14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:13:15.24 ID:y8XKonFyo
「ぐっ」
体をひねってよけても、巨猿の拳は、響の体をかすめた。
直接に衝撃を受けずとも、ひっかけられた形で、彼女の体は先ほどよりさらに高い空中に放り出される。
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2013/03/03(日) 22:14:22.24 ID:y8XKonFyo
彼女の背後で、ビルの壁にびしびしとひびが走り、何本もの配管がはがれ落ちていった。
「ぐわふ」
響の動きを目で追った巨猿が奇妙な声をあげる。
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2013/03/03(日) 22:15:45.56 ID:y8XKonFyo
「ほっといてもいいのかなあ」
巨猿は上を向き、口をぽかりと開けてだらだらと血泡混じりのよだれを垂れ流している状態だ。
響が手刀の一撃で心臓を抜き取った胸は、分厚い筋肉が反射的に盛り上がって傷が埋まってしまっている。
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2013/03/03(日) 22:16:45.17 ID:y8XKonFyo
この手で心臓を握りつぶしたはずの相手が、真の背を滅多打ちになどできるはずがない。
だが、実際には巨猿は顔自体をどこかあらぬ方に向けたまま、真の背にその手のかぎ爪を打ち付けているのだった。
その鋭く汚らしい爪が真の背を打つ度、鮮血が飛び、響にまで衝撃が届く。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:17:40.54 ID:y8XKonFyo
血だまりの中でひくひくとうごめきながら縮んでいく、その体。
裸の人間へと変じていくその様子をにらみつけながら、響が呟く。
「なんで、こいつ……」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:18:41.76 ID:y8XKonFyo
「それでボクの力もわかると思うから。どう?」
「いいんだな?」
どうやら本気らしいと判断した響が、獰猛な顔つきで確認する。
それに対して、真はさわやかな笑顔で応じるのだった。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:20:40.36 ID:y8XKonFyo
だから、なにが起こるか、彼女は見逃さぬようにしていたのだ。
真は地面に倒れている。
上半身の衣服はぼろぼろに破られていて、ブラジャーもはずれかけているように見える。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:21:14.80 ID:y8XKonFyo
「いや、違うよ? ボクはただ蘇るだけ。身につけていたものまで戻るのは便利だけどね。でも、小鳥さんみたいに『死なない』のとはちょっと違うかな」
「あの人は、不死?」
「うん。不老不死。もう五〇〇年くらい生きてるんじゃなかったかな。あれ、八〇〇年だっけ? まあ、そんなとこ」
小首を傾げてそんなことを言う真に、響はひゅっと小さな息を吐く。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:22:43.89 ID:y8XKonFyo
我那覇響の『縄張り』は765に所属することで、劇的に広がった。
それまでは美希の忠告に従って、東京での活動範囲を一定の地域に限っていたのだ。
だが、765の一員となれば、東京全域で本来の姿を現して差し支えないのだという。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:23:37.01 ID:y8XKonFyo
効力はそれを作り出す術者次第で様々。
なんとなく近づきたくなくなるという程度のものから、認識をゆがめ、場所そのものを人の意識から奪い去ってしまう強力なものまで。
いま、響が感じているのは、その中間くらいだろうか。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:25:21.01 ID:y8XKonFyo
のんびりとした調子で話しかけ、響は雪歩の立つ場所に近づこうとする。
その途端、周囲の影たちが、地をこするような、しかし、俊敏な動作で雪歩を囲むように移動した。
まるで、雪歩を響から守ろうとするかのように。
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