120:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:19:12.69 ID:EaOumZa8o
  
  独特の、鈍い手応えがした。 
  うめくような悲鳴を上げて男が倒れた。 
  やった。と思った。これで人間一人分の血液が確保できる! 
  
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2013/08/31(土) 05:20:12.03 ID:EaOumZa8o
  
  日ごろからこいつにむかついていようと。 
  吸血鬼の少女が血に飢えていようと。 
  それを助けるためにどんな決意を固めようと。 
  そんなものは関係ないのだ。 
122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:20:50.60 ID:EaOumZa8o
  
  ホテルの三階のいつもの部屋で、真っ暗なその部屋で、ヒナは月明かりを浴びて眠っていた。 
  美しい光景で、僕はそれを見ているだけで何故か涙があふれた。 
  僕はもう、そこに立ち入ることも、彼女に触れることもできないんだ。 
  
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2013/08/31(土) 05:21:37.56 ID:EaOumZa8o
  
 「別に」 
  僕は平板に答える。 
 「君のことは関係ない。僕はあいつが大嫌いだったから」 
 「ごめん」 
124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:22:09.42 ID:EaOumZa8o
  
  僕の身体の震えがおさまって落ちついてから。 
  僕は彼女に一つの提案をした。 
  彼女はそれを黙って聞いていた。 
  
125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:22:51.93 ID:EaOumZa8o
  
 「もう大丈夫なのか?」 
  フロントの男は怪訝そうな顔で僕たちを見た。 
 「うん、もう平気だよ」 
  血色の良くなったヒナが笑って答えた。 
126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:23:32.52 ID:EaOumZa8o
  
 「それじゃあ僕も」 
 「ちょっと待て」 
  フロントの男は僕に何かを放った。 
  僕はそれを不格好にキャッチした。 
127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:24:14.72 ID:EaOumZa8o
  
  古いセダンに乗り込みながら彼女にそのことを言うと、ヒナはくすくすと笑った。 
 「知ってる? あの人にも昔娘がいたんだって」 
 「へえ」 
 「小さい時に病気で亡くなったらしいんだけど。名前がヒナコちゃんだとかで」 
128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:25:03.48 ID:EaOumZa8o
  
  車のラジオからはニュースが聞こえてきた。 
 「夜九時ごろ通り魔事件がありました。――さんがナイフのようなもので刺されて軽傷。命に別状はなく……」 
  僕は窓を開けた。 
 「なんか潮の匂いがしない?」 
129:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:25:44.36 ID:EaOumZa8o
  
  彼女は不格好に海水を掬っては舞い上げていた。 
 「ショコラ!」 
 「うわっぷ!」 
  僕の顔に海水が掛かる。しょっぱい。 
130:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:26:25.03 ID:EaOumZa8o
  
  ひたすらはしゃいでいるうちに水平線が明るくなってきた。 
  僕たちは立ち止まってそちらを見た。 
  どちらともなく座り込む。 
  並んで肩を寄せて、明るさを増していく空を見上げる。 
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