90:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:15:38.71 ID:vAi26PND0
>>87
ありがとうございます(`・ω・)
そちらもお風邪など召しませんよう
>>88
91:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:20:50.21 ID:vAi26PND0
3 白い一族
羽が、生えなかった。
彼女にはいつまで経っても羽が生えなかった。
もう生えてもおかしくはないはずなのに、その白い背中には兆候である青痣さえも浮かび上がってきてはいなかった。
92:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:24:19.65 ID:vAi26PND0
「……羽だよ羽。私にはもう出てるのにさ。どうしてお姉ちゃんは未だに子供なわけ?」
そう言って、彼女は浴場の淵に腰を下ろしながら僅かに前かがみに姿勢を崩した。
――その背中から伸びているのは、手の平大の小さな……鳥の羽骨のような物体だった。
いや、本当に手の平だ。外側を向いた状態で、子供の手のような形を連想とさせる白い骨が、肩甲骨の隙間から盛り上がっている。
93:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:25:38.28 ID:vAi26PND0
骨のような羽を持つ少女は短く切りそろえたショートの白髪をしていた。顔立ちも幼く、大きな目が無邪気に……本心から純真なのだろう。キラキラと光っている。
大してゆったりと浴槽に泳ぐように身を横たえていた少女は、彼女とは正反対に成熟した大人の妖艶な雰囲気を発していた。お湯の上に、伸ばせば膝裏まで垂れるほどの長い白髪がばらけている。
豊満な胸を隠すでもなく風呂に浮かべ、仰向けになって彼女は息をついた。
「ねえお姉ちゃん」
94:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:27:37.01 ID:vAi26PND0
「んもう! 私真面目に言ってるんだけど? お姉ちゃん……本当にどうにかしないと、次の姫巫女の祭で乗り遅れちゃうよ」
「んー……」
また上の空といった感じで天井を見上げ……そして彼女は再びプカリとお湯の上に仰向けに浮かんだ。まるで劇画のように滑らかな、シルクのような白髪が周囲にばらけていく。
95:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:28:36.05 ID:vAi26PND0
「はぁ? だってお姉ちゃん……ルケン様からサクサンテの花もらったんでしょ。もう殆ど姫巫女決定だよ? もしかして分かってないの?」
「……決定? うーん……そうねぇ……」
分かってなかったらしい。
96:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:29:15.09 ID:vAi26PND0
「うーん……」
「考え込まない。何も考えることなんてないでしょ? もう元老院はお姉ちゃんで決めてるんだよ。それなのに祭で羽なしだって分かったら、どんな辱めに遭うか分かんないよ」
「……うーん……」
97:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:30:05.67 ID:vAi26PND0
妹はそれを聞き、額を抑えてまたため息をついた。
「……分かった」
「ん?」
98:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:30:51.73 ID:vAi26PND0
「……ちょっと、今何て言ったの?」
「ルケンの花なんていらないよ。私の部屋のゴミ箱にあるから、拾ってきていいよ」
「ちょ、ちょ……ちょっとお姉ちゃん!」
99:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:31:59.13 ID:vAi26PND0
「早く服を着る!」
「で……でも、まだ三十分くらいは誰も来ないんじゃないかしら?」
「おばか! 早く花を回収しないと、本当に捨てられちゃうじゃない!」
100:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:32:59.11 ID:vAi26PND0
「え……えぇ…………まぁ……」
「ルケン様の誘いを断ったなんて知ったら、今度はまたどんな嫌がらせされるか分からないじゃない! もういい加減にしてよ。全くこの人は! この人はもう……」
ぶつぶつ言いながらヤナンは濡れたままゆったりとした白いローブを着て、そして頭にすっぽりとフードを被った。
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