64:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:28:37.91 ID:CGXDMCHp0
『汀、何があった!』
「大丈夫! 何でもない!」
悲鳴のように答えると、彼女は近くの薔薇の茂みに飛び込んだ。
65:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:29:17.05 ID:CGXDMCHp0
*
病院服も破り取られ半裸で、体中に切り傷をつけた状態で、汀は高速道路に横たわっていた。
のろのろと起き上がり、空を見上げる。
曇り空で、黒い雲があたりに広がっている。
66:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:29:51.72 ID:CGXDMCHp0
汀は、したたかにコンクリートに打ち付けた頭から血を流しながら、ぼんやりと目を開いた。
そして、はねられた後だというのに、のろのろと起き上がる。
腕と足が異様な方向に曲がっており、満身創痍にも程があると言った具合だった。
トラックの運転席には、誰もいない。
今は停まっているそれを見て、彼女はゆっくりと振り返った。
67:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:30:34.50 ID:CGXDMCHp0
汀は、男に向けてズルリと足を引きずった。
あたりに豪雨がとどろき渡る。
汀は、男の前に時間をかけて移動すると、その焦点の合わない瞳を見上げた。
そしてさびしそうに口を開く。
68:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:31:13.91 ID:CGXDMCHp0
*
「三島寛治。六十九歳。高速道路で、車から転落。その後、病院に運ばれるも、家族に宗教上の理由で輸血を拒否され、十分な治療が出来ずに体に麻痺が残る。後にアルツハイマー型痴呆症の悪化と自殺病を併発……か」
大河内は資料を読み上げ、それを圭介に放った。
69:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:32:05.20 ID:CGXDMCHp0
「汀ちゃんにこれ以上負担をかける治療を行っていくっていうのなら、元老院にかけあってもいいんだぞ」
「脅しか?」
「ああ」
70:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:32:41.24 ID:CGXDMCHp0
胸倉を掴み上げられ、圭介は、しかし柔和な表情のまま口を開いた。
「自殺病にかかった者は、決して幸福にはなれない。そういう病気なんだ。知ってるだろ?」
「俗説だ」
71:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:33:14.90 ID:CGXDMCHp0
「なら何故、ここまでする?」
汀の部屋を見渡す。
最新のゲーム機、雑誌、漫画、それらが所狭しと置かれた部屋の中で、圭介は肩をすくめた。
72:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:34:06.61 ID:CGXDMCHp0
*
びっくりドンキーの、前と同じ席で、汀はゆっくりとメリーゴーランドのパフェを口に運んでいた。
その頭が、眠そうにこくりこくりと揺れている。
圭介はステーキを口に運んでから、汀に声をかけた。
73:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:34:47.10 ID:CGXDMCHp0
「圭介……」
「ん?」
「あのね……あのね…………」
74:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:36:00.43 ID:CGXDMCHp0
第3話に続きます。
今日はここで休ませていただきます。
また明日、続きを投稿いたします。
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