94:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:24:11.87 ID:c+cJj/BG0
気が付くと唯は跳ばされる前と全く同じ場所に居た。携帯を見ると、時刻もその時から進んでいる様子は無かった。制服を見ても律の返り血で染まった筈なのに、血の一滴も付いていないし、顔も同様だった。
唯「帰ろう、家に……」
95:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:27:05.83 ID:c+cJj/BG0
平沢家の玄関前には、憂、和、梓の三人が、唯の帰りを今か今かと待ち侘びていた。
憂「お姉ちゃん……大丈夫ですよね、和さん……」
96:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:30:59.99 ID:c+cJj/BG0
梓「……って、あれ?もしかしてあそこに見えるの、もしかして唯先輩っ?」
前方から近づいて来る人影にいち早く気づいた梓は、その方向を指差しながら皆に伝える。憂と和がこぞって梓の指差す先を見つめる。
97:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:33:41.92 ID:c+cJj/BG0
和「唯!」
和がはっと気付いて、唯の両肩を掴む。唯は力無く笑うとそのまま倒れ込む様に、和にその躯を預け、そして、ダムが決壊したかの様に、今まで堰き止めて来た泪を嗚咽と共に溢れさせ流していく。
98:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:36:14.38 ID:c+cJj/BG0
取り敢えず、まずはリビングのソファーに唯を腰掛けさせる。寄り添う様に和が座り、梓は唯の後ろで彼女を支えるかの様に立ち、彼女を心配そうに見つめる。
憂が「お茶淹れて来るね」とキッチンに向かうが、今の憂は少し心配だからと、梓も唯を和に任せて、彼女に付き添ってキッチンに入る。
99:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:40:52.45 ID:c+cJj/BG0
和「そう。それなら今日はこれ位にしときましょう。唯もそうだけど、私も初めての事で少し疲れたわ」
憂「そうですね。私もその方が良いと思います」
100:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:44:27.38 ID:c+cJj/BG0
和「唯、無理をしなくてもいいのよ。また、落ち着いてからでもいいから、今日の所はゆっくり休みなさい」
和が諭すように言う。
101:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:49:20.53 ID:c+cJj/BG0
和「……つまり、こう言う事ね……」
憔悴しきった顔で泪を零しながら、それでも懸命に皆に話す唯を、真剣な表情(かお)で一言一句聞き逃すまいと傾聴していた和は、唯の話を頭の中で反芻し、まとめ上げる。
102:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:54:17.03 ID:c+cJj/BG0
唯のこの様子からして、彼女が嘘を付いているとは思えない。カチューシャと言う物的証拠もある。そもそも嘘を付く理由が全くないし、実際に渋谷での、無差別テロ(じけん)が起こっている。そしてこれまでの状況から律が起こした可能性は非常に高く、彼女がおかしくなったと言う事も納得できる。そして、そうなってしまった以上、彼女を殺めた唯を和はとても責める事は出来ない。むしろ、この唯が親友の命を奪わざるを得なかった。そして実際にこの手に掛けた時の彼女の心情を考えると、とても居た堪れない。と、和は考えただけで心臓が破裂しそうな気持ちになる。
唯の事を考えれば、むしろその役は自分が受けるべきであったと和は思う。
103:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:56:30.60 ID:c+cJj/BG0
和「唯……」
だが和は思う。この事実は、たとえ私(じぶん)達にも少なくとも今の時点ではこの『事』は言うべきでは無かった。この事実は憂と梓、勿論、自分にとっても重すぎる話だし、黙り続けていられれば何(いず)れ<『何処かの誰か』が、スターター(りつ)を斃してしまった>と、言う事になった筈だ。それが誰にとっても最も都合のいい話の筈だ。
104:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/12(水) 08:59:00.19 ID:c+cJj/BG0
和「唯……一つ約束して欲しいの」
唯「……約束…?」
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