948:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:38:25.35 ID:DuwF8WnAO
梓は息を切らしながら夜の街を駆けた。
心臓が破れるまで、全てを風に変えて、まるで自分がメロスにでもなったかのように。
梓「……つか……れた」
949:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:38:56.16 ID:DuwF8WnAO
梓「……何でバテてるの?」
自分と純では身体能力という点では天と地の差がある。ある筈だった。
闘気という概念を理解している者とそうでない者とではそうなる事は必然だ。
950:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:39:28.82 ID:DuwF8WnAO
純「あ……」
考え込む梓を見てようやく純も気付いたようだ。
目に見える異常な身体能力の向上。梓の完全な闘気の発現が近付いている事に。
951:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:39:57.96 ID:DuwF8WnAO
純「…………」
逆に純は呆れたような笑みを浮かべて溜め息を吐いた。
文恵を見た瞬間血がたぎるような高揚感を味わえたかと思えば、その文恵の態度に気味悪さを感じて恐怖を味わった。
そして今、蟻のように矮小な力しか持たなかった友が自分と同じ場所に立とうとしている事に小さな喜びを感じている。
952:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:40:27.99 ID:DuwF8WnAO
梓「純……?」
梓に背を向けたまま手を振り、調子外れな鼻歌混じりで純は去って行った。
つるみだして以来ここまで聞き分けが良い純を見た事があるだろうか。
それを考えると梓の心に妙な靄がかかってゆく。
953:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:40:56.26 ID:DuwF8WnAO
近くに街灯は無い離れの道。
それなのに背後から火を灯されているような奇妙な明るさがあった。
振り向かずともその存在を認識出来る明りはかつかつと音を立てて歩み寄って来る。
一瞬とも、永劫とも思える時間が過ぎ去った。
数歩分の距離を置いて光の足跡は鳴り止む。
954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:41:26.74 ID:DuwF8WnAO
梓「に"ゃっ!?」
猫のような悲鳴を上げてしまい、梓は思わず赤面する。
細い指、華奢な腕、物腰穏やかな声。
梓を抱き締めた人物は先程まで一緒に居た文恵だった。
955:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:41:57.60 ID:DuwF8WnAO
梓「嫌いじゃないです。でも……っ」
目の前で可愛らしい仕種を見せる文恵は辻斬りだ。
理由無く、躊躇無く、遠慮無く弱き者に刃を振るう危険人物に好意を抱けというのも無理な話だろう。
956:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:42:28.70 ID:DuwF8WnAO
文恵「…………」
文恵は一瞬だけ面食らったような顔をしたが、直ぐに温厚な笑顔を浮かべる。
梓「貴女がここ最近でどれだけの事をしてきたかは知ってます。弱い者苛めが過ぎる人にトップランカーでもない私が言い寄るわけないじゃないですか!」
957:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[saga]
2011/04/10(日) 01:43:06.62 ID:DuwF8WnAO
文恵「そう……だよね。今までいっぱい悪い事しちゃったもんね」
大粒の涙が堰を切ったように溢れ出す。
涙の数と比例して増大してゆく胸を締め付けられるような感覚が梓を苛ませる。
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