過去ログ - モバP「鳩」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:31:02.78 ID:IfvVtyDz0
鳩が焼き鳥を食うというのはいわば人が猿を食うようなもので、いくらアホな鳥類とはいえやはり自分に
近い種の生物を食うのは躊躇うのではないか、という考えのもと実験を試みた、というか試みてみよう
と思っていたのであるが、公園に足を踏み入れた直後から1羽、広場を横切ろうとして3羽、ベンチを
見つけて8羽くらい、見る間に鳩はその数を増やし、俺に対する包囲網を完成させた。

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:31:46.31 ID:IfvVtyDz0
そんな事を考えていたら少し元気が出たので、俺は買ってきたつまみの中から柿ピーを取り出すと、
自殺した戦場カメラマンの作品、紛争地で死に掛けている少女と、少女の死を待っているハゲタカ、
みたいな構図で俺を見ている鳩たちに、鳩の皆に分け与えた。皆は喜んで柿ピーを食らい、俺も
喜んでそれをうち眺めたが、その内にある問題が目に付くと、そこから湧き上がった苦悩が俺の胸を
内側から圧迫した。苦しみの鳩胸。
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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:32:16.42 ID:IfvVtyDz0
そんな事を繰り返すうち、凛太郎と俺の間には奇妙な連帯感が芽生えた。権兵衛には一つだけ、食い物
を目にするとわき目も振らず突っ込むという弱点があった。俺は柿ピーを握る手の、親指と人差し指の
間にピーナッツを1つだけ隠し持つと、権兵衛目掛けて柿ピーをばら撒くと同時に、曲げた人差し指と
親指の反発をもってしてピーナッツを凛太郎目掛けて射出した。食い物の山を目の前にした権兵衛は
隙あらばおこぼれに預かろう、もっと言うとどさくさに紛れて群れの序列を無視して食ってやろうという
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5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:32:54.70 ID:IfvVtyDz0
時間にして約15分、広場を3往復もした頃だろうか、凛太郎は小腹が空いたのか真っ直ぐに俺の方へ
歩いてきた。既に権兵衛その他の鳩の群れも俺の焼き鳥を物欲しそうな目で見ており、俺もまあ焼き鳥
は止めとくかとミックスナッツの袋に手を伸ばした頃であった。こちら目掛けて歩いてくる凛太郎の後方
2メートルにはやはり、先ほどの女が飽きもせずついてきており、これってどうなるんだろうと思いながら
俺は、でも俺にできる事をやらなければと変な義務感に心をざわつかせながら、権兵衛その他にナッツを
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:33:25.44 ID:IfvVtyDz0
「その子……凛太郎君って言うんですか?」

やりやがった。いや、俺がやらかしたのか?まさか向こうから話し掛けてくるとは。とにかく俺はリングに
上らなければならない。お互いの下らない印象付けのために。

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2013/04/29(月) 07:33:56.93 ID:IfvVtyDz0
やってしまった。何が紳士的だ。なにがクーデターだ。ふざけるのもいい加減にしろ。いくら鳩を徒歩で
追いかけるような浮世離れした、というかちょっと抜けたところのある彼女とはいえ、初対面の男から
いきなり嘘100%のむさ苦しいピジョンストーリーなんぞを聞かされたら「うわ、気持ち悪っ」と思うに違い
ない。彼女の美貌で脳が沸騰していたとはいえ、俺は最悪の形で彼女にファーストコンタクトを仕掛けて
しまったのだ。
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:34:28.38 ID:IfvVtyDz0
で、今に至る。彼女は素直にミックスナッツの袋を受け取ると隣のベンチに座り、凛太郎に与え始めた。
先程からないがしろにされつつあった権兵衛の群れは既に別のおばはんの元におり、ターゲッティング
されたおばはんもどうやら本職の飯やりストらしく、異様に皺の寄ったポリ袋からパン屑をつかみ出しては
荒れ狂うゴン蔵の群れに向かってばら撒いていた。俺はカップ酒を飲もうかと思ったが、隣で凛太郎に
豆を与える彼女の、少し気の抜けた様子で歌う童謡を耳にするうち、止めた。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:35:02.35 ID:IfvVtyDz0
月日は流れた。些細な口論から家主の女に追い出された俺は、何となく実家に帰るという気も起こらず、
多少は金もあったのでワンルームマンションという名の穴蔵に住みついてだらだら生きながら、それでも
律儀に公園通いは続けていた。そんなある日のこと。

雨。塗装屋の仕事は中止。今日も高垣さんと凛太郎には会えなかった。職人殺すにゃ刃物はいらぬ、
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:35:30.24 ID:IfvVtyDz0
ここはCGプロダクション。代表直々にスカウトされた俺は今、アイドルのプロデューサーをしている。何で
こんなことになったのか俺も分からない。もう一人の当事者である代表に聞いても、

「なんかね、こう……来たんだよね!ティンと」

以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:36:01.11 ID:IfvVtyDz0
「……ねぇ、プロデューサー」

「どうした?」

「今度さ、オフの日合わせて……私も一緒に行っていいかな?」
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:36:27.57 ID:IfvVtyDz0
約束の日。俺はいつものようにポケットにミックスナッツを忍ばせ、凛、そして凛の飼い犬ハナコと一緒に
公園までの道のりを歩いていた。きっかけは何だったのだろう、なんてな事を考えながら。

初めて見る広い公園に興奮したのか駆け出すハナコを、リードを引いていた凛も笑いながら追いかけた。
俺はポケットのミックスナッツの袋に触れた。次にもし高垣さんに会えたら、彼女をスカウトしてみるのも
以下略



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