1:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:15:41.66 ID:kHvSRcn3O
彼女は川原に立っていた。
そばにはセロハンと色とりどりの画用紙で組み立てた、UFOが一台。
煙を吐き出して、小学生の工作のような船体を汚していた。
俺は関わりあいたくないのに、彼女の方を見た。
頭が痛くなるような真っ白な服は、なにかの作業着のようだ。
銀色の長い髪が、風でフワフワ揺れていた。
「こんにちは」
彼女は俺を見て、俺に語りかけた。
逃げれば良かったものを、俺は懐かしい人を見るように彼女を見た。
空はまだ日がのぼっておらず、辺りを青白く染めている。
彼女は当たり前のように、俺のそばに歩いてきた。
「帰りましょう、あなたの家に」
にこりともせず、冷たい目のまま彼女は俺の隣にきた。
俺はなにも喋れなかったので、ただ彼女を受け入れた。
今の俺には、彼女は天使にも悪魔にも見えた。
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2:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:17:52.02 ID:kHvSRcn3O
ひんやりと冷たいフローリングに、足を下ろす。
素足でぺたぺたと歩く俺は、彼女を連れて自宅に帰ってきていた。
そういえば、彼女は靴を脱いだのだろうか。
見てみると、白い華奢な足が作業服の下にのぞいている。
そっと振り返ると、玄関には真っ白な靴が並べられていた。
3:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:18:55.46 ID:kHvSRcn3O
次の日、目を覚ました俺は隣でたたずむ彼女の姿を見つけた。
微かにさしこむ朝日の光を受けて、彼女の髪はキラキラと輝いていた。
俺は少し見とれていたのだろうか。
視線に気がつき、彼女は俺に言った。
4:オータ ◆aTPuZgTcsQ
2015/07/04(土) 14:19:58.02 ID:kHvSRcn3O
俺がたどり着いたスーパーの中は、じんわりと蒸し暑く、来店した客が文句をつけるほどだった。
空調の設備はあるものの、社員は金をけちり、しわ寄せは俺みたいな下っぱに回ってくる。
だからどうしたと言うわけでもない、いつもの日常だ。
俺はこの年になっても定職につかず、スーパーでレジ打ちと品出しを続けていた。
5:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:21:06.25 ID:kHvSRcn3O
家の扉の下の鍵を開けて、上の鍵穴にも鍵を差し込んで回した。
別に盗られたくないものがあるわけでもないのに、俺は習慣で鍵を二つかける。
そして、雨の日なんかはその使い勝手の悪さにイライラしながら、二つの鍵を開けていた。
扉を開けると、今朝と同じ姿で彼女が俺を出迎えた。
6:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:22:01.02 ID:kHvSRcn3O
彼女はいつまでウチにいるつもりなのだろう。
そう言えば、あのUFOはどうなったのだろうか。
彼女に見送られた俺は、何気なく川原に足を運んだ。
だが、そこにはもうなにもなかった。
7:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:22:57.54 ID:kHvSRcn3O
また、鍵を二つ開けて玄関で靴を脱ぐ。
出迎えた彼女は、やっぱり真っ白だった。
「ご飯が出来てますよ」
8:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:24:39.94 ID:kHvSRcn3O
次の日、早くに目を覚ますと彼女は昨日と同じ姿勢で、壁に体を預けて空を見ていた。
「眠ってないんですか?」
9:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:26:12.52 ID:kHvSRcn3O
俺はにやけながら、核心をついた。
「アンタは俺の見てる幻覚なんだぞ。
なのに、なんで俺の意思に反したことを言うのかね」
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