13: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:04:44.14 ID:nlsr789Z0
ある日の日曜日、少年は"蜃気楼"の要望により散歩をしていた。
「散歩に行こう、少年」
少年「……嫌」
14: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:05:28.14 ID:nlsr789Z0
「とりあえず人の多ィ街に出よう。閑静な住宅街では感情の動きようがなィ」
電車に乗って三十分。少年は滅多に訪れることのない都会に着いた。
「さて、適当にぶらつくとしようか」
15: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:06:29.26 ID:nlsr789Z0
結局無駄足だったかと二時間程少年を歩かせて"蜃気楼"は諦めかけていた。
その時、偶然にもありがたい事故に会う。
女「あれ? 少年くん?」
16: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:07:51.16 ID:nlsr789Z0
「ならば哀しみの種はどうだ。
ここまで気にかけてくれてィるのに、なにも返せなィ自分を悔やむんだ」
しかしその種もまた恐怖が飲み込んでしまう。
暗雲が轟く空の下で"蜃気楼"は唐突に笑顔になった。
17: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:08:47.82 ID:nlsr789Z0
「どれだけだ! どれだけ君は怯えてィれば気が済むんだ!
好きな子と偶然ばったり出会ったのだろう!? 喜べよ! 両手を挙げて喜べよ!」
「ここは〈ど、どうしよう、なに話したらィィんだろう〉って困惑する場面なのだよ!
それでも男の子か君はあああああああああ!」
18: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:09:17.78 ID:nlsr789Z0
少年「はあ……はあ……――あ……」
女「」ポロポロ ポロポロ
常に騒がしい街が一時だけ静まり返り、少年へ注目が集中した。
19: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:09:53.07 ID:nlsr789Z0
「どうなってんだ?」
"蜃気楼"は目を疑った。
20: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:10:35.34 ID:nlsr789Z0
「とにかく、俺の激情が少年に作用したとしか考えられなィ。
それにしても……怒りとはこれほどまでに疲れるものだったか?」
感情の起伏が乏しいのではなく、理性で事象を処理する存在。
そしてずっとそうであった"蜃気楼"は、感情に身を任せたことがない。
21: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:11:03.87 ID:nlsr789Z0
例えばこんな話がある。
世界の文化がまだ発達していなかった時代に、象を売ろうと考えた商売人がいた。
商売人は歩き続けて象を宣伝したが、誰もが象を買っても使い道がないと断った。
ならば異国の象を知らない者に売ればいいと考え、商売人は遠い辺境の国に訪れた。
22: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:11:36.51 ID:nlsr789Z0
「はっはっはー! 踏んだり蹴ったりな散歩だと思ったが、良ィ方へ転がったぞ!
……けれどこれは……ちと不味ィか?」
吹き荒れた風も夥しい雷雨も止む気配はない。
23: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:12:02.63 ID:nlsr789Z0
「好きなのだろう? 想ってィるのだろう? ならば――」
少年「うるさい! お前のせいだ! お前のせいでこうなったんだ!
ずっと平和だったのに! ずっとなにもなかったのに!
お前の言うことなんか二度と聞くもんか!」
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