238: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:36:31.84 ID:py78Qnqv0
スズリに案内されて京太郎はパーティー会場に到着した。京太郎が会場の扉を開いたとき、すべての視線が、京太郎に注がれた。静まり返った会場だったのだ。そんなところで扉が壁にぶち当たっている。普通でもうるさい音なのに、静まり返っていたためにとんでもない騒音になっていた。
扉を思い切り開いた京太郎は、扉を開いた格好のままでほんの少しだけ固まった。自分がいまいち加減ができていないのを忘れていたのだ。そしてお値段の高い扉をおそらく壊しただろうという予感で青ざめたのだった。
239: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:40:03.94 ID:py78Qnqv0
松常久が「はじめまして」と答えたところで京太郎のワイシャツを虎城が引っ張った。京太郎の背中でうつむいている虎城も京太郎のたくらみを見破っていたのだ。
そして虎城はすぐに京太郎が何をしようとしているのかも理解した。京太郎は自分の変わりに松常久を言い負かそうとしているのだと。だから止めようとした。松常久は無茶なことをやっているけれども、それなりに頭が回るのだ。
ここで印象を悪くして京太郎が不利益をこうむるのは虎城の望むところではない。
240: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:43:02.71 ID:py78Qnqv0
虎城が京太郎の背中を叩いたところで、松常久はこういった。
「申し訳ないが、失礼させてもらう。気分が悪い。その女の処遇は後で決めようじゃないか。正々堂々とね。そして君の処分も、そうだろ? 魔人くん」
241: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:46:34.47 ID:py78Qnqv0
京太郎に声をかけられたハギヨシがあわてて携帯電話を操作し始めた。今までの怒りは引っ込んでいた。京太郎の切り返しに頭が冷えたのだ。そして今、自分は何をするべきなのかを理解した。
いまするべきなのはエンブレムがどこにあるのかをはっきりさせること。ハギヨシならばエンブレムがどこにあるのかを調べられるのだ。だから急いで確認した。
ハギヨシが調べている間、松常久は、自分の頭に手をあてていた。顔色は青を通り過ぎて白くなっている。絶望からか、目に光がない。松常久は終わりが近づいてきたのを感じているのだ。
242: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:50:05.46 ID:py78Qnqv0
会場にいた者たちは京太郎の姿から全てが終わったと察した。
京太郎の手の中にある五体の生き人形。ぼろぼろになってしまった京太郎の服。そして輝く赤い目から流れている血涙。赤く染まった京太郎の両手。京太郎の姿は尋常なものではない。明らかに怪しい。しかし京太郎の浮かべる表情が終わりを教えてくれていた。もう、戦いに向かうものの空気ではなかった。
京太郎の姿を見た出席者の何名かは、鼻を鳴らしていた。泣いているわけではない。京太郎の血の匂いをかいで、鼻を鳴らしたのだ。この何名かの気持ちというのはオロチと同じ気持ちである。
243: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:54:10.52 ID:py78Qnqv0
茶番劇に決着がつくと、パーティ会場が騒がしくなった。出席者たちがそれぞれに口を開いている。いいたいことがいろいろとあるのだ。ただ、出席者たちの会話の内容には大体「魔人」という単語と「松常久の悪魔化」という単語が含まれていた。
しかしあまりいい雰囲気ではなかった。冷たい空気ではなく、妙な熱さが感じられる。熱に浮かされて頭がまともに動いていないように見えるものが多い。酒に飲まれた状態だった。
244: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:58:12.85 ID:py78Qnqv0
寝かされている五名が龍門渕のヤタガラスによって運ばれていった。それに付き添って虎城も一緒に消えていった。会場から出て行く途中で京太郎に虎城は深くお辞儀をした。京太郎はそれにあわせて頭を下げた。お辞儀をされたから自分もお辞儀をしなければならないと、反射的にお辞儀をしてしまったのだ。
そうするとソックは肩からずり落ちそうになった。そうして京太郎の頭にしがみつくことになった。京太郎の頭にしがみついているソックは鼻息が荒くなっている。急に京太郎がお辞儀をしたからだ。まさか、肩車をしている状態から深いお辞儀をするとは思っていなかったのである。
245: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:00:54.43 ID:py78Qnqv0
出口に向かって歩いていく京太郎に、ディーがこういった。
「サンキューな須賀ちゃん。スカッとした」
246: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:06:26.53 ID:py78Qnqv0
京太郎からビニール袋を受け取ったソックはずいぶんはしゃいでいた。そしてこんなことをいった。
「よし、衣ちゃんに頼もう! 確かブルーレイのプレイヤーがあったはず!」
247: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:10:34.79 ID:py78Qnqv0
主人を差し置いてメイドが説明をするのはどうなのか。しかししょうがないことだ。龍門渕透華はこれからの龍門渕の顔役になる。そうなってくるとやはり立場に縛られるようになる。となると、立場に見合った発言が求められるようになる。
そんな彼女である。軽々しく事情を話すわけにはいかなかった。しかも京太郎はまだ正式な構成員ではない。正式な関係者ではないのだ。そんな相手に内部の力関係を匂わすのはまずかった。建前があるのだ。
248: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:15:37.01 ID:py78Qnqv0
京太郎の答えから少し間を空けてから、龍門渕透華はこういった。
「わかりました。ではヤタガラス龍門渕支部所属の正式なサマナーとしてあなたを迎え入れましょう。
あと、報酬はアンヘルさんとソックさんが使っている口座に振り込んでおけばいいですか? それとも別? 日本円以外での支払いでもいいですよ?」
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