過去ログ - 万里花を愛でるニセコイSS「ハナヨメ」
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名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:17:22.71 ID:EUGrH/Tp0
「ねえ、ダーリン。何だか最近忙しそうじゃない?」
「えっ?」
ビクリとしてしまった、だろうか。桐崎千棘は怪訝そうに楽の顔を見ている。
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8
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:18:05.46 ID:EUGrH/Tp0
「楽様ー!」
ガラリとドアが開き、もう五時限目も終わったというのに堂々と万里花が教室に入ってきた。
いつも通りの楽に向けられた微笑み。
でも、なんというか、どこかいつもと違う気がする。
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9
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:19:07.14 ID:EUGrH/Tp0
「お、おい、橘、いい加減に……って、ん?」
「ひゃう!」
されるがままになっていた楽が、するりと手を万里花の首筋にあてる。すべすべてもちもちで、ちょっと熱い。
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10
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:20:05.41 ID:EUGrH/Tp0
「……すみません、楽様」
「だから何度も言ってるだろ、無理せずに言え、って」
保健室のベッドに寝かされた万里花は、やはり少し顔が赤い。
エステ帰りなので肌艶はよさそうだが、微かに疲れたような様子が見て取れる。
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11
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:21:27.93 ID:EUGrH/Tp0
「いいお天気ですわね、楽様。まさに、空前の結婚日和ですわ!」
両手を晴れ渡った青空に突き上げながら万里花が言った。二日間安静に過ごしたおかげで元気を取り戻したらしい。
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12
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:22:30.01 ID:EUGrH/Tp0
この一週間、万里花がどんなに今日という日を楽しみにしていたか。
身体が弱いくせに、無理して努力して、それで体調を崩しても秘密にまでしようとして。
それなのに。
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13
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:24:29.29 ID:EUGrH/Tp0
ずずず、とジュースをストローで吸い込みながら、万里花の様子を伺う。
万里花はなんだか長い名前のコーヒーのカップを口元に当てたまま、飲むでもなく、上に浮かぶホイップクリームをじっと見つめていた。
「なぁ、橘……」
楽の呼びかけに、一呼吸遅れてから万里花が顔を上げる。
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14
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:25:37.85 ID:EUGrH/Tp0
自分に何かができるわけではないのかも知れない。
だけどせめて。
それならば、今回万里花が抱いた夢ぐらいは叶えてやりたいではないか。
ガタッと椅子を鳴らして、楽は勢いよく立ち上がった。
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15
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:26:18.61 ID:EUGrH/Tp0
「お嬢様、起きてください」
ゆさゆさと揺すられて、万里花は目を覚ました。
どうやら楽の帰りを待っている間に、うとうとと眠ってしまっていたようだった。
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16
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:27:22.77 ID:EUGrH/Tp0
楽の身に何かあったのだろうか。
店を飛び出して行ったときの様子からすると、彼のことだからどんな無茶をしていないとも限らない。
不安な考えが脳裏をよぎったが、万里花の迎えにこの二人を寄越す辺り、それほど切羽詰まった状況とも思えななかった。
万里花は楽のことを信じて、とにかくこのまま一刻も早く楽の元に向かうことだけを考えることにした。
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17
:
名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:28:16.01 ID:EUGrH/Tp0
「ここは……」
連れてこられたのは町の外れにある小高い丘の上。そこにポツンと、小さな小さな教会が立っていた。
「来たわね、万里花ちゃん」
声をかけてきたのは先週、あの結婚式場で出会ったドレスのデザイナーの女性だった。
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