2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:48:10.08 ID:M1p+iqog0
「プロデューサー、あの、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
デスクワークをこなしていた俺の背に、やや遠慮がちに声がかかる。
振り返るまでもなく、それが凛の声だと分かったが……何だか違和感が拭えない。こんなに畏まった調子で声をかけられるのはいつぶりだろうか。
3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:49:34.91 ID:M1p+iqog0
「あぁ、たまに使おうと思って置いてあるぞ」
問いかけの真意はよく分からんが、ここで答えを渋る意味もないので、デスクの下から二番目の引き出しを開けてみせる。
「ひ、引き出しに湯呑……? しかも二つもあるし」
4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:50:44.56 ID:M1p+iqog0
「その湯呑、譲って欲しいなって」
案の定である。両手を合わせ、可愛く言ってみせる凛だが、
5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:53:18.56 ID:M1p+iqog0
「あれ、ちひろさんは凛の味方ですか?」
それまで俺の隣のデスクで黙って仕事をしていたちひろさんである。
おかしいな、こういう場面では大抵俺の援護をしてくれる人なんだが……
6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:54:13.03 ID:M1p+iqog0
「え……加蓮!?」
特に親しい友人の登場に、凛が目に見えて狼狽する。
「引くわー」
7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:56:47.72 ID:M1p+iqog0
「プロデューサー、そろそろ」
「あぁ、もう時間だな」
加蓮がやってきたのは、何も凛をからかうためだけではなく、次の仕事の都合でもある。
デスクワークを適当にキリにして俺が立ち上がると、
8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:57:47.92 ID:M1p+iqog0
・ ・ ・
事務所から逃げ出した俺は加蓮を助手席に乗せて、今日の仕事場であるテレビ局まで車を走らせる。
「でも、ちょっと意外だったな」
9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:59:08.35 ID:M1p+iqog0
「……ずるいな。そう言われたら、それ以上突っ込めないよ」
「まぁ、こういう誤魔化し方だけは、ここ最近でうまくなったからな」
「誤魔化し方って自分で言うし」
加蓮の表情を盗み見ると、やや面白く無さそうに口を曲げて、窓の外へ視線を投げている。
10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 15:59:58.85 ID:M1p+iqog0
「まぁ、曲がりなりにもお前達のプロデューサーだからな」
「うん」
こんな視線を向けてくれるようになったのは、いつ頃からだったろうか。ふと昔を懐かしむ。最初に出会った時は……
11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 16:01:10.59 ID:M1p+iqog0
「なんだ、それは前にも謝ってもらったぞ。全然気にしてないし、今こうして立派にアイドルとして輝いてくれてるんだから」
「うん。だけどPさんといると、何となく思い出しちゃうことがあって」
俺にとっては悪くない思い出が、加蓮にとってはそうでもないらしい事は、知っていた。こうして謝られる事も今日が初めてではない。
12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/01(土) 16:02:07.74 ID:M1p+iqog0
「そういう景色は、ある」
「……そう、だよね」
ただ、今の加蓮に単なる気休めは毒な気がしたから。
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