過去ログ - 提督「この世界にいらないもの?」
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13:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:40:39.93 ID:NYc+OQMZ0
「どういうことっぽい?」

「愛というのは相互作用の産物だからね。こちらが愛ゆえの行為をしても相手がその同じ価値観を持たなかったら愛なんて成立しないでしょ? だったら、同一の価値観を持っている二匹のプラナリアこそが一番完全に愛を伝達できるじゃないか。まあ、彼らが愛し合うかどうかはわからないけどね」

「でも、ドッペルゲンガーみたいな相手との恋愛なんてすぐに飽きそうっぽい」
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:41:15.68 ID:NYc+OQMZ0
「あの話はまだ弱い抵抗っぽい。家の問題が障害となっていただけで、二人は愛を確かめ合えていたのだから」

「へえ。じゃあ、もっと強い抵抗があるってことか」

「互いに嫌いあっているのがもっとも愛の障害っぽい」
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:42:14.43 ID:NYc+OQMZ0
「燃えるような愛がそもそもないことこそ愛にとってもっとも障害になるっぽい。だから、一番燃え上がるっぽい」

「僕にはまったく想像できないよ。そういう場合はそもそも初めの歩み寄りさえないからね。障害を乗り越えようとするから愛も持続するのはわかるけど、嫌いあっているんだから、その障害を乗り越えようと思うことさえないだろうね」

「小説では嫌い合う関係からいいところを見つけて好きになっていく過程が多いけど、この場合は嫌いあっている時点で愛し合っていけないといけないっぽい」
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:42:55.96 ID:NYc+OQMZ0
一般論から急に矛先が自分個人に向いたことに夕立は微妙な表情を見せた。日常的なバカ話というのは、自分には無関係だと思えるからこそ、突拍子もなく一般を馬鹿にしたり笑ったりで楽しめるものだ。自分をその一般の中に参入させて話しているわけでない。もし自分に関わりのあることだと注意しながら話すのならば、もっと慎重になったであろう。

野となれ山となれと適当に口走った命題を自分に適用されることに些か不満げな顔を夕立は隠そうともしなかった。でも、もしかしたらデザートのアイスクリームで頭痛をおこしその痛みで厳しい表情を見せているだけかもしれないとも時雨は思った。

時雨には時折夕立が何を考えているのか判断しかねることがあった。そもそも何も夕立は考えていないのではないかと考えることもある。そう思うと次には妙に気を利かしたこともするしで、よくわからない。
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:43:44.57 ID:NYc+OQMZ0
「夕立、人間間の恋愛における障害が乗り越えられると言うならば、前に挑戦してみた手作り料理にもう一度チャレンジしてみたらどう?」

「え、料理?」

夕立のスプーンがとまった。手作り料理で連想されることを思い出しているのだ。そして、嫌そうな顔をした。以前に失敗したことがあるのだ。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:44:25.69 ID:NYc+OQMZ0
時雨は夕立と長い付き合いだが、夕立のことを「繊細」と形容する日がくるとは夢にも思わなかった。この繊細さは危ういものだ。

時雨はよもや夕立が引きこもるなんて夢にも思わなかった。夢にも思わなすぎだが、そもそも夕立が一人の男性を思い浮かべて上の空に体をくねらせる事自体を時雨は夢にも思わなかったのだから、一連のことを夢にも思わないのは当然のことだった。

夕立は料理で失敗したからってだけで引きこもろうとしたわけではない。夕立は出撃でも大破を繰り返したのだ。その原因は提督との甘い恋愛の空想にふけっていたからであって、夕立はそれをやめなければならないと知りつつもついぞそれを止めることが出来なかった。
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:45:01.19 ID:NYc+OQMZ0
提督との甘い空想は夕立の無能さをただちに夕立自身に思わしめ、提督とそういう恋愛関係にはなれないのだと、その資格はないのだと夕立に突きつけてきた。淡い純真な期待こそがその期待を裏切る結果となる。

夕立の気持ちはその場で空転しどこにも行くことができなくなっていた。それを繰り返しているうちに、夕立は無気力さを身につけた。どうにもならないならば、どうにかしようと思わないことだと。

時雨や他の仲間と話す時の夕立は時雨からしてみても普段通りだった。その普段と変わらないピエロのように明るい笑みの裏側でどのような侵食が行われているかは気づきようもなかった。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:45:54.72 ID:NYc+OQMZ0
親友である時雨がどうもおかしいと夕立の異変に気付いたのは、提督の誕生パーティーに夕立が行かないと言ったときのことであった。瞳を輝かせて提督に何をプレゼントするかを悩み込み、飾り付けやケーキの準備、会場の確保に席の配置に思いめぐらすはずであるという時雨の予想は外れた。

時雨は急いで聞き直したが答えは変わらない。そこでようやく何かあることを悟った時雨は辛抱強く夕立の口を割ろうとした。その時期には幾らか夕立の独占欲もおさまっており聞き出すことができた。

時雨は夕立をこのままにしていてはいけないと思い。ほとんど命令じみて出席の約束を取り付けた。しかし、それは時雨の短慮であった。夕立は部屋に一日中引きこもるという生活を続けていたのだ。その当時の時雨は度重なる長期遠征のために夕立の生活状況を把握していなかったが故の短慮。
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:46:38.93 ID:NYc+OQMZ0
しかし、ここでも時雨はまたポカをやらかした。夕立も時雨自身も料理に詳しくなく、どういう手順で作るべきかのノウハウを全く知らなかったのだ。その場合間宮など料理に詳しい人の助力を仰ぐのが定石だが、二人共料理なんてレシピ通りに作れば何とでもなると楽観的に考えていたのだ。

その時の厨房の様子といったら大騒ぎ。二人しかいないのに、どうしてここまで上から下まで騒ぎ立てられるのか。胡椒や小麦粉が宙を舞い、それを吸って咳ごんでくしゃみをし、人参のヘタを切って捨てるつもりがいつの間にか本体の方を捨てたりしていて、無理に鍋を引き出そうとして、棚から鍋の雪崩を起こし、一つ拾って、火にかけるのは良いが、レシピの順番通りに食材が準備されていないので、焼けば結果的に一緒だろうということで、手についたものから鍋に放り込む始末。

出来たものの味見は勿論した。日頃から「どうして比叡さんは味見をしてカレーを出さないのだろうか」と疑問に思って生きてきた教訓が生きたのだ。味はとても美味しかった。
以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:47:43.47 ID:NYc+OQMZ0
季節は秋。クリスマスまで猶予はある。編み物は大変かもしれないが、少し不格好でも許してくれるだろうと時雨は考えた。時雨は今回の失敗を生かし、今度は他のみんなにも手伝ってもらおうと考えた。

やり方がわからなくて行き詰まった時は間宮や鳳翔、金剛といったそういうのに詳しそうな艦娘のもとを訪れた。金剛に関して言えば、編み物に詳しそうというより、「今年のクリスマスはこちらがこうした手作りマフラーをプレゼントするつもりだ。同じもの作らないでね」と牽制の意図が大きかった。

不器用ながらも夕立がマフラーを着々と編み続けていた時、ある話を耳にすることになる。提督がマフラーを身につけてきたということだった。それそのものは特に気にすることのない話だ。提督だって寒くなればマフラーをまくさと。
以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:48:32.73 ID:NYc+OQMZ0
結果としてマフラーはクリスマスまでに間に合わなかった。やる気を失った夕立が得意でもないことを投げ出さず熱心に遂行するというのはどだい難しいことであった。提督はマフラーを貰えなくてしょんぼり、夕立もプレゼントできなくてしょんぼり、時雨もまたもやの失敗にしょんぼり。三者三様のしょんぼりしたクリスマスであった。

時雨は何か夕立は呪われているんじゃないかと思った。どう考えてもそこまで高い障害でもないのに、どういうわけか躓く。改善点は分かりきっているのだから、呪いなんて大げさかもしれないが、そんな雰囲気が二人の間で共通理解として成立してきているような気がしたのだ。

「だから、今度はしっかりと何回も練習してから、提督にご馳走するんだ」
以下略



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