過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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362:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:03:25.58 ID:EmuY6hvN0
モズの早贄を連想とさせる惨状の中、犠牲になった男性が一度だけ激しく痙攣して白目をむき、動かなくなる。
即死だった。
少年は着ていた白い、タキシードのような服がその返り血でベトベトに汚れているのを見て嬉しそうに破顔した。そして子供のように甲高い声で笑いながら、男の体をもう一本の手で引き抜き、脇に放り投げる。
同じ人間の胸を貫いた手の先には、肋骨の断片と共に、水鉄砲のように血管の断面から血液を噴出している心臓……生き物の中枢が握られていた。
それをしばらく眺め回し、大きく口を開けて一部をむしゃりと噛み千切る。意外と弾力が強いらしく、ゴムのように伸びたそれを頭を振って租借してから、ベッ、と少年は吐き出した。
以下略



363:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:04:01.37 ID:EmuY6hvN0
全ての人間が唖然としながら。
火災と爆発の中、その意味不明な虐殺を見つめていたのだ。
凍り付いて、硬直してただ見つめていた。
それは紛れもなく。
小動物でしかなかった。
以下略



364:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:05:21.23 ID:EmuY6hvN0
その目が、管理塔だと思われるプレハブ小屋に留まる。電気がついていて、大きな合成ガラスつきのドアからは、床に座り込んで腰を抜かしている若い娘……年の頃は十五、六ほどの少女の姿が見えた。
パチン、と指を鳴らし。
少年は逃げ惑うキャラバンや職員の群れには目もくれず、大股でそこまで近づいた。そして乱暴にドアを開き、ズカズカと足を踏み入れる。
一部始終を見ていたらしく、血まみれずぶぬれの少年に足を踏み入れられ、少女は半狂乱になった。頭を抑えて金切り声を上げ、必死に立ち上がってそこから逃げようとする。
その子の髪を掴まえ。
以下略



365:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:05:44.62 ID:EmuY6hvN0
パッ、と赤いモノが部屋の中に散った。いや、散ったというよりは、飛び散った。凄まじい量の肉片、血液、骨や良く分からないものが、固形物から流動物になり撒き散らされる。
それは人間という一つの塊がシュレッダーにかけられたような……そんな凄まじい力の本流だった。
胸が焼けそうな光景の中、少年はずるずるになった頭を手で拭い、手に持っていた残骸をポイ、と投げ捨てた。そしてしゃがんで粘性の水溜りの中からピンク色の手の平大の塊を引き上げる。
彼はそれを口の中に入れ、満足そうにドス黒い笑みを発した。


366:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:06:11.47 ID:EmuY6hvN0


 警報が鳴った。
それは、魔法使いがドーム内に進入したということを示すサインだった。最も、魔法使いの中には理性的なタイプもおり、そう言った者達は少なからずともむやみに人間に手を出さないようにとしていることもある。しかしそんなことは極少数で、大部分はその捕食衝動によりドーム内に入り込んだ途端、圧倒的な力での虐殺を行う。
その警報は、虐殺が始まったことをドーム内市民に知らしめるためのものだった。
以下略



367:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:06:45.52 ID:EmuY6hvN0
「マルディ、いるか! 返事をしろ!」

人間達が走り回っているせいで、脆弱な基盤に経っているマンションはグラグラと足元が定まらない。天井の薄汚い蛍光灯が、電気を発したまま揺れていた。
ドクは口を開いた瞬間に飛び込んできた異様な臭い……まるで爬虫類の腐臭のようなそれに思わず鼻を押さえた。刺激が鼻腔を突きぬけ、目にまで達する。

以下略



368:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:07:14.51 ID:EmuY6hvN0
比較的几帳面な性格のゼマルディにより整頓されていた部屋は、今や戦時中のような様相を呈していた。タンスやテレビなどの家具は滅茶苦茶に壁に叩きつけられ、ひしゃげてしまっている。
その中で、ベッドから少し離れた位置のカーペットの上でゼマルディはうずくまっていた。マントの下の体をブルブルと震わせ、マスクごしに顔を覆っている。

「マルディ、おい!」

以下略



369:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:07:42.95 ID:EmuY6hvN0
「ウルルルルルルルルルルルルルルルル」

少なくとも、ドクの耳にはそう聞こえた。頭を抑えている間から、彼の無事な方の左目が……まるで発光ダイオード、それを連想させる強い赤色に発光しているのが見て取れた。
カタカタ、と彼の周囲に転がっている、割れた茶碗の破片が動いていた。地震ではない。確かにマンション自体は揺れているが、それによるものではなかった。大男の体に引き寄せられるように震えているのだ。
半開きになった口からは涎が垂れ下がっている。その長髪は、根元から水の中のようにゆらゆらと揺れていた。
以下略



370:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:08:10.80 ID:EmuY6hvN0
思わず後ずさる。
それは考えてやったことではなかった。
反射的に、医者であり病人を救うことが出来る彼は、しかしそれでも尚……明らかにおかしい彼を見て後退したのだ。
これ以上近づいたら危ない。
理由は分からない。分からないが、そう感じてしまったのだ。
以下略



371:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:08:48.43 ID:EmuY6hvN0
そこで、カランをドクが抱き上げているのを横目で見たゼマルディの唸り声が大きくなった。

「ウルル……クル……ククルルルル……」

言語ではない。もっと単純な何かだった。
以下略



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