過去ログ - キョン「戯言だけどな」
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31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:51:18.80 ID:IClwZiHj0
以前気絶しっぱなしの朝比奈さんを背に負って歩く俺の、隣を古泉は歩いていた。
いわく、心苦しいがいざという時に自分は戦わなければならない為に朝比奈さんを背負っては歩けないとの事だ。いや、今しがたまで謎のホラー美女と大立ち回りやらかしてたヤツにそこまでさせるのは流石に俺だって出来ねえよ。
それに、ま、これはこれで役得ってヤツだしな……現状が緊急事態でさえ無ければ表情筋を一筋残らず弛緩させていてもおかしくはない。
しっかし、去年の七夕(正確には四年前の七夕になるのだろうか)以来だよな、こうやって朝比奈さんを背負うのも。
なんかちょっとした既視感だぜ。
以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:55:00.23 ID:IClwZiHj0
「ええ。非常識極まりありません。ちなみにこうやって貴方に種明かしをしている僕ではありますが、その道のプロではないので正直貴方と逸れないようにするのが精一杯なんですよ、これでも」

そうかい。そりゃ……って、おい、ちょっと待て古泉!?

「気付きましたか。僕たちは危機から逃れたつもりでいて実はまだ敵の術中、その只中に居るのです」
以下略



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:56:24.94 ID:IClwZiHj0
「良い忠犬ぶりだ。玖渚機関の『情報操作室』、弐栞らしい掌の返しようだね」

「勿体ないお言葉です」

古泉はその姿勢のままに動かない。頭を上げる事も無く地面に向けて言葉を発するが……どういうこった? 玖渚ってのはコイツが所属してる機関の正式名称で……ダメだ、分からん。
以下略



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:59:52.51 ID:IClwZiHj0
戯言遣いを先頭に歩く俺たち四人。道すがら俺は古泉に耳打ちした。

「なあ、あのいーさんってのはお前が畏まるくらい凄い人なのか? 正直、俺にはその辺に居る普通のヤツとあんまり変わり映えしないんだが」

白ウェディングドレスの殺人鬼に黒スーツでめかし込んだ金属バット、着流しに狐面を付けた長身痩躯や全身真紅の人類最強と今日見た「そっち側の人間」っていうのはどいつもこいつも服装からしてどっか螺子が吹き飛んでいた。
以下略



35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:01:48.86 ID:IClwZiHj0
藤原。
佐々木団(仮)における未来人で、SOS団における朝比奈さんのポジションにある少年。ソイツの事をようやく俺は思い出す。
アイツまで出演して来てんのかよと愚痴りそうになって、しかし思い直した。
未来人その二の思惑、目的の一部が狐さんのそれと合致していないとは必ずしも言い切れない事実に思い当ったからだ。
以下略



36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:05:44.66 ID:IClwZiHj0
「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら!」

ようやく目を開けた時、一番に視界に飛び込んできたのは地面に倒れ込んだ古泉の姿だった。

「古泉!!」
以下略



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:08:00.03 ID:IClwZiHj0
オレンジ髪の挑発的な太い眉がへの字に歪む。

「……何が言いたいんだよ、いーちゃん」

「友達のピンチには友達がやってくるものなのさ、そうだろ、想影真心?」
以下略



38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:09:47.03 ID:IClwZiHj0
「……ふう」

想影真心(後)が出て来てから一言も喋らなかった想影真心(先)が口を開いて最初に出たのは溜息だった。

「まったく、そういう事だったのですね。人が悪いですわ、お友達(ディアフレンド)。最初から分かっていたのでしょう? こちらとしては真心に連絡が付かなかったからの苦肉の策だったのですけれど、はあ、まったくこんなものは十全ではありません」
以下略



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:34:24.61 ID:IClwZiHj0
大泥棒。耳慣れた単語のような気がするが、それは恐らく猿顔の某三代目が余りにも有名な為であり、しかして実際の現在日本にはそぐわない言葉なのは俺でなくても首を縦に振る所であろう。うむ。
暗殺者だとか殺人鬼だとか、なんかここに来てハルヒの願望実現能力が暴走を始めたんじゃないかと思う程の現実感の無さじゃないか。それとも、俺が知らなかっただけでこういう世界も粛々と存在してきた、っていうのか?
どこで「あちら側」と「こちら側」がクロスしたのだろう。ああ、考えるまでもねえ。交点はいつだって一つ。
涼宮ハルヒ。
「あちら」と「こちら」の橋渡し。今まで辛うじて保ってきた絶妙なバランスが、絶妙だったが故に崩れただけなんだ。
以下略



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:52:22.50 ID:IClwZiHj0
「真心。彼の言うとおりだよ。ぼくも聞いておきたい。小唄さん。貴女は……貴女みたいな方がなぜ『ならないようになる災厄(ナッシングイズグッドイナフ)』を欲しがるのか。その力を何に利用しようとしているのか。
望めばなんだって盗めるでしょう。それが大泥棒であると以前にぼくは貴女本人から聞きました」

nothing is good enough.(思い通りになどなりはしない)
以下略



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 22:06:21.30 ID:IClwZiHj0
足元を揺るがされている、そんな気がした。不思議を望んだハルヒと普通であり続ける日常と、宇宙人未来人超能力者なんて単語が飛び交う非日常とを天秤に掛けて後者を選んだ俺。
石丸さんは、大泥棒はその俺に突き付ける。言葉にせずとも詰問する。
そんな我侭が罷り通ると思っているのか、と。
そして今、目の前に展開されている非日常。人と人が殺しあっていてそれを当然と許容する戯言遣いの存在。これを……これが俺の選択の延長線上に有ったものだ。不思議を捨て、普通の高校生として、普通を求めていれば選んでいればこんな事態にはならなかっただろう。
古泉一樹。倒れている超能力者の本懐は涼宮ハルヒの願望実現能力の消失。そう言っていた。聞いていた。
以下略



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