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2011/01/19(水) 19:50:22.41 ID:IClwZiHj0
哀川さんは豪快に笑う。ファミレス中に轟く、大音量でその人は笑った。
「正直、諦めてた部分も有ったんだよ。アタシらしくもないが、それでもちょっと強くなり過ぎたっつーかロープレでチートして途中からゲームをする事自体がダルくなる感じだな。やっぱ最初から勝敗が分かってるような敵じゃ、こう……燃えねえよなあ」
燃え盛る炎のような真紅で全身を染め上げて、立ち上る存在感は最早熱気としか形容のしようがない。炎と比喩して何の問題もないであろう人類最強の口から出た「燃えない」という言葉。
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2011/01/19(水) 19:54:07.73 ID:IClwZiHj0
オラ、ワクワクしてきたぞを地で行くその眼の輝きは紛れもない本心なのだろう。なんだ、この人。どんな図太い神経してやがるってんだ。
「つまり、アタシにしてみりゃクソ親父の世界の終わり云々なんってーのはどうでもいいんだよ。アタシは強敵と出会えればそれでいい」
格闘漫画みたいな事言い出しやがった。本当にこの人は現実に居る人間か、俺にはどうも怪しく思えてきたぜ?
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2011/01/19(水) 19:57:58.72 ID:IClwZiHj0
「話し合いで済むのならば、それに越した事は無いと思っていたんですよ。そういうのがぼくの戯言における本領ですからね。ただ……ただ、哀川さんがそちら側に回っているのは予想外でした」
いーさんは言う。
「貴女は、貴女だけは正義を間違えないと思っていましたから。どうやらぼくの買い被りだったようでほっとしていますよ。哀川潤も、人の子だったんだな、なんて。変な話ですけど」
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2011/01/19(水) 20:01:46.98 ID:IClwZiHj0
「その辺にしておけ、潤」
「……クソ親父。なんだよ、アタシのパートはこれで終了かよ。つっまんねえな」
頬を膨らませて立ち上がる赤い彼女。その鋭い眼光で睨み付けるのは、俺。……え? なんで、俺?
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2011/01/19(水) 20:05:10.77 ID:IClwZiHj0
「良いんですか、狐さん。哀川さんを帰してしまって。これでもう、貴方を守る人は居ませんよ」
「『これでもう、貴方を守る人は居ませんよ』、フン。いいか、"いーちゃん"。潤はただの前座だ。お前も得意な時間稼ぎってヤツだ。時間が時間だからな。連絡が付いたのは六人しか居なかったが、それでもお前らを全滅させるには十分だろ」
十三銃士。あんな人が後十二人も居るっていうのかよ、おい。たった一人でも長門の相手を出来そうな規格外が他にまだ!?
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2011/01/19(水) 20:12:50.21 ID:IClwZiHj0
俺といーさんと井伊崩子さんは揃ってファミレスのドアをくぐる。カラリカラリと小気味の良い来客を告げる鐘が鳴った次の瞬間、いーさんが小さな声でぼそりと言った。
「……伏せるんだ」
俺は何を言われたのか分からなかった。そりゃそうだ。「伏せろ!」なんてアクション小説なんかじゃよく見かける台詞ではあったが、それは所詮フィクションの中ばかりであり、真っ当に生きてきて自分が言われる対象になるなんざ夢にも思っちゃいなかった。
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2011/01/19(水) 20:15:43.52 ID:IClwZiHj0
「いや、え? え?」
二度三度、走り去っていく崩子さんの後ろ姿と座り込んだいーさんを見比べる。
「追わなくて……いいのか? 一人で行かせちまって?」
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2011/01/19(水) 20:20:41.76 ID:IClwZiHj0
気付いた時、既にいーさんは隣から消えていた。唐突にこんな事を言っても理解が難しいとは思うが実際そうだったのだからそうとしか言いようが無い。ついさっきまで今後どうするかを話していた……はずなのに。で、ありながら。
二分前か、三分前か。五分前か十分前か。まるで神隠しにでもあったみたいに忽然と。
辺りを見回してみても一本道の裏路地である。ここを二人で並んで歩いていたはずなんだ。さっきまで。
おいおい、レベルの高い迷子能力だななどと、皮肉を少しばかり響く声で口走ってみても音沙汰無し。
……これはもしかして、敵の攻撃ってヤツか?
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2011/01/19(水) 20:25:43.43 ID:IClwZiHj0
「えーっと、ああーっと……オデットさんや?」
とにもかくにも話し合いを試みる俺。そうだ、きちんと向かい合って話し合わないからお互いを理解出来ずに戦争が始まってしまうのだろう。であるならば、言葉が通じる以上無用な血を流す必要なんてどこにも無いんだ。そうだろ?
人間関係は信頼関係。きっと電波さんとだって分かり合えなくとも共存の道は有るはずさ、どこかに。
……どこかとは言ったものの窓やらに柵の付けられた病院しか想像出来はしないのだが。
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2011/01/19(水) 20:28:50.76 ID:IClwZiHj0
ああ、これで終わりか。こんなトコロで終わりか。人間ってのは死ぬ時はやけにあっさりと死んじまうモンなんだなと俺の頭が諦念でいっぱいになるまでには一秒と掛からなかっただろう。
多分、走馬灯みたいな感じで時間が圧縮される現象がそこには起きていたんじゃないかと思う。なぜかっつーとそれは美女が俺から飛びのく様がスローモーションで見えたからであり、また俺と彼女との間に飛んできた刃物の軌跡がやけにはっきりと見えた事から俺はそう思ったのだが。
……助けに来るのおせーよ、ったく。
「その人は赤神イリアではありませんよ、赤神オデットさん。よく見て下さい。そもそも彼は男性です。その人を赤く染めたところで貴女の本懐は達成出来ません。悪しからず」
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2011/01/19(水) 20:32:54.48 ID:IClwZiHj0
「カッターナイフ? の刃?」
「ええ。ほら、一応僕って機関の構成員と学生っていう二束の草鞋な訳じゃないですか。となるといざという時に武器に出来そうで持っていられる物は筆記用具関係しかないんですよ」
なるほどなるほど。つまり、コイツは常在戦場って感じなのか。不味いな。そんなの知っちまったら迂闊にからかう事すら出来ねえじゃねえか。あー、知らなきゃ良かった。
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