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2014/07/16(水) 18:23:53.92 ID:TmyX6+Eao
そんなことが何回も続いた。
つまり何回も青年の顔を見ることになった。
本当奇遇だねえと彼は笑ったがこちらは理由が分かっていた。
魔法だ。
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2014/07/16(水) 18:24:45.73 ID:TmyX6+Eao
あるとき山越えでドジを踏んだ。
地面の窪みに気づかずに足を挫いたのだ。
あまりにひどくひねったのでそこから一歩も動けなくなった。
食料は最低限しかなく防寒の準備も十分ではないのに雪が降りそうな空模様だ。
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2014/07/16(水) 18:25:18.76 ID:TmyX6+Eao
それからいろいろあった。
海に出て一緒に釣りをしたり長い地底洞窟を手をつないで歩いたり。
ある村に住まいを定めてからは大きな出来事はそうそう起きなくなったが、それでもいろいろあったことには違いない。
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2014/07/16(水) 18:25:56.20 ID:TmyX6+Eao
夫は流行り風邪で肺を悪くして亡くなった。
大好きだ。
彼はあえぐように言った。
大好きだよ、ヘレナ。
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2014/07/16(水) 18:26:24.49 ID:TmyX6+Eao
どうということはない。
その時に頭に浮かんだのはそういう乾いた言葉で、本当に心からどうでもいいと思った。
一人だったのがそうじゃなくなり、そしてまた一人に戻ったというだけだ。
だから自分は泣かなかった。
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2014/07/16(水) 18:27:07.12 ID:TmyX6+Eao
風車屋敷が建って数年後。
娘がいきなり訪ねてきた。
自分にとっては孫にあたる女の子を一人預かってほしいという。
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2014/07/16(水) 18:28:50.01 ID:TmyX6+Eao
「いい子じゃない」
走馬灯のように流れる景色の中で声が言った。
当り前だよ、と彼女は答えた。なんたってわたしたちの孫だからね。
44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:29:37.06 ID:TmyX6+Eao
……
「ニャー」
猫の鳴く声で目を覚ました。
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2014/07/16(水) 18:30:09.95 ID:TmyX6+Eao
彼女のあまり筋道立たない話を整理すると、夜の秘密基地で一人過ごすことになって怖かった、ヘレナが森で倒れていて怖かった、ヘレナがもう目を覚まさないんじゃないかと思って怖かった、とこういうことらしい。
(なるほど、さっぱり分からん)
とりあえずこの孫娘がヘレナをここまで運んでくれたらしいことは確かだが。
呆れてため息をつくと、孫娘は「そうだ」とベッドから下りた。
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:30:39.33 ID:TmyX6+Eao
「おかわりはいる?」
「いらん」
そう言ったのだが結局あと三杯ほど食べることになった。
やっぱりまずい。しかし不思議と悪い気はしない。
47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:31:21.46 ID:TmyX6+Eao
「いや……構わないよ」
彼女は小さく首を振った。
孫娘は顔を輝かせた。
「よかったぁ……」
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