過去ログ - 男「だったら俺が悪いのかよ!」
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24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:20:03.91 ID:vDKXf2v5o

 バイトを探し、電話をした。三度。季節は夏から秋へと映り、もう冬が近づいていた。
 彼は以前として堂々巡りから抜け出せていなかった。連絡した店は、いずれも彼が働こうとするのを受け入れなかった。
 
 身だしなみも整え、なるべく真摯な態度を取ったつもりだった。
以下略



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:26:57.16 ID:vDKXf2v5o

 夕方頃、車に乗り帰路についた。姉と母は車内で眠っていたけれど、彼は考え事を続けていた。
 何かを変えよう、と思う。毎日のように、そう考えている。
 けれど結果は何も変えることができていない。本当は自分は、このままの生活を続けたいのだから。
 
以下略



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:36:42.67 ID:vDKXf2v5o

 秋が終わり、冬がやってきた頃、彼は何もかもをやめてしまおうかと思った。このまま引き籠もりの生活を続けるのも悪くない。半ば開き直るようにそう思った。
 彼の心がどう動こうと、客観的に見れば、二年前も今も変わらない。同じような行動しかしていない。ただ無為に日々を過ごしているだけだ。
 
 それを変えようとするのにも疲れてしまった。一度立ち止まってから、再び歩き出すのには、ただ歩き続けるよりも強い勇気が必要だった。
以下略



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:50:48.12 ID:vDKXf2v5o

 学科、受講、教習券、予約、みきわめ、仮免許。それらの単語は、彼の心に暗い影を差した。わずらわしいシステムが、彼は何よりも苦手だからだ。
 それでも、元来は真面目な性分だからか、彼はそれらを必死にこなした。平日は毎日空いていたので、あまり日数はかからない計算だった。

 毎日の学科講習と、空いた時間に入れた教習。彼はマニュアル自動車の免許取得を目指した。
以下略



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:52:34.11 ID:vDKXf2v5o
ここらへんが限界かな
続く


29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:41:50.91 ID:PjuOVipoo

 待合室の長椅子に座る。増え始めた人々にまぎれて、横目で彼女の様子を見た。
 どうにかして手の中の文庫本に集中しようとしていたが、周囲が騒がしく読書が捗らないらしい。
 だんだん苛々してきたようで、見ているこっちが落ち着かない気持ちにさせられる。

以下略



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:42:36.46 ID:PjuOVipoo

 ムラサキは、まさか話を振られるとは思っていなかったのか、少なからず驚いていた。
 その様子を見て彼の胸のうちに初めて緊張が走る。上手く話ができるだろうか。

 あまり間をおかず、彼女は質問に、作家名だけで答えた。彼も何冊か読んでいる、流行のミステリー作家だ。
以下略



31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:43:23.43 ID:PjuOVipoo

 自動車学校に通うことで、彼は少しずつ冷静な考えを取り戻し始めた。
 とにかくこれ以上、部屋に引き篭もり続けるという選択だけはしたくなかった。
 どうにかして現状から抜け出すのだという気負いとも言える意気込みもあった。

以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:44:34.31 ID:PjuOVipoo

 教習券を買い、予約を取り、学科講習を受け、教習所の狭い道路を走ることにも徐々に慣れていき、次第に自然と振る舞うことができるようになってきた。
 待ち時間は本を読んで過ごす。教官と車内で世間話をしたりもする。夕方になると騒々しくなり始めて憂鬱になるが、彼はそもそも以前から喧騒や人ごみを嫌うタチだった。

 何かをしているという実感が沸いてくると、今度は今までならなんとも思わなかったようなことで楽しい気分になったりもした。
以下略



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:45:00.65 ID:PjuOVipoo

 その日、彼は騒々しさに煩わしさを感じながら、教習所の待合室で本を読んでいた。
 とにかく時間を潰すなら何でもいいと思っていたせいで、よりにもよって恐ろしく読みづらい翻訳書を持ってきてしまった彼は、読書にあまり集中できず、時間の流れを遅く感じていた。

 仕方なしに立ち上がり、自販機で飲み物を買うことにする。
以下略



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:45:26.88 ID:PjuOVipoo

「よう」

 背の高い男だった。どこかの高校の制服を着ていて、親密そうな笑みを浮かべている。うしろには数人の少年が控えている。この男の友人だろう。
 彼が黙っていると、男は少し不安そうな顔になった。
以下略



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