32:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:19:11.76 ID:bOaug2Ec0
ところが女は、窓から外をのぞきながら、もうすっかり元気が直って、勢よく言った。
女「銀河ステーションのおみやげ屋に行けば、立派な鉄道の地図が貰えたんだって。
でも構わない。私たちの頭の中にはもう正確な地図が入ってるんだからね。」
33:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:21:14.42 ID:bOaug2Ec0
男「ずっと下から眺めてたのがばかみたいだ。」
男は言いながら、すっかり上機嫌になって、窓枠に頬杖をついて、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら、その天の川の水を眺めていたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしなかった。
34:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:22:34.97 ID:bOaug2Ec0
男「ところでこの汽車、石炭を焚いてないなぁ。」
女「アルコールか、電気で動かしてるんでしょ。」
35:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:24:49.98 ID:bOaug2Ec0
八、北十字とプリシオン海岸
36:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:26:22.16 ID:bOaug2Ec0
女「友はずっと変わってないね。」
男「あいつ、結構マイペースなところあるからな。
別のものに流されなくてしっかりしてて、そこがいいところなんだけど。」
37:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:29:46.04 ID:bOaug2Ec0
「ハルレヤ、ハルレヤ。」
前からもうしろからも声が起こった。
ふりかえって見ると、車室の中の旅人たちは、みなまっすぐにきもののひだを垂れ、
38:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:32:25.86 ID:bOaug2Ec0
男「さっきのはノーザンクロス、北十字星だ。
夏の代表的な星座で、
夜空に羽を広げた白鳥座の中心の辺りが、十字架の形に見えるってやつ。」
39:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:34:33.25 ID:bOaug2Ec0
さわやかな秋の時計の盤面には、
青く灼かれたはがねの二本の針が、くっきり十一時を指した。
みんなは、一ぺんに下りて、車室の中はがらんとなってしまった。
40:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:36:50.80 ID:bOaug2Ec0
そこから幅の広いみちが、まっすぐに銀河の青光の中へ通っていた。
さきに降りた人たちは、もうどこへ行ったか一人も見えなかった。
その白い道を、女を先頭にして行くと、二人の影は、ちょうど四方に窓のある室の中の、二本の柱の影のように、また二つの車輪の輻のように幾本も幾本も四方へ出るのだった。
41:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:38:37.30 ID:bOaug2Ec0
河原のれきは、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃに曲がった地層のかけらや、また角から霧のような青白い光を出す鋼玉やらだった。
男はその渚に行って、水に手をひたした。
けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのだ。
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