垣根」

垣根「小鳥遊のクソッタレは言ってやがった、俺は結局ずっと泥の中なんだってな」


804 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:30:44.47 ID:tK5BGLBx0
垣根が天井に拳を向ける

力強く握られたその中には、大切なものを掴んでいる

垣根「でもな、泥の中にいるはずのクソッタレが大切な物を守れたんだ」

心理「垣根、ありがとう」

垣根「礼なんていらねぇよ・・・俺はお前を守るために生きてるんだ」

心理「・・・」

垣根「そうだ、事件はどうなったんだ?」

心理「削板君と黒子が上手くやってくれてるわ・・・ニュース見てみる?」

垣根「あぁ」

病室に備えつけられているテレビのスイッチを入れる

風紀委員支部連続爆破テロ事件の真相は!というワイドショーが組まれている

犯人の顔写真に、垣根は見覚えがあった

垣根「・・・水素系の能力者が憂さ晴らしに、ね」

心理「・・・表にはどうにか言い訳が出来たみたいよ」


805 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:31:17.49 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・俺達の完全勝利だ、あいつらの思惑は何一つ敵わなかった」

心理「そうね・・・」

垣根「見ろよ、泥の中の人間が・・・表を守ってみせたんだ」

心理「・・・泥の中なんかじゃないわ」

心理定規が垣根の唇に、自分の唇を重ねる

心理「・・・あなたは太陽の傍にいるじゃない」

垣根「・・・そうだったな、忘れてたよ」

心理「・・・もう、あなたは暗部の人間なんかじゃないわ」

垣根「・・・なぁ、心理定規」

心理「何?」

垣根「・・・俺は・・・また表に帰れるかな」

心理「帰ってきたじゃない」

垣根「・・・本当に帰ってきたのかな」

心理「・・・そうね、そんなことは分からないわ」

心理定規が時計を見つめる


806 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:32:17.86 ID:tK5BGLBx0
時刻は午前の5時

冬の朝はかなり冷える

垣根「・・・お前、ずっと寝ないで待ってたのかよ」

心理「当たり前でしょ、私はあなたを愛してるもの」

垣根「ちゃんと寝ろよな・・・」

心理「ふふ・・・ありがとう」

垣根「・・・にしても寒いな」

心理「毛布いる?」

備えつけの毛布を心理定規が掴む

垣根「・・・それよりいい湯たんぽがここにあるじゃんか」

心理「あ・・・」

垣根がぎゅっと、心理定規を抱きしめる

垣根「ほれほれ、ベッドの中においで」

心理「・・・温かいわね」

垣根「だろ?こうやって寄り添えば冬の寒さなんかへっちゃらなんだよ」


807 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:34:46.95 ID:tK5BGLBx0
心理「・・・ねぇ、垣根」

垣根「ん?なんだよ」

心理「・・・あの時・・・あなたが助けに来てくれた時ね・・・」

垣根「あぁ」

心理「正直、信じられなかったわ・・・あんなふうに、ヒーローみたいに現れたあなたが」

垣根「ヒーローみたいだったか?」

心理「でも嬉しかったのよ・・・あぁ、やっと私達の間の距離は無くなったんだって」

垣根「そんなもん元々なかっただろうが」

心理「違うのよ・・・あなたが本当に、傍に感じられたの」

垣根「あんな状況だったからさ、吊橋効果ってやつかな」

心理「冷たいわね・・・もう少し優しい言葉を掛けてよ」

垣根「これでも優しいだろ?」

心理「はぁ・・・そうね、十分優しいわよ」

垣根「・・・腕と足・・・どうだ?」

心理「あのお医者さんに治してもらったわ・・・簡単な手当てで済んだし、問題ないわよ」


808 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:36:49.45 ID:tK5BGLBx0
垣根「あぁ?体触られたのかよ・・・」

心理「あら、もしかしてヤキモチ?」

垣根「うるせぇな、そんなんじゃねぇよ」

心理「何よ、つまらないわね」

垣根「はいはい・・・こうしてると昨日までの悪夢が嘘みたいだ」

心理「・・・ニュースで言ってたでしょ、あれは確かに現実だったのよ」

垣根「・・・これからも、暗部の真似をする馬鹿は現れるはずだ」

心理「・・・私達はそれに巻き込まれるのかしら」

垣根「巻き込まれるだろうさ」

心理「・・・そうなったら、またあなたは傷付くのかしら」

垣根「お前が傷付くのが一番怖いんだよ」

心理「あなたね・・・少しは自分のことも考えなさい」

垣根「お前のことを考えるのが、俺のためでもあるんだよ」

心理「・・・嬉しいけど、やっぱり複雑なのよ?」


809 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:37:51.93 ID:tK5BGLBx0
垣根「自分の心配もしてるさ、俺が死んだらお前は泣くだろ?」

心理「泣くわよ、当たり前でしょう」

垣根「お前の涙は見たくないからな」

心理「・・・そう」

垣根「俺が撃たれた時、お前泣いてただろ」

心理「・・・悪いかしら」

垣根「悪くはねぇけどさ・・・それがとっても辛かったんだ」

心理「・・・ごめんなさい」

垣根「・・・頼むから泣かないでくれよ」

垣根が心理定規の頭を撫でる

その優しい手つきが、心理定規の鼓動を高鳴らせる

垣根「お前が泣いてたら・・・俺が涙を拭ってやらなきゃならないだろ」

心理「私が泣いてたら、あなたはいつでも駆け付けてくれるの?」

垣根「・・・あぁ」

心理「だったら泣くわよ・・・あなたに、傍にいてほしいもの」


810 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:38:18.43 ID:tK5BGLBx0
垣根「やめてくれ、俺が悲しくなっちまう」

心理「いいじゃない、女って我が儘なのよ」

垣根「ひどい生き物だな」

心理「その生き物を愛してしまうあなたは馬鹿な生き物よ」

垣根「心配するな、自覚はある」

冬の朝は本当に寒い

何もしていなくても寒くなってしまう

だが何かをする気力は、その寒さに奪われてしまう

そんな寒い冬の朝が、垣根は嫌いだった

ずっと布団の中に包まっていたいと思う寒さが

垣根(でもまぁあれだな・・・)

胸の中に抱きしめている、小さな背中を見つめる


垣根(こういう朝なら・・・悪くはないかもしれねぇな)



811 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:39:08.68 ID:tK5BGLBx0



フレンダ「・・・垣根も助かったみたいで安心した訳よ」

布団の中、フレンダがぽつりと呟いた

彼女は今、アイテムの家の中にある自分の部屋にいる

床ではゴーグル男が寝ていた

寝ている、と言ってもただ横になっているだけだが

ゴーグル「・・・そうっすね、安心しましたよ」

フレンダ「はぁ・・・なんか、終わってみたらすぐだったなぁ・・・」

ゴーグル「今までだってそうでしたよ」

素っ気なく、ゴーグル男が答える

出来る限り昔のことを思い出したくはないのだろう

フレンダ「・・・なんかさ・・・やっぱり私達は暗部に追われてる訳よ」

ゴーグル「闇なんて簡単には振り払えないもんですよ」

フレンダ「分かってるけどさ・・・なんか悲しいな」

ゴーグル「フレンダさんなら大丈夫ですよ、アイテムの仲間がいるじゃないですか」


812 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:39:55.26 ID:tK5BGLBx0
フレンダ「・・・そうだよね、みんながいれば私は大丈夫な訳よ!」

フレンダが嬉しそうに笑う

その笑顔に、ゴーグル男は何度救われたことだったか

ゴーグル「・・・これで一段落ですよ、暗部に関しては」

フレンダ「・・・ねぇ」

暗い部屋の中、フレンダが少し声のトーンを落とす

何か真剣な話を始めるかのような雰囲気だ

ゴーグル「なんですか」

フレンダ「どうしてあの時・・・私を見捨てなかったの?」

ゴーグル「見捨ててほしかったんすか?」

フレンダ「そんなこと・・・でも、あそこは普通なら垣根に着いていく訳よ」

ゴーグル「言ったでしょ?色んな感情を与えてくれたのはフレンダさんだったって」

フレンダ「・・・い、色んな感情って?」

ゴーグル「友情とかですよ」

フレンダ「・・・結局そこ止まりな訳よ」


813 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:40:59.90 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「はい?」

フレンダ「・・・それで?そんな理由でスクールを裏切ったの?」

ゴーグル「裏切ってなんかいないですよ、俺の心は今もスクールにあります」

フレンダ「・・・」

ゴーグル男が言ったその一言が、なぜだかフレンダの胸を締め付けた

彼がスクールの一員だというのは当たり前だった

そんなこと、分かりきっていた

フレンダ「・・・そっか」

ゴーグル「?どうかしたんですか?」

フレンダ「やっぱり・・・アイテムよりスクールのほうが好きなの?」

ゴーグル「・・・」

フレンダの問いに、ゴーグル男は言葉を詰まらせる

アイテムが嫌いな訳ではない

今の彼にとって、アイテムの全員が掛け替えない存在であるのは確かなことだ

もちろん、フレンダも例外などではない

だがそれ以上に、スクールは彼にとって大きな存在だった


814 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:41:49.51 ID:tK5BGLBx0
彼の帰るべき場所だった

彼に何かを教えてくれた場所だった

この事件の全貌に気付き、隠れ家に向かった時

そのドアを開けた時、いつもの三人が集まっていたことに何故か喜びを覚えた

連帯感や感心などという、そんなつまらない理由からではない

まるで、約束もしていなかったのに記念日になって家族が全員集まったかのような気分だった

あの時、ゴーグル男は勝ちを確信したのだ

私情を抜いてもわかるほど、スクールのメンバーは強かった

力だけではなく、精神もが

暗部から目を背けて逃げるのではなく、面と向き合って戦うことを選んだスクールは強かったのだ

彼は、そんなスクールが大好きだった

垣根を尊敬していた

力を持っている彼を、優しい彼を、心理定規を必ず守る彼を

心理定規を尊敬していた

自分より年下だろうが、大人びている彼女を

垣根の隣にいつもいて、陰から支えている彼女を


815 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:42:41.70 ID:tK5BGLBx0
砂皿を尊敬していた

自分と同じ無能力者なのに、スクールの戦力になっている彼を

スクールは互いに尊敬しあっていたのだろう

美談に仕立て上げているだけだろうか

そんなことはないだろう

ゴーグル「俺は・・・スクールが大好きです」

フレンダ「そっか・・・そうだよね、私も垣根とか嫌いじゃないけど・・・」

ゴーグル「アイテムが一番なんでしょ?」

フレンダ「結局、ゴーグルと私の帰る場所は違う訳よ」

ゴーグル「なんだかちょっと寂しいですね」

フレンダ「・・・アイテムの仲間よりさ・・・スクールの仲間のほうが大切?」

ゴーグル「同じくらい大切です、ただ・・・俺はスクールの一員なんですよ」

フレンダ「・・・」

ゴーグル「あの三人といた時の高揚感は・・・きっと、アイテムにいても味わえない」

フレンダ「・・・なんで?」


816 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:43:12.41 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「アイテムはたしかに大切な友達が多いっす・・・」

フレンダ「うん・・・」

ゴーグル「でも、背中を預けてきたのはスクールの仲間にだけですから」

布団の中で、ゴーグル男が拳を握り締める

武者震いだろうか、なぜかそれは小刻みに揺れていた

ゴーグル「・・・もしかしたら、俺は本能のうちに闘いを求めているのかもしれないっす」

フレンダ「そんなことない訳よ!」

ゴーグル「・・・闘いの中で、自分の心と向き合う時ほど楽しいことはなかった」

フレンダ「・・・過去形なんだ」

ゴーグル「それより楽しい時間をあなたがくれましたから」

フレンダ「っ・・・!」

部屋が暗くてよかった、とフレンダが思う

もしも明かりがついていたら自分の顔が真っ赤なことに気づかれるだろう

その赤さは、真っ暗な部屋でさえ気づかれてしまいそうなほどだった

ゴーグル「・・・そうっすね、フレンダさんがいるからアイテムも捨て難いっす」

フレンダ「ど、どういう意味な訳よ!?」


817 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:51:05.94 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・楽しい時間はここにいても味わえるってことです」

なぜフレンダが慌てているのか、ゴーグル男にはイマイチ分からない

そういうことにはかなり疎いのだ

フレンダ「・・・でも、スクールのほうが大切なんだよね?」

ゴーグル「あそこは・・・居場所でしたから」

フレンダ「・・・帰りたいの?あそこに」

ゴーグル「分からないです・・・ただ、もしもスクールが再結成したなら・・・俺はそこにいなきゃならない」

フレンダ「使命感?」

ゴーグル「俺の心の奥で、昔の俺が叫んでるんですよ・・・」

フレンダ「・・・やっぱりそうだよね」

ゴーグル「?なんか悲しそうな声ですけど」

フレンダ「・・・」

無言で、フレンダがベッドから降りる

ギシリ、と床の軋む音だけが部屋に響いた


818 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:51:41.59 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「フレンダさん?」

フレンダ「・・・ちょっと隣、入るから」

ゴーグル「は、はい?」

フレンダ「隣!」

ゴーグル「はい!」

ゴーグル男が布団の右半分を開ける

そこにフレンダが強引に入っていく

ゴーグル「あ、あの」

フレンダ「あっち向いて」

ゴーグル「な、なんのつもりなんですか?」

フレンダ「いいから・・・あっち向いてほしい訳よ」

ゴーグル「いいですけど・・・」

フレンダの言葉に従い、ゴーグル男がフレンダと真逆の方向を見つめる

真っ暗や闇の中には、何も見えない

当たり前のことだった

ゴーグル「あの・・・やっぱりなんかあったんですか?」


819 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 09:52:24.91 ID:tK5BGLBx0
フレンダ「・・・ちょっとだけ、御免ね」

フレンダがいきなり、ゴーグル男の背中を抱きしめた

少し柔らかい感覚に、ゴーグル男が焦る

ゴーグル「な、何やってるんですか」

フレンダ「・・・アンタはさ」

ゴーグル「は、はい」

フレンダ「スクールが大好きなんだよね?」

ゴーグル「そりゃ・・・あそこが一番心地好いんですよ」

フレンダ「だったら・・・このまま、アイテムから抜けちゃうの?」

ゴーグル「いや・・・そもそもアイテムのメンバーになった覚えはないんですけど」

フレンダ「・・・スクールに帰るの?」

ゴーグル「・・・出来るなら」

フレンダ「・・・そっか」

ゴーグル「・・・俺だって、ここもいいとは思いますよ」

溜め息をついてから、ゴーグル男が答える


820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/14(月) 09:54:42.16 ID:jT4GPBUAO
打ち止めさんに彼氏ができる予定はあるんですか?
821 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:02:51.89 ID:tK5BGLBx0
>>820 あれ、俺じゃなかったっけ

ないです、きっと無いです


ゴーグル「でも・・・でも、俺はここにいていいような人間じゃないかもしんないっす」

フレンダ「そんなことない訳よ!!」

ゴーグル「・・・小鳥遊を・・・ぶん殴ったじゃないですか」

フレンダ「あれは仕方ない・・・」

ゴーグル「フレンダさんは覚えてるか分からないですけど・・・あのあと、傷口にタバコを押し当てたり、脚を砕いたり、顎を蹴り上げたりしたんです」

フレンダ「っ・・・」

フレンダが一瞬、その光景を想像してしまう

普段の温厚な彼からは想像の出来ないような仕打ちだ

フレンダ「ど、どうして・・・」

ゴーグル「・・・あいつが敵だったから、とか憎かったから、なんていう言い訳は無理ですよ」

布団の中で体を丸くしながら、ゴーグル男が苦笑する

何か、不気味な寒さが二人を包む

ゴーグル「純粋に楽しかったんです、誰かを傷つけるのが」

フレンダ「そんなこと・・・」

ゴーグル「・・・脳内からアドレナリンが分泌されて、脳が勝手に体に指令を出して、敵を痛めつけて自分は悦に浸ってゲラゲラと笑っている、周りの静止なんて聞こえずにただ後のための言い訳だけは用意しておいて破壊を繰り返す・・・もしかしたら、って思ってましたけど、もしかしたらじゃないんです」

もう一度、ゴーグル男が溜息をつく


822 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:08:46.99 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「俺は、まだ闇を抱えてるんです」

フレンダ「そんなことない!」

ぎゅっと、フレンダがゴーグル男を抱きしめる

暖かい温もりが、ゴーグル男の冷めた心を照らす

フレンダ「守ってくれたじゃない!!私のこと・・・」

ゴーグル「あ、あれは・・・」

フレンダ「どうして!?アンタはあの時、命を張って私を守ってくれた訳よ!!」

ゴーグル「そ、そりゃ・・・あれは相手をぶちのめす絶好の機会で・・・」

フレンダ「そんな言い訳しないでよ・・・」

ゴーグル「!」

フレンダ「誰かを・・・私を守ったことは、言い訳をしなきゃいけないようなことなの?」

ゴーグル「違いますよ・・・ただ」

フレンダ「・・・いいじゃん、闇を抱えたままでも」

ゴーグル「・・・俺じゃ・・・アイテムのみなさんの中にいる資格はないんですよ」

フレンダ「関係ない訳よ」

ゴーグル「・・・そうですかね」

フレンダ「うん、絶対にそう」


823 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:12:36.26 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・一つ聞きたいんですけど」

フレンダ「何?」

ゴーグル「どうしてフレンダさんって、そんなに無防備なんですか?」

フレンダ「は、はぁ?」

ゴーグル「正直、そうやってすぐに布団の中入ってくるし・・・」

フレンダ「こ、ここここここれは!!」

ゴーグル「もしかして股が軽い人ですか?」

フレンダ「・・・」

無言で、フレンダがゴーグル男の首を絞める

ゴーグル「うわぁぁ!!死ぬ!!死にますからそれ!!」

フレンダ「私達は死なない訳よ!!!!」

ゴーグル「痛い!!なんかめちゃくちゃ力篭ってるんですけど!?」

フレンダ「誰にでもこんな風に無防備なわけじゃないもん!!!」

ゴーグル「はい?」

フレンダ「あ・・・」


824 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:16:52.12 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「それ、どういう意味ですか?」

フレンダ「べ、別に意味なんか・・・」

ゴーグル「・・・そうっすか」

気まずい雰囲気になってしまった

フレンダ(ど、どどどどどどうしよう!?さすがに気づかれた!?)

ゴーグル(俺を試してるんだ・・・俺ってそんなに軽く見えるんですかね)

フレンダ(な、なんかあの時助けに来られてちょっとドキッてしたのは事実だけどそれだけでハードルを下げすぎたというか責めやすい城なんてもはや滑稽な張りぼてな訳よ!!!)

ゴーグル(・・・軽くないっす、俺)

フレンダ(で、でも今って夜だし・・・も、もももももしかしたらこのままいきなりガバッと襲われちゃってそして・・・ふあぁぁぁぁああ!!!!!!!!)

ゴーグル(・・・あ、忘れてた・・・垣根さんのお見舞い、いつ行きますかね)

フレンダ「ねぇゴーグル!!!まだ早いと思う訳よ!!!」

ゴーグル「?急がないと退院しちゃいますよ?」

フレンダ「は?」

ゴーグル「え?」



825 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:20:39.49 ID:tK5BGLBx0

麦野「・・・おはよう、みんな」

浜面「おはよう・・・めちゃくちゃ眠いんだけど」

滝壺「・・・zzz」

絹旗「まだ一名、超夢の中ですよ」

フレンダ「・・・なんか、この平凡な朝が懐かしく感じる訳よ・・・」

ゴーグル「・・・そうですね」

麦野「・・・それで?垣根のお見舞いにはいつ行くつもり?」

午前の7時

コタツに脚や手を突っ込みながら、アイテムの面々は話していた

昨日の戦闘で負った怪我の大半は、信じられないことに治りきっている

冥土返しのくれた「秘密の薬」が効いた為だ

もちろん、そんなものを使いたくは無かったが

絹旗(この世のものとは思えない味でした・・・)



826 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:26:40.26 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・垣根さんのお見舞いですか・・・」

フレンダ「?どうした訳よ」

ゴーグル「いや・・・こんな大勢で押しかけていいものかと」

麦野「大勢かしら?」

ゴーグル「あと、グループの三人に・・・」

浜面「聞いた話だと、あいつ学校も通ってるんだろ?」

絹旗「え、そうなんですか?超初耳です」

浜面「クラスメイトとかも来るだろうし」

麦野「いいじゃない、別に垣根の友達と遭っても」

ゴーグル「俺は御免ですよ・・・」

浜面「なんで?」

ゴーグル「いや、お見舞いってもっと荘厳な雰囲気でしょう?院長の御回診とか」

麦野「全然違う」

絹旗「常識が通用しませんね」


827 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:30:14.49 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・はぁ、お見舞いには何か持って行きますか?」

麦野「そうしたほうがいいんじゃない?」

フレンダ「じゃあとっておきの鯖缶を・・・」

絹旗「超ダメです」

浜面「垣根は普通の人間だ」

フレンダ「鯖缶食べると普通の人間じゃないの!?」

麦野「体が鯖臭いもん」

フレンダ「麦野はシャケ臭い訳よ!!!」

麦野「おんどれ何ぬかしとんじゃぁ!!!」

フレンダ「かかってこーい!!!」

ゴーグル「静かにしてくださいよ・・・昨日までの引き締まった皆さんはどこへやら」

浜面「いいじゃないか、こういうほうが自然で」

ゴーグル「いいんですかコレで・・・」

滝壺「・・・zzz」



828 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:44:23.04 ID:tK5BGLBx0

土御門「・・・にゃー!!やーっと学校に行けるぜぃ!!」

土御門がいるのは、学生寮の前

ただし、そこは彼の住んでいる「男子用」の前ではない

同じ学校の、「女子寮」の前なのだ

青ピ「なんや、ホンマに風邪やったん?」

土御門「そうだにゃー」

青ピ「その割には昨日学校に来てたときも元気そうやったけどなぁ」

土御門「ま、まぁいろいろあったんだぜぃ!!」


姫神「あ、いたいた」

吹寄「ホント・・・土御門、体調はどう?昨日はあの後体調悪くなってすぐ帰ったらしいけど」

土御門「え、そ、それは」

姫神「青髪君がそう言ってなかったら。サボりになってた」

土御門「お、お前・・・」

青ピ「いやぁ、なんのことかなぁ」


829 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:47:41.83 ID:tK5BGLBx0
土御門「・・・悪いな、助かったぜぃ」

吹寄「それで・・・垣根が怪我したってのは本当なの?」

土御門「にゃー、酔って暴れて車にドーン!!だって」

姫神「そんなことってあり得ないと思う」

土御門「・・・あ、あいつは入院して寂しがってるはずだ!!見舞いに行くぜぃ!!」

青ピ「ホンマにそうなん?」

土御門「ほ、本当だぜ・・・」

姫神「怪しい」

吹寄「まさかカウボーイごっこでもして撃たれたんじゃないでしょうね」

青ピ「あっはは!!そっちのほうが垣根には似合ってるわぁ!!」

土御門「・・・」

姫神「どうしたの」

土御門「吹寄・・・お前、若干鋭いぜぃ・・・」

吹寄「?」



830 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 10:53:38.08 ID:tK5BGLBx0

一方「・・・」

打ち止め「ねぇ!!昨日まではどこ行ってたの!?ってミサカはミサカは二人を問い詰めてみたり!!」

番外「恋人が二人で行った場所を聞くなんて野暮だねー」

芳川「あら、そういうことだったの?」

打ち止め「きーっ!!」

黄泉川「はぁ・・・風紀委員の事件もあって心配したじゃんよ」

一方「あァそォかい・・・そりゃ悪かったな」

打ち止め「ねぇ!!どこに行ってたの!?ってミサカはミサカは再度確認!!!」

番外「い・い・と・こ・ろ」

芳川「こらこら、子供にそんなこと教えないの」

黄泉川「ったく・・・で?今日からはまたちゃんとここにいるじゃんよ?」

一方「ちょっと見舞いに行くだけだ」

芳川「あら、誰か病気にでもなったの?」

一方「ちょっとな」



831 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:00:43.10 ID:tK5BGLBx0

垣根「・・・心理定規は?」

冥土「・・・何、ちょっと食堂でご飯を食べているだけだね」

垣根「そうか」

垣根のいる病室の中で、二人が話していた

だがそこにあるのは、和やかな雰囲気ではない

少し尖った、居心地の悪い雰囲気だ

垣根「・・・アンタに治してもらったのは何度目かな」

冥土「そうだね、一度目は君が一方通行に負けてすぐだった」

垣根「・・・そうだろうな」

冥土「・・・聞いたよ、今回の事件には暗部が関わっていたのだろう?」

垣根「なんでお前みたいなただの医者が知ってるんだ」

冥土「君は何も知らないだろうが・・・私は、君の大先輩だよ」

垣根「ちっ・・・世の中はどこも闇を抱えてやがるのか」

冥土「だが、気づかなかっただろう?所詮闇なんてそんなものだ、表の生活に戻ることも出来る」

垣根「そうだろうなぁ」


832 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:09:20.38 ID:tK5BGLBx0
冥土「・・・さて、出来れば詳細を僕には話してほしいんだけどね」

垣根「暗部をまた結成しようとしたヤツらが現れた、そいつらと戦って傷ついた・・・それだけさ」

冥土「嘘はよくないね」

冥土返しがテレビのスイッチをつける

そこでは、まだ「風紀委員支部連続爆破テロ」のニュースが続いていた

冥土「これも、その新暗部のせいだったね?」

垣根「・・・どうしてそう思う」

冥土「・・・水素系の能力者の犯行だったね、能力の痕跡は残っていなかったと言うのに」

垣根「・・・はっ、そんなもんこんな大騒ぎの中じゃ小さな問題だ」

冥土「・・・そうだろうね」

垣根「見てみろ、誰も裏の存在になんか気づいてない」

冥土「・・・君たちは上手くやった、ただ代償が少し大きかったね」

垣根「こんな傷くらい、どうでもねぇよ」

冥土「・・・そうかい」


833 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:20:58.57 ID:tK5BGLBx0

垣根「・・・なぁ」

冥土「ん?何かね」

垣根「・・・アンタは、どう思う?」

冥土「何をかな」

垣根「俺は・・・表の人間なのかな」

冥土「人間は誰しも表と裏を持っている、君は裏のほうが大きかっただけだよ」

垣根「・・・今の俺はどうかな」

冥土「君が望むなら、表で生きていけるはずだね」

垣根「・・・その資格が俺にはあると思うか?」

冥土「ならその資格は誰が与えるものなのかね」

冥土返しがそっと、窓の外を見つめる

そこには眩しすぎるほどの世界が広がっている

冥土「それを与えられるのは、君自身だけだよ」


834 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:23:41.76 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・そうだな」

冥土「さて、僕はこの辺でお暇するよ」

垣根「あぁ?もういいのかよ」

冥土「なに、君にはそろそろたくさんのお客さんが来るはずだからね」

垣根「客?」

冥土「・・・君の目で確認してみるといいさ、君が表で暮らしていけるのかどうか」

ドアを開けた冥土返しが、小さく笑う

冥土「そんな問題など些細なことだと、君なら気づけるはずだ」


垣根(・・・些細、ねぇ)

ベッドの上に転がりながら、垣根が考える

彼が表で生きていけるのかどうか、それはずっと悩み続けたことだった

上条や美琴と違い、彼は闇の中だけで生きてきたのだ

そんな彼がいきなり表の世界で生きられるのか、分からなかった

垣根(・・・そうだな、確かめる必要がある)

彼は、確かめるべきだった


835 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:26:50.98 ID:tK5BGLBx0

土御門「にゃー!!元気か垣根!!」

バン、と突然病室のドアが開かれた

そこにいたのは、4人の友達だった

垣根「あぁ?わざわざ来てくれたのかよ」

吹寄「なんだ、本当に入院してたのね・・・」

姫神「てっきり。狂言かと思ってた」

垣根「ひでぇなお前ら・・・」

青ピ「なんや、どないしたん?風邪なわけないもんな」

垣根「・・・ちょっと怪我だよ」

土御門「だから酔って暴れて車に轢かれたんだぜぃ」

垣根「うるせぇ」

吹寄「はぁ・・・貴様、ちょっとは落ち着きを持ちなさいよ」

垣根「・・・落ち着いてるだろ?」

姫神「世界中のクールな人間を。君は敵に回した」

垣根「そんなにひどかったの今の一言」

土御門「・・・で?どうだ、調子は」


836 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:30:01.07 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・最低だ、お前らがうるさい」

青ピ「なんや冷たいなぁ」

吹寄「せっかくお見舞いに来たんだから」

姫神「なんなら。巫女の姿で来ればよかったの?」

垣根「それはすごくいいと思う」

土御門「にゃー、そんなことしたら心理定規が怒るぜぃ」

吹寄「そういえば、心理定規は?」

垣根「今は食堂で飯食ってるってさ」

土御門「なるほどな・・・そりゃ、あいつでも飯は必要だ」

垣根「・・・どうだ、そっちは」

土御門「上手くいってるぜぃ」

吹寄「?何の話?」

垣根「野暮なこと聞くなよ」

土御門「吹寄ったらムッツリー」

吹寄「な、何よ!?」


837 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:33:25.85 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・悪いな、わざわざ来てもらって」

突然、垣根が声を低くする

少し悲しそうな顔をしている

姫神「どうしたの?改まって」

垣根「・・・いや、なんでもねぇさ」

吹寄「そう?なんだか暗いけど」

垣根「気のせいだって、ちょっと傷が痛むだけだ」

吹寄「大丈夫なの?」

垣根「・・・あぁ、大丈夫だ」

布団を被り、垣根が苦笑する

本当に痛いのは、傷ではない

垣根「・・・本当にありがとよ」

青ピ「じゃ、そろそろ学校やから・・・」


青ピ「早くよくなって、また学校に来てな」

垣根「!」


838 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:45:40.67 ID:tK5BGLBx0
青ピ「垣根がいないとヒマなんやって」

垣根「・・・そうかよ」

吹寄「まぁ・・・たしかに、ちょっと静か過ぎるかもしれないわね」

姫神「上条君もいないとね」

垣根「・・・なぁ」

青ピ「なんや?」

垣根「俺はさ、お前達の友達か?」

青ピ「そういうこと、一一言わないでも分かるのが友達なんやで」

吹寄「それじゃ、私達は学校があるから」

姫神「お大事にね」

垣根「・・・次来るときは巫女の格好で来てくれよ」

姫神「考えておく」

土御門「じゃあな、垣根」

垣根「宿題出たら届けてくれよな」

青ピ「あーい」



839 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:52:14.21 ID:tK5BGLBx0

垣根(・・・友達・・・か)

はぁ、と垣根が溜め息をつく

昨日までの戦闘で、人を傷つけた感触がまだ手の中に残っている

それでも、きっとその手が誰かを傷つけることはもうないだろう

垣根「・・・はぁ、そうだろうな」

笑いながら、垣根が外を見つめる

眩しい、とは思うがそこが決して自分に似合わないとは思わない

垣根(・・・見てるかよクソッタレ共・・・俺は帰ってきたんだ)


トントン、と病室のドアがノックされる

垣根「あぁ?また誰か来たのかよ」

砂皿「失礼するぞ」

垣根「なんだ、砂皿じゃねぇか・・・どした」

砂皿「・・・見舞いに来ただけだ、無事でよかったな」


840 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 11:57:49.31 ID:tK5BGLBx0
垣根「そうだな、無事だったぜ」

脇腹を見せながら、垣根が笑う

砂皿「それくらいの傷なら問題ないだろう」

垣根「うっへー、冷たいヤツ」

砂皿「・・・こっちは大変だったんだ」

垣根「はぁ?後処理なんてお前、やってなかっただろ」

砂皿「・・・帰ったら、ステファニーが泣き叫んでいた」

垣根「・・・」

砂皿「・・・」

垣根「ところでさ、その花束・・・なんで菊なんだ」

砂皿「もしかしたら病室で死んでいるかもしれない、そういうときのためだ」

垣根「やめてくれ」

砂皿「・・・心理定規はどうした?」

垣根「今は朝飯食いに行ってる・・・」

砂皿「そうか、ならばちょうどいい」


841 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:07:56.40 ID:tK5BGLBx0
砂皿が真剣な顔つきになる

砂皿「・・・スクールは今回の事件で再結成した、それは仕方ないことだった」

垣根「それがどうした」

砂皿「このまま存続させるか?スクールを」

垣根「・・・そうだな、それは考えなきゃならねぇ」

垣根が眉をひそめる

スクールというのは、彼らにとって闇の象徴である

スクールが嫌いなのではなく、ただそれは彼らが闇の中にいるときの呼び名なのだ

垣根「・・・一番の問題は、ゴーグル馬鹿だ」

砂皿「・・・あいつか」

垣根「・・・あいつは、やっと守るべきものを見つけた・・・だがスクールというものが存在する限り、あいつはそこから抜け出せない」

砂皿「・・・どうするんだ、リーダーはお前だ」

垣根「・・・そうだな、俺が決めなきゃならない」

ドアの外から、足音が聞こえる

恐らくそれは心理定規のものだ

垣根「・・・三人で話そうぜ」


842 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:44:57.54 ID:tK5BGLBx0
心理「ただいま・・・あら、砂皿も来てたのね」

砂皿「あぁ、失礼している」

垣根「・・・心理定規、お前はスクールが好きか?」

心理「あら、どうしたのよいきなり」

砂皿「・・・スクールを存続させるか否かで悩んでいるところだ」

心理「そんなの、どうでもいいんじゃない?」

垣根「はぁ?」

砂皿「・・・ゴーグルは、スクールが存在し続ける限り恐らくアイテムの中に心まで置くことはできない」

心理「そうね、それで?」

垣根「それでってなぁ・・・」

心理「だって、私達はスクールという名称を無くしたところでそこにいることは変わらないじゃない」

垣根「・・・そうだな」

心理「スクールなんていう名称、無くしてもいいんじゃないの?私達が仲間であり、家族であることは変わらないわ」

砂皿「・・・その通りだな」

垣根「・・・オーケー、分かった」

垣根がぽん、と手を打つ


843 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:47:40.54 ID:tK5BGLBx0
垣根「スクールなんていう組織はやっぱり必要ない」

心理「そうね・・・暗部の象徴ですもの」

垣根「だが、そこで生まれた感情までを捨てる必要は無い」

砂皿「あぁ、そうだな」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿もついでに救ってやらなきゃならねぇ、全く俺はどこまでヒーローになればいいんだろうな」

心理「あら、素敵なことじゃない」

垣根「・・・そうかもしれねぇ」

砂皿「・・・そろそろ来るはずだ、アイテムの面々も一緒にな」

垣根「そりゃ愉快なことになるな」

垣根が首を鳴らす

心理「・・・いいの?そうなると、ゴーグル君はアイテムのほうを重視するけど」

垣根「何の問題があるんだよ?俺は別にゴーグル馬鹿を縛り付けるつもりはねぇ」

心理「・・・そう」

垣根「・・・教えてやろうぜ、あいつにだって救いがあるってことを」


844 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:50:48.12 ID:tK5BGLBx0

麦野「・・・ねぇ、ゴーグル君」

ゴーグル「なんですか?」

病院に向かう道の途中、ぽつりと麦野が呟いた

麦野「・・・あなたは結局、スクールにいたいの?」

ゴーグル「・・・そうかもしれないです」

麦野「アイテムにはフレンダがいるわ、それでも?」

ゴーグル「・・・」

ゴーグル男が、前を歩くフレンダを見つめる

浜面や滝壺、絹旗と話している彼女は笑っていた

その笑顔を守ったのは、ゴーグル男に他ならない

ゴーグル「・・・たしかに、ここにいないとフレンダさんを守ることは出来ないっすね」

麦野「だったら・・・」

ゴーグル「でも・・・俺じゃなくても、フレンダさんを守ってくれる人間はいますよ」

麦野「・・・」

ゴーグル「俺じゃなくてもいいんです・・・フレンダさんを救おうと思う人は、世の中にたくさんいる・・・あなただってそうじゃないんですか?」

麦野「そうね、私もフレンダを守りたいわ」


845 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:53:52.76 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・だったら、俺がアイテムにいる理由はないんですよ」

麦野「・・・スクールはそんなに居心地がいいの?」

ゴーグル「・・・アイテムのほうが、たしかに暖かいです」

麦野「そう・・・でも、スクールを選ぶのね?」

ゴーグル「俺にとってあそこは変える場所だったんです・・・」

麦野「・・・この事件が始まったときも、あなたはすぐにあそこに帰ったものね」

ゴーグル「・・・どうすればいいんでしょうね」

石畳を見つめ、ゴーグル男が笑う

いくら道を辿っても、結局は同じところを堂々巡りだ

答えを求めても、結局それはどこかの他人が作り出したジンクスでしかない

ゴーグル「・・・深みに一度嵌ってしまったら、もう答えなんて見えないんですよ」

麦野「・・・誰かが、あなたに手を差し伸べたとしたら?」

ゴーグル「誰がいるんですか」

麦野「・・・あなたはどうしてフレンダを守ったの?」


846 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:56:16.31 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・スクールよりも、フレンダさんのほうが大事だったからです」

麦野「・・・答えなんて出てるんじゃないの?」

ゴーグル「・・・フレンダさんのほうが大切です、でもそれとこれとは別なんだと・・・」

麦野「別じゃないわよ」

麦野がフレンダを見つめる

彼女がここにいるのも、笑っていられるのも

それは、ゴーグル男のおかげなのだ

麦野が何をしたわけでも、他の誰かが何をしたわけでもない

麦野「・・・あなたがいないと、フレンダは悲しむわ」

ゴーグル「それは残念ですよ」

麦野「・・・フレンダが悲しむところを、あなたは見たいの?」

ゴーグル「まさか・・・そうならないように、俺は戦ったんですよ?」

麦野「だったら守り続けなさい」

ゴーグル「・・・俺に出来ますかね」

麦野「もう一度、実行してるじゃない」


847 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 12:58:40.26 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「・・・あれは偶然守れただけですよ」

麦野「それでもいいじゃない、守ってくれた人間は・・・特別な相手になるものよ」

かつて麦野を救った浜面がそうであるように

フレンダにとって、ゴーグル男は特別であるはずなのだ

麦野「・・・お願い、あの子の傍にいてあげて」

ゴーグル「・・・」

麦野「なんなら・・・フレンダをスクールに入れてもいい」

ゴーグル「いいんですか?」

麦野「もう、あの子の悲しむ顔は見たくないもの」

ゴーグル「・・・組織の壁を越えてでも・・・ですか」

麦野「私達は表で生きてる・・・だったら、もう組織にこだわる必要はないのよ」

ゴーグル「・・・守りたいものを守ればいい、と?」

麦野「そうよ・・・それが、表での生き方だと思う」

ゴーグル「同感ですよ」


848 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 13:01:17.50 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル男が苦笑する

彼は、まだ暗部の常識に囚われていた

組織というものが存在していて、決してその壁を越えてはならない

そんな常識に

ゴーグル「・・・俺は、フレンダさんを守りたいんです」

麦野「・・・ありがとう」

ゴーグル「でも、もちろん浜面さんや麦野さんや・・・みなさんも守りたいです」

麦野「守ってもらうほど軟弱じゃないわよ」

ゴーグル「ははは・・・そうですね」

目を細め、ゴーグル男が空を見上げる

眩しい太陽が、なぜか少しだけ彼に近づいて見えた

ゴーグル「・・・垣根さんは、あんな高いところを飛んでるんですね」

麦野「えぇ、私達にはまだ届きそうもないわね」

ゴーグル「いいですよ、それでも」


ゴーグル「・・・垣根さんを見上げていれば・・・自然と、俺は空を見ていられますから」



849 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 14:58:27.63 ID:tK5BGLBx0

垣根「・・・来るぞ」

心理「あら、分かるの?」

垣根「なんとなくな」

シンと静まり返った病室

外の喧騒が、まるで嘘のようなその静けさに、誰かの足音が混じっている

砂皿「・・・いいのか、本当に」

垣根「ダメな理由が見つからないだろうが」

砂皿「・・・そうだな」

垣根「・・・ゴーグルの野郎がそれで納得してくれるなら問題ないけどな」

心理「大丈夫よ・・・彼は強いもの」

砂皿「・・・守るものを知った人間は、みな強いさ」

垣根「・・・あいつの強さを信じてみるか」

心理「そうしましょう」



850 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:05:07.85 ID:tK5BGLBx0
ゴーグル「ちわーっす・・・」

垣根「よぉ・・・アイテムもおそろいか」

絹旗「調子はどうですか?」

垣根「まぁまぁだな・・・まだ痛むけどよ」

垣根が肩をすくめる

浜面「至近距離から銃撃くらって生きてるほうがどうかしてるけどな・・・」

滝壺「かきねは運がいいね」

垣根「運がよければそもそも撃たれません」

麦野「・・・それはおいといて・・・アンタ達はどうするの?」

垣根「何をだよ」

麦野「スクール・・・存続させるの?」

麦野の一言に、垣根が少しだけ言葉を詰まらせる

垣根「・・・それは、俺達だって悩んだことだ」

麦野「でしょうね・・・アンタ達にとって、スクールは大切な居場所だったでしょうからね」



851 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:09:19.40 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・ゴーグル馬鹿、てめぇはどうしたいんだ」

ゴーグル「俺には分からないですよ、それにリーダーは垣根さんです」

垣根「・・・いい選択だ」

垣根がゆっくりと体を起こす

アイテムの一員をぐるりと見回してから、ニヤリと笑う

垣根「・・・アイテムが羨ましい時があるんだよ」

絹旗「?どうしてですか?」

垣根「・・・暗部の組織だったはずなのに、それがいつしかただの仲良しグループの名称になってやがる」

滝壺「うん・・・そうかもね」

フレンダ「・・・私達は友達な訳よ、きっと」

垣根「・・・俺達には無理だ、ゴーグル馬鹿はたしかに大事な部下だった、砂皿だってそうだ」

砂皿「だが、スクールという名称を聞けばやはり眉をひそめてしまう」

垣根「・・・スクールなんて呼び名、必要ないのかもな」


852 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:17:32.08 ID:tK5BGLBx0
心理「・・・そうね」

ゴーグル「・・・どうするんですか?垣根さん」

垣根「さーて、どうするかねぇ」

ニヤニヤと笑いながら垣根が胡坐をかく

まるで子供のように、無邪気な笑顔だ

垣根「・・・スクールなんて呼び名は捨てようぜ、解散だ解散」

ゴーグル「・・・そうっすか」

垣根「ゴーグル馬鹿、てめぇが守りたいものはスクールじゃなかったはずだ」

ゴーグル男の目を見つめて、垣根が笑う

垣根「・・・それは、スクールの中にはなかったもののはずだ」

ゴーグル「・・・そうっすね」

垣根「砂皿、てめぇはステファニーを守るべきだ」

砂皿「・・・そうだろうか」



853 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:24:56.67 ID:tK5BGLBx0
垣根「あぁそうだ・・・お前が守るべきなのも、スクールにはなかったはずだ」

砂皿「雇われた身だったからな」

垣根「・・・それでも、てめぇはスクールの重要な一員だった、ありがとよ」

砂皿「あぁ」

垣根「・・・心理定規」

心理「何?」

垣根「俺が守りたいものは、スクールの中でもなければ他の世界にあるものでもない・・・」

心理「・・・」

垣根「お前がいれば、それだけでよかったんだ」

心理「分かってるわよ」

垣根「だとしたら・・・スクールというものを存続させる理由はない」

麦野「ふーん・・・それでいいの?」

垣根「あぁ、もちろん」



854 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:34:07.56 ID:tK5BGLBx0
麦野「・・・そう、それじゃ本当にスクールは解散なのね」

垣根「あぁ・・・ま、表に暮らすようになってから無かったも同然だ」

ゴーグル「・・・なんだかんだ言っても、寂しいもんですね」

垣根「・・・だからよ、ゴーグル馬鹿・・・てめぇはてめぇの守りたいもののために生きていけ」

ゴーグル「・・・」

垣根「暗部とか闇だとか、そういうことはどうだっていいんだ」

垣根がゴーグル男の顔を指差す

垣根「その死んだ人間のものだと言われた目で・・・泥の中だと言われた人生で、たった一つてめぇの守りたいものを守ってみせろ」

ゴーグル「分かってますよ、言われなくても」

垣根「・・・お前の人生はお前が決めるもんだ、他人が決めるものじゃない」

ゴーグル「・・・」

垣根「こいつは・・・スクールのリーダーとしての最後の命令だ」


垣根「いいかゴーグル馬鹿、てめぇの人生を歩め」

ゴーグル「・・・最後の命令なら、聞かなきゃならないっすね」



855 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:42:57.87 ID:tK5BGLBx0
垣根「よーっし!!これで解散だ!!てめぇら自分の好きなところに行きやがれ!!」

垣根がしっし、と追い払うように手を振る

だがゴーグル男は垣根をじっと見たまま動かない

垣根「・・・なんだよ、何か不満か?」

ゴーグル「俺の帰る場所なんて、ここしかないんですよ」

垣根「・・・」

ゴーグル「スクールとアイテム、なんてい壁はもう無くなった・・・なら、ここにいるみなさんの傍が俺の居場所ですよ」

垣根「フレンダがいて、俺がいて、心理定規がいて・・・か」

ゴーグル「・・・そうです」

垣根「・・・いい度胸だ、てめぇに背負いきれるのか?」

ゴーグル「全員を背負うのは無理です、でも俺は俺のプライドを背負ってる・・・そして、そのプライドを守るにはみなさんを守らなきゃならない」

垣根「オーケー、上等だクソッタレ」

垣根が拳を上げる

ゴーグル「どうも」

ゴーグル男が、それに自分の拳を軽くぶつける


856 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:46:56.45 ID:tK5BGLBx0
垣根「さて・・・それじゃ、俺は一眠りだ」

ゴーグル「・・・じゃあ、おやすみなさい」

垣根「ちょっと待て、その前にお前とは男同士の話がしたい」

ゴーグル「?」

滝壺「・・・じゃあ私達は外で待ってるね」

絹旗「早く終わらせてくださいね」

浜面「じゃ、またな垣根」

垣根「おうよ、ありがとな」

フレンダ「ゴーグル、早く終わらせてどっか行く訳よ!!!」

ゴーグル「分かりましたよ・・・」

アイテムのメンバー、そして心理定規と砂皿が外に出る

病室の中には、垣根とゴーグル男だけだ

少し気まずい雰囲気が流れている

ゴーグル「・・・なんですか?」



857 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 15:58:39.30 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・一つだけ聞きたいんだけどさ、お前はフレンダのこと・・・どう思ってる?」

ゴーグル「掛け替えない存在です」

垣根「・・・だろうな、それは見ていて分かる」

垣根が外を見つめる

病院の外で、他の一同は何かを話している

笑い合っている彼らには、闇なんて付き纏ってはいなかった

垣根「・・・お前は、あいつを守るために命を張った」

ゴーグル「そうですね」

垣根「・・・自分よりも大切な存在か?」

ゴーグル「・・・俺に、いろいろなことを与えてくれた人ですから」

垣根「・・・そうか」

小さく笑ってから、垣根がゴーグル男を見つめる

垣根の知っている彼よりも、少しだけ大きく見えた

その大きくなった彼は、一体何を抱きしめているのだろうか


858 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 16:26:11.96 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・だったら守れ、徹底的に」

ゴーグル「・・・分かってますよ」

垣根「・・・ゴーグル男、てめぇはやっとこさ普通の日常を手に入れたんだ」

ゴーグル「・・・掴んだものは放すな、そういうことっすね」

垣根「そういうことだ」

ゴーグル「・・・分かりました、約束してみせます」

垣根「・・・それだけだ、じゃあな」

ゴーグル「・・・垣根さん」

垣根「んだよゴーグル馬鹿」

ゴーグル「・・・俺は、スクールが無くなってもあなたや心理定規さんを尊敬してますよ」

垣根「・・・そうかい、そりゃ難儀だな・・・俺達の背中を追うなら空を飛ばなきゃならないぜ」

ゴーグル「・・・それでもいいっすよ、俺はあなたを追い続ける」

垣根「・・・ゴーグル馬鹿、お前はいいヤツになったな」

ゴーグル「どうも」

ゴーグル男が背中を向ける

ゴーグル「・・・やっと、帰ってきたんだ」

垣根「・・・そういうこった、お帰りなさいって言ってやろうか」

ゴーグル「それを言って欲しいのは、あなたにではないっすよ」


ゴーグル「・・・それじゃ、また」


859 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 16:48:54.72 ID:tK5BGLBx0

フレンダ「あ、遅かった訳よ!」

ゴーグル「えぇ・・・これでもハイスピードっすよ」

ゴーグル男が溜息をつく

病院の外には、綺麗な陽射しが降り注いでいた

これを浴びれない垣根は可愛そうだ、とゴーグル男は感想を抱く

ゴーグル「・・・心理定規さんはこれからどうするんですか?」

心理「学校に行くにしても時間が中途半端だし・・・」

麦野「じゃあ私達と出かけましょうよ」

心理「あら、いいの?」

滝壺「行こう行こう」

心理「ふふ・・・じゃあ行きましょうか」

フレンダ「楽しくなりそうな訳よ!!」

ゴーグル「そうっすね」



860 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 16:54:31.37 ID:tK5BGLBx0

垣根「・・・楽しそうだな」

そんな一同を、垣根は病室の窓から覗いていた

表の世界というのは本当に暖かい

彼は、このゆったりとした日常が好きだった

垣根(・・・いいもんじゃねぇか)

小さく笑ってから、垣根が携帯電話を取り出す

着信があったわけではない

ただ、なんとなく誰かからの電話が掛かってきそうな気がしたのだ

垣根(・・・そうだよな、あのクズが暗部の事件をスルーしてるってわけはねぇ)

ニヤニヤと笑いながら着信を待つ

暗部の中の、最も暗い場所にいた人間の着信を

そして


コールが鳴った

誰かなど確認する必要も無い



861 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:01:36.60 ID:tK5BGLBx0
垣根「よぉ」

アレイ『・・・お疲れ様、とでも言うべきかな』

アレイスター

学園都市の統括理事長であり、暗部にさえ精通している人間

垣根「お前、どうやって電話掛けてきてるんだ」

アレイ『電話?まさか、君は滞空伝線というものを知っているだろう』

垣根「・・・」

くるり、と垣根が病室を見渡す

もちろん、そんなことをして見えるわけはない

アレイ『見渡しても意味はないぞ』

垣根「こっちの行動は丸分かりなんだな」

アレイ『何、これでも未だに統括理事長でね』

垣根「冷蔵庫のクセに」

アレイ『君が言うのか』

垣根「・・・で?何の用件だ」


862 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:12:08.42 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・どうだったね、暗部の再結成は』

垣根「ふざけんな、阻止しただろうが」

アレイ『そうだね・・・今回は、と言ったところか』

アレイスターが愉快そうに笑う

やはり彼は、統括理事長なのだ

誰かの家族になり、誰かの温もりを得た今でも、彼は根本が変わっていない

それでも、人間らしくはなったのだが

垣根「・・・うるせぇな、これからああいう馬鹿が出てくる可能性はたしかにある」

アレイ『その度に君は戦うか?』

垣根「知るかよ、俺はただ守るだけだ」

アレイ『守るだけ・・・か、素晴らしい正義だ』

垣根「・・・お前に一つ聞きたい」

アレイ『どうして私が今回の件に手出しをしなかったか、かい』

垣根「そうだ」

アレイ『ふふふ・・・君は何も分かっていないのか』


863 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:14:56.11 ID:tK5BGLBx0
垣根「なんだと?」

アレイ『・・・元暗部の人員を動かしたのは誰だ?』

垣根「・・・統括理事会か」

アレイ『そうだね』

垣根「・・・だがな、てめぇがそれを派遣したのは事件が既に解決した後だ」

アレイ『違うんだよ垣根帝督』

アレイスターの声は、どこまでも透き通っている

あまりにも透明すぎるため、恐ろしく感じるほどに

垣根「・・・どういうことだよ」

アレイ『・・・君たちがあれを片付けるということくらい、私には分かっていた』

垣根「なぜだ」

アレイ『私の作り出した暗部の人間が、ただそれに憧れた偽者になど敗れると思うか』

垣根「・・・」

アレイ『そんなわけがないだろう』

垣根「てめぇは・・・わざと見過ごしていたのか」


864 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:20:02.73 ID:tK5BGLBx0
アレイ『そうだな・・・私にも利益があった』

垣根「俺の・・・天使化だな」

アレイ『天使?何を言っている、君はまだその領域には達してなどいない』

垣根「・・・分かってるさ、俺だってあれがまだ不完全だと思っている」

アレイ『そして、一方通行もまた不完全だった』

垣根「あいつも能力を使ったのか」

アレイ『素晴らしかったよ、やはり彼のベクトル制御能力は評価に値する』

垣根「はっ・・・そんなもののためだけにてめぇはあの事件を見過ごしたのか」

アレイ『見過ごしていたのではないさ』

垣根「・・・!!ちょっと待て、てめぇどうやって俺があの力を解放したことを知ったんだ・・・?」

アレイ『何を言っている、君のよく知っている方法さ』

垣根「・・・滞空伝線・・・!!」

アレイ『そういうことだよ、君たちの行動なんて簡単に私の元に情報として入ってくる』



865 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:25:52.58 ID:tK5BGLBx0
垣根「てめぇ・・・そういうことかよ・・・」

アレイ『学園都市を滅ぼす?無理な話だ、彼らがどこに爆弾を隠していたかなんて筒抜けだぞ』

垣根「全部滞空伝線で監視してやがったな」

アレイ『何・・・もちろん、最後まで手出しはしないつもりだったよ、君たちが暗部と手を切るためにね』

垣根「違うな、お前は俺達をもう一度あそこに投入したかったんだ」

アレイ『なぜそう思う』

垣根「・・・暗部の存在を知らせるためだ」

アレイ『君たちは元暗部だろう、そんな必要がどこにある』

垣根「・・・そうだな、ここからは俺の推測だが」

ベッドの端を叩きながら、垣根が笑う

垣根「お前は・・・俺達をここから抜け出させるつもりがない」

アレイ『ここ、とは?』

垣根「学園都市・・・そうだな、もっと言えばお前の手の中からだ」

アレイ『・・・ほう』

垣根「学園都市の外に行けば、俺達を追いかける暗部も諸共外に出てしまう、と言いたかったんじゃないか」


866 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:29:36.51 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・その通りだとしたら、君はどうする?』

垣根「てめぇはクズだ、と笑ってやる」

アレイ『ただの牽制だ・・・どうせ君は学園都市の外に出るつもりはないだろう』

垣根「嫌な思い出を蘇らせるな」

アレイ『・・・そうだな、それに関しては謝ろう』

そう言うアレイスターの声に、反省の色などなかった

むしろ垣根の怒りさえを楽しんでいるようだ

垣根「・・・それだけじゃない、今回の件はもう一つ・・・元暗部の結束力を高めるものだった」

アレイ『それが何か?』

垣根「・・・どうしてあの元暗部の下っ端達はわざわざ集まったと思う」

アレイ『平和な日常を守るため、というものだろう』

垣根「・・・その通りだ、俺たちは共通の理由のために戦った・・・」


垣根「・・・分かるか?暗部から抜け出して尚、俺たちは一つの軍隊のように動いていた」



867 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:33:16.13 ID:tK5BGLBx0
アレイ『素晴らしい統率力だったよ』

垣根「こんな統率の取れた軍隊があれば、海外の魔術サイドとも戦えそうだな?あぁ?」

アレイ『・・・』

垣根「今回の事件で、俺達元暗部のメンバーには一種の絆さえ生まれてしまった・・・損得を考えない、下らない感情だけでの絆が」

アレイ『それがどうした?』

垣根「・・・無理矢理従わされたわけではない、今回の件は俺達が自主的にやったことだ」

アレイ『・・・』

垣根「・・・そうだ、俺たちは平和な日常を守るためになら戦ってやる・・・だが、お前はそれを逆手に取った」

アレイ『わざと、平和な日常を壊したと?』

垣根「・・・新暗部とお前は繋がっているわけではないな」

アレイ『あぁ、彼らの存在には気づいてなかった』

垣根「嘘をつくな・・・滞空伝線の監視の目から、あいつらは逃れられていない・・・もちろん俺達もな」

アレイ『・・・おやおや、鋭いな』



868 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:37:08.22 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・てめぇは試したんだ、俺達にまだ戦う力があるのかを」

アレイ『その通りだ、素晴らしい推察力だよ』

垣根「・・・どうだった、俺たちは合格か」

アレイ『百点満点だよ、本当に満足だ』

垣根「・・・クソが」

アレイ『素晴らしかったな・・・これこそ、本当の暗部だ』

クツクツ、と笑い声が聞こえる

この世の人間のものとは思えないほどの凶悪な笑い声だ

垣根「・・・何がおかしい」

アレイ『驚いた、君たちのその感覚に錆が走らなかったことが信じられないよ』

垣根「・・・俺達のいた暗部は、そこまで生ぬるくは無かった」

アレイ『・・・どうだった、懐かしかったか』

垣根「最低だったぜ」



869 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:40:18.94 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・そうだな、今回の事件はいわばデモンストレーションだよ』

垣根「魔術と科学の戦争が起きたときのための、か」

アレイ『・・・魔術側に対するにはもったいないほどの戦力だ』

垣根「・・・だからこそ、今回の件をお前は見逃したな」

アレイ『何・・・君たちが全ての計画に気づかなければ、私の部下を向かわせるつもりだった』

垣根「お前の部下だと?」

アレイ『そもそも、なぜ彼らが学園都市の監視の目を盗んでファイブオーバーや六枚羽などを入手できたと思う?』

垣根「・・・てめぇが、わざと監視の目を緩めたな」

アレイ『ふふふ・・・ははは!!その通りだよ、デモンストレーションを行うにはある程度の力を持った敵が必要だろう?』

垣根「・・・そうだな、弱すぎる相手じゃ意味がない」

アレイ『怒っているのかね』

垣根「ったりめぇだろ・・・クソ」


870 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:44:28.01 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・なぜ怒ることがある?』

垣根「心理定規は傷ついた・・・他のヤツらだってな」

アレイ『誰一人としてしななかっただろう?』

垣根「ありゃ幸運だっただけだ」

アレイ『何を言っている、君は分かっていないのか?』

垣根「・・・」

アレイ『ファイブオーバーは学園都市が開発したのだぞ、それを簡単にハッキング出来ると思うか』

垣根「あれも、本当はてめぇが操っていたのか」

アレイ『あれほどの兵器に、セーフティを掛けていないわけがないだろう』

垣根「本当かよ」

アレイ『番外個体という妹達の一人がハッキングを掛けたときにも発動したはずだがな』

垣根「・・・」

アレイ『・・・つまり、あれは私がわざと敵に扱わせていたんだ』

垣根「なぜだ」

871 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:48:15.58 ID:tK5BGLBx0
アレイ『彼らは、自分達の手の中にファイブオーバーがあると思いこんでいた』

垣根「・・・」

アレイ『君達が危険になれば、私がファイブオーバーで彼らを抹殺するつもりだったのだよ』

垣根「ちっ、俺達のボディーガードにはもったいないほどだな」

アレイ『そうかね?君達のような人材を簡単に殺すことは出来ない』

垣根「・・・なんでゴーグル馬鹿やフレンダを攻撃した」

アレイ『あれはAIMの集合体だろう?死ぬことはあるまい』

垣根「だからどうした、あいつらは生きてるんだ」

アレイ『研究のためだよ、風斬氷華と同じと言ってもいい存在・・・それは、中々興味深くてね』

垣根「ふざけんな、てめぇはやっぱりクズだな」

アレイ『罵られても構わないさ、だが今回の件で君達は統率が取れた』

垣根「・・・それだけは認めてやる」

アレイ『だとすれば、それでいいではないか』

通話口から聞こえるのは、悪魔の笑い声だった

アレイ『・・・おかげで、君達は平和な日常を守る力を手に入れた』



872 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:54:03.38 ID:tK5BGLBx0
垣根「力だと?ふざけんな、こんなのはただの暴力だ」

アレイ『そんなことはない、これからどのような問題が起こるかも分からない』

垣根「感謝でもすると?」

アレイ『まさか・・・だが、責められるつもりもないよ』

垣根「・・・お前がそこまでして俺達の再結成を望んだのはなぜだ」

アレイ『・・・何、今の平穏を守るには君達の力が不可欠だ』

垣根「あぁそうかい・・・てめぇは今、幸せな日常を手にしてるんだったな」

アレイ『自分の幸せのためなら、君達など犠牲にしても構わない』

垣根「テクパトルが怒るぜおい」

アレイ『ふん・・・彼も、それを理解している頃さ』

垣根「何?」

アレイ『イギリスの魔術サイドでも問題が起きているのさ』

垣根「・・・」

アレイ『あれほどの機関と戦うには、君達の力が必要だと痛感しているだろう』

垣根「ちっ・・・てめぇの思惑は完璧に叶ったわけだな」


873 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 17:59:46.12 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・恨むなら私を恨むな、私は君達も守るつもりだったのだよ』

垣根「ふざけんなよ・・・クソ」

アレイ『・・・申し訳ないとは思っているさ』

垣根「・・・知るかよ」

アレイ『・・・とにかく、今回の事件に私は関わっていたということだよ』

垣根「それをどうしてわざわざ俺に伝えたんだよ」

アレイ『・・・どうしてだと思うかい』

垣根「・・・てめぇは、俺に牽制を掛けている」

アレイ『ほう、どういう意味かね』

垣根「てめぇはまだ暗部を抱えている・・・俺達は四六時中監視されている、そして・・・何より、魔術側でも動きがあった、それを伝えるために電話してきたんだろ」

アレイ『正解だ』

垣根「・・・俺がお前に逆らわないように・・・違うか」

アレイ『・・・このことを他の全員に伝えるかね』

垣根「やめておく・・・こんな苦しみを背負うのは俺だけでいい」


874 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 18:03:57.53 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・ずいぶんと優しいのだな』

垣根「優しい?甘いだけだ」

アレイ『・・・面白いな、君は・・・一方通行といい君といい、本当に面白い』

垣根「・・・ムカつく言い方だな」

アレイ『さて・・・そろそろ私はお暇したいのだが』

垣根「・・・今回の件は、俺達が解決した」

アレイ『そうだな、あまり私は手を出さないで済んだ』

垣根「・・・てめぇには汚点なんてなかったことになる」

アレイ『・・・そうだ、完璧な計画とは思わないか』

垣根「・・・なぁ、アレイスター」

アレイ『何かね』

垣根「いまさらお前に歯向かうつもりはない、てめぇが俺達を捨て駒として扱おうが、今の日常を守れるのなら俺はそれで文句なんて無い」

アレイ『・・・』

垣根「だが一つだけ言っておく」


垣根「心理定規を傷つけるんだったら、俺は何があろうとてめぇを殺す」


875 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 18:17:07.01 ID:tK5BGLBx0
アレイ『出来るものならばやってみたまえ』

垣根「・・・そうだな、簡単なことじゃねぇさ」

アレイ『わざわざ一人の少女のために命を張る・・・か』

垣根「・・・下らないだろう?だがな、お前が今の家族を守りたいと思うのとなんら大差はない」

アレイ『・・・そうか』

垣根「守ることを知った人間は恐ろしいほどに強い・・・それを忘れるなよ」

アレイ『・・・そうだね、心に留めておこう』

垣根「アレイスター、てめぇは何かを成し得たつもりだろうが・・・何一つ、成し得ちゃいねぇんだよ」

アレイ『ふん、それは君の主観だろう』

垣根「あぁ、俺の主観だ・・・だがな、俺の世界は俺の主観が道理なんだよ」

アレイ『・・・ならば、私の世界では私の主観こそが道理だ』

垣根「オーケー、なら互いの道理をぶつけてやるよ」


876 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 18:26:09.78 ID:tK5BGLBx0
アレイ『・・・ではな、垣根帝督』

ぷつり、と通話が切れる

垣根(・・・最後の最後でムカつく話だ)

垣根は、眉をひそめていた

アレイスターが言っていたのは、つまり「垣根達はアレイスターのための駒」だということだった

垣根達がどれだけ足掻こうと、彼らが「学園都市」の住人であることは変わらない

そして、その学園都市の治安を守るのは「風紀委員」や「警備員」だけでは足りないのだ

今回のように、もしも裏の世界が絡んできたとしたら

治安を守るのは表の組織ではない

垣根(・・・俺達も、ずいぶんと深い泥の中にいたわけだ)

今になって、小鳥遊の言葉の意味を理解する

学園都市は、統括理事会は、垣根達を決して解放することはない

放し飼いの状態に留めているだけなのだ


877 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 18:30:02.75 ID:tK5BGLBx0
垣根(・・・自由に泳がせていて、ここぞという時には俺達を利用する)

垣根(・・・はん、ムカつく統括理事長様だ)

普段はふざけていても、やはり内面は黒いものだ

垣根(それは俺も同じかな)

垣根(・・・アレイスター・・・てめぇ、家族を守るために周りを巻き込むほどの人間だったのか)

垣根(・・・ずいぶんと、人間じみたもんだな)

呆れたように垣根が笑う

垣根「はは・・・こりゃ愉快だ」

銃弾を地面に向けて撃ったとき、暗部の彼は死んだはずだった

垣根(・・・死んでなんかいなかったんだな)

銀の弾丸を、闇の中に撃つことはできなかった

悪あがきだったのだ、今回の事件は

垣根(・・・だがな、上等だぜアレイスター・・・暗部の統率が取れていれば、俺は日常を守れる・・・)


垣根(お前が家族を守れるように・・・俺は心理定規を守れる、問題はねぇな)


878 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 18:34:10.90 ID:tK5BGLBx0

一方「・・・よォ」

垣根「あぁ?なんだ、お前達も来たのかよ」

アレイスターとの通話が終わってすぐ、一方通行と番外個体が垣根の病室に入ってきた

ノックをするなんていう常識はない

垣根「・・・わざわざご苦労さん、でも俺が着替えてたらどうするつもりだった」

番外「端から端まで見てあげるつもりだった」

垣根「ちっ・・・そういうのはいらねぇよ」

一方「元気そォで何よりじゃねェか、くたばってるかと思ったぜ」

垣根「あぁ?俺こそ、てっきりてめぇは電池切れで地面のた打ち回ってるかと思ってたんだがな」

一方「喧嘩売ってンのかよ」

垣根「おっかしいな、電池が無くなると日本語がおかしく変換されるのか?ジョークだよジョーク」

一方「・・・表はもォ事件のことを解決した気でいやがる」

垣根「それでいいんだよ、こんな悲劇はこれで御終いだ」

番外「・・・そうだね、表の人には刺激が強すぎる」


879 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 18:37:37.61 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・それで?何しに来た」

一方「見舞いだって言ってるだろ」

垣根「・・・言ってねぇよな」

一方「・・・そうだな、てめェが愉快に寝てやがった間にあったことを説明してやるよ」

一方通行が椅子に座る

やはり、杖をついたまま立っているのは辛いのだろうか

一方「・・・風紀委員支部爆破テロの犯人は・・・知ってるか」

垣根「あぁ、一人の能力者、なんだっけ」

一方「そォだ・・・お前も、そういう風に振舞ってろ」

垣根「了解・・・それで?他に何かあったか」

一方「・・・真犯人は、今頃統括理事会によって裁かれている・・・」

番外「クソッタレな結末が待ってるだろうね」

垣根「どうでもいいんだよ、他には」

一方「・・・あのビルな、建設機械の不備による崩壊ってことになってる」

垣根「ってことは、まだ建設は続くのか」

一方「あァ」

垣根「そりゃよかったな」


880 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 19:33:18.09 ID:tK5BGLBx0
一方「・・・まァそンなところだ、大して今までと変わったことはないな」

垣根「そうか・・・なぁ、番外個体」

番外「ん?なに?」

垣根「ちょっと飲み物買ってきてくれねぇか?コーヒーが飲みたいんだよ」

番外「オッケー・・・じゃ、行ってくるね」

番外個体が一人で病室から出て行く

残されたのは、学園都市の能力者、その中のトップ2だった

垣根「・・・さて、番外個体もいなくなったな」

一方「・・・何のつもりだ」

垣根「てめぇにだけは話しておく必要があるかもな」

真剣な顔で、垣根が呟く

アレイスターからの電話の内容を、彼には話さなければならない

垣根「・・・アレイスターから電話があった、お前達が来る少し前にな」

一方「何だと?」



881 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 19:37:45.45 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・あいつは、今回の事件を監視してやがった」

一方「滞空伝線か」

垣根「・・・あぁ、そして・・・それを知りながらあいつは手を出してこなかった」

一方「・・・いいのか?この部屋にも恐らく・・・」

垣根「・・・問題ないさ、どうせお前に話しても何の問題もないからな」

一方「・・・それで?どォいう話だった」

垣根「・・・お前が、例の力を使ったということだ」

一方「・・・あァ、たしかに使ったが・・・それがどォした」

垣根「その力があれば、学園都市は魔術側と戦えるんだとよ」

一方「!!野郎・・・俺達を兵として扱うつもりか」

垣根「・・・そうだな、腐っても統括理事長だ」

一方「ちっ・・・なるほどな、俺達を暗部に戻すのを許したのも・・・」

垣根「そうだ、元暗部の結束をより高めるためだとよ」


882 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 19:42:15.87 ID:tK5BGLBx0
一方「・・・なるほどなァ・・・あいつ、考えてやがる」

垣根「・・・俺も、お前に似た力を手に入れてしまった」

一方「・・・天使に近い力だな」

垣根「アレイスター曰く、俺達はまだその領域には踏み入ってないらしい」

一方「・・・はン、あンな力でもまだ届かねェのか」

垣根「・・・そして、アレイスターは俺達の行動を監視して・・・暗部の再結成を、高見から見物してやがったんだ」

一方「・・・なるほどな」

垣根「・・・俺達は、誰かを守るために戦った」

一方「だが、アレイスターにとってはそンなことは関係ねェ」

垣根「・・・俺達の力なんて、ただの兵器でしかないんだ」

一方「・・・どォする、俺達はそンなことに従ってられるような人間だと思われてる」

垣根「関係ねぇだろ・・・俺はな、心理定規さえ守れればいいんだよ」


883 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 19:47:26.83 ID:tK5BGLBx0
一方「・・・俺もそうだ」

垣根「逆らうんじゃねぇ・・・いいか、長い物には巻かれていこうぜ」

垣根が少しだけ、前に屈む

その笑みは、決して弱者のものではない

学園都市の犬としてではなく、野良犬として生きるのだ

飼い主などいない、ただ不満があれば噛み付いてしまう獰猛な獣に

垣根「・・・どうだ?それでいいとは思わないか」

一方「長い物には巻かれろ・・・か、気に食わねェな」

垣根「違うんだよ・・・長い物をいつか超えてみせようぜ」

一方「・・・いいじゃねェか」

垣根「どうせ、アレイスターの野郎は滞空伝線でこの会話を聞いてやがる」

二人が、病室の中を見渡す

どこかに浮かんでいる小さな滞空伝線を通して、アレイスターは二人の会話を聞いているはずだ


884 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 19:52:15.59 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・宣戦布告だ」

一方「何に対してだ?アレイスターか、それとも学園都市か」

垣根「そうだな・・・クソッタレな運命に対してだ」

一方「ははは!!いいじゃねェか・・・面白ェ」

垣根「・・・どうだ、俺と組んでみないか」

一方「あァ?お前みたいな野郎と組む必要がねェンだよ」

垣根「一人より二人だろ?それに、長い物に巻かれるんだったら尚更だ」

一方「・・・アレイスターが黙っちゃいねェぞ」

垣根「知ったことかよ・・・別に学園都市に反旗を翻そうってんじゃねぇ」

垣根が一方通行に向かって手を差し出す

垣根「握るか、叩くか・・・どっちかだ」

一方「・・・」

垣根「握ればお前は・・・そうだな、前に進む、叩けばお前は地に堕ちる」

一方「・・・これは、暗部との戦いを意味してるのか」


885 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 19:55:41.20 ID:tK5BGLBx0
垣根「言っただろう、クソッタレな運命との戦いなんだよ」

一方「・・・」

垣根「番外個体がそろそろ帰って来る・・・コーヒーが、祝杯になるのか否かも掛かってるぞ」

一方「くっだらねェ・・・俺は一人でもやっていけンだよ」

一方通行がニヤリと笑う

学園都市のツートップが浮べているのは、獰猛で、しかし純粋な笑顔だった

暗部でも表でもない、まるでそんなことは関係ないと言わんばかりの笑み

垣根「・・・どうだ、もう一度聞いてやるよ」

一方「あァ」

垣根「この手を握れば、前に進む・・・この手を叩けば地に堕ちる」

垣根が、差し出した手を顎で差す


垣根「どうだ、俺と・・・大切な誰かを守ろうぜ」

一方「乗った」

パン!!と高い音がして、二人の手が合わさる



886 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 20:01:19.85 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・オーケー、これから何か問題が起きれば俺とてめぇで片付ける」

一方「周りのヤツらは巻き込まねェ」

垣根「心理定規も」

一方「番外個体も」

垣根「・・・いいじゃねぇか・・・楽しくなりそうだな」

一方「・・・それで、俺達はどォする」

垣根「誓ってやろうぜ、俺は学園都市の味方になりますってよ」

一方「そォだな、この街を守れば、俺達は自分の日常を守れるからなァ」

垣根「・・・あいつらの生活を守るためなら、尻尾振って回ってやるよ」

一方「・・・あいつらの生活を守る、か」

垣根「もしも学園都市を守っても、あいつらの生活が保証されない場合は」

一方「自分達でどォにかしろクソ野郎共」

垣根「オーケー!!愉快だ一方通行!!」


887 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 20:10:03.94 ID:tK5BGLBx0
一方「協力してやるよ・・・ちゃンとついてこいよ」

垣根「お前こそ、電池は大切にしろよな」

一方「あァいいぜ・・・こりゃ楽しみだ」

垣根「楽しみだ・・・最強の化け物のタッグだぜ」

一方「アレイスターも眉ひそめてやがるぜ」

垣根「愉快だ・・・あぁ、最高だ」


番外「たっだいまー・・・って、どうしたの二人とも?」

垣根「おう、コーヒーは」

番外「はい・・・なんだか二人とも楽しそうだね」

コーヒーを渡しながら、番外個体が首を捻る

一方「気のせいだ」

番外「・・・そう?」

垣根「あぁ・・・ただちょっと楽しい話をしてただけだ」

番外「?」


888 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 20:19:14.43 ID:tK5BGLBx0
一方「あァ?なンで微糖なンだよ・・・」

垣根「お前、微糖嫌いなのか?」

一方「甘いンだよ・・・」

番外「いいじゃん、苦い思いをしたんだしさ」

一方「上手いこと言うンじゃねェよ・・・」

垣根「・・・番外個体、お前は・・・一方通行が好きか?」

番外「どうしたの急に?」

垣根「何かあったら一方通行を頼れよな」

番外「?う、うん」

垣根「・・・さて、俺はそろそろ寝たいんだけどよ」

一方「そォだな・・・じゃ、また来るからよ」

二人が病室から出ようとする

最後に、一方通行が手を上げて笑いながら言った


一方「またな、相方」


889 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 20:27:43.14 ID:tK5BGLBx0

垣根「・・・くっそ、本当に俺は泥の中にいたんだな」

一人きりで、病室の中にいる

目を閉じれば、やはり戦いの光景が目に浮かぶ

翼を広げ、ただ誰かを守っている光景が

垣根(・・・泥の中ってのもまだ心地いいんだぜ)

垣根(いくら汚れても目立ちはしない・・・問題は、泥の中から外の世界に出たときだ)

垣根(汚れが目立ってしまえば・・・俺達はただの汚れた人間になる)

垣根(・・・いいじゃねぇか・・・泥なんて、血と涙で洗い流してやる)

垣根(・・・見てみろよアレイスター、俺はてめぇと違ってたった一人の人間しか守れねぇ)

拳を握り、垣根が目を閉じる

落ちて行く意識の中で、垣根は笑っていた


垣根(だったらとことん守りきってやる・・・俺の、たった一つの太陽をな)




890 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 20:39:30.24 ID:tK5BGLBx0

心理「・・・垣根」

垣根「ん・・・」

垣根が目を覚ますと、心理定規が彼の顔を覗き込んでいた

垣根「おぉ?どうしたんだ・・・」

心理「もう、せっかく来たのに起きてないんだから」

垣根「いっけねぇ・・・寝てたか」

垣根が病室の時計を見つめる

時刻は午後の9時になっていた

垣根「うっわ・・・かなり寝てたんだな」

心理「・・・やっぱり、怪我してるからじゃないかしら」

垣根「そうかもな・・・いってて・・・」

体を捻ってしまったせいか、少し傷口が傷む

心理「こら、無理して起きないの」

垣根「いいだろ別に・・・」



891 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 20:59:32.31 ID:tK5BGLBx0
心理「・・・どうしたの?なんだか楽しそうな表情で寝てたけど」

垣根「気のせいだろ」

心理「・・・そうかしら」

垣根「・・・なぁ、心理定規」

心理「何?」

垣根「俺は絶対お前を守ってみせるからな」

心理「ど、どうしたのよ急に?」

垣根「なんでもねぇよ・・・ちょっとした布告だ」

心理「布告?」

垣根「・・・外が綺麗だな」

垣根がカーテンを開けて、夜景を見つめる

美しさを感じさせる闇がそこには広がっていた

垣根「なぁ、屋上行っていいのかな」

心理「あら、夜景が見たいの?」

垣根「ちぃーっとな」



892 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:03:13.19 ID:tK5BGLBx0
心理「いいんじゃない?行きましょうよ」

垣根「あいよ」

二人が病室をこっそりと抜け出す

看護師に見つかったら、怒られてしまうだろう

そんなスリルが、なぜか楽しく思える

垣根「なんかいいな、こういうの」

心理「愛の逃避行ってこと?」

垣根「あんまり笑わせんなよ・・・傷が痛む」

心理「冗談じゃないんだけど」

垣根「そうなのか?」

心理「まぁいいわ・・・早く行きましょう」

こっそりと隠れながら、二人が屋上へ向かう

暗部で鍛えた忍び歩きが、こんなところで役に立つとは思いもしなかった

垣根(・・・あぁ、くだらねぇ日常だ・・・)

垣根(ホーント・・・くっだらねぇ)



893 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:06:04.29 ID:tK5BGLBx0

垣根「・・・おっほー!!見ろよ、月が綺麗だぜ!!」

心理「本当ね・・・」

垣根「はぁ・・・綺麗だ」

屋上に座った二人が、夜空を見上げる

美しい月や星が、汚れかけていた心を洗い流してくれる

垣根「・・・なぁ、あの空を俺は飛んでたんだよな」

心理「そうよ、あなたはあの空を・・・私と飛んでくれたの」

垣根「いいなぁ・・・あんな所を飛んでたのか」

笑いながら、垣根が横になる

心理「そうしてたほうが楽なの?」

垣根「体育座りだと傷が痛んで仕方ねぇ」

心理「大変ね」

垣根「まぁな・・・でも痛みには慣れてるさ」

心理「・・・私は・・・あんまり、あなたに傷ついて欲しくないわよ」



894 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:09:06.19 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・そうか」

心理「私の人生にはね・・・あなただけがいればいいのよ」

垣根「上条達はどうなるんだよ」

心理「・・・それはまた別なのよ」

垣根「・・・俺の人生もそうかもな」

綺麗な星の中を、二つの星が流れていく

一瞬の輝きを放って、すぐに燃え尽きてしまうのだ

人間の命と似ている、と垣根は思う

一瞬だけの輝きのために生まれた彼らは、何を思って流れていくのだろうか

永遠に輝く星にはなれず、ただそれに近づこうとするがあまり身を焦がしてしまう

垣根「・・・流れ星は悲しいよな」

心理「そうかしら?」

垣根「悲しいと思わないか?」



895 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:13:39.70 ID:tK5BGLBx0
心理「一瞬だけでも、あの憧れていた星のように輝けるのよ?」

垣根「代償は大きすぎるけどな」

心理「それでもいいんじゃない?」

クスクス、と心理定規が笑う

そっと垣根の手を握り、空にその手を向ける

心理「・・・私達の愛も、世界からしたら一瞬なのよ」

垣根「俺の世界じゃ永遠だ」

心理「・・・そう?ありがと」

垣根「なぁ・・・綺麗な星空だよな」

心理「えぇ、あなたはもうこの世界が似合う人間よ?」

垣根「・・・お前もだよ」

そっと、垣根が心理定規を抱きしめる

垣根「俺が守ってやるから安心しとけ」

心理「・・・頼りにしてるわよ」



896 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:21:05.68 ID:tK5BGLBx0
垣根「・・・そろそろ帰るか、あんまりいると風邪ひくからな」

心理「そうね・・・そうしましょう」

垣根「・・・なぁ、心理定規」

心理「何?」

垣根「・・・俺はさ、お前の傍にいてやれてるかな」

心理「あら・・・」

心理定規が驚いたような顔をする

その後、今まで彼女が浮べた中で最高の笑みを浮べる

心理「大丈夫よ・・・あなたは、ずっと私の隣にいてくれるじゃない」

垣根「そうかな・・・」

心理「さ、明日は早く起きてリハビリよ」

垣根「いらねぇよそんなの・・・」

心理「いいからいいから」

心理定規が垣根の手を引く

その後ろの垣根も、なぜだか嬉しそうな表情を浮べていた


ちなみに、帰りに気を抜いて看護師に見つかってしまったのは愛嬌だろう


897 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:30:00.78 ID:tK5BGLBx0
今日はここまで

アレイスター、こういう役回りでよかったのか

というか冷蔵庫なのだけれども

筋肉動画は、ボディビルが変わってしまった瞬間と言ってもいい映像を

1994年オリンピア

トップ3に残ったのはケビン、ショーン、そしてドリアン

優勝はドリアンでした

しかし、彼は左の腕を怪我していたため、シンメトリーが成っていなかったのです

見ていただければ分かるように、ショーンとケビンは完璧と言っていいほどの肉体でした

シンメトリーも、カットも

ですが、審査員が下したのは「ドリアンが優勝」という結果でした

4分38秒のケビンが3位だと言われたときの観客の反応

6分11秒、もはや「バルク」だけがボディビルの真髄だと言われてしまった瞬間

ドリアンはでかく、たしかに背中や脚は大きいです

ですが腹筋や胸があまり美しくない気もします

ショーンのような、プロポーションがよく、なおかつ彫刻のような肉体の選手がもしもオリンピアになっていたら・・・

ロニー、マーカス、ジェイなどのようないわゆる「モンスター」ビルダーはそこまで多くなかったでしょう

誰もがこの年、ショーンが優勝だと思っていました

彼が勝っていたら、ボディビルは未だに「芸術」だったのでしょうか

誰かが言っていましたが、ドリアンがオリンピアになった瞬間から、ボディビルは「芸術」ではなく「スポーツ」になってしまったんです

出来れば、ショーンやゼーンのような美しい選手に出てきて欲しいものです


http://www.youtube.com/watch?v=BboNKeVkkwg 

ではおやすみなさい

明日は後日談、上条さんたちの帰還したあとを



898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/14(月) 21:37:47.29 ID:hMnr0h2oo
>>1よ、滞空伝線ではなく滞空回線だぞ
899 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/14(月) 21:47:07.34 ID:tK5BGLBx0
>>898 今15巻読み直して、気づいたところですw

科学側というか漢字が苦手なんだね

でも気にしない、だってあんな覗き専用の機械なんてけしからん


900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/14(月) 22:03:44.38 ID:lo3UZs38o
>>1乙!!
黒アレイ蔵庫も良いな
901 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:39:50.91 ID:ZfHP8tF70
垣根「・・・はぁ、病院食ってもっとまずいんだと思ってたぜ・・・」

ポンポンとお腹を叩きながら垣根が呟く

彼の目の前には、完全に空になった皿が置かれている

病院食が出された時は、正直テンションが低くなった

栄養を第一に考えるため、あまり味のことを考えていないという固定概念があったのだ

だが蓋を開けるとどうだろう、味はしっかりついていて尚且つ温かみがあるときた

心理「・・・じゃあ一生病院食でもいいんじゃない?」

病院食についてきたリンゴを食べながら、心理定規が笑う

垣根「いや、お前の手料理が一番だ・・・それと勝手にリンゴ食べないで」

心理「あら、リンゴ美味しいわよ」

垣根「知ってる、だから食べないで」

心理「水分が豊富なのよ・・・こんなみずみずしい肌になりたいわ」

垣根「知ってる・・・だから食べないで・・・」

心理「でも、ちょっと糖分が高めよね」

垣根「知ってる!だから食べないで!ってか無視すんな!」


902 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:40:22.34 ID:ZfHP8tF70
心理「・・・いいじゃない、朝からずっと話し相手になってあげてるんだから」

垣根「頼んでませーん」

心理「じゃあ帰るわね」

垣根「か、帰っちゃうの?」

垣根が慌てたように心理定規の服を掴む

心理「あら、どうしたの?」

垣根「帰るな!もうちょい構え!」

心理「何言ってるのよ・・・また来るから」

垣根「うげー・・・ヒマになっちまう」

心理「ヒマでいいじゃない、最近忙しかったんだから」

手を振りながら、心理定規が病室を去る

垣根「あぁ・・・ちくしょう、こんなリアクション取っても誰も見てないんだよな」

17600「全くだよな」

垣根「・・・」


903 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:40:54.16 ID:ZfHP8tF70
心理定規と入れ代わりに、非常にナチュラルに、17600号が病室に入ってきた

垣根「なんでいんの?」

17600「ミサカはここの最上階に住んでるんだ」

垣根「馬鹿なんだな」

17600「猫なんだ」

垣根「・・・煙だろ」

17600「そうだったか?まぁいい・・・先生が垣根の話し相手になってやれって」

垣根「お前と話すより19090号のほうが気楽なんだけど・・・」

17600「あぁ、今はいないよ」

垣根「はぁ?」

17600「テっくんとどっか行ってるんだ」

垣根「・・・そうか」

垣根が眉をひそめる

昨日の電話で、アレイスターは何を言っていたか


904 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:41:24.65 ID:ZfHP8tF70
「イギリスで問題が起きた」と言っていたのだ

イギリスといえば魔術の総本山

そこでの問題はもちろん魔術絡みだろう

つまり、テクパトルはその問題を解決するために19090号とイギリスに行ったのだろう

垣根「あぁ・・・エツァリもそっちか」

17600「何の話だ?」

垣根「いや・・・なんでもない、俺はあいつらの事情なんて知らない設定だ」

17600「はぁ?」

垣根「・・・で?何の話をしてくれるんだよ」

17600「そうだな・・・何がいい?」

垣根「・・・なぁ、風紀委員の事件はどうなってる」

17600「・・・アレイスターから聞いた話だが」

垣根「そういやアレイスター、この病院にいるのか」

垣根がさらに眉をひそめる


905 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:41:55.49 ID:ZfHP8tF70
わざわざ電話で話す必要があるのか

いや、彼は今あんな状態だから必要があるのだが

垣根(・・・いい加減人間の姿になればいいのによ)

肩を竦めてから、垣根が17600号を見つめる

垣根「なぁ・・・どうなったんだ」

17600「風紀委員は一応、今回の件についてはこれで解決にしたらしい」

垣根「一応?」

17600「そりゃ、本来なら犯人に賠償請求したいんだろうけどな」

垣根「ならなかったのか?」

17600「なぜか知らないが、統括理事会が金を出すみたいなんだ」

垣根「・・・なるほどな」

たしかに、普通の人間は納得がいかないだろう

個人の起こした事件、という認識を表はしているのだから

しかし実際は違う


906 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:42:21.65 ID:ZfHP8tF70
統括理事会は、今回の件を深く調べさせたくないはずだ

犯人はもちろん、新暗部の人間だ

彼が調べられてしまえば、暗部の存在が明るみに出る

学園都市にとっては大きなマイナスなのだ

そんなことになるくらいなら、二つの風紀委員支部を建て直すことなど問題にもならない

垣根「・・・ニュースじゃ大騒ぎか?」

17600「いや、それよりも最近ゲコ太が学園都市の中でも更に人気が加熱していてな」

垣根「あれ・・・お前ってあんまりあれに興味無かったんじゃ?」

17600「ミサカのキャラ的に隠してるだけだ」

垣根「・・・お前もやっぱり御坂の血を引いてるんだな」

表面上では普通に話をする

だが、垣根は内心で全く別のことを考えていた

垣根(・・・なるほど、情報操作だな)

風紀委員の件で、批判が出ないわけはない

おそらく風紀委員の中にも反論している人間はいるはずなのだ


907 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:42:53.59 ID:ZfHP8tF70
それが明るみに出ていないのは、統括理事会がこの件に関する情報を出来る限り抑えているからだろう

ニュースで反論する人間などが取り上げられれば、それは瞬く間に加速していく

学園都市として、内部から不満の声が上がるのは必死に防ぎたいのだ

垣根(・・・そうだな、学園都市にとっちゃ今回の一件はマイナスにしかならない)

アレイスターにとっては違うはずだが、とも考える

垣根「・・・で?お前はゲコ太の何が好きなんだ」

17600「笑うなよ、まずあの可愛い丸々としたボディーだ」

垣根「あんまり丸くはないだろ?」

17600「いや、頭とかが丸い」

垣根「丸くない」

また、表面上だけでの会話を始める

垣根(・・・問題は、あの小鳥遊達はどうなるか、だな)

真犯人に甘い判決を下すわけがない


908 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:43:28.35 ID:ZfHP8tF70
学園都市は彼等をどのように裁くのか

もしかしたら、彼等は代償として大きな物を失うかもしれない

実験に利用され、命を落とすか

それとも再び暗部に堕とされ、治安を維持する活動を強要させられるか

垣根(はん・・・哀れだなぁおい)

内心で笑いながら、垣根が目を閉じる

17600「とにかく、ゲコ太の可愛さはすごいんだよ」

垣根「俺にはよく分からないが・・・まぁ好きなヤツには堪らないかもな」

17600「そうなんだ・・・でもテっくんに言ったらなんか意外な顔されたし」

垣根「お前はそういうキャラじゃないからな」

17600「はぁ・・・もっとゲコ太グッズ、おおっぴらに集めたいのにな」

垣根「ほかのミサカにも隠してるのかよ」

17600「一応な」

垣根「はぁ・・・大変なこった」


909 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:44:22.42 ID:ZfHP8tF70
17600「おっといけない・・・皿を回収しなきゃいけないんだった」

垣根「冥土返しの手伝いか」

17600「たまにはこういうのもいいだろ?」

垣根「ならナース服を着ないとな」

17600「遠慮しておく、誰に見せるわけでもない」

垣根「俺は・・・」

17600「じゃあな、何かあったらナースコールを押すか119に電話を掛けろ」

垣根「ツッコまないからな」

17600「・・・」

17600号が垣根を睨みながら病室の外へ出る

ツッコんであげればよかったかな、なんて今更ながらに垣根は後悔した

垣根「・・・ヒマだな」

今度こそ、本当に一人になってしまったのだ


910 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:45:20.37 ID:ZfHP8tF70
垣根「・・・はぁ・・・」

垣根がため息をつく

彼は、とうとう恐ろしい領域に足を踏み入れてしまった

アレイスターからすれば、まだ「天使」にはたどり着いていないらしい

だが、「天使」と比べられること自体がおかしなことだ

他の超能力者がわざわざ「天使」などと比べられるだろうか

そんなことはない

そこらにいる草野球の選手とメジャーリーガーを比べないのと同じだ

あまりにも掛け離れた存在はそもそも並べられることすらない

だが、一方通行と垣根は違った

彼等は、「天使」という存在にはまだ至っていない

しかし、「天使」という存在のある世界の鍵を握っている

もはやLEVEL5に収まり切らないほどの力だ

LEVEL6という域に、片足を踏み込んでいる

そしてその先にあるだろう、人間を超えた存在の背中さえも見えているのだ


911 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:46:01.24 ID:ZfHP8tF70
垣根「・・・どこまで行くんだろうな、俺達は」

一方通行は、恐らく自分の力の恐ろしさに気づいているはずだ

垣根も同じく

それは、一人の人間が持っていていい力では無くなっていたのだ

科学などという枠にはもはや収まらない

魔術などという曖昧な方式でもない

自分自身が操れる方式で、しかしそれはどちらの領域にも踏み込んでいる

垣根「・・・」

科学だけの力だった時は、翼は白いだけだった

そこには存在しない物質を作り出す、という能力が宿っていた

一方、彼が新たに手に入れた力はどうだろうか

翼の色さえ、この世の言葉で形容出来ない

存在しない物質どころではない

羽の一枚一枚から膨大なエネルギーが放たれていた


912 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:46:48.25 ID:ZfHP8tF70
あれは、「存在しない現象」でさえあった

削板の「説明出来ない力」よりも強大で、しかも操りきれる力

垣根「・・・だが、俺は結局一方通行には敵わない」

そんな垣根の少し上に、一方通行は佇んでいる

それが悔しいことはなかった

一方通行も垣根も、ただ自分の守りたいものを守るためだけに力を振るう

くだらないプライドの賭け合いなど必要ないのだ

垣根「・・・守る力、か」

傷つける力より、それは素晴らしいものだろうか

そんなことはないのかもしれない

誰かを守るだけなら、ただ両手で抱きしめればいいのだ

力を手にし、それを振り回す時点で彼はどこかで破壊を望んでいるのだろう

垣根「・・・破壊、か」


913 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:47:37.92 ID:ZfHP8tF70
垣根「だからなんだよ・・・何だって壊してやる、心理定規と二人で笑っていられるならな」

天井を睨みつけ、垣根が拳を握る

垣根「・・・面白い体験だったな、悪くはない」

自分の新しい力を完全に解放したのは初めてだった

もしもそれら全てを完全に掌握し、更に昇華出来れば

彼は本当に、「人間」を超えることになる

垣根「楽しそうだ・・・やっぱり俺は空の上を目指さなきゃな、太陽の傍なんてつまんねぇ夢は捨てた」

ニヤリ、と笑って垣根が拳を天井に向ける

外から差す日差しが、それに呼応するかのように輝いた

垣根「・・・俺が太陽になってやる・・・たった一人の、あいつだけの太陽に」


上条「おーっす、垣根」

垣根「あ?おぉ、上条達じゃねぇか!」

昼過ぎ、上条達が心理定規と共に病室を訪れた


914 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:48:44.12 ID:ZfHP8tF70
美琴「怪我してるって本当だったのね」

垣根「嘘やハッタリだと思ったか?」

19090「垣根はよく冗談を言いますから」

テクパトル「・・・何があったんだ?」

垣根「あぁ・・・説明するのめんどくさいな」

心理「ちゃんと説明しなさいよ」

エツァリ「そうですよ」

垣根「ったく・・・分かったよ」


上条「・・・そんなことが」

ショチトル「イギリスの問題も大きかったが、こっちはこっちで大変だったんだな」

垣根「今頃白井はヒーヒー言ってるんじゃないか」

美琴「・・・風紀委員の支部がないから、仕事も大変よね」

垣根「まぁ一週間もすれば元通りだろ」

ショチトル「そんなすぐに直せるのか・・・」


915 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:49:30.53 ID:ZfHP8tF70
テクパトル「科学側はそういうところが利点だな」

19090「ですが・・・一週間というと中々長く感じられるものですよ」

垣根「知るかよ、こっちには関係ない話だ」

上条「・・・それで、お前のその力はどうだったんだ」

垣根「・・・悪くはなかった、でも誰かを守るには大きすぎるかな」

心理「あら、でも素敵だったわよ」

垣根「・・・ダメだな、やっぱり今はいつもの能力だけでいいや」

エツァリ「それでも十分脅威ですけど」

垣根「ははは・・・そうか」

上条「・・・じゃあ俺達は一旦帰るかな」

垣根「・・・お前、吹寄にあったらめちゃくちゃ怒られると思うぞ」

上条「・・・言わないでくれ、気持ち良く忘れてたんだ」

心理「そうそう、かなり宿題も出てるみたいね」

上条「あぁもう!イギリスからヒーローが帰ってきました、しかしヒーローは宿題という敵を倒せません!?」


916 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:50:01.86 ID:ZfHP8tF70
美琴「私も手伝うから、頑張ろう?」

上条「うぅ・・・垣根はいいよな、サボり扱いにはならないし」

テクパトル「俺もやむない理由で休んだことになってる」

19090「どんな理由になってるんでしょうかね?」

テクパトル「さぁな・・・とりあえず、俺達も一旦は部屋に帰るよ」

垣根「じゃあまたな・・・」

美琴「やっと互いに普通の生活ね」

一同が安心したような笑みを浮かべながら、病室のドアに向かう

垣根「あぁそうだ・・・上条」

上条「ん?なんだよ」

くるり、と上条が振り返る

垣根は、とても嬉しそうに笑っていた


垣根「おかえり」

上条「あぁ、ただいま」

笑いながら、二人がそんな挨拶をする

やっと、この日常に帰ってくることが出来たのだ



917 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:50:59.62 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル「・・・」

フレンダ「・・・ねぇ、ゴーグル」

ゴーグル「なんすか?」

静かな部屋の中

時刻は午前の4時

まだ、世の中は眠りに着いている

しかし二人は眠っていなかった

決して寝ないようにしていたわけではない

ただ、何となく眠れないだけだ

フレンダ「・・・結局、ここに残ってくれるの?」

ゴーグル「そうなりますね」

フレンダ「よかった・・・」

ゴーグル「・・・よかったですか」

フレンダ「だって・・・」

フレンダがゴーグル男の布団の中に無理矢理入り込む


918 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:51:27.89 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル「・・・」

フレンダ「だってさ・・・私、アンタがいたら楽しいもん」

ゴーグル「・・・あ、あの・・・なんでいっつも布団に入ってくるんですか」

フレンダ「だって・・・ここ、暖かいし」

ゴーグル「いや・・・でも暑いじゃないですか」

フレンダ「暑くない訳よ!」

ゴーグル「ちょ、ちょっと・・・大声は禁物ですよ」

ゴーグル男がフレンダのほうを見つめる

フレンダ「っ!」

ゴーグル「?どうしたんすか」

フレンダ「な、何でもない訳よ!」

ゴーグル「なんか顔・・・赤くないですか?」

フレンダ「あ、赤くない訳よ・・・」

フレンダがゴーグル男の胸に頭を押し付ける


919 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:52:51.71 ID:ZfHP8tF70
ほのかなシャンプーの香りに、ゴーグル男はドキドキとしてしまう

フレンダ「・・・その・・・あ、あの・・・」

ゴーグル「?どうしたんすか、本当に」

フレンダ「・・・なんかさ・・・アンタが私のこと助けてくれたから・・・嬉しかった訳よ」

ゴーグル「あれはまぁ・・・当たり前じゃないっすか」

フレンダ「・・・それにアイテムに残ってくれたし」

ゴーグル「・・・当たり前のことですよ、友達なんですから」

フレンダ「・・・あのさ、何回も言ってるけど・・・アンタって鈍感な訳よ」

ゴーグル「鈍感ですか!?」

フレンダ「大声はダメな訳よ」

ゴーグル「あ、すいません・・・」

フレンダ「・・・ねぇ、なんで・・・アンタってそんなに優しいのかな」

ゴーグル「優しいですかね?ずーっとのんびりしてますよ」

フレンダ「一緒にいると落ち着く訳よ」


920 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:53:27.53 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル「それは気の許せる間だからじゃないですかね」

フレンダ「そうなのかな・・・」

ゴーグル「きっとそうですよ」

フレンダ「・・・ねぇ、ゴーグルってどういう女の子が好みなの?」

ゴーグル「はい?」

フレンダ「・・・一応、私がそういうくだらない話にも付き合ってあげる」

ゴーグル「くだらないって・・・まぁ俺の好みなんてどうでもいいかもしんないですけどね」

フレンダ「・・・早く」

ゴーグル「大人な女性、とか落ち着いてる女性、とかまぁ理想は一杯ありますけど」

フレンダ「けど?」

ゴーグル「一緒にいて楽しいなら誰だっていいんですよ、結局は」

フレンダ「・・・そっか」

ゴーグル「なんか嬉しそうっすね」

フレンダ「別に・・・私、そろそろ寝るね」


921 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:54:32.04 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル「いや・・・ベッドに帰って下さいよ」

フレンダ「いいじゃん、別に変な気なんて起こさないでしょ?」

ゴーグル「でも・・・」

フレンダ「いいから・・・寝よう」

ゴーグル「そうっすね」

フレンダが目を閉じる

なんだかんだ言って疲れてはいたのだろう

すぐに、小さな寝息が聞こえてきた

それをゴーグル男はしばしの間、聞いていた

ゴーグル(なんか・・・あの時守りに行ってから、フレンダさんの様子がおかしいです)

ゴーグル(あからさまになんか距離を詰めようとしているというか・・・)

ゴーグル(ずっと甘えてきますし・・・どうしたんすかね)

彼には、やはり女心は分からない

分からないのだが、なぜだか不思議には思っていた


922 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 09:56:44.45 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル(・・・もしかしたら恩返しとかしたいんですかね)

ゴーグル(・・・でもそれにしては・・・)

ゴーグル(考えても仕方ないっすね、俺も寝ましょう)

二人の寝息が重なっていく

寄り添いながら眠る二人の寝顔は、とても安らかだった



上条「・・・不幸だ」

久しぶりの学校

その登校中、上条はずっと肩を落としていた

もしかしたら肩と脚の位置がひっくり返るかもしれませんわよ奥さん、というほどの落としっぷりだ

でも仕方がないことだ

彼の持っている学生カバンには宿題のプリントが入っている

彼自身の未来と同じく「真っ白」なプリントも数枚

終わるわけがなかったのだ、いくら美琴に手伝ってもらって徹夜で頑張ったとしても


923 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:02:02.48 ID:ZfHP8tF70
土御門「・・・気にするな、俺だって終わってないんだぜ・・・」

青ピ「風邪で休んだのに宿題なんて小萌センセもキツイことするなぁ」

上条「・・・風邪、ねぇ」

土御門「にゃー・・・こんなことなら無理してでも学校行くんだったぜぃ・・・一日一日の分ならそこまでの量でもないんだけどにゃー」

上条「そうなんだよなぁ・・・」

学校に着くのがイヤになってしまう

どうせ、「宿題終わらなかったなら補習ですよ」攻撃が待っている

笑顔の「宿題終わらなかったから補習ですよ、外のテニスしてる女子に見とれてたら更に増やしますよ」攻撃が絶対に待っている

上条「あーあ・・・イヤになる・・・」

心理「あら、そんなこと言ったらダメよ」

上条「あれ?心理さん」

後ろから聞こえた声に振り返ると、そこには心理定規が笑いながら立っていた

青ピ「なんや、君はもう学校来れるん?」

心理「まぁいろいろね・・・」

青ピ「土御門の話やと、垣根と一緒に怪我してたみたいやけど」

心理「あぁ・・・一応は大丈夫」

腕に巻かれた包帯を見せながら、心理定規が溜め息をつく


924 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:06:03.32 ID:ZfHP8tF70
上条「・・・痛そうだな」

心理「安心しなさい、ちょこっと痛むだけだから」

青ピ「でも、そんなところどないして怪我するん?」

心理「・・・こう、ぐちゃーっと」

土御門「・・・ぐちゃーっとっていう表現はおかしいぜよ」

心理「あら何よ」

土御門「う・・・と、ところで心理定規は宿題、終わったのかにゃー?」

心理「終わってないわよ」

上条「え、なんか意外だな」

心理「ずっと垣根の看病してたから」

青ピ「あぁ!!羨ましい!!こんな美人さんに熱い看護をされちゃって、ナ、ナースさん僕の熱は下がってきてるけど同時に別の熱い何かがこみ上げてきてますよ、だから早くこっちの診察も開始して的なイベントがあったんやね!?」

心理「ないわよ」

土御門「・・・でも、これで安心だにゃー・・・三人で渡れば赤信号も怖くないぜぃ」

心理「来てるのが大型トラックなら意味はないけど」

土御門「そういうジョークはやめてくれ・・・」


925 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:13:28.35 ID:ZfHP8tF70
上条「・・・そういや、垣根は?」

心理「・・・彼は多分、別ルートで来てる筈」

土御門「あぁ、病院から直接来るのか」

青ピ「なんや、一気に賑やかさが戻るんやね」

上条「吹寄頭パンクするだろうな」

土御門「はははは!!!そりゃそうだぜぃ!!」

心理「はぁ・・・苦労かけるわね」

青ピ「そのせいで肩凝るんやろうなぁ、吹寄」

心理「それは多分胸のせいよ」

上条「それはそうだ」

そんな会話をしながら、着々と学校に近づいていく

説教タイムが近づいてくる

上条(よーし!!もういい、やってやるよぉ!!)


926 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:18:56.00 ID:ZfHP8tF70

垣根「というわけでだ、桃太郎はお空の彼方からやってきたサイヤ人によってアンパンマンに変えられました、御終い」

姫神「ごめん。意味が分からない」

吹寄「それ・・・本気でやるつもり?」

垣根「おうよ」


上条「・・・おかしい、病院はここからかなり遠いはずだ」

心理「・・・おはよう、垣根」

垣根「あぁ?おーっす、お前達元気にしてたか」

青ピ「それはこっちの台詞やって・・・怪我はどうなん?」

垣根「まずまずだな・・・」

土御門「もしかして、それって例の体験入学でやる劇の話し合いか?」

吹寄「そうなのよ・・・」

上条「?何の話だそれ」

青ピ「あぁ、カミやんは知らないんやっけ」


927 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:25:46.74 ID:ZfHP8tF70
上条「待ってくれ・・・体験入学といえば、俺にはイヤな思い出しかない・・・っていうかなんでこんな遅い時期にやるんだよ!?もう願書とかみんな提出してる時期だろ!?」

土御門「にゃー、普通ならやらなかったんだぜぃ」

吹寄「ただ、この学校を志望する学生があまりに増えすぎたから・・・一応、学校説明も兼ねて、みたい」

姫神「原因は。君の目の前」

上条「俺の・・・」

垣根「ちっちゃな頃からイケメンでー15で垣根と呼ばれたよー」

心理「それまでは何だったのよ」

上条「分かった!!超能力者でイケメンのてめぇがいるから女子生徒がワンサカ釣れたんだな!?そなんだきっとそうなんだ!!」

青ピ「ええやん、女子生徒が増えるならボクは・・・」

上条「よくねぇ!!垣根、お前のせいで面倒な行事が増えましたよ!?」

垣根「そうか?授業二日潰れるんだぜ?」

上条「う・・・」

吹寄「オマケに、模擬店とかやれるからみんな喜んでるのよね」


928 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:29:50.88 ID:ZfHP8tF70
上条「・・・じゃあ百歩譲ってそうしよう・・・どうして桃太郎がアンパンマンになるのかを説明してみろ!!主に三行で!!!」

垣根「桃太郎→桃→アンパンマン」

上条「繋がってないからねそれ!!」

心理「・・・それより、早く席に着きましょう」

青ピ「そうやって、一時間目はなんや知らんけど黄泉川先生の授業みたいやで?」

上条「あれ、小萌先生は?」

土御門「さぁ・・・」

姫神「小萌は。今日は出張」

上条「!!ってことは明日までに宿題終わらせればオッケーなんじゃないの!?」

青ピ「よかったやん、ついてるなぁ自分」

上条「あぁ!!」

心理「・・・私も明日までに終わらせよう」


929 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:39:22.93 ID:ZfHP8tF70

黄泉川「いやぁ・・・でさ、警備員もよく分からないままその事件はあやふやに・・・」

吹寄「・・・あの、先生」

黄泉川「ん?どうかしたじゃんよ?」

吹寄「い、いえ・・・風紀委員支部連続爆破テロの犯人はもう捕まって・・・」

黄泉川「そう!!だからこそ私の武勇伝として語るじゃんよ!!!」

授業にやってきた黄泉川は、最初からずーっとその事件の話をしていた

真相に近づいていた垣根や土御門からすれば、ただの茶番にしか思えないのだが

土御門「先生、そんな話は今は・・・」

黄泉川「あれ?つまらない?」

姫神「どっちかといえば。つまらない類に入りますけど」

黄泉川「じゃあ教科書29ページ・・・」

上条「あ、ちゃんと授業もやるんだ・・・」

930 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 10:52:15.19 ID:ZfHP8tF70
垣根「・・・なぁ、土御門」

誰にも聞こえないような声で、垣根が土御門を呼ぶ

他の生徒は授業に集中しているか、外をぼーっと眺めているかのどちらかだ

土御門「どうした」

垣根「・・・お前、あれから統括理事会の情報・・・」

土御門「あぁ、入ってきたぞ・・・たくさんな」

垣根「どうなんだって?」

土御門「・・・」

土御門がノートを取る振りをして、何かを書いていく

それは、恐らく統括理事会から得た情報の全てだろう

垣根(・・・そうだな、迂闊に話すことじゃねぇ)

渡されたメモを開き、全てを読んでいく

垣根(・・・なるほどな)




931 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:08:33.21 ID:ZfHP8tF70
小鳥遊、およびその部下達の処分

リーダー格と思われる小鳥遊の能力は、心理操作系でも相当な上位のものである

そのため、彼の演算能力を研究するために専用施設に収監

陽射しも音も届かない世界で、ただ電極を刺され脳波を測られる日々を送らせる

その忠実な部下であった風間は、それほど希有な能力者ではない

よって、専用施設に収監、何か実験が行われることになったら第一の被験者として利用される

霧野という能力者は、現在精神不安定により入院中

容態は安定してきているため、後日専用施設に収監

こちらは反省の意が見られるため、「任意」により研究の協力を要請する

桐山も同じく

ただし彼は「暗闇の五月計画」により家族を失っているため、あまり実験に応用することは出来ない

風評被害も気になるため、現在は霧野の看病に当たらせている

スタンという能力者は風紀委員が身柄を確保している

彼が一番安全圏にいると思われる


932 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:19:17.58 ID:ZfHP8tF70
アレイスター統括理事長は、今回の件については黙認

暗部の再構成、およびその軍事的活動も黙認

現段階において、旧暗部は危険因子としては認められない

しかし、仮に学園都市に反旗を翻すような兆候が見られた場合は、すぐさま全力を持って制圧する


垣根(・・・ずいぶんと、便利な情報だな)

犯人の処分法まで、もう決まっているのだ

それを教えてもらえるということは土御門は相当統括理事会に近い存在ということでもある

垣根(・・・ちっ、結局元の生活と何も変わらないわけだ)

悪態をつきながら、垣根が黒板を見つめる

そこに並んでいるのは、教科書に書かれているものの写し書きだ

決して、常識を逸脱したことは書かれていない

垣根「あーあ、常識なんてつまんねぇな・・・」


933 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:23:15.76 ID:ZfHP8tF70
上条「・・・常識を学んでこそ、非常識を知るんだよ・・・」

心理「・・・でも退屈よね・・・」

土御門「日常ってのはそういうもんだ、退屈の繰り返しだよ」

垣根「それを退屈と思わないのが日常だ・・・」

机に突っ伏しながら、垣根がシャーペンを見つめる

それを握るのも久しぶりに感じた

ついこの間まで、心理定規や土御門は拳銃を握っていたのだから

垣根「・・・何一つ変わりやしねぇ」

吹寄「ちょっと、真面目に授業聞きなさいよ」

垣根「だーってつまんねぇんだよ」

黄泉川「ほー、私の授業をつまらないとはいい度胸じゃんか」

垣根「つまんねぇんだよじゃんじゃん」

黄泉川「・・・よし!!なら楽しい授業をしてやろう!!!」



934 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:31:50.86 ID:ZfHP8tF70

アレイ「・・・」

アレイスターは、一人部屋の中で佇んでいた

佇んでいた、というよりはそこに設置されているのだが

ミサカ達はなんでも、帰ってきたテクパトルの仕事の手伝いに行くといって出て行った

やかましさが無くなった部屋というのは、とても寂しい

ときどきフローリングが軋む音さえ聞こえてくる

アレイ「・・・それで?私に何の用かね」

アレイスターが、宙に向かって叫ぶ

部屋には誰もいない

だが、返答は帰ってきた

空中に漂う、小さな機械から

冥土『全く・・・君は相変わらず無茶をするね』

アレイ「・・・そんなことを言うためにこれに侵入してきたのか」


935 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:43:25.03 ID:ZfHP8tF70
冥土『何、君と話すのも久しぶりだね』

アレイ「こんな体になっているからね」

冥土『・・・体の内臓の機能を補っているのはその冷蔵庫に似た装置だろう?』

アレイ「おかげで妹達には冷蔵庫代わりにされているよ」

冥土『垣根帝督が冷蔵庫にしたのだろう?』

アレイ「なんなのだろうかね、この会話は」

冥土『全くだね』

アレイ「・・・」

冥土『・・・今回の事件には暗部が絡んでいるのだろう』

アレイ「・・・そうだ、よく知っているな」

冥土『全く困ったことだよ』

アレイ「・・・一方通行のことか」


936 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:50:05.45 ID:ZfHP8tF70
冥土『・・・それだけではないさ』

アレイ「君も暗部に脚を踏み入れているからね」

冥土『・・・むしろ、彼らよりも深い闇にいるのではないかね』

アレイ「・・・そうだな」

シンとした部屋に、二人の声だけが響く

こんな会話を、誰かに聞かれるわけにはいかない

冥土『・・・今回の件は、暗部の結束力を高めるのが目的かね』

アレイ「その通りだよ」

冥土『どうするつもりだい』

アレイ「イギリス清教で少し事件があったのだよ、今回の件には少なからず科学側が関わってしまった」

冥土『・・・幻想殺しかね』

アレイ「おや、知っていたのか」

冥土『彼なら首を突っ込みかねないからね』

アレイ「・・・そう、彼は一応科学側の人間だ」


937 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:55:59.14 ID:ZfHP8tF70
冥土『・・・なるほど、魔術側に対抗するために暗部を・・・かね』

アレイ「私としても心が痛むよ」

冥土『声を聞く限り、楽しんでいるようだがね』

アレイ「そうか」

冥土『・・・君は妹達や、テクパトル達の生活を守りたいのかい』

アレイ「・・・そうだな、正確には私の生活を、だよ」

冥土『・・・それだけのために、彼らをまた暗部に引き込んだのか』

アレイ「いやいや、あれは中々優秀な人材だ」

冥土『一方通行と垣根帝督だね』

アレイ「・・・信じられないことだが、彼らは二人とももはやLEVEL5などというつまらない領域に収まってはいない」

冥土『はぁ・・・彼らは人間だ、ただの青年なのだよ』

アレイ「彼らはそう思ってなどいないさ」

冥土『・・・どうであろうと、彼らは僕の患者なんだ』

アレイ「君には関係のない話だ」


938 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 11:58:48.93 ID:ZfHP8tF70
冥土『そんな簡単に割り切れればどれほど楽だったかな』

アレイ「・・・もしも、まだ君が私に口出しをするのなら・・・」

冥土『殺すかい?僕を』

アレイ「何、少しの間静かにしてもらうだけだ」

冥土『別に君を止めるつもりはない・・・それに、学園都市が無くなるのは僕も御免だからね』

アレイ「ならば何も言うな」

冥土『・・・君に一つ聞いていいかい』

アレイ「なんだ」

冥土『・・・二人の役割は・・・天使そのものなのかね』

アレイ「一方通行はベクトル制御装置・・・垣根帝督は、ベクトル生成装置だよ」

冥土『・・・そのベクトルは、科学だけのものではない』

アレイ「科学ではない?そんなつまらないことを言うな、この世のものですらないんだ」

冥土『・・・君は彼らを使って何をするつもりだ』

アレイ「そうだな・・・魔術側に対する牽制だよ」


939 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 12:01:30.95 ID:ZfHP8tF70
冥土『・・・これほどの戦力を持っている、と?』

アレイ「刀はただ腰につけているだけでいい・・・」

冥土『・・・魔術側にも、信じられないほどの強敵がいるのだがね』

アレイ「そんなものは幻想殺しに任せるさ」

冥土『そんなもの?』

アレイ「・・・ふふふ、そうだな・・・だが今すぐことを起こすつもりはないから安心したまえ」

冥土『そのいずれ、が怖いのだけどね』

アレイ「心配するな、あなたには悪いようにしない」

冥土『・・・なら問題はないけどね、僕の患者には手を出すな』

アレイ「分かっている・・・それではな」

冥土『・・・君も、何かを守ることを出来る』

アレイ「・・・そうだね」

会話がそこで途切れる

不気味な静寂が、アレイスターの心を冷めさせる

アレイ(誰かを守る・・・か)


アレイ(そんなこと、とうの昔に諦めたよ)


940 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 12:27:46.73 ID:ZfHP8tF70

アレイ「・・・」

アレイスターが、今度はどこかへ電波を発信する

それは学園都市の中にいる「誰か」にではなかった

その電波が届いたのは、イギリスだ

彼がそこに電話をするとき、話す相手は決まっていた

ローラ『・・・久しぶりなりてよ』

アレイ「・・・そうだな、君のその口調も久しぶりだ」

ローラ『この忙しい時期にわざわざ狙って掛けてくるのね』

アレイ「・・・忙しい?なぜ」

ローラ『分かっているくせにつまらんヤツなりけるのよ』

アレイ「・・・それは、古文ですらない」

ローラ『な、何かおかしいことでもありて!?』

アレイ「・・・やめよう、英語で話してみないか」


941 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 12:31:27.93 ID:ZfHP8tF70
ローラ『・・・それで、知っているのでしょう』

アレイ「ブラックマンの逃亡、および殺害か」

ローラ『・・・殺害というよりは、自害だけれども』

アレイ「何が違う、結局結末は一緒だろう」

ローラ『・・・問題は、そちら側の人間が関わっていたことよ』

アレイ「そうかな、いつも君達は幻想殺しを好き勝手しているじゃないか」

ローラ『・・・そういう問題じゃないのよ』

ローラの声が、どこか棘を持つ

イラついているのか、それとも楽しんでいるのか

アレイ「・・・ならばこちらも言わせてもらおう、科学側の人間を人質にとったのはどう落とし前をつけるつもりなのだ」

ローラ『・・・そこまで情報を掴んでいたとは』

アレイ「私はね、幻想殺しには大層執着しているのだよ」

ローラ『そう・・・それはご苦労なことね』


942 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 12:35:22.37 ID:ZfHP8tF70
アレイ「・・・いいのかね、私は君達に戦いを吹っかける理由がある」

ローラ『こちらにもあるのよ』

アレイ「ふふ・・・どういう理由だ」

ローラ『・・・幻想殺しは、魔術側の人間を何人か傷つけた』

アレイ「たとえば」

ローラ『ステイルや・・・そうね、その部下達も』

アレイ「・・・幻想殺しは、かね」

ローラ『何が言いたいのかしら』

アレイ「言わなかったか、彼は一応は科学側の人間だが」

ローラ『・・・完全に科学ではない、と?』

アレイ「・・・一方、そちらが人質に取ったのは明らかな科学側の人間だろう」

ローラ『・・・ふん、幻想殺しは科学とは言えないが・・・上条当麻は科学の人間よ』

アレイ「それがなんだね」

ローラ『・・・』


943 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 12:40:41.26 ID:ZfHP8tF70
アレイ「別に問題はない、君達がこちらに戦いを仕掛けるのなら迎え撃とう・・・だが君達に利点はあるのかね」

ローラ『・・・そちらこそ、イギリス清教との協定が破綻すれば戦力を半分削がれるわよ』

アレイ「本気で言っているのか」

アレイスターが笑う

そこには、策士の笑みが浮かんでいる

アレイ「・・・こちらは既に、天使のいる世界の領域に脚を踏み込んだ」

ローラ『なに?』

アレイ「二人の化け物を抱えた・・・彼らは最高の兵器だ」

ローラ『・・・』

アレイ「それと、AIMの化け物なら風斬氷華もいるぞ?」

ローラ『・・・果てには幻想殺し、ね』

アレイ「イギリス清教こそ、我々と対立していいのか?」


アレイ「何もかもを失うぞ」


944 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 12:44:10.48 ID:ZfHP8tF70
ローラ『やめておくわ・・・イギリス清教には何一つ得はない』

アレイ「そうだろうとも」

ローラ『・・・仕方ないわ、今はそんなことをしている場合でもない』

アレイ「・・・面白いことになっているようだからな」

ローラ『・・・はぁ、それより・・・いいドライヤーはないかしら』

アレイ「ドライヤー?」

ローラ『最近髪が痛んできているのよ』

アレイ「歳だ」

ローラ『・・・淑女に対して失礼ね』

アレイ「これは警告だ、歳を取ると水分が体から徐々に失われる、特に毛髪というのは」

ローラ『そういうのはデータとして送って頂戴、それではまたね』

ぷつり、と通話が切れる

せっかく人間の体の構造の教鞭を振るえそうだったのに、とアレイスターは少し落胆する


945 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 14:39:20.91 ID:ZfHP8tF70
アレイ(・・・誰かを守る・・・か)

垣根の言葉が、アレイスターの心に引っかかる

アレイスターには、誰かを守ることなど出来ないだろう

そして、垣根は可能だった

アレイ(・・・ふん、私には力があるはずなのにな)

彼が何かを守るには、どれだけ優しくしなければならないのか

強く抱きしめれば、砕いてしまう

アレイ(・・・私にはどうすることもできないさ)

誰かを守るのは難しいことだ

誰かを傷つけるのは簡単なことだ

アレイ(・・・暗部というのは守るための力ではない)

アレイ(だとすれば・・・垣根帝督、君は・・・何の力なのだ)


946 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 14:54:08.13 ID:ZfHP8tF70
アレイ「・・・静かだな」

シンと静まり返った部屋には、彼の言葉だけが響いている

アレイ「・・・愉快な数日間だった、本当に」

満足そうに笑いながら、アレイスターが呟く

暗部の再結成

一方通行、および垣根帝督の真の力

イギリス清教での事件

ローラとの通話

アレイ「どれも、素晴らしい退屈しのぎだったよ」

もう一度笑ってから、アレイスターが言った


アレイ「・・・本当に・・・いい、退屈しのぎだった」


947 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 15:06:15.95 ID:ZfHP8tF70

上条「・・・はぁ、平和だなぁ・・・」

昼休み、昼食を取りながら上条が呟く

土御門「ホント・・・いい天気だし文句なしだぜぃ・・・」

青ピ「・・・綺麗な空やなぁ・・・」

心理「・・・寒いのはイヤだけどね」

姫神「私も。あんまり寒いのは好きじゃない」

吹寄「・・・はぁ、なんだかこのメンバーでの昼ごはんも久しぶりね」

上条「そうだな・・・久しぶりだよな」

垣根「そうだけどさ、あんまり懐かしくはないだろ」

青ピ「・・・心地いいわぁ・・・ええな、この雰囲気」

垣根「そうかねぇ・・・眠くなっちまう」


948 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 15:10:55.63 ID:ZfHP8tF70
垣根がごろん、と寝転がる

綺麗な空も、懐かしくは感じなかった

垣根「・・・懐かしくはないかもな」

青ピ「そうなん?」

垣根「ここが当たり前だからな・・・」

心理「・・・そうね」

上条「・・・さて、残った時間で宿題でも・・・」

姫神「そんなこと。言わないの」

吹寄「そうよ、それより体験入学の劇のこと考えましょう・・・」

上条「マジかよ・・・」

心理「・・・そうね、そういうのも大切かも」

垣根「あぁそうそう、俺にアイディアがあるぜ」

吹寄「真面目なのなら聞いてもいいわよ・・・」


949 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 15:17:49.28 ID:ZfHP8tF70
とある学校の屋上

友達と、下らない話をしながら垣根は笑っていた

とてもくだらなく、意味のないような話

周りからすれば、何が面白いのかも分からない話

しかし、彼らにとっては大切な話

垣根「だから!!やっぱりベースは桃太郎!!!」

上条「マジかよ・・・」

垣根「いいか!?それが劇の醍醐味だ!!」

上条「あぁもう!!」


上条「不幸な日常だ!!!」

垣根「何が不幸だぁぁぁ!!!」


950 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 15:29:35.53 ID:ZfHP8tF70
次スレはこちら

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321338251/  


さて、こっちはどうして埋めましょうか


951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/15(火) 16:29:28.86 ID:aEUxgKHAO
むぎのんの恋人探しとか?
952 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 16:42:46.18 ID:ZfHP8tF70
>>951 またww


麦野「・・・つっまんねぇ・・・」

麦野は街中にいた

すれ違うのはカップル、アベック、恋人、リア充

言い方は様々あるが、すなわち「麦野と正反対の世界の人々」だった

正反対、といっても決して彼らが宇宙人なわけではない

ただ麦野と違い、愛する人を持っている

麦野(・・・なんで私がこんな見せしめを・・・)

彼女がここにいるのは簡単な理由だった

晩御飯を作る係をジャンケンで決めたところ、麦野になってしまった

そして、材料がないのでスーパーに買いに行こうと思った

たったそれだけだ

それだけなのに、こんな切ない気持ちにならなければならない

麦野(・・・家ではあいつらが仲良くしてやがる・・・)


953 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 16:49:27.29 ID:ZfHP8tF70
そう、家にいればこんな不幸を回避できる、なんていうのは甘い

まず浜面と滝壺は言うまでもない

何のきっかけもなしにイチャイチャとし始める

耳かきをしたり、ミカンをあーんさせ合ったり

耳かきで鼓膜が破けろ、とかミカン喉に詰まらせろ、とかそんなことを願ってしまう

絹旗はどうだろう

彼女は海原と中々いい感じらしく、さきほどは電話で大声を上げて話していた

その内容は、明日映画を見に行かないかというものだった

もちろん、海原は学校に通っているため、見に行くのは夜になるのだろう

海原に限ってそんなことはないだろうが、夜のデートとは怪しい響きだ

そして、最後はフレンダとゴーグル男

あの二人はおかしい

何かがおかしい


954 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 16:53:51.83 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル男はよく浜面とくだらない話をしている

やれタバコの話や、やれ酒の話や

それにフレンダがちょっかいを出すのだ

麦野(・・・ちっ、毒でも盛ってやろうか)

料理を作るのでさえ面倒なのに、彼らのイチャイチャな風景を見せられては堪らない

麦野「はぁ・・・それに寒い」

コートを着ていても、やはり外気に晒された顔や手足は寒いものだ

麦野「・・・何作ろうかな・・・」

どうせ文句を言われるのだ、だったら少しでも頑張りましたよアピールをしたいものだ


青ピ「あっれ、麦野さんやんか」

麦野「ん・・・?アンタか」

青ピ「なんや、こんな時間に一人で外出なんて」

麦野「そういうアンタこそ・・・なんで?」

青ピ「今、友達の家で鍋パーティーやっててな、材料足りなくなってジャンケンで負けたボクが買い出しに来たんよ」


955 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 16:56:52.05 ID:ZfHP8tF70
麦野「ふーん・・・まぁ私と似たようなもんね」

青ピ「でもひどいんやで?垣根もいるんやけど、美味しいもの買ってこなかったら死刑とか」

麦野「むしろ優しいほうよ・・・」

青ピ「そうなんかなぁ?」

麦野「・・・はぁ、じゃあ一緒に買出しでもしてみる?」

青ピ「えぇの?」

麦野「いいわよ・・・どうせヒマだったし」

青ピ「ほな行きましょうか」

麦野「うん」

二人が並んで歩き出す

麦野が小柄、というわけではないが青髪との身長差はかなりある

並んで歩くとどちらが年上なのか一瞬分からなくなる

オーラは明らかに麦野のほうが年上であるが

麦野(・・・というか、なんか青髪君とはよく会うわね)


956 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:09:37.95 ID:ZfHP8tF70
青ピ「ん?どないしたん?」

麦野「あぁいや・・・よく会うわよね、私達」

青ピ「そうかなぁ?ボクって毎日外歩いてるから、そこまで会う確率は高くないほうやで?」

麦野「そうなんだ」

麦野が驚いたような顔をする

目の前の青年は、たしかにそういうアウトドアな趣味を持っていそうだった

パン屋でバイトをしている、と知ったら麦野は驚くだろう

麦野「・・・はぁ、なんかね・・・私の友達、みーんないい感じの相手がいるのよ」

青ピ「ボクもそうやで」

麦野「なんかイヤにならない?」

青ピ「めっちゃなるわ!!地獄に堕ちろっていつも願ってるんやで」

麦野「あ、それ分かる」

そんな話をしながら歩いていくと、スーパーにたどり着いた

青ピ「はぁ・・・安いの買わないとカミやんうるさいからなぁ・・・」


957 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:12:16.89 ID:ZfHP8tF70
麦野「・・・私もあんまり高いのはいらないわ」

青ピ「そうや、麦野さん料理するん?」

麦野「苦手なんだけどね・・・ジャンケンで負けたから」

青ピ「何作るつもりなん?」

麦野「何がいいかしら・・・」

麦野が顎に手を当てる

手の込んだものなど出来ない

かといってレトルトだったら文句を言われるだろう

青ピ「そうやなぁ・・・カレーとかどうなん?」

麦野「カレーか・・・たしかにあれってわりと簡単そうよね」

青ピ「せやろ?日持ちもするし」

麦野「じゃあカレーでいいわね」

青ピ「・・・ボクはとりあえず肉と野菜をっと・・・」

青髪が適当に商品をカゴに突っ込んでいく

だが、無意識のうちに安いものを選ぶ辺り彼は貧乏学生だ


958 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:16:01.86 ID:ZfHP8tF70
麦野「ねぇ、カレーってどうすればいいかしら?」

青ピ「そうやなぁ・・・肉とタマネギとニンジンとジャガイモあればどうにかいけるで」

麦野「・・・カレールーはどういうのがいいのかしら」

青ピ「友達さんは辛口とか大丈夫なん?」

麦野「うーん・・・」

麦野が首を捻る

浜面はまず大丈夫に違いないだろう

ゴーグル男も大丈夫そうだ

絹旗は、若干危うい

滝壺は意外と好きそうだ

そして、フレンダは恐らく苦手だろう

麦野(・・・今思えば、料理作ってやるの初めてだからみんなの味の好みとか分からないわよ・・・)

青ピ「?どないしたん?」

麦野「ちゅ、中辛でいいかと思うわ!!」

青ピ「じゃ、それでええんやない?」


959 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:20:41.77 ID:ZfHP8tF70
麦野「はぁ・・・上手に作れるかしら」

青ピ「なんや、苦手なんやっけ?」

麦野「そうよ・・・っていうか、作ったことないかもしれないわ」

青ピ「・・・いっつもどうしてるん?」

麦野「鮭弁当」

青ピ「はぁ・・・それ、将来お嫁さんになれないで?」

麦野「・・・あぁそう」

青ピ「あまぁ違う違う!!麦野さんは美人やし、性格も良さそうやから料理できたら完璧なんやって!!!」

麦野「はは・・・そんなことないわよ」

青ピ「ご、ごめんなぁ・・・」

麦野「・・・いいのよ、なんかナイーブになってるのよ・・・」

がっくりと麦野が肩を落とす

男の口から、「いいお嫁さんになれない」と言われるのは中々に辛いものだ

麦野「・・・はぁ、料理って・・・作る前かなり緊張するわよね」


960 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:24:43.75 ID:ZfHP8tF70
青ピ「そうやろうなぁ・・・」

麦野「・・・ねぇ、青髪君は料理とか得意?」

青ピ「これでも一人暮らしなんやで?」

麦野「あぁ、それもそうね」

青ピ「せやから上手い買い物の方法とか知ってるんよ」

麦野「?」

青ピ「あぁ・・・まぁ、タイムセールとかやけど・・・麦野さんお金持ちそうやし関係なさそうやな」

麦野「そうね・・・たしかに人よりは持ってるかも」

青ピ「能力者なん?」

麦野「一応超能力者よ」

青ピ「なんや、そうやったん?」

麦野「・・・あんまり驚かないのね」

青ピ「驚いたほうがよかったんかな?」

麦野「うーん・・・そうじゃなくて、普通はもっと驚くから」

青ピ「だって垣根とかカミやんの彼女さんとかも超能力者やから」

麦野「あぁ・・・慣れてるのね」


961 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:29:47.54 ID:ZfHP8tF70
青ピ「・・・そうやね、慣れてるんかもしれないわ」

麦野「・・・ねぇ、青髪君ってもしかして関西出身?」

青ピ「これ、エセ関西弁やで」

麦野「あ、そうなの」

青ピ「そうそう・・・っと、早く帰らないと怒られるわ」

麦野「そうだった・・・私も帰らないと」

青ピ「・・・なぁ、麦野さん」

麦野「何?」

青ピ「カレーってな、家庭の味なんやで?」

麦野「へぇ・・・そう」

青ピ「上手く作れるとええな」

麦野「そうね」

スーパーの前で、二人が別れる

麦野(家庭の味・・・か、頑張ってみよう)


962 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:33:26.20 ID:ZfHP8tF70

浜面「おー、お帰り」

麦野「ただいま・・・カレーでいいわよね」

滝壺「麦野の手作りって珍しいよね」

フレンダ「楽しみな訳よ!」

麦野「はぁ・・・期待しないでよ」

絹旗「私達はどうしましょうか」

麦野「手伝ってもらえたらありがたいんだけど」

浜面「じゃあ俺は風呂入ってくるな」

麦野「ねぇ、聞いてた?」

ゴーグル「・・・じゃあ俺は手伝いますよ」

浜面「おいおい、そこはお前も風呂の流れだろ?」

滝壺「浜面とお風呂に入っていいのは私だけ」

ゴーグル「はぁ・・・惚気はいいですよ」

ゴーグル男が立ち上がり、キッチンへと向かう


963 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:37:19.70 ID:ZfHP8tF70
ゴーグル「さて・・・作りますか」

麦野「ありがと・・・手伝ってくれるのはあなただけよ・・・」

麦野がリビングでゴロゴロと転がっている三人を睨みつける

滝壺はなぜか、クッションを抱きながら眠そうにしている

フレンダは鯖缶を食べながら、ニコニコとしている

絹旗はメールを打っている、恐らく相手は海原だろう

顔がにやけているため、すぐに推測がつく

麦野「・・・ゴーグル君、野菜ってどうやって切るの?」

ゴーグル「・・・麦野さん、お嫁にいけないですよそれじゃあ・・・」

麦野「・・・」

ゴーグル「?どうしたんすか」

麦野「あぁいや・・・」

麦野が深く、溜め息をつく


麦野(・・・男の意見って・・・意外と同じものなのね)


964 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 17:46:11.16 ID:ZfHP8tF70

上条「おー、お帰り」

青ピ「たっだいま・・・うわ、なんやトランプしてたん?」

土御門「にゃー、だってヒマだし」

姫神「ダウト」

上条「あー!!さりげなく誤魔化したのに!!」

吹寄「上条・・・違うの出すとき顔が引き攣るのよ」

美琴「私もお邪魔して悪いわね・・・」

垣根「いやいや、御坂とは久々の拘留だな」

心理「そうね、最近どう?」

垣根「カッチッカッチッ・・・」

上条「そういうネタはやめろ・・・」

心理「あら、ついね」


965 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 18:08:13.59 ID:ZfHP8tF70
垣根「・・・それで?何を買ってきたんだ」

青ピ「肉とか野菜とか」

垣根「かーっ!!遊び心がない!」

垣根がバンバンと机を叩く

垣根「いいか!?闇鍋用にスリッパとか・・・」

青ピ「スーパー行っただけなんやって、そんなんあるわけないやろ」

姫神「さ。お肉お肉」

吹寄「そうね」

美琴「いただきまーす」

土御門「いただくぜぃ」

垣根「・・・」


垣根「え、オチなし?」

上条「ねーよんなもん」

966 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 20:45:17.82 ID:ZfHP8tF70

フレンダ「ねぇねぇゴーグル」

ゴーグル「なんすか」

麦野の作ったカレーを頬張りながら、二人が話す

もちろんゴーグル男も手伝ったため、味は保証できるものだった

フレンダ「・・・そのさ、明日ってヒマ?」

ゴーグル「年がら年中ヒマな人間に聞く必要があるんですか」

フレンダ「よっし!!ヒマなんだ!!」

浜面「ん?どうかしたのかよ」

フレンダ「ううん、ちょっとね」

滝壺「もしかしてデート?」

フレンダ「そ、そんなんじゃない訳よ!!ね!?」

ゴーグル「ありえません」

フレンダ「う・・・」

麦野(・・・うっぜぇ・・・)


967 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/15(火) 22:22:58.41 ID:ZfHP8tF70
今日はここまで

筋肉動画はシュワちゃんの20才までの動画

彼とオリバが一緒にいた時代、生で見てみたかったです

http://www.youtube.com/watch?v=5NGrk9BGoeo  

アーノルドの二頭筋のピークは信じられない

背中のオリバ、二頭のシュワ

ではおやすみなさい


968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 23:13:47.06 ID:133L6p0Co
乙なんだよ!
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/15(火) 23:47:57.23 ID:ZMMxeJf3o
乙んこ!!

今更気づいた…
禁書はほとんど独身しかいない!!
公式カップリングなんて浜滝だけだろ?
970 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 09:48:38.26 ID:wDwdjSjS0
>>969 みなまで言うな!!


ゴーグル「いや、いいですけど・・・」

フレンダ「けど?」

ゴーグル「なら麦野さんも行きましょうよ」

フレンダ「え゛」

麦野「・・・どうして私も行かなきゃならないの?」

ゴーグル「いや、無理ならいいんですけど・・・」

フレンダ「無理な訳よ!!ねぇ麦野!?」

麦野「あら、行ってあげてもいいんだけど」

フレンダ「なっ・・・」

絹旗「じゃあ三人で仲良く、どうですか?」

滝壺「うん、それがいいかもね」

フレンダ「え、ちょ・・・」


971 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 10:09:21.13 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル「じゃあ、三人でどこ行きます?」

麦野「そうね・・・」

フレンダ「さ、三人はイヤな訳よ!!」

バン、とフレンダがテーブルを叩く

テーブルが揺れたせいで、その上に乗っていたコップが一つ倒れる

絹旗「わわわ!!超冷てぇ!!」

その中のジュースが絹旗のズボンに掛かる

浜面「だ、大丈夫か!?」

ゴーグル「タオルタオル・・・」

ゴーグル男がタオルを取ってくる

絹旗「ありがとうございます・・・」

ゴーグル「これはちょっとシミになるかもしれませんね・・・」

絹旗「本当ですか・・・あーあ・・・」

フレンダ「ご、ごめん・・・」


972 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 10:16:48.96 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル「あ、いや・・・ほら、絹旗さんもそんなに怒ってないっすよ」

絹旗「でもフレンダが取り乱すなんて珍しいですね」

浜面「・・・そうだな」

フレンダ「う、うん・・・」

麦野「はぁ・・・分かったわ、ちょっとからかいすぎたわよ」

麦野が首を振る

綺麗な髪が揺れるのが、まるで絵のようだとゴーグル男は感心する

フレンダ「じゃ、じゃあ!!」

麦野「明日は二人で楽しんできなさい」

滝壺「よかったね、フレンダ」

フレンダ「うん!!」

ゴーグル「いや・・・それはよかったんですか?」

フレンダ「よかったの!!!」

ゴーグル「は、はぁ」


973 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 10:30:25.36 ID:wDwdjSjS0

ゴーグル(・・・一体なんなんだったんですかね)

浴槽につかりながら、ゴーグル男は考えていた

風呂の上にアヒルが浮かんでいるのが気になる

ついでに、クマ浮かんでいる

陸と湖の異文化交流だ

それを見つめている自分が、なぜか切なく感じる

ゴーグル(・・・そんなにフレンダさんって麦野さんが嫌いなんでしょうか?)

麦野が一緒に行く、と言った瞬間に彼女は慌てだした

ゴーグル(でも、フレンダさんって麦野さんにぞっこんですよね・・・)

ゴーグル(・・・はっ!!分かりました!!)

ニヤリ、とゴーグル男が笑う


ゴーグル(あれっすね!!好きな人と出かけるのはプレッシャーがあるってことですね!!)

ゴーグル(なるほどなるほど!!だから麦野さんとは出かけたくない、と・・・)

ゴーグル(へぇ・・・そういう関係なんですか・・・)


974 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 10:41:57.00 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル(・・・い、いや!!俺は本人達がいいのならそれでいいと思います!!)

ゴーグル(・・・いや、いいのか?)

ゴーグル「はぁ・・・にしても、いい湯ですね」

ここ最近のせいで溜まっていた疲れが一気になくなっていく

ゴーグル「・・・天国とは・・・このことっすね・・・」

はぁ、と溜め息をつく

すると、ドアの外に誰かの影が見えた

そのシルエットには、見覚えがある

ゴーグル「フレンダさんですか」

フレンダ「うん・・・そのさ、お湯、どうかなと思って」

ゴーグル「いいですけど、入ってこないでくださいよ」

フレンダ「だ、だって早く入りたいもん!!」

ゴーグル「いや、何かがおかしいっす」

フレンダ「水着着るから!!」

ゴーグル「俺は着てないんですけど」


975 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 10:50:33.13 ID:wDwdjSjS0
フレンダ「・・・ま、まぁいいんじゃない?」

ゴーグル「いや、いいですけど・・・なんでですか?」

フレンダ「だから!!早く入りたいの!!」

ゴーグル「あぁ分かりましたよ・・・」

ゴーグル男が折れる

一応、持ってきたタオルを腰に巻く

フレンダ「失礼しまーす・・・」

ゴーグル「はいどうぞ」

ゴーグル男が開いたドアのほうを見つめる

フレンダの水着は、自慢の脚線美を強調するようなものだった

ゴーグル「・・・なんか、すっごい水着ですね」

フレンダ「そうかな?」

ゴーグル「はぁ・・・まさかそんな水着着てプールとか行ってるんですか?」

フレンダ「プライベートプールなら」

ゴーグル「・・・そりゃまだ救いようがありますね」


976 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 10:57:24.67 ID:wDwdjSjS0
フレンダ「・・・ねね、ゴーグル・・・明日どこ行く?」

ゴーグル「どこでもいいっすよ・・・楽しければ」

フレンダ「なーんか冷たい・・・」

ゴーグル「俺って娯楽施設とか疎いですから」

風呂に浮かんだアヒルをいじりながらゴーグル男が答える

プピー、と音を立ててアヒルがしぼむのが面白い

ゴーグル「・・・それで?フレンダさんは行きたいところとかあるんですか?」

フレンダ「うーん・・・なんかないかな?」

ゴーグル「ないんすか」

フレンダがシャンプーを泡立てる

そこで思い出したが、なんだかんだ言って結局体を洗うには水着を脱ぐのだろう

ゴーグル「あっち向いときますからさっさと洗ってくださいね」

フレンダ「あ、うん」


977 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:01:19.56 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル男がそっぽを向く

後ろから聞こえる、シャンプーの音や体を擦る音が生々しい

普通の男子ならここでこっそりと覗くものだろう

だが残念なことにゴーグル男はそこまでスケベではない

ゴーグル(・・・お湯、あったかいっす)

目を閉じて、その暖かさに身をゆだねる

風呂というのは本当に眠たくなるものだ

母親の温もりを思い出す、という人もいるだろう

だがゴーグル男にとってむしろ母親は冷たい氷のようなものだった

おかげで、風呂で母親を思い出すことはない

代わりに思い出すのはスクールの二人だった

ゴーグル(・・・そういや、垣根さんってなんであんなにオシャレなんですかね)

知り合ったときからオシャレだったので気にしたこともない

心理定規も、オシャレだ


978 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:04:37.56 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル(・・・あの二人ってモデルとしても良さそうですよね)

写真を撮られることにも抵抗はないだろう

何より美形と来た

そう考えると、あの二人は金に困ることはないだろう

ゴーグル(・・・俺はどうでしょうかね)

ゴーグル男は決して特技があるわけではない

お金を稼ぐにしても、どうにかしてコネで企業に入るしかないだろうか

ゴーグル(・・・なんなら、垣根さんが会社でも立ち上げてくれないですかね)

そうすれば彼はいきなり正社員だ

ゴーグル(・・・って、他力本願はいけませんね)

自慢の筋力も、ゴーグルがなければそこらへんの不良より強い程度のものになってしまう

それに学園都市には筋肉馬鹿が何人かいると聞いている

そんな人間達と凌ぎを削る気にはならない


979 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:07:36.00 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル(・・・どうやって金を手に入れますかね)

もちろん、今更闇に手を出す気はない

そうなると、まともな方法で稼ぐことになる

だが学園都市にはそもそも企業がそこまではない

研究施設だけなら外よりも多いのだろうが

ゴーグル(俺には研究員は似合いませんし・・・)

はぁ、ともう一度溜め息をつく

フレンダ「?ど、どうしたの?」

ゴーグル「あぁいや・・・どうやって将来暮らそうかと思って」

フレンダ「暮らす?」

ゴーグル「お金の稼ぎ方とかですよ」

フレンダ「あぁ・・・そうね」



980 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:11:42.65 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル「フレンダさんはどうするんですか?」

フレンダ「私は専業主婦な訳よ!!」

体を洗い終わり、水着を着たフレンダが浴槽に飛び込んでくる

あまり広すぎるというほどの浴槽ではないため、二人の体が少し触れてしまう

ゴーグル「主婦って・・・幼稚園生の夢じゃないですか」

フレンダ「そうかな?一番いいと思うけど」

ゴーグル「それまではどうするんですか」

フレンダ「うーん・・・アイテムと暮らすわよ」

ゴーグル「ヒモじゃないですか」

フレンダ「じゃあゴーグルは?」

少し怒ったような表情でフレンダが問い返す

ゴーグル「そうっすね・・・適当に仕事を探しますよ」

フレンダ「でも、能力者じゃないから難しくない?」


981 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:14:39.06 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル「・・・外の世界じゃ、能力者なんていないですよ」

フレンダ「それもそっか」

ゴーグル「・・・はぁ、俺はどうしましょうかね・・・」

アイテムのヒモになるわけにはいかない

もちろん、ニートなんて出来ないしホームレスも無理だ

ゴーグル「・・・どうすりゃいいんすかね」

フレンダ「・・・わっかんない、私も考えようかな・・・」

ゴーグル「フレンダさんってモデルとか出来そうじゃないですか?」

フレンダ「そうかな?」

ゴーグル「脚は長いし、見た目だっていいじゃないですか」

フレンダ「あ、ありがとう」

顔を真っ赤にしながらフレンダがアヒルをいじる

プピーという音が、本当に面白い

ゴーグル「・・・はぁ・・・俺にはこれといったものがないっすね」


982 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:21:40.34 ID:wDwdjSjS0
フレンダ「でもさ、ゴーグルってなんでも器用には出来そうな訳よ」

ゴーグル「器用貧乏ですよ」

ゴーグル男が天井を見上げる

そこに何かいいヒントとかないだろうか、とか考えている

文字がいきなり浮かんで「アメリカに行け」なんて出てきたらいいものだ

ゴーグル「・・・あー、未来なんて真っ白ですね」

フレンダ「真っ白だから何にでもなれる訳よ」

ゴーグル「・・・でも真っ白すぎて何も見えないっす・・・」

フレンダ「・・・私もそうかもなぁ・・・」

ゴーグル「・・・専業主婦ってなんか寂しい夢ですね」

フレンダ「寂しくない訳よ」

ゴーグル「第一、彼氏もいないじゃないですか」

フレンダ「ーーっ!!!」


983 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:33:40.79 ID:wDwdjSjS0
ゴーグル「そんなんでどうやって主婦とか・・・」

フレンダ「う、うるさい!!」

フレンダがゴーグル男に思い切りお湯を掛ける

ゴーグル「どわぁ!!」

フレンダ「ハゲちゃえ!!」

ゴーグル「そういうネタは・・・あぁぁぁぁ!!!」

追撃がどんどんとやってくる

フレンダがバシャバシャとお湯を掛け、ゴーグル男がそれをかわす

ゴーグル「あぁぁ!!もうやめてくださいよ!!」

フレンダ「えいや!!えいやぁ!!」

ゴーグル「あぁもう!!!」

ゴーグル男が頭を抱える


ゴーグル「こりゃ不幸だぁ!!!」


984 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:53:04.33 ID:wDwdjSjS0

垣根「・・・あーあ、で?劇はどうする・・・?」

上条「・・・そうだな、もう桃太郎でいいだろ・・・」

美琴「いいなぁ・・・なんだか楽しそう」

上条「楽しくないって・・・」

吹寄「・・・でも、やるからにはしっかりしたのを作りましょう!!」

心理「・・・どうして桃太郎なのよ・・・」

一同は、上条の部屋でゴロゴロと転がっていた

体験入学なんてこの時期には遅すぎるが、それでもやるものはやるのだ

土御門「にゃー、姫神がいるんだから浦島太郎のほうがいいんじゃないか?」

姫神「私は乙姫」

青ピ「あ、えぇやん」

垣根「ねーよ、大体浦島太郎から何を学べる?何もねぇんだよ・・・」

上条「あるだろ・・・」



985 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 11:57:23.73 ID:wDwdjSjS0
垣根「とりあえず、桃太郎で決まりなんだよ」

上条「はぁ・・・分かったよ」

美琴「いいなぁ・・・ねぇ、私も見に行っていいの?」

心理「あら、もちろん」

土御門「でもそんな面白いもんにはならないぜぃ?」

美琴「そうかな?」

垣根「面白いものにするんだよ!!芸術と破壊だ!!!」

姫神「意味が分からない」

吹寄「はぁ・・・それで?桃太郎でも詳しく言うとどんな感じになるの?」

垣根「ここは学園都市だぜ?能力者が桃太郎だったら、みたいな」

青ピ「あぁ、それ結構面白そうやん」

心理「意外と話も広がりそうね」

垣根「だろだろ?」


986 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 12:38:56.01 ID:wDwdjSjS0
上条「・・・で?役は?」

垣根「まず俺が桃太郎だ」

土御門「もう鬼に勝ち目がないぜぃ」

心理「というか・・・あなたが桃から生まれるのね」

青ピ「それでそれで?」

垣根「おじいさんは姫神だ」

姫神「おばあさんじゃないの?」

垣根「・・・お前な、おばあさんを女がやって面白いか?」

姫神「・・・たしかに。それだと当たり前すぎる」

吹寄「当たり前でいいのに・・・」

垣根「お前は村人だ、鬼に途中で襲われろ」

吹寄「これまた微妙な役・・・」

土御門「にゃー、じゃあ俺達は?」

垣根「そうだな・・・おじいさんは一方通行に頼むとして・・・」

上条「お、おい・・・」

垣根「ゲストだゲスト」


987 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 12:51:12.96 ID:wDwdjSjS0
上条「はぁ・・・それで?」

垣根「土御門は犬、青ピはキジで・・・」

上条「じゃあ俺は猿か?」

垣根「いや、猿は・・・そうだな、吹寄がかわいそうだから」

吹寄「あら、私は一人二役?」

垣根「そういうこと」

心理「私は何になるの?」

垣根「桃太郎が助けに行ったらそこにいたお姫様」

心理「あら素敵」

上条「・・・じゃあ鬼は?」

垣根「お前だ、んでもってお供の二匹鬼は・・・」

上条「待て待てぇ!!!」

上条が垣根の肩を掴む

垣根「あぁ?なんだよ」

上条「おっかしいだろ!!」


988 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 12:59:42.79 ID:wDwdjSjS0
垣根「いやいや、お供には小萌と黄泉川だぜ?完璧だろ」

上条「よくねぇよ!!なんだそのデコボココンビ!!」

垣根「ったくなぁ・・・鬼っていえば、桃太郎の中でも一、二を争う萌えキャラだぞ?」

上条「初耳だよ!!」

美琴「へぇ・・・当麻が鬼かぁ・・・」

上条「納得しないで!!」

吹寄「あぁもう・・・配役に文句言ってたら始まらないわよ」

心理「そうよ、問題は内容がどうなるかなのよ」

土御門「にゃー、いくら体験入学と言っても堅苦しかったら面白くないぜぃ」

上条「い、いや・・・そこは真面目に」

姫神「もうバイオレンスでグロテスクに」

上条「ダメですからね!?」

美琴「当麻、頑張ってね?」

上条「もはや決定事項なのね!?」


989 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 13:04:59.59 ID:wDwdjSjS0
垣根「さーて、楽しくなりそうじゃねぇか!!」

吹寄「はぁ・・・お祭り騒ぎね」

心理「二日あるんだから、楽しくやりましょうよ」

垣根「イケメルヘンの真髄を見せてやる」

青ピ「自分で言うことかいな」

垣根「じゃあお前が言って」

青ピ「・・・」

美琴「・・・さて、そろそろみんな帰ってもらっていい?」

土御門「そうだな、さすがに遅くなりすぎた」

土御門が腕時計を確認する

鍋パーティーからずーっとこんな調子だった

気づけば日にちをまたいでいる

上条「じゃあまた明日な」

垣根「避妊はしろよ」

上条「あぁそうですね!!」


990 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:02:02.02 ID:wDwdjSjS0

上条「・・・ったく」

垣根たちのいなくなった部屋は静かだ

そこにいるのは、上条と美琴だけ

かといって、さすがに今から始めるつもりはない

上条「・・・なんで俺が鬼なんだろう・・・」

美琴「でもなんか合ってそうじゃない?」

上条「合ってないだろ!?」

美琴「こう・・・女の子の心を奪いまくる、みたいな」

上条「ルパンみたいだなおい・・・」

美琴「でもさ、鬼だったらかなり目立てるんじゃない?」

上条「目立ちたくないですよ・・・」

がっくりと上条が肩を落とす

別に目立つだけならいいのだが、どうせクラスメイトから囃し立てられるに決まっている

リア充の上条が垣根にボッコボコにされる光景が、堪らないのだろう


991 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:07:21.62 ID:wDwdjSjS0
上条「あーあ・・・どうして俺が・・・」

美琴「いつまでもグダグダ言ってないの」

美琴がテレビをつける

もちろん、深夜なので音はかなり小さくしている

風紀委員支部連続爆破テロなども、もうほとんど報道されていない

今の話題は可愛いクマの赤ちゃんが動物園で生まれた、というものだった

上条「・・・こんなの、深夜にやる必要あるか?」

美琴「か、可愛い・・・」

上条「・・・体験入学が終わったら行きますか」

美琴「いいの!?」

上条「あぁ、もちろん」

美琴「やったぁ!!!」

美琴が上条に強く抱きつく


992 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:10:27.44 ID:wDwdjSjS0
上条「こらこら、大声出さないの」

美琴「あ、ゴメン」

上条「・・・はぁ、さっさと寝ましょうか」

美琴「ねぇ、お風呂は?」

上条「あぁ・・・そうだった」

今更だが、ずっと鍋パーティーだったため、風呂にはもちろん入っていない

上条「今から入るのも面倒だけどな・・・」

美琴「でも入らないと」

上条「ぱぱーっと入りますか」

美琴「うん」

二人が風呂に入る

二人で入ると、いつもああいうことになるのだが今日に限ってそれはなかった

自然とまぶたが落ちてきそうになるのだ

そんな中で、ピンクなことにはならない


993 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:13:26.93 ID:wDwdjSjS0

上条「はぁ・・・いい湯だった・・・」

美琴「眠くなっちゃった・・・」

上条「寝ましょうか」

上条が美琴をベッドに運ぶ

ゆっくりと横に寝かせたあと、その隣に上条も寝る

美琴「んにゅ・・・眠い・・・」

上条「・・・はぁ・・・我が家のベッドがこれほどに幸せとはな・・・」

美琴「最近はイギリスだったからね・・・」

上条「そうだよなぁ・・・」

ブラックマンの事件を思い出して、上条が顔をしかめる

あんな事件は何度も経験した

だが、やはり慣れることはない

上条「・・・でも、あれでよかったんだよな」

美琴「うん」

994 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:19:44.80 ID:wDwdjSjS0
上条「・・・なんかさ、モヤモヤしてるんだよな」

美琴「仕方ないじゃない・・・」

上条「ん、そうだよな」

上条がゆっくりと美琴を抱きしめる

上条「・・・お前を守れただけでよかったよ」

美琴「うん・・・ありがと」

上条「・・・」

そっと、上条が美琴の唇を奪う

美琴「ん・・・」

上条「美琴・・・」

美琴「当麻・・・」

ゆっくりと、上条が美琴の衣服に手を伸ばす

眠くたって、やはりこんな雰囲気では意識してしまう

上条「じゃあ・・・」


995 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:28:26.34 ID:wDwdjSjS0
そこで上条が何かに気づく

学校カバンが放られている

それは、上条のものだ

見慣れている光景なため、それには何の違和感もない

だが、問題はその中に入っているもの

上条「・・・しゅ、宿題・・・」

美琴「え・・・?」

美琴がゆっくりと体を起こす

そういえば、まだ半分ほど終わっていないのではなかったか

上条「・・・や、やらないと!!」

美琴「ま、待ってよ!今からって・・・」

時刻は午前の1時

上条「やってやる!!」


996 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:30:54.25 ID:wDwdjSjS0

上条「・・・おはよう・・・」

美琴「・・・おはようございます・・・」

上条「・・・」

目の前には、完全に解答の書き込まれたプリントが並んでいる

彼はやったのだ

睡眠時間を犠牲にして、宿題を終わらせた

上条「・・・美琴、ありがとな・・・」

美琴「どうってことないわよ・・・」

もう、学校に行く時間だ

今から寝るわけにはいかない

かといってサボってしまえば、上条はそれこそ留年確実だ

上条「・・・仕方ない・・・学校で寝るかな」

美琴「それはダメだけど・・・まぁそれでもいっか・・・」

上条「どっちですか・・・」


997 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:36:39.64 ID:wDwdjSjS0
美琴「じゃあ行ってきます・・・」

上条「俺も行ってきます・・・」

ぐったりとしながら、寮の階段を降りる

一階の出口を出たところで、見知った顔を見つけた

上条「あれ?垣根」

垣根「おーっす、よく眠れたかお二人さん」

美琴「嫌味だとしたら怒るわよ」

心理「でも、あの後は時間あったでしょ?」

上条「宿題・・・」

心理「あら、わざわざ真面目に解いたわけ?」

上条「・・・心理さんはやってない・・・とか?」

心理「もちろん、大体宿題なんてくだらなくてやってられないわよ」

上条「」

垣根「ヤンキーだ」


998 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:45:28.17 ID:wDwdjSjS0
上条「・・・そうだ、劇の練習もあるんだっけ・・・」

垣根「おう、楽しみだよな」

上条「もうイヤだ・・・」

美琴「・・・頑張ってね、当麻」

力なく美琴が笑う

垣根「・・・そうそう、それより早く行こうぜ!!今日は朝からみんなで話し合いだ!!」

上条「・・・もういやだ・・・」

垣根「やる気を出せよ上条!!」

心理「そうよ、これで少しでも内申を上げましょう」

美琴「当麻、頑張ってね」

上条「あぁ・・・分かりましたよ・・・」

上条が溜め息をつく

空はとても綺麗だ


999 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:48:48.36 ID:wDwdjSjS0
あのどこかに、ブラックマンがいるのだろうか

そこのどこかに、神様がいるのだろうか

上条(・・・だとしたら・・・俺達を見て笑ってるのかな)

垣根「おい、上条!!」

心理「早くしてよね、私達も急ぎたいのよ」

上条「あぁ、分かってるよ!!」

美琴「じゃあ、私はこっちだから」

上条「また後でな」

美琴「うん!!」

美琴が学舎の園に向かう道へ進む

上条「・・・はぁ、楽しい日々ですよ」

垣根「うるせぇ!!黄昏るな!!!」

上条「・・・なんで黄昏たらダメなんだ!」

垣根「うっせぇ!!早くしろ!」

上条「あぁ分かったよ!!」

上条が走り出す

とても楽しそうな笑みを浮べながら


上条「今日も不幸だなぁ!!!」



1000 : ◆G2uuPnv9Q. [sage saga]:2011/11/16(水) 14:49:21.94 ID:wDwdjSjS0
>>1000なら俺はサトリナの旦那

異論は認めない


1001 :1001 :Over 1000 Thread
              わ〜い、>>1001ゲット〜
               __
                    ‖ _~",ー 、,,_
      |           ‖ /  |ノ  ,>
   \ |  /      ‖ /ヽ_,:-−'´
                ‖/~         ヽ | /
                    ‖     ,   ))
       ,、      ,、   /'ll__/ ヽ
      / ヽ__/ ヽ/ _‖   _  ヽ.    ∧___∧
    /       /  ´ ‖ー/  `   l ロ. / _    _
    / ´ 、__,  ` |.    ‖∨      ,! || | l--l `
   _l    ∨    ヽ/ ̄)( ̄ ̄`"::::ノ (⌒ヽ, ..ヽノ   ,
  ( ヽ_        /   /ll `'ー、....::ノ ∀\/ー- /`l  ヽ
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南千秋ちゃんペロペロ @ 2011/11/15(火) 18:42:17.50 ID:q4DHk5Cio
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紅莉栖「岡部、IS学園に転入して」 V @ 2011/11/15(火) 17:19:01.75 ID:gOZJgFGao
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上条「恋は!」美琴「儚く!!」心理「愛は」垣根「虚しく」 @ 2011/11/15(火) 15:24:11.96 ID:ZfHP8tF70
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オプチュウの次スレ @ 2011/11/15(火) 15:14:32.24 ID:lwHasQb6o
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煽り合って精神を鍛えるスレ【避難所】 @ 2011/11/15(火) 13:33:07.02 ID:cVK7PRw1P
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誰か話そう♪ @ 2011/11/15(火) 13:15:07.28
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【落選確実】橋下徹【無能】 @ 2011/11/15(火) 12:58:05.85
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【無料FPS】VIPでペーパーマン【VIPPM避難所】 @ 2011/11/15(火) 12:51:49.35 ID:4Dnxo23uo
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