1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)
2011/03/28(月) 21:17:20.25 ID:gJVBoKdj0
注意書き
・オリジナル
・一部解り難いネタがあります
・中篇〜長編ぐらいの長さ。原稿用紙換算で150枚程度
2:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:19:07.51 ID:gJVBoKdj0
それは唐突に、そして偶然に。神の導きによって行なわれた、ある種の奇跡である。
秋川秀一の場合。
その日、秋川秀一はひどく疲れていた。臆病で気が弱く、常に脅えて暮らしている彼には疲れない日などないのだが、それでもこの日はひどく疲れていたのだ。
3:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:19:54.87 ID:gJVBoKdj0
夏原は元々部活に入っていない。というのは彼自身が飽きっぽくて一つのものにずっといられないからである。そのくせ飲み込みはよく、気に入ったら段位とか黒帯とかをもらってからやめるようなひとだ。格闘技をくいちらかすのが好きらしい。今は空手で、この前はムエタイ。その前はボクシングなんかもやっていた。他にもあったが、あげだしたらキリがない。つまりはそれぐらい節操無しに格闘技を習ったのだ。筋肉隆々になるのも当然といえる。なにが楽しいのかまったく僕にはわからないけど。
「そういえば、冬森さんってどんな子だっけ?」
「は?」
僕が唐突にそんなことを言うと、夏原は思い切りマヌケな顔をした。何か珍しいものでもみたかのように僕を見つめてくる。だから、そんな目で僕を見ないでほしいんだけど。失礼な奴だ。さらにそれだけじゃ満足せず、少し目をこすり、深呼吸なんかもしはじめて、先ほどの言葉は何かの間違いだとでも言うように聞きなおしてきた。
「なんだって?」
4:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:23:06.47 ID:gJVBoKdj0
かくして翌朝。キッパリ諦めると決めたつもりの僕だったが、どうしても未練があった。試す前に諦めていてどうするのだろうか。絵本は僕一人で書けるものでもない。それなのに僕ときたら冬森さんにそれを提案する前に諦めるんだなんて。そんなのは単なる逃避だ。僕が自分自身から目を逸らしているだけなのである……とまぁ、己を叱咤激励しても無理というものがある。そもそも僕は女の子に話しかけられない。口が動かないし硬直するし。それは同じ属性をもっている冬森さんにも適用される。ようするに持ちかけることすら難しい。やるにしても喋りだすのに10分以上は軽く経過してしまう。そんな自分が情けなくて心底いやになるけど、どうしてもしょうがない。これは性分なんだ。僕は、女の子が怖い。近づかれると、話しかけられると、泣いてしまいそうになるんだ。それというのも、過去のあまり思い出したくないあるコトが原因である。僕の女嫌いの原点といっていい。ひどいトラウマで、今でも思い出したらなんだか当時の自分に戻って泣き出してしまいそうになることだってある、それぐらい、幼く繊細な当時の僕にはショッキングな出来事がおきたのだ。
確か、まだ小学生低学年だったと思う。そのころは僕はまだ女の子が嫌いじゃなかったし、別になんとも思わなかった。そのころから絵が好きだったので、女の子への興味なんていうのはほぼ皆無だったのである。そんなある日に、事件がおきる。隣の席の女の子が僕の大事にしていた本を何かの拍子に破ったのである。彼女が謝ろうとしないので僕はひどく怒って、声を荒げて彼女を紛糾した。罵声も少しは浴びせたと思う。人のものを壊しておきながら素通りしようとしたんだ。僕は心の中に正義の炎を燃やしていたと思う。そしたら、少し強く言い過ぎたのか、それとも策略か。今となってはよくわからないが彼女が泣き出してしまったのだ。泣いたって僕の怒りは納まらない。とにかく謝ってもらおうとしていたと思う。それなのに、なんだかよくわからないけどクラス中を巻き込む問題にまで発展した。それで、なんだか、女の子を泣かした僕は悪としてみなされた。僕は僕が正義だと思っていたのに、だ。物を壊された被害者でもあるのに、だ。事の本質は無視して何故か泣かせた僕が大悪人に仕立てあげられ、あれよあれよの間に僕は何故か逆に謝らせられて有耶無耶になり、時がたつにつれその事件が針小棒大に膨らんでいって僕は濡れ衣も何着か着せられることになり暗黒の小学生時代をすごしたのだ。もう、女の子なんて大嫌いだった。中学に遡ればまだそのことを引きずって新たな濡れ衣も何着か着込んだと思う。女子グループによるイジメにも結構あったものだ。自称被害者の増加も留まるところを知らず、中学二年生の頃には、僕が名前も知らないような女の子を強姦したとかいう謂れの無い罪を着せられ、職員室で問いただされ無罪が判明するまで僕はもう死にたくなるほどの悪人扱いを受けたものだった。このころには女の子なんか死滅しろと本気で言っていたような気がする。我ながら悲惨な人生送っているなぁ。だからわざわざ偏差値高めのこの高校を選んだんだっけ。
そして、僕は泣きたくもない。そんなことがあったので昔からよくいじめられたものだったが、その時言われた言葉が今でも僕の心に深く突き刺さっている。「お前の泣いた顔、まるで女の子みたいだ」僕が泣いてしまって、そんな顔を見せたときにいじめていたグループの一人が面白がって発した言葉だ。でもそれは何より僕へのダメージへと繋がる。僕は僕が嫌いな女の子みたいな顔をしているとのことなのだ。普段から女顔、と言われてしまったら僕はもうどうなってしまうんだろう。そんなわけで、僕は涙なんか見せたくない。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[sage]
2011/03/28(月) 21:23:22.51 ID:SnNaFhrAO
期待。
でももうちょっと短くしてもいいかも
6:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:23:47.57 ID:gJVBoKdj0
「あきかわくん?」
で、教室。ぼーっとしているところに何やら高い声で、おずおずとした、まぁ、所謂女の子の声に背後から呼ばれてしまう。なんで、また、僕なんかに。何か用なんだろうか。僕は最大限の譲歩の気持ちを持って、精一杯のつくり笑顔で振り向くと、そこには冬森さんが緊張した様子で立っていた。どうにも落ち着かないらしい。僕もそれは同様だが。
「昨日言っていたこと、本当ですか?」
「昨日?」
「絵本のこと。私も、絵本をかきたいんです。でも、私、絵は描けないから」
7:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:24:34.37 ID:gJVBoKdj0
とりあえずだーっと投下。
……読みづらいような。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/28(月) 21:28:25.49 ID:3vXaF6R1o
三〜五行くらいで改行したり、台詞の前後を改行したりするといいかもしれない多分
それにしても普通の小説風は先を越されたか、残念
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/03/28(月) 21:28:31.88 ID:fX7M1dUj0
もうちょっと改行すると読みやすいかな
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)[sage]
2011/03/28(月) 21:31:14.19 ID:pCRMJa2AO
>>7
うむ、申し訳ないが読みづらい
一行ごとに空白を挟んだり、1レスの行数を少し減らしてもらえると見やすい
11:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:32:21.84 ID:gJVBoKdj0
かくして初日。
夏原はおらず、春野さんもいなかった。春野さんは生徒会か何かで忙しいから遅れるとのこと。夏原は単純に稽古があるらしかった。
いきなり冬森さんと二人きりになったので、とても気まずい。宛がわれたこの空き教室はどうも二人では広すぎる。
さて困った。冬森さんもそれは同様らしく先ほどからちらちらとこちらの様子を伺ってくる。
気になりすぎて大本のお話の構想を練るのに集中できないといった様子だ。
12:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:36:29.67 ID:gJVBoKdj0
「それに」
一人、違う方向に考えが進んできていたところに二の句がきたもので僕は先ほどの冬森さんではないけれど、少しばかり驚いた。
肩ぐらいなら揺れただろう。僕は若干の気恥ずかしさを感じながらも平然を装い、戸惑っていた彼女に続きを言うよう促した。
13:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:40:00.48 ID:gJVBoKdj0
二日目。
登校中、前を行く冬森さんに気がついた。知らぬ仲でもないのでなんと無しに声をかけたのだが、逃げられてしまった。
こちらを振り向くこともしない。多分、声だけで顔と名前が出てくるほど僕を覚えていないのだろう。
男の声で自分の名前が呼ばれたというだけで恐怖の対象らしい。
14:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:43:35.91 ID:gJVBoKdj0
放課後。
例によって二人が不在の状態で部活が始まった。同じクラスなので冬森さんとは一緒に部室に向かったのだが、廊下で会話は一切無し。
事務的な雰囲気で二人並んで歩いてきたわけだ。そのせいか、通りがかりの誰もが怪訝そうな顔をしなかった。
そりゃ、二人して無表情で歩いていれば他意はないのが丸解りというものだろう。
15:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:47:06.95 ID:gJVBoKdj0
ちなみに、物理の小テストは10点満点である。にしても、春野さんに勝ったのか、僕は。
これまた珍しいものである。秀才な彼女に勝っていたとは。
驚きのあまり線がブレてしまったので、そこを消しゴムで修正しつつ口を開く。
「あの8問目部分だけは期末に出さないでほしいよね」
16:>>1[saga]
2011/03/28(月) 21:47:34.22 ID:gJVBoKdj0
小休止。改行はこんな感じでいいでしょうか?
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/28(月) 22:02:01.07 ID:3vXaF6R1o
だいぶ読みやすくなったと思う
しかし、ただでさえ重量感(一レスが多い+小説形式)があるから一日の投下量は考えた方がいいかもしれない
今日はあとどれくらい?
18:>>1[saga]
2011/03/28(月) 22:06:25.99 ID:gJVBoKdj0
もっと1レスを短くしたほうがいいですかね?
特に考えてなかったな……。あともう5,6か3、4ぐらい……?
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/28(月) 22:27:42.55 ID:3vXaF6R1o
一レスを短くできるならそれに越したことはないと思う
けど、それと同じくらい投下を毎日小出しにするなどして読み手の負担を減らすことが多分大事
ここは小説形式、しかもオリジナルは異端と言っていいほどマイナーだから、なるたけストレスなく読める方がいいかも
書いてる方が思ってるより初見で読むの人の負担は大きいから
20:>>1[saga]
2011/03/28(月) 22:35:14.98 ID:gJVBoKdj0
ではあと少しだけ投下して今日はやめておきます。
21:>>1[saga]
2011/03/28(月) 22:37:22.06 ID:gJVBoKdj0
そんなこんなで発足してから、一週間が経過した。夏原と春野さんは宛がわれた部室に顔を出すことはあまり無い。
春野さんが冬森さんと一緒に帰るために帰り際に顔を出すのはノーカウントだろう。
もともと二人はわりと忙しい人であるし、絵本を製作することに関しては積極的ではなかった。
あくまでも僕達の活動を応援するというのが二人の名目であり、それには部活として成立するための頭数に自らをカウントするというのも入っているのであろう。
そんなわけで、僕は冬森さんと今日も二人きりだ。冬森さんはよほど集中しているのか真剣な眼差しで原稿用紙にペンを走らせている。
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