31: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:29:37.17 ID:7IXBXgnJ0
駅に近づいてきた。
仕事帰りや学校帰りだろうか、人の往来は先ほど走って来た道と比べてかなり多くなりつつある。
夜闇に飲食店の看板のネオンが光り、街はすっかりと昼に見せるものとは違う顔を見せ始めていた。
32: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:31:49.19 ID:7IXBXgnJ0
色ならばこうしたイベントを見逃さず、迷うことなく葉山にアピールをするものだと思っていた。
一色の行動原理の中心には「可愛くありたい」というものがある。
そして、その矛先は主に葉山に向けられているはずだった。
信号が青に変わり、再び走り出す。
33: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:35:49.86 ID:7IXBXgnJ0
痛いほどの真剣な様子が、彼女の顔を見ずとも伝わってくるようだった。
言いたい事はわかる。これ以上拒絶されるのが怖い。
今まで通りでいられなくなるのが怖いという。それは至極当然なことのように思える。
34: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:40:21.86 ID:7IXBXgnJ0
「葉山は……逃げないと思うぞ。少なくとも今のお前からは」
「え……?」
急になされた返答に一色がわからない、という声を上げたのでそのまま続けて話す。
35: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:42:31.83 ID:7IXBXgnJ0
楽しそうに、肩を震わせて身を屈めるように笑っている様子を見ていると、さっきの沈痛な声で話していたのが
遠い昔の出来事のようにも思えた。
これでもかなり真剣に話したんだけど、ちょっと失礼じゃないのこの子?これだから最近の若い子は……。
36: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:45:12.12 ID:7IXBXgnJ0
「先輩の話を纏めると、要は素直な気持ちを伝えることが大事?ってことですよねー」
「まぁ、そうなるな」
今度はニヤリと意地悪そうな、いたずらを思いついた幼子のような表情を作る。
37: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:47:40.89 ID:7IXBXgnJ0
「はい! あ、あと先輩」
別れの挨拶をしてさて帰ろうかというところで、ちょいちょいと招くように手を動かしている。
どうやらもう少し頭の位置を下げろということらしい。
38: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:55:18.87 ID:7IXBXgnJ0
時は流れて2月も中旬。日めくりカレンダーは2月の13日目。
つまり翌日バレンタインデーが迫っていることを指し示していた。
俺にとってはだから何?といった感じではある。
バレンタインも、その前日もただの平日に変わりない。なんなら毎日がエブリデイ変わりない。
39: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:59:13.23 ID:7IXBXgnJ0
通常、昼は外に出て食べるのだが、今日はすこぶる寒いため仕方なしに教室内で黙々と食事を終えた。もちろん一人でだよ言わせんな恥ずかしい。
お天気お姉さんによると今季最大の寒波が到来したとかで、千葉でも朝にみぞれが観測されたほどだ。
今季最大とか、今シーズン一の冷え込みとかって更新しすぎでしょ?
40: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/16(火) 00:00:53.71 ID:9WL6O8ki0
しかし本当に寒い。マフラーかコートでも持ってくればよかったと後悔しつつも、自販機で買ったマッカンを呷り文庫本を開いた。
物語の世界に浸ろうと文字列に意識を向けた瞬間目の前が真っ暗になった。ポケモンかよ。
「だーれだっ!」
41: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/16(火) 00:02:58.03 ID:9WL6O8ki0
「寒いけど、まあ色々あってここにいる。戸塚は戻ってていいぞ」
「うーん……あっそうだ。ここでご飯食べていい?まだ食べてないからさ」
「もちろんいいが。戸塚こそ寒いけど大丈夫なのか?」
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