過去ログ - 学校からの帰り道、死神に声をかけられた
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1: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:42:54.44 ID:cbR8aY5Yo

「ちゃーす」
 それは大通りから住宅地に入ったところでのことだった。妙にゆるくて軽い声がした。
 学がそちらに目を向けると黒いパーカーの女性がひらひらとこちらに手を振っているのが見えた。

 うっすらと焼いた肌、それから短い髪はあまり綺麗でない染めものの金。
 ホットパンツから伸びるむき出しの脚もそうだけれどなんだか派手な雰囲気の人で、女性というよりはギャルとかそういう言葉の方が近いかもしれない。
 見覚えはなく、だから多分会ったこともない。
 けれどもそのギャルはなぜだか気安い様子でこちらに近づいてくるのだった。

「はろーん」
「えっと……誰、ですか?」
「え、わたし? アケミだよ」
 聞いたことのない名前だ。余計困惑する学の様子に気づいてか、アケミとやらは言葉を付け足した。
「あと死神。オーケー?」
 何も分からないのはそのままだが、とりあえず関わってはいけない人種ということだけはしっかりと理解した。


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2: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:45:28.37 ID:cbR8aY5Yo

「なんでさー。なんで逃げるのさー」
 声を背中に聞きながら学は足をさらに急がせた。
「怖がんないでよー。ちょっと訊きたいことがあるだけだから止まってってばー」
 無茶な注文するなあと思いながら速度を上げる。
以下略



3: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:47:03.58 ID:cbR8aY5Yo

 帰宅はいつもより遅くなった。
 真っ直ぐ帰っては住所が割れてしまうなどと不安になったからだ。
 近くの通りを二周ほどして、尾行がないと分かってからようやく玄関をくぐった。

以下略



4: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:47:48.11 ID:cbR8aY5Yo

 尻餅の衝撃で閉じてしまった目を再び開くと、ちょうどアケミがソファーから立ち上がったところだった。
 こちらにゆっくりと近づいてくる。
 学は喉の奥がきゅっと締まるのを感じた。
 恐怖で悲鳴を上げたいのに、その恐怖のせいで声が出ない。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/28(火) 15:48:51.39 ID:ZfWzMO5hO
期待


6: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:49:37.41 ID:cbR8aY5Yo

 意味が分からずアケミの目を見返すと、彼女は苛立ったように言葉を強くした。
「だーかーら、リモコンが反応しないんだって。チャンネル変えるのにいちいちテレビんとこまで行くのタルいんだってば」
「ええと……」
「替えの電池どこよ」
以下略



7: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:50:50.94 ID:cbR8aY5Yo

 自分の家にも関わらず居心地悪く相撲を見終わった後。
 学はアケミが立ち上がって伸びをするのを見上げた。
「あー面白かった」

以下略



8: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:51:32.18 ID:cbR8aY5Yo

「まあいいじゃん。それよりさ、和泉香奈ちゃんって知ってる?」
「はあ、まあ。同級生ですし」
「その子の家、教えて」
「お断りします」
以下略



9: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:53:19.72 ID:cbR8aY5Yo

 その気配が伝わったのかもしれない。アケミはちぇっ、と舌打ちして背中を向けた。
「まあいいや。今度こそじゃーねー」
 リビングのドアが閉まり、しかし玄関のドアの開閉音はしなかった。

以下略



10: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/28(火) 15:54:00.64 ID:cbR8aY5Yo
つづく


11: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/29(水) 22:12:16.01 ID:y73cZfE6o

 朝、目を覚ましてすぐに学は周りを見回した。
 部屋に自分以外誰もいないことを確認し、ほっと息をつく。
 昨日のあれ以降、何となく気配が残っているように思えて気が休まらなかったのだ。
(本当、なんだったんだろう)
以下略



12: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/29(水) 22:13:08.13 ID:y73cZfE6o

 コンビニ駐車場の端に、彼女は昨日と全く同じ格好で立っていた。
 ポケットに手を突っ込んで、見るからに退屈そうというかタルいぜオーラを周囲に放射している。
 明らかにスーツや学生服といった朝の風景からは浮いていた。

以下略



13: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/29(水) 22:13:51.98 ID:y73cZfE6o

 学の足元をしばらくじろじろ眺めながら彼女が言う。
「なんだろ。何もないように見えるけど」
「は、はあ」
「でもあんたにはなんか見えるわけ?」
以下略



14: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/29(水) 22:14:31.71 ID:y73cZfE6o

 鼓膜を刺すような高い音。それから腹に響く衝突音。
 角を曲がるのに失敗した車が、対向車にはじき出されて学の目の前を通過していき、コンビニの塀に激突した。
 それだけはしばらくして理解できた。
 それ以外の全ては何も頭に入ってこなかった。
以下略



15: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/10/29(水) 22:14:59.83 ID:y73cZfE6o
つづく


16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/30(木) 09:32:11.07 ID:EtBeKTPuo
期待


17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/30(木) 21:12:42.66 ID:95lc/J3L0
期待


18: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/11/02(日) 21:12:13.09 ID:YGKY5GhXo

 呆けた頭で過ごす七時間弱はずいぶん早く過ぎたように思えた。
 朝いつの間にか学校にいたのと同じく、気づいたら放課のチャイムが鳴っていた。
 なんだか妙に感覚が遠いように思える。
 意識だけが別の世界にいて、そこから体を操縦しているような気分だった。
以下略



19: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/11/02(日) 21:13:18.24 ID:YGKY5GhXo

 ホームルームが終わり、学は靴を履きかえて校門を出た。
 右に進むと大通りにぶつかり、その道を真っ直ぐ行けば学の家のある住宅地に着く。
 それが学の最短の帰宅コースだ。
 しかし今日は校門を左に曲がった。
以下略



20: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/11/02(日) 21:14:57.47 ID:YGKY5GhXo

 学は立ち止まった位置のままで口を開いた。
 話をするにはわずかに距離が遠いが人気がないので声は苦もなく届いた。
「どうしてここに?」

以下略



21: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2014/11/02(日) 21:15:53.01 ID:YGKY5GhXo

 指摘の言葉も無視されて、学は仕方なくアケミの隣に並んだ。
 離れたコートの方に目をやると練習着の部員たちがボールを打ち合っているのが見えた。
 素人目にも上手い部員もいれば下手な部員もいる。
 いまいちわからない部員が圧倒的に多いが。
以下略



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