過去ログ - 南条光「砂糖無しで、ミルクはいっぱい」
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:37:50.35 ID:vaXUSRZy0

「嘘だと思うのなら証明してみせる。次のバレンタイン、Pを唸らせる究極のチョコを作って持ってくよ!」

 声を張り上げてカレンダーを指さした。自分も含め同僚たちのスケジュールがみっちり書き込まれた予定表によると、今日は折り返しの水曜日。二月十四日までに五日間は時間が残されていた。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:38:40.53 ID:vaXUSRZy0

 さて啖呵を切った以上、約束を果たさないといけない。アタシは女子寮のキッチンを借り、試しにチョコを湯煎したりマシュマロを焼いてみた。とても美味しかったけれど、彼にぶつける全力としてはまったくの力不足だった。

(かくなる上は、全部のせ合体作戦だ!)

以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:39:30.27 ID:vaXUSRZy0

 思い返してみると、飴玉の類は口寂しいから食べてるような風体だったから、他と比べるとあまり好んでいないかもしれない。同じ理由で、グミやガムもそれほど好んでないだろう。

 逆に、パフェやあんみつなど、腰を据えて食べる甘い物は大のお気に入りだった。それ以外にも、雨宿りがてら駆け込んだで、急かされたように覚悟を決めた目でバナナタルトにかぶりついてたことも覚えてる。

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5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:40:42.98 ID:vaXUSRZy0
※――※――※――※――※――※――※

「で。実際のところ、出来上がりましたか?」

 同じく厨房を利用してたありすちゃんが問いかけてきた。アタシは背筋を反らして天を指さし、半身をひねって彼女に返事した。
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6:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:42:06.39 ID:vaXUSRZy0

「ほ、本当!? 見せてくれる!?」

 知りたいという腹の底からの本心を伝えると、ありすちゃんはまんざらでもない風に仕方ないですねと笑って、ディスプレイをこちらによこしてくれた。知識量を誇りたいから協力してくれる彼女は、何時だって頼りになる。

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7:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:45:39.78 ID:vaXUSRZy0
※――※――※――※――※――※――※
 かくして突撃した二月十三日の駅前には、アタシを排除することに特化したエネルギーフィールドが形成されていた。これが噂の重力波か。ライブならばなんともないのに、歩行者天国の人並みには圧倒されてしまった。

 通行人に弾き飛ばされそうになりながら目的地に向かう途中、金髪の女の子がハニー会いたかったのと言って男性に抱きついてる瞬間にでくわした。メガネの優男は女の子をたしなめたけど、彼女は聞く耳を持っていなかった。

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8:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:46:32.28 ID:vaXUSRZy0

 (これも社会勉強のため、社会勉強のため、社会勉強のため……お店じたいは素晴らしいんだ、アイドルたるもの良い喫茶店を知っていて、インタビューとかで『このお店を贔屓してますっ!』みたいなことをペラペラペラペラ〜〜って言えるようでなければ、なんだろう!)

(そうだ、Pのためありすちゃんのため、アタシのパワーアップのため、それつまりファンのために来てるのだ。何を恐れることがあろうか!)

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9:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:48:45.68 ID:vaXUSRZy0

 スカートの裾を正し、ハンドルを摘むように持って紅茶を飲み込んだ。アールグレイという名前の紅茶で、蜜柑のようでそうでない香りが薫ってなかなか美味い。確かベルガモットという果物を着香したフレーバーティーだったか。ケーキの販売をしてるぐらいだから、茶葉も置いてるだろうか。待て、そんなに無策に浪費して良い筈がない。自制せねば。幸せかつ悩ましい問題を問いながら、口元をナプキンでぬぐってケーキを一瞥した。

 トッピングのマンゴーをつつくと、ぷるんとした手応えが返事した。オレンジ・バナナ・ブドウ・メロン、過積載で違反を切られても文句が言えないほどフレッシュな果物がみちみちに詰まった、まさにフルーツの大将軍と形容するべきフルーツタルトだ。

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10:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:50:24.02 ID:vaXUSRZy0

 散々舌鼓を打ってから周囲を見渡すと、自分が酷く恥ずかしいものに感じられた。

 見渡す限りの男女・男女・男女・夫婦。甘い空気に相応しいのは舌の上に乗るクリームの残り香だけ。先ほどの喧嘩ップルはすでに退席していて、そこではもう別のカップルが仲睦まじく談笑していた。

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:53:18.49 ID:vaXUSRZy0

 冷静に考えてみれば、彼がお休みで、あのお店は彼が気にしてるお店なのだから、鉢合わせする可能性は当然にあった。

 そうやって理由が幾つも浮かんでは消えた。しかし、疑問は一つとして振り払われなかった。

以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:54:24.16 ID:vaXUSRZy0

 何時寝たのやら起きたやら、不快な眠り方をしてしまった。当然、体は絶賛大不調。日頃楽しみにしてた特撮で、それも新シリーズの第一話であるというのに、体が番組のテンションに追いつかなかった。

 それでもと体に言い聞かせ、ついに自作タルトと向き合った。出来上がりを見て、血糖値が一気に上がった。

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