78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/17(水) 20:24:23.65 ID:c+5+k8k3o
―――六月二十二日、深夜
その日も、砲火に追われ、敵兵の目から隠れながら、海岸をあてどもなく逃げ回った。
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2011/08/17(水) 20:26:15.74 ID:c+5+k8k3o
山城の丘にさしかかろうとする辺りで、兵隊たち十数名の集団が、斬り込みをかけると息巻いている。
私には、ためらいはなかった。
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2011/08/17(水) 20:29:13.58 ID:c+5+k8k3o
……気が付くと、赤鬼のような憤怒の形相をした一人の米兵が、小銃を私の額に突きつけている。
米兵はいきり立ちながらも、相手が年端もいかない女だったことに少し驚いているようだった。
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2011/08/17(水) 20:32:14.09 ID:c+5+k8k3o
―――六月二十三日、早朝
私は、遠くから聞こえた銃声で目が覚めました。
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2011/08/17(水) 20:37:30.42 ID:c+5+k8k3o
空しくなって、視界が涙でにじみました。
今さら、私たち一人一人の生き死にが戦争の勝ち負けに何の関係があるのでしょう。
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2011/08/17(水) 20:40:51.85 ID:c+5+k8k3o
その後、死体につまづきながら、ひたすら海岸をさまよい続けました。
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2011/08/17(水) 20:44:25.73 ID:c+5+k8k3o
「……ありがとぉ、憂。もういいよ、私は置いていきなよ」
私は、憂の表情を見ていたたまれなくなり、言ったのです。
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2011/08/17(水) 20:46:56.11 ID:c+5+k8k3o
“デテコーイ、デテコーイ!”
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2011/08/17(水) 20:49:15.62 ID:c+5+k8k3o
「…ん、っしょ……っと……」
私は、自分のヘアピンを外して、岩陰に文字を掘りました。
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2011/08/17(水) 20:55:12.56 ID:c+5+k8k3o
とはいえ、もう、時間は残っていません。
「憂、もう、いいかな……」
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2011/08/17(水) 21:07:49.96 ID:c+5+k8k3o
―――どのくらい時間が経ったのでしょうか。
私は全身の傷口にハエがたかり、ウジが体中をついばむ感覚で、ぼんやり意識を取り戻しました。
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