過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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2012/06/24(日) 22:28:01.60 ID:mPrEAa4Zo
二人で歩んできた時間が長いだけに、彼女の性格を熟知している彼は、律子がなかなか浮上できないのではないかと気を揉んでいたのだ。
しかし、彼の予想以上に、律子は気丈に振る舞っている。少なくとも表面上はそうだ。
彼女の脆い一面を知っている彼としてはその裏にあるものを想像して心苦しいが、それを引き起こしたのが自分の決断である以上、
余計な手出しは出来まい。
出来るのは、仕事の上で気遣ってやるくらいのことであった。
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2012/06/24(日) 22:28:46.03 ID:mPrEAa4Zo
「あー……しんど」
凝った肩をぐりぐりと拳で刺激しながら、彼女は収録の様子を眺めていた。
わいわいとやるタイプのクイズ番組なので、アイドルたちもそれなりに善戦している。
その中で敗退してしまった春香が律子のほうへ歩み寄ってくる。彼女はユニットを組む、やよい、雪歩とともに番組に出演しているのだ。
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2012/06/24(日) 22:29:57.25 ID:mPrEAa4Zo
「ほら、あんたたちのユニットって、王道路線じゃない?」
「そうですかね? ……んー、そう言われれば、そうかも」
「そうなのよ。春香、雪歩、やよい。みんな可愛らしいし、アイドルとしては正統派じゃない。私や千早みたいな変則的なのじゃなくて」
「えへへ、かわいらしいなんて……」
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2012/06/24(日) 22:30:37.09 ID:mPrEAa4Zo
「あはは。春香たちはあんまり気にしないでいいのよ。ともあれ、そういうポジションを、部外者の私に頼むかというと……」
「部外者なんかじゃないですよ!」
話を遮って、春香が鋭い声をあげる。声量はけして大きくないが、近くにいたテレビ局のADがぎょっと振り向くほど力強い声であった。
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2012/06/24(日) 22:31:21.18 ID:mPrEAa4Zo
「え? え!? そうなの?」
「はい! もちろんですよ!」
「律子さんがアイドル引退しても、また一緒にお仕事できるって。みんな楽しみにしてます」
「そ、そっかー。ありがと……。あ、え、ええとね、プロデュースしたいかどうかで言えば、したいわ」
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2012/06/24(日) 22:32:06.01 ID:mPrEAa4Zo
「ふぅ……」
髪を留めていたゴムを外すと、銀の髪がばさりと背を覆った。
貴音はレッスンスタジオの一角に座り込み、タオルで汗を拭う。
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2012/06/24(日) 22:33:17.29 ID:mPrEAa4Zo
「……貴音は、私にプロデュースされるとしたら、どう?」
ひとまず汗を拭き終え、ほうとため息とも知れぬ息を吐く貴音に、律子はそんなことを訊ねる。
「どう、とは?」
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2012/06/24(日) 22:34:05.78 ID:mPrEAa4Zo
かつて961プロにおいて、プロジェクトフェアリーとして美希と共に765プロの前に立ちはだかった響と貴音。
その三人が律子たちに敗れ、結果として765プロに移籍することとなったのは、まさに数奇な巡り合わせという他無い。
美希に関しては出戻りであるにしても。
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2012/06/24(日) 22:34:50.23 ID:mPrEAa4Zo
「ご武運を……!」
「ふーん。なんか、たいへんそーだねー」
切なさをほんのわずかな声の震えに込めた台詞に、それとは対照的な、まるで無感動な言葉が被さる。
最初の台詞を発した着物姿の女性がきっと二人目を睨みつけ、しかし、睨まれたはずのセーラー服の少女はそれにまるで頓着しない。
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2012/06/24(日) 22:35:45.76 ID:mPrEAa4Zo
「ところで、美希」
「なに?」
「律子さん、でしょ」
「……律子、さん。そのことについてちょっといい?」
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2012/06/24(日) 22:36:27.26 ID:mPrEAa4Zo
ぽかんと口を開けてその背を見送る律子。
「はあ〜」
彼女は美希の姿が廊下に消えたところで、ようやく大きなため息を吐いた。
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