過去ログ - 透華「は、ハギヨシ! わわ、私を抱きなさい!!」ハギヨシ「……」
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4: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:03:34.80 ID:MfFILXmIo
涙に濡れた目をぱちくりとさせ、主は執事を見つめる。
呆気にとられた顔が徐々に恨めしいものへと変わる。
珍しく前言を翻した執事に感謝をしつつ、それはそれとして問い詰めるのが主の務めと言わんばかりに口を開いた。


以下略



5: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:04:01.68 ID:MfFILXmIo
龍門渕透華はこの場所が気に入っていた。
広い邸宅と不相応に狭い場所。2人でいてちょうどという広さのガーデンテラスは、事実彼女の母親が愛する夫と2人で過ごすために作らせたものだ。
ここは龍門渕家にとって特別な空間である。この場所を管理する執事を除けば、ここの主に呼ばれない限り、使用人はもちろん当主でさえもここへ立ち寄ることはない。
母親が亡くなってからは透華がこの場所の主であり、なればこそ萩原は危険極まる会話をする場所としてここを選んだのだ。

以下略



6: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:04:41.85 ID:MfFILXmIo
テラスからでは龍門渕の広大な庭を一望というわけにはいかないが、ここから見える景色は珠玉。
龍門渕の誇る庭師が他のどの場所よりも念入りに、持てる技術の粋を尽くして作り上げたその庭は四季折々に姿を変える。
それはいつも透華の目を楽しませていたが、とりわけ自身の、そして小さい頃に失った母親の髪と同じ色をした黄金色の花々が咲き誇る秋を好んでいた。
最高の景色を見ながら執事の紅茶を嗜む。透華にとって最高の贅沢の1つだ。

以下略



7: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:05:10.88 ID:MfFILXmIo
「私に許婚がいるみたいなんですの」

「左様でございますか」

「随分と冷静な反応ですわね。もしかして知っていましたの?」
以下略



8: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:05:39.67 ID:MfFILXmIo
龍門渕という家柄を考えれば許婚がいたとしてもそれほどおかしなことではない。
透華も妙齢に差しかかる年頃になっており、父親からそのような話をされるにはちょうどよい時期であるともいえる。
だが直接聞かされたのならば透華はここまで動揺するだろうか。少なくとも萩原の知る透華はそうではない。
受け入れがたいことであったならば父親が相手でも構わず反論をする。
龍門渕透華という少女はそのような人間だ。
以下略



9: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:06:05.85 ID:MfFILXmIo
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その夜、透華は合同合宿に参加する許可を受けるために父親の部屋を訪れようとしていた。
夏に行った4校合同合宿と同じ参加校であり、合宿所も同じ。
形式的に確認を取るだけで、特に問題もなく許可をもらえるだろうと思いながら廊下を歩いていた。
以下略



10: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:06:37.26 ID:MfFILXmIo
『何、もう話したか? ……いや、まだ透華には話していない。いずれ話さなければならないのはわかっていたが、これほど急とはな……』

『ああ。私がとやかく言う立場にないのはわかっているが、許婚がいるなどとどう話せばよいものか』

(……え?)
以下略



11: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:07:06.24 ID:MfFILXmIo
「お父様はこう話しておりましたわ」

「……」

「私も龍門渕の一人娘。お母様がそうであったように、いつかは外から男性を迎えることも覚悟してはおりました。
以下略



12: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:09:09.40 ID:MfFILXmIo
切ない笑みを浮かべて話す透華に萩原は押し黙る。
一度立ち直らせた心は簡単には折れない。今の透華の決意に先刻のような脆さはなく、ただ純粋に力強く萩原と向き合っている。
透華は一度目を伏せ深呼吸をした。そして決意したように顔を上げると萩原を見つめ口を開く。


以下略



13: ◆6ardW1rCAXVJ[saga]
2014/02/04(火) 22:10:17.93 ID:MfFILXmIo
透華の痛切な叫びに萩原は一瞬顔を歪める。
自分を抱いて欲しいと言った透華の言葉はどれほど言葉を弄しても、結局のところ萩原が透華を受け入れるか否か。それに収斂される。
あくまで執事に徹するのであれば、たとえ傷つけることになろうと気づかぬふりをし続ける以上の選択はなかった。
そのとおりだと萩原は思う。そしてなぜ執事に徹することが出来なかったのかと自問する。
もっとも、自問などするまでもないことは、他ならぬ萩原が誰よりもよく知っていた。ただ目を背けているだけだから。
以下略



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