13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/10(日) 14:14:16.59 ID:LDSt2pnJ0
5月11日
男は、自宅から電車で一時間ほどの距離にある会社に向かった。
久々の通勤ラッシュだが、それほど苦にしている様子はない。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/10(日) 14:48:12.57 ID:LDSt2pnJ0
本当にこの子は心臓に悪い。
そして、男はこの声の持ち主へと、ぎごちなく向き直った。
彼女はあどけなさが残っている可愛らしい顔立ちである。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/10(日) 14:59:11.05 ID:LDSt2pnJ0
その様子は蛇が草むらをかき分けてくるのに似ていた。
するり、するり
その滑らかで静かな動きは、混雑を潜り抜けてきた経験からくるものだろう。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/10(日) 15:42:32.35 ID:LDSt2pnJ0
だが、彼女の悪戯っぽい目の輝きに気づけば、男は仏頂面にならざるをおえない。
思い出したのだ、ここで喜べば、女社員の間で噂話にされることを。
なぜこの男が知っているかというと、彼女が幾度となくそれとよく似た話を男にしたのだ。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/10(日) 16:40:31.41 ID:LDSt2pnJ0
それ以来、彼は彼女の甘言を信用しないように振る舞った。
彼女と時折出会う朝は、友情代わりに繰り出されるシャブをひらり、ひらりと躱しながら
18:名無しNIPPER[saga]
2015/05/10(日) 16:45:20.46 ID:LDSt2pnJ0
ようやく、彼らは会社へと到着した。
記憶をたどるように、通路を進んでいくと見知った部屋が見えた。
と、その扉の前に女性が、腕を組んで不満たらたらに男たちを睨んでいた。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/05/11(月) 12:42:51.18 ID:sr/n3AUZ0
その日一日、男は極めて謙虚に仕事を進めることにした。
黙々とキーボードを叩き、完成すれば、アウトプット。
上司に提出して、次にとりかかり、その日のノルマが終わっても、手を緩めず進める。
20:名無しNIPPER[saga]
2015/05/11(月) 18:11:32.00 ID:sr/n3AUZ0
5月11日23時30分
男は同僚たちとの型どおりの別れを告げ
勤務時間の定刻と同時に、ひとりで、会社を出発した。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 18:16:29.35 ID:sr/n3AUZ0
目いっぱいに広がった黒い布の上に
大小さまざまな鉱石が無数に散らばる様が。
時には小石が転がって布の端まで行ったり、時には赤いものまである。
22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 18:25:15.56 ID:sr/n3AUZ0
「なくな、バカ」
会社で会った『おおかみさん』の声だと気づくまでに、数秒。
男が驚いて起き上ると、一匹の狼が公園の入り口に立っていた。
23:名無しNIPPER[saga]
2015/05/11(月) 18:28:41.49 ID:sr/n3AUZ0
ゆっくりと『おおかみさん』は言った。
「なくな、わたしがあんたをかんでやる」
男の返事も待たず、静かに、しなやかに『おおかみさん』は近づいてきた。
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